咖啡日语论坛

 找回密码
 注~册
搜索
查看: 3242|回复: 7

日本語文法表現

[复制链接]
发表于 2006-5-2 20:34:38 | 显示全部楼层 |阅读模式
http://www.toolware.jp/helpdesk/dictionary/dictionary.html 原网址在这里,为了大家方便偶给弄出来了 001 *~間に/*~間は 名詞 :     の           + 間(は/が) 動詞 :普通形 (一般動詞は「ている」形)    間に(は) 形容詞:<イ形:ーい・ーくない>       間の+名詞     <ナ形:ーな・ーでない> ♪ 会話 ♪ 李 :先生、長い間ご無沙汰し、誠に申し訳ありませんでした。これはつまらないものですが、・・・。 恩師:ありがとう。せっかくだから遠慮なく。それにしても、しばらく見ない間に、ずいぶんたくましくなったね。 李 :そうですか?日本の企業に勤めていると、何かと鍛えられますし、それに子供も生まれましたから。 ♯ 解説 ♭  「~間」は期間を表します。動作や状態の継続中を表すので、状態動詞(ある・いる・できる・わかる・要る)を除けば、動詞と接続するときは「ている」形、或いは「ない」形になります。  問題は「~間」と「~間に」の違いですが、図のように「~間(は/が)」はその期間ずっと継続する動作を、「~間に」はその期間内に完了した動作を表します。作文上の注意点としては、従属節の主語は常に「が」で表しますから、異主語文の中では「Aが~ている間に、Bは~する」の形を取ります。→例題1)2)   図あり § 例文 § 1.私は夏休みの間、都会の喧噪を離れ、ずっとふるさとの実家で過ごした。 2.夏休みの間に、この原稿を書き上げたいと思っている。 3.「若い間の苦労は買ってでもせよ」とよく言われる。 4.私がしばらく留守にしている間に、泥棒が入った。 5.夫婦どちらも元気な間はなんとかなるが、どちらか一方が病気で倒れたりしたら、わが家はお手上げになる。 ★ 例題 ★ 1) 鎮痛剤が(効く/効いている)間(に/は)まだよかったが、薬が切れる(時/と)、とたんに虫歯が疼き出した。 2) 私が二年ほど日本( )留学(する→     )間( )、上海の町並みはすっかり変わってしまった。 002 *~あげく(に)/~果て(に) 名詞:の  +  あげく(に)     ~  した 動詞:た形    あげくの + 名詞          果てに          果ての  + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :彼は気の毒だったなあ。さんざん通ったあげくに、先方から電話一本で契約を断られてね。まあ、僕の方もさんざんな目にあったよ。今日は本当についてない。 良子:一体全体、どうしたの? 李 :二時間も並んだあげく、結局、コンサートの切符が手に入らなかったんだ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~した結果~した」を表しますが、後件では常によくない結果の発生を表すところに特徴があります。「~果てに」も同様の意味を表しますが、口語で使われることは多くありません。なお、「あげくの果て」は「あげく」の強調した表現となります。類義文型に「~末に」(→文型116)がありますが、この文型は後件でいい結果も悪い結果も表すことができます。注意すべき点は、これら結果を表す文型は常に文末が完了形「~した」となることです。→例題1)  悩み抜いた    結果     <客観的表現>    あげく(に) <残念な気持ち>    末(に)   <色々あったが>  帰国することに決めた。 § 例文 § 1.口論のあげく、殴り合いのけんかになった。 2.いろいろ考えたあげく、彼と別れることにした。 3.彼はサラ金からさんざん借金をしたあげく、ついに首が回らなくなって夜逃げをした。 4.父は長い間、病に苦しみ抜いた果てに、亡くなった。 5.彼は会社のために身を粉にして働いて、あげくの果てにリストラされてしまった。 ★ 例題 ★ 1) 苦労した(あげくに/末に)、(ついに/結局)念願のマイホームを手に(入れる/入れた)。 2) 返答( )(窮する→      )あげく、つい嘘をつい(てしまう→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 効いている(継続状態)/は/と(と&時→文型203) 2) に/している/に 003 ~上げる/~上がる    他動詞:[ます]形 + 上げる    自動詞:[ます]形 + 上がる ♪ 会話 ♪ 佐藤:課長、遅くなりましたが、上海に出張の報告書ができ上がりました。