伝統的文法から新しい文法へ
) {" x6 `( @- X& S$ o% L! I( R2 i/ P, d; ? 5 B7 l3 O1 Y+ E* |1 \+ ^
「新しい」と言っても、実は新しくない。
, o5 \. C" C& u7 o 日本語教育ではずっと前から行われている。7 J! j$ }4 z1 `( [$ G1 r A
日本語教育のことを知らない人には新しい文法かもしれないが。& O9 `' |% u0 `* X( Q' G
伝統的文法と新しい文法の違いが最も顕著に現れているのは“助動詞”の扱いである。一口で言うと、新しい文法は“助動詞”を認めない。日本語教育では“助動詞”のない文法がずっと行われている。(一部に例外があるが。)日本語教育の文法だから「助動詞」がなくてもいい、と言っているのではない。理論的に正しくすっきりした体系の文法がよく、それが、日本語教育に適用されていると言っているのである。 6 [0 S- {3 S% n5 N7 t' C2 V
この辺の事情を知るために伝統的文法の「活用」から見ていこう。活用の種類から言うと、日本語の動詞は五段活用の動詞と一段活用の動詞に分かれる。略して「五段動詞」「一段動詞」と言う。それにただ2つの不規則動詞がある。不規則動詞は「来る」と「する」だけである。五段動詞、一段動詞にも例外的な変化をするものが少しある。 ※これらの例外的なものについては別の機会に考えることとする。 . P% m$ b! a- a( G! j* T
伝統的な日本語文法で動詞の活用形を唱えるとき
/ D9 J9 A. k/ X 「書かない 書きます 書く 書くとき 書けば 書け 書こう」$ T4 ~# a6 s& z, Y
と言う。活用形の名称は「未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 志向形」である。活用形は「書か 書き 書く 書く 書け 書け 書こ」である。「か-き-く-け-こ」と五段にわたって変化しているので、これを五段活用の動詞と言う。' O/ z! i9 U/ K. u* Y5 E( |; Z
5 x% Q8 v/ m! a$ C, R7 S
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 志向形$ \$ L5 r8 `1 O9 u
書か 書き 書く 書く 書け 書け 書こ) w) P5 w; x' L* y. B) P: g8 G
7 h$ a- n% E3 ^/ N: C( P: l
終止形と連体形は同じ形である。また仮定形と命令形も同じ形である。形が同じなら、活用形の欄を2つも設ける必要はないはずだ。 4 x! a/ Z. e8 b5 m6 U' i2 h
志向形を未然形の欄に入れる説明もある。つまり、未然形に「書か」と「書こ」という2つの形があるとするのである。しかし、これはおかしい。2つの形があるのなら、欄を2つ設けるべきである。 + y$ A5 z% h, X9 g R' r
一方で同じ形の欄を2つ設けておきながら(しかも2組も)、同じ欄に違う形を入れるというのは、全くおかしなことである。現代かなづかいが施行されてからそうなったのだが、それなら文法も変えるべきであった。 ; l! O4 {* k+ Y V
次に「見る」の活用表を見てみよう。 $ o, p( ?% w9 v; |+ f
% D( \' y- \" D4 V未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 志向形+ z$ p, L! a& V2 m9 s
見 見 見る 見る 見れ 見ろ 見
' V ?0 i0 m6 ]* v8 c/ l h
! t# y5 a4 k* m3 v$ n% e' M7 a9 k(命令形は「見よ」という形もある)
% E& i( j& |, `, fこれは一段動詞である。一段動詞では、未然形、連用形、志向形が同じ形(「見」)になる。また、終止形と連体形も同じ形(「見る」)である。
7 X& b2 m" c) f6 W6 x+ |活用形の欄は、形の種類の1番多い場合に合わせて、それだけ設けなければならない。それにしても、動詞の終止形と連体形は同じ形である。 ' H4 P/ U+ B# J+ e( Q& J
実は、形容動詞の活用形では終止形と連体形が異なるので、それに合わせて、終止形と連体形の欄を設けてあるのである。
9 m4 g" ~: V& p' n! S+ h新しい文法ではこのような活用表は用いない。, m8 ~9 y5 s6 f) p
& p% V6 q& L7 E+ O
☆“助動詞”は要らない[/COLOR]& I5 a: j* [9 ~$ L1 G7 A- p6 x" R
. t% y% h2 x: `1 v$ S- q3 B) B2 p
