【天声人語】2006年08月29日(火曜日)付% t6 A) r. v6 b* r" k2 B/ Y; F, }
- G) ?6 q: u! Q" O- R8 L' F
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」には、主人公のジョバンニ少年が級友ザネリたちにからかわれる場面が繰り返し出てくる。北方の漁に出かけて留守の父親がジョバンニに約束していった土産のことで、はやされる。「おとうさんから、ラッコの上着が来るよ」「ジョバンニ、ラッコの上着が来るよ」
% g1 e! y& o" w) W! L) [
0 u' `& U% A, j: x' R, U しつこい嫌がらせにジョバンニは傷つく。「ぼくはどこへもあそびに行くとこがない。ぼくはみんなから、まるで狐(きつね)のように見えるんだ」(岩波文庫)。, c9 A% H! R/ \5 S0 p2 G+ B6 h; ?
+ `5 K. y. N! [0 j8 s% i. M, V
ジョバンニの母は病に伏せっている。学校帰りには、活版所で活字を拾うアルバイトをして家計を助けている。そんなジョバンニの孤立感が、読み返すたびに胸に迫ってくる。そして、ザネリたちの「いじめ」が決定的な悲劇を招くまでには至らないところに救いを覚える。# }; k. I* O4 S1 E6 X, L$ ^9 |
5 P5 m3 X$ X1 Q7 T* b" [1 L+ W9 [ 愛媛県今治市で、学校でのいじめを苦に自殺した中学1年の男子生徒が、両親に「遺言書」を残していたという。「クラスでは『貧乏』や『泥棒』と言う声がたえず響いていて、その時は悲しい気持ちになります」「机にある小判は私だと思って持っていて下さい」「いつも空から家族を見守っています さようなら いままで育ててくれてありがとう」
- H1 t# v: {6 K' u
# c" [. H9 l- C8 ]; n M 過去に、いじめに絡む自殺で報じられた幾つかの「遺言」を思い起こす。「『チビ、デブ、短足』とからだの欠陥をいわれる。『気持ちわりい』といわれる」「みんなに悪口を言われ嫌われている」
3 V \- N3 o3 y w
) @' w6 O, W7 f* j7 Q 間もなく新学期という学校も多いだろう。言葉が、取り返しのつかない悲劇を招かないよう、心したい。 |