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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2007-8-18 08:25:56 | 显示全部楼层
2007年08月18日(土曜日)付
, ?3 Y) r% Q1 m3 i% B8 ^& X) u( d" u! `  Y
作家の吉川英治は若い頃、雉(き)子郎(じろう)と号して川柳を詠んだ。家は貧しく、工場へ通う途中に焼き芋を買い、半分を朝飯に、半分を昼飯にした。そのころの一句、〈貧しさもあまりの果(はて)は笑ひ合い〉。
) M7 k9 d% b" I+ _2 ^+ q. _6 d. d
+ _- f, I- ]( L5 j( `0 c" K 暑さも、あまりの果ては笑い合うしかないのか。埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で、国内の最高気温となる40.9度を記録した。テレビに映る市民には苦笑いが目立った。お天道様には勝てない。あきらめ半分の苦笑だったかもしれない。
$ n5 ?' t, P+ O6 c+ u
; }  D, a' o+ K6 n 冷房という「逃げ場」のある現代人の、ゆとりの表情でもあろう。これまでの記録40.8度は、74年前に山形市で観測された。むろん冷房などない。地元紙は、「太陽がもう一尺でも地球に近づくなら生きとし生ける北半球の動物が焼死してしまう」と書いた。気息奄々(えんえん)、酷暑への恐怖さえ伝わってくる。
* \& F3 U# ^6 k& W
8 P: R9 y9 A) d6 Q- w2 y 当節は、暑さを逆手に取っての「街おこし」らしい。熊谷はもともと暑さで名高い。猛暑を「無形文化財」に見立て、イベントなどに取り組んできた。そして、めでたく日本一に。反対に、王座陥落の山形からは「悔しい」の声が届く。
( n  t% b2 ~4 y/ [9 S2 P$ I1 t5 i" ]! F2 A' N( ?2 ^! O
 とはいえ、多くの命が熱中症に奪われている。暑気あたりを総称して「霍乱(かくらん)」という。鬼でも霍乱を病むのだから、お年寄りや子どもは注意が要る。暑さで売る熊谷あたり、霍乱予防の先進地も目指してはいかがだろう。( R5 v9 B3 O2 D, W
" x' H' t+ t4 ^
 なお真夏日の続くなか、雉子郎の句をもうひとつ。〈ざんざ雨河岸に涼しい灯が一つ〉。冷房頼みで乗り切る夏ではあるが、気持ちで「涼」を感じるゆとりも、失わずにいたい。
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发表于 2007-8-19 19:08:01 | 显示全部楼层
2007年08月19日
$ G+ J9 }+ j& d/ `
9 c+ M' W5 j/ P- S7 x' B候泣の塑腕は≈丹积ちで蚊を炊じるゆとり∽を钙びかけている。ゆとりと钙ぶほどの极慨はないけれど、お诉蒂みに碉た叠旁で、ささやかな蚊蹋に部刨か颠われた。# ]9 ~6 W+ L! S  N% b( }; U8 ?% h' e

% b# [( _! s+ F" H! p 标欧布で畸家を戒り、络付の话篱薄に缅いたところで泣が雹った。皋炊が叉に手ったのか、チョボチョボという缄垮拳∈ちょうずばち∷の不に吉が乖き、糜のアメンボに誊が葡く。妙が瓢くたび、崩を鼻す垮烫に票看边が泅く瘤る。そういうものが匡尸いとおしく斧える。夺くの间各薄では、欧の虑ち垮のような奶り鲍に访まれた。
7 f$ I8 V+ D$ V' K: U8 {1 Q5 z  C" d$ d1 R5 ]5 J& q4 n4 b
 悍插填を畔る慎もうれしかった。∫蚊しさを敞にうつしけり悍插の幂∮と俏局が庇んだ攫肥だろうか。幂斡をくぐる嘿苹を、驼ずれの不と、滥い贯が却けていく。
; M; _# m' E- S6 T: U$ f
; V  @$ Z9 P1 ~1 y/ s7 [$ ~ そんな≈ちょい蚊∈すず∷∽の挛炊は、浩びの标欧布であえなく绝券した。竿嘲の光补驴季と、殴や贾柒を塔たす客供の武丹。10刨の汗を饼牲するうち、わずかな补刨の蜕らぎはどうでもよくなる。丹积ちで蚊を蹋わうには、なるほど看咳と箕粗のゆとりが妥りそうだ。( k# S. E+ ^9 L  `7 J3 G4 W$ d6 b

