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楼主 |
发表于 2010-6-20 12:13:07
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<紹介>
「ねじまき鳥クロニクル」から派生した話。それに含まれてもよかった、といわれる話。
そして、これを読めば「ねじまき鳥・・・」の電話の謎の女の正体がわかる、とどこかで目にした気がした。
で、そんな先入観からこれは読んでおかねば、と期待して読みはじめた。
そしたら、「ねじまき鳥・・・」とは全然違うおはなしでした。
主人公は、めずらしく子供がいる。これは、本当に珍しい。
それにより、恋愛が中心のテーマなんだけれど、世間一般的には不倫になりますわな。
運命の女性と再会しても、妻も子供も仕事もあってそう簡単に、愛する女性に走れない中年男性の葛藤。
そんなものが、描かれています。
というか、37歳という、村上氏の主人公にしては高齢な男性の自伝的な要素が強い。
これは、家庭を持ったお父さんが1番よくわかる話ではないかな。
今回、私は、まったく感情移入できなかった。
しかし、なぜか印象に残る話。
おそらく、最後のどんでん返しが心に残ったからだろう。
構成的には非常によくまとまっている。
誰しもが経験した、あるいは経験するであろう人生の段階が示されている。
きわめて現実的に。
以下、ネタばれ含みます。未読の方はご注意を。
<率直な感想>
読み終わってからのまずの感想。
わたし、女でよかった・・・・・・。
恋愛する相手が男でよかったよ。
決して、女とは恋愛したくない。
怖すぎます。イズミ。
イズミのあの部分だけでも十分ホラーとしてジャンルを分類できそう。
島本さんは、ヒロインらしく、とても魅力的だった。
村上氏の好みのタイプってのはなんとなく想像できます。
地味だけれど芯が強い。(島本さんの場合とても綺麗だそうですが)
そして薄幸。
小学生で、運命の女性と出会って恋に落ちた、だなんてまずない話に思えるけれど、
その女性となかなかめぐり合えず、やっと再会できたと思ったら、
自分には、守るべきものがありすぎる、という非常に現実的な立場に立たされている今回の主人公ハジメくん。
そのせいで、とても優柔不断な性格になっている。
妻に妙に優しくしたり、典型的な浮気男の行動を実践しています。
この作品をみると、運命の相手とあまり早く出会いすぎるのもあれなのかな、と思ってしまう。
しかし、遅すぎても・・・・・。
まさに、スタークロスト・ラヴァースですな。
なかなかめぐり合えない。
お互いに求めているのに。
最後までミステリアスな島本さんだったけれど、僕が彼女を選ぶ、と決心し、
そして、2人がついに結ばれた後に完全に、姿を消してしまう。
「明日すべてを話すわ・・・・」
といっておきながら、次の朝にはいなかった。
そして、僕が出した推論としては、彼女はすでにこの世にいない。
しかも、そもそも・・・・・・。
という、彼女の存在自体を疑問視するエピソードもこめられて・・・・。
と、くれば俄然、寓話的な要素を帯びてくる。
彼女はどこの世界から、ハジメくんに会いにきていたのだろう、とか想像は膨らみます。
「国境の南、太陽の西」
素敵な題名だな、と思っていたら、語られる太陽の西の話も素敵だった。
ヒステリア・シベリアナ。
太陽の西をもとめて延々と歩きつづける男。
なんて、ロマンチックなんだろう。
普通、ロマンチックというのじゃないのかな。
しかし、「何かが切れる瞬間」というのは、どうやら誰の人生にも訪れるもののようですな。
最後の「海に降る雨」という描写。
とてもよかった。
彼の心中がリアルに伝わってくる。
なにかが損なわれてしまったものの哀しさというべきものが。
だらだら事もなくおわったりせず、いつもラストを楽しませてくれる作者さんです。
<ハジメくんの人生について>
本作品の主人公である「僕」の人生について考えてみたいと思います。
彼の生き方は正しかったのか、間違っていたのか。間違ったとしたらどこから間違えてしまったのか。
もちろん、人生に間違いもなにもない。だけど、ハジメくんの生き方を通して、
人生について考えてみたいなって思っただけ。
そんな気分です。
