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求·伊豆的舞女·这本小说!

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发表于 2004-12-28 22:08:02 | 显示全部楼层 |阅读模式
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发表于 2004-12-28 22:42:17 | 显示全部楼层
中文版的?日文版的?日汉对照的?
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 楼主| 发表于 2004-12-28 23:01:38 | 显示全部楼层
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发表于 2004-12-28 23:23:32 | 显示全部楼层
网上没找到日文的电子版,日汉对照偶倒是有书,这个应该还有卖的
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发表于 2005-1-15 13:23:08 | 显示全部楼层
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发表于 2005-1-15 17:11:15 | 显示全部楼层
书店有卖的。
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发表于 2005-1-16 15:31:08 | 显示全部楼层
我应该有电子书,找找去
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发表于 2005-1-16 15:36:36 | 显示全部楼层
  有了!!川端康成的书版权还有效。这个很难得的。大事にしてください。

[伊豆の踊子

       一
 道がつづら折り《*》になって、いよいよ天《あま》城《ぎ》峠《とうげ》に近づいたと思う頃《ころ》、雨足が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓《ふもと》から私を追って来た。

 私は二十歳、高等学校の制帽をかぶり、紺《こん》飛白《がすり》の着物に袴《はかま》をはき、学生カバンを肩にかけていた。一人伊豆の旅に出てから四日目のことだった。修《しゆ》善《ぜん》寺《じ》温泉に一夜泊り、湯が島温泉に二夜泊り、そして朴《ほお》歯《ば*》の高《たか》下《げ》駄《た》で天城を登って来たのだった。重なり合った山々や原生林や深い渓谷の秋に見《み》惚《と》れながらも、私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。そのうちに大粒の雨が私を打ち始めた。折れ曲った急な坂道を駆《か》け登った。ようやく峠の北口の茶屋に辿《たど》りついてほっとすると同時に、私はその入口で立ちすくんでしまった。あまりに期待がみごとに的中したからである。そこで旅芸人の一行が休んでいたのだ。

 突っ立っている私を見た踊子がすぐに自分の座《ざ》蒲《ぶ》団《とん》をはずして、裏返しに傍《そば》へ置いた。

 「ええ……」とだけ言って、私はその上に腰をおろした。坂道を走った息切れと驚きとで、「ありがとう」という言葉が咽《のど》にひっかかって出なかったのだ。

 踊子と間近に向かい合ったので、私はあわてて袂《たもと》から煙草《たばこ》を取り出した。踊子がまた連れの女の前の煙草盆を引き寄せて私に近くしてくれた。やっぱり私は黙っていた。

 踊子は十七くらいに見えた。私にはわからない古風の不思議な形に大きく髪を結《ゆ》っていた。それが卵形の凜《り》々《り》しい顔を非常に小さく見せながらも、美しく調和していた。髪を豊かに誇張して描いた、稗《はい》史《し*》的な娘の絵姿のような感じだった。踊子の連れは四十代の女が一人、若い女が二人、ほかに長岡温泉の宿屋の印《しるし》半《ばん》纏《てん》を着た二十五、六の男がいた。

 私はそれまでにこの踊子たちを二度見ているのだった。最初は私が湯が島へ来る途中、修善寺へ行く彼女たちと湯川橋の近くで出会った。その時は若い女が三人だったが、踊子は太《たい》鼓《こ》を提《さ》げていた。私は振り返り振り返り眺めて、旅情が自分の身についたと思った。それから、湯が島の二日目の夜、宿屋へ流して来た。踊子が玄関の板敷で踊るのを、私は梯《はし》子《ご》段《だん》の中途に腰をおろして一心に見ていた。――あの日が修善寺で今夜が湯が島なら、明日は天城を南に越えて湯が野温泉へ行くのだろう。天城七里の山道できっと追いつけるだろう。そう空想して道を急いで来たのだったが、雨宿りの茶屋でぴったり落ち合ったものだから、私はどぎまぎしてしまったのだ。