御覧いただけますか。 課長:おう、書き上がったか。しかし、長いなあ。要約を一ページつけてから部長へ上げよう。 李 :君も今度のことでは大いに株を上げたな。こんなに難しい交渉をまとめたとは、ほんと、たいしたものだよ。 ♯ 解説 ♭  付属動詞「~上げる」は、「~を<他動詞>+上げる」「~が<自動詞>+上がる」という形になります。意味上は上方への移動、程度の強調、完了・完成の三つに分かれます。これは上への移動から上の極へ到達するにつれて、「完全に~」の意味の程度強調へ、更に完成・完了へと意味が拡大したものです。   <上方へ移動>  ~が飛び上がる・~が立ち上がる・~を見上げる・~を持ち上げる…   <程度の強調>  ~が晴れ上がる・~が震え上がる・~を鍛え上げる・~を磨き上げる…   <完了・完成>    ~ができあがる・~~が刷り上がる・~を書き上げる・~を育て上げる… § 例文 § 1.合格の知らせを聞いた娘は、飛び上がって喜んだ。 2.見上げると、晴れ上がった青空を鳥たちが飛び交っていた。 3.武道で鍛え上げた男の体は、まるで鋼のようだった。 4.何カ月もかかって作り上げた作品を前にして、わたしは喜びがこみ上げてきた。 5.「おい、例のもの、でき上がったかい?」「細工は流々、仕上げをごろうじろ」 ★ 例題 ★ 1) 変わり果てた友の姿を見て、(思わず/ふと)涙(が/を)こみ上げ(てきた/ていった)。 2) ご飯が(炊く→    )上がったよ。みんな、仕事を(切る→    )上げて食事( )しないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) 末に(→文型116)/ついに(期待したことの実現)/入れた 2) に/窮した/てしまった(不本意の「~てしまった」) 004 ~あっての 名詞: ×  + (が)あっての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 部長:ありがとう。今回の受注は君たちのおかげだ。なんと言っても、仕事あっての会社だからな。 山田:いいえ、部長の御指導のたまものです。 部長:いやいや、そんなことはない。みんなの協力あっての成功だ。「チームワークこそ成功の鍵だ」と改めて教えられたよ。ありがとう、みんな。 ♯ 解説 ♭  「~あってのN」は「~があって、はじめて可能な N」という意味を表します。前の条件がなければ、後ろの結果も成立しないという前提条件を表す点で、「~て、はじめて/~て、こそ」(→文型192)、「~ば、こそ」(→文型050)と基本的には同じ意味になります。   みんなの協力 あっての    成功だ。          があってこその          があればこその § 例文 § 1.この度の優勝は、みんなの団結あってのものだ。 2.私が仕事に専念できるのも、全て妻の内助があってのことです。 3.彼女が会社を辞めたのは、きっと何かわけがあってのことだろう。 4.そりゃあ、お金も欲しいけど、「命あっての物種」って言うじゃないか。 5.お客あっての商いだということを忘れてはいけない。 ★ 例題 ★ 1) ○○先生(あるからの/あっての)私です。(お/ご)恩は(いつも/いつまでも)忘れません。 2) 専務があなたをこのパーティ( )招待した( )は、きっと何か考えがあって( )ことですよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 思わず(自然な感情)/が(自V)/てきた(→文型181) 2) 炊き/切り/に(N+にする:「何にする?」「僕はこれにする」) 005 *~あまり(に) 名詞    :   の     +  あまり(に) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 百恵:最近、山田君、ちょっと変よ。何を聞いても上の空だし、仕事にも手がつかない感じだ。 李 :僕も心配のあまり尋ねてみたら、彼女に振られたらしいんだ。毎晩どこかで酔いつぶれているらしいよ。 百恵:寂しさのあまり、お酒で気を紛らわしてるのね。あまり飲みすぎると、体を壊しちゃうわよねえ。 ♯ 解説 ♭  この文型は「とても(程度が限度を越えている)~ので」を意味します。