次に、伝統的文法の活用表に沿って、いわゆる「助動詞」の要らない理由を述べる。以下の説明の便宜のために番号をつけておく。
! v. |5 u6 J `; g! ~6 L. 9 i3 Y; v) N! m: h6 w' a/ c
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形 志向形
' |* _2 S. P, }# m書か(1) 書き(2) 書く(3) 書く(4) 書け(5) 書け(6) 書こ(7)7 ]! v# C/ w3 J3 D$ x9 H7 D8 L
+ B) L* O8 k3 }& X$ @6 @% z+ G# \「書か(1)」
W6 {& b+ _/ S
- n* P8 n2 f5 e; Q9 n 唱えるとき「書かない」と言うが、未然形は「書か」だけである。しかし「書か」という単独の言い方はしない。(ワープロで「かか」を変換しても「書か」は出てこない。)
% [2 z1 O3 m; m, e! ~: D, { 「書かない」の「ない」は助動詞と呼ばれているが、新しい文法では「書かない」全体で1つの形と考える。これは「否定形」の代表的なものだが、新しい変化表のどこに位置するかは、後でまとめて述べる。※動詞につくこのような「ない」は助動詞、単独で使われる「ない」は形容詞と考えられている。
$ V W0 B( a0 H3 f: k# f5 ?4 L: K1 X$ h4 E3 s
「書き(2)」% m7 J# y; [5 H! h" @3 U$ h ]9 u
- i+ t3 F$ G# f1 A g5 o' d
唱えるとき「書きます」と言うが、連用形は「書き」だけである。「書きます」の「ます」は助動詞と呼ばれているが、新しい文法では「書きます」全体で1つの形と考える。新しい変化表のどこに位置するかは、後でまとめて述べる。 ※「書き」というこの形は、単独で使われることもある。 連用形の中止用法である。
) y6 H) v7 S' Z, E7 I7 N- q) d" Q 手紙を書き、ポストに投函した。1 j% T. d3 H2 Z+ _* D# M
( Y B7 {" D& s+ E5 x8 h0 O' M「書く(3)」
1 Y$ V4 f% Y! t7 F$ ?
9 G% q/ v3 c& E1 Q3 c 新しい文法では「基本形」である。この形は辞書に載っている形ということから「辞書形」とか「辞書の形」とも言われる。! E% B. j1 [+ J }9 C _' {
; C d# Y @7 d3 ?6 D/ ]2 u; f8 ]
「書く(4)」0 D- O- J, D# ~4 m
4 U. Z9 C3 M {. Z 唱えるとき「書くとき」と言うが、連体形は「書く」である。この形は終止形と同じである。新しい変化表での位置については後で述べる。5 G. ^+ T' E" |& ]+ L( q8 S
1 X( b- o/ A2 [ Z: g0 X* P
「書け(5)」
& Z% e: ]9 F) ]( b& d5 o5 ?& V# X; h5 V* R
唱えるとき「書けば」と言うが、仮定形は「書け」だけである。「書けば」の「ば」は助詞と言われているが、新しい文法では「書けば」全体で「仮定形」である。「バの形」とも言う。新しい変化表での位置については後でまとめて述べる。
3 e# l8 s4 y* W7 [3 |
' J/ S3 j( f& I4 L; r. e+ Q S, w「書け(6)」
M; _+ `) @* H" o8 w4 v7 S' ?
" i, j" S4 o$ v$ H5 m 命令形は新しい変化表にもある。新しい変化表での位置については後でまとめて述べる。5 |. d6 \6 k* z9 W% P4 ]
$ l- q' Q; x: ?8 M9 d「書こ(7)」
3 G, m5 I3 `" Q4 q9 u! v& `+ n4 l0 c, }$ W
唱えるとき「書こう」と言うが、志向形は「書こ」だけである。しかし「書こ」という単独の言い方はしない。(ワープロで「かこ」を変換すると「過去」が出る。「書こ」は出ない。)「書こう」の「う」は助動詞と言われているが、新しい文法では「書こう」全体で「意志形」あるいは「ウの形」と言う。 K8 O. f: c- u+ d$ ]; a: J+ [* B
単独の言い方をしない「書か」「書こ」は独立の単語ではない。それにつく「ない」「う」も独立の単語ではない。これらはいっしょになって1つの単語(動詞)である。動詞の変化形である。したがって「ない、う」は変化語尾と考えるべきである。「書き」は、前に述べたように、連用中止用法があって、この場合は単独で(つまり、語尾や“助動詞”をつけずに)使われるが、「書きます」というときの「ます」は独立の単語ではなく、やはりこれも変化語尾と考えられる。
9 }3 {/ Q! D, L* q$ R4 d' L1 j" V, M& o0 d" G
