2008年10月3日(金)付
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2 b5 V" E2 B, ~( s 長渕剛さんの名曲「とんぼ」は都会への憧(あこが)れと挫折を歌う。〈死にたいくらいに憧れた東京のバカヤローが/知らん顔して黙ったまま突っ立ってる〉。花の都に寄せる片思いは多くが裏切られ、意のままにならぬことばかり。でも無様に、武骨に生きてゆく▼長渕さんと、スタンドを埋めた3万人の大合唱に送られ、オリックスの清原和博選手が引退した。華あり、涙あり。23年の現役生活を、「東京のバカヤロー」ではなく故郷大阪で終えた▼最終戦の相手、ソフトバンクの王監督がかけた言葉は「生まれ変わったら、同じチームでホームラン競争をしよう」。85年のドラフト。王さんが指揮する巨人軍の指名を信じて裏切られた男を、言葉で抱きしめた。同じシーズンにユニホームを脱ぐのも何かの縁だろう▼525本の本塁打を重ねながら「無冠」に終わった。最後の打席は、自身の歴代最多を更新する1955個目の三振。直球を投げ続けた杉内投手に頭を下げた。タイトルより大切なものがあると教える、美しい空振りだった▼「憧れの球団」に移ってからは故障に泣いた。投手がしつこく内角をえぐると、仁王立ちでにらみ返した。だが、そうした人間味や男気にひかれるファンもまた多かった。インタビューの受け答えにも、飾らない人柄がにじんでいた▼日本のプロ野球は、大リーグへの人材流出で危機にある。清原選手のヒーロー伝説、あるいは反骨の物語を、ここで終わらせるのは惜しい気がする。どうにもならない不運を力にする生き方の、続きを見てみたい。 |