▼作家の太宰治は、創設されたばかりの芥川賞を、のどから手が出るほど欲しがった。名誉というより、賞金500円が魅力だったらしい。だが、第1回の受賞は石川達三の『蒼氓(そうぼう)』に決まる
作家太宰治,对刚设立的芥川奖就极度渴望。(对他来说)比起荣誉,更具魅力的好像是那500日元的赏金。但是,第一次奖项决定颁发给了写《苍氓》的石川达三。
▼あきらめきれず、選考委員だった佐藤春夫に手紙を送った。「お笑いにならずに、私を助けて下さい」。だが2回目も3回目も選にもれた。太宰は佐藤の家でさめざめと泣いたそうだ(『芥川賞の研究』)
绝不放弃,(太宰治)给当时担任评审委员的佐藤春夫写了信,说:“勿见笑,请助我一臂之力”。但是第二次第三次都没被选上。据说太宰还在佐藤家潸然泪下。(《芥川奖的研究》)
▼ついにこの賞に縁のなかった太宰は、時の移り変わりに驚いているだろう。73年の歴史で初めて、日本語が母語ではない外国人が賞を射止めた。中国人女性の楊逸(ヤン・イー)さん(44)は、22歳で来日して日本語を学び始めた
最终和此奖项无缘的太宰治,大概会惊叹于时代的变迁。73年的历史中首次,母语非日语的外国人摘取到了这个奖。(得奖的是)一个叫杨逸的中国女性(44岁),22岁时来到日本并开始学习日语。
▼受賞作『時が滲(にじ)む朝』は3作目だ。民主化運動で挫折した青年が天安門事件後に日本に移住し、悩みつつ生きる姿を描く。「国境を越えて来なければ見えないものが書かれている」と選考委員に買われた。新しい眼(め)を持つ日本語作家の誕生である
获奖作品《津着时光的早晨》是她的第三部作品。作品描写的是一个在民主化运动中受挫的青年在天安门事件后移居日本,痛并活着的生活样态。“描写的是不跨越国境就体会不到的东西”因此受到了评选委员们的青睐,一位具有新视野的日本语作家诞生了。
▼言葉は生き物だ。国や民族の文化、精神性に深く根ざし、さまざまな陰影をまとっている。よそから来た者が操るのは楽ではない。まして小説を書くなど難行苦行に近かろう。それを楊さんは、「泳げないのに泳ごうとして、体が浮くように感じる楽しみがある」と軽やかに話す
语言是具有生命力的东西。深深地扎根于国家和民族的文化和民族精神,包含着各种各样耐人寻味的经历。外来人想要自如的应用它绝对不是件易事。写小说的话那就更是苦难修行了。杨女士却将其艰辛轻松的说成是“不会游泳但是却想要游泳,有一种身体浮起来的愉快感觉。”
▼〈文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加えていなければならぬ〉と、賞に名を残す芥川龍之介は言っている。時を超えた励ましだろう。さらに言葉をみがいて、外国人による「日本語文学」を引っ張る活躍を楽しみにしたい。
以其名字命名大奖的芥川龙之介这样说过:“文章中的一些词语必须比在辞典中列举时还要优美”。这是超越时空的箴言。希望她进一步锤炼她的语言,并活跃于外国人组建的“日本语文学”。 |