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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2007-3-23 21:01:07 | 显示全部楼层

【天声人語】2007年03月23日(金曜日)付

 はるか遠い古代には、病気は悪魔の仕業と考えられていた。4000年以上前のアッシリアの粘土板に、こんな呪文が刻まれているという。「頭の、歯の、こころの、心臓の痛みの病気よ……悪い精よ、悪魔よ……家から立ち去れ」(春山行夫『クスリ奇談』平凡社)。
* O' n2 }. O, ^& z& [8 Q- L9 b9 N" w: w0 V# j& n4 w: b* \4 i4 z
 医師は魔術師のような色彩が濃かったが、医学を科学として確立したのがギリシャのヒポクラテスだった。この「医学の祖」の時代から現代までに、医学、医療は大きな進歩をとげた。, u. t+ I$ h# V

* }7 u! z) A; C  c8 W! | その現代医療の現場が、一つの薬の使い方を巡って混乱しかねない状態に陥った。インフルエンザ治療薬「タミフル」を服用した10代の患者を中心に、飛び降りや転落といった異常な行動が指摘されている。厚生労働省は、原則として10代の患者には使わないこととしたが、10歳未満ならいいのかといった疑問や戸惑いが起きている。
' r5 [# H# I4 H( |# v5 L! X
' K1 L% R0 R- n: K* o: Z; U 日本では、昨年度に860万人がタミフルを服用したという。そのカプセルを飲んだひとりだが、確かに高熱が急速に治まった記憶がある。しかし今回のように、年齢で制限する事態になるとは思ってもみなかった。厚労省と製造・販売元は異常行動との関係を更に詳しく調べ、速やかに公表してほしい。6 r: r$ I7 z6 J. o6 Z# J; u8 V
/ G- T6 G. D# L5 r6 ]
 ヒポクラテスは「病を治すものは自然である」という説を立てたという。治療法として自然の回復力を重んじつつ、病人や症状についての注意深い観察の大切さを説いた。, ~# J0 d! _. _/ l

0 F: Q3 d! @8 E4 Z3 i! z4 a ひとりひとりの患者の症状をよく診る。そしてその患者にふさわしい処方をすることを、現代のヒポクラテスたちには期待したい。
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发表于 2007-3-26 14:27:48 | 显示全部楼层
【天声人語】2007年03月24日(土曜日)付 ' J- v8 S4 R2 D& d
作家の城山三郎さんが亡くなった。経済小説という新しい分野を切り開いた。貴いこの仕事は、経済という一分野を超えた大きなものに貫かれていたように思われる。' L" C% G7 A4 Q

; |* R4 U: d' g, O/ v2 F# C 四半世紀前、城山さんはネパールに旅をした。ヒマラヤを仰ぐ山国の湖畔で悠々と草をはむ牛がうらやましく、生まれ変われるならネパールの牛になりたいと思う。そして、戦争末期にも同じ思いをしたことを想起した。
0 V- T7 H9 T  G! {% ?. y( `
; @! W' ~" S. `5 Z1 \+ b 17歳だった城山さんは、忠君愛国の大義を信じ、海軍に志願入隊した。そこで一部の職業軍人たちが愛国者の顔をしながらいかに醜いかを知る。理由もない体罰、ひっきりなしに振るわれるこん棒。兵士が芋の葉をかじる時、士官たちは天ぷら、トンカツを食う。演習の時、河原でのんびりしている牛を見て、牛の方がいいと思った。
2 O4 ~0 t; C9 u# F% E- s4 j6 c, r9 X5 o  W
 「大義名分のこわさ、組織のおそろしさ。暗い青春を生きたあかしとして、とりあえずそれだけは書き残しておかねばならない。そこからわたしの新しい人生がはじまった」。「大義の末」や「男子の本懐」などが生まれ、組織と人間を見つめる目に磨きがかかった。( l& W6 p6 _- p3 n% P; w

; E. O" s) G4 R7 I3 Y 「旗」という詩がある。「旗振るな/旗振らすな/旗伏せよ/旗たため……ひとみなひとり/ひとりには/ひとつの命」(『城山三郎全集』新潮社)。! [' C9 L! J. _