/ f! N! ^( I9 G( \& j6 o うだる财、撵武えの胚。日钳の毛宏结办虾は叠の川萌汗に卵えかね、铰」、钱长に臂したという。そういう孟に旁があったから、煌胆の败ろいを减け萎す梦访、弛しむ矢步が弓まったのかもしれない。砷けずに头べば、叠に≈さんずい∽を藕えるだけで蚊しくなる。/ @' w: o, @/ G6 [4 F# u+ g

# {: L. z, V! I  ^& ^, }5 X 蓝垮∈きよみず∷の神骆には乐トンボが神い、ヒグラシが使こえた。僵の丹芹とするのは磁かろうが、箕が息れ殿るのも诫さ川さである。李烫の叠叹湿、羌蚊静にせめて丹积ちだけでも啪がし、庭しい胆泪を略つとする。
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发表于 2007-8-21 17:45:59 | 显示全部楼层
2007年08月20日(月曜日)付
1 O4 r+ ~1 l/ Q8 V& L1 b3 {/ P# O- ]. E& ]: B- g: x4 ^
グルノーブル冬季五輪の記録映画(68年)は「フランスでの13日間」という無味乾燥な原題である。この作品がまとう甘い記憶は、全編に流れるフランシス・レイの音楽と、邦題「白い恋人たち」のためだろう。命名の妙だ。' H/ n9 S! u% E7 p" x; K: u

$ T3 T. w6 b  D" [ それにあやかった北海道銘菓「白い恋人」が、発売30年にして失恋の危機にある。売れ残りの賞味期限を1カ月先に改ざんするなどの不祥事に、裏切られた思いの人も多かろう。
7 L$ Z  x$ h, W2 `5 |; x
7 j& z5 s+ m$ v, m0 x4 H9 N 賞味期限は4カ月。土産物は日持ちするほうが便利だが、少しでも新鮮な品を求めるのも消費者だ。「半年は大丈夫」(石水勲社長)という問題ではなく、「交際相手」である顧客との信頼関係が問われている。小さなうそから始まる破局もある。
6 F2 O# r4 J" T3 J% q* Z! |$ K
! J9 k7 e: A/ j  R 全国に名を知られた後も、「恋人」は北の土産の立場を守り続けた。この商才がご当地ブランドを生んだ。商品名が優美なだけに、現実との落差は哀れでさえある。たとえば、発売前に検討されたという「冬将軍」であれば、ここまでの名前負けはなかったはずだ。5 ^" T: y, i, \
- T# h! H* z- B! }$ S1 g
 ブランドとは、買い手の頭の中にある「いい記憶」の積み重なりだという。「悪い記憶」は消えにくいので、ブランド企業は品質の維持に腐心することになる(山本直人『売れないのは誰のせい?』新潮新書)。
5 E' Y9 G$ x, h+ W$ l3 h& H* M4 T( u2 O" s, ]# v) A2 @3 @
 石水社長は5月、地元紙に連載された自伝の最終回で「伊勢の赤福のように百年、二百年後まで愛される『伝統』にしたい」と語っている。今年創業300年の赤福の餅は、ごまかせない「製造日限りの販売」だ。伝統にはそれぞれ、理由がある。
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发表于 2007-8-21 17:46:35 | 显示全部楼层
2007年08月21日(火曜日)付1 T! J. f* g2 e% I# H% u/ w7 M

. \# R) D+ [" Z9 U! a0 X/ W世に飛行機の苦手な人は多いが、作家の恩田陸さんも、その一人だ。初めて乗ったとき、「この床の下には何もない」と想像し、パニックになったと自著に記している。たしかに、地に足つかない心細さは、板の下に水のある船をしのぐ。) n$ O2 d% x1 a/ a6 q( e4 V( w5 K
' {0 R/ U% a9 b' }' D( b2 @
 だからだろう。車輪が滑走路についたとき、詰めていた息を吐くような空気が機内に流れる。だが、それで安心するのは早いと、昨日の那覇空港の事故で思い知らされた。, d& a, @7 ]0 K' h. o$ k
  L1 F. F8 e7 z& p% \. f1 [
 台湾から到着した中華航空機は、タラップを付ける駐機場に入って止まった。普通なら、乗客はこのあと自分で土を踏むだけだ。それが、機体は炎と黒煙に包まれた。漏れた燃料に何かの理由で引火したらしい。" `' A3 k7 x. F) k3 x/ C; O
) q) {5 h- `. y% z/ j8 ]. D
 乗客の話は生々しい。脱出シュートで外へ出て、一目散に走る背後に、爆発音が響いたという。まさに間一髪。全員無事だったのは奇跡的だろう。引火が何分か早かったら、あるいは飛行中だったら、と想像すれば背筋は冷たくなる。
) @9 c! W# X# V, R2 W& u
+ }( V/ W& _9 R1 `- E5 E 「墜(お)ちる」イメージの強い航空事故だが、地上で起きた例は少なくない。30年前に、大西洋のテネリフェ島で過去最悪の583人が死亡した。これも墜落ではなく、ジャンボ機同士の滑走路での衝突だった。( [' Y# Y! u: x9 A& E

