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楼主: youdariyu

皆さん日本語の小説とか読んでますか(1)

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 楼主| 发表于 2006-5-24 18:22:39 | 显示全部楼层
芥川龍之介の短編小説「芋粥(いもがゆ)」の粗筋

おそらく、これは中国人には理解できない物語でしょう。芋粥とは「芋を入れた粥」の事。決して贅沢
な料理ではありません。私は大好きですが。

 ========================

一人の貧乏な侍がいた。彼は毎日腹を空かしていた。ある日彼は一杯の薄い芋粥を食べながらこう言う。

「ああ、一度でいいから、この芋粥を腹一杯、いやというほど食べてみたいものだ。」

すると、一人の金持ちが、彼の希望を叶えてあげようと言う。

今の基準で言えばプール(遊泳池)のような巨大な鍋が置かれ、そこに大量の水と米、それに芋
が放り込まれる。最初は嬉しそうに見ていた貧乏な侍だったが、あまりの量の多さに、食べる前から
食欲を失ってしまう。

そして侍はこう思う。「どんなに好きなものでも、無制限に手に入るとなると、それは価値を
失ってしまうのだ」。

  ==================================

私は中国で食事や宴会に招かれると、いつでもこの話を思い出します。
中国の宴会と言えば広いテーブルに載せきれないほどの種類と量の料理がおかれます。
「出された料理は全部食べるのが礼儀」と教えられた古い世代の日本人はなんとか
頑張って残さないように食べようとしますが、「これが最後だろう」と思ってると更に後
から後から次の料理が出てくる。

胃袋の小さな日本人は見ただけで、お腹いっぱいになるのでした(苦笑)
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 楼主| 发表于 2006-5-24 20:01:30 | 显示全部楼层
mizuiro さんへ。バナー広告の説明有り難うございます。

蛇足ですが、「すけべい」について。

「すけべは漢字で「助平」と書き、本来の読みは「すけべい」である。
「好き」を洒落て擬人化して言った「好兵衛(すきべえ)」が転じて「すけべい」となり、現代では「スケベ」と言うことが多くなった。
「すけべい」は江戸時代に上方で使われ始めた語で、主に男性に対して用いられていたが、江戸中期には女性に対しても使われるようになった。」

ところで中国人の名前は字だけでは男女の区別がつかないものが多いですね。違和感を感じないのかなと、いつも
思います。
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 楼主| 发表于 2006-5-25 17:47:14 | 显示全部楼层
小説の紹介 小松左京のSF長編小説「日本沈没」

30年以上前の作品ですが当時は大ベストセラーになり映画も作られました。今度また新しい映画が
作られるそうなので、おそらく中国でもDVDが発売されるでしょう。

内容は簡単。地下のマグマ(岩浆)の影響で、日本列島が全て海の底に沈んでしまう話です。
日本という国が消滅し、日本人が難民となった時、外国は受け入れてくれるか。その時、世界にお
ける日本の立場が明らかになります。日本人はこれまで世界に貢献してきたか?日本は世界に害
を与えてきたか?

この小説がたくさんの人に読まれた理由はこうだと思います。戦後、日本では戦争への反省から
「国家の存在は悪である」と考える風潮が生まれました。無意識に国家を忘れようとして、経済
ばかりを考え、高度経済成長を果たしました。
しかし、いくら経済力によって世界で確固とした地位を築いても、もしも国家という土台が無くなっ
てしまえば、それでも日本民族は存続できるのだろうか。

世界の歴史の中で、住んでいた土地を追い出された経験の無い国民は非常に少ないそうです。(アメ
リカはそうですが、歴史が浅いですね)。その数少ない国の一つが日本。第二次世界大戦で日本が
負けた時も日本人は日本から追い出されたりはしませんでした。
その日本人が有史以来、初めて国土を失い避難民となる。
「日本沈没」はSFとしてのアイデアの面白さと共に、上記の事が日本人にはショッキングだったんです。
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发表于 2006-5-26 17:11:53 | 显示全部楼层
youdariyuさん

「すけべ」の語源をありがとうございます。
大発見です!

中国人の名前は字だけでは男女の区別がつかないものは多いですか。
私はほとんどつけられますよ~

女性:花の名前(四十代、五十代で一番多い)、優しい感じ、美しい感じ
男性:男らしい形容詞(雄,健,刚,强,力,・・・)

たまには、はずれはあるのですが・・・

中華と言えば、最近読んだ新聞のあるアンケート調査を思い出しました。
日本の人の中では、意外と知らない食事マナーの一位は、中華の回転テーブルの回し方は時計回り
だそうです♪

さて、第10章についてお邪魔させていただきます♪
1.空では一対の鳥が飛んで行き細かな水滴が彼女の頬を湿らした。

「一対」の読み方は何でしょうか。
「行き細か」の意味と読み方を教えてください。

2.「俺はあれから四日間、君が言ったことをずっと繰り返し考えた。最初こそ腹が立ったが、今では感謝してる。礼を言いたいんだ」

原文は「我用了四整天的时间来反覆思索你所说的话。一开始,我承认我相当恼怒,但是,现在,我只能说;我谢谢你!」です。

「最初こそ」の「こそ」の役割を教えてください。

3.「俺はそれまで4年間さまよい続けた。4年というもの、俺は堕落しひねくれ世間を呪い嫉妬した。俺にとってこの世の全てが敵に思えた。全世界こぞって俺を見下しているように思えた」

原文は「我曾经在外面流浪了四年,这四年,我消沉,我堕落,我颓废,我怨天尤人,我愤世嫉俗,我觉得全世界都对不起我,举世皆我的敌人……」となっています。

「敵に思えた」と「ように思えた」の「思えた」はなぜ「思った」に訳さないのでしょうか。

4.「具象性も中途半端なら抽象性もなってない。」
原文は「连具象都还没学到家,却要去画抽象!」です。

ここの「なら」の役割を教えていただけませんか。

5.絵を買う奴の10人中8人は絵の善し悪しなんて解りゃしない、だから俺はいくらでも手抜きできるからさ。

「解りゃしない」はとても口語的な言い方ですね。
イコール何でしょうか。

6.早い話が蛙の子は蛙ってことだね

「早い話」の意味は何ですか
「つまり」、「イコール」でしょうか。
「早い話」を使う例文をいただけませんか。

7.「鎮静剤の用意をしてくれ。そうでもせんとわしは今日一日乗りきれそうにない!」\

ここの「乗る」は「過ごす」の意味でしょうか。
ほかにも例文をいただけないでしょうか。

毎回、論文のような長い質問で本当に申し訳ありません。
お時間がある時よろしくお願いいたします。
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 楼主| 发表于 2006-5-26 18:10:24 | 显示全部楼层
mizuiroさんへ。

>中国人の名前は字だけでは男女の区別がつかないものは多いですか。
>私はほとんどつけられますよ~

>女性:花の名前(四十代、五十代で一番多い)、優しい感じ、美しい感じ
>男性:男らしい形容詞(雄,健,刚,强,力,・・・)