6 ]& q9 L+ F4 n: I' ^$ C7 j 旗一つで人をあおり、絡めとるようにみえる組織的な動きには、死の直前まで反対の声をあげ続けた。「戦争で得たものは憲法だけだ」とも述べたという。それが、城山さんを貫く思いであり、書き記そうとしてきたことの本質だったのかも知れない。
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发表于 2007-3-26 14:28:36 | 显示全部楼层
【天声人語】2007年03月25日(日曜日)付
  _5 }$ P" {. S- B- x# c6 gたしか作家の開高健さんだったと思う。アラスカの川でのサーモン釣りについて、次のような感慨を述べていた。1 I& D# @/ Q6 t+ z& _; T7 t8 n

) T0 u: n& r) R/ G) v( {/ t( H 体長1メートルにもなる大物が掛かると、釣り人は糸を切られないよう必死の格闘を強いられる。腰まで流れに漬かり、魚の動きに合わせて左へ右へ。こけつ、まろびつ、ときに引き倒されて溺(おぼ)れそうになる。「どっちが釣られているんだか、分からない」と。
: I% H, }2 a: y: K+ I7 N1 _' S6 v2 I8 q2 f0 o  P5 U- L
 よく似た思いを、道具に対して抱くときがある。昨今ならさしずめ1億台に迫った携帯電話か。仕事の連絡、遊びの誘い、その他もろもろ、どこにいても追いかけてくる。多くの人が24時間の臨戦態勢だ。使っているのか、使われているのか、分からなくなってくる。
$ C; i: E4 g2 A/ ]0 b( ]" [3 x8 k* Y: W4 }
 電車内でのマナー違反も臨戦態勢のゆえだろう。たとえば得意先からの電話をむげに黙殺は出来まい。同僚、家族、知人……。すぐ連絡がつくことを前提に世の中が動くから、マナーは後回しにされてしまう。日本民営鉄道協会によれば、携帯の使用はここ5年間、迷惑行為の1位か2位を占めている。
  k/ V$ s$ r1 x* b% o7 S/ l  o' ~
 「いっそ携帯OKの車両を設けたら」。そんな意見が先ごろ、他紙の投書欄に載った。携帯を使いたい人はその車両に乗り、ほかでは全員が電源を切る。これならペースメーカー使用者も安心だろうし、不愉快も減りそうだ。逆説めいた発想に説得力があった。
$ q& V0 G! ]/ L6 o5 ^% W# e& V+ y7 x! _/ _/ [; h
 なにせ1億台の「巨魚」である。「使われている」ことを認めつつ、溺れぬように付き合っていかねばならない。マナーについては、モラルを唱えるばかりではなく、実態に即した知恵も必要だろう。
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发表于 2007-3-26 14:29:03 | 显示全部楼层
【天声人語】2007年03月26日(月曜日)付 6 i( d" |1 o% c' ^* `; z
能登半島の北部の海岸沿いには、斜面に小さな田が連なった千枚田がある。かつてここを訪れた作家の佐藤春夫は、山にはい上がろうとする緑の波濤(はとう)のようだと述べ、こう詠んだ。〈千枚の青田渚になだれ入る〉(『佐藤春夫全集』臨川書店)。
4 y0 H( ^* M9 o2 c2 u! t
+ Z+ V* a$ q; h6 M$ }& z0 z: m, ? 青田がなだれ入る渚(なぎさ)から南西の沿岸付近を震源とする大きな地震が、きのう起きた。千枚田のある石川県輪島市や七尾市などでは震度が6強に達し、死者や多くの負傷者が出る惨事となった。: L" t# [! X4 `" H
# O4 D/ `: F0 k4 F3 w
 津波はさほどではなかったようだ。しかし現地からの写真では、家が崩れたり、国道が地割れで裂かれたりしていて、揺れの激しさがうかがえる。8 a: C" E! [; F& A$ ~
7 ]1 a; i1 ~' g8 D# I# D5 O- o
 「能登はやさしや土までも」という表現がある。この地方のおだやかな人情と文化、豊かな自然は、日本の原風景にもたとえられる。99年には春夫が詠んだ千枚田で、駐日外交官と家族らが田植えや稲刈りに挑戦した。9 \, w! [0 Z. N6 A/ |) f

