「桜島」は梅崎が自分の体験した戦争を言葉にした短編小説である。簡潔で分かりやすい作品である。
一日を通じて、読み終わった。
感想を述べさせたいただくなら、私はちょっと痛みを感じる。
この作品はある兵曹が桜島に転勤され、坊津から桜島へ行く途中の見聞と桜島での生活を描いている。桜島へ行くのはしぬことと同様である。主人公が途中に出会った耳無し妓は非常に印象的であった。死ぬ前、一回でもいいから、女の愛情を感じたいという気持で、そのかわいそうな女と一夜を過ごした。後になって、桜島で苦しい生活をしている時、彼は時々その妓の事を思いだす。
「妓はどのようなものを気持ちの支えにしてきたのであろう」
耳がないから、一番うらぶれた妓楼しか行けない。この質問の答えはないと思う。支えてくれるものはもう何もないのである。ただ死ぬ勇気がないであろう。なぜなら、文中にそういうセリフがあるから。
「ねえ、死ぬのね。どうやって死ぬの。よう。教えてよ。どんな死に方をするの。」
これは妓が主人公に対して聞くのである。彼女も死ぬことを考えたのであろう。
主人公自身も自分が死ぬことがわかっても、どうしてしなければないということに納得できない。また、納得しようもしなかった。どうして死ぬのか。周囲の狂った兵士たちを見て、彼はいつもこの問題を考える。
答えはあるかなあ。
戦争のせいだとひとごとで済ませるか......
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