結論:「(書か)ない、う、ます」は変化語尾である。助動詞ではない。
8 O6 O$ e2 ]$ W. K
* ^- V# s: s7 b7 O☆「書いた」や「書いて」は[/COLOR]# n: s: Q; R( k2 g3 V+ F
/ O% P, z- J0 N" v
伝統的文法の活用表には「書いた」という形がない。あれ?過去形がないぞ、これはおかしい、と思った人がいるにちがいない。そういう人は「新しい文法」も理解が早いはずである。「新しい文法」の表には「過去形」があり、体系的にしかるべき位置に存在している。(→新しい文法の変化表) " A" E$ t& @& O4 E
ともあれ、伝統的な文法では「書いた」や「書いて」という形のよってきたるところを「音便」という概念で次のように説明している。 * ^: L# [' J/ E
「書いて」というのは、連用形「書き」に「て」がついて「書きて」となり、それが音便によって「書いて」となったものである。6 n& c$ q1 S! z* T' l3 x- C
同様に、「書いた」は、連用形「書き」に「た」がついて「書きた」となり、それが音便によって「書いた」となったものである。 . [2 h: Y; R# r
音便というのは「発音のしやすさから音が変わること」である。動詞に関しては、イ音便、促音便、撥音便があり、 # H, T6 \) A2 g# N
イ音便 書きて → 書いて
# Z/ j) v) I }4 A; }& F0 e" G 促音便 取りて → 取って1 P3 o6 F+ l+ }# D' E& e6 o
撥音便 読みて → 読んで
; W: J t: j) T8 Z- i形容詞に関しては、ウ音便がある。 + C2 D# j+ P$ E5 p x
ウ音便 新しい → 新しゅう(ございます)
8 E- D( {' F! C8 h; k4 s( _7 }& {/ }9 [ {# ?
☆日本語の学習者にとっては「音便」は関係ない[/COLOR]5 H/ e3 {/ y! l3 z* Y
% c/ ^& C! ^( ] b2 F0 v2 @
しかし、日本語の学習者にとっては「音便」は関係ない。とにかく「書く」から「書いた」が出来ると知ればいいことであり、間に「書きた」という形があったとかということはどうでもいいことである。
9 T+ }7 u. G( N* [% ^ そこで、日本語教育では音便とは一切 言わずに辞書形からテの形あるいは過去形(書いた)を作る規則はこれこれです、と示している。具体的には『日本語文法入門』(アルク)を見てください。
" I' ^: m5 e/ J4 ^* W; X 「書き」につけたその「て」とは何か。これも助動詞と言われている。新しい文法では「書いて」で1つの形、つまり「テの形」である。「書いた」の「た」とは何かというと、これも助動詞と言われている。そうではなく「書いた」で1つの形である。過去形あるいはタ形と言われる。
- K+ V7 g3 i9 D0 m8 @+ E: _6 ]再度 示す。 ; M8 k, g& X) ]' k# Y" T
( i2 ]3 K3 x1 s; s1 l結論:「(書か)ない、う、ます、て、た」は変化語尾である。助動詞ではない。
; e; C1 B3 p: c4 `/ x9 D! X7 c1 O7 \! V" o/ B$ h
日本語教育はテの形を導入して文法を体系的に示すことができた。つまり、伝統的文法では日本語教育をするのに不便だったから、新しい変化表を考え、テの形というものを導入したのである。日本語教育の事情をよく知らない人はテの形とか TE FORM と聞くと「なんだかわけの分からないもの」と思うようだが、そうではない。
% u r( i4 c$ k. u/ X" u7 ]* V2 y; ^3 U
新しい文法の変化表[/COLOR]7 x3 s, ?6 n. K$ \) J7 z! K3 g
伝統的な活用表は体系的とは言えない。それしか知らない人は「日本語は体系的ではない」と言うが、実は、日本語は非常に体系的に整った言語なのだ。
/ x/ R2 L5 a4 e- m2 Z( E それでは、新しい変化表を示そう。 {2 x' C$ U5 f/ f
普通形 丁寧形 h( e- ?8 n* K$ @7 s) C
肯定形 否定形 肯定形 否定形
+ n! X3 ?+ S; F6 k- }. ^0 I; `叙述形 現在形 書く 書かない 書きます 書きません
. ~2 w$ z2 b* D$ f 過去形 書いた 書かなかった書きました 書きませんでした& ]3 a, ^7 f; l( D% l S8 E) q9 a
連体形 現在形 書く 書かない 書きます 書きません) Q8 H3 E2 m7 g) N4 F3 o2 C1 Y0 L
過去形 書いた 書かなかった書きました 書きませんでした% O$ S6 S2 F/ m# w