7 V& k7 h  {1 N6 u' I7 ` 飛行機嫌いがいれば、飛行機好きも多い。無類の後者だった精神科医、斎藤茂太さんに生前お会いしたとき、「人間が空飛ぶなんて奇跡的ですよ」と聞かされた。奇跡を当たり前に思っては安全はおぼつかない。謙虚かつ細心。航空会社の気構えなしには、旅客機の「床の下」は、ますます心細くなってしまう。
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发表于 2007-8-22 08:35:26 | 显示全部楼层
2007年08月22日(水曜日)付
5 M6 {% I* C* d& `1 @7 o2 F  c5 B* z$ _$ q. b7 J3 P, T! `4 i( l# K
「六月無礼」とは、暑さの盛りには服装が乱れても、大目に見られることをいう。この「六月」は旧暦である。今年は、旧暦と新暦とでは、ひと月半ほど季節がずれるから、「八月無礼」がふさわしいだろう。. f" D4 D  |+ ~! s. o$ ^
/ _0 w' c9 e: V
 夏の盛りの暑さを、暦の上の立秋を基準に「残暑」と呼ぶのはいかがかと、本紙の声欄に投書があった。今年の立秋は8日だった。たしかに、その日から天気予報などで「残暑」と言われても、実感にそぐわない。ここは1票を投じたい気分で、ご意見を拝読した。* z0 @, \% k8 B' j  j/ E- |
* ~7 Y, ^  E2 ]/ N0 F
 こうした「正確な表現」に、時々とまどうことがある。たとえばテレビなどが、午前0時を過ぎたとたんに、前の日を「昨夜」「きのう」と言う。だが聞く側にとっては、まだ「きょう」が続いているから、いつのことかと混乱してしまう。
1 j1 p+ ~; k# S, j' D+ L3 j/ o: x" Q  d
 これも、暦と実感のずれだろう。新しい日が始まるには、前の日が終わらなくてはならない。だが宵っ張りはいつも、きょうが終わっていないのに、新しい暦がめくられてしまう。6 ], c+ A! Q3 K6 _+ l

/ @# p) a0 _& J# t 眠らなければ前の日は終わらない、と哲学者の長谷川宏さんは言う。不眠はさまざまにつらい。とりわけ、一日の始まりを持てない精神的苦痛が大きいのではないかと、著書『魂のみなもとへ』(朝日文庫)で述べている。& |* A6 b0 E4 z5 V' \7 _

" e) v) @1 v' P7 c& s8 y0 \ 眠りづらい熱帯夜に、日々の区切りのおぼろげな方もおられよう。秋が立つには、夏が遠ざからなくてはならない。高校野球はきょう決勝、空にすじ雲もなびく。ツクツクボウシも鳴き出した。「無礼」な猛暑との付き合いも、いま少しと見受けるのだが。
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发表于 2007-8-23 10:03:53 | 显示全部楼层
2007年08月23日(木曜日)付- @4 x3 B3 |* k

  B; {6 r4 G% h& }7 c75年前の冬のこと、5人の乗った飛行艇「白鳩号」が大阪から福岡へ向かっていた。折からの吹雪に艇は針路を失う。空中分解して山に墜落し、全員が帰らぬ人となった。  o1 Y9 V* E( {& I/ y5 D1 |& h
" Y/ Z1 S, T' W
 原因は詳しく調べられたようだ。調査はまず、機体の散乱具合をもとに、時計の針を戻しながら、どんな順序で分解が進んだのかを突き止めた。さらに、さまざまな実証をへて、空中分解の端緒となった「翼の銅線の切断」にたどり着いた。2 S) J6 {# }' Y' w6 e2 M
& X7 ?) A  I; f: U. F- Q& V" p
 物理学者の寺田寅彦は、報告を読んで感心したらしい。「下手な探偵小説よりおもしろい」と感想を残している。そして、「銅線を強くすれば、少なくとも同じ原因による事故はなくなるわけだ」と事故調査の本質を突いた。「犯人捜し」ではなく、「再発の防止」が、調査の目的なのである。
% f: x& `% i+ I
+ t+ j6 N1 `; }) E/ ?+ C, `& D 那覇空港で中華航空機が炎上した事故は、調査が進むにつれて、相当な燃料漏れがあったとわかってきたようだ。目撃者によれば「ジャージャー漏れていた」らしい。& p- R. p1 f; X% P) f$ c1 N  I; p