でも以前の学生さんに「亦男」さんという女の子がいました。日本では、女の子に「男」なんて
絶対つけないですよー。
それから、このあいだ会った人は「春華」さん。この人は男です。「華」が女性の名前だと
考えるのは私が日本人だからでしょうか。


でも、今の日本では子供に「日本人か外国人かわからない」名前をつけるのが流行しています。
小学校の名簿なんて、国籍不明の生徒ばかり(笑)
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发表于 2006-5-27 00:02:41 | 显示全部楼层
引用第124楼youdariyu2006-05-26 18:10发表的“”:
mizuiroさんへ。

>中国人の名前は字だけでは男女の区別がつかないものは多いですか。
>私はほとんどつけられますよ~

.......
youdariyuへ

私の高校のクラスメートの中では、「勝男」という名前の女の子がいました。
「男性に勝つ」という意味だそうです^^。

「亦男」の「亦」の意味はご存知でしょうか。
「亦」は「も」の書き言葉です。
直訳すると、「亦男」は「も男」の意味です。
たぶん「亦男」さんのご両親は彼女に「男性が出来ることは女性としての自分でもできる。男性に負けないほど強い女性になってほしい」と強く期待しているでしょう。

日本では「男」という字は男性の名前で使う字ですね。
中国では、むしろ女の子の名前の中でこの「男」という字が多いのではと思います。
ほとんどのケースは三文字の名前の中で、もう一つの文字と合わせて、男性に負けない、男性に勝つなどの意味を表していると思います。(これは根拠なしの発想です^^。間違いましたら、ごめんなさい。)

「華」はニュートラルの字だと思います。
「中国」の意味です。
われわれ中国人はよく自分が「炎黄子孙,华夏民族」と誇りを持って自称しています。
これも特に四十代、五十代でよく見かける字だと思います。
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 楼主| 发表于 2006-5-28 13:44:24 | 显示全部楼层
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。

「心有千千結」第11章


わめき続ける思紋ほか大勢がぞろぞろと客間へとやって来た。李媽は凱凱が泥だらけの靴で白い絨毯を歩くのを見てしきりにぶつぶつ言い、翠蓮は主(あるじ)風を吹かす似非主にまた怒鳴らり散らされてはかなわないと急いで退散した。老人は椅子に深く腰かけ表情を凍らせて黙っている。
若塵はほとんど食事に手をつけないまま今は暖炉のそばで酒の入ったグラスを手にして彼らの襲来をじっと待ちうけている。その顔には深い影がさしていた。江雨薇はこのいたたまれない状況で席をはずすべきかどうか迷っていた。

「あらー!」

思紋がいなないた。

「もう暖炉に火を入れてるのね、なんて暖かいんでしょ、やっぱりお父さんには・・」

言いかけた思紋の目に見まがう事ない若塵の姿が飛び込んできた。彼女は仰天しぽかんと口を開けた。

「な・・なんで?」

急にろれつがまわらなくなった彼女は振り向いて叫んだ。

「培中!ちょっと見てよ、こ・・この人は」

若塵は暖炉から離れると肩をひょいとすくめて来客に向かってグラスを上げた。

「びっくりさせたかな」

彼は冷ややかに言った。

「生憎くたばり損ないはまだこうやって生きてるよ」

「おお、若塵!」

培中が明るく笑いかけた。一団の中で一番頭のまわる彼は素早く嫌悪の様子を心中にしまいこんだ。

「いつ帰ったんだ?」

「昨日」

若塵は最低限の単語で答え、平然とした面もちでグラスを揺らした。培華が横からいかにもとげとげしく口をはさんだ。

「俺はわかってたさ、そろそろお前が現れる頃だってな!」

「へえ?そうかい」

ちらりと培華を見た若塵は素っ気なく言った。

「また肥えたな、培華」

若塵は続けた。

「それだけ肥えりゃあどこへ出しても恥ずかしくないデブってもんだ」

「なんだと!」

培華はいきりたった。

「俺はきさまのようにホームレスもしてなけりゃ女に騙されてもいない、どっかの路地裏でゴミ箱漁りしてるわけでもないからな、やせ細る道理がないだろ」

「やめんか」

老人は椅子から立ち上がると頭に血をのぼらせて培中と培華を怒鳴りつけた。

「お前達が来たのは見舞いの為か、それとも若塵と喧嘩をする為か」

「父さん、ちょっと話をさせてくれないか」

そう言った若塵は落ち着いた眼差しで培華を見たが、こめかみでぴくぴくと筋が踊っている。

「培華、お前はずっと順調だったんだろうな」

「ふん!」

培華は冷笑した。

「お前よりははるかにな」

「そりゃよかった」

若塵は少し上目づかいに培中を見た。

「培中、お前もそうだな」

「ああ、おかげさまでな」

培中は無愛想に答えた。

「そりゃあ良かった、まったく言うことない」

若塵は老人の近くへ歩み寄った。

「父さん、誇りにすべきだよ。この二人の息子は立派に事業を持ち素晴らしい家庭に賢い子供がいる。けど昔から言うよね、何事にも玉に傷はつきもんだって。父さんにはこんな優秀な息子がいる一方で迷惑ばかりかけてる放蕩息子もここにいる」

彼は老人を見つめた。

「この放蕩息子は腰も定まらず欠点だらけで今までの過ちは枚挙にいとまがないくらいだ。でもこいつにもたった一つマシなとこがある。それは他の二人より正直なとこだ。でも正直なだけじゃ喰ってもいけないしなんの使い道もない。父さんならそんな息子をどうする?」

老人はにやりと笑い、愛情と共感の入り交じった目で若塵を見た。

「そうじゃな」

老人はいかにも考えこむようなふりをして、ことさら眉をひそめたがその口元にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。

「それは難しい問題じゃが・・そうじゃな。そんなバカ息子ならばずっと近くに置いてわしがしっかりしつけんとな」

「デキた息子のほうは?」

若塵は尋ねた。

「こっちのほうはしつけなくていいのかい」

「うむ」

首をかしげる老人の目が狡猾そうに光った。

「そんなによくデキた息子ならば、わしが面倒を見ずとも充分やっていくことだろう」

「なんですって!」

金切り声はやはり思紋である。彼女は若塵の言葉など全くうわのそらだったが老人の最後の一言に敏感に反応した。

「どういうこと!こっちはほったらかしで、ろくでもないほうに目をかけるなんて」

「思紋!」

培中は眉をしかめ気色ばって妻に怒鳴った。

「いいかげんに口を慎まないか。馬鹿野郎!」

「馬鹿ですって!」

思紋は夫のほうを向いてますます興奮した。

「人の事が言えるの!いつあたしが間違ったことしたの、なんで馬鹿なのか言ってみなさいよ!ああまったく、家族の為に自分を犠牲にしていつのまにかこんな歳になっちゃったわ、馬鹿だって言うけどあたしはあんたが外でどんな事してるか知ってるんだからね、飲み屋の女と出来てるってことも・・」