4 r. E7 ~: f2 I7 o' o7 n だが、地上の営みがどれほど豊かであろうと、どんなに心優しき人々が暮らしていようと、そういうことにはお構いなしにある日突然、大地は揺れる。これが、地震という自然災害の怖さと残酷さだろう。今回はたまたま、日曜日の午前中という経済活動がゆったりした時間帯だったが、地震は時を選ばない。* p1 r% X, o: P# i, I

+ B( ?4 k7 G3 U* E# ` 04年の新潟中越地震で母子3人が乗った車が土砂に埋まり、男の子が救出された現場の県道が開通した。地震で閉ざされていた道がようやく通じる一方、新たな被災地で道が断たれる。地震国の厳しさを象徴しているが、空輸を含む救援の道だけは、断裂も閉鎖もさせないようにしたい。
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发表于 2007-3-27 08:44:52 | 显示全部楼层

【天声人語】2007年03月27日(火曜日)付

 卒業式の定番曲が入れ替わるなかで、この春「蛍の光」は何回歌われたのだろう。苦学を表す蛍雪(けいせつ)は貧しくて灯油を欠き、蛍の光や雪あかりを頼りに書を読んだ中国の故事による。いまどき照明不足で学べない子はいない。入学商戦の学習机は「目に優しい調光式」だという。, S5 E7 ]8 y( h* @2 Y. l
/ n/ T0 Y' g, l7 ^; N7 J0 k
 光は正義に通じる。不正を白日の下にさらすのが善で、闇から闇に葬るのが悪。実際、世の中には一定の明るさを求められる状況が多い。8人が死傷した兵庫県宝塚市のカラオケ店火災を受けて、全国の自治体が同業者を立ち入り調査した。7割の店で違反が見つかり、誘導灯などに不備が目立った。6 U' i" T9 l% t) r5 I0 F

  s8 k; u1 J' l サッカーのJ1に初昇格した横浜FCは、本拠地の球技場が暗いと指摘された。照度がリーグ規定の1500ルクスに届かず、改修を要請されている。
3 w4 @' ^# R- v1 n3 Z
0 y. [0 i* Q) ~7 M- g  a' `& {6 c) q しかし、都市の明るすぎる夜には異議もある。「暗くて、身体の動きも少ないが、しかし眠くないときがある。人間がものを考えるのはそういうときだ」「(輝く夜が)人に常に動き回ることばかりを強いて、じっと考える能力を喪失させた」(乾正雄『夜は暗くてはいけないか』朝日選書)。
3 w( l9 P, b4 L/ I. v/ C; d5 q% |2 S1 z% Q! b; }; d
 いくらでも光がほしいのは、避難通路やスポーツ施設のように「悩むより動け」の環境だろう。一般に、過度の明るさは沈思黙考を妨げる。
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发表于 2007-3-28 15:10:41 | 显示全部楼层

【天声人語】2007年03月28日(水曜日)付

 最近の言葉から。スポーツライターの乙武洋匡さんが4月から、東京の小学校の教壇に立つ。「みんな違っていてもいいんだという『五体不満足』のメッセージを伝えたい」/ d- z' {; l) D* C* Q

( H- v3 P3 ^( {) k' A, ?4 }% { 定期的に痰(たん)の吸引が必要なことを理由に保育園への入園を一時拒否された東京都東大和市の青木鈴花ちゃんが保育園を卒園、1年生になる。「いっぱいお友達を作ってがんばります。休み時間におままごとをして遊ぶのが楽しみ」
( G7 y) V+ R8 w; P" r2 J# h$ f5 S) z; p4 y
 「彼が解放されない限り、ぼくは救われない。解放されたとしても、彼の一生をつぶしたことになると思っている」。彼とは、66年に静岡県で一家4人を殺したとして刑が確定し、再審を求めている袴田巌死刑囚。一審担当の元裁判官、熊本典道さんが述べた。無罪を主張したが、合議で死刑に決まったという。
4 }% e* i7 }9 ?! D3 y" @% s% k; ^2 @" P# X0 g0 ?5 N
 「財政に強い議会」作りを進めてきたという北海道栗山町の議長が語る。「議員が財政に強くなると、議会の監視力が高まる。カネがないと分かっていれば『あれやれ、これ作れ』なんて言う議員はいなくなる」
; ~6 r4 B0 [1 b/ Z2 R; m, P3 i8 ^( o
 フィギュアスケートの安藤美姫さんが世界選手権を制した。「トリノ五輪の後つらい時期があったが、みんなに励ましの言葉をもらって乗り越えることができた」2 ]7 @5 O0 I, c( b4 d

