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ふしぎ工房症候群 EPISODE.11 「闇」 全文听写

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发表于 2009-8-29 21:36:14 | 显示全部楼层 |阅读模式
在经过了4天的艰苦奋战后,终于听完了~~
   我是第一次听这个系列,因为是BLEACH的死忠,一护的粉丝,所以首先就听了森田成一朗读的这一集~~
   这是个浪子回头的故事。不良少年的主人公在走投无路之下做了男公关,后来不幸沾染了毒品。在一段虐心的情节后,终于改邪归正和纯洁善良的女主角生活在了一起~~结局,粉让我感动了一把~~
   我觉得森田把这个故事演绎得很好。良心尚存,徘徊不安,生活在绝望中的少年形象,很适合他的说~~(其实我觉得只要是少年角色都适合森田君^ ^)特别是后面的怒吼,毒瘾发作时的嘶吼等片段,很是逼真,听得人好心疼>_<)
    不多说了,先贴上来,供大家学习分享。如果有错误,还请多多指教啦~~^ ^

語り:森田成一


Track01 prologue
日常で起こる、些細で不可思議な出来事。それが、人の思考と行動に影響を与えていく過程と結末を知りたいとは思いませんか?この物語は、あなた自身の好奇心と願望に基づいて構成されています。ともすれば、見落としてしまいがちないつもの風景の中に。あなたが不思議工房を見つけることができるように、お手伝いしましょう。


Track 02 悪夢
暗い。ここはどこなんだ。体が思うように動かない。前に進もうとしても足が地につかない。まるで金縛りにあったような。いや、たっだ今まで歩いているはずだ。何も見えないこの空間を手探りで進んでいるはずだ。それは勘違い。本当は動けないくせに、気持ちだけがさきに行っている。当てのない出口を求めて、精神が彷徨っている。あ、どうしたらいい。怖い、怖いよ。どんなに叫ぼうとしても声が出ない。誰も助けに来ちゃくれない。それどころか、ここには自分以外存在するものは何もない。このままではきっと死んでしまう。明かりが見える、はるか前方に。うっすらと。そうだ、あそこに行けばいい。そうしたら助かる。何としても前を進むんだ。頑張れ、頑張れ。残る力を振り絞るんだ。近づいてくる。光が近づいてくる。そうだ。もう一息だ。まだ動ける。死んじゃいない、生きているんだ。あと少し。もう少し、目の前がぱっと開けた。青空が広がっている。煌々と世界を太陽が照らしている。この風景には、見覚えがある。遥か遠い昔、自分が生まれた。一歩足を踏み出したら、がくんと前の減りになった。急激に落下する感覚に、何が起きたのか理解できずに手足をばかずかせた。落ちていく。どこも落ちていく。明るかったはずの世界はもう一遍闇の世界に戻っている。闇の底へと吸い込まれていく。どこまでも。どこまでも。


Track03 非常な現実
「あっ!!」
思わず飛び起きてあたりを見回した。薄暗くて狭い密室。暫くして、やっとここが自分の部屋なんだと気づいた。動悸が激しい。いやな汗を掻いている。自分はなぜここにいるんだろう。そう考えたら、つと涙が頬をつたった。高校を中退し、故郷を後にしてから数年経つ。ほんとうは学校をやめたくなかった。もともと勉強嫌いでろくに授業も受けず、単位が取れないばかりか、問題を起こして退学になった。自業自得だと言われただが、学校は端から俺をやめさせたがっているのは知っていた。ヤンキーで暴走族、俺は誰にも歓迎されていなかった。「こんな学校こっちこそごめんだ」そう言って、校舎から飛び出した。清々な気分になっていたはずなのに、歩きながら、いつの間にか涙を零してきた。生まれたこの町が好きだった。できればここでずっと暮らしたかった。しかし、素行が悪いゆえに、高校中退の人間に居場所はなかった。家で同然に、都会に向かった。そこにはきっと何かある。