【天声人語】2005年10月22日(土曜日)付
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. U: ^0 @; O5 B3 A; @ 「十月の明るいある朝、はれやかな朝日を浴びて、わたしはヨコハマを出発する」。フランスの海軍軍人で、明治期に日本を訪れたピエール・ロチの『秋の日本』(角川文庫)の一節だ。この見聞録には、彼の小さな発見が詰まっている。
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にぎやかな東海道から田園に入り、小さな女の子たちが幼いきょうだいを背負っているのを見る。背中にひもでぴったりと結び付けている様に、ロチの従卒が言う。「頭の二つある子供たち」
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' s3 `* [- L5 u! f# a ある家の前でロチは突然「大きな憤懣(ふんまん)を覚える」。「ぢいさんとばあさんが、てっきり食べるためだろう小さな二人の女の子を煮ているのだ!」。すぐ入浴と分かったが、桶(おけ)の下には火がかっかと燃えていたと記す。$ U- }) m1 m; `7 I' D
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ロチは「お菊さん」でも知られる。大正の終わり近く、その死を聞いた芥川龍之介は追悼しつつ書いた。「ロティは偉い作家ではない。同時代の作家と比べたところが、余り背の高い方ではなささうである」(『玄鶴山房・河童』新潮文庫)。
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9 c, ?' P! b: ]' w; R7 A2 i! p 芥川は、土砂降りの往来に似た人生をたどる人にとって、まず必要なのは雨をしのぐ合羽(かっぱ)だという。「新しい人生の見方」のような合羽を与えるのが「偉い芸術家」だが、ロチは「新しい感覚描写や抒情(じょじょう)詩」といった往来の「提灯(ちょうちん)」を与えた、と。
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ロチは、あの「ぢいさんばあさんの奇怪な料理」の家を去りながら記した。「この小さな一軒家、この料理、わたしたちが今後二度とお目にかかることのないこの正直な人人のにこにこ顔……」。ロチの小さな提灯が、時の肖像を未来に伝え続けている。 |