2007年09月19日(水曜日)付
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% P% a4 l9 k, z& T平安期の随筆『枕草子』に、達筆で知られる藤原(ふじわらの)行成(ゆきなり)から唐菓子が届く話がある。餅皮に具を挟んだ餅餤(へいだん)だ。清少納言は紅梅を添えた礼状で「ご自分でお持ちにならぬとは冷淡な」と返した。餅餤と冷淡をかけた才女の遊びである。0 x4 Z5 N9 R X4 u4 ]0 |
& [: U& c w. S クールな行成、年上の清少納言に気があったかどうかは知らないが、女性に物を贈る習いは古今東西を問わない。豊かな世なら花束や装身具、時代をさかのぼれば食べ物も喜ばれただろう。: q9 @3 Q1 v, j$ \8 O' T( O1 ?# t0 w
/ ]6 a7 M2 e5 o8 Y: T0 U& k8 K チンパンジーのオスもメスに贈り物をするそうだ。京都大霊長類研究所などのチームが突き止めた。西アフリカで野生の群れを2年観察したところ、オスがパパイアやバナナを農家から盗み、メスに分け与える例が25回あった。
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: r. x4 ^: I+ { d9 n3 v8 Y0 \ 自然界では、生存にかかわる食料が最強の品だ。贈り先は若く、多くが発情中。オスは前後して、そのメスと交尾や毛繕いをしていた。果物は求愛の小道具ということになる。見返りを期待したプレゼント行動が確認されたのは初めてという。
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' M) b) X4 V8 [1 H 強い子孫を残すため、メスは強いオスを求める。体格や腕力ばかりか、食料をどこからか調達してくる才覚も強さの要素らしい。オスは自分の子を増やそうと人里に踏み入り、果物泥棒のリスクを冒す。身につまされる自然の摂理だ。! |" ^+ g! X4 F/ b
! |7 D! B7 X5 ]. S1 O, @) ^ 本能が支配する雌雄の営みと違い、男女の間合いは難しい。贈り物で弾む交遊もあれば、しぼむ仲もある。大前提は、贈られる側にも多少の好意があることだ。実は清少納言、宮仕え仲間でも美男で教養あふれる行成が、一のお気に入りだったとか。 |