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5sで仕事の改善、効率アップ
今回は5sをご紹介いたします。皆様にとっては「5s(ゴーエス)は聞きなえない言葉かもしれませんが、
社会人、とりわけ製造業の社員にとっては、仕事をする上で欠かすことのできない視点だと言えます。
最初はその意味を聞いて「なんだ、そんなことか」とうもわれかもしれませんが、読み進めるうちに、
当たり前のころを当たり前にやることの大切さと難しさを実感するはずです。そした、5sもまたその根底
に流れているのは「仁(=心)ありて礼(=形、ルール)あり、礼ありて仁あり」という考え方だということを
再認識して頂きたいと思います。
1.5sとは?
①5sは5つの言葉の頭文字
5sとは、以下の5つの言葉のローマ字の頭文字のsをとってつけられた名称です。
●整理 (s e i r i)
●整頓 (s e i t o n)
●清掃 (s e i s o u)
●清潔 (s e i k e t s u)
●躾 (s i t s u k e)
②5sの目的
まず第一に認識して頂きたいのは、5sの目的は単に「職場をきれいにする」こと
ではなく「仕事をやりやすくし、効率をあげ、究極的には企業・社員とも、その品性を高める」
ことにあるということです。以下にご紹介する1つ1つの言葉の定義を理解すれば、自ずと
おわかり頂けると思います。
③5sの具体的な意味合い
5しゃ、社会人として当然身につけるべきことですが、実際は「言うは易く、行うは難しい」
です。また、すべてなにげなく使っている言葉ですが、その意味合いをしっかり把握している
人は意外と少ないはずです。例えば、皆さんには整理と整頓の違いがわかるでしょうか?
普段整理・整頓と熟語のようにつかっていますが、整理と整頓とは意味が違い、それに対する
行動も別なのです。5sのsは、概ね次のように定義づけることができます。
●整理 雑多なものの中から要るものと要らないものを分け、要らないものを処分すること。
●整頓 整理の次の段階で、必要なものをいつでも誰でも取り出せ、使える状態にしておくこと。
●清掃 ゴミなし、ヨゴレなしの状態にすること。基本は掃除や手洗い。
●清潔 ゴミなし、ヨゴレなしの状態を保つこと。つなり、清掃を習慣化すること。
●躾 文字どおり「身を美しくする」こと。換言すればきめられたことを正しく守る習慣を
つけること。規則にしばられるのではなく、自らを律する規律が求められる。
2.5sの特徴と難しさ
①5しゃエントロピーの法則の典型
皆さんはエントロピーの法則をご存知でしょうか?エントロピーの法則というのは、「物事は
ほったらかしにしておくと必ず無秩序にむかう」という物理法則です。これを5sにあてはめると、
「かたづけても必ずまた散らかる」、言い換えますと、常にかたづけるという動作を継続
しなければ、整理・整頓は持続されないということです。この継続性・習慣性というところに5sの
やっかいさがあります。
②システム思考が不可欠
継続性・習慣性ということになると、やる気根性論では限界があることは自明です。それを
無視して「ルールを守れ!」と繰り返し呼んでも、効果は一時的なものに終わります。それよりも、
ルールが「守られるような、守りやすいような、守らざるを得ないような」仕組みに改める方が
効果が持続するでしょう。そして、新たな仕組みを実現ためにシステム思考が欠かせません
(詳しくは後述します)。
③「やらされた」5sでは改善はできない
5sが持続しない最大の原因は「やらされている」という感覚です。これは何も仕事に限った
ことではなにでしょうか。「やらされ感」のやっかいなところは、「やらされている」と思った瞬間
から創造性がシャットアウトされてしまうというところにあります。というのは、もとから5sの進化に
は個人のちょっとした気付きが大きな力を持っているからです。いかに「指示されてやらされる」
のではなく「自発的に行う」かが、5s持続のポイントの1つと言えます。
④新入社員は、ある面5sのトップランナー
自発性と創造性という意味では、新入社員の方々が5sの推進者としてもっともふさわしいと
言えます。先輩達にとっては当たり前になっている仕事の進め方も、新入社員にとっては何も
かもが新鮮だからです。しかも5sに関しては実務ほど知識や経験を必要としません。皆さんも
是非幼児のように「これなあに」「なぜ、なぜ」という気持ちを忘れずに5sにチャレンジして
