【天声人語】2006年04月27日(木曜日)付
) H2 v, d E S) E9 M7 E- P
, h0 G, d) X! O5 G 和歌に詠みこまれて有名になった諸国の名所や旧跡は、歌枕と呼ばれる。宮城県の「姉歯の松」もその一つで、小野小町の姉にまつわる伝説もあるという。「伊勢物語」には「栗原の姉歯の松の人ならば……」とある。歌枕は、いにしえ人を旅へと誘った。
2 G Z& O8 P# w+ T8 I# I0 V+ b
! @9 W9 W2 @) N$ } 残念なことに、そんな興趣とは逆の芳しくない意味が、この歌枕に加わった。耐震強度の偽装事件で警視庁などが、姉歯秀次・元建築士や、関係のあった木村建設とイーホームズの社長らを一斉に逮捕した。) N, V/ F* K4 r' l! i
( ?5 W9 G# ?# [8 A
この刑事責任の追及は、偽装そのものとは直接につながらない容疑から入った。いくつかの容疑が固まって組み合わされていくうちに、ジグソーパズルのように大きな偽装の構図が浮かんでくるのだろうか。8 F& ?9 c0 m$ h2 f; F
' f) Y, F; ^- [+ Q3 `% g) E
事件の背景に見えているのは、まっとうな範囲を踏み外した経済性の追求だ。鉄筋を減らして工期を縮めるといった経費の削減への傾きが、偽装とどうかかわったのかが焦点の一つだ。建築確認のありようも含めて、偽装を成りたたせた構造の全容を明らかにしてほしい。
, f1 ]8 s2 p& F6 [; l7 ^
6 D( |1 L" @, b# w% I; j4 _9 s5 u 「姉歯の松」は、芭蕉の「おくのほそ道」にも出てくる。「平和泉(ひらいづみ)と心ざし、あねはの松……など聞伝(ききつた)へて」。歌枕の地があると聞き、人通りもまれな道をどこがどことも分からず行くうちに「終(つひ)に道ふみたがへて」と、芭蕉は記している(『松尾芭蕉集』小学館)。
2 C* s5 M0 B' o! A! O/ q
}+ o3 j' e( k" s" |9 { 元建築士は、どこでどう道を踏み違え、安全という一番大事なものを見失ったのだろう。そしてこの人は、偽装の全体像の中でも主役だったのか。いずれもまだ謎に包まれている。 |