『源氏物語』は五十四帖からなる壮大な物語ですが、現在ではその構成を三部に分けるのが通説になっています。
第一部:「桐壺」~「藤裏葉」
主人公光源氏の誕生、多様な恋の遍歴、不遇な時代を経て準太上天皇(上皇に準じる地位)になるという栄華に到達する約四十年間を描いている。
第二部:「若菜上」~「幻」
若き日の過ちの因果に苦悩する源氏、傷つけあい悩む人間の内面を中心に、出家を決意する源氏の晩年十四年を描いている。
第三部;「匂宮」~「夢浮橋」
源氏の宿命の子である薫の世代に移り、恋に揺れ動く姿を宇治を背景に描いている。
特に、「橋姫」~「夢の浮橋」を「宇治十帖」という。
ここで、『源氏物語』が書かれた時代背景について少し触れておきましょう。
10世紀から11世紀にかけて藤原氏による摂関政治は全盛期を迎えました。
摂関政治の権力が天皇との外戚関係に依存していたため、自分の娘を後宮に入内させ、様々な方法で天皇の関心を引かせようとしました。
こうした社会の中では、自分の娘が他の娘より、より魅力的であることが望まれます。
そのため、優れた女房をスカウトして娘の教育を任せたのです。
こうして集められた女房たちは才色優れ、またその教養を競い合いました。(さぞ華やかだったことでしょうね。)
ここに、女流文学が開花し、多くの優れた作品が誕生したのです。
これらの作品に共通していることは、和歌を巧みに使いながら現実社会と人生とを追求し、理想の世界を描こうとした点でしょう。
『源氏物語』の作者、紫式部もそんな中、藤原道長(ふじわらのみちなが)にスカウトされた女房のひとりでした。
『源氏物語』は、『竹取物語』、『古今和歌集』、『伊勢物語』などの、さまざまな先行文学の影響をうけながら、物語文学として完成された作品です。
文体が流麗で、この作品が後世の文学に与えた影響は非常に大きく、平安時代の後期の物語や、中世の謡曲、近世の小説などにもその影響を見ることができます。 |