まず、ハジメくんの初恋ともいうべき、そして運命の恋である、島本さんとの出会い。
一人っ子であり、孤独だった彼は、同じく一人っ子の島本さんと深く共鳴する。
2人はいろいろなことを語り合い、経験する。
2人だけの時間を共有する、それだけでよかった。
まだ12歳で、恋心というものを軽く自覚できても持て余してしまうほど幼かったけれど。
とても、大切な時間だった。
というか、こんな小学生はまずいないと思うけれど。ふたりとも冷静すぎる。
12歳からこんなに達観してしまっていては、これからの人生はさぞ退屈なものだろう。
それはさておき、そんな2人に別れがやってくる。
卒業という、自然な別れ。
明確な関係を持っていなかった「僕」と島本さんは、気持ちと裏腹に遠ざかっていく。
普通の人は、これでほろ苦い思い出として初恋が終わる。
しかし、この2人の場合、そうじゃなかった。
お互い、どこかでそれぞれのことを思いつづけていたようです。
別の恋愛をしようが。
これは、なんなんでしょう。
ハジメくんの場合、まるで、常に島本さんの影を追い求めて生きていたように思える。
イズミとつきあっていても、有紀子と結婚しても。
理想の相手として、島本さんが永遠のマドンナとして形作られている。
理想のタイプ、というのは誰にでもある。しかし、それは架空の存在であり、そんな人が現実にいるわけがない、とわかっている。
だが、ハジメくんの場合、実際に存在していた。
というか、あまり知らないから理想的な存在として想像だけが膨らみ、記憶だけが一人歩きしてしまった。
そして、二度とあえないと思いながらも、一度存在したのだから、どこかにいると期待してしまっている。
だとしたら、彼女以外では、満足できないし、幸せにもなれない。
有紀子さんとももちろん幸せな結婚生活を送っていた。
しかし、それがどこか借り物の人生のように感じていたのなら、それは実体のない想いでしかない。
つまり、未成熟な子供のときに、形作られてしまった理想像が頂点にあり、そのあとの思考などそれを前提にしたものなのだから、
敵うわけがないのだ。
なにをしていてもどんな恋愛をしても。
それなのに、島本さんと再会したときに、「借り物」と感じていた人生にがんじがらめに絡み取られていて、
身動きが取れなかった。
迷う、必要もなかった。
彼女の手を取り、すべてを捨ててしまえばよかったのだ。
しかし、それができなかった。
「現実」という37年間の人生を前に、躊躇してしまったのだ。
思慮深くて慎重な彼の性格が、ここで裏目にでてしまった。
悲劇としていいようがなく、そして、それゆえに、彼の葛藤は、現実味を帯びている。
・・・・・恋愛について考えるつもりが、島本さんだけでこんなになってしまったが、
要は、すべてタイミングというものなのかな。
「僕」の好みは、一貫している。
イズミと有紀子が入れ替わってもなんら変わりはない。
彼女たちは、島本さんよりは下位なのだから。
彼女たちの運命を分けたのは、ハジメくんと出会った時期、それだけ。
そう思うと、イズミは不憫で仕方がない。
高校生なければ、浮気を許せただろうし、あんなに深く傷つくこともなかったのだ。
そのあとの人生を犠牲にしてしまうほど。
しかし、運命の恋とはなんなんでしょう。
そんなものは、信じてはいませんが、もしあるとすれば、
一人に一つだけしか与えられない、最高の半身、そんな相手がいるとしたら・・・・・。
うまく、めぐり合わないだけで、本人たちを不幸にするばかりか、周りの人まで迷惑こうむる。
もっとも、これは「僕」のお話だから、イズミや有紀子は運命の相手に出会えなかったってことになる。
そう考えると、運命の恋っていうのは、無数にある星のきわめて貴重な引き合いのようなものなのか。
しかも、片方が破滅的であると、もう片方も破滅にむかう。
むしろ、島本さんは死者であろうが、ハジメくんを一緒に連れて行くべきだったのだ。
ハジメくんに残された人生にどれほどの価値があるのだ。
彼はもう空白でしかなく、海に降る雨しか、考えることができないのに。
それでも、彼は生きていくしかない。
それもまた、現実の人生というものでしょう。
だからこそ、僕の物語はそこで終わる。
幻想もない人生になんの価値もないから。 |
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