「黙れ!」

培中は大声で怒鳴ると思紋の腕をひねり上げた。

「気でも狂ったか、今はお前と争ってる場合じゃないんだ、よく考えろ!」

「なにするの!」

思紋は更に絞め殺される鶏のようにわめいた。

「この人でなし、殺せるもんなら殺して・・」

「思紋姉さん、いい加減にしなさいよ」

美珂がひそひそと声を抑えて忠告した。

「まだわかんないの?誰かさんはあたし達をここから追い出したがってるのよ」

思紋ははっと気がつくと少し考えこんだがまたけたたましく始めた。

「なんでそんな?うちの子は間男につくらせたって言うの、この家の血じゃないとでも?」

「思紋!」

培中はもう怒りで顔を赤黒くさせながら一喝した。\

「わけのわからんことをいつまで言うんだ。殴られたいのか!」

思紋はようやく黙ったがまだ口の中でもごもご言い続け真っ赤になって口をとがらせまるでだだっ子である。今度は美珂が口を出した。

「要するに”出どこ”が問題になるのは子供じゃなくて、その父親のほうなのね」

「美珂!」

老人は逆鱗を触れられたかのように息子の嫁のところへと歩み寄った。

「いったい何が言いたいんだ、はっきり言ってみろ!」

「あたしはそんなつもりじゃ」

彼女は甘ったれ声で言った。

「培中と培華さえ黙ってるのに、なんで嫁ふぜいのあたしが・・」

「わかってるなら」

老人は言った。

「よけいな口出しをするな!」

「お父さん!」

培華は一歩踏み出して言った。

「お父さんの考えは若塵を認めて僕たちを認めないってこと?」

「なにが認める認めないだ!」

老人は激怒した。

「よく考えて見ろ、お前達が少しでも息子らしいことをしたかどうか。このあいだもここへ来てさんざん騒いで行きおったな。わしがお前達が来るたびに命が縮む思いだ」

「わかったよ」

培華は言った。

「それほど歓迎されないんじゃいたってしょうがない。帰るよ、でもその前に言っておくことがある」

彼は若塵のほうを向いて言った。

「若塵、うまくやりやがったな。この4年間、父さんの事は顧みなかったくせに父さんの命が残り少なくなったら帰って来て孝行づらしやがって!あの時もう二度とここへは帰らないって見栄を切ったんじゃないのかよ!」

彼は皮肉っぽく笑った。

「それがどういうことだ、ええ?やっぱり目当ては財産か?」

若塵の顔がさっと白くなりこめかみの筋が暴れだした。持っていたグラスを傍らへ置きつかつかと前へ歩み出すと、その場の誰もが予想しなかった速い展開で培華の顎を一発殴りつけていた。突然のことに培華は豪快にひっくり返った。テーブルとその上にあった花瓶の水もついでにかぶってびしょぬれだ。思紋が喚いた。

「人殺しだよ!助けて!」

横で見ていた斌斌もつられて泣き出した。

「父さんが死んじゃうよー」

美珂が斌斌をひっぱたいて叱った。

「縁起の悪いこと言うんじゃないよ、あほ!」

斌斌は更に大きく泣いた。若塵がなおも培華の胸ぐらを掴んだ時、培中が仲裁に入った。

「兄弟じゃないか、喧嘩なんかやめようぜ」

若塵は培華を突き放すとにらみつけて言った。

「もしも父さんの前じゃなけりゃお前をぶち殺してたぞ。殺されたくないならさっさと消え失せろ!」

「よしよしわかった」

培中が言った。

「培華、さわらぬ神にたたりなしだ。もう行こうぜ。そうでないとこちらのどなたかが殺すとおっしゃる。こんなとこで死んじゃうかばれんぞ」

培中はぎらぎらした目で若塵をにらんだ。

「若塵、がんばって財産のお守りをするんだな。金さえ出来ればあの紀靄霞ももう一度お前と、よりを戻してくれるかも知れんしな。そうなりゃ一挙両得じゃないか!、ははっ!」

彼は少し後ずさった。

「まったくお前みたいな単細胞はすぐ拳でかたをつけようとする」

そう言うと培中は手を叩いて合図した。

「みんな、帰るぞ!」

「僕、いやだ」

六歳の凱凱が目をきょろきょろさせながら言った。

「おじさんがやっつけられるとこをもっと見るんだ!」

凱凱は若塵のそばに駆け寄ると憧れのこもった目で若塵を見つめた。

「今の技はカラテだよね?」

「この悪ガキ!なに親の顔に泥塗ってんだい!」

思紋はひきつった声で叫ぶと凱凱の耳をつまみ若塵のそばから引きはがした。凱凱は屠殺場に運ばれる子豚のような悲鳴をあげながら泣きわめいた。

「ばかー、あのおじさんに頼んでカラテでやっつけてやるから!」

凱凱は若塵が叔父さんだとは知らない。

「やっつけるだって?」

思紋はもう一方の手で凱凱の片方の耳もつまみ両側からひっぱった。

「その前にお前をばらばらにしてやるよ!本当にこの出来損ないのろくでなしのあんぽんたんの・・」

悲鳴と罵倒を交差させながら思紋と凱凱は外へ出て行った。培華は身なりを整えながら立ち上がった。頭から水がしたたり落ちている。

「覚えとけよ、若塵、この借りはいつかきっと返してやる!」

美珂もめそめそ泣いている斌斌の手をつかんで出て行こうとしたがその際にしらっとした調子でつぶやいた。

「やっぱり私生児って、たいがいモンダイありよ」

やがて彼らはけたたましくクラクションを鳴らし、来たときと同様に騒々しく帰って行った。まるで一陣の暴風雨が厄災を残して過ぎ去ったかのように。室内に再び静寂が訪れた。静まりかえった室内ではそれぞれの呼吸する音と古い時計の規則正しいチクタクという音だけがしばらくあたりを制した。
ほどなく李媽が音をしのばせながら倒れた花瓶を片づけ始め翠蓮もやって来て散らばった箸やお椀を拾い始めた。
老人は倒れ込むように椅子に腰を下ろし頭を手で支え、やはり黙ったままだ。若塵は暖炉のそばの壁にもたれ青ざめた顔でまばたきも忘れ李媽が片づけるのを眺めている。そうやってじっと立ちつくしている彼がなにを考えているのかその表情から察する事はできなかった。
やがて李媽と翠蓮が片づけを終わり出て行くと室内は再び静まり返った。激しい暴風がもたらした静寂は重苦しく息がつまりそうな緊張を居る者に与えた。
江雨薇はなにか適当な話を切り出してこの緊張をほぐそうとして何を言おうか迷っていたがそうしてると突然若塵が老人のそばに跪いた。若塵の顔は蒼白から真っ赤に変わり目は血走り今にも血管が切れそうだ。彼はすがるように両手で老人の腕を掴むと傷ついた野獣のような悲痛な叫びをあげた。

