|

楼主 |
发表于 2011-3-17 09:08:58
|
显示全部楼层
本帖最后由 reiuka2 于 2011-3-17 09:30 编辑
一学期の終業式前日、放課後、私はいつものように、ウェルテルと一緒に直くんの家に行きました。六時頃でしたが、日はまだ高く、玄関先に立っていると、からだ中にじっとりと汗が浮いてきました。
この日、私は直くんに手紙を書いてきていました。牛乳パックを調べた結果を、修哉くんにだけ話して、直くんに話さないのはフェアじゃないと思ったからです。もちろん、簡単に結果を書いただけで、学校においでよ!などとは一言も書きませんでした。学校に来るか来ないは別にして、直くんの心をかなり軽くしてあげることができるのではないかと思いました。
わずかに開かれたドア越しに、まず、ウェルテルが、コピーの入った封筒と、プレゼントのようにラッピングした色紙を、直くんのお母さんに渡しました。あきれたことに、まだ色紙を渡していなかったのです。いえ、ずっと忘れたままでいればよかったのです。
家の中は冷房をきかせているかもしれませんが、直くんのお母さんは、真夏日にもかかわらず、厚手の長袖の服を着ていることがわかりました。顔はよくみえませんでした。ドアを閉められる前に、私は急いで手紙を渡そうとしました。そのとき、いきなり、ウェルテルがドアの隙間に片足を挟み、家の中に向かって叫び始めたのです。
――直樹、そこにいるなら聞いてくれ。実はこの一学期、苦しい思いをしていたのは、おまえだけじゃない。修哉もとても苦しんだんだ。修哉はクラスメートからいじめを受けた。陰湿ないじめだった。僕は、みんなに、それがいかに間違った行為であるかを説いた。魂を込めて、説いた。……みんな、わかってくれたよ。直樹、おまえが抱えてる苦しい思いを、まずは僕に、ぶつけてみないか。僕は、それを、魂を込めて正面から受け止める。僕は、必ず解決する。僕を、信じてほしい。明日の終業式、必ず来てくれ。待ってるから。
言いようのない怒りが込み上げてきました。いじめではなく、嫉妬だとごまかしていたじゃないか。なのに、解決した途端、あれはいじめだったと言うのか。外から二階を見上げると、直くんの部屋のカーテンが少し揺れたような気がしました。
ウェルテルは興奮しているのか、焦点の合わないキラキラした目で、呆然としている直くんのお母さんに、深く一礼し、ドアを閉めました。近所の人たちも、何事かと外を覗いていたようです。ウェルテルは、その人たちにも笑顔で一礼すると、私の方に向き直りました。
――ミヅホ、いつも一緒に来てくれてありがとう。
私に言っているはずなのに、まるでみんなに聞かせたいような、必要以上に大きな声でした。一人芝居です。最初からそうでした。
そして私は、第一幕から通してみている観客です。私は、ウェルテルが熱意を込めて家庭訪問をしているという証人として、ここに連れてこられていたのです。私は直くんに渡せなかった手紙を、スカートのポケットの上から握りつぶしました。
その晩、直くんはお母さんを殺しました。
|
|