そう考えていた俺を待っていたのは、非常な現実だった。学歴もなく保証人もいない人間に、できる仕事は限られていた。そればかりか、住むところさえままならない。山谷に転がり込み、肉体労働の日々を送った。とっぱらいて現金をもらう、そのひ暮らしの生活だった。すぐに酒を覚え、金はさかないに消えていった。一年を経ったごろには、心も体もぼろぼろになった。働きにでなければ食い物にもありつけない、医者にも掛かれない。保険がないので、高額医療費はとても払えない。汚い毛布にくるむって、何日もぬのされた。地方から出稼ぎに来ているというおじさんが、「兄ちゃんこれでも食って元気出せ」とおいていってくれた焼き芋を見て、涙を流した。こんな生活にはもう耐えられない、いっそう死んでしまいたいと思った。しかし、転機が訪れた。体力がすこし回復し、ふらふらと町を彷徨っていたときに、見知らぬわかめな男に声をかけられた。
「いい仕事があるけど、こないか?」
いい仕事といわれて、何も考えずについていたら、そこは煌びやかな内装の店だった。俺は、ホストクラブにスカウトされた。


Track 04 華やかな世界
その日は、スーツを借りてテーブルに着いた。何をどうしていいか分からずまごついたが、先輩のみようみまねて客と接した。酒を飲みながら女性客と話をする。俺にとっては想像もできなかった華やかな世界に心が躍った。帰りに今日の分として、2万円を渡された。たっだ数時間客と酒を飲んで話しただけなのに、こんなに稼げるなんて、心も体も震えた。俺の世界観は一変した。住むところがないと言ったら、寮に連れて行かれた。小さい部屋だったが、これまでと比べ物にならないほど小奇麗で、家具もすでにそろっていた。これはお前の部屋だといわれて、胸が熱くなった。その日は久しぶりにぐっすり眠った。翌日からはさすがにそう甘くなかった。新人だから誰よりも早く出て、便所掃除するところからはじめなければならない。「舐めるようにきれいにしろ」と最初に言われた言葉が、俺を緊張させた。いじめにもあった。先輩のヘルプについて場を盛り上げたら、「俺の客を取るつもりか」とトイレで殴られた。喧嘩では負けない。しかしぐっとこらえた。この職を失いたくなかった。何より、居場所を失うのが怖がった。マネージャに「この世界に向いている」と言われたことが心の支えになった。仕事にも少しずつ慣れてきて、コツも分かってきた。とにかく、売り上げがなければただの時給生だ。月十万では暮らしてはいけない。寮を出され、サウナに住んでいるやつもいる。冗談じゃない。ここまで来て、惨めな生活に逆戻りするのはまっぴらだ。月一千万という信じられない額を稼ぐNO.1に憧れ、とにかくテクニック盗んだ。失敗を繰り返しながら、猛烈に勉強した。分かったことは、この世界には勘のいいやつだけが生き残れるということだった。


Track 05 疑似恋愛
要は疑似恋愛を演出する。客の心を掴むにはそれが一番手っ取り速い。時にはやさしく、時にはわがままなぐらいはちょうどいい。弱い部分や子供っぽい一面を見せ、「この人には私がいなければだめなんだ」と思わせる。それだけでなく、時には頼れる存在であることをアピールしなければならない。「君のこと、ほかのやつには分からないけども、俺には分かるよ」そう言って、気持ちを伝えるために握った手に力をこめる。すると、「どうして分かるの」と聞いてくる。「そりゃ分かるさ」ともうひとをすると、「分かっちゃった」とまだ変化を見せる。ここで一気にダムを決壊させる。「私のことを分かってくれるのはこの人だけなんだ」と。見るからにプライドが高く、肩肘を張って生きてきたような客には「楽にしちゃいなよ。もう大丈夫だから」と言って肩をたく。ここに自分の居場所があると思い始めたら締めたものだ。俺にとっても、メインでいられるところはほかにない、それは客にとっても同じことなんだ。もちろん、それですべてがうまくいくわけじゃない。「あんたには関係ないでしょう」と切り替えさればそれでお仕舞いだ。