犬山:これが、伏姫の遺された笛で御座います。それから、これをご覧ください。
静姫:それは?
犬山:私が母の胎内から出てきたとき、右手にこの玉をしっかり握っていたそうで御座います。
犬村:私は左の手に...
犬山:伏姫の体から飛び散った光の玉を、私どうも不思議な宿縁で分け持ったのです。
静姫:すると、後六人、同じような玉を持ったもの者が?
犬山:いかにも。静姫様を奉じ、玉ズサの呪いと闘うための同志が
静姫:私を奉じて?
犬山:ハイ、伏姫はそう仰せられました。
静姫:でも、たった八人ほどの味方で、何が出来るというのじゃ、そうじゃ、お前たちがそれほどまでに私の身を案じるなら、私を武蔵の上許まで連れて行って欲しい。
犬山:武蔵?
静姫:叔父上のお力をお借りして、素藤を討って父も爺もそのように...
犬村:姫、素藤たちを倒すには武力だけでは叶いませんぬ
静姫:何ぃ
犬村:私と道節殿はつぶさに探しって参りました、今、お城に巣食っているのは、人間にあらず、玉ズサのが形となって現れた妖怪どもに御座います。
犬山、姫と八人の武士以外にあの妖怪どもに勝ち勝てるものは御座いません。
静姫:信じられぬ、そのような話。信じよと言う方が無理ではないか。
犬山:信じて頂かなくてはなりませんぬ。私の命は後ひと月。後、一月しか持たないのです。病に冒され、日ごと崩れていく体なのです。後ひと月の間になんとしてでも残りの同志を探し出し、あの妖怪どもを打ち倒さなければなりません。それも偏に姫あればこそ可能な事で御座います。伏してお願い申し上げます。なにとぞ、なにとぞ、我ら両名とともに、残り同志をさがす手だてを。
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