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欧州によくある石造りの古い建物は、窓を大きく取れないのでたいてい薄暗い。その代わり、小さな窓が切り取る景色には絵画に通じる味がある。正月休みと週末に挟まれた小窓のような金曜日、08年が動き出す音が聞こえてきた▼福田首相は年頭会見で、内閣改造の見送りを表明した。理由の一つは「これから実力を発揮しようという方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれない」。前任者は「私の内閣」と呼んだが、福田氏の口ぶりは逆に評論家を思わせ、「ひとごと感」さえ漂う▼誰もが聞きたい衆院解散、消費税引き上げについては、質問は出たのに答えず、23分で終了した。政治決戦の年とは思えぬ、のっぺりとしたやりとりだった▼米国では大統領選挙の幕が開いた。日本の政治風景を水墨画とすれば、こちらは原色の自己主張を塗り重ねた油絵だろう。どの候補の語り口にも自信があふれる。初戦のアイオワ州で民主党の3位に沈んだヒラリー・クリントン氏は、笑みを浮かべて巻き返しを誓った▼日米の政治風土やメディア観は違うが、少なくとも弁論で切り結ぶ覚悟がなければ、どの国の有権者もついて来ない。福田氏が「主役にする」と宣言した生活者に真っすぐ伝わる言葉を、今年こそ聞きたいものだ▼年明けの原油相場は史上初めて1バレル=100ドルに達し、株安とドル安がまた進んだ。天下大乱の兆しである。来週からは小窓ではなく、総選挙へと続く大きな扉が開く。指導者は存分にメッセージを発し、有権者はその資質を見極める好機だ。 |