分かりやすい。それだけのことで、すぐまたほかの客に狙いをつける。客には、水商売の人間が多い。同類だと思っている。だから、共通の痛みを持っていると思わせることが大事だ。とことん口を聞いてやる。その口の中から、客のデータを収集することができる。共感しながらも逆に否定し、しかりつけることも必要だ。客は疑似恋愛に金を払う、それがエスカレートし、金銭感覚がなくなって行く、その感覚をさらに麻痺させる。高い酒を開けさせれば、それだけで金が転がり込んでくる。店内だけでなく、アフタも重要だ。そこでは徹底してうそをつく。俺の誕生日はニッカ月ごとにやってくる。そのたびにさまざまな客から高価なプレゼントを受け取る。ロンが焦げ付いている、親が入院して気毒だといえば、金も引っ張る。まるで小学生がつくようなうそを平気でつく。もちろん相手もそれを承知している。あからさまなうそを受け止めてても、俺にそばに言ってほしいと願う。逆に、「そんなうそをついてても、私のそばにいってくれる」と考える。独占欲がますますつのってくる、でも、お互いの心の底では分かっている。俺たちは金さえ渡せばついてくる、パブロフの犬だと。これはあくまでビジネスであり、ゲームだ。そして、このゲームをクリアするために、俺たちはNO.1を目指さなければならない。「私が育てたホスト」それが、彼女たちにとってのステータスからだ。商談を成立させ、結果を出す。それはどこの世界でも同じはずだ。しかし、すべてが順調というわけにはいかない。金をふんだんに持った客ばかりじゃないし、水商売以外の客が、いつの間にか、体を売った金で店にやってくるようになることがある。どんな方法で金を作ったかに興味はないが、確実ゲームオーバーが近いことを予感させるケースだ。さらに掛売り、つまり店へのつけが焦げ付いた客には、金を作る方法を教えることになる。かなり強引なやり方を教えて、そこに人間性をみてしまったら、もう商売にはならない。あくまでも俺たちは個人営業にすぎない。掛売りは最終的には指名されたホスト自身が責任を持つ。焦げ付きがぞくしつすれば、破滅するのは自分自身ということになる。これだって、世の中の仕組みと同じだ。確実なスポンサーを増やし、弱者は切り捨てていく。冷静さ、洞察力、計画性がなければ、到底生き抜くことができない世界なのだ。そして二年も経ったころ、俺はNO.1の座に着いていた。


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 楼主| 发表于 2009-8-29 21:37:47 | 显示全部楼层
Track 06  夢の終わり
もう有頂天だった。ブランドに身を固め、自信に溢れた俺に怖いものは何もなかった。店に内緒で、闇をはじめた。店外営業のことだ。店を通さなければ、それだけ多くの金が入ってくる。そのころには、確実なスポンサーは五人いた。ところが、ここで心にわずかな隙が生じたことにこの時点ではまだ気づかなかった。ホストは、客と肉体関係を持たないことが鉄則だ。その時点で疑似恋愛は終了し、金イコール生活というリアリーの現実がみえてくる。夢が終わると同時に、人間の弱さが露呈し、心に隙を作ってしまうのだ。店の中では冷静さを保っていられる。周りの目もあるし、束縛があって緊張が保たれる。ところが、店外営業はあくまで個人の自由な世界なのだ。スポンサーの家を転々とするようになり、楽なほうへ、楽なほうへと流れていく。いつしか、客の進めで、薬にも手を出すようになった。人間は弱い。それを実感するのに、そうは掛からなかった。禁断症状が進み、客からもらう薬だけでは足らなくなった。稼いだ金は薬代へと消えていく。悪夢に魘されている日々が続いた。店にでても、この世界は狂うってしか思えなかった。現実はつらいから、客はここに来る。実態のないこの世界に何かを見出そうとしている。それが分かっているくせに、見てみないふりをして溺れていく。それは、まさに今の自分だった。成績も落ちた。売り上げがどんどん下降していく。無気力なまま俺には何もかもどうでもよく感じられた。店ではだめでも、まだスポンサーたちが食わしてくれる。そう考えていたが、客も次第に離れていった。