「父さん、まだ死なないでもっとずっと一緒にいてくれ!」

老人は若塵の頭に手を置くとぼさぼさの髪をまさぐった。老人はこの若者の顔に溢れる激しい熱情を見て、その双眸に涙を潤ませ語りかけた。

「息子よ、生死は所詮人間の自由にはならないものだ。だがお前にこれだけは頼みたい。決して人に噂されんようにしてくれ、耿克毅はまともな息子を一人も残さず死んだとな」

「父さん、培中と培華の言ったことだけど・・、俺は、俺は」

彼は混乱していた。

「罠にハマるなよ」

老人は深く若塵を凝視した。

「あいつらはなんとかしてお前を追い出したいんだ、わかってるだろ若塵。ハメられるんじゃないぞ」

老人は諭すように言ってきかせた。

「若塵、お前がわしの頼みを聞いてくれるならわしは死んで悔いはない。だが聞いてくれないなら死んでも死にきれんぞ」

若塵は父親の顔を見上げるとその膝の上に頭を委ねすすり泣いた。

「父さん、教えてくれ、これから俺がどうすればいいのか」

老人は震える手で息子の頭を支えると天を仰いで言った

「こうしてお前が近くにいてさえくれればそれでいい、長い間わし達にはこんな時間がなかった。そうじゃないか」

老人の相貌は荘厳に輝いた。

「この何日か、わしはお前の母さんが側にいるような気がしていた、若塵。あいつはこの世で最上の女性だった。わしは最後の日々をお前と過ごせることがなによりの幸せだ。この余命幾ばくもない老人が他になにを望む?お前が賢い子ならわかるだろう。強くなるんだ若塵、そして決して誰にもわしの墓を踏みにじるような事はさせるな」

若塵が顔を上げた時そこには涙を湛える目と決意に満ちた表情があった。それはいかなる風雨にも耐えていこうという心の表れだった。彼は小さな声で誓った。

「安心してくれ父さん、あなたの息子はどうにも出来が悪くて回り道もしたけれど、逃げたりするような弱虫じゃないよ」

「わかってる」

老人は息子を見つめた。

「最初からずっとわかっておった」

江雨薇は頬に落ちる涙をそっと拭いた。彼女は自分でもなぜこんなに泣けるのかわからなかった。この風雨園に来て以来、いや老人の看護婦になって以来、彼女は自分が涙もろくなったのを感じた。彼女は近づくとかすれ声で言った。

「よろしいでしょうか耿さん、そろそろお薬を飲んでお休みにならないと」

耿克毅は彼女を見て笑んだ。

「雨薇、お前にも世話になるな」

老人は立ち上がるとよろめきつつ二階へ上がりかけた。その身体を支えた彼女は老人が更に一層衰弱したことに気づいた。看護婦の本能が彼女に”務め”がもうそれほど長く無いことを知らせた。彼女が老人に薬を与えベッドに横にさせ部屋を出ようとした時老人が呼び止めた。

「雨薇」

「はい?」

彼女は立ち止まった。

「お前は最高の看護婦だ」

老人は言った。

「それに素晴らしい娘だ。わしはお前に礼を言わねばならん」

「なぜです?」

彼女は答えた。

「するべき事をしてるだけですわ」

「いいや」

老人はこくりと首を振った。

「お前はわしの気持ちを知って若塵を呼び戻してくれたんだ。ありがとう。わしにとってこれがどれほど大きな事かわかるかな」

「わかります」

江雨薇は小さな声で答えた。

「よし、じゃあ行きなさい」

老人は言った。

「わしは眠る」

江雨薇は老人の部屋を出るとドアを閉め階下へ戻った。若塵がソファーに横になり酒の瓶を前に置きグラスを手にしている。江雨薇が見るとすでに半分が空だ。彼女は近づくと一種説明できない衝動に動かされてその瓶を奪い取って言った。

「まさかアル中が更生の第一歩ってわけじゃないでしょうね」

若塵が驚いて目を見張った。

「もう逃げられないわよ、耿若塵」

彼女は一語一句ことさらはっきりと言った。

「たった今誓ったわよね、もう負け犬にはならないって。じゃあ立ちなさい!なんでもいいからお父さんの為に始めなさい。あの方が生きてるわずかのあいだに!」

若塵は彼女を見つめた。

「とっととその酒を片づけてくれ」

彼はかれた声で言った。

「それからその調子でいつでも俺を叱咤してくれ」

そして小さくため息をついた。

「我が親愛なる女帝殿!」

【第12章】へ続く
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 楼主| 发表于 2006-5-28 16:07:42 | 显示全部楼层
Mizuiroさんへ、おまたせしました。10章について回答します。

>1.空では一対の鳥が飛んで行き細かな水滴が彼女の頬を湿らした。

「一対」は「いっつい」です。この他、動物の雄雌一組を「ひとつがい」とも言います。
「行き細か」は熟語ではありません。「行き」と「細か(こまか)」です。

>2.「俺はあれから四日間、君が言ったことをずっと繰り返し考えた。最初こそ腹が立ったが、今では感謝してる。>礼を言いたいんだ」

>原文は「我用了四整天的时间来反覆思索你所说的话。一开始,我承认我相当恼怒,但是,现在,我只能说;我>谢谢你!」です。

この場合の「こそ」は「虽然…但是」です。例えば
「彼は大学に合格こそしたが、ほとんど登校していない」

>3.「俺はそれまで4年間さまよい続けた。4年というもの、俺は堕落しひねくれ世間を呪い嫉妬した。俺にとって>この世の全てが敵に思えた。全世界こぞって俺を見下しているように思えた」

>文は「我曾经在外面流浪了四年,这四年,我消沉,我堕落,我颓废,我怨天尤人,我愤世嫉俗,我觉得全世界>都对不起我,举世皆我的敌人……」となっています。

>「敵に思えた」と「ように思えた」の「思えた」はなぜ「思った」に訳さないのでしょうか。

「俺にとってこの世の全てが敵に思った」とは言えません。
「AにとってBが(は)…」という文型では後ろには「可能.不可能」を表す表現、あるいは賛成や反対、深刻だ、などの「評価を表す表現」がきます。
例えば「私にとってその仕事は簡単でした」は正解。「思った」は可能表現の「思えた」に変わります。
「全世界こぞって俺を見下しているように思えた」は「思った」と変えても問題ありません。

>4.「具象性も中途半端なら抽象性もなってない。」
>原文は「连具象都还没学到家,却要去画抽象!」です。

この場合の「なら」は「…も…なら…も」の形で覚えてください。二つの似た意味の修飾語を繋ぎます。
例えば「孟庭葦は歌も上手なら、顔も可愛い」

>5.絵を買う奴の10人中8人は絵の善し悪しなんて解りゃしない、だから俺はいくらでも手抜きできるからさ。

「解りゃしない」は完全な口語です。正しく言うと「解りはしない」。
元々「(連用形)はしない」は文語表現です。
例えば中国の詩の一節「壯士一去兮不復還」は「壮士は去って帰らない」より「壮士は去って帰りはしない」としたほうが詩情が増します。
けれど、これを「帰りゃしない」というと、口語表現になります。