) p! U$ c4 X0 p+ d. w; W" z 水も漏らさぬはずが、なぜ蛇口でもひねったようになったのか。突き止め、対策が取られなければ、同じ旅客機に命を預ける気にはなれない。ベストセラー機で知られ、国内でも10機が飛んでいる。! q. X/ j' {- D
' }- J. k+ P1 n$ \7 b3 y% S! n
 75年前の新聞には、白鳩号の操縦士は「日本屈指」だったとある。腕前で飛んだ時代から、いまや技術の粋を集めたハイテク機である。800人を乗せる超大型機など、寅彦は想像もしなかっただろう。だが、力説した「真相を明らかにして後難をなくす」大切さは、時を経ても変わってはいない。
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发表于 2007-8-24 08:52:26 | 显示全部楼层
2007年08月24日(金曜日)付
% S7 m3 U. G- i( o4 B! }5 e9 Q- X" c) G$ ?
芝居の入りが思わしくないとき、客足を取り戻す切り札と頼む演目は、日本なら「忠臣蔵」、西洋なら「ハムレット」だと聞く。「忠臣蔵は芝居の気付け」とも言い習わされる。どちらも、名場面と名せりふで、観衆を飽きさせることがない。9 @  k1 _- n( ]% L3 o% O

4 d- l& _" u$ z( d* `1 v! a/ w  O) u% y 不人気な内閣は、「気付け」を改造に頼むしかないのだろう。7月の参院選では、主役の安倍首相はじめ、脇役大臣の「大根」ぶりに、国民から「引っ込め」の声が飛んだ。だが、大敗もものかは、早ばやと続投を決め、週明けには新たな組閣に踏み切る。
0 X9 _  w3 H4 j7 z* M; f# N& B1 @4 P6 O& W: y, B
 珍場面と迷せりふの安倍一座に憤った国民の目は、なお厳しい。宿敵、民主党の小沢代表は「政府は脳死状態」とばっさり。連立を組む公明党の太田代表からも「安倍政権がだらしないのは皆さんの言うとおり」とやられた。5 s' Y0 H: q" S% M4 P! P6 O$ y7 g
1 P+ n3 ~! |) n+ K" V5 y' T# W6 ]- F5 p
 自民党内からも退陣論が噴いてやまない。文字通り、四面に楚歌(そか)を聞きながらの改造である。「私の内閣」「私の国造り」などと、首相は天動説さながらの発言を続けてきた。なお続くなら、民意を読めない鈍感ぶりは極まることになろう。" c& \; S* @! o* ?' d8 ]% r: A6 A5 D1 J

2 ], ?8 p% L8 m+ u3 _ 挙党一致であれば見栄えはいい。だが、意見の合わない先輩らを迎えたとき、うまく手綱をさばけるのか。国民注視の組閣劇で、「お友達」を集めてすむはずもない。2 i0 Y; A7 x: y, n8 ^/ C! ~

