そして扉が閉ざされた
作者
岡嶋 二人(おかじま ふたり)は日本の推理作家であり、井上泉(いのうえ いずみ、1950年~、多摩芸術学園映画科中退)と徳山諄一(とくやま じゅんいち 、1943年~、法政大学経済学部中退)によるコンビのペンネーム。名前の由来は「おかしな二人」。
本編は、男女2人ずつ、計4人が核シェルターの中に監禁された場面から始まります。これは、事故死したとされる富豪の令嬢・三田咲子の母親が、娘の死因に疑惑を抱き、娘と交流があった4人を監禁して監視することにより真相を炙り出そうとする試みなのです。そして、物語は最初から最後までシェルターの中で展開されるのです。時折挿入される回想シーンにより、咲子の死の前後の状況がデータとして提示され、それを元にシェルターの中の4人は推理を始めるのです。果たして咲子の死は自殺なのか殺人なのか、殺人だとしたら、4人の中に犯人が居るのか、それとも…
限定的な状況を設定したことが、とてもスリリングな効果を生み出しています。特に、中盤から終盤にかけて提示される様々な推理によって解決が二転三転する様は、本格ミステリの醍醐味のひとつ。しかも、事件が鮮やかな解決を見たあとは、伏線の提示のされ方も見事だったことを思い知らされます。
難点(あくまでも個人的な感想ですよ)を挙げるとすれば、登場人物の描写がやや弱く、魅力に欠けることでしょうか。文章そのものはとても読みやすいため、却って各人物についてのデータが頭に入り難いように感じるのです。
ともかく、純粋に本格ミステリとして見た場合、間違いなく“傑作”です。本作が存在するというだけで、“本格”ファンの間で「岡嶋二人」は永遠に語り継がれるのではないでしょうか。 |