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6 ガレージの中でみつけたもの 草原のまんなかで考えたこと(2)
車はトヨタの古いランドクルーザーだった。車体にもタイヤにも泥ひとつついてはいない。ガソリンは満タンに近かった。僕は鼠がいつもキイを隠しておく場所を手でさぐってみた。予想どおりキイはそこにあった。キイをさしこんでまわしてみると、エンジンはすぐに気持の良い音を立てた。いつもながら鼠は自動車の整備にかけては実に腕が言い。僕はエンジンを切ってキイをもとに戻し、運転席に座ったまま、まわりを見回しみた。車の中にはたいしたものは何もなかった。ロードマップとタオルとチョコレートが半分あるだけだ。後の座席には針金がひと巻と大型のペンチがあった。後部の座席は鼠の車にしては珍しく汚れたままだった。僕は後のドアを開けて座席の上に落ちているごみを手のひらに集め、壁の節穴からもれる太陽の光にあててみた。それはクッションからはみだした詰もののように見えた。あるいは羊の毛のようにも見えた。僕はポケットからティッシュ?ペーパーを出してそれをくるみ、胸のポケットに入れた。
どうして鼠が車を使わなかったのか、僕には理解できなかった。ガレージに車があるということは彼が歩いて山を下りたか、それとも山を下りていないか、そのどちらかだったが、どちらも筋はとおっていなかった。三日前までは崖下の道は十分通れたはずだし、鼠が家をあけてこの台地のどこかで野宿をつづけているとも思えなかった。
考えるのをあきらめてガレージの扉を閉め、草原に出てみた。どれだけ考えてみたところで筋のとおらない状況から筋のとおった結論をひっぱり出すのは不可能だ。
太陽が高くなるにつれて草原から水蒸気が立ちのぼりはじめていた。水蒸気をとおして正面の山がぼんやりとかすんで見えた。一面に草の匂いがした。
湿った草を踏みながら草原の中央まで歩いた。ちょうどまんなかあたりに古い廃品タイヤが置いてあった。ゴムはもうすっかり白くなってひび割れている。僕はその上に腰を下ろしてまわりをぐるりと見回してみた。僕が出て来た家は海岸につきだした白い岩のように見えた。
草原のまんなかのタイヤの上に一人でじっと座っていると、子供の頃よく参加した遠泳大会を思い出した。島から島へ泳ぎ渡るまんなかあたりで、僕はよく立ちどまってまわりの風景を眺めた。そしていつも不思議な気持になったものだった。二つの地点から等距離(ときょり)にあるというのはなにかしら奇妙なものだったし、遠く離れた大地の上で人々が今も日常の営みをつづけているというのも妙だった。何よりも社会が僕抜きでちゃんと働いているというのがいちばん奇妙だった。
十五分ばかりそこに座ってぼんやりしてから歩いて家に戻り、居間のソファーに座って「シャーロック?ホームズの冒険」のつづきを読んだ。
二時に羊男がやってきた。
车是丰田牌的老ランドクルーザー车。在车体上在轮胎上没粘有一点泥巴。汽油也接近满箱。我把手伸进了老鼠常存放钥匙的地方。正如预想那样车钥匙就放在那里。把钥匙插进去扭转一下,发动机马上就发出很好的声音。平时老鼠对汽车的整修是很到位的。我把发动机关了把钥匙放回原处,在驾驶座位上坐着,环视了一下四周。在车里面也没有什么重要的东西。也只是些行车地图、毛巾和半盒巧克力。在后面座位上有一个捆铁丝和一大型的钳子。在老鼠的车中很少像后部座位这样脏乱。我把后门打开把落在后座位上的垃圾收集到手掌,用从车库壁孔照射进来的光线照亮。那些垃圾像是从靠垫掉落下来的东西。或许也像是羊毛。我从口袋里拿出纸巾,把那些东西包起来,放进衣服口袋中。
为什么老鼠不使用车呢?我难以理解。在车库里有车这件事,能说明他走路下山了?还是没有下山?到底是哪一个?哪一个都说不通。也不能这样想:在三天前崖下的道路还是通行的,老鼠离开家门在这个台地的什么地方连续野宿?
想过之后把车库门关上,走到草原上。无论如何想从那不畅通的状态中能得到很畅通的结论,那是不可能的。
太阳高高升起。从草原上挥发出来的水蒸气冉冉升起。透过那水蒸气看正面的山也变得模糊起来。到处都有草的香味。
踩着那湿湿的草走到草原的中央。正好在那中央附近放有废弃的轮胎。橡胶都已变白发生裂纹。我坐在那上面巡视了一下周围。我离开的房子看上去就像海岸突出的白色岩石那样。
一个人静静地坐在草原中间的轮胎上,回想起了小时候经常参加的长距离游泳大会。从一个岛游到另一个岛正是游泳路程的中间点,我经常停下来眺望周围的风景。因而就经常产生一些不可思议的心绪。从两个地点出发有一个等距离的地方,这是多么奇妙的事?在远离大地的上面人们照样营生日常生活也很奇妙。最重要的是社会离开我还照样正常运行是最奇妙的。
在那里只坐了十五分钟后站起来回到房子,坐到沙发上继续读《夏洛克福尔摩斯探险》。
在两点钟时有一个羊模样的男人来了。 |
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