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~怪談~『マイカー』

『マイカー』


僕が大学の友達と共に体験した話です。
たしか、大学2年の冬だったと思うので
今から2年前の出来事です。
大学で自動車部に所属していた僕は、
学校の授業なんかそっちのけで
日夜、ガソリンスタンドのアルバイトに明け暮れていました。
車の免許はとったし、早く自分の車を持ちたくてたまらなかったんです。
そんなとき、同じ自動車部のF島が
先輩のつてで安い車を見つけてきた。
(こういう話はけっこうある)
『86』といえば 車に興味がある人は
すぐ ピン とくるはずです。
だいぶ年式も古い車だし、事故車の多いタイプなので
ぼろぼろだと思っていたら、
多少、ボデーにへこみがあるくらいでぴかぴかだった。
足まわりとかマフラーも変えているし
内装関係も多少くたびれてはいるが
ていどのいい車だった。
試しに試乗させてもらったのだが\
エンジンも快調で、ブレーキもクラッチも問題はなさそうだった。
はっきり言ってこの車を2万円というのは安いと思う。
(この車は未だに根強い人気で専門店があるくらいなんです。)
F島は早速手続きをして自分の車にしてしまいました。
早速、走りに行きました。
全く、快調そのもので
早く僕も自分の車がほしいなんて思っていました。
すると、突然

うう...

何か聞こえたんです。
カセットをかけていたんですけど
歌声の合間に聞こえてくる。
そんな感じでした。
気持ち悪いんでカセットを止めると
今度はもっとはっきりと

うう....

間違いなく車内から聞こえる。
ラジオをつけているわけでもないし、窓も閉めている。
走っている車の中で、女の声が聞こえるはずはない。
古い車なんで、どこかこすれている音だということにしました。
二人とも、少し気味悪い位しか思っていなかったんです。
まだ、走り足りなかったけど
いやな雰囲気になったので
早めに帰ることにしました。
早めといってももう夜中の1時をすぎていました。
横で車を運転しているF島が言うんです。

『やけに窓ガラスがくもるなあ』 って。

デフをかけてもどんどん曇っていく。
いったん車をとめて、窓を拭こうとしたんですよ。
ところが、室内からいくら拭いても曇りはとれない。
それどころかどんどん曇っていく。

『え?』

F島が声を上げました。
僕も気づきました。
窓ガラスが曇っていたのは水滴なんかじゃなかったんです。
指紋がべっとり。
窓ガラスに人の手形がついていたんです。
小麦粉かなんかに手を突っ込んで
押し当てたみたいな手形。
それが、窓ガラスにどんどん浮かんでくるんです。
外の景色はもうほとんど見えません。
窓という窓は真っ白になっていく。
そして、今度ははっきりと

ああーっ...

女の悲鳴が聞こえた。
僕らは我先にと外に飛び出した。
ドアなんか開けっ放し。
そして、恐る恐る振り返ると、
みたんですよ...
さっきまで僕が座っていた助手席がぼおうと光っているのを...
女の人が座っていて前をじーっとにらみつけているのを...

自動車部の後輩に携帯で電話して迎えに来てもらいました。
F島はというと、さすがに乗り続ける気にはならなかったらしく
そのあとすぐに、業者に売ってしまいました。
ただ同然で手に入れた車を結構な値段で買い取ってもらったんで、
よかったよなんてF島は言っていました。

正直言って
平気であの車を売ったF島の根性のほうが
僕は怖いなと思いました。

 

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