そんなある日、ふと、一人の客が目に留まった。どう考えても、この店にくるようなタイプじゃない。金を持っているようにはとても思えないし、とにかく地味な存在だった。この世界の外では、普通なんだろうが。たまたま、そのテーブルに俺がつくことになった。
「こういう店、はじめて?」
彼女はうなずき、「友達に連れてこられた」と言った。横目で別のホストと話し込む友達を見る。そこそこ派手な格好をして遊びなれた感じがする。友達は、彼女に社会勉強させようとでも思ったのか。それともからかい半分なのか。いずれにしても、普段から仲良くしているふうには見えない。
「そう。あまりこないほうがいいと思うよ」
彼女は「どうして」と聞いた。ホストなら、どんな客も分け隔てなく接しなければならない。しかし、このときの俺は半ば焼けになっている。口の聞き方も横柄だ。
「こういう店高いじゃん。似合わないと思うしさ」
彼女はすこし表情を曇らせた。そんな様子にはお構いなしに、適度にしゃべって席を立った。後から、友達のほうについた仲間のホストから聞いた話だが、どうやら彼女は町で俺を見かけ、興味を持ったらしい。それで友達に頼んで、この店につれて来てもらったということだった。「うん、それでか」だからといって、それで興味が沸くわけでもない。別によくある話しだし。実際に俺と話していい印象を持ったとは考えにくい。もう来ないだろうと思っていら、今度は一人で店にやってきて、俺を指名した。やれやれと思いながらテーブルに着くと、開口一番こう言ってやった。
「そのうち金が続かなくなるぞ」
彼女は黙って下を向いた。それは弁えている様だった。掛売りにせず、きっちり現金を置いていく。まあ、こっちもそのほうがありがたいが、如何せん金にならない客だ。それでも通ってくるから、少しは気を使ってやることにする。高い酒は頼まないし、速めに返すことにしている。
「俺のどこがいいの?」
「ほかの人とは違うから」と彼女は答えた。
「まあ、NO.1だからな」
そう言ってから、心で舌打ちした。疾うにNO.1の座は明け渡している。今は下から数えたほうが速いかもしれない。面白くなかったが、かといって、前の気力は取り戻せない。ふと考え事をした。俺は何をしているんだろう。この世界の頂点を目指していたはずじゃなかったのか。いつの間にか薬に手を染め、落ちていくだけの存在になってしまった。店での扱いも今は最悪だ。後から入ってきた後輩にどんどん追い抜かれていく。もう未来はないのかもしれない。しかし、俺にはほかに行く場所がない。ふいに、「映画を見に行きませんか」と彼女は声をかけて来た。映画?この俺がお前と?ばかばかしいと思った。しかし、一方でたまには気晴らしもいいからと、考える自分もいた。

Track 07  普通のデート
休みの日の昼間、待ち合わせて喫茶店に入った。何を見るかまだ決めていない。彼女はあれにしようかこれにしようかと迷っていたが、俺は何でもよかった。
「好きなものしな」
彼女は、ラブストーリが好きだと言った。喫茶店を出て、映画館へと向かった。お茶代もそうだが、入場料も俺が払った。
「どうせ金ないんだろう?」
彼女は俯いて申し訳なさそうな顔をした。しかし、映画が始まるととたんに目を輝かせ、シーンによっては涙を流し、そして、また食い入るようにスクリーンを見つめた。俺は映画よりもそっちの方が面白かった。映画館を出てから食事した。食事の間も、彼女は映画の話をし続けていた。普段無口なくせに、今日はよくしゃべるなと思って顔を見ていたら、俺の視線に気づいて急に恥ずかしそうに顔を赤らめた。その普通さが、急に新鮮に思えてきた。考えてみれば、今日は普通なデートだった。その普通なデートが俺にとっては生まれてはじめての体験だった。
