ソウル市内の中学校を訪ねた時のことだ。校長室で、もちを勧められた。校内模擬試験で、平均点が71点で学年トップになったクラスの父母が、お祝いに搗(つ)いて持ってきたという。十数年前で味は忘れたが、教育ママをチマパラムと呼んでいたことは覚えている。チマは韓国風のスカートで、パラムは風だ。その風力は、相当強いようだった。
中国の官吏登用試験・科挙の伝統を受け継いだ韓国では、大学入試は国を挙げての一大行事だ。昔からの合格祈願の必需品はアメである。くっつくと、合格するとが同じ動詞だという。入試の日には、受験会場の校門に、母親たちがアメの塊をくっつけて祈る。
この、全国を覆うような祈りに衝撃を与えたのが、今回の入試不正事件だ。携帯メールでのカンニングは、どこにいても通信が可能という現代の技術を使ったところが新しいが、その動機は、昔ながらのものかも知れない。
中国の科挙の時代にも、カンニングはあったという。宮崎市定著『科挙』(中公新書)には、「四書五経」や注釈、70万字以上がびっしりと毛筆で書き込まれたカンニング用の下着の写真が載っている。
不正行為を見つけた時に答案紙に押す印もあった。無断で自席を離れるのが〈移席〉、互いに答案紙を取り換えるのが〈換巻〉、〈説話〉が話し合いである。
今回多くの逮捕者を出している「メール・カンニング事件」の罪名は、「偽計による公務執行妨害」だという。科挙の印からの勝手な連想で、こんなハンコを想像した。「不移席不説話的瞬時大換巻」。
12月07日付 《天声人語》韩国邮件作弊事件
在访问汉城的市内学校时,在校长室里被邀吃饼。这是在校内模拟考试中平均分为71分的第一班级的父母为了庆祝而作的。因为是10几年前的事,味道已经忘了,但是教育妈妈被称作“奇吗帕拉姆”。“奇吗”是一种韩国式的裙子,“帕拉姆”是风的意思。这种风现在可是很猛。
韩国继承了中国的官吏录用考试——科举制,大学入学考试是举国大事。传统的祈祷考试合格的必需品是糖。坚持,合格在韩语里是同一动词。
这次给全国性的祈祷以重击的是考试作弊事件。虽然使用手机邮件这种现代技术进行随时随地的作弊是新出现的,但是动机是自古以来就有的。
早在中国科举时期,就有考试作弊。官崎市定所著《科举》中,有一张内衣的照片,有人将《四书五经》及其注释70余万字全部用毛笔写在上面。
当时如果看到作弊行为,就在答题纸上留下记号。擅自离席为“移席”,互相交换答题纸为“换卷”“说话”。
这次“邮件作弊事件”中逮捕的多人罪名为“欺诈妨碍执行公务”。从科举时代的记号,想到这个记号:“不移席不说话瞬时大换卷”。 |