「ので」系の原因・理由の表現(→資料、)で、後件では発生した既定事実を表すので、「~つもりだ・~たい・~だろう」などの意志・希望・推量表現は使えません。なお「あまりのNに」も「あまりに~ので」も同義表現です。 寂しさのあまり、 あまりに寂しいので、     あまりの寂しさに、   お酒で気を紛らわしているのね。 § 例文 § 1.うれしさのあまり、涙がでた。 2.急ぐあまり、家の鍵をかけるのを忘れてきてしまった。 3.彼は人がいいあまり、嫌な仕事を押しつけられても断りきれない。 4.慎重になり過ぎるあまり、チャンスを逃すこともある。 5.「可愛さ余って(=可愛さのあまりに)憎さ百倍」という俗語がある。 ★ 例題 ★ 1) 一人の子供がいじめを告発する遺書を(残して/残って)自殺したという(ので/のに)、開き直る学校側の答弁に、私は怒り(あまりに/のあまり)体が震えた。 2) 彼はまじめ( )あまり、(考える過ぎる→    )り、(思い詰める→     )りするんだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) あっての/ご/いつまでも(「いつも(×いつまでも)遅刻する」) 2) に(~を~に招待する)/の(「~のは~ことだ」文型)/の 006 ~あろうことか(あるまいことか) 名詞 + は、あろうことか(あるまいことか) あろうことか(あるまいことか) 、  ~ ♪ 会話 ♪ 李 :もしもし、良子?あろうことか、出発間際になって、急にフライトがキャンセルになっちゃってね。 良子:だから言ったでしょ。少しぐらい高くても、いつもの航空会社の方が安全だって。 李 :これから家に帰るよ。食事は済ませてあるから、夕食の支度はしなくてもいいよ。 ♯ 解説 ♭  この文型は「そんなことがあっていいだろうか(いや、あってはいけない)」という意味の反語表現です。事実は眼前に存在していますが、それを信じられないし、信じたくない気持ちがあり、非難・残念の感情を強く含んでいます。 § 例文 § 1.あの学生は、あろうことか、教師に暴力を振るった。 2.一部の報道記事には、あろうことか、あるまいことか、事実を捏造したものもある。 3.あろうことか、よりにもよってこの俺に、よくもそん見え透いた嘘が言えたものだな。 4.日本の政治家の中には、あろうことか、先の戦争をアジア解放戦争だったと言う者がいる。 5.あろうことか、教師がテレクラ通いをしていたとは。 ★ 例題 ★ 1) (ある/あろう/あるまい)ことか(ある/あろう/あるまい)ことか、不正入試事件(が/を)発覚した。 2) (ある→   )ことか、遊ぶ金(ほしい→   )に売春をして、「どこが悪いの?」( )うそぶく少女がいる。       (注:これを「援助交際」と現代語で言う) (^^)前課の解答(^^) 1) 残して(~を+他V)/のに(逆説)/のあまり(「怒り」はN) 2) な(ナ形)/考え過ぎた(「~たり~たりする」文型/思い詰めた 007 いかに~ても/いかなる~ても いかに     ~ 動詞・形容詞:て形 <ナ形ーで> + も いかなる+名詞   名詞    :    で (注:「~ても」の他に「~ても」系の逆説は使える。 → 解説) ♪ 会話 ♪ 良子:明日は模擬試験だったわね。焦ってるみたいだけど、まさか、今夜、徹夜するつもりじゃないでしょうね。 小孫:「いかに困難でも、またいかなる状況下にあっても、全力を尽くせ」って言うじゃないか。 良子:それは普段から勉強してない人が使う言葉じゃないわ。日本ではそんなのを「付け焼き刃」って言うのよ。 ♯ 解説 ♭  「いかに」「いかなるN」は「(前件の)事情・状況・程度がどうであっても関係なく、いつも・必ず(後件が)成立する」という条件表現で、書き言葉で多く使われます。「どんなに/いくら(=いかに)~ても」「どんな(=いかなる N)~ても」(→文型143)はその口語表現で、話し言葉ではこちら方が多く使われるでしょう。  また、「ても」のほかに「~と言えども」(→文型216)、「~であろうと/~であれ」(→文型176)、「~(よ)うが/~(よ)うと」(→文型437)などの「ても」系逆説が使われます。 § 例文 § 1.いかに難しい問題でも、解けない問題はない。 2.いかなる時でも笑顔を忘れないでいれば、道は開けるよ。 3.いかなる人と言えども、欠点はあるものだ。 4.いかに人からあざ笑われようが、今はただ、信じた道を進むだけだ。 5.彼は勇敢な男だ。いかなる危険が待ちかまえていようとも、たじろいだりはしない。 ★ 例題 ★ 1) (いかに/いかなる)障害にぶつかっ(たら/ても)、試練と(思えば/思って)、乗り越えていけるものだ。