「本当に普通なんだな」
思わずそういったら、
「普通じゃいけないの?」と聞き返してきた。
これには俺も答えられなかった。というか、俺の中に答えがなかった。帰り道、彼女が手を繋ぎたいと言った。別に何も考えもなく手を差し出したら、うれしそうな顔して指先を少し握ってきた。中途半端は面倒なので、思い切り指を絡めたら、緊張したのか、暫く無言になった。このとき、普通って悪くないな、という思いが、頭の隅を掠めた。
そのとき、どくんと心臓が激しく波打った。と同時に、薬が切れたと、頭の中の別の自分が警告を発した。一気に汗が噴出す。俺は彼女の手を振り払うと、近くの公園のトイレに駆け込んだ。彼女の追ってくる気配を感じた。
「くるな!」
叫んだときは、もうドアは開けられていた。向こう側に立ちすくんで、青ざめた顔の彼女はいる。俺は注射器を片手にもう一度叫んだ。
「みるな!あっち行け!」
思い切り強くドアを閉めた。暫くして動悸も治まり、外に出て見ると、彼女は泣き顔でまだ立っていた。俺は早足でどんどんと歩き出した。彼女は小走りで後を追ってくる。「そんなこともうやめよう」と泣きながら追ってくる。
「うるせい。もううざいんだよ。もう二度と店にも来るな!」
俺はそう言ってタクシーに乗り込む、彼女を置き去りにしてその場を後にした。呆然と見送る彼女の姿が脳裏に浮かんだが、決して振り返ることはしなかった。以来、彼女は店に姿を見せなくなった。まだいつもどおりの生活が始まった。このごろには副作用もひどく、立て続けに何本も打たなければならないことが頻繁に起きた。そのうち店に出ることも億劫になり、パトロンの家で過ごすことが多くなった。一日中薬を打っては寝ている。飲みに行くといえば、パトロンがぽんと十万円をよこした。完全に紐の生活だった。しかし、それを疑問に思う自分は、もはやいなかった。このパトロンが俺に薬を教えた。そのせいでこんな生活を強いられている。だから面倒を見てもらうのは当然だくらいにしか考えなかった。パトロンも特に何も言わない。俺がぞばにいるだけで、満足しているふうだった。それでも久しぶりに店に出た。紐の生活だけじゃ薬代を稼げないし、なにより、自分が生きていることの証がほしいと考えていた。しかし、俺を待っていたのは、店側の冷たい仕打ちだけだった。とうに見放されていることに気づかなかった俺は、便所掃除を命じられて、体が震えた。もう、ここにも俺に居場所はなかった。


track 08 不思議工房
疲れた。店が終わって、夜明け前のまだ薄暗い道を歩きながら、ふと呟いた。今日は自分の部屋に帰って休もう。何も考えずに眠ろう。ただひたすら眠りたい。そう考えながら、見慣れた朝の繁華街の風景を後にした。
部屋に着いてべっどに腰を下ろし、ほっと一息ついたところで、心臓がどくんとなった。急に禁断症状が始まった。慌ててポケットを探り、バッグの中身を引っくり返す、家中の引き出しを開ける、しかし、ない。どこにもない。しまったと思ったときには遅かった。動悸が激しくなってくる。このままではすぐにまた幻覚症状が始まる。どこに行けばいい。どこに行けば薬が手に入る。そうだ、パトロンの家に行けばある。すぐにタクシーを飛ばした。マンションについてドアノブに手をかけたら、鍵が掛かっている。呼び鈴を鳴らし、ドアを叩いたが応答がない。合鍵出そうとポケットに手をつ込んだところで、家に忘れてきたことに気づいた。
「畜生!」
ドアに蹴りを入れてから、震える手で携帯を鳴らす、コールだけが繰り返される。しまいには留守電に変わった。
「あの野郎どこに行って上がる!」
今度はバイヤーに電話を掛けた。出ない。こいつも出ない。
「ああああ!!」
携帯を床に叩きつけて、マンションを飛び出した。どこをどう走ったか分からない。どこに行けばいいか分からない。自分がどこにいるのかも分からない。景色が回る。ついに俺は倒れこんでしまった。