! J. h: Y/ m8 _ 本紙で来月始まる男性の投稿欄「男のひといき」に、作家・北村薫さんからエールが届いた。「大切なものって、日常に転がってたりしますよね。猫の爪(つめ)が刺さった瞬間の痛みや、子どもと道を歩いている時の幸せ、夕焼けのきれいさ。人間の心に食い入ってくるものが、日常の中にはあります」
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发表于 2007-3-29 08:43:36 | 显示全部楼层
【天声人語】2007年03月29日(木曜日)付
6 X8 X+ I' Q* \# M& q- @! u$ c, ]% _) M
 一休さんのような少年僧が、暗い道に張られた縄に足をとられた。地面にしたたかに顔を打ち付け、血が噴き出す。しかし、少年は泣くこともなく寺に帰ってゆく。7 O9 N! j9 A% q6 B- r

% Y- ^4 f) q8 p8 e 「衣を着たときは、たとえ子どもでも、お坊さんなのだから、喧嘩(けんか)をしてはいけません」。少年は、縄を仕掛けた連中が近くに潜んでいるのを感じたが、この母の教えを守った。母は、血だらけで帰ってきた彼の手当てをし、抱きしめて言った。「よく辛抱したね」6 g7 d9 A, A: K. a* R1 {
2 h. L; _+ d, B: F: o3 S$ v( S7 w( i
 80歳で亡くなった植木等さんが『夢を食いつづけた男』(朝日文庫)に書いた、幼い頃に受けた「いじめ」と母の記憶だ。住職だった父は、部落解放運動の闘士でもあった。治安維持法違反で入獄したり、各地の社会運動に出かけたりして寺に居ないため、植木さんが檀家(だんか)回りをせざるをえなかった。% M0 D# c4 X4 A7 F" a' ]+ b! C
' g0 ]% k4 O; T4 [- [. I
 父・徹誠さんは後年、「スーダラ節」の「わかっちゃいるけどやめられない」のくだりについて、「親鸞の教えに通じるものがある」と言ったという。「人間の弱さを言い当てている」( f! L* y$ y9 X. q2 G" [
+ i. a' d5 I, f7 W" e
 おだてられてその気になったり、お呼びでないところに出てしまったり、あげくには、ハイそれまでよになってしまったり。人の弱さと浮世の切なさとを、底抜けの明るさで歌い、演じた。* `! u! G( G. E

1 x0 B" Y1 I5 q 「無責任男」として有名になったが、根は誠実で、思慮深い人だったという。いわば、世の中の「無責任感」を一身に背負うという責任感が、あの笑顔を支えていたのではないか。耳に残る数々の「植木節」は、戦後の昭和という時を共にする多くの人の道連れであり、応援歌でもあった。
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发表于 2007-3-30 08:51:46 | 显示全部楼层
【天声人語】2007年03月30日(金曜日)付
. a% V+ ^+ {3 R% X
7 u! d8 p2 E0 A9 O+ m 安倍首相が掲げている政治目標に「戦後レジームからの船出」がある。レジームという言葉は、フランス革命で倒されたアンシャン・レジーム(旧体制)を連想させる。この旧体制は絶対君主制で、国民は極めて抑圧されていた。
( ^% `% c5 j  _6 G% A* H2 o/ L( d1 a9 O/ P  I: y+ m
 安倍首相が「船出」に挙げるのは、改憲して新しい憲法を制定することだ。その憲法を改める手続きを定める国民投票法案が成立する公算が大きくなっているという。
' m0 o" l/ I% t
; l9 B1 v* M6 W+ ]' W3 [ 手続きを決めるものとはいえ、ことは国の最高法規にかかわる。発足から半年の安倍政権の軌跡をみると、これだけ重みのある法案をきちんと取り扱えるのかと不安になる。9 y+ d$ d+ V( H

