私の子供は四歳をすぎた女の子である。子供というものは、短期间にいろいろと人(にん)相(そう)が変るもので、过去、わが子ながら可爱いと思ったことが三度ほどあった。また、わが子ながら不器量[1]だと首をかしげたことが六度ほどあった。  
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现在は、その中间型くらいである。それにしても、可爱く思うことには変りがない。亲バカ[2]というものはみっともないものだが、正直の话、喜んで马鹿になりたいと思う。 5 q. m9 x1 w5 p; o/ h* W0 x8 T 
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9 {7 L) z2 P0 T( l7 n  D0 ~そのくせ、彼女は一年ほど前まで、あまりこの私になつかなかった。仕事部屋から追い出したり、あまり一绪に游んでやらなかったことが原因らしい。こちらが都合のいいときだけかまおうとするので、ダッコ[3]をしようとしてもにげていったりする。2 d$ `+ Q% ^- ^; ?- a: z/ j 
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パパは悲叹の涙にくれた[4]ものだ。  
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ただ、私が甘いことだけは知っていて、ママに隠れてお菓子をとりにゆこうとする企(たくら)みを抱くときのみ、「パパ、ダッコ」と私を诱う。そう言われると、このパパは身体中グニャグニャになるのである。 ; ]5 t* s6 F, S 
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しかし、最近、この経过が変った。私は不健康な自分の身体をなんとかしようと思って一大意志を奋(ふる)い起こして、体操とランニングを始めた。 " V; g. i/ M: Y% ?7 r- D7 ` 
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+ e, B' H+ g! v( u( A$ ]' e中年の男が、昼间からその辺をドタバタ走っているのはみっともないから、子供を利用することにした。いかにも子供を游ばせているふうに见せかけて、彼女と一绪にランニングをした。 % J9 O4 k; u' h0 w( s) l4 n3 @ 
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2 J1 A5 I; `1 ]9 ]3 \) {8 ^「パパ、ランニングちよう」と彼女が诱いにきる。 3 X; S3 i. y2 A& Q: b 
 
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そのうち、家から五分ほど离れた场所に空地があって、ここに土が盛られて小山をなしている场所を発见した。  
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+ [: t  E) j. G( u4 N「パパ、お山にゆこう」と彼女がいう。  
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2 R$ N! Q* c0 |$ D" A4 P' P8 m5 V私は子供と一绪に山へゆき、手をひいてかなりの急(きゅう)坂(はん)をくだらせ、ついで手をひいて坂をのぼらせた。だんだんを子供も勇気が出てきて、この顷では一人きりで滑(すべ)りながら登ったりする。 3 A4 U/ y5 `8 D% s 
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その後姿を见ながら、「小学生になったら日本アルプスに连れて行こう。女性アルピニストにしてもいいぞ」などと、愚(おろ)かな父亲は思う。  
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! J- V  Y( l: u* ~3 P. Lそんなふうに、私が彼女と一绪に游んでやる时间が多くなるにつれ、がぜん彼女は私になつきはじめた。その上、完全に甘いパパである。 0 j! O5 N4 l4 z 
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この顷では、「パパはやさしいから好き。ママは怒るからきらい。」などともいい、教育上よくないと思うが、そう言われると、自然と私の頬(ほお)はほころぶのである。 $ M3 ?: V! t, }# U( K( {/ u 
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4 Q5 h+ o* y9 Y8 _; X7 ?先日の夜半、彼女はおモラシをした。ママがパジャマをはぎとり、シーツをかえ、すっぱだかで泣いている子供に、「めー」といった。  
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1 r- G! m  S. c2 J( c3 c! a7 G私は胸がいっぱいになり、「大丈夫だよ。このパパも小さいときは、たくさんおモラシをしたんだよ。小学生になってもやったんだから。」と、なぐさめたら、妻はこわい顔をした。 + D: R, x5 [' ^- q8 f% E 
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, N$ l8 j; Z6 V8 Z+ X3 b- g( i私は调子にのり、「おまえのおじいちゃまは、中学生になってもおモラシをたのだよ。ジャンジャンおモラシをした。それでもちゃんと文化勲(くん)章(しょう)なんてものをもらった。うちは代々、おモラシを沢山したほうがえらくなれるのだよ」と言ったら、妻はいやというほど[5]私の横腹をつねった。  
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ともあれ、この父亲は至って甘く、おまけに[6]一绪に游んでやるから、子供はこれに甘えてきて、仕事场を大いに荒す。これには私も弱っているが、今のところ、可爱いて仕方がないので、まあ仕事は多(た)少(しょう)遅(おく)れてもやむを得ないくらいにおもっている。  
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' P7 A1 p* G( Pしかし、このままでは子供をダメにしてしまうから、もうすこし大きくなったら、がぜんきびしくおっかない[7]父亲になってやろうと思っているが、果してうまくゆくかどうか。  
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「マンボウおもちゃ箱」による  
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