|
|
发表于 2008-3-11 11:29:06
|
显示全部楼层
天声人語
/ F9 B8 Q y( ]4 s8 B2008年03月09日(日曜日)付
, O* n" _, e) h8 J5 W3 e. h! e
~- M( l( I, |桃の節句を過ぎてなお、弥生の空は、春の誘いと、冬の名残に揺れているようだ。人の思いも、どこか似ている。たとえばこの季節の旅。春を迎えに南へ行くか、冬を追って北へ向かうか。楽しくも心迷うものがある▼とはいえ遠出はかなわず、せんだって手軽な「春」を迎えに隣の山梨県を訪ねた。桃の産地である。早生を育てる大きなビニールハウスで、早咲きを楽しませてもらった。山々は雪で白いが、20度あまりに保たれた中は花盛りである▼かすかに聞こえる羽音は、授粉のために放たれたミツバチの乱舞だ。下草も青々と伸びている。萌(も)える青草を踏んで野山を散策する楽しみは、「踏青」といって晩春の季語でもある。ひと月早い「春の野」に寝ころべば、体はほどけて眠気を催す▼2月の異名を「梅つ月」という。3月は「桜月」である。凜(りん)と咲く梅、艶(えん)と散る桜。2人の姉に挟まれて、桃はおとなしい末っ子のようにつつしみ深い。その桃が、古くは厄よけの霊力を持つ木として信仰を集めていた▼歌人の生方たつゑさんは幼いころ体が弱かった。母親は、桃が咲くと湯船に花枝を浮かべて湯浴(ゆ・あ)みをさせた。体の中の鬼を追い出すからと言い、「手のひらを丸めてすくったお湯を、肩にも、背にもかけてくれた」。そんな回想を残している▼男には立ち入りがたい、母と娘の世界だろう。たおやかなひとときには、桜や梅より桃の花がよく似合う。〈子も猫も母の近くに桃の花〉永田英子。凜でなく、艶でもなく。さて、どんな一字を桃に献じようか。 |
|