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7 羊男来る(4)
「いいさ」と僕は言った。
「あんたがあの女の人という会えないことについても気の毒だとは思うよ。でもそれはおいらのせいじゃないんだ」
「うん」
僕はリュックのポケットからラークを三箱出して羊男に与えた。羊男は少し驚いたようだった。
「ありがとう。この煙草はじめてだよ。でもあんたはいらないのかい?」
「煙草はやめたんだ」と僕は言った。
「うん、それがいいよ」と羊男は真剣に肯いた。「たしかに体に悪いからね」
羊男は煙草の箱を大事そうに腕についたポケットにしまった。その部分が四角くふくらんだ。
「僕はどうしても友だちにあわなくちゃならないんだ。そのためにずっとずっと遠くからここまで来たんだ。
羊男は肯いた。
「羊についても同じだよ」
羊男は肯いた。
「でもそれについては何も知らないんだね?」
羊男は哀し気に左右に首を振った。作り物の耳がひらひらと揺れた。しかし今回の否定は前の否定よりずっと弱かった。
「ここはいいところだよ」と羊男は話題を変えた。「景色はきれいだし、空気はうまいしね。あんたもきっと気に入ると思う」
「いいところだよ」と僕も言った。
「冬になるともっとも良くなる。あたりには雪しかなくなって、こちこちに凍りついちまうんだ。動物もみんな寝てるし、人も来ないよ」
「ずっとここにいるのかい?」
「うん」
僕はそれ以上何も質問しないことにした。羊男は動物と同じなのだ。こちらが近づけば退(しりぞ)くし、こちらが退けば近づいてくる。ずっとここにいるのなら急ぐことはない。ゆっくり時間をかけて探りだしていけばいいのだ。
羊男は左手で右手にはめた黒い手袋の先を親指から順番にひっぱっていた。何度かひっぱると手袋はすっぽりと抜け、かさかさとした浅黒い手が現われた。小さいが肉は厚く、親指のつけねから甲のまんなかにかけて古いやけどのあとが残っていた。
“不错。”我说。
“对你不能再见到那个女人这件事,对不起了。但那并不是我的原因。
“哼。”
我从帆布背包的口袋中拿出了三盒雲雀烟递给了羊男。羊男有点紧张。
“谢谢。这种烟还是第一次。可是你那里不需要吗?”
“我已经戒烟了。”我说。
“是吗?那样做不错。”羊男很认真地点头。“这的确对身体有害。”
羊男很看重那烟盒,就把烟放到了臂腕那里的口袋里。那里鼓起了四角形。
“我费尽心机找不到我的朋友。为此从很远很远的地方来到这里。”
羊男点头。
“找羊也是一样的。”
羊男点头。
“可是,对此你什么也不知道吗?”
羊男无力地向左右摇摇头,那假作的耳朵也呼啦地摇动。但是这次的否定比前面的否定明显减弱了很多。
“这里可是好地方呀。”羊男转移了话题。“景色漂亮,空气干净。你肯定会很投入的。”
“的确是好地方呀。”我也说。
“到了冬天会更好。到外都是雪,还硬梆梆地结凍。动物全部进入冬眠,人也不来了。”
“难道你一直住在这里?”
“是的。”
我也再没有深入的提问。羊男完全和动物相同。向这一个地方前进他就退,我如果向后退他就前进。若一直在这里呆下去就不用那么着急了。慢慢地耗时开展探索会有好结果。
羊男用左手抠拉套在右手的黑手套,从右手的大拇指开始一个个拉拔手指尖。抠拉几次之后手套完全脱落下来,露出了干巴巴的浅黑色的手。虽有些小但肉很厚实,从拇指根到手背都留有很久的火烧的痕迹。 |
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