|

楼主 |
发表于 2006-5-30 13:09:13
|
显示全部楼层
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。
「心有千千結」第12章
ひとまず穏やかな日が続いた。風雨園に嵐をもたらした培中培華もその後は姿を見せることはなく、老人は気を高ぶらす事もない為に精神状態は日に日に安定していった。
毎週やってくる黄医師は老人の病状が小康状態だと告げた。良くなっているわけではないが決して悪化はしていない。だがこの種の病では悪化しないことこそが大切なのだ。江雨薇と若塵は老人の身体に奇跡が起こることをひそかに願った。たしかにそれは医学史上、ないことではなかったが。
若塵は老人の紡績会社で仕事を始めたが、江雨薇には彼が無理をしている事がわかった。彼はもともと会社の経営に興味はなくただ老人を喜ばす為やってるに過ぎないのだ。
けれどある日の晩であった。江雨薇と耿親子が一緒に暖炉のそばで雑談していた時の事。その時彼女はオレンジ色のスーツを着てぼんやりと絨毯に座っていたが突然若塵が一枚の紙に木炭で彼女をスケッチし始めた。描きあげてから彼はその服装が垢抜けないと感じ腰にリボン状のスカーフを加筆し普段着に変えてしまった。彼をそれを江雨薇に見せた。
「似てるかな」
江雨薇はしばらく見入ってから言った。
「すごい、本人よりきれい」
彼女は笑った。
「埋もれさせるには惜しい才能ね」
若塵は言った。
「でももう遅いよ、今から絵を習ったって」
「ちょっとそれを見せてくれないか」
そう言った老人に江雨薇が絵を渡すと老人は非常に興味深くしげしげとその絵を眺めたあげくふいに畳んでポケットにしまい込んでしまった。
「貰ったぞ」
江雨薇は特に気にとめなかった。老人の息子を思う気持ちはたった一枚の絵でも手元に置いておきたいほどなのだと感じただけだ。若塵もすぐ忘れてしまったようだ。だが翌日、絵は唐経理部長に渡され一週間後それは真新しい衣服となって出来上がってきた。腰にリボンを配し袖口とスカートの裾の広がったデザインは洒落ていて美しかった。風雨園にその服が運ばれてきたその日は江雨薇のモデルデビュー第一日目となった。若塵は不思議そうに言った。
「これが本当に俺が描いたの?」
「そうじゃ」
老人は答えた。
「どうだ。どこを直せばよくなるかな」
その服の生地は藍色でベルトも同色だった。
「生地はもう少し黒みがかった青だな。襟ももっと高くしないと」\
淀みなく彼は答えた。
「リボンはサファイアブルーにすることでメリハリが出る。もしも黄色の生地を使うならリボンはオレンジだ。とにかくリボンを浮き立たせなきゃ」
そうして一ヶ月後、唐部長は息せき切って大喜びで飛んできた。
「注文ですよ!注文!アメリカから大量の注文が来ました、そのうえ他のデザインも見たいと言ってます、大急ぎで御子息にまたデザインお願いしますよ!」
それはたまたまのまぐれだったかも知れないが、若塵に間違いなく仕事への興味をもたらした。彼は材料の品質やデザインを調べ、どうすればいかにして安いコストで良質の製品が出来るかの研究に没頭するようになった。彼は工場に入り浸りコンテを手に積極的に仕事にいそしんだ。
「信じられるか」
老人は誇らしげに江雨薇に言った。
「あいつはもういっぱしのデザイナーだ」
江雨薇もモデルが日課となった。新製品ができると彼女はそれを真っ先に纏い、親子二人の前で歩き回転し後退し座り手を上げ足を上げ再び歩く。父と息子はそれを食い入るように見ては熱心に論議しあう。江雨薇は言った。
「モデル代ももらわなくっちゃ。いいですか、モデル代は看護婦なんかよりずっと高いんですよ!」
「商売替えするのもいいんじゃないか」
若塵が笑いながら言った。
「君のサイズは既製服にうってつけなんだよ」
「商売替えされては困るぞ」
老人も笑いながら声をかけた。
「13号なんぞ来て欲しくないからな」
「13号って?」
若塵が不思議そうに尋ねた。老人は若塵に、江雨薇以前に11人の看護婦のクビをすげかえたこと。12番目の彼女がいかなる手腕で老人を屈服させたかを語った。若塵はひどく面白がり老人の肩を叩いた。
「この女帝様には誰もかなわないよ、本当に」
そう言われた江雨薇は顔を赤らめ若塵の強力な眼差しに胸が妙に苦しくなった。まったくこの楽しい雰囲気はどうだろうか。まるで我が家にいるような暖かな団欒。いや、それより自分はこの風雨園を去り再びあの殺風景で叫声の満ちる病院の生活に戻っていけるのだろうか?