>6.早い話が蛙の子は蛙ってことだね

「早い話」は「つまり」「要するに」と同じです。中国語だと「总而言之」でしょうか。
「吉田はいつも海草ばかり食べてる、早い話、ハゲ(光頭)になりたくないんだ」
海草を食べると、ハゲにならないと吉田さんは信じているようです^^;

>7.「鎮静剤の用意をしてくれ。そうでもせんとわしは今日一日乗りきれそうにない!」\

「乗る」は「乗り切る」とした場合に「苦労して、なんとか過ごし終える」或いは「困難を解決する」の意味になります。
ドラマや小説で「戦後の混乱した時代を乗り切った、ある女の物語」みたいな紹介文がよく使われます。

女の子の名前が「勝男」さんですか…。「中国では、悪い神様に誘拐されないよう、子供にわざと悪い名前をつける」という話を聞いた事があるんですが、そういう意味ではないんですね。
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发表于 2006-5-29 10:00:57 | 显示全部楼层
youdariyuさんさんへ

もう一度泥沼に陥った私に救いの手を差し伸べていただいてありがとうございます。
とても感謝しています。
非常に助かりました。
「こそ」、「…も…なら…も」などの知らない文法は本当に多いです。

ちなみに、「ハゲ」の中国語は「光頭」ではなく、「秃顶」です。
「光頭」だと、坊さんを思い出しますよ。
また、「ハゲ」の面白い比喩の言い方は「地中海」です。

>「中国では、悪い神様に誘拐されないよう、子供にわざと悪い名前をつける」という話を聞いた事があるんですが、そういう意味ではないんですね。

「悪い神様に誘拐されないよう、子供にわざと悪い名前をつける」のですか。
これは初耳です。
勉強不足でした^^。

もう一つ「男」が含まれる名前を思い出しました。
ドラマ「上海一家人」の主人公「李若男」さんです。
「上海一家人」は30年代、40年代の上海のを舞台にしたドラマです。
「若男」は「男と同じように」という意味です。
女性としての「李若男」さんも確かに強い女性になりました。
小さいときに家族の人とよく一緒に見たドラマでした♪
内容はこちらへ。
http://www.mypress.jp/v2_writers/yingmi/story/?story_id=314606

主題歌もとても素敵です。
人を励ます言葉はいっぱいあります。

《上海一家人》片头曲
词:易茗曲:雷蕾演唱:朱枫

满目繁华何所依,绮罗散尽人独立。
泪中有欢笑,笑中有委曲,
别旧梦,向着光明,我往矣。
暖我是爱,还我勇气,走出逆境靠自己。
人生苦短要努力,不怕那几次三番从头做起。
暖我是爱,还我勇气,走出逆境靠自己。
人生苦短要努力,不怕那几次三番从头做起。

《上海一家人》片尾曲“相信那一天”
词:易茗曲:雷蕾演唱:韦唯

要生存,先把泪擦干;
走过去,前面是个天。
从来女子做大事,九苦一分甜;
唱上一曲行路难,难在上海滩。
千折百转,机会一闪,
细思量,没有过不去的关。
要生存,先把泪擦干;
走过去,前面是个天。
埋我痴情终非我所愿,
直等到那一天,要把全部奉献,
夜深路远,有苦自承担,
晨风起,太阳升,看到你双肩。
总相信那一天,那一天会为我来临,
就与你再一次,再一次地欢笑同行。
总相信那一天,那一天会为我来临,
就与你再一次,再一次地欢笑同行。
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 楼主| 发表于 2006-5-29 13:34:52 | 显示全部楼层
mizuiroさんへ。

>「中国では、悪い神様に誘拐されないよう、子供にわざと悪い名前をつける」

これは私の勘違いかも知れません。パールバックというアメリカの作家が書いた「大地」という
小説に、こんな事が載っていたような気がするんですよ。100年以上昔の中国の話です。
そう言えば、わざわざ子供に変な名前をつける人なんて、実際は会った事がありません(^^)

ちなみに、多少中国の事を知っている日本人がよく勘違いする事は

1. ご馳走してもらった料理は必ず少し残さなければいけない。全部食べてしまうと「まだお腹がいっぱいではない」と
  いう意思表示になる。

  私の住んでいる江蘇省の人にこの話をすると、意外な顔をします。「そんな事はない、全部食べてくれたほうが
  嬉しいのは当たり前だろ」と言われました。本当はどうなんでしょうか。

2. 中国の人は夫婦喧嘩を家の外でする。近所の人達を集めて、妻と夫が自分の主張を述べる。どちらが正しい
  か、周りの人に判定してもらう。

  これは本で読んだし、香港映画でも見たし、実際に男女(夫婦かどうかわかりませんが)が路上で喧嘩をしてい
  るところを何度も目撃したので、本当だと思ってました。
  でもやっぱり、中国の人に聞くと「そんな事はしません、恥ずかしいでしょ」との返事。
  たしかにそうですね(笑)



  
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发表于 2006-5-29 17:41:51 | 显示全部楼层
>琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。

へぇ?
youdariyu様はこんなに難しい小説分かりますか?
すごい!
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 楼主| 发表于 2006-5-29 18:13:06 | 显示全部楼层
jewel さんこんにちは。

難しい小説を「訳す」という事と「訳せる」という事は別です。
本来の意味を逸脱した訳が、有ると思いますので、「この部分ちょっとおかしい?」と感じるところが
あったら教えてください。
台詞の意味がわからないので、長い間ずっと考え続け「秃顶」になりそうな時もありました^^
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 楼主| 发表于 2006-5-30 13:09:13 | 显示全部楼层
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。

「心有千千結」第12章

ひとまず穏やかな日が続いた。風雨園に嵐をもたらした培中培華もその後は姿を見せることはなく、老人は気を高ぶらす事もない為に精神状態は日に日に安定していった。
毎週やってくる黄医師は老人の病状が小康状態だと告げた。良くなっているわけではないが決して悪化はしていない。だがこの種の病では悪化しないことこそが大切なのだ。江雨薇と若塵は老人の身体に奇跡が起こることをひそかに願った。たしかにそれは医学史上、ないことではなかったが。

若塵は老人の紡績会社で仕事を始めたが、江雨薇には彼が無理をしている事がわかった。彼はもともと会社の経営に興味はなくただ老人を喜ばす為やってるに過ぎないのだ。
けれどある日の晩であった。江雨薇と耿親子が一緒に暖炉のそばで雑談していた時の事。その時彼女はオレンジ色のスーツを着てぼんやりと絨毯に座っていたが突然若塵が一枚の紙に木炭で彼女をスケッチし始めた。描きあげてから彼はその服装が垢抜けないと感じ腰にリボン状のスカーフを加筆し普段着に変えてしまった。彼をそれを江雨薇に見せた。

