2008年02月07日(木曜日)付
5 q, t6 L+ ]) r$ n7 K) _/ t" d9 P, s {! Q) ?& E) b: p
敵の多いことを恥じる必要はない。だが敵の名に恥じない者を敵にせよ、と言ったのは明治の文人国木田独歩だ。「卑しき敵は持ちたるだけにて此方(こちら)の敗北なり」と言葉をつないでいる▼アメリカ民主党のヒラリー・クリントン、オバマ両上院議員は、互いをどう思っているのだろう。相手にとって不足なしか。それとも不倶戴天(ふぐたいてん)の憎い敵か。大統領選挙の候補者レースは、山場のスーパーチューズデーを終えた。ともに譲らず、笑顔も涙も今後に持ち越された▼党内で勝たなければ、秋の本選挙には進めない。いまの一騎打ちは、いわば準決勝にあたる。片や共和党はどうやら、マケイン上院議員に流れが定まってきた。ベトナム戦争で捕虜になったが5年後に生還した国民的な英雄である▼大統領選挙の候補者たちは、箸(はし)の上げ下ろしまでを有権者に吟味される。なかでも今回、ヒラリー氏への視線は執拗(しつよう)だ。集会で涙ぐんだときは、「同情狙いのうそ泣き」とも言われた。ハンバーガーを食べてチップを渡さなかった、と報じられたりした▼有名税でもあろう。だが、もとは無名に近かったオバマ氏に追い上げられ、知名度に安住してはいられなくなった。お決まりの激しい批判の応酬をへて、双方が土俵中央で、がっぷりの四つに組む▼むろん互いに「敵の名に恥じない敵」に違いない。その敵同士が、本選挙で共和党と政権を争うとき、今度は味方になる。戦い終えて、美しくノーサイドといくものかどうか。まれに見る接戦は、人間観察の興味も連れてくる。 |