2007年04月29日(日曜日)付
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お祝いの弦楽四重奏の中を、人の川がゆっくりと、建物の奥に消えてゆく。一昨日、東京駅の空を削って38階建ての「新丸の内ビル」が開業した。向かいの丸ビルも5年前、37階に化けた。
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8 }0 ]& { T/ \, B4 ? 戦前の丸ビル風景を、中原中也の「正午」が伝えている。〈月給取(げっきゅうとり)の午(ひる)休み、ぷらりぷらりと手を振つて/あとからあとから出てくるわ、出てくるわ出てくるわ〉。30歳で逝く年に「東洋一のビルヂング」をこっけいに活写した詩人。きょうは生誕100年にあたる。: G) f$ \; Y) q7 c7 @5 x8 A3 X
' q, q- c" u" q8 z& y6 \4 r$ j8 s 七五調や擬音語、繰り返しにより、声に出すと味わいを増す作品が多い。代表作「サーカス」の中ほど、空中ブランコを描いた部分がよく知られている。+ ~8 P/ {) @/ B$ K; ^
3 ]( s, |* I1 n/ ^, ~) L 〈頭倒(さか)さに手を垂れて/汚れ木綿の屋蓋(や・ね)のもと/ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん〉。中也自身、この詩を好んで朗読してみせた。肉声は残っていないが、友人によると、なかなかの名調子だ。
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「ハスキーな低音で、しかも胸に泌(し)みこむようなさびしさとキリモミのような痛烈さ」と草野心平。聞かせどころの〈ゆあーん〉の行は「仰向いて眼(め)をつぶり、口を突き出して、独特に唄(うた)った」(大岡昇平)という。ふと、100歳の中也がいたら、と夢想する。
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" l! W! [. O5 R6 `6 \ 中也に詳しい詩人、佐々木幹郎さんは「季節感をなくした街に戸惑いながらも、身体感覚で詩を作るでしょう」と語る。〈汚れつちまつた悲しみに/今日も小雪の降りかかる〉。過ぎし青春をそう嘆き、すねた中也。「悲しみ」をどこかに忘れてきたような東京の、何を、どんな調子で聞かせてくれるのか。 |