意志形 書こう 書きましょう
& y! \0 X1 l: M1 ]2 N命令形 書け 書くな
3 H# c) o+ N8 C8 d中止形 書き 書かず * Z' U3 f& t5 _/ L; z
テの形 書いて 書かないで 書きまして 書きませんで' d9 o6 g( e/ b! @- O: H$ k
書かなくて
' h# X% \3 r4 O- T1 Tバの形 書けば 書かなければ
' m; j0 c" Q6 K 7 B" B* y2 u( l* q% S) h' k
叙述形だけを取り出すと次のようになる。特にこれを基本8変化と言う。
, T0 {( e3 O: q3 K) h- V( b+ ~
4 {5 V# e, E) M }5 u$ \ 普通形 丁寧形" F# p7 T. y$ ?+ Z* Q1 _9 P
肯定形 否定形 肯定形 否定形" t9 b8 J6 M! r
叙述形 現在形 書く 書かない 書きます 書きません
% T0 s( e6 [" i0 g9 Q7 F6 O 過去形 書いた 書かなかった 書きました書きませんでした
7 [% h6 i7 @5 z. }, k5 }
7 I4 Q( c/ O/ P☆伝統的な活用表にあるものは新しい変化表ではどこにあるか[/COLOR]! r6 A" y+ G3 x. {1 L. |) S" J- k a
. ]6 O# C. U8 V# K0 a( \0 c L; H
伝統的な活用表を唱えるとき「書かない 書きます 書く 書くとき 書けば 書け 書こう」と言った。これらの形は新しい変化表ではどこにあるか。「書かない」「書きます」「書く」はこの表の一番上(現在形)の横の欄にある。これらは「書いた」「書きました」などとともに上のような体系をなしている。
2 W3 p. p8 E- k Q% ?- b 「現在形」「過去形」というのは形の名称であって、「現在形」「過去形」がつねに現在、過去を表すものではない。それぞれ、「ル形」「タ形」と言う場合もある。# G) @! Z( _. R
現在形(ル形)と言った場合は「書く」だけでなく、その横1列のすべての形「書く」~「書きません」を指す。過去形(タ形)と言った場合も、同様に、「書いた」だけでなく、「書いた」~「書きませんでした」を指す。
3 N6 |+ F3 G; D3 X* J 連体形「書く」はどうか。基本8変化のすべての形がそのまま連体形である。普通は「ます」のついた形は名詞を修飾しないと考えられており、初歩の日本語教育ではそう教えているが、実は、そうではない。* A. C; y; B& D2 N3 F8 y1 A! W
次にまいります電車はこの駅には止まりません。) d! h( M" X* Q1 u
のような文はある。ただし、少ない。前の表で右側2つの「ます」のついた形は連体形としては括弧付きである。 / Y: {; ~ e0 \2 f% y
「書けば」はバの形の欄に、「書け」は命令形の欄に、「書こう」は意志形の欄にある。しかも、それぞれ否定形、丁寧形とともに表のように体系をなしている。 8 S7 k5 ]- |! I$ e
4 K& N& L5 k) x3 t☆「書かれる」「書かせる」は[/COLOR]
$ A, |& }& `# y5 ]
7 B! \: h$ G7 D' O 「書かれる」は受身形である。伝統的文法では「れる」は未然形につく、と説明する。それだけである。新しい文法では「書く」の基本形から受身の基本形「書かれる」が導かれ、さらにこの「書かれる」からいろいろな形が導かれることを説明する。このことは重要である。8 A6 _$ Z. a! ? N( _& ]
# C [/ o8 E$ r4 P
「書かれる」の基本8変化を示せば次のようになる。
4 a6 P! S7 G& L0 ]- ^書かれる 書かれない 書かれます 書かれません
' M6 i) l" h+ ~$ a書かれた 書かれなかった 書かれました 書かれませんでした
, T. M0 k+ _( M; C9 e6 L1 l9 v( T7 q! x. ?. H& H
「書かせる」は使役形である。伝統的文法では「せる」は未然形につく、と説明する。それだけである。新しい文法では「書く」の基本形から使役の基本形「書かせる」が導かれ、さらにこの「書かせる」からいろいろな形が導かれることを説明する。このことは重要である。
' s) C' ~/ v/ Z- C# d* j9 O; |+ b- r% y. C4 I. o; c
「書かせる」の基本8変化を示せば次のようになる。
5 x- A8 M. J: `( I0 |# U書かせる 書かせない 書かせます 書かせません9 ~% M, u1 i) _! v) l) j- q
書かせた 書かせなかった 書かせました 書かせませんでした5 y$ E* d) |' _, ]
0 e2 Z( b4 J* e8 [7 F |