 まもなく、茶店の婆《ばあ》さんが私を別の部屋へ案内してくれた。平常用はないらしく戸障子がなかった。下を覗《のぞ》くと美しい谷が目の届かないほど深かった。私は肌に粟《あわ》粒《つぶ》をこしらえ、かちかちと歯を鳴らして身《み》顫《ぶる》いした。茶を入れに来た婆さんに、寒いと言うと、

 「おや、旦《だん》那《な》様《さま》お濡《ぬ》れになってるじゃございませんか。こちらでしばらくおあたりなさいまし、さあ、お召《めし》物《もの》をお乾かしなさいまし」と、手を取るようにして、自分たちの居間へ誘ってくれた。

 その部屋は炉《ろ》が切ってあって、障子を明けると強い火気が流れて来た。私は敷《しき》居《い》際《ぎわ》に立って躊《ちゆう》躇《ちよ》した。水死人のように全身蒼《あお》ぶくれの爺さんが炉《ろ》端《ばた》にあぐらをかいているのだ。瞳《ひとみ》まで黄色く腐ったような眼を物《もの》憂《う》げに私の方へ向けた。身の周《まわ》りに古手紙や紙袋の山を築いて、その紙《かみ》屑《くず》のなかに埋れていると言ってもよかった。とうてい生き物と思えない山の怪奇を眺めたまま、私は棒立ちになっていた。

 「こんなお恥《はずか》しい姿をお見せいたしまして……。でも、うちのじじいでございますからご心配なさいますな。お見苦しくても、動けないのでございますから、このままで堪《かん》忍《にん》してやってくださいまし」

 そう断わってから、婆さんが話したところによると、爺さんは長年中《ちゆう》風《ぶう》を患《わずら》って、全身が不随になってしまっているのだそうだ。紙の山は、諸国から中風の養生を教えて来た手紙や、諸国から取り寄せた中風の薬の袋なのである。爺さんは峠を越える旅人から聞いたり、新聞の広告を見たりすると、その一つをも洩《もら》さずに、全国から中風の療法を聞き、売薬を求めたのだそうだ。そして、それらの手紙や紙袋を一つも捨てずに身の周りに置いて眺めながら暮らして来たのだそうだ。長年の間にそれが古ぼけた反《ほ》古《ご》の山を築いたのだそうだ。

 私は婆さんに答える言葉もなく、囲《い》炉《ろ》裏《り》の上にうつむいていた。山を越える自動車が家を揺《ゆ》すぶった。秋でもこんなに寒い、そしてまもなく雪に染まる峠を、なぜこの爺さんはおりないのだろうと考えていた。私の着物から湯気が立って、頭が痛むほど火が強かった。婆さんは店に出て旅芸人の女と話していた。

 「そうかねえ。この前連れていた子がもうこんなになったのかい。いい娘《あんこ》になって、お前さんも結構だよ。こんなに綺《き》麗《れい》になったのかねえ。女の子は早いもんだよ」

 小一時間経つと、旅芸人たちが出《いで》立《た》つらしい物音が聞こえて来た。私も落着いている場合ではないのだが、胸騒ぎするばかりで立ち上がる勇気が出なかった。旅《たび》馴《な》れたと言っても女の足だから、十町や二十町遅れたって一走りに追いつけると思いながら、炉の傍《そば》でいらいらしていた。しかし踊子たちが傍にいなくなると、かえって私の空想は解き放たれたように生き生きと踊り始めた。彼らを送り出して来た婆さんに聞いた。

 「あの芸人は今夜どこで泊るんでしょう」

 「あんな者、どこで泊るやらわかるものでございますか、旦那様。お客があればあり次第、どこにだって泊るんでございますよ。今夜の宿のあてなんぞございますものか」

 はなはだしい軽《けい》蔑《べつ》を含んだ婆さんの言葉が、それならば、踊子を今夜は私の部屋に泊らせるのだ、と思ったほど私をあおり立てた。

 雨足が細くなって、峰が明るんで来た。もう十分も待てば綺《き》麗《れい》に晴れ上がると、しきりに引き止められたけれども、じっと坐《すわ》っていられなかった。

 「お爺さん、お大事になさいよ。寒くなりますからね」と、私は心から言って立ち上がった。爺さんは黄色い眼を重そうに動かして微《かす》かにうなずいた。

 「旦《だん》那《な》さま、旦那さま」と、叫びながら婆さんが追っかけて来た。

 「こんなにいただいてはもったいのうございます。申し訳ございません」

 そして私のカバンを抱きかかえて渡そうとせずに、いくら断わってもその辺まで送ると言って承知しなかった。一町ばかりもちょこちょこついて来て、同じことを繰り返していた。