いただきたいとおもいます。
3.システム思考のすすめ
①システム思考とは
システム思考とは人間の行動を楽にするための工夫を仕組みにしたものと言えます。従って
システムというからには、誰でもが簡単に活用できるものでなければなりません。
つまり
●より正しく
●より早く(速く)
●より安く
●より安全に
をより楽に達成しようというのがシステム思考の原点です。
「楽になる」ことを考えるなら皆様も大のどくいのはずです。また、システム思考というと
大発見を想像するかもしれませんが、ほんのちょっとした改善でもかまわないのです。特に5s
の場合は、以下の事例のような「ちょっとした改善」の積み重ねが大事なのです。
〈事例1〉
インキの缶にインキがこぼれて品名番号がみえにくくなってしまう。そこで缶のふたにも品名
番号を記入することにした。この場所なら汚れにくいし、誰でも一目でわかる。
〈事例2〉
製品箱を手で持ち撙螭扦い俊4髩渲丐盲俊¥饯长窍浃味畏eみ可能な位置にロコをつけたら
非常に楽になった。
〈事例3〉
書類の押印の位置が書類ファイルのバインダー金具のあたりにあり、押印がしづらかった。
そこで押印の場所を変えた。
〈事例4〉
小さくて重いものや、カサが高くても軽いものがある。それらを持ち上げたときに重量が
わからず重さの感覚を間違えてギックリ腰になりそうになった。そこで箱に重量表示をして
重さがわかるようにした。
〈事例5〉
並べた資料の背表紙に斜めの線を引いた。不足しているのかそろっているのかが一目
でわかるようになった。
②アイデア創造に役立つスキャンパーの法則
ちょっとした気付き、アイデアといっても、実際はそうそう次から次へと生まれてくるもの
ではあります。そんな私達の創造性の弱さをカバーしてくれるありがたい法則があります。
それはスキャンパーの法則と呼ばれるもので、新商品開発などには必ず活用されて
います。スキャンパーとは、以下の英語の頭文字をとったものです。
s=substitute? (代替)
c=combine? (复合)
a=adapt? (适合)
m=modify?Magnify?Minify?
(修正・大型化・小型化)
p=put to other uses? (新用途)
e=eliminate? (省略)
r=reverse?Rearrenge? (逆转・再编)
例えば携帯電話は電話ボックスまでの移動を省略させてくれるばかりか、今ではパソコン
の代替手段プラス小型化になっています。その結果電話という従来の用途とは違った
新用途が脚光を浴びています。このように、優れた製品サービスは、必ずと言って良い
ほど、スキャンパーの法則に合致しているのです。
皆さんもこれから5sの改善を図る時、スキャンパーの法則に基づき、以下のようなことを
チェックしてみるとよいと思います。
s=他のものをかわりにしたら?他の要素にしたら?他の順序にしたら? など
c=組み合わせにしたら?アイデアを組み合わせたら?目的を組み合わせたら? など
a=手本はないか?真似できるものはないか?過去に似たものはなかったか?など
m=音、形、場所、時間、方向、配置、姿勢、文字、言葉、大きさをかえたら?など
(修正・大型化・小型化)
p=他の使い道はないか?改造して新しい用途は?そのままで新しい用途は?
e=なくしたら?とってみたら?減らしてみたら?
r=反転したら?前後(左右)を逆にしたら?上下を変えたら?
再整理、配列をし直したら?
4.5s推進の方法
一言で5sと言っても、その方法には様々なものがあり、時と場合によって取るべき方法
がかわります。「どの場合にはどの方法なのか」ということを念頭に置きながら以下の
事例をお読み頂きたいと思います。
①赤札作戦
赤札作戦とは、赤い札を使うことによって工場のアカ(不良)を誰でもがわかるようにし、
整理するやり方です。
⑴b5くらいの大きさの赤い紙を用意し、あらかじめ品名・数量・所属・理由などを書く欄
を印刷またはコピーしておく。(図1参照)
⑵再庫や機械設備(工具や車両も含む)、スペース(床や通路、棚など)など、赤札を
貼る対象をきめる。
⑶赤札を貼る基準をきめる。
⑷赤札を貼る。貼る際のポイントは、第三者的立場の人が「鬼になって、冷たい目で、
疑わしきは貼る気持ちで」貼ること。
⑸対処する。赤札が貼られた場合は不良品、死蔵品は廃却処分するように保管責任
者へ提言。滞留品は置き場に移動。端材は要・不要を判断し、不要は廃棄処分する
ように保管責任者へ提言。
図1 赤札作戦
赤 札
品名 no.
