【天声人語】2006年04月12日(水曜日)付 , O, F/ B e3 @, O8 G& P9 L
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鹿児島県の沖合で、高速船が何かにぶつかり100人以上がけがをした。乗客は座席から放り出され、船の天井がはがれ落ちたというから、衝撃の大きさがうかがえる。% U8 E" d5 i3 z, T* k, H: e
' S$ \0 I! t5 u" b, V ぶつかったのは、クジラだった可能性が大きいそうだ。高速船は、高速道路の車並みの時速80キロぐらいで航行するという。衝突防止には、双眼鏡による見張りの徹底などが挙げられているが、完全に避けきるのは難しいのだろう。
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9 N/ W. ?, @/ t) H& c8 ] クジラとの衝突だとしたら、クジラの方も無事では済まなかったのではないか。高速船の水中翼は、クジラや魚にとっては突進する巨大な刃物のようなものだ。
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5 |; C. |# B' h) x5 t0 x! k/ ^; H- v 「くじら法会(ほうえ)は春のくれ、/海にとびうおとれるころ」。『金子みすゞ豆文庫』(JULA出版局)の「くじら法会」の出だしだ。みすゞが生まれ育った山口県長門市では昔、クジラ漁が盛んだった。江戸時代に漁師たちが建てたという鯨墓があり、法要が営まれてきた。8 ?$ @4 t1 O: _% q5 F4 U# A: Y; L
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詩は「はまのお寺で鳴るかねが、/ゆれて水面(みのも)をわたるとき、/村のりょうしがはおり着て、/はまのお寺へいそぐとき」と続く。そして、まなざしは海の方へと向かう。「おきでくじらの子がひとり、/その鳴るかねをききながら、/死んだとうさま、かあさまを、/こいし、こいしとないてます」" O+ N9 x5 s5 M' E2 [, e2 f+ @% M
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便利さを追求してきた現代だが、この事故は速度と安全との兼ね合いを問いかけているようにみえる。クジラを、船の障害物とみるだけでいいのか。みすゞの、あらゆるものを慈しむ気持ちが、ひいては人の安全を保つ手だてにつながるのかもしれない。 |