 「もったいのうございます。お粗末いたしました。お顔をよく覚えております。今度お通りの時にお礼をいたします。この次もきっとお立ち寄りくださいまし。お忘れはいたしません」

 私は五十銭銀貨を一枚置いただけだったので、いたく驚いて涙がこぼれそうに感じているのだったが、踊子に早く追いつきたいものだから、婆さんのよろよろした足取りが迷惑でもあった。とうとう峠のトンネルまで来てしまった。

 「どうもありがとう。お爺さんが一人だから帰ってあげてください」と私が言うと、婆さんはやっとのことでカバンを離した。

 暗いトンネルに入ると、冷たい雫《しずく》がぽたぽた落ちていた。南伊豆への出口が前方に小さく明るんでいた。


       二
 トンネルの出口から白塗りの柵《さく》に片側を縫われた峠道が稲妻のように流れていた。この模型のような展望の裾《すそ》の方に芸人達の姿が見えた。六町と行かないうちに私は彼らの一行に追いついた。しかし急に歩調を緩《ゆる》めることもできないので、私は冷淡なふうに女たちを追い越してしまった。十間ほど先に一人歩いていた男が私を見ると立ち止まった。

 「お足が早いですね。――いいあんばいに晴れました」

 私はほっとして男と並んで歩き始めた。男は次々にいろんなことを私に聞いた。二人が話し出したのを見て、うしろから女たちがばたばた走り寄って来た。

 男は大きい柳《やなぎ》行《ごう》李《り*》を背負っていた。四十女は小犬を抱いていた。上の娘が風《ふ》呂《ろ》敷《しき》包み、中の娘が柳行李、それぞれ大きい荷物を持っていた。踊子は太鼓とその枠《わく》を負《お》うていた。四十女もぽつぽつ私に話しかけた。

 「高等学校の学生さんよ」と、上の娘が踊子に囁《ささや》いた。私が振り返ると笑いながら言った。

 「そうでしょう。それくらいのことは知っています。島へ学生さんが来ますもの」

 一行は大島の波《は》浮《ぶ》の港の人たちだった。春に島を出てから旅を続けているのだが、寒くなるし、冬の用意はして来ないので、下田に十日ほどいて伊東温泉から島へ帰るのだと言った。大島と聞くと私はいっそう詩を感じて、また踊子の美しい髪を眺めた。大島のことをいろいろ訊《たず》ねた。

 「学生さんがたくさん泳ぎに来るね」と踊子が連れの女に言った。

 「夏でしょう」と、私が振り向くと、踊子はどぎまぎして、

 「冬でも……」と、小声で答えたように思われた。

 「冬でも?」

 踊子はやはり連れの女を見て笑った。

 「冬でも泳げるんですか」と私がもう一度言うと、踊子は赤くなって、非常にまじめな顔をしながら軽くうなずいた。

 「ばかだ。この子は」と、四十女が笑った。

 湯が野までは河《かわ》津《づ》川《がわ》の渓谷に沿うて三里余りのくだりだった。峠を越えてからは、山や空の色までが南国らしく感じられた。私と男とは絶えず話し続けて、すっかり親しくなった。荻《おぎ》仭钉韦辍筏淅妗钉胜贰繁尽钉猡取筏胜兢涡·丹ご謇铯蜻^ぎて、湯が野の藁《わら》屋《や》根《ね》が麓《ふもと》に見えるようになった頃、私は下田まで一緒に旅をしたいと思い切って言った。彼はたいへん喜んだ。