  I) O0 h) }6 F この政権に向けられた疑念に「政治とカネ」の問題がある。それを象徴するのが松岡農水相の光熱水費疑惑だ。無料のはずの議員会館の光熱水費を5年で3000万円近くも計上していた。説明を拒む農水相が閣僚や議員としての適性に欠けるのは明らかだが、それをかばい続ける首相の適性もまた問われている。国会での多数の力に寄りかかっているのだろうか。
( H3 v7 Y! F$ U7 ^0 ?6 p: X
- Z/ n/ f# u5 w4 Y7 G& j2 U フランス革命の少し後に生まれ、「アンシャン・レジームと革命」を著した歴史家で政治家のトクヴィルは「多数者の専制」が少数者を脅かす危険を警告した。「どんな政府であれ、力のあるところには卑しい根性が近づき、権力には追従が付きものであると思う」(『アメリカのデモクラシー』岩波文庫・松本礼二訳)。' v! D2 a  ]9 S" r) Q3 U

/ X; L" G+ A' z( {& t& K% u 民主政治の国では、多数派が優位に立つ。しかし、数に物を言わせて「船出」を強行するとしたら、国が沈むことにもなりかねない。
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发表于 2007-3-31 09:11:06 | 显示全部楼层
【天声人語】2007年03月31日(土曜日)付 : k0 ~7 F  o9 U( J
毎年ながら、こんなに白に近いものだったかと思いながら見上げる。しかし白そのものではもちろんなく、花は、ほんのりと薄紅に染まって風にゆれている。
: Q$ z! a- d' Q" F4 C( x0 I( q
7 u/ y- O: t% ?1 L 東京あたりではソメイヨシノが満開になった。新1年生を待つ無人の小学校の校庭で、あるいは思いがけない通りの角で、春本番を告げている。〈さまざまのこと思ひ出す桜かな〉。いつもながら、分かりやすすぎて憎いような、芭蕉の一句が浮かぶ。せかされるように、花びらを散らし始めた桜もある。9 H" i9 T6 `! i# P9 s9 K
3 ^3 I! i- h* G% Y9 \- ?# R% H
 3月の末日、明日からは新しい職場や学校に移る人も多いだろう。列島の至るところに、これまでの住まいを離れる多くの人と、それを見守る更に多くの人たちがいる。
: e2 a0 I* W! M& E- I" Q. _& r1 d! F2 m
 今年、「団塊」の世代の先頭の一団が還暦を迎えた。2007年問題などといわれて久しい。確かに、人口ピラミッドに特別大きな出っ張りを描きながら年を重ねてきた面々がまとまって去るのは、ことによれば大事(おおごと)かもしれない。
, y1 i7 K* g# q  T2 w
) h/ @6 f; v% m. i/ w  ~  G* k6 t しかし考えてみれば、団塊などと一塊にしてみたところで、中身は一人一人別々だ。継承に悩む職場がある一方、重しが消えて風通しがよくなるところもあるのではないか。この団塊に限らず、人は人を、その属する集団や出身などの塊で見がちだが、個別のばらつきの方がはるかに大きい。それを、改めて知る春なのかもしれない。3 U9 [& g: c, i1 Z6 p1 x

2 ], E+ k3 W; _) j' |( q4 B 唐の詩人が詠んでいる。〈年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず〉。私事で恐縮ながら筆者も今年が還暦。ご叱正(しっせい)、ご愛読に深謝しつつ、切りのいいこの年度末で、次と代わります。 ) z+ b2 b# v! Z8 [
3 n0 \$ J+ P- e- {
     ◇
% J( E+ ^6 V. N4 r! e" [9 l0 A! y" e% w6 H2 y' b
 明日から「天声人語」の筆者が交代します。04年4月から担当してきた高橋郁男論説委員に代わり、福島申二、冨永格(ただし)両論説委員が執筆します。
) g, e! ~0 Q+ ]6 p* H8 u5 K( \% r8 I' W# _0 }" a
 福島記者は主に社会部で多様なテーマの取材にあたり、編集委員も務めました。02年から3年間はニューヨーク特派員としてイラク戦争前後の国連や米大統領選を報道しました。50歳。
6 ?1 C+ W+ h$ O: {0 s, U' s, b" k  ^3 P
 冨永記者は経済部と外報部の取材経験が長く、2度のブリュッセル勤務で欧州統合の最前線を伝えました。欧州には通算10年滞在し、04年から今年1月まではパリ支局長でした。50歳。
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发表于 2007-4-1 12:39:03 | 显示全部楼层
2007年04月01日(日曜日)付) N( O% }$ Y+ c/ W) f" @) r+ ]& E
# o# B5 A& S5 h( t8 D4 ~. P
 100年前のきょう、少々思わせぶりな社告が朝日新聞に載った。当日からの紙面刷新の知らせに続けて、ある小説家の消息を、おおむね次のように伝えた。
8 i' @* \, d* Z3 c$ ~6 s- i* w1 G$ F$ `; I0 m0 {/ z: J0 E
 「わが国の文学界の明星が、近く本社に入社することになった。新聞小説に評論に、その才能を発揮することだろう。さて、誰であろうか?」。思わせぶりは功を奏し、問い合わせが相次いだ。
( j( c+ T3 @* |3 x8 M
9 i% Q$ b0 A$ P; ?7 u7 ~4 h7 k 翌日、二の矢を放つ。「強いてのお尋ねだから教えよう」と勿体(もったい)ぶって、「新入社は夏目漱石君」と明かした。東大講師でもあった漱石の転身は世を驚かせた。その年の「虞美人草」を皮切りに、「三四郎」「それから」「門」「こころ」などと、名作を次々に連載していく。# ]: f! q- K) P- l) e