春は知らず知らずやって来た。雨期はまだ終わらず小雨の日が続いた。江雨薇は自分が雨を好むのは名前のせいだと思っていた。実際、彼女は雨の中を歩き雨音を聞くのを好み、特に雨の朝と黄昏は最高だった。
彼女の休日にあたるその日も雨で、彼女は一日を二人の弟達と過ごし、彼らは学校の生活や趣味、それにガールフレンドの事を姉に話した。いつの間にか彼らもそんな年齢になっていたのだ。夜になり彼女が彼らに「沙茶火鍋」をふるまっていた時突然上の弟の立徳が居住まいを正し、あらたまって彼女にこう宣言した。
「姉さん、これまでずっと僕たちは姉さんに苦労をかけたね。けど大学にも受かった以上もうあんな苦労は終わりだ。僕も立群も家庭教師で独立してやっていける。だから姉さん、姉さんだってもう23だ。もしも好きな人がいるなら僕たちの心配はしないで」
江雨薇は立徳がもう子供でなくなった事を改めて認識したが、その言葉は却って彼女に葛藤をもたらした。これまでつきあってきた人は少なくないけどいったい誰がそれに該当するだろうか。いかんせんどれもがイマイチで彼女の情熱に火をつけた者はついぞいなかった。
でも一歩下がって考えてみればこの世にそんな世界もひっくりかえるような恋愛なんてあるのだろうかという気もする。小説家が筆で描きだす身も焦がすような百年千年の恋なんて。彼女はまだ未だかつてそんな感情を抱いたことがない。彼女はいっぱい多くの小説や詩を読んできたけれどそのどれもが所詮架空の絵空事かも。
けれど立徳が言った言葉、彼女はすでに23歳というのも間違いない現実なのだ。短い花の命を彼女はどう有意義に送ればいいのだろうか。この付き添い看護婦という職業をもってどう生涯設計を行うべきなのか?
そんなわけで江雨薇はX線科の呉家駿医師に誘われその夜華国クラブへ行ったのだが話す事といえば医院でのとるに足りないニュースや医者の苦労、患者達の面倒事、それらは彼女に何の興味も情熱も与えなかった。医師に人体は透視できても心はそうはいかないようだ。
夜中の二時、呉医師はタクシーで彼女を風雨園に送り届けた。こんなに遅くなったのは始めてだ。門のところで彼女は呉医師に別れを告げ鍵を開けるとそぼ降る小雨の中を部屋に向かった。
冷たい雨が頬を濡らしひんやりする。彼女はマフラーを巻きなおし急ぐでもなく考えごとをしながら歩いた。両側の竹林はざわざわとざわめき、花の香りが漂う。マイカイとクチナシの溶け合った香りだ。庭園のクチナシは今が盛りだった。
ハイヒールで水たまりを歩いていた彼女はあらっと思った。二階の窓に灯りがこうこうとついている。いったい誰だろう。彼女がよくよく見るとそれは若塵の部屋の窓だった。まだ起きてたのね。足音を気づかれないように彼女が行こうとした時突然一つの人影が竹林の中から現れ彼女の行くてをふさいだ。彼女は思わず声をあげそうになったがその人影は素早く叫んだ。
「びっくりしなくていい、俺だよ」
若塵だ。彼女はほっとして胸をおさえた。
「なにをしてるの?跳び上がりそうだったわ」
心臓がまだどきどきしている。
「なにしてるかだって」
彼は彼女の言葉を繰り返した。
「君を出迎えようと思ってね、夜遊びの女神さん」
「?出迎え??」
彼女はあっけにとられた。
「帰ってくるのが見えたんだ」
彼はそう言うと彼女の手をひっぱった。
「ちょっと話があるんだ。歩きながら話そう」
「こんな時間に?」
彼女はびっくりした。