 湯が野の木《き》賃《ちん》宿《やど》の前で四十女が、ではお別れ、という顔をした時に、彼は言ってくれた。

 「この方はお連れになりたいとおっしゃるんだよ」

 「それは、それは。旅は道連れ、世は情け。私たちのようなつまらない者でも、ご退屈しのぎにはなりますよ。まあ、上がってお休みなさいまし」と無《む》造《ぞう》作《さ》に答えた。娘たちは一《いち》時《どき》に私を見たが、しごくなんでもないという顔で黙って、少し恥《はず》かしそうに私を眺めていた。

 皆と一緒に宿屋の二階へ上がって荷物をおろした。畳や摇钉栅工蕖筏夤扭婴茮Aかった。踊子が下から茶を撙螭抢搐俊K饯吻挨俗钉工铩筏毪取ⅳ蓼贸啶摔胜辘胜槭证颏证毪证腩潯钉栅搿筏铯护毪韦遣琛钉沥洹吠搿钉铯蟆筏琛钉沥洹吠小钉郡筏槁浃沥辍⒙浃工蓼い犬挙酥盲淖婴瞬瑜颏长埭筏皮筏蓼盲俊¥ⅳ蓼辘摔窑嗓い悉摔撙瑜Δ胜韦恰⑺饯悉ⅳ盲堡摔趣椁欷俊

 「まあ! 厭《いや》らしい。この子は色気づいたんだよ。あれあれ……」と四十女が呆《あき》れ果てたというふうに眉《まゆ》をひそめて手《て》拭《ぬぐい》を投げた。踊子はそれを拾って、窮屈そうに畳を拭《ふ》いた。

 この意外な言葉で、私はふと自分を省みた。峠の婆さんにあおり立てられた空想がぽきんと折れるのを感じた。

 そのうちに突然四十女が、

 「書生さんの紺《こん》飛白《がすり》はほんとにいいねえ」と言って、しげしげ私を眺めた。

 「この方の飛白は民次と同じ柄だね。ね、そうだね。同じ柄じゃないかね」

 傍の女に幾度も駄目を押してから私に言った。

 「国に学校行きの子供を残してあるんですが、その子を今思い出しましてね。その子の飛白と同じなんですもの。この節は紺飛白もお高くてほんとうに困ってしまう」

 「どこの学校です」

 「尋常五年なんです」

 「へえ、尋常五年とはどうも……」

 「甲府の学校へ行ってるんでございますよ。長く大島におりますけれど、国は甲《か》斐《い》の甲府でございましてね」

 一時間ほど休んでから、男が私を別の温泉宿へ案内してくれた。それまでは私も芸人たちと同じ木賃宿に泊ることとばかり思っていたのだった。私たちは街道から石ころ路や石段を一町ばかりおりて、小川のほとりにある共同湯の横の橋を渡った。橋の向こうは温泉宿の庭だった。

 そこの内《うち》湯《ゆ*》につかっていると、後から男がはいって来た。自分が二十四になることや、女房が二度とも流産と早産とで子供を死なせたことなぞを話した。彼は長岡温泉の印《しるし》半《ばん》纏《てん》を着ているので、長岡の人間だと私は思っていたのだった。また顔つきも話ぶりも相当知識的なところから、物好きか芸人の娘に惚《ほ》れたかで、荷物を持ってやりながらついて来ているのだと想像していた。

 湯から上がると私はすぐに昼飯を食べた。湯が島を朝の八時に出たのだったが、その時はまだ三時前だった。

 男が帰りがけに、庭から私を見上げて挨《あい》拶《さつ》をした。

 「これで柿《かき》でもおあがりなさい。二階から失礼」と言って、私は金包みを投げた。男は断わって行き過ぎようとしたが、庭に紙包みが落ちたままなので、引き返してそれを拾うと、