\ 2) 一人一人の力がいかに(小さい→    )ても、力を(合わせる→ )ば、いかなる強敵でも(倒す→   )はずだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) あろう/あるまい/が(自V) 2) あろう/ほしさ(イ形のNの形:美しい→美しさ)/と(引用) 008 ~如何だ/~如何で/~如何によらず 名詞: × +  (の)如何だ       ①          (の)如何で          (の)如何によって 名詞: × +  (の)如何にかかわらず  ②          (の)如何によらず ♪ 会話 ♪ 小孫:模擬試験の結果の如何によらず、志望校を受験したいんですが、間に合うでしょうか。 先生:君のこれからの努力如何で決まる思うよ。まだ、2ヵ月以上もあるからね。 小孫:ということは、可能性があるということですね。最善を尽くしてみます。 ♯ 解説 ♭  「如何」は「どうであるか」を意味する漢語で、根拠を示す助詞の「~で/~によって」と結びつくと「~ かどうかによって決まる」という意味を表し、「~に関係なく」を意味する「~にかかわらず」(→文型293)、「~によらず(→文型349)」や「~を問わず」(→文型472)」と結びつくと「 ~がどうかに関係なく~」という意味を表すようになります。  この「如何」は例文中のもののほかにも慣用句がいくつかありますから、一緒に覚えた方がいいでしょう。   如何せん:如何せん、もはや救う手段がない。   如何ともしがたい:こうなっては如何ともしがたい。   如何にかかっている:成功するかどうかは、努力如何にかっている。 § 例文 § 1.その会社に就職するかどうかは、給料如何ですねえ。 2.酒というのは飲み方如何で、毒にもなり薬にもなる。 3.今後の君の態度如何では、懲戒解雇もあり得ることを忘れるな。 4.理由の如何を問わず(⇔如何によらず/如何にかかわらず)、暴力はよくない 5.今更そんなことを言われても、もう、手遅れだ。如何ともしがたいよ。 ★ 例題 ★ 1) 勝敗(が/の)如何(によって/にかかわらず)、両チームの健闘は讃えられる(はず/べき)だろう。 2) 業績如何( )降職も(ある→   )得る人事制度が企業に(導入される→     )始めた。 (^^)前課の解答(^^) 1) いかなる/ても(逆説・仮定)/思えば 2) 小さく/合わせれ/倒せる(可能形) 009 *~以上(は) 名詞    :である       +   以上(は) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :日本人は「イエス」と「ノー」がはっきりしなくて困るよ。来る前に想像していた以上だ。 良子:以心伝心、察しの文化と言われる由縁ね。でも、「郷に入れば郷に従え」よ。 李 :なるほど、日本語を勉強する以上は、日本の文化も学ばなくちゃね。 ♯ 解説 ♭  「~以上(は)」は「~だから、当然・必ず ~」という意味を表す原因・理由表現で、文末には「~なければならない/~べきだ」(→文型382)や「~つもりだ」、「~たい」などの義務や意志・希望、「~はずだ」(→文型367)、「~にちがいない」(→文型305)などの断定判断が多く使われます。この場合は「~からには(→文型056」や)「~上は(→文型015)」と同義表現となります。  しかし、「~以上」は因果関係がなくても、既定条件の場合に広く使えます。例えば、下の例文は条件(仮定)を表していますが、この場合、「~からには/~上は」は使えません。  *あなたの同意がない以上(=なければ)、無断で掲載することはない。 § 例文 § 1.お話はわかりました。この件については、私どもが引き受けた以上、大船に乗ったつもりでいてください。\ 2.こうなった以上は、もう他に方法はない。 3.一旦契約書にサインをした以上、君の責任は避けられない。 4.彼がやらせてほしいと言う以上、見込みがあってのことだろう。やらせてみたらどうか。責任は私が負う。 5.私に刃向かう以上、それなりの覚悟はあるんだろうね。 ★ 例題 ★ 1) 父親(の/である)以上、娘がつきあっている相手(を/に)無関心では(いられる/いられない)よ。 2) 闘う以上、(負ける→     )たくないと思う( )は人情だ。負ける( )わかっているなら、最初( )( )闘わないことだ。これを「逃げるが勝ち」という。 (^^)前課の解答(^^) 1) の/にかかわらず/べき(→文型382) 2) で/あり(~得る:→文型017)/導入され(V〔ます〕形+始める) 010 *~一方だ/*~ばかりだ 名詞  :  の   +  一方だ 動詞  : 原形       ばかりだ (*名詞接続不可) ナ形容詞:~になる イ形容詞:~くなる (注:「まじめ一方」 のような慣用的言い方もある) ♪ 会話 ♪ 李 :産業活動の発展は目覚ましいけど、その反面で、公害は年々ひどくなるばかりだね。 良子:ほんとうね。海も川も汚れていく一方だし、森林破壊、酸性雨、砂漠化、地球温暖化と問題は山積みだわ。 李 :早く手を打たないと地球に生き物が住めなくなってしまうね。でも環境か開発か、難しい問題だなあ。 ♯ 解説 ♭  「~一方だ/~ばかりだ」は変化を表す語につき、変化が一つの方向に進行していること表します。  ただし、「~一方だ」はいいことにも、良くないことにも広範に使えますが、「~ばかりだ」は「程度が~過ぎる」という語感をもっていて、例文3のようにいい傾向に使うと不自然になります。また、「~ばかりだ」は例文1のように名詞に接続する形がありません。 § 例文 § 1.今年に入り、株価は下落の一方(×ばかり)だ。 2.給料は下がる一方(⇔ばかり)、物価は上がる一方(⇔ばかり)、これじゃやっていけないよ。 3.彼はまじめ一方(×ばかり)の人で、よく言えば仕事一筋の人ですが、融通の利かないところが難点ですね。 4.老後のことを考えると、不安は募るばかり(⇔一方)だ。 5.ストレスが原因とみられる心の病気は、ますます深刻化するばかり(⇔一方)だ。 ★ 例題 ★ 1) 景気は落ち込む(だけ/ばかり)、雇用不安は増す(だけ/ばかり)で、明るい材料が(見あたる→     )。 2) 地球人口は年々増える一方( )、21世紀の前半には百億を(越す→ )そう( )勢いだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) である/に/いられない(→文型191) 2) 負け/の(→文型354)/と(内容を引用:~とわかる)/から 011 *~一方(で) 名詞    :    の        +   一方(で) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 課長:李君は仕事に熱心な一方で、仲間とのつき合いも大切にしているようだな。それに大変な恐妻家だとか。 山田:そうなんですよ。でも、奥さんに財布の紐を握られ、頭が上がらないというもっぱらの噂です。 課長:はっは、それが夫婦円満の秘訣さ。夫婦で力を合わせて、将来に備えているわけだ。 ♯ 解説 ♭  「~一方(で)」は「Aは~、他の一面では~」同一主語の異なる面を表す場合にも、「Aは~だが、反対にBは~」と主語が異なるものを対比させる場合にも使えます。  類義語に「~かたわら」(→文型036)があり、例文1~3は置き換えることができます。また、例文4のように同一主語の対立する面を表す場合には「~反面」(→文型375)に置き換えることができます。ただし、この二つの文型は例文5のような異主語文では使えません。   姉は家庭的だが、一方(×反面)妹は活動的だ。 <同一主語文>   父はいつも静かだが、一方(・反面)怒ると恐い。<異主語文> § 例文 § 1.彼は病院に勤める一方で、地域ではボランティア活動に参加している。 2.兄は勉強ができる一方、遊ぶことも忘れない。 3.表では争っているように見せる一方で、裏では手を結んでいるのが政治の世界だ。 4.日本経済については楽観的な見方がある一方で、今後は高成長は望めないという見方もある。 5.あの家庭は夫が遊び好きな一方で、妻はしっかり者だ。 ★ 例題 ★ 1) アジア地域の経済発展は目覚ましい(が/のに)、(一方/反面)、所得格差が拡大(する/し)つつある。 2) 豊かな国々( )益々(豊かだ→    )なる一方で、貧しい国々が益々(貧しい→    )なっている。 (^^)前課の解答(^^) 1) ばかり/ばかり/見あたらない 2) で/越し(V〔ます〕形+そうだ<様態>/そうな 012 いわんや~においてをや/~まして~にはなおさらだ いわんや ~ 名詞 : ×  +  においてをや まして              に(おいて)はなおさらだ ♪ 会話 ♪ 李 :このパソコンの使い方がどうしてもよくわからないなあ。え~っと、マニュアル、どこにあったっけ? 良子:説明書を読むのもいいけど、山田さんに聞いてみたら?その方が手っ取り早いわよ