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デリバティブ
デリバティブとは伝統的な金融取引(借入、預金、債券売買、外国為替、株式売買等)や実物商品・債権取引の相場変動によるリスクを回避するために開発された金融商品の総称である。英語のDerivativesに忠実に、「デリバティブズ」と呼ばれることも多い。日本語では派生商品(はせいしょうひん)という。
デリバティブ(derivative)は、「誘導的な」「派生した」という意味である。
特徴
デリバティブとは、基礎となる商品(原資産)の変数の値(市場価値あるいは指標)によって相対的にその価値が定められるような金融商品をいう[1]。デリバティブ取引は、債券や証券(株式や船荷証券、不動産担保証券など)、実物商品や諸権利などの取扱いをおこなう当業者が実物の将来にわたる価格変動を担保(ヘッジ)するためにおこなう契約の一種であり、原資産の一定%を証拠金として供託することで、一定幅の価格変動リスクを他の当業者や当業者以外の市場参加者に譲渡する保険(リスクヘッジ)契約の一種である。市場で取引される債券・商品には「標準品」「指数」があり、個別商品の先渡契約(forward)は一般にデリバティブに含まない。
デリバティブ取引の特徴として次のことがある。
* レバレッジ効果を持つこと(少額の資金で、多額の原資産を売買した場合と同じ経済効果が得られる)。
* リスクヘッジ効果を持つこと(将来の取引を現時点で確定したりするため、リスクを抑制できる)。
* かつては損益確定までは財務諸表に計上されない(オフバランス)取引であったため決算粉飾の温床とされていた。
デリバティブはレバレッジ効果を有するため、たびたび投機的な運用資産として、多額の損益を生じ、問題となっている。英国のベアリングス銀行や米国のカリフォルニア州・オレンジ郡など、運用セクションによるデリバティブの運用の失敗により、企業は元より地方行政の存続に大きな影響を与える事件は後を絶たない。現在では、多くの会社ではデリバティブへの投資に対して、リスクをモニタリングする仕組みが導入されている。銀行業の場合は、BIS規制や金融検査マニュアル等でそのデリバティブの運用に対する体制整備が求められている。
デリバティブの歴史
* オランダのチューリップ相場(チューリップ・バブル)
* 1730年に設立された大阪堂島の米相場
デリバティブの種類
先物取引
先物取引とは、将来の定められた時点(清算日)に、特定の標準化商品(穀物などの農産物・石油などの鉱物のうち標準的な指標となる特定銘柄)あるいは経済指標(為替レートや日経平均株価 = 日経225など)を、定められた数量、定められた価格で、売買することを保証する取引の一種で、先物取引(futures)は先渡し契約 (forward)とは異なり、取引の対象とする原資産の価額(単価×数量)の一定%を担保(証拠金)として支払うことで一定範囲の価格変動リスクを保険 (リスクヘッジ)する契約であることに特徴がある。
取引の大部分は、期日までに反対売買を行い、買値より値上がりしている場合は差額を受け取り、値下がりしている場合は差額を支払うことで決済される差金決済である。このため、その商品を最終的に入手したい実需家(当業者)が調達市場としてこの取引市場を利用することは前提としていない。一方で、価格形成の「読み」や期待が実需家(当業者)以外の広範な市場参加者から持ち寄られる特性があり、現在価格が安すぎると思う場合には買建て、高すぎると思う場合に先物商品が売建てられることで、期待や予測の反照として実物商品の価格がつよく影響を受ける関係にあると考えた方がよい。実物を取り扱う市場参加者や当業者にとっては対象となる実物価格と先物市場での売買価格との差を利用した裁定取引が可能であり、実物価格は先物価格と連動することが多い。
有価証券先物取引
標準品を対象とした先物取引で、差金決済が前提であるが実物による受渡も可能。
* 長期国債先物
* 超長期国債先物
* T-BOND 先物取引