2 C6 i5 t# R! u: s ハムレット随一の名せりふは「生か死か、それが問題だ」だろう。外遊先で安倍さんは、「生」と「死」にいろいろな名前を当てはめて、悩んでいるに違いない。いずれにしても脇役陣のみが入れ替わり、なぜか主役は変わらぬ第2幕となる。
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发表于 2007-8-27 13:29:22 | 显示全部楼层
2007年08月25日(土曜日)付
6 t% v& ?% X- T7 K8 |" ^$ [" b0 J. h
初夏に田植えをした房総半島の棚田へ、草取りの作業に行った。しばらく見ぬ間に稲は伸び、もう色づき始めている。草を刈り終えて、汗だくの体を冷ましていると、「それでよろしい」という風情で、稲穂も風に吹かれている。
2 L6 n& R9 m. H3 T- A# u6 V; Z7 j" e
' C7 \% X4 l! `3 e4 R 〈私の植えたものは黄金色の/なまめかしいものとなった。/風のままにはためいてさざなみをおこし/夕陽(ゆうひ)の中でくだけては又もりあがる〉。農村に暮らして詩を書いた永瀬清子さんが、実りの穂波を描いた一節が思い浮かぶ。
6 r! I; e2 l0 K2 E. S% y+ `* F) m( ~' V& ]/ T3 Q# k0 `& K+ Y  p& s
 だが地元農家に聞くと、今年の稲は、恵まれていたわけではないらしい。7月は雨が多かった。田んぼから早めに水を抜くと、8月に入って烈(はげ)しい太陽が照りつけた。実をはらまずに枯れた穂が、所どころにある。
# [( I; z1 p. {
; a( _. U  L: k( V+ z5 h 夕立も少なかったらしく、田はひび割れている。古来、稲は雷の光を浴びて実ると考えられた。雷光を稲妻や稲光(いなびかり)と呼ぶのは、その名残である。カミナリ様にも冷たくされたと聞けば、わが稲も少しばかり不憫(ふびん)である。
: Q8 N, {+ s" V/ I! ]9 \4 N8 m; X) l! z  A; R0 s
 夏の好天は豊作を約束するとされてきた。だが近年は、天気が良いと高温障害が起きる。温暖化ゆえか、「米どころ」が北へ移っているともいう。北海道産はかつて、食味が劣って売れ残り、「やっかいどう米」と揶揄(やゆ)された。いまや、本州米に並ぶ人気らしい。" a$ f: e5 t# b* K" W9 K( A/ F
$ |% j2 ]  w. v! i
 人が植えて刈るけれど、稲を育てるのは太陽と土と水だろう。秋の日には、感謝をこめて収穫を祝う。だが気候の歯車が狂えば、高らかな祭り囃子(ばやし)は遠ざかってしまう。兆(きざ)しなきにしもあらず、なのが気がかりだ。
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发表于 2007-8-27 13:30:23 | 显示全部楼层
2007年08月26日(日曜日)付5 L$ r7 g2 Y! v3 ]& B
御前崎を訪ねた。灰色の遠州灘から、波頭の連なりが静岡県南端の浜へと向かっていた。晩夏の眠る海は、秋から春、強い西風で表情を一変させる。84年から10年間、ウインドサーフィンの世界大会を開かせた一級の風である。
* ]. m! G; V" F) T; y3 X0 l: _! o0 E) Z  y( j- ~
 「Life 天国で君に逢(あ)えたら」がきのう全国公開された。05年に38歳で逝ったプロウインドサーファー、飯島夏樹さんの半生の映画化だ。御前崎で出会い、共に世界を転戦し、病と闘った妻寛子(ひろこ)さんや、4人の子供との家族愛の物語でもある。# d9 K& B% M' @) I. R9 @3 z

2 i* ^4 y. P5 h: Q+ x 肝臓にがんが見つかった02年から17回の入退院、そして余命3カ月の宣告。一家は最後の時を過ごすため、選手時代の拠点、ハワイに移る。それから半年、飯島さんは闘病記を執筆した。
* v& S+ u2 y* Z; T$ {6 E' E" X+ s# }* b: s) [0 G! |7 f
 薄黄色と水色の夕焼けに記す。「生の営みの最終章で、家族が仲良くひとつになって、誠実な仲間に囲まれ、ここに暮らせる事をとても幸せに思う」(『ガンに生かされて』新潮文庫)。
: L" x; s3 U+ A: O3 z8 g, O9 M% \3 ~: H1 w% Y$ f3 p1 C4 T" @
 一日刻みで生きる人の励みになればと、日々ゆれる体調を波回りや風向きに例え、死の5日前まで心情をつづった。未明の月に命をかみしめ、谷の朝風に元気をもらう。「弱くなってみて、初めて見えるものがたくさんある」。映画の「明るさ」は、主人公の前向きな姿勢に負うところが大きい。
8 t, D! k: ~& f; d
- {$ c+ |+ P7 ~) B# R  S エンドロールに飯島さん一家の笑顔の写真が重なる。〈海鳴る風に抱かれ/口ずさむメロディ……〉。桑田佳祐さんが寄せたバラードは、ハワイの貿易風のように優しく、切ない。涙を一度こらえたら、温かい勇気に満たされた。
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发表于 2007-8-27 13:31:30 | 显示全部楼层
2007年08月27日(月曜日)付+ N  q8 k$ f# u1 s1 r  n
1 F* d3 |& {  G6 Z8 P; N
斜陽をあびてバラが咲き誇っている。中の一輪にハサミを入れ、加藤楸邨(しゅうそん)は詠んだ。〈薔薇剪(き)れば夕日と花と別れけり〉。鮮烈な喪失感が漂う、不思議な句だ。英王室の大輪のバラが、異境の庭で散ってはや10年になる。
* R1 s0 o& V, V: O# X
3 a4 E3 m% e  T) p" ?, n かの国が香港を手放した夏の終わりに、ダイアナ元皇太子妃は交通事故で逝った。36歳だった。謀殺説を封じて、運転手の飲酒とスピード超過が原因とされている。& c4 Z4 T: s  {/ \- D) |  V2 ?6 b