「似てるかな」

江雨薇はしばらく見入ってから言った。

「すごい、本人よりきれい」

彼女は笑った。

「埋もれさせるには惜しい才能ね」

若塵は言った。

「でももう遅いよ、今から絵を習ったって」

「ちょっとそれを見せてくれないか」

そう言った老人に江雨薇が絵を渡すと老人は非常に興味深くしげしげとその絵を眺めたあげくふいに畳んでポケットにしまい込んでしまった。

「貰ったぞ」

江雨薇は特に気にとめなかった。老人の息子を思う気持ちはたった一枚の絵でも手元に置いておきたいほどなのだと感じただけだ。若塵もすぐ忘れてしまったようだ。だが翌日、絵は唐経理部長に渡され一週間後それは真新しい衣服となって出来上がってきた。腰にリボンを配し袖口とスカートの裾の広がったデザインは洒落ていて美しかった。風雨園にその服が運ばれてきたその日は江雨薇のモデルデビュー第一日目となった。若塵は不思議そうに言った。

「これが本当に俺が描いたの?」

「そうじゃ」

老人は答えた。

「どうだ。どこを直せばよくなるかな」

その服の生地は藍色でベルトも同色だった。

「生地はもう少し黒みがかった青だな。襟ももっと高くしないと」\

淀みなく彼は答えた。

「リボンはサファイアブルーにすることでメリハリが出る。もしも黄色の生地を使うならリボンはオレンジだ。とにかくリボンを浮き立たせなきゃ」

そうして一ヶ月後、唐部長は息せき切って大喜びで飛んできた。

「注文ですよ!注文!アメリカから大量の注文が来ました、そのうえ他のデザインも見たいと言ってます、大急ぎで御子息にまたデザインお願いしますよ!」

それはたまたまのまぐれだったかも知れないが、若塵に間違いなく仕事への興味をもたらした。彼は材料の品質やデザインを調べ、どうすればいかにして安いコストで良質の製品が出来るかの研究に没頭するようになった。彼は工場に入り浸りコンテを手に積極的に仕事にいそしんだ。

「信じられるか」

老人は誇らしげに江雨薇に言った。

「あいつはもういっぱしのデザイナーだ」

江雨薇もモデルが日課となった。新製品ができると彼女はそれを真っ先に纏い、親子二人の前で歩き回転し後退し座り手を上げ足を上げ再び歩く。父と息子はそれを食い入るように見ては熱心に論議しあう。江雨薇は言った。

「モデル代ももらわなくっちゃ。いいですか、モデル代は看護婦なんかよりずっと高いんですよ!」

「商売替えするのもいいんじゃないか」

若塵が笑いながら言った。

「君のサイズは既製服にうってつけなんだよ」

「商売替えされては困るぞ」

老人も笑いながら声をかけた。

「13号なんぞ来て欲しくないからな」

「13号って?」

若塵が不思議そうに尋ねた。老人は若塵に、江雨薇以前に11人の看護婦のクビをすげかえたこと。12番目の彼女がいかなる手腕で老人を屈服させたかを語った。若塵はひどく面白がり老人の肩を叩いた。

「この女帝様には誰もかなわないよ、本当に」

そう言われた江雨薇は顔を赤らめ若塵の強力な眼差しに胸が妙に苦しくなった。まったくこの楽しい雰囲気はどうだろうか。まるで我が家にいるような暖かな団欒。いや、それより自分はこの風雨園を去り再びあの殺風景で叫声の満ちる病院の生活に戻っていけるのだろうか?

 春は知らず知らずやって来た。雨期はまだ終わらず小雨の日が続いた。江雨薇は自分が雨を好むのは名前のせいだと思っていた。実際、彼女は雨の中を歩き雨音を聞くのを好み、特に雨の朝と黄昏は最高だった。

 彼女の休日にあたるその日も雨で、彼女は一日を二人の弟達と過ごし、彼らは学校の生活や趣味、それにガールフレンドの事を姉に話した。いつの間にか彼らもそんな年齢になっていたのだ。夜になり彼女が彼らに「沙茶火鍋」をふるまっていた時突然上の弟の立徳が居住まいを正し、あらたまって彼女にこう宣言した。

「姉さん、これまでずっと僕たちは姉さんに苦労をかけたね。けど大学にも受かった以上もうあんな苦労は終わりだ。僕も立群も家庭教師で独立してやっていける。だから姉さん、姉さんだってもう23だ。もしも好きな人がいるなら僕たちの心配はしないで」

江雨薇は立徳がもう子供でなくなった事を改めて認識したが、その言葉は却って彼女に葛藤をもたらした。これまでつきあってきた人は少なくないけどいったい誰がそれに該当するだろうか。いかんせんどれもがイマイチで彼女の情熱に火をつけた者はついぞいなかった。
でも一歩下がって考えてみればこの世にそんな世界もひっくりかえるような恋愛なんてあるのだろうかという気もする。小説家が筆で描きだす身も焦がすような百年千年の恋なんて。彼女はまだ未だかつてそんな感情を抱いたことがない。彼女はいっぱい多くの小説や詩を読んできたけれどそのどれもが所詮架空の絵空事かも。
けれど立徳が言った言葉、彼女はすでに23歳というのも間違いない現実なのだ。短い花の命を彼女はどう有意義に送ればいいのだろうか。この付き添い看護婦という職業をもってどう生涯設計を行うべきなのか?

 そんなわけで江雨薇はX線科の呉家駿医師に誘われその夜華国クラブへ行ったのだが話す事といえば医院でのとるに足りないニュースや医者の苦労、患者達の面倒事、それらは彼女に何の興味も情熱も与えなかった。医師に人体は透視できても心はそうはいかないようだ。

 夜中の二時、呉医師はタクシーで彼女を風雨園に送り届けた。こんなに遅くなったのは始めてだ。門のところで彼女は呉医師に別れを告げ鍵を開けるとそぼ降る小雨の中を部屋に向かった。
 冷たい雨が頬を濡らしひんやりする。彼女はマフラーを巻きなおし急ぐでもなく考えごとをしながら歩いた。両側の竹林はざわざわとざわめき、花の香りが漂う。マイカイとクチナシの溶け合った香りだ。庭園のクチナシは今が盛りだった。
 ハイヒールで水たまりを歩いていた彼女はあらっと思った。二階の窓に灯りがこうこうとついている。いったい誰だろう。彼女がよくよく見るとそれは若塵の部屋の窓だった。まだ起きてたのね。足音を気づかれないように彼女が行こうとした時突然一つの人影が竹林の中から現れ彼女の行くてをふさいだ。彼女は思わず声をあげそうになったがその人影は素早く叫んだ。