「今何時だと思ってるの」
「君こそこんな時間までなにやってたんだ」
彼は不機嫌そうに言った。
「どうして」
彼女の眉が跳ね上がった。
「あなたのお父さんは門限なんて決めてないし、あなたの仕事の邪魔をしたわけでもないでしょ」
「仕事、仕事、いつでもそうだ」
彼はいらいらしだした。
「君は他の事にもいっぱい口出ししてるのに、いざ自分に都合の悪い話題になると仕事を持ち出してお茶を濁す」
「あら!」
江雨薇は目を大きくした。
「今日はなに?あたしに御説教?」
「どうしてだ、ただ少し話がしたいって言ってるだけじゃないか。それとも他のやつとは夜中までつきあえても俺とは数分話すのさえケチるわけか」
江雨薇はしばし黙った。夜の闇に彼の表情はおぼろだったがその鋭い視線が彼女には見てとれた。彼女は唇を噛み首を傾げて言った。
「まるで焼きもち亭主が夜遊びの妻をとがめるような言い方ね。若塵あなた飲んでるの?」
「飲んでるよ!」
彼はふてくされたように答えた。
「君はなんだっていつでも監察官みたいなんだ、俺が飲まないでいられると思うか?毎日毎日会社に出かけては服をデザインし品質を管理し書類を片づける、俺は怠けてやしないだろ?」
「そうね」
彼女は微笑んだ。
「よくやってると思うわ、だからぷんぷんしないで」
彼女は姉が小さな弟に言ってきかす時のように彼の手を握った。
「いいわ、じゃあ歩きながら聞いてあげる。今日なにかいやなことでも有ったのかしら?」
「いやなことなんてないさ」
「え?じゃあいったい・・」
不思議そうに彼を見た彼女の手は彼のぐっしょり濡れたオーバーに触れた。
「あら」
彼女は小さく叫んだ。
「ここにいつから居たの?」
「たっぷり、1、2時間」
彼は鬱々と答えた。
「気はたしか?」
「雨が好きなのは君もだろ」
「でも頭までおかしくないわ」
彼女は彼の手を掴んで強制するように言った。
「早く家の中へ入るのよ、でなきゃ風邪ひいちゃう」
だが彼は逆に彼女の手をさらに強く握り返した。彼の目は彼女に釘づけになっていた。
「いかにも看護婦みたいな言い方はするなよ、俺は君の病人じゃない」
彼女は立ち尽くし困ったように首を振った。
「わからない人ね、いったいどうしたいの?」
「さっき君を送ってきたのは誰だ、あの背の高いやつ。あれが恋人のX線か」
「そうよ」
彼女は顎を上げた。
「それで?」
「あいつが好きなのか」
彼の手はすでに痛いくらいに彼女の手を握りしめていた。
「本当に頭がへんになったの?ちょっと放してったら」
彼女は素早く手をひっこめた。
「だからどうしたの、好きだろうが嫌いだろうがあなたに関係ないでしょ?」
彼女は立腹を表すかのように髪をかきあげて言った。
「もう行くわよ、アブない人につきあってられないわ」
彼はすぐに彼女の行くてをふさぐと再び手をとった。
「よく考えろ」
彼の顔がすぐ近くに迫った。
「医者なんかのどこがいい、年中フラスコと試験管相手ににらめっこで君にインスピレーションの一つも与えてはくれないぞ。賭けてもいい、あのX線野郎は・・」
「ちょ、ちょっと若塵!」
江雨薇はますます不愉快になった。たとえなんであれ他人に自分の友人の悪口を言われて嬉しい筈がない。しかも今の若塵のように一方的に世界中の人間がろくでなしみたいに!彼女はぷんぷんして言った。
「友だちをけなすのはやめて!それにあたしのプライベートに干渉するのもね。医者に嫁ぐかどうかあたしの勝手でしょ」
