2007年10月05日(金曜日)付! Y! E+ B @7 D" ~; `0 N+ m y p9 n% O" J
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ぴりりと利かせた風刺は、川柳の命だろう。〈江戸っ子の生まれそこない金を貯(た)め〉も、ワサビの利いた一句である。金離れが良く、宵越しの金など持たない気っ風(ぷ)は、あの時代の粋とされた。
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( n& v6 T/ L& Z, C% { 粋な江戸っ子なら、喜ぶより困ったのではないか。出資法違反容疑で警察の捜索を受けた「エル・アンド・ジー」のことだ。ネット上などに独自の市場を開き、そこで使える疑似通貨を、「使っても減らない金」と宣伝して会員を募っていた。+ U8 N3 Q4 x9 s
3 x& u1 T5 I1 V4 F 使い切っても、また全額補充してもらえる。その疑似通貨を「円天」と称していて、天から降るカネを思わせる。眉唾(まゆつば)のカネを客寄せにして、巨額のカネ(本物)を集めていた。年利36%の配当をうたって、全国の5万人から1000億円を集めたというから驚く。0 q: u* C8 I- X+ G1 W J9 E3 Q
[, i R( E2 W& Y5 j9 b8 Z 集めた金は配当に回し、自転車操業を続けていたらしい。だが資金が尽きたのか、いつしか配当も疑似通貨になった。天から降る金も無尽蔵ではなかったとみえ、今はそれも止まっている。
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9 }4 h ?7 N% g' R5 J 金を作るには「三角術」が必要だと、夏目漱石は皮肉っている。義理をかく、人情をかく、恥をかく、の三角だという(『吾輩(わがはい)は猫である』)。さらに道義と順法も欠いた「五角術」が、この会社の錬金法だったのだろう。
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金銭への淡泊さを粋がりつつ、江戸っ子にも〈これ小判たった一晩居てくれろ〉の本音はあったようだ。冒頭の句からは、小金持ちへのやっかみも透けて見える。隠しきれない人間の性(さが)だろう。そこに付け込む「五角術」が、手を替え品を替え、生き延びている。 |