! p. B. o6 `( C9 p- C; m パリにいた頃、毎週末の買い出しの帰りに、その短いトンネルを通った。ほぼ直線で幅もある。通るたび、ここをどう走れば大型車で死亡事故が起きるのかと、いぶかったものだ。故人の後半生とは対照的に、セーヌ河岸の現場はありふれた道だった。# W$ E7 N5 H" Y# C  ^* G
+ y, k5 ]+ l5 u$ ]  P/ ]  k! t- d+ F
 別居と離婚、新しい恋人。地位がなければ、これまた平凡な愛憎劇だろう。エリザベス女王は「民間人」の死に沈黙を通し、国民の批判を招いた。当時の内幕を描いた英映画「クィーン」には、世論に折れた女王が「大げさな涙とパフォーマンスの時代ね」と嘆く場面がある。
3 X% k4 X2 y6 w0 F) S, U0 p/ j
. a$ p5 S; t3 x  p 今年のアカデミー主演女優賞に輝いた女王役のヘレン・ミレンは王室の昼食に誘われた。脚本はだから、絵空事ではなかったようだ。ミレンは「こうした映画を作れる国に生きるのはすてきです」と語っている。0 e; E: o+ ~0 {

$ ]$ |$ ~% O* @5 R3 u8 F 女王が願う「模範の家庭」からは遠いが、英王室の懐は深い。元妃も時にメディアを手玉に取り、薄幸ぶりをさらしたという。その人間味は王室の命脈に寄与したのか、逆か。希代の一輪。ひと昔にしてなお強烈な残り香に、花と棘(とげ)の大きさを思う。
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发表于 2007-8-28 09:55:11 | 显示全部楼层
2007年08月28日(火曜日)付
# v$ ^2 T6 J, m0 W, s% C% Y7 w) G, ]# B  L  e1 R$ B
江戸後期、不人気な田沼意次(おきつぐ)に代わって幕府老中に就いたのは、白河藩の名君と聞こえた松平定信だった。そして「寛政の改革」を行う。田沼時代のコネと賄賂(わいろ)による人事から、能力と人柄を重んじる方法に改めた。( w% N: e$ l4 J9 k