数量 所属
理由
②vm法
vm(visual motivation)法とは、写真・スライド・ビデオなどを活用して5s改善を進める
方法で、普段見慣れた場所も、写真などで見ると新鮮でかつ問題点の多いことに
驚かされます。
⑴撮影
問題点を撮影する。日付が入ることと、カラーであることが望ましい。機密に触れる
ところは対象からはずす。
⑵回覧
撮った写真をアルバムに貼って回覧したり、ビデオの上映会を行う。
⑶ディスカッション
全員参加によるディスカッションを行い改善のアイデアを出す。
⑷改善の実施と報告
改善前と改善後の写真を比較対照し評価を加える。
③定点撮影
定点撮影は同じ位置から同じ高さで同じ方向に同じ対象物に対して、継続して
撮影していことです。進行状況が時系列的に目で見てわかるので励みになる、
全員が同じものを見ながら話し合うことができる、などのメリットがあります。
⑴定点撮影
床に定点のマークてその上に立ち、対象物のポイントにマークをつける。
対象物のマークにカメラのピントを合わせて撮影する。
⑵チャートに貼る
定点撮影チャートの第一段階のところに撮影月日を記入して写真を貼り、
評価点を記入。評価点は低いレベルから高いレベルへ1,2、・・・5とする。
⑶改善したら写真を追加する
対策をして改善したらその都度撮影し、時系列的に追加して写真を貼る。
④目で見る管理
目でみただけで正常か異常かがわかるようにする管理方法で、目でみて
判断できるので作業者・従業者の全員が参加できるなどのメリットがあります。
例えば、金切りのこ・スパナ・ハンマーなど工具の外形をボードに描いておき、
その位置に外形に相当する工具を掛ける方式の工具掛けボードは、工具
の紛失を防ぐことができます。
⑤看板作戦
看板作戦は、在庫機械設備などを対象として展開する「整頓」のための手法で、
例えば、機械設備について、その機械設備は何のために誰が使うのかを
分かるよう看板を掲げることが挙げられます。(図2参照)
図2 看板作戦
工程名 Ο Ο Ο
担当者 山田 一郎
取得 1990.11.2
5. 5sのチェックポイント
①整理のチェックポイント
整理してする、つまり「要るものと要らないものを区分して不要なものは捨てる」際、
最も大切なことは、第一次審査と第二次審査の二段構えで行うことです。なぜなら、
ある職場では不要でも他の職場で使うかもしれないし、今はいらなくても近い将来 おう。
必要になる、或いは毎年ある期間だけは使用するということがありうるからです。
②整頓のチェックポイント
整頓=要るものを整列し、いつでも取り出せるようにするに当たって大切なことは、
置き場所を決め、かつ置き場の表示を怠らないことです。置き場を決める時には、
他の品物の邪魔にならないようにする、取り出しやすいように置く順序を決める、
といったことに留意しましょう。表示は棚や床に置くものはもちろん、掃除用具や
スクラップなども置き場表示することが求められます。
③清掃・清潔のチェックポイント
清掃・清潔については、「整理・清掃も重要な仕事」という考え方の浸透が重要です。
また品質保証や設備機械の故障予防など、企業経営にとって欠かすことのできない
事務上の意味あいがあることを理解する必要があります。
④躾のチェックポイント
躾は5sの一番最後にきていますが、考え方として他の4つに先立つものです。何は
ともあれ躾なのです。企業においては、躾の中でもっとも重要なのはあいさつです。
あいさつは「人と人の心を結ぶ架け橋」であり、コミュニケーションのベースです。5s
の基本中の基本だとおもってください。 |