2007年04月11日(水曜日)付
8 _4 F1 B9 q5 j
0 y2 q, z9 e3 | 日に日に春がたけていく。この季節の「宵の刻」には、そこはかとない風情がある。+ o. @6 T# q; a& ^6 B! A. v
% ?4 o, P) p6 x
「春宵一刻値千金(しゅんしょういっこく・あたいせんきん)」で始まる漢詩が思い浮かぶ。宋の詩人、蘇軾(そしょく)の絶句「春夜(しゅんや)」である。「花有清香月有陰……」(花に清香あり、月に陰あり……)と続く、甘美な詩句を愛唱している人も多いだろう。$ v: O, s U! Q, e0 p5 ?; i$ |
9 N' n* K' |1 k! w 「宵のうち」という表現が、気象庁の予報用語から消えることになり、惜しむ声が相次いでいる。午後の6時から9時をさすが、もっと遅い時間だと誤解する人がいるからという。新しい表現は「夜のはじめごろ」になる。機能的だけれど、いまひとつ趣を欠く。
; |& h* [6 `5 I; x$ m4 S/ Z- P) k
- H2 [/ D. @& F& u' s 気象庁は時おり用語を見直していて、10年前には「夜半(やはん)」が消えた。そのとき「宵のうち」も危なかったが、「宵っ張り」や「宵待ち草」など身近な言葉が多かったため、目こぼしされて残ったいきさつがある。+ j( o! Y- r1 d- K, G% l
8 `0 G2 U4 m) |) e3 D$ r
時を表す古い言葉には、それぞれ“表情”がある。「たそがれどき」は寂しげだが、「火(ひ)点(とも)し頃」は盛り場のざわめきを聞く気分がする。夜明けの前後をいう「かわたれ」や「朝まだき」は物静かだ。だが「払暁(ふつぎょう)」とくれば一転、まなじり決した軍事作戦をほうふつとさせる。雰囲気のある言葉が消えていくのは寂しい。
# L8 p7 Q) e# J9 h/ Z4 R
8 U, n% t4 f! y- [! `# a, K 戦後すぐに当用漢字を定めたとき、「魅」の字はいったん選にもれたという。国語審議会である有名作家が、「これがないと日本語に魅力がなくなるなあ」と注文をつけ、それで息を吹き返したそうだ。気象庁の会議では、「天気予報に魅力がなくなる」という声は出なかったのかなあ。 |