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楼主 |
发表于 2011-6-7 11:49:29
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階段を上がる足音が聞こえてきた。母さんだ。「明日、警・察に行こう」と言いにきてくれたのかもしれない。嬉しくて、僕は部屋から出て、階段上で母さんを待ち伏せた。けれど。
階段を上がりきった母さんの手には、包丁が握られていた。
どういう、こと?
「何それ、警・察に行くじゃないの?」
「ううん、直くん。そんなことをしても、やり直しなんでできないの。もう直くんは、以前の優しかった直くんじゃないんだもの」
母さんは涙を流しながらそう言った。
「僕を、殺すの?」
「母さんと一緒に、おじいちゃんとおばあちゃんのところにいきましょう」
「そんなこと言って、僕だけころすんじゃないの?」
「そんなはずないでしょ!」
母さんが僕を抱きしめる。僕は初めて、自分の背が母さんを追い越していることに気がついた。不思議なほど安らかな気持ちになり、母さんと一緒なら、死んでもいいような気すらした。
母さん、母さん、たった一人、僕をわかってくれる人……。
「直くんは母さんの宝物よ……。直くん、ごめんね。直くんがこんなふうになってしまったのは、母さんのせいなの。上手に育ててあげられなくて、ごめんね。失敗して、ごめんね」
失敗してごめんね。失敗して、失敗……。失敗作!失敗、失敗、失敗、失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗……。
からだを離した僕の頭に母さんの手が触れる。優しく僕をなでてくれる母さん。その顔に浮かんでいたのは、哀れみの表情だ。
「失敗して、ごめんね……」
やめろ、やめろ、やめろ!僕は失敗作なんかじゃない!失敗作なんかじゃない!顔に、温かいものが飛び散った。
血、血、血、これは、母さんの血。……僕が、刺した?
かぼそい母さんのからだは、そのまま、階段を落ちていく。
待って、母さん!僕を置いていかないで!母さん!母さん!母さん!母さん!
……僕も一緒に、連れてって。
白い壁に映された映像は、いつもここで終わる。ここに出てくるバカな少年はいったい誰なのだろう。そして、どうして僕はこの少年の気持ちが手に取るようにわかるのだろう。
ところで、ついさっき、僕の姉だという人がやってきて、部屋の外から声をかけてきた。
「直くんは、何もしていないんだからね。悪い夢を見ていただけなんだからね」
彼女は僕を「直くん」と呼んだ。あの映像に出てくるバカ少年と同じ名前で呼ばれるのが気に入らなかった。ただ、仮に、僕が本当に「直くん」と呼ばれる人物なのだとしたら、悪い夢というのは、あの映像のことではないかと思う。
だとすればこれは夢なのか……。
それなら、早く目を覚まして、母さんの作ったベーコン入りのスクランブルエッグを食べて、学校に行こう。
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