「あ。。。。」霞んだ目を上げると、目の前の戸が開いていることに気づいた。とっさに這うようにそこに入って、自分が何をしようとしているのか見当もつかない。ただ、助けを求めて、何かに縋ろうとした。中は薄暗い倉庫のようだった。中央に大机があって、そこに人が座っていることが分かり、とにかく駆け寄った。目の前で見たら、それは老人だった。何かを言おうとしたが、息が切れて言葉にならない。すると、老人のほうから声をかけてきた。
「ご注文は?」
注文と聞いて、思わず老人に詰め寄った。
「は。。。早くくれ!」
「は?なにを」
「薬だよ!分かってるだろう!」
「薬は預かっておりませんが」
「何だっていいからくれ!」
机に両手の拳を叩き付けた。もう形振り構っていられなかった。しかし、錯乱状態の俺の様子をお見ても、老人はいたって冷静だった。
「内では、幸せを売っておりますが。」
今度は「幸せ」と聞いて、笑いがこみ上げてきた。
「ハ.。。ハハハ。。。。幸せだと?ハハ。。。俺の幸せは薬なんだよ!!じゃなければ、楽にしてくれよ!」
「楽に?死にたいのかな」
全身の震えがとまらない。いっても立ってもいられない。
「楽になるんだったら。。。殺してくれよ!ああああ。。。。。」
たまらず床に泣き崩れた。苦しみと惨めさと、悲しみが一気に押し寄せてきた。今すぐ死んでしまいたいと思った。すると老人が「承知しました」と言って、「注文書」と書かれた紙と鉛筆を差し出した。何を承知したのか理解する術もなく、そこで薬の名前を書き込んだ。老人はそれを受け取ると、注文書の控えと請求書、それに、住所を記した紙をよこした。
「御代は後払いの成功報酬となっております。」
「あ。。。後払い?とにかくここに行けば手に入るんだな。」
受け取った紙を握り締め、その店を飛び出した。タクシーをつかまえ、急いでその場所に向かった。
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 楼主| 发表于 2009-8-29 21:38:30 | 显示全部楼层
Track 09 売人?
着いたのは、住宅地の何の変哲もない、古びたアパートだった。そのドアを激しくノックした。すると、ドアの小さな窓口に、こちらを覗く目が見え、続いて鍵を開ける音が聞こえた。思い切りドアの戸を引いて中に押し入った俺は、声を張り上げた。
「早く売ってくれ!」
言い終わってから、目の前にいる人間を見て驚いた。店によく来て俺を指名していたあの地味な彼女は立っていた。
「お。。。お前。。。」
彼女の顔を見て、また笑いがこみ上げてきた。
「ははは。。。。そうだったのか。。。。お前実は売人だったのか?だったら早く言ってくれよ。はは。。。こいつおかしい。。。。ははは。。。。はははは。。。。」
一頻り笑ってから、彼女に詰め寄った。
「さあ速く出してくれ!」
彼女はびっくりしたような顔をしながら、首を横に振った。
俺は苛立った。
「まさか俺には売れないってわけじゃないだろうな。」
そんなものないという言葉を聴いて、切れた。
「ふざけるな!隠してるんじゃねえ!!」
女を突き飛ばして中に入り、部屋中を探し回った。
「どこだ、どこに隠した!!」
彼女は震えながら、「そんなものはない」と繰り返した。俺は台所の包丁を手に取ると、それを突きつけた。彼女は震えながらも俺を睨みつけていた。
「だから。。。。出してくれよ。。。。」
もう限界だった。俺の怒声は涙混じりの悲痛な声に変わっていた。震える手は、もう包丁を握っている握力さえない、包丁はごつんという音を立って、床に突き立った。
「ああああああ!!!!おあああああああああああ!!!」
頭を抱えて、部屋中を転げまわった。激痛と苦痛と、恐怖感に嘔吐を繰り返した。体が燃えるように熱く、まるで全身が火達磨になったような感覚だった。
「あ。。。。。。つ。。。い。。。。熱。。。い。。。。。あああああ。。。。。。」
俺はそのまま、気を失った。
