2007年09月25日(火曜日)付
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東京・六本木に芋洗坂(いもあらいざか)という素朴な地名がある。江戸の昔、このあたりに青物屋があり、旧暦8月15日に大量の里芋を商いしたのが由来だ(東都歳時記)。芋は各戸で煮っ転がし、十五夜の月に供えた。0 {; E8 [# @; g" d7 f7 e5 x* r
9 f4 e `8 r" R6 }) u# ^2 w 今夜は、芋名月とも呼ばれる中秋の名月。雲さえなければ、日没前の東空に現れる。その山吹色の天体へと今、日本の探査機「かぐや」が向かっている。打ち上げから12日、旅も半ばの頃合いだ。
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「未来の資源庫」への関心ゆえか、世界的に改めての月探査ブームだという。かぐやは、表面の様子や環境を調べて月の起源に迫り、利用価値を探る。首尾よくいけば後々の月面着陸や、有人探査に道が開けるそうだ。3 `7 G! t$ q6 Z, G' V# h) b5 {" h
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月の正体が分かるにつれて、神話や俗説は葬られた。そこは荒涼の世界で、地球から見えない裏手に宇宙人が集結している気配もない。かぐやもまた、薄衣(うすぎぬ)の何枚かをはがすのだろう。
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& H1 O: N. G" A% q% e まだ夢があった頃の『竹取物語』で、かぐや姫は「おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり」と明かし、涙のうちに故郷に発(た)つ。恩人の老夫婦が残る地球は穢(けが)れの星。絶えぬ戦争や環境汚染を思えば、なかなかの洞察力だ。かぐやが送ってくる手はずの「地球の出」の動画に、私たちは何を見るだろうか。- ]7 o3 v& q ?, i+ }% N
2 X, E, z: S1 [ 人類は地球の表面をいじり、目先の利便や享楽を追求してきた。いじり尽くした所を都会と称する。こよいは手つかずのあばた面(づら)を見上げ、足元の厚化粧を省みるのも一興だ。そんな月見には、芋洗坂を見下ろす不夜城、六本木ヒルズあたりが絶好である。 |