「違う!」
若塵は掴んだ腕に力をこめて。熱い息が彼女の顔にかかる。
「君は俺にそうしたじゃないか、だから今度は俺の番だ。いいか、あのX線はやめとけ、それにこんな夜中に帰ってきちゃいかん・・」
「お生憎様!あなたの好き嫌いにかまっちゃいられないわ」
彼女は手をふりほどこうとしたが逆により強く握り返された。
「放してよ、なんであなたに干渉されなくちゃいけないの?」
「なんでだと」
彼はしゃがれ声がすぐそこにきた。
「これでもわからないか」
彼はそう言うなり彼女を強くひきよせた。彼女の足元は雨に滑り彼女は全身ごと転げ込むように彼に倒れかかり、彼はすばやく両手で彼女をすばやく抱きしめた。彼女はもがいて抜けだそうとしたが彼はしっかりと彼女を放さなかった。彼女が叫ぼうとした時、彼の唇がそれをふさいだ。
それはあまりに突然だった。心の準備をするいとまもなくそれを迎えた彼女の心にはロマンも愛も情熱も、およそ小説家が筆にするところの甘いふわふわする酔うような気持ちなど一切生じなかった。ただそこにあって占めていたのは憤激と驚き、それに傷つけられたという屈辱感だけ。彼女は懸命にもがいて手をふりほどこうとしたが相手は強力に彼女を胸に抱き、その両手は彼女の背中を抱きかかえていた。彼女は身動きもできないまま抵抗を断念したがその目はずっと大きく開かれたままだった。
やがてようやく彼は手をゆるめたがその目は依然するどく彼女に注がれていた。その強い眼差しに彼女は当惑を感じたがすぐにその感情はもっていきようのない怒りにとってかわり、彼女は彼を突き放すと手厳しい平手打ちをくらわせた。
「なんて卑劣で恥知らずなの!」
彼女は罵った。
「いったいなにさまのつもり、あなたは父親が雇った相手ならなにをしたっていいと思ってるわけ?!金持ちの放蕩息子なんてやっぱりろくでなしだわ!思い違いしないで、私はあなたのおもちゃじゃないのよ!それにあの紀靄霞でもないわ、もしもう一度こんなことをすればここを出ていくから!」\
江雨薇はそれだけ言い切ると、夜の闇の中でぼんやりと立ちつくしている若塵を後にして建物の中へ駆け込んでいった。
彼女は部屋に戻ると鏡の前に立ち自分の火照った頬を濡れた髪を見た。燃える黒い瞳とたっぷりと紅い唇。そっと自分の唇に手をやった彼女はたちまちぴんと張りつめられた弦のように胸が震え騒ぐのを感じた。しばらくなにも考えられなかった。先ほどの事は彼女にとってまるで夢の中の出来事で本当にあったとも思えなくなってくる。
やがて彼女はまとわりつく悪寒を消し去ろうとバスルームに熱い湯をはりそっと身を沈め、身を清めてから浴衣に着替え大きなバスタオルで髪の毛を拭くと再び化粧台の鏡の前に座った。
夜は静まりただ雨音だけがしとしとと窓ガラスを叩き、夜風は絶え間ず低いうなりを上げている。江雨薇は座ったままじっと耳をすましていた。若塵の部屋は彼女の隣だ。戻ってきてるなら彼女には必ず音が聞こえる筈なのだがずっとなんの物音もしない。彼女はいささか落ち着かない気分だった。春と言えど冷たい風の吹くこの雨の夜にあのとんまさんはまだ庭で濡れそぼっているのかしら。
窓べに近づきカーテンのすきまから外を眺めた彼女の目にぼんやりと写ったのはあの大理石のビーナスとざわめきゆれる木々、そして一片の人影。うそでしょ、こんな夜にまさかあそこで一夜を過ごすつもり?