1 l/ n9 [$ _( T+ C7 X) S. J3 s 100年後のきょう、朝日の紙面は新しくなった。この欄の筆者も代わった。とても漱石先生のような「明星」とはいかない。〈菫(すみれ)ほどな小さき人に生れたし〉は漱石の句だが、そう願う必要もない、もとより小さき人である。: a0 I( _" H! l
; k# G3 L  H& Q1 K1 k3 f
 無名も、有名も、多くが新しい舞台に立つ4月だ。進学、就職……海の向こうでは、新たな日本人選手が加わって大リーグが開幕する。そういえば漱石の盟友の正岡子規は大の野球好きだった。〈久方のアメリカ人(びと)のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも〉と歌に詠んだ。
, H. c3 k) G3 f( j3 K- D  P
2 j' [. s4 E0 m) n7 e- R 「久方の」は古来、「天(あめ)」などにかかる枕詞(まくらことば)だった。万葉の雅語を、子規は、新しい国アメリカの「アメ」にかけた。おおらかな茶目(ちゃめ)っけと自在の気構えに、心を開かれる思いがする。( H  x5 T, {+ Q) {
$ h2 M3 Y5 T4 n5 ]1 s2 z0 p+ C3 s
 伝統の上に、新しい言葉を刻んでいければと思う。
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发表于 2007-4-2 14:35:10 | 显示全部楼层
2007年04月02日(月曜日)付
( H, J. |% \9 a# L# d
9 `0 V2 [/ v) n7 p1 ^1 o 朝日歌壇のファンには、輪島市の山下すてさんを覚えている方も多いだろう。80年代から90年代にかけて、自らの住む能登の四季を情感豊かにうたい、毎週のように入選を重ねた。5 S$ c/ Q. R/ g1 m: Q
6 W. Z. s" e. b5 D  E
 〈遠山に雪まだあれど晴れし日は頬を包みて野火を放ちぬ〉〈沖の蒼(あお)いよよ極まる朝市に紫蘇(しそ)も売られて梅の漬けどき〉。もう亡くなられたが、歌には、風土に根ざした確かな暮らしが詠み込まれていた。9 b; E& D, s$ M4 ]( ?
2 `9 J' m/ g1 I1 M) ]
 能登半島地震で被害の大きかったその輪島市へ、この週末、大勢のボランティアが入った。暮らしを覆された人たちには、心強かったことだろう。高齢の女性は、「もったいなくて」と声をつまらせていた。駆けつけた側にも気負いはなく、阪神・淡路大震災で芽吹いたボランティアが、普通の善意として定着している印象を受けた。/ ?# z* Z2 z$ r, c0 y+ O
% b% @  `6 _. L8 l. ^2 H
 2年半前の新潟県中越地震で被災した旧山古志村(長岡市)では昨日、ようやく、すべての地域で避難指示が解かれた。住民が立てて歩くのぼり旗には、「元気をありがとう」と、長い励ましへの感謝が染め抜かれていた。
3 x: S) N; f% E$ U- i( o! p: `7 x5 V6 b) v; `  o4 e
 能登の人たちにとっても、長いのはこれからだ。一時の関心で終わらず、能登が「忘れられた被災地」にならないよう、私たちは心したい。ニュースの中心の輪島市だけでなく、被害の大きい志賀町や穴水町のことも忘れまい。. w+ I( a0 ^' z8 [5 ^) J9 [( U, ~
3 A' S  e6 ~6 O6 I# H
 冒頭の山下さんに、こんな歌もある。〈花冷えに藍(あい)大島を畳むかな帰り来る家あるは倖(しあわ)せ〉。新潟の避難指示は解かれたけれど、なお千人以上が戻る家なく仮設住宅にいる。そのこともまた、忘れまい。
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发表于 2007-4-3 11:55:48 | 显示全部楼层
2007年04月03日(火曜日)付1 W! K6 r: t2 ]9 ]