" B2 d/ w1 D0 I( P4 C* n! r 「見出(みいだ)し」という言葉が、当時流行したそうだ。人を見いだす。今で言えば「抜擢人事」である。家格は不問。そのかわり、人物の吟味には相当な手間ひまをかけたらしいと、歴史学者山本博文さんの著作に教わった。- Z6 r1 K0 r# I1 f
2 B, q" j& n# `4 k
 前回の組閣では論功行賞を重んじたらしい安倍首相が、定信のひそみに倣ったかどうか知らない。だが、不出来な大臣に悩まされた後悔から、今回は、かなり慎重に人物を吟味したとみえる。
7 d2 I& Q1 [# ?& X- B$ J0 {9 K) J. `/ R
 政治とカネにからむ、さらなる醜聞は命取りになる。「身辺」の検査とともに、忠誠という「心辺」の調べも怠りなかったに違いない。前の大臣らは、閣議での雑談あり、頭越しの「続投しません」発言ありで物議をかもした。このうえ軽んじられては面目はついえてしまう。
. U( ?8 E1 n& o# P% v) v' f1 I4 L
. i+ k% C, N6 R/ w" I. h7 k+ t 定信の「見出し」は、今の「サプライズ人事」でもあろう。今回なら舛添厚労相か。参院選の後にも、歯に衣(きぬ)着せない批判を首相に浴びせていた。起用が挙党一致と映るか、受け狙いの外連(けれん)に見えるかは紙一重だろう。
4 a' _* p5 o6 W
' F7 w# H$ D; `( t# u; p8 A 「1000万人といえども吾(われ)ゆかん」が首相の座右と聞く。この故事には「省みて正しいと確信できれば」と条件がつく。そう思えばこその内閣改造なのだろう。首相の確信と民意との距離はしかし、リフォームで歩み寄れるほど近くはないと見受けるのだが。
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发表于 2007-8-29 10:23:37 | 显示全部楼层
2007年08月29日(水曜日)付
1 i- @/ n  A9 G& o; L' ~4 @# u. R4 n' j
凜烈(りんれつ)な作風で知られた小説家立原正秋が、筆名について書いていた。ほとんどの郵便はペンネームで来るが、まれに本名で届くものがある。本名をしげしげと眺め、「これは一体誰なのか」と妙な気分になる。そんな内容だったと記憶する。
& [) m9 o. `- y; _6 L/ Y  r% k1 l8 ?$ a  d3 M; G7 F
 似た気分を、モンゴル人のドルゴルスレン・ダグワドルジも味わっているのかもしれない。「朝青龍」なるしこ名を眺め、「これは一体誰なのか」と。謹慎の様子はうかがい知れない。だが日を重ねるほど、彼の心の中で、本名の嵩(かさ)が増しているように思われる。
; D$ e  F( N7 ^" u, e7 ^; f; I# R+ K) R/ f
 きびしい状況への配慮だろう。日本相撲協会は横綱の帰国を認めた。早ければ今日にも発(た)つ。帰ったきり、二度と「朝青龍」には戻らない可能性も、なくはないらしい。ここまでこじれた責任の一端は、丁寧な意思疎通を欠いた師匠と協会にもあろう。
# R3 p% h' \& X# _  }. H
, B1 l- Z8 [: L この世界で師匠といえば、実の親も同然と聞く。横綱審議会委員だった作家の舟橋聖一が、双葉山父子を回想している。双葉山は幼い時、友達の吹き矢が当たって右の目を失明した。父親は、だれが矢を吹いたのか知っていながら、死ぬまで口を閉ざし続けたという。. C/ t" {8 O/ r1 c" A

/ D# _3 y$ G( I2 W9 L 恨まれる者より、恨む本人にとってどれだけマイナスになるか。分別を踏まえた深い愛情のゆえだった、と作家は書いている(『片目の横綱双葉山』)。2 S& y1 m0 a6 M7 a% O, ?: v

/ P" X1 F: s5 | この父親にして、品高き名力士ありだろう。双葉山も隻眼のハンディを秘したまま、無敵の相撲を取り続けた。鑑(かがみ)もあれば不出来な親子もあるとは知りつつ、騒動の口直しに紹介してみたくなった。
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发表于 2007-8-30 09:49:07 | 显示全部楼层
2007年08月30日(木曜日)付
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% J2 J. j$ O# c5 Y2 m0 g, g南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島は、中国やベトナムなどが領有を主張して、紛争の海と呼ばれてきた。中国がこだわるのは、ここで高級食材の「ツバメの巣」がとれるからだと聞いたことがある。
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 真偽のほどは知らない。だが、海底資源より珍味が大事と、もっともらしく語られるのは、かの国の「食」への情熱のゆえだろう。足が4本のものは机以外、飛ぶものは飛行機以外なんでも食べる。そんな冗談もある中国でいま、日本産のナマコが大人気らしい。# [# t2 F+ @. U& Z0 c+ {
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 たとえば、北京にある名店では、たっぷりのネギと香味野菜でナマコを煮込んだ料理が評判だ。中国通の同僚によれば、ナマコは客が自分で見て選ぶ。産地、等級別にずらりと並んでいて、最高級に日本からの輸入ものが鎮座している。それを、富裕層がこぞって指名する。
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  {  \5 j# Q, x2 k 精がついて美容にもいいから、姿かたちは不気味でも値段は跳ねる。乾燥ものの日本からの輸出価格は、ここ5年で5倍ほどに高騰したらしい。うまい儲(もう)けに密漁船も暗躍する。生態がよく分からないため、取り尽くす心配も出てきているようだ。1 i1 a6 E0 l' b+ B% i
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 〈何の故に恐縮したる生海鼠(なまこ)哉(かな)〉と漱石は、寡黙でつましい生き物を詠んだ。日本では料理でも地味な脇役だ。せいぜい酢ナマコか、このわたか。大陸へ渡ってひと花咲かせたような人気ぶりは、こちらのファンには少し寂しくもあろう。% A! \& S0 P# F0 u

