本作は小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の実質的な続編というべき作品であり、正確かつ厳密には劇場版とはつながらない。その大きな違いとして、クェス・パラヤが誰に殺されるかにある。劇場版ではチェーン・アギだが、小説版では本作の主人公であるハサウェイ・ノアがクェスを殺してしまう。
クェス・パラヤの記憶にとらわれながらも、己の信念に基づいて戦い抜くハサウェイ・ノアの物語。宇宙世紀におけるアムロやシャアの世代の物語に、ひとまずの決着がつくエピソードでもある。
著者の富野由悠季は、この小説を書いているとき、ブライト・ノアの悲劇的な境遇(処刑されたマフティーが実は息子のハサウェイであり、自分が彼を処刑したと報道されたこと)を思い、彼のために涙を流したと言われている。
あらすじ
伝説のニュータイプ戦士アムロ・レイと、人類を粛清しようとしたシャア・アズナブル。後に「第二次ネオ・ジオン抗争(シャアの反乱)」と呼ばれる戦火の中、少年ハサウェイは、その二人の男の生き様を目の当たりにした。そしてもう一人、彼の前に現れたクェス・パラヤという少女は、その戦争を子供のあどけない瞳で見て、その感性を飽和させて死んでいった。そして、その戦いの中で彼もまたニュータイプとして萌芽しつつあったが、その若い目と耳で、初恋の少女の死を目の当たりにし、地球のために戦い宇宙の戦場で死んでいった多くの人々の魂の声を聴いた。
宇宙世紀0105年、第二次ネオ・ジオン戦争の時は少年であったハサウェイは青年となっていた。しかし、シャアの反乱より10年あまりが過ぎても、地球連邦政府の高官ら特権階級の人々は地球を汚染し「人狩り」とも呼ばれる強引な手段で民衆を宇宙に送り出していた。地球を私物化しようとする地球連邦政府の特権階級の専横と腐敗を知ったハサウェイは、それが人類の可能性に賭けたアムロ、地球を保全しなければならないと自ら大罪を背負おうとしたシャア、そして地球のために戦い死んでいった全ての人々の行為を無意味にすることに気付いていた。
そんな中、「マフティー・ナビーユ・エリン」を名乗る人物が軍を率い、腐敗した特権階級を襲う。彼の行状はテロリズムであるにもかかわらず、民衆、特に抑圧された状況が続くスペースノイド達に受け入れられた。そしてそのマフティーの中には、影武者のリーダー、マフティー・ナビーユ・エリンとなり連邦政府に戦いを挑むハサウェイの姿もあった。ハサウェイは、アムロから「ガンダム」を、シャアから「地球を保全すべき」という遺志を受け継ぐ戦士なる……。
マフティーの討伐を命じられたケネス・スレッグ大佐は、特権階級専用往還シャトル「ハウンゼン」で地球に降下する。そのさなか、植物監察官候補として地球に降下しようとしていたハサウェイ・ノアと、このシャトルには似つかわしくない少女ギギ・アンダルシアと出会う。しかし大気圏に突入を開始したとき、突如マフティーを名乗る集団にハイジャックされる。機内にはアデレートで行われる連邦議会に出席するため、地球連邦政府高官らが多数搭乗していた……。 |