 「こんなことをなさっちゃいけません」とほうり上げた。それが藁屋根の上に落ちた。私がもう一度投げると、男は持って帰った。

 夕暮からひどい雨になった。山々の姿が遠近を失って白く染まり、前の小川が見る見る黄色く濁《にご》って音を高めた。こんな雨では踊子たちが流して来ることもあるまいと思いながら、私はじっと坐《すわ》っていられないので二度も三度も湯にはいってみたりしていた。部屋は薄暗かった。隣室との間の摇钉栅工蕖筏蛩慕扦肖陹iいたところに鴨《かも》居《い》から電燈が下がっていて、一つの明かりが二室兼用になっているのだった。

 ととんとんとん、激しい雨の音の遠くに太鼓の響きがかすかに生まれた。私はかき破るように雨戸を明けて体を仱瓿訾筏俊L膜我簸扭い评搐毪瑜Δ馈S觑Lが私の頭を叩《たた》いた。私は眼を閉じて耳を澄ましながら、太鼓がどこをどう歩いてここへ来るかを知ろうとした。間もなく三《しや》味《み》線《せん》の音が聞こえた。女の長い叫び声が聞こえた。賑《にぎ》やかな笑い声が聞こえた。そして芸人たちは木賃宿と向かい合った料理屋のお座敷に呼ばれているのだとわかった。二、三人の女の声と三、四人の男の声とが聞き分けられた。そこがすめばこちらへ流して来るのだろうと待っていた。しかしその酒宴は陽気を越えてばか騒ぎになって行くらしい。女の金切り声が時々稲妻のように闇《やみ》夜《よ》に鋭く通った。私は神経を尖《とが》らせて、いつまでも戸を明けたままじっと坐っていた。太鼓の音が聞こえるたびに胸がほうと明るんだ。

 「ああ、踊子はまだ宴席に坐っていたのだ。坐って太鼓を打っているのだ」

 太鼓がやむとたまらなかった。雨の音の底に私は沈み込んでしまった。

 やがて、皆が追っかけっこをしているのか、踊り回っているのか、乱れた足音がしばらく続いた。そして、ぴたと静まり返ってしまった。私は眼を光らせた。この静けさが何であるかを闇を通して見ようとした。踊子の今夜が汚れるのであろうかと悩ましかった。

 雨戸を閉じて床にはいっても胸が苦しかった。また湯にはいった。湯を荒々しくかき回した。雨が上がって、月が出た。雨に洗われた秋の夜が冴《さ》え冴《ざ》えと明るんだ。はだしで湯《ゆ》殿《どの》を抜け出して行ったって、どうともできないのだと思った。二時を過ぎていた。


       三
 翌《あく》る朝の九時過ぎに、もう男が私の宿に訪ねて来た。起きたばかりの私は彼を誘って湯に行った。美しく晴れ渡った南伊豆の小春日和《びより》で、水かさの増した小川が湯殿の下に暖く日を受けていた。自分にも昨夜の悩ましさが夢のように感じられるのだったが、私は男に言ってみた。

 「昨夜はだいぶ遅くまで賑やかでしたね」

 「なあに。聞こえましたか」

 「聞こえましたとも」

 「この土地の人なんですよ。土地の人はばか騒ぎをするばかりで、どうもおもしろくありません」

 彼があまりに何げないふうなので、私は黙ってしまった。

 「向こうのお湯にあいつらが来ています。――ほれ、こちらを見つけたと見えて笑っていやがる」

 彼に指ざされて、私は川向こうの共同湯の方を見た。湯気の中に七、八人の裸体がぼんやり浮かんでいた。

 仄《ほの》暗《ぐら》い湯殿の奥から、突然裸の女が走り出して来たかと思うと、脱衣場のとっぱなに川岸へ飛びおりそうな格好で立ち、両手をいっぱいに伸して何か叫んでいる。手《て》拭《ぬぐい》もないまっ裸だ。それが踊子だった。若《わか》桐《ぎり》のように足のよく伸びた白い裸身を眺めて、私は心に清《し》水《みず》を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。子供なんだ。私たちを見つけた喜びでまっ裸のまま日の光の中に飛び出し、爪《つま》先《さ》きで背いっぱいに伸び上がるほどに子供なんだ。私は朗らかな喜びでことこと笑い続けた。頭が拭《ぬぐ》われたように澄んで来た。微笑がいつまでもとまらなかった。