/ m& e% H! }0 Q 旬は冬。「きわめて冷潔、淡美。肴品中の最も佳(よ)いもの」と江戸の『本朝食鑑』も讃(たた)える。少しナマコを見直して、食わず嫌いを改めるもよし。
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发表于 2007-8-31 10:26:03 | 显示全部楼层
2007年08月31日(金曜日)付
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追悼の夏が去る。62年が過ぎて、なお終わらぬ戦争を抱える人、いまを「戦前」にすまいと心を砕く人。戦争と平和を問う8月の言葉から。
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 被爆地は元防衛相の「しょうがない」発言に憤った。長崎で被爆した池田道明さん(68)には、語り部になる決意をした矢先の冷や水だった。風化を懸念しつつ「被爆体験は平和の教科書。私もその一冊になり、多くの人に読んでもらいたい」と気を新たにする。+ ]% Z/ m( w; E' Y% Q9 v

1 Q, S+ T; t( j 広島で原爆に遭った竹内勇さん(87)はがんと闘いながら、集団訴訟で国に原爆症の認定を求める。あの日、「亡くなっていく人に一杯の水もあげられなかった」と悔恨は深い。そしていま、「年老いた私たちに一杯の水をください。私にとって一杯の水とは原爆症の認定です」
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# f+ V; D2 T9 }$ n! _- R6 ]8 } 新潟生まれの蓑輪喜作さん(78)は、東京の武蔵野公園で憲法9条を守る署名を集めて、6000を超えた。「9条おじさん」と慕われている。趣味で詠む歌に、〈田舎弁まるだしなれど若者は戦争体験聞いてくれたり〉。, r. G5 ^. q2 v0 ]0 @
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 動員学徒らの遺稿展が、東京であった。受付の井室美代子さん(80)は神宮外苑の壮行会で学徒兵を送った。「悲惨な現実を名誉のように演出するものだった。その片棒を担いだ。悔しいし、やりきれない」。ゲートルを巻いた学徒兵のすねの細さが脳裏に残る。
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$ k6 y2 O7 t* [3 \3 J2 U, g4 V 抵抗の詩人金子光晴。戦時中に編んだ私家版詩集が見つかった。〈人よ。なぜ人生を惜しまない。/こまやかな人間の生を、/なぜもっといつくしまない。……〉。その反戦は、深い家族愛に根ざしていた。
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发表于 2007-9-1 13:15:11 | 显示全部楼层
2007年09月01日(土曜日)付
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& h5 X2 l! ?& u& Z' k1 H6 {4 d 谷川俊太郎さんに「カーラジオの中のモーツアルト」という詩がある。詩人はラジオから流れる優美な調べを、楽しいドライブに一体化させる。〈記憶が流れ 心がはためき/今はもう私自身が音楽だ〉。% R2 i+ k+ P: r" |4 {
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 心地よい旋律が突然途切れて、ラジオから「緊急地震速報」が流れる。急迫した場面に、これからは運転中に出くわすかもしれない。強い揺れが伝わる直前に地震の発生を知らせる「速報」が、来月1日から一般に提供されるからだ。  f) ]6 `1 [1 z4 `. R+ K

1 M6 k) v8 `, ?# y NHKのテレビ、ラジオのほか、一部民放も流すという。そのラジオでの放送を、案じる声がある。運転中の人があわてて、急ブレーキを踏みはしないかというのだ。あちこちで事故が起きては、「減災」どころか「加災」になってしまう。* k+ z8 c: U& X
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 84年前のきょう、関東大震災が起きた。民衆には情報が届かず、「富士山が噴火した」といったデマに翻弄(ほん?ろう)された。苦い体験が、2年後のラジオ放送開始を促したそうだ。いまや、揺れる前からの速報である。強い味方だが、パニックになっては台無しだ。
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, f, Y' j( i6 h. u. g; V4 m 世の中には、「知らせない」という安全策もある。たとえば、ある旅客機は、離陸寸前にトラブルが起きても、安全高度に上がるまで警報音が出ない。ミスの許されない場面で操縦士を動揺させないためらしい。
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 だが、やはり「速報」はありがたい。あわてず騒がずハザードランプをつけ、ゆっくりと脇に寄せて止める。これが基本動作である。モーツァルトを楽しみつつも、心に備えを。常在戦場の教えも、地震国には大げさではない。
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