/ ]# h! V- C, E$ J+ h$ ^ 英国の文豪サマセット・モームが晩年、一番うれしかったことは何かと聞かれ、こう答えたそうだ。「戦場の兵士から、あなたの小説は一度も辞書を引かずに読めたと手紙をもらったとき」だと。平明な筆致の作家ならではの感慨だろう。6 k1 U0 E1 g/ Y* h3 U8 ^' j% J

- d& p9 s; p2 T 昔から辞書は、枕にはいいが持ち運ぶのは大変、と相場が決まっていた。だが今なら、その兵士のモームへの感謝は薄かったかもしれない。手のひらサイズの電子辞書が、紙の辞書に取って代わりつつある。
" v* j  n0 g4 ?% Z: c! T, ~5 `# Y. @
 進学、進級の季節、売り場の新機種は実に多彩だ。辞書機能だけではない。100冊分の実用書を取り込んだもの、外国語の音声を出すもの、と進化を重ねてきた。業界団体によれば年間の販売は230万台を超す。人気ぶりを詠んだ川柳が地方版にあった。〈広辞苑にあくびをさせる電子辞書〉。% f& e" J* f; n# R* _

# ~! W  n( V  D+ }% J2 q& T1 R 退屈しなくてもいいのは、古今の知識人が皮肉とユーモアを込めて編んだ読み物としての辞書だ。米国の作家ビアスの「悪魔の辞典」は名高い。たとえば「平和」を「二つの戦争の間のだまし合いの時期」と辛辣(しんらつ)だ。8 F$ y# ^% U' i: g6 l* h
; k, r7 }" Y" P1 n5 @
 フランスには「楽天家用小辞典」なるものがあると、河盛好蔵さんの随筆に教わった。この辞典では、たとえば「約束」は「選挙のときに使われる小銭」となる。さらに「約束を守らない人間に対してもあまりきびしくしてはならない。彼らは希望の種をまく人だから」と皮肉る。
; [; T2 }3 }* v4 P1 e+ ~& H
1 R7 X3 l5 W( u$ @ 統一地方選がたけなわだ。小銭をばらまいているだけの候補者はいないのか。厳しく吟味して、地域の将来を誤らぬようにしたい。
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发表于 2007-4-4 11:51:26 | 显示全部楼层
2007年04月04日(水曜日)付! ^; u4 ?) x8 n1 _8 }5 E0 X7 C