有価証券指数等先物取引
複数銘柄から算定された数値(指数)を対象とした先物取引。差金決済のみ。
* TOPIX 先物
* 日経225先物
* 日経300先物
通貨(為替)先物取引
外国為替証拠金取引におけるリスクヘッジ商品として、3ヶ月・6カ月など限月を設定した取引。
* シカゴ・マーカンタイル取引所為替先物
金融指標等先物契約
通貨の価格や株式・債券価格、利率など一定の金融指標について、約定の数値と将来の実際の数値との差に基づく金銭の授受を約束する契約である。
商品先物取引
穀物(コメ・大豆など)、砂糖、石油、貴金属(金・銀・白金)など
スワップ取引
スワップ取引とは、あらかじめ決められた条件に基づいて、将来の一定期間にわたり、キャッシュフローを交換する取引である。
金利スワップ
同一通貨のキャッシュフローを交換する取引で、固定金利と変動金利を交換する取引が代表的なものである。この取引における金利に係る元本は想定元本と呼ばれ、実際には交換されず、単に利払金額を算定するための名目的なものである。円の金利スワップは特に円円スワップと呼ばれる。また、変動金利同士を交換するスワップ取引はべーシス・スワップと呼ばれる。
通貨スワップ
円とドルなど、異なる通貨のキャッシュフローを交換する取引をいう。外貨建債権・債務の為替リスクのヘッジなどを目的として行われる。通常は、金利の交換のみならず、取引の開始及び終了時点で元本の交換も行われるが、元本の交換を伴わない通貨スワップを特にクーポン・スワップと呼ぶ。
為替スワップ
直物為替と、反対方向の先物為替とを組み合わせたスワップ取引をいう。
クレジット・デフォルト・スワップ
定期的な一定金額の支払と引替えに、特定の債権に関して一定の信用事由として規定された事由の発生があったときに一定の額を支払うことを約束するもの。信用リスクとリターンを第三者に移転させるものであり、保証に類似する。
エクイティースワップ
片方または両方のキャッシュフローが株価、あるいは株価指数に連動しているスワップ取引。
債券
国債や社債などの債券は、実物を個別に直接売買することが可能であり、それ自体は派生商品(デリバティブ)ではないが、債券価格は市場の金利動向によって決定されており金利を原資産とするデリバティブとしての側面を強く持つ。金融工学における債券のプライシング理論では、金利を原資産とするデリバティブとして評価されることが一般的である。
オプション取引
オプション取引とは、ある原資産について、あらかじめ決められた将来の一定の日または期間において、一定のレートまたは価格(行使レート、行使価格)で取引する権利を売買する取引である。原資産を買う権利についてのオプションをコール、売る権利についてのオプションをプットと呼ぶ。オプションの買い手が売り手に支払うオプションの取得対価はプレミアムと呼ばれる。対象となる取引によって種類が異なる。代表的なものは次のとおり。
* 通貨オプション
* キャップ
* フロア
* カラー
* スワップション
* デジタルオプション
デリバティブの数理
デリバティブのプライシング理論は、金融工学の主要なトピックである。有名な「ブラック-ショールズ方程式」は、ヨーロピアンオプションの評価式である。デリバティブのプライシング理論は、文科系出身者が多い銀行業界では、「難しい理論であり、一部のクオンツだけのもの」とされることが多く、金融業界では「デリバティブは35歳を過ぎたら習得できない」などど言われることが多い。(実際、デリバティブの数理では、確率微分方程式が出てくることが多い。)しかし、近年ではファイナンス系の大学・大学院が増えていること、デリバティブに関する書籍・解説書が増えており、デリバティブの数理に対する敷居は徐々に下がっている。
デリバティブの危険性
数学者藤原正彦はその著書『国家の品格』(2005)の「第一章 近代合理精神の限界」において、デリバティブの危険性に警鐘を鳴らしている。 |
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