なんて人騒がせな!そんなにかまって欲しいの?彼女はカーテンを閉めヒーターのスイッチを入れるとベッドに横になった。眠っちゃおう、明日は早く起きて老人に注射しなければいけないし黄医師も10時にやって来る。あのとんまにかかわらずに寝ちゃうのよ。雨にずぶぬれになりたがる物好きになにをしろっていうの?さっきの出来事なんて忘れて寝るべきなのよ。どら息子が気まぐれに看護婦にちょっかいかけたそれだけの事なんだから。
でも・・彼女は突然跳ね起きると膝を抱えテーブルの上のスタンドを見つめた。まさか彼が本気だったなら?まさかあれが本気の告白だったなら?いえ、そんなのありえない、江雨薇、あなた勘違いしちゃだめよ、彼にはそれなりの女性遍歴があるのにこんなあか抜けない看護婦を好む筈ないじゃない。それにたとえそうだったとしてもあなた自身はどうなの?
彼女は自分に問いかけたがすぐには答えが出ずもう一度問いかけた。あなたはどう思ってるの?彼女は顎を膝にのせ考え込んだ。だめ!歴然じゃないの、若塵は富豪の子息で成り行きからすれば老人の財産を受け継ぐのは間違いない、そこに現れた身よりのない娘。だめだめ!先々なにを言われるか、金目当てで嫁入り、看護婦玉の輿に乗る、なんてね。ぜったいだめ!\
それに恥ずかしくないの?もうとっくに他から求婚もされてるのにたった一度の出来事で心を動かされるなんて。忘れちゃいけないわ、あっちは救いようのないどら息子なんだから。もしもあなたが利口なら絶対選ぶべきじゃない、とことん避けるのよ。いい?わかったら早く寝てしまいなさい!
そう思い再び毛布にもぐりこみ頭を深く枕に沈めた彼女だが・・もう本当に忌々しいたらありゃしない、やっぱり気になる、どうしてとっとと部屋に戻ってこないの?まさか自分もあのビーナスみたいに風雨なんか平気だと思ってるのかしら、・・えーい!どうしてこんなに気がかりなの?
それでもしばらくうとうとしてから眠りに落ちた彼女だが突然はっと目が醒めた。窓の外を見るとしらじらと夜が明けかけている。やがて彼女は目が醒めた理由がわかった。足音が廊下を通り隣の部屋へ消えたのだ。うそ!あのとんまは本当に一晩雨にうたれてたんだわ。彼女は毛布をはねのけて入り口のほうへ近づき小さく扉を開けた。若塵の部屋の扉が開け放され彼が何かを叩いている音が聞こえる。彼女は若塵がテーブルを叩きながら詩を吟じているのだと知った。扉をさらに開け彼女は聞き耳をたてた。それは彼女のお気に入りの宋詩だった。
「いくたびか鳥鳴き 花の香の止むを伝える
春を惜しみ 残り花を摘む
雨はほのかにして風強く 梅青く実る
枯れることない柳 __________
いたずらに弦をつまびくなかれ _________
この世のある限り 愛は絶えず
心は二つのあざなえる網のごとし ついには千千のもつれとなりぬ
夜は過ぎて なお東の空は未だ明けず」
彼が繰り返し朗読するのを彼女もじっと聞き入った。しばらくして彼女ははっと我にかえりドアを閉め背にしてもたれ今の言葉をよく考えた。
「いたずらに弦をつまびくなかれ _________
この世のある限り 愛は絶えず
心は二つのあざなえる網のごとし ついには千千のもつれとなりぬ
夜は過ぎて なお東の空は未だ明けず」
そう、たしかに夜は過ぎ去ったが本当の夜明けはまだ訪れていないのだ。
【第13章】に続く |
|