6 I8 b  R2 @" _ 劇作家の井上ひさしさんは昨夏、先の戦争責任をテーマにした「夢の痂(かさぶた)」を舞台に載せた。書き進めていくうちに、日本語を“被告人”にすることになったという。
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 「日本語は主語を隠し、責任をうやむやにするにはとても便利な言葉だから」。戦争を遂行し、支えた多くの人が、戦後、責任をすり抜けて遁走(とんそう)した。それを助けたのは、主語なしで成り立つ日本語だったと、井上さんは思う。
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6 d* \4 T/ Q1 ?' j$ i, { 広島に原爆死没者慰霊碑がある。その碑文「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」をめぐって「主語論争」があった。過ちを犯したのは日本なのか、アメリカではないのか、などと批判がわいた。いまは「人類」を主語とすることで多くに受け入れられている。
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7 {: }4 ?6 g8 T9 ] 06年度の教科書検定の結果が先ごろ公表された。太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団死(自決)について、日本軍が強いたものもあった、とする表現に文部科学省が意見をつけた。来春の高校教科書から「日本軍」という“主語”が消えることになった。
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 修正後の表現は状況があいまいで、住民が自ら死を選んだ印象が強い。これまでの検定では合格していた表現なのに、今回初めて意見がついた。「美しい国」を掲げる政権の意をくんだかと、かんぐりたくもなる。
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 様々な出来事の責任をうやむやにすれば、行き着く先はお決まりの「戦争のせい」「時代が悪かった」という、あきらめの強要だろう。だが戦争を起こすのも時代をつくるのも、それぞれの立場でかかわる人間にほかならない。
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发表于 2007-4-5 09:53:41 | 显示全部楼层
2007年04月05日(木曜日)付! z# f! M5 x+ q8 J
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 こんなニュースを読むと、生命を「いのち」と平仮名で書いてみたくなる。体重わずか265グラムで生まれた女の赤ちゃんが、無事に育って東京の慶応大病院を退院した。日本ではこれまでで最も小さく、世界でも2番目という。
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& r) S# P. h; `& i, I1 X 予定より15週早く生まれた。体の機能が未熟だったため人工呼吸器をつけ、へその緒の血管から栄養の点滴を受けた。いまは自分でミルクを飲めるようになり、体重も3000グラムに増えた。9 v& F8 M* |% v/ G5 W7 N/ L
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 生まれたとき、どれほど小さかったのか。試しに手元のバナナをはかりに載せると、ほぼ同じ260グラムである。たったこれだけの重さに人間の生命が宿り、消えることなく育っていった。小さな「いのち」のたくましさに、粛然となる。8 g- A& T1 w% |- L7 b
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 赤ちゃんには不思議な力があるらしい。作家の大庭みな子さんは育児体験をもとに、「放っておけば死んでしまうはかなさと哀れさで、親の中から信じられない力を引き出す」と随筆に書いた。わけても265グラムのはかなさは、医師や看護師から、並々ならぬ力を引き出したことだろう。
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 退院していった赤ちゃんに、高階杞一さんの詩の一節が重なる。〈……今から何十億年か前 そんな 遠い昔からの約束のように 今 ぼくが ぼくという形になって ここにいる ふしぎだ〉。高階さんは息子を3歳で亡くした悲しみを胸に、いのちの言葉を紡いできた。
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 新しい学年の始まる季節。自分も、まわりの友だちも、みんな遠い昔からの約束のように、学校に、クラスに集う。一人ひとり、一つずつ、いのちを持って。
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发表于 2007-4-6 08:47:50 | 显示全部楼层
2007年04月06日(金曜日)付
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) H) T, R: Q2 K 野球を見に球場へ行く。少し暗い通路を歩いて観客席に出たとたん、目の前にまぶしくフィールドが広がる。この瞬間が好きだ。
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: Z2 R* m5 o! y# D4 j% n 試合前なら、選手はゆったりと、遠投やランニングで体をほぐしている。間もなく始まるゲームに、心が浮きたってくる。ファンにとって、観客席への通路は、非日常への扉なのだ。大人も子どもも、夢を見たくてやって来る。
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; U" k! g! U& I7 v その夢の舞台裏が、根腐れているらしい。西武球団の裏金問題は野火のように、他球団に広がる心配が生じてきた。アマチュア球界を巻き込んだ、大がかりな不祥事に発展するかもしれない。球春の空が、にわかにかき曇ってきた。
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6 \+ n* U9 K; r# P0 ` 調査の委員会を率いる慶大名誉教授の池井優さんは、大リーグ通で知られる。少年時代からヤンキースタジアムで試合を見るのが夢だったそうだ。その夢は20代の末にかなう。胸を高鳴らせて、球場のゲートをくぐったことだろう。5 O0 d& j1 e& l7 N  T5 y* ^6 W- V

& l2 f7 o) r( b0 r- D1 E2 \ 大リーグにも不祥事はあった。なかでも1919年のワールド・シリーズでの八百長疑惑は悪名が高い。名選手だったシューレス・ジョーら8人が球界を追放された。裁判所で、無実を願う一少年が叫んだという「うそだと言ってよ、ジョー」の言葉は、いまも人々の記憶に刻まれている。
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! P. U& h( a3 }6 e2 S 祈りにも似た叫びに、ジョーが「坊や、本当のことなんだ」と答えたと伝わるのも、せつない。裏金問題は「談合のように日本社会の構造に深く根ざしている」と池井さんは言う。「うそだと言ってよ」と願うファンの叫びに、どんな答えが返ってくるのだろう。
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