「びっくりしなくていい、俺だよ」

若塵だ。彼女はほっとして胸をおさえた。

「なにをしてるの?跳び上がりそうだったわ」

心臓がまだどきどきしている。

「なにしてるかだって」

彼は彼女の言葉を繰り返した。

「君を出迎えようと思ってね、夜遊びの女神さん」

「?出迎え??」

彼女はあっけにとられた。

「帰ってくるのが見えたんだ」

彼はそう言うと彼女の手をひっぱった。

「ちょっと話があるんだ。歩きながら話そう」

「こんな時間に?」

彼女はびっくりした。

「今何時だと思ってるの」

「君こそこんな時間までなにやってたんだ」

彼は不機嫌そうに言った。

「どうして」

彼女の眉が跳ね上がった。

「あなたのお父さんは門限なんて決めてないし、あなたの仕事の邪魔をしたわけでもないでしょ」

「仕事、仕事、いつでもそうだ」

彼はいらいらしだした。

「君は他の事にもいっぱい口出ししてるのに、いざ自分に都合の悪い話題になると仕事を持ち出してお茶を濁す」

「あら!」

江雨薇は目を大きくした。

「今日はなに?あたしに御説教?」

「どうしてだ、ただ少し話がしたいって言ってるだけじゃないか。それとも他のやつとは夜中までつきあえても俺とは数分話すのさえケチるわけか」

江雨薇はしばし黙った。夜の闇に彼の表情はおぼろだったがその鋭い視線が彼女には見てとれた。彼女は唇を噛み首を傾げて言った。

「まるで焼きもち亭主が夜遊びの妻をとがめるような言い方ね。若塵あなた飲んでるの?」

「飲んでるよ!」

彼はふてくされたように答えた。

「君はなんだっていつでも監察官みたいなんだ、俺が飲まないでいられると思うか?毎日毎日会社に出かけては服をデザインし品質を管理し書類を片づける、俺は怠けてやしないだろ?」

「そうね」

彼女は微笑んだ。

「よくやってると思うわ、だからぷんぷんしないで」

彼女は姉が小さな弟に言ってきかす時のように彼の手を握った。

「いいわ、じゃあ歩きながら聞いてあげる。今日なにかいやなことでも有ったのかしら?」

「いやなことなんてないさ」

「え?じゃあいったい・・」

不思議そうに彼を見た彼女の手は彼のぐっしょり濡れたオーバーに触れた。

「あら」

彼女は小さく叫んだ。

「ここにいつから居たの?」

「たっぷり、1、2時間」

彼は鬱々と答えた。

「気はたしか?」

「雨が好きなのは君もだろ」

「でも頭までおかしくないわ」

彼女は彼の手を掴んで強制するように言った。

「早く家の中へ入るのよ、でなきゃ風邪ひいちゃう」

だが彼は逆に彼女の手をさらに強く握り返した。彼の目は彼女に釘づけになっていた。

「いかにも看護婦みたいな言い方はするなよ、俺は君の病人じゃない」

彼女は立ち尽くし困ったように首を振った。

「わからない人ね、いったいどうしたいの?」

「さっき君を送ってきたのは誰だ、あの背の高いやつ。あれが恋人のX線か」

「そうよ」

彼女は顎を上げた。

「それで?」

「あいつが好きなのか」

彼の手はすでに痛いくらいに彼女の手を握りしめていた。

「本当に頭がへんになったの?ちょっと放してったら」

彼女は素早く手をひっこめた。

「だからどうしたの、好きだろうが嫌いだろうがあなたに関係ないでしょ?」

彼女は立腹を表すかのように髪をかきあげて言った。

「もう行くわよ、アブない人につきあってられないわ」

彼はすぐに彼女の行くてをふさぐと再び手をとった。

「よく考えろ」

彼の顔がすぐ近くに迫った。

「医者なんかのどこがいい、年中フラスコと試験管相手ににらめっこで君にインスピレーションの一つも与えてはくれないぞ。賭けてもいい、あのX線野郎は・・」

「ちょ、ちょっと若塵!」

江雨薇はますます不愉快になった。たとえなんであれ他人に自分の友人の悪口を言われて嬉しい筈がない。しかも今の若塵のように一方的に世界中の人間がろくでなしみたいに!彼女はぷんぷんして言った。

「友だちをけなすのはやめて!それにあたしのプライベートに干渉するのもね。医者に嫁ぐかどうかあたしの勝手でしょ」

「違う!」

若塵は掴んだ腕に力をこめて。熱い息が彼女の顔にかかる。

「君は俺にそうしたじゃないか、だから今度は俺の番だ。いいか、あのX線はやめとけ、それにこんな夜中に帰ってきちゃいかん・・」

「お生憎様!あなたの好き嫌いにかまっちゃいられないわ」

彼女は手をふりほどこうとしたが逆により強く握り返された。

「放してよ、なんであなたに干渉されなくちゃいけないの?」

「なんでだと」

彼はしゃがれ声がすぐそこにきた。

「これでもわからないか」

彼はそう言うなり彼女を強くひきよせた。彼女の足元は雨に滑り彼女は全身ごと転げ込むように彼に倒れかかり、彼はすばやく両手で彼女をすばやく抱きしめた。彼女はもがいて抜けだそうとしたが彼はしっかりと彼女を放さなかった。彼女が叫ぼうとした時、彼の唇がそれをふさいだ。
 それはあまりに突然だった。心の準備をするいとまもなくそれを迎えた彼女の心にはロマンも愛も情熱も、およそ小説家が筆にするところの甘いふわふわする酔うような気持ちなど一切生じなかった。ただそこにあって占めていたのは憤激と驚き、それに傷つけられたという屈辱感だけ。彼女は懸命にもがいて手をふりほどこうとしたが相手は強力に彼女を胸に抱き、その両手は彼女の背中を抱きかかえていた。彼女は身動きもできないまま抵抗を断念したがその目はずっと大きく開かれたままだった。
 やがてようやく彼は手をゆるめたがその目は依然するどく彼女に注がれていた。その強い眼差しに彼女は当惑を感じたがすぐにその感情はもっていきようのない怒りにとってかわり、彼女は彼を突き放すと手厳しい平手打ちをくらわせた。

「なんて卑劣で恥知らずなの!」

彼女は罵った。

「いったいなにさまのつもり、あなたは父親が雇った相手ならなにをしたっていいと思ってるわけ?!金持ちの放蕩息子なんてやっぱりろくでなしだわ!思い違いしないで、私はあなたのおもちゃじゃないのよ!それにあの紀靄霞でもないわ、もしもう一度こんなことをすればここを出ていくから!」\

