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4 不吉なカーブを回る(11)
「あなたのお友だちはここで冬を越すつもりだったらしいわね」と彼女は言った。「台所をざっと見てみたけど、一冬を越せるだけの燃料と食品は揃っているわ。まるでスーパー?マーケットみたい」
「でも本人だけがいない」
「二階を調べてみましょう」
我々は台所の横にある階段を上った。階段は途中で不思議な角度にぽきんと折れ曲がっていた。二階に上ると空気の層がひとつ変ったような気がした。
「頭が少し痛いわ」と彼女が言った。
「ひどく痛いの?」
「ううん、大丈夫よ。気にしないで、こういうのは慣れてるから」
二階にはベッド?ルームが三つあった。廊下をはさんで左側が大きな部屋で、右が二つの小さな部屋である。我々は三つの部屋のドアを順番に開けてみた。どれにも最小限の家具しかなく、がらんとして薄暗かった。広い方の部屋にはツイン?ベッドとドレッサーがあり、ベッドは枠だけの裸だった。死んでしまった時間の匂いがした。
奥の方の小さな部屋にだけ、人間の匂いが残っていた。ベッドはきちんとメイクされて、枕はかすかにへこみを残し、青い無地のパジャマが枕もとにたたんであった。サイドテーブルには古い型のスタンドが載っていて、そのわきには本は一冊伏せてあった。コンラッドの小説だった。
ベッドのわきにはオーク材のがっしりとしたチェストがあり、引出しの中には男もののセーターとシャツとズボンと靴下、下着が整理されてつまっていた。セーターとシャツは古いもので、どこかしら擦り切れたりほころびたりしていたが、ものは良かった。そのうちの何着かには見覚えがあった。鼠のものだった。サイズ37のシャツと73ズボン。間違いない。
窓際には最近ではちょっと目にかかれないような古いシンプルなデザインの机と椅子があった。机の引出しには安物の万年筆とスペア?インクが三箱とレター?セットが入っていたが、レター?ペーパーはどれも白紙だった。二段目には半分なくなった咳どめドロップの缶と、こまごまとした雑貨。三段目はからだった。日記も手帳もメモも、何もない。余計なものはひっかきあつめて全部処分したみたいに見えた。何もかもが余りにも整然としすぎていて、それが気に入らなかった。指を机の上に走らせると指先に白い誇りがついた。たいしたほこりではない。やはり一週間というところだ。
僕は草原に面したダブルハング窓を押し上げ、外側のブラインドを開いた。草原を吹きわたる風は強さを增し、黒い雲は一層低く流れていた。草原はのたうちまわる生きもののように風の中で身をくねらせていた。その向こうに白樺が見え、山が見えた。写真とまったく同じ風景だった。羊がいないだけだ。
“你的朋友像是要在这里度过冬天似的。”她说。“粗略看了一下厨房,装满了一冬所用的燃料和食品。真像是个超市。”
“可是他本人却并不在这里。”
“我们去看看%B |
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