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发表于 2011-2-22 07:48:48
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本帖最后由 reiuka2 于 2011-2-22 07:50 编辑
先生が直くんと修哉くんを裁いた終業式の日、それが、学校で直くんを見た最後の日でした。新学期最初の日、二年B組の教室には、直くんの姿だけがありませんでした。直くんだけです。修哉くんは来ていました。私を含め、みんな、直くんがいないことよりも、修哉くんがいることに驚いていました。誰も、修哉くんに話しかけようとはしません。けれど、みんな遠巻きに眺めては、何かひそひそとささやき合っていました。
修哉くんはみんなの反応などまったく気にならない様子で、出席番号順に並べられた自分の席に座り、ブックカバーのかけられた文庫本を読んでいました。強がった態度を取っているのではなく、彼は一年生の時から毎朝そうしていました。何もかわっていない、かえってそれが、みんなの目には不気味に映ったのだと思います。
天気もよく、窓も全開でしたが、教室内には澱んだ空気が立ち込めていました。そんな空気のなか、始業のチャイムが鳴り、新しい担任が入って来ました。新しい担任の若い男の先生は、勢いよく黒板に名前を書きました。
――僕は学生時代から『ウェルテル』と呼ばれてるから、みんなもそう呼んでくれ。
そんなことをいきなり言われても困るだけですが、ここでは、ウェルテルと呼ぶことにします。
――だからといって悩んでるわけじゃないぞー。
そう言われても、笑う子なんて誰一人いません。
――おいおい、本くらい読んでくれよ。
ウェルテルは大袈裟に嘆くようなポーズをとって、そう言いました。名前が良輝だからウェルテルなのだろうし、『若きウェルテルの悩み』にかけてそう言ってるのもわかります。おいおい、そっちこそ空気くらい読んでくれよ、そんな気分でした。
――おっと、忘れるところだった。直樹は風邪で欠席……と、他に誰か休みはいるか?
ウェルテルは初日の出欠確認だというのに、馴れ馴れしく下の名前で点呼をとると、早速、自己紹介を始めました。
――中学生の頃の僕は、決してまじめとは言えない生徒だった。親に隠れて煙草を吸ったり、嫌いな先生の車にいたずらしたり……。でも、二年生の担任の先生が僕を変えてくれた。誰かに何か起これば、授業をそっちのけで、真剣に話し合ってくれた。僕のためにも、英語の時間を五時間は使ってくれたかもしれないな……、ハハッ。
多分、ほとんど誰もウェルテルの自己紹介なんか聞いていなかったと思います。直樹は風邪で欠席、の方が気になっていたはずです。
そんなの嘘だとわかっていましたが、私は、とりあえず直くんがまだこの学校に在籍していることにホットしました。修哉くんの方をちらちらと見ている子もいました。修哉くんは優等生っぽく先生の方を向いていたけれど、先生の話を聞いているふうではありませんでした。それでもウェルテルは、意気揚々と続けます。
――僕はこの春新採用されたばかりなので、このB組は記念すべき第一号のクラスです。みんなに対して先入観を持たないように、一年生の時の担任の先生が書いた調査書は、あえて読まないことにしています。だから、みんな、まっさらな気持ちで僕にぶつかってきてほしい。何か困ったことがあったら、先生ではなく兄貴に相談するような気持ちで、何でも気軽に言ってくれ。
ウェルテルの次は、兄貴です。みんな、みんな、と連呼しながら、自分の理想を熱く語るウェルテルは、最後に、新品の黄色いチョークで黒板いっぱいにこう書いて、始業式前のロングホームルームを終えました。
ONE FOR ALL! ALL FOR ONE!
悠子先生が私たち一人一人のことをどんなふうに思っていたのかはわかりません。ましてや、直くんや修哉くんの調査書にどんなことを書いていたのか想像もつきません。でも、もしもウェルテルが、きちんと調査書を読んでいれば、あんなことは起こらなかったと思うのです。
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