江雨薇はそれだけ言い切ると、夜の闇の中でぼんやりと立ちつくしている若塵を後にして建物の中へ駆け込んでいった。
 彼女は部屋に戻ると鏡の前に立ち自分の火照った頬を濡れた髪を見た。燃える黒い瞳とたっぷりと紅い唇。そっと自分の唇に手をやった彼女はたちまちぴんと張りつめられた弦のように胸が震え騒ぐのを感じた。しばらくなにも考えられなかった。先ほどの事は彼女にとってまるで夢の中の出来事で本当にあったとも思えなくなってくる。
 やがて彼女はまとわりつく悪寒を消し去ろうとバスルームに熱い湯をはりそっと身を沈め、身を清めてから浴衣に着替え大きなバスタオルで髪の毛を拭くと再び化粧台の鏡の前に座った。
 夜は静まりただ雨音だけがしとしとと窓ガラスを叩き、夜風は絶え間ず低いうなりを上げている。江雨薇は座ったままじっと耳をすましていた。若塵の部屋は彼女の隣だ。戻ってきてるなら彼女には必ず音が聞こえる筈なのだがずっとなんの物音もしない。彼女はいささか落ち着かない気分だった。春と言えど冷たい風の吹くこの雨の夜にあのとんまさんはまだ庭で濡れそぼっているのかしら。
 窓べに近づきカーテンのすきまから外を眺めた彼女の目にぼんやりと写ったのはあの大理石のビーナスとざわめきゆれる木々、そして一片の人影。うそでしょ、こんな夜にまさかあそこで一夜を過ごすつもり?
 なんて人騒がせな!そんなにかまって欲しいの?彼女はカーテンを閉めヒーターのスイッチを入れるとベッドに横になった。眠っちゃおう、明日は早く起きて老人に注射しなければいけないし黄医師も10時にやって来る。あのとんまにかかわらずに寝ちゃうのよ。雨にずぶぬれになりたがる物好きになにをしろっていうの?さっきの出来事なんて忘れて寝るべきなのよ。どら息子が気まぐれに看護婦にちょっかいかけたそれだけの事なんだから。
 でも・・彼女は突然跳ね起きると膝を抱えテーブルの上のスタンドを見つめた。まさか彼が本気だったなら?まさかあれが本気の告白だったなら?いえ、そんなのありえない、江雨薇、あなた勘違いしちゃだめよ、彼にはそれなりの女性遍歴があるのにこんなあか抜けない看護婦を好む筈ないじゃない。それにたとえそうだったとしてもあなた自身はどうなの?
 彼女は自分に問いかけたがすぐには答えが出ずもう一度問いかけた。あなたはどう思ってるの?彼女は顎を膝にのせ考え込んだ。だめ!歴然じゃないの、若塵は富豪の子息で成り行きからすれば老人の財産を受け継ぐのは間違いない、そこに現れた身よりのない娘。だめだめ!先々なにを言われるか、金目当てで嫁入り、看護婦玉の輿に乗る、なんてね。ぜったいだめ!\
 それに恥ずかしくないの?もうとっくに他から求婚もされてるのにたった一度の出来事で心を動かされるなんて。忘れちゃいけないわ、あっちは救いようのないどら息子なんだから。もしもあなたが利口なら絶対選ぶべきじゃない、とことん避けるのよ。いい?わかったら早く寝てしまいなさい!
 そう思い再び毛布にもぐりこみ頭を深く枕に沈めた彼女だが・・もう本当に忌々しいたらありゃしない、やっぱり気になる、どうしてとっとと部屋に戻ってこないの?まさか自分もあのビーナスみたいに風雨なんか平気だと思ってるのかしら、・・えーい!どうしてこんなに気がかりなの?
 それでもしばらくうとうとしてから眠りに落ちた彼女だが突然はっと目が醒めた。窓の外を見るとしらじらと夜が明けかけている。やがて彼女は目が醒めた理由がわかった。足音が廊下を通り隣の部屋へ消えたのだ。うそ!あのとんまは本当に一晩雨にうたれてたんだわ。彼女は毛布をはねのけて入り口のほうへ近づき小さく扉を開けた。若塵の部屋の扉が開け放され彼が何かを叩いている音が聞こえる。彼女は若塵がテーブルを叩きながら詩を吟じているのだと知った。扉をさらに開け彼女は聞き耳をたてた。それは彼女のお気に入りの宋詩だった。

「いくたびか鳥鳴き 花の香の止むを伝える

 春を惜しみ 残り花を摘む

 雨はほのかにして風強く 梅青く実る

 枯れることない柳   __________

 いたずらに弦をつまびくなかれ  _________
 
 この世のある限り 愛は絶えず

 心は二つのあざなえる網のごとし ついには千千のもつれとなりぬ

 夜は過ぎて なお東の空は未だ明けず」

彼が繰り返し朗読するのを彼女もじっと聞き入った。しばらくして彼女ははっと我にかえりドアを閉め背にしてもたれ今の言葉をよく考えた。

「いたずらに弦をつまびくなかれ  _________
 
 この世のある限り 愛は絶えず

 心は二つのあざなえる網のごとし ついには千千のもつれとなりぬ

 夜は過ぎて なお東の空は未だ明けず」

そう、たしかに夜は過ぎ去ったが本当の夜明けはまだ訪れていないのだ。

【第13章】に続く
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 楼主| 发表于 2006-5-30 13:32:25 | 显示全部楼层
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳についての言い訳です(^^;

以下の部分が抜けていますね。

 枯れることない柳   __________

 いたずらに弦をつまびくなかれ  _________
 
 
  原文はこうです。 

   永丰柳,无人尽日花飞雪!
   莫把丝弦拨,怨极弦能说,

数年前にこの小説を訳した時、とうとう適当な言葉が見つからなかったのです。
中国語ネィティブスピーカーの皆様、どうか、意味の解説をお願いします。

一人で考え出すとまた頭がハゲそうです。







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发表于 2006-5-30 15:01:13 | 显示全部楼层
youdariyu 様 こんにちは

youdariyu 様の中国語すばらしいと思います!
詩の件について、これですか?

暮春时分,几声杜鹃的悲鸣,预报了春天的芬芳即将凋谢。我珍惜春色,选几枝挂着残花的枝头折下。雨轻轻地下,风急急地刮,眼下正是梅花凋落,梅子初青时节。路边的永丰柳啊,即使无人欣赏,也将那絮花飘扬如似飞雪。

哀怨的情人啊,请不要频频地弹拨琵琶末端的高弦 ,把幽思和哀怨一股脑地倾泄给高音。哀怨积多了,那高弦也会诉说出来的啊。天是不会老的,情也将永远不绝,我的心似双丝扣织的鱼网,里面有千万重的结。难熬的长夜眼看就要过去了,可东窗还未白亮,孤灯却已先灭了。啊,这黎明前最黑暗最黑暗的钟点。



数声鹃鸠,又报芳菲歇。惜春更选残红折。雨轻风色暴,梅子青时节。永丰柳,无人尽日花飞雪

莫把幺弦拔,怨极弦能说。天不老,情难绝,心似双丝网,中有千千结。夜过也,东窗未白孤灯灭。


わたくしの日本語はよくないですので、翻訳なら駄目だと思います。
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