 踊子の髪が豊かすぎるので、十七、八に見えていたのだ。その上娘盛りのように装《よそ》わせてあるので、私はとんでもない思い違いをしていたのだ。

 男と一緒に私の部屋に帰っていると、まもなく上の娘が宿の庭へ来て菊畑を見ていた。踊子が橋を半分ほど渡っていた。四十女が共同湯を出て二人の方を見た。踊子はきゅっと肩をつぼめながら、叱《しか》られるから帰ります、というふうに笑って見せて急ぎ足に引き返した。四十女が橋まで来て声をかけた。

 「お遊びにいらっしゃいまし」

 「お遊びにいらっしゃいまし」

 上の娘も同じことを言って、女たちは帰って行った。男はとうとう夕方まで坐り込んでいた。

 夜、紙類を卸《おろ》して回る行商人と碁《ご》を打っていると、宿の庭に突然太鼓の音が聞こえた。私は立ちあがろうとした。

 「流しが来ました」

 「ううん、つまらない、あんなもの。さ、さ、あなたの手ですよ。私ここへ打ちました」と、碁盤を突つきながら紙屋は勝負に夢中だった。私はそわそわしているうちに芸人たちはもう帰り路《みち》らしく、男が庭から、

 「今晩は」と声を掛けた。

 私は廊下に出て手招きした。芸人たちは庭でちょっと囁《ささや》き合ってから玄関へ回った。男の後から娘が三人順々に、

 「今晩は」と廊下に手を突いて芸者のようにお辞《じ》儀《ぎ》をした。碁盤の上では急に私の負け色が見え出した。

 「これじゃしかたがありません。投げですよ」

 「そんなことがあるものですか。私の方が悪いでしょう。どっちにしても細かいです」

 紙屋は芸人の方を見向きもせずに、碁盤の目を一つ一つ数えてから、ますます注意深く打って行った。女たちは太鼓や三味線を部屋の隅に片づけると、将《しよう》棋《ぎ》盤の上で五目並べを始めた。そのうちに私は勝っていた碁を負けてしまったのだが、紙屋は、

 「いかがですもう一《いつ》石《せき》、もう一石願いましょう」と、しつっこくせがんだ。しかし私が意味もなく笑っているばかりなので紙屋はあきらめて立ち上がった。

 娘たちが碁盤の近くへ出て来た。

 「今夜はまだこれからどこかへ回るんですか」

 「回るんですが」と男は娘たちの方を見た。

 「どうしよう。今夜はもうよしにして遊ばせていただくか」

 「嬉《うれ》しいね。嬉しいね」

 「叱られやしませんか」

 「なあに、それに歩いたってどうせお客がないんです」

 そして五目並べなぞをしながら、十二時過ぎまで遊んで行った。

 踊子が帰った後は、とても眠れそうもなく頭が冴《さ》え冴《ざ》えしているので、私は廊下に出て呼んでみた。

 「紙屋さん、紙屋さん」

 「よう……」と、六十近い爺さんが部屋から飛び出し、勇み立って言った。

 「今晩は徹夜ですぞ。打ち明かすんですぞ」

 私もまた非常に好戦的な気持だった。


       四
 その次の朝八時が湯が野出《しゆつ》立《たつ》の約束だった。私は共同湯の横で買った鳥打帽をかぶり、高等学校の制帽をカバンの奥に押し込んでしまって、街道沿いの木賃宿へ行った。二階の戸障子がすっかり明け放たれているので、なんの気なしに上がって行くと、芸人たちはまだ床の中にいるのだった。私はめんくらって廊下に突っ立っていた。

 私の足もとの寝床で、踊子がまっ赤になりながら両の掌ではたと顔を抑えてしまった。彼女は中の娘と一つの床に寝ていた。昨夜の濃《こ》い化粧が残っていた。唇と眦《まなじり》の紅が少しにじんでいた。この情緒的な寝姿が私の胸を染めた。彼女は眩《まぶ》しそうにくるりと寝返りして、掌で顔を隠したまま蒲団を辷《すべ》り出ると、廊下に坐り、

