【天声人語】2006年10月25日(水曜日)付
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t# n6 x- U% i" S# p 「維民所止」は「維(こ)れ民(たみ)の止(とど)まる所(ところ)」と読む。紀元前に編まれた中国最古の詩集『詩経』の一節だ。はるかに下った清の時代、科挙の予備試験にこの題を出した査嗣庭(さしてい)という人が、罪に問われた。
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当時の皇帝は雍正(ようせい)帝だった。「維」の字は「雍」の字の首をはね、「止」は「正」の首をはねたとされた(陳舜臣『中国の歴史』平凡社)。査嗣庭は投獄されて獄死し、一族も獄につながれた。著述の表現などで筆禍を招いた「文字の獄」の一例だ。$ S$ Y2 U5 k4 H% x1 g+ l( @# i
1 Q" \# g9 n) Q4 G 現代版の「文字の獄」だと批判される事件が、中国で起きているという。「官の世界は真っ暗闇。権力や金をものにする術にだけはたけている」。重慶市彭水県の男性公務員が、こんな意味の詩を作って携帯メールで流したところ、「党と指導者のイメージを傷つけた」として逮捕、起訴された。0 K) ~8 ^3 X, @& ~
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この県では、トップの党委員会書記が収賄容疑で逮捕されたり、幹部と業者との癒着が疑われたりして、住民の不満が高まっていたという。現代中国の汚職はかなり深刻のようだが、日本も、それを他人事(ひとごと)と言える状態ではない。; D: `# s) i, f/ k- J: P
- v- l0 ^+ [2 p' w9 A# D 先月、知事を辞職した佐藤栄佐久・前福島県知事が、収賄の容疑で東京地検に逮捕された。県のトップに君臨し、弟と組んで汚職にまで手を染めていたのが事実だとすれば、罪は重い。, b7 m: z* x, ]
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前知事が、本紙に述べている。「裸の王様と言われるかもしれないが、弟の土地取引についても談合疑惑についても、本当に知らなかった」。「『王様』の世界は真っ暗闇……」と告げる人は、だれも居なかったのだろうか。 |