【天声人語】2006年10月07日(土曜日)付
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核実験をすると宣言した北朝鮮に対し、国連の協議が進んでいる。国際社会の懸念を逆なでするような、相変わらずの傍若無人ぶりにはあきれる。しかしこの国が、曲がりなりにも国連に席を持っていることの意味は小さくない。
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: B8 f; }0 {+ W' N( ?& R- y L# W 「国際の平和及び安全を維持すること」を第1条に掲げた国連憲章が発効して、今月24日で61年になる。冷戦と呼ばれた東西対立の時代から現在までの軌跡は、第1条の目的の達成が極めて困難だったことを物語る。
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しかし今のところ、これに代わるほどの平和維持の仕組みは無い。いかに不完全ではあっても、二度にわたる世界大戦の惨禍を経てたどりついた貴重な場には違いない。日本にも、この仕組みをより実効性のあるものにしてゆく責務があるだろう。
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「国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである」。200年余り前に、ドイツの哲学者カントが著した『永遠平和のために』の一節だ。「常備軍は、時とともに全廃されなければならない」ともある(岩波文庫・宇都宮芳明訳)。( b4 a6 f* y+ o( a S$ D* {3 r
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人類は「諸国家の連合」は手にしたが、コスタリカのように常備軍を廃した国は例外的だ。現実に他国の方に向けてミサイルを発射したり、核実験の脅しをかけたりする国々がある以上、対応する力は備えざるを得ない。ただ「永遠の平和」のための条件の一つが「全廃」という指摘にはうなずける。7 O7 D: g. C4 @/ o; c) \
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カントは「時とともに全廃」と述べた。その日は、それこそ永遠に来ないかも知れない。しかし、来る可能性が全くないと、今から決めつけたくはない。 |