暗い闇の底に、蠢く自分がいる。漂っているという方が、正しいかもしれない。体はまったく動かない。死んだのかなとも思う。それならそれでかわまない。やっとこれで楽になれる気がした。底なしの闇に、さらに体が沈んでいく。もう光が見えないから、歩く必要もない。所詮この闇の中にしか自分の居場所はない。だからこれでいい、ゆっくり眠らせてくれ。そう考えたところで、人の声がした。「おい~~~おい~~~」と自分を呼んでいる。どこから聞こえてくるか見当もつかない。それでも、声は近づいてくる。あの声は——
「親父。。。。お袋!!!」
叫んだとたん、何もないこの闇に風が吹き、一気に体が上昇した。


Track 10 俺の居場所
「あっ!!」
自分の呼吸器を通して噴出された息に、俺は現実世界に引き戻されたことを知った。うっさら目を開けると、視界の中に彼女はいた。手に団扇を持って、一所懸命に俺を煽入れる姿が見える。よこに洗面器と濡れタオルが置いてある。俺の体を拭いたのかなとぼんやりした頭で考えていた。それにしても、なんだか蒸し暑い。
「クーラーは?」
彼女は首を横に振った。
「扇風機は?」
彼女はまた首を横に振った。ああ、だから俺を団扇で振った。そう思って部屋を見回した。六畳のアパートは、嵐が去った後ように、手の施しのない有様だった。
「こんな貧乏くさいところに住みあがって」
いつものように悪態をついた。彼女は黙っていた。ふと気になったことがあって尋ねた。
「警察は?」
彼女は首を振った。こんなに暴れたのに、よく呼ばなかったもんだと感心した。
「俺が怖がったか?」
今度は首を経てに振った。そりゃそうだろうと思った。それにしても、相変わらず口数の少ない女だなと考えていたら、ふいにしっかりした言葉が聞こえた。
「普通になろう」、と。
俺は黙って彼女から目を背け、よこを向いた。目頭が熱くなったのを見られたくなかった。目から、涙がつと頬をつたった。俺は、この部屋から出直そうと思った。


Track 11 epilogue
それからは禁断症状と戦う日々だった。俺は病院で治療を受けることを拒んだ。たとえそれで回復したとしても、警察の世話になることが分かりきったからだ。彼女はそのことについて何も言わずに、勤め先に休職願いをだし、ひたすら俺のそばにいた。苦しみ、叫び、泣き喚いて暴れる俺をかんびをしつづけた。素人両方は無茶だと分かっていたが、それでも俺は、この部屋から外へ出なくなかった。店も無断でやめた。ここしかもう俺の居場所はないと思った。悪夢に魘される回数もようやく減り、すこしずつ落ち着きを取り戻したころのことだった。ある日、彼女が買い物に出かけた際に、俺は机の引き出しに、「注文書」と書かれた見覚えのある紙を見つけた。注文欄に、彼女の筆跡で「彼を助けてください」とある。そうか、あいつも行ったのか。そのまま注文書を引き出しに戻した。そして、あの老人のことを思い出し、受け取った請求書にもう一度目を通した。
「死ぬ気で生きなさい。そして、あなたを救いたいという彼女の気持ちに報いなさい。それを生涯に渡る代償として、ご請求申し上げます。
                        不思議工房」
不思議工房がどこにあったのか、まるで覚えちゃいない。たとえ彼女が場所を知っていたとしても、尋ねるつもりもない。ぼんやりそんなことを考えていたら、彼女は帰ってきた。夕ご飯の支度が終わり、小さな卓袱台で彼女と向き合う。俺は箸を動かしながら、ぼっそと言った。
「な、俺の田舎に、一度行ってみないか?」
彼女はうれしそうにうんと頷いた。もう一度人生をやり直す。そう心に誓う俺は、そこにいた。
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发表于 2009-11-13 16:12:21 | 显示全部楼层
太棒了  非常感谢~ 真的非常感谢 楼主好厉害 好无私啊~
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