2007年08月20日(月曜日)付
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グルノーブル冬季五輪の記録映画(68年)は「フランスでの13日間」という無味乾燥な原題である。この作品がまとう甘い記憶は、全編に流れるフランシス・レイの音楽と、邦題「白い恋人たち」のためだろう。命名の妙だ。' H/ n9 S! u% E7 p" x; K: u
$ T3 T. w6 b D" [ それにあやかった北海道銘菓「白い恋人」が、発売30年にして失恋の危機にある。売れ残りの賞味期限を1カ月先に改ざんするなどの不祥事に、裏切られた思いの人も多かろう。
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7 j& z5 s+ m$ v, m0 x4 H9 N 賞味期限は4カ月。土産物は日持ちするほうが便利だが、少しでも新鮮な品を求めるのも消費者だ。「半年は大丈夫」(石水勲社長)という問題ではなく、「交際相手」である顧客との信頼関係が問われている。小さなうそから始まる破局もある。
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! J9 k7 e: A/ j R 全国に名を知られた後も、「恋人」は北の土産の立場を守り続けた。この商才がご当地ブランドを生んだ。商品名が優美なだけに、現実との落差は哀れでさえある。たとえば、発売前に検討されたという「冬将軍」であれば、ここまでの名前負けはなかったはずだ。5 ^" T: y, i, \
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ブランドとは、買い手の頭の中にある「いい記憶」の積み重なりだという。「悪い記憶」は消えにくいので、ブランド企業は品質の維持に腐心することになる(山本直人『売れないのは誰のせい?』新潮新書)。
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石水社長は5月、地元紙に連載された自伝の最終回で「伊勢の赤福のように百年、二百年後まで愛される『伝統』にしたい」と語っている。今年創業300年の赤福の餅は、ごまかせない「製造日限りの販売」だ。伝統にはそれぞれ、理由がある。 |