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9 x6 t; C" S7 C8 ?- N5 e. B( q かくれんぼに飽き、おにごっこに疲れた昔の子どもたちは、両者の面白さを併せ持つ「缶けり」を考えついた。ルールは地域や世代によって異なるらしいが、決めたその場でまず一回。これが子ども遊びの楽しさだ。3 ` e( h% l" m* X5 U
& m7 D$ O9 j* ~) K 憲法改正のための国民投票法がきのう成立した。どうしても、一日でも早く国民投票という缶けりをしたくて、安倍くんと仲間が決めたルールである。
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4 A ?* s: r, N9 c5 j% e 国民投票それ自体、憲法改正の是非という、より大きな決定を問う決まりごとだ。それも、国会の発議を受けて国民が判断を下す、最後にして最重要のルールである。安倍首相は、これをいま決めることで改憲に弾みをつけたいのだろう。
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それにしては、「参加者」が少ないような気がする。法律となった与党案は、衆参両院とも与党の賛成多数で可決された。一緒にルールを練ってきた民主党は、途中で離れてしまった。国民の間で、差し迫った課題として改憲論議が高まっているとも思えない。
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参加者の数ということでは、別の心配もある。護憲派のボイコット戦術を警戒するあまり、国民投票法には最低投票率の定めがない。改憲論議が高まらないまま手続きが進めば、投票率は上がらず、一部の意見に沿って憲法が改められかねない。( i v. ]! Q: D X
7 Y5 F% T6 Z4 ^$ K" z 「国の姿を決める缶けり」をフェアで白熱したものにするには、多くの参加者と、十二分の議論が欠かせない。言い出しっぺの責任だ。国民はついてきているか。夕焼けの空き地に、安倍くんの影だけがのびていないか。首相はいま一度、周りを見渡してほしい。
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欧州路線の飛行機だったか、安全ベルトが回りきらない肥満男性と乗り合わせたことがある。継ぎ足しベルトのお陰で離陸できたが、今度は座席テーブルが腹につかえて水平にならない。傾いたままの機内食を、彼は手慣れたしぐさで平らげた。3 L+ `: [8 q% d, V
4 |5 @/ m" m( h4 U. y# K0 \ 職場の健康診断にウエストの測定が加わるらしい。生活習慣病を招くメタボリック症候群対策で、厚生労働省が来春からの義務化を決めた。経営側は「従業員の内臓脂肪まで面倒見ない」と抵抗したが、押し切られた。9 T6 y5 @2 F" N& v
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男性は腹囲85センチ、女性は90センチ以上でメタボの疑いという。飛行機に普通に乗れても安心できない。同僚の目もある職場健診で、ここを巻き尺が一周するかと思えば、腹より心がへこむ。: A% e) j% C4 j2 u- q) l. H
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堂々たる腹囲はかつて、物心両面の余裕の証しとされた。いわゆる太っ腹だ。食べるのがやっとで、体力を浪費できない貧しい国ではいまも、「栄養の黒字」を示す肥満は財力のシンボルだ。5 D2 R: f7 h/ T5 k/ a% s
* z y+ t$ z4 W8 Q2 \% G 訳書『いじわるな遺伝子』(NHK出版)は「食欲とはその昔、食べ物が豊富にあるなど考えられなかった世界で築かれた本能」だと説く。食糧を求めて山野を駆けめぐる必要がなくなり、運動不足が叫ばれる社会になっても、人間の本能は変わらない。スキあらばエネルギーを蓄え、節約する「怠惰の遺伝子」が脈々と受け継がれている。 J3 c! O' l' W. I( ~
E' I1 M. w" W6 p5 f f 腹回りを国が心配してくれるとは豊かさの極みだが、医療費は膨らみ続ける。もはや、国を挙げてヒトの本能に逆らうしかないのだろう。勝つのは国家か、遺伝子か。思えば壮大な実験である。 |