 「昨晩はありがとうございました」と綺麗なお辞儀をして、立ったままの私をまごつかせた。

 男は上の娘と同じ床に寝ていた。それを見るまで私は、二人が夫婦であることをちっとも知らなかったのだった。

 「たいへんすみませんのですよ。今日立つつもりでしたけれど、今晩お座敷がありそうでございますから、私たちは一日延ばしてみることにいたしました。どうしても今日お立ちになるなら、また下田でお目にかかりますわ。私たちは甲州屋という宿屋にきめておりますから、すぐおわかりになります」と四十女が寝床から半ば起き上がって言った。私は突っ放されたように感じた。

 「明日にしていただけませんか。おふくろが一日延ばすって承知しないもんですからね。道連れのある方がよろしいですよ。明日一緒に参りましょう」と男が言うと、四十女も付け加えた。

 「そうなさいましよ。せっかくお連れになっていただいて、こんな我《わが》儘《まま》を申しちゃすみませんけれど。明日は槍《やり》が降っても立ちます。明後日が旅で死んだ赤ん坊の四十九日でございましてね、四十九日には心ばかりのことを、下田でしてやりたいと前々から思って、その日までに下田へ行けるように旅を急いだのでございますよ。そんなこと申しちゃ失礼ですけれど、不思議なご縁ですもの、明後日はちょっと拝《おが》んでやってくださいましな」

 そこで私は出立を延ばすことにして階下へおりた。皆が起きて来るのを待ちながら、汚い帳場で宿の者と話していると、男が散歩に誘った。街道を少し南へ行くと綺麗な橋があった。橋の欄《らん》干《かん》によりかかって、彼はまた身の上話を始めた。東京である新派役者の群れにしばらく加わっていたとのことだった。今でも時々大島の港で芝居をするのだそうだ。彼らの荷物の風呂敷から刀の鞘《さや》が足のようにはみ出していたのだったが、お座敷でも芝居の真《ま》似《ね》をして見せるのだと言った。柳《やなぎ》行《ごう》李《り》の中はその衣《い》裳《しよう》や鍋《なべ》茶《ちや》碗《わん》なぞの世帯道具なのである。

 「私は身を誤った果てに落ちぶれてしまいましたが、兄が甲府で立派に家の後《あと》目《め》を立てていてくれます。だから私はまあいらない体なんです」

 「私はあなたが長岡温泉の人だとばかり思っていましたよ」

 「そうでしたか。あの上の娘が女房ですよ。あなたより一つ下、十九でしてね、旅の空で二度目の子供を早産しちまって、子供は一週間ほどして息が絶えるし、女房はまだ体がしっかりしないんです。あの婆さんは女房の実のおふくろなんです。踊子は私の実の妹ですが」

 「へえ。十四になる妹があるっていうのは――」

 「あいつですよ。妹にだけはこんなことをさせたくないと思いつめていますが、そこにはまたいろんな事情がありましてね」

 それから、自分が栄吉、女房が千代子、妹が薫《かおる》ということなぞを教えてくれた。もう一人の百《ゆ》合《り》子《こ》という十七の娘だけが大島生まれで雇いだとのことだった。栄吉はひどく感傷的になって泣き出しそうな顔をしながら河瀬を見つめていた。

 引き返して来ると、白《おし》粉《ろい》を洗い落した踊子が路《みち》ばたにうずくまって犬の頭を撫《な》でていた。私は自分の宿に帰ろうとして言った。

 「遊びにいらっしゃい」

 「ええ。でも一人では……」

 「だから兄さんと」

 「直ぐに行きます」

 まもなく栄吉が私の宿へ来た。

 「皆は?」

 「女どもはおふくろがやかましいので」

 しかし、二人がしばらく五目並べをやっていると、女たちが橋を渡ってどんどん二階へ上がって来た。いつものように丁寧なお辞儀をして廊下に坐ったままためらっていたが、一番に千代子が立ち上がった。

 「これは私の部屋よ。さあどうぞご遠慮なしにお通りください」

 一時間ほど遊んで芸人たちはこの宿の内湯へ行った。一緒にはいろうとしきりに誘われたが、若い女が三人もいるので、私は後から行くとごまかしてしまった。すると踊子が一人すぐに上がって来た。

 「肩を流してあげますからいらっしゃいませって、姉さんが」と、千代子の言葉を伝えた。

 湯には行かずに、私は踊子と五目を並べた。彼女は不思議に強かった。勝《かち》継《つ》ぎをやると、栄吉や他の女は造《ぞう》作《さ》なく負けるのだった。五目ではたいていの人に勝つ私が力いっぱいだった。わざと甘い石を打ってやらなくともいいのが気持よかった。二人きりだから、初めのうち彼女は遠くの方から手を伸して石をおろしていたが、だんだん我を忘れて一心に碁盤の上へ覆いかぶさって来た。不自然なほど美しい姢饯涡丐舜イ欷饯Δ摔胜盲俊M蝗弧ⅳ绚盲燃tくなって、

 「ごめなさい。叱《しか》られる」と石を投げ出したまま飛び出して行った。共同湯の前におふくろが立っていたのである。千代子と百合子もあわてて湯から上がると、二階へは上がって来ずに逃げて帰った。

 この日も、栄吉は朝から夕方まで私の宿に遊んでいた。純樸で親切らしい宿のおかみさんが、あんな者にご飯を出すのはもったいないと言って、私に忠告した。

 夜、私が木賃宿に出向いて行くと、踊子はおふくろに三味線を習っているところだった。私を見るとやめてしまったが、おふくろの言葉でまた三味線を抱き上げた。歌う声が少し高くなるたびに、おふくろが言った。

 「声を出しちゃいけないって言うのに」

 栄吉は向かい側の料理屋の二階座敷に呼ばれて何か唸《うな》っているのが、こちらから見えた。

 「あれはなんです」

 「あれ――謡《うたい》ですよ」

 「謡は変だな」

 「八《や》百《お》屋《や》だから何をやり出すかわかりゃしません」

 そこへこの木賃宿の間を借りて鳥屋をしているという四十前後の男が摇钉栅工蕖筏蛎鳏堡啤ⅳ瘩Y《ち》走《そう》をすると娘たちを呼んだ。踊子は百合子と一緒に箸《はし》を持って隣りの間へ行き、鳥屋が食べ荒した後の鳥鍋をつついていた。こちらの部屋へ一緒に立って来る途中で、鳥屋が踊子の肩を軽く叩いた。おふくろが恐ろしい顔をした。

 「こら。この子に触《さわ》っておくれでないよ。生《き》娘《むすめ》なんだからね」

 踊子はおじさんおじさんと言いながら、鳥屋に「水《み》戸《と》黄《こう》門《もん》漫《まん》遊《ゆう》記《き》」を読んでくれと頼んだ。しかし鳥屋はすぐに立って行った。続きを読んでくれと私に直接言えないので、おふくろから頼んで欲しいようなことを、踊子がしきりに言った。私は一つの期待を持って講談本を取り上げた。はたして踊子がするすると近寄って来た。私が読み出すと、彼女は私の肩に触《さわ》るほどに顔を寄せて真剣な表情をしながら、眼をきらきらと輝かせて一心に私の額をみつめ、瞬《またた》き一つしなかった。これは彼女が本を読んで貰《もら》う時の癖らしかった。さっきも鳥屋とほとんど顔を重ねていた。私はそれを見ていたのだった。この美しく光る郅沥未螭ぱ郅嫌蛔婴韦い沥肖竺坤筏こ证沥猡韦坤盲俊6钉栅俊分亍钉ā凡
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发表于 2005-1-17 17:01:16 | 显示全部楼层
这两天我学校在教这篇小说。
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发表于 2005-1-20 14:14:22 | 显示全部楼层
“世界华人文艺家”登有我译的《伊豆的舞女》,网址如下:
http://www.chinese01.com/list.asp?articleid=725
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发表于 2005-5-16 21:34:02 | 显示全部楼层
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