2007年04月13日(金曜日)付 
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 中国の温家宝首相の国会演説を聞き、「威ありて猛(たけ)からず」を思った。孔子の弟子が師を表した言葉で、「威厳はあるが威圧感はない」。激しい言葉はなかったが、ゆるぎなく語りかけた印象が残った。' t0 s# Z% r" g* H  @5 U& S) C 
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 名の通り、温厚な実務派として知られる。中国国内では、気さくな人柄がメディアによって広まり、「平民総理」の愛称がある。共産党内の序列は3番ながら、トップの胡錦濤主席をしのぐ人気があるそうだ。 
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+ k. y7 G  K! o4 t$ V だが別の顔もある。89年の天安門事件のとき、趙紫陽総書記の大番頭的なポストにいた。趙氏は事件で失脚するが、温氏は生きのびる。趙氏と立場の違う後任の江沢民総書記に引き立てられ、今に至る地歩を築いたという。したたかな二枚腰に、氏の処世術を見る人もいる。 
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# v  `( X% a! x この訪日で、温氏は「氷」をキーワードにした。小泉前首相の靖国神社参拝などで日中間には分厚い氷が張っていた。昨秋、安倍首相が訪中してその堅氷を砕いた。砕いた氷を、今度は溶かす旅だと位置づけて、日本にやって来た。$ _, |1 a& j. W4 T% E 
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 そして氷はゆるんだように思える。しかし日中はまだまだ薄氷を踏む間柄だ。中国外務省の報道官も成果は認めながら、氷を溶かす旅になったかどうかの問いには慎重だ。歴史認識などでひとたび歯車が狂えば、たちまち硬い氷に閉ざされることになる。 
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 おとといの歓迎式典で、安倍首相は旧知を迎えるような表情を見せた。北京からの来訪は、「朋(とも)あり遠方より来(きた)る」の思いだっただろう。信頼を損ねず、薄氷を踏み抜かず、慎重な足の運びを望みたい。 |