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めくらやなぎと眠る女

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发表于 2010-6-20 12:38:03 | 显示全部楼层 |阅读模式
村上春樹/著

『象の消滅』に続いてニューヨークで編まれた、著者自選短篇集!

短篇作家・村上春樹の手腕がフルに発揮された粒ぞろいの24篇を、英語版と同じ作品構成・シンプルな造本でお届けします。「野球場」(1984年発表)の作中小説を、実際の作品として書き上げた衝撃的な短篇「蟹」、短篇と長篇の愉しみを語ったイントロダクションなど、本邦初公開の話題が満載!

 『蛍~』 は一番最初に所有した春樹さんの本でもある。そのせいで好きだというのも大きい。この作品は 「蛍」 とともに 『ノルウェイの森』 に発展していく話で、もっと世間的に認められていいはずなのに、好きだという人を見たことがない。
 物語は2部構成になっている。一つは 「僕」 と、少し耳の悪い14歳のいとこが、耳の病院に行く話。一つは高校時代の 「僕」 と友だちが、入院している友だちの彼女を見舞いに行く話
 二つの話は、友だちの彼女が入院の間に書いたという 「めくらやなぎと眠る女」 についての詩で結び合わされている。めくらやなぎには目では見えないほど小さな蝿が住みついている。女の頭の中にはその蝿が入り込んでいる。そのせいで女は眠りつづける。同じ蝿がいとこの耳にもぐりこみ、彼の耳を聞こえなくさせている。
 いとこは14歳の男の子で耳が少し悪い。片耳だけが聞こえにくいのだが、時にはもう片方の耳にも不調が及び、時には両方の耳が全く聞こえなくなる。それは器質的なものというより気分に左右されるものだという。
 私の友だちにもそういう人がいた。日によって片方の耳が聞こえにくくなるのだと言っていた。それが私が個人的にこの話を好きな理由でもある。
 村上春樹の短編は寓話物が多いが、この話はリアリズム文体でかかれている。たぶん読みやすいと思う。
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 楼主| 发表于 2010-6-20 12:38:55 | 显示全部楼层
「めくらやなぎと眠る女」(『蛍・納屋を焼く・その他の短編』所集)と、後に書き直された別ヴァージョン「めくらやなぎと、眠る女」(『レキシントンの幽霊』所集)の異同、そしてそれらの『ノルウェイの森』との関係について

周知の通り『ノルウェイの森』は、短編集『蛍・納屋を焼く・その他の短編』の中の「蛍」という作品世界を広げたもので、「蛍」は『ノルウェイの森』のなかにすっかりとりこまれています。そして同じ短編集のなかの「めくらやなぎと眠る女」の話もまた『ノルウェイの森』の主人公(「ワタナベ君」)とキスギ、直子に関する高校時代のエピソードとして『ノルウェイの森』に引用されます。

しかしこの二つの短編をつなぎあわせた世界と『ノルウェイの森』の世界との間には、少しばかりのギャップが存在しているように感じられます。特に『ノルウェイの森』ではじめて登場する直子の姉の自殺というエピソードは、直子がキスギの自殺以前にすでに病んでいたことを印象づけますが、「めくらやなぎと眠る女」における直子からはそのような性格を読み取ることができません。

村上春樹自身このようなギャップを『ノルウェイの森』執筆後に感じたらしく、彼は「めくらやなぎと眠る女」を書き直すことで、この溝を埋めようとしたものと考えられます。

『レキシントンの幽霊』に収録された「めくらやなぎと、眠る女」という短縮版は、作者によれば、原稿量として4割減にダイエットされているのだそうですが、実際には「ダイエット」だけではなく、書き加えられてあるところがあるのです。そして、その加筆は「めくらやなぎ・・・」という作品における「死」の意識を強め、また『ノルウェイの森』との連続性を高めるように行われています。

そのような加筆部分を作品のはじめからみていきましょう。

まず205頁、主人公の「僕」は従兄弟から、高校時代の頃について尋ねられます。主人公と従兄弟が、その時乗ってるバスが、「僕」が高校時代通学に使っていたバスで、「僕」が従兄弟にそのことを話したからです。そしてその高校時代の友達について、従兄弟がさらに尋ねます。

「その人たちには、今でも会ってる?」
「いや、もう長い間会っていないね」、僕は言葉を選んで答えた。
「どうして? どうしてもう会わないの?」
「ずっと遠くに離れていたからね」。真実ではなかったが、ほかに説明のしようもなかった。

この会話は元の版にはありません。「説明のしようもない真実」とは、キスギと直子の死を意味しているものと考えられます。このような会話がわざわざ付け加えられたのは、作者にそのような意図があったものと考えてよいでしょう。「死」について、たくみに隠しつつ触れていくことは処女作「風の歌を聴け」以来の村上春樹のお家芸のようなものといってよいかもしれません。

次は208頁。この作品(「めくらやなぎ・・・」)における25才の主人公が、この従兄弟が病院にいくのに付き合うきっかけの説明です。短縮版では、祖母の葬式のため、ということになっていますが、元の版では特別理由が挙げられていません。

ただし、どちらの版でも主人公が東京の広告代理店をやめたことが、彼がこうして実家に帰ることが可能になった前提条件となっています。さらに短縮版では、次の一行が付け加えられるのです。

それと前後して、大学時代からつきあっていた女性とも別れることになった。

この文が加えられた理由として、『ノルウェイの森』で描かれる大学時代に彼が付き合っていたはずの女性(「緑」)が、「めくらやなぎ・・・」には全く登場しないことを説明するためと考えられます。「緑」という存在を前提にすると、会社を辞めたというだけでは、これだけ長い間実家にひとりきりで帰ってこられたことの説明が不十分なのです。

もちろん「祖母の葬式」という帰省理由が「めくらやなぎ・・・」の物語における「死」の雰囲気を演出しているのはいうまでもありません。

次、212頁。従兄弟が、「僕」になぜ、この故郷の町にとどまらないのかたずねます。元の版では、理由はあいまいにされますが、短縮版ではそこにとどまるわけにはいかないことが、特に強調されてます。(傍点付で)このことについては、短縮版のラストでさらに説明が加えられます。

215頁。これは削られたところですが、短縮版では「僕は友達のガール・フレンドの見舞いなんていきたくたくもなかったったのだけれど」という一行が無くなっています。元の版では単なる「友達のガールフレンド」として、あっさりしたものであった僕と直子との関係が、短縮版ではより濃度の濃いものへと置き換えられていることがわかります。これも「ノルウェイの森」を意識してのものと考えられますが、削除部分は他にもたくさんあるのでそう断言できるわけではありません。

221頁。さて、ここから核心部分です。

「友達のガール・フレンド(すなわち「直子」)」が、自分の書いた「めくらやなぎ」の詩について話します。めくらやなぎに囲まれた丘に眠る女、その丘に若い男が一人で登ってくる話です。

元の版では、この「若い男」は単に彼女を訪ねて登ってのぼっていくのですが、短縮版では「救うために」というようにその意味付けが変えられています。

そしてそれを友達(「キスギ」)が「俺のことだな、きっと」とまぜかえすのです。元の版ではガール・フレンド(「直子」)はとくにとりあわないのですが、短縮版だと、つぎのように書き換えられています。

彼女は首を振った。「いいえ、それはあなたじゃないのよ」
「君にはそれがわかる?」と友達は言った。
「私にはそれがわかる」、彼女は生真面目な顔でいった。「どうしてかはわからない。でもそうなの。傷つく?」
「もちろん」、友達は冗談半分で顔をしかめていった。

「丘を登る」から連想されるのは『ノルウェイの森』の亜美寮でしょう。そこを登るのは当然キスギではありません。

222頁、この話を聞いた「僕」のリアクションです。
元の版での「僕」は、「でもとても面白いと思うよ」「つまり情景としてさ」 と、ガールフレンドの話をけなす友達に対し、友達のガールフレンドのフォローにまわっているのですが、短縮版で「友達のガール・フレンド」は「僕」に直接質問を投げかけます。その質問に「僕」は、「とても哀しい話みたいに聞こえる」と答えるのです。

そう、今やこのガールフレンドの詩はとても哀しい話に変わってしまっているのです。

231頁、ラストシーンです。元の版では、主人公は、従兄弟の耳の中に巣食っているかもしれない蝿について考えていますが、短縮版では従兄弟のことではなく、友達とそのガールフレンドに関し、

あの丘を、めくらやなぎのはびこるままおきざりにしてしまったのだ。

といいながら、主人公は彼らのために何もできなかったことを回想しつつ、物語は締めくくられます。

 

 

以上のような書き直しで、「めくらやなぎ・・・」の物語の重点は、従兄弟から、「友達」とその「ガール・フレンド」(すなわち「キスギ」と「直子」)のほうに移り、またよりあざとく、「ガール・フレンド」がすでに病んでいることが連想させられるようになっています。

これで、直子の姉の自殺のエピソードと「めくらやなぎ」の話は確かにつながってくるのですが、それでこの短編が小説として良くなったかどうかはまた別の問題でしょう。僕としては元のヴァージョンのほうにより深みを感じますが、これにはどちらを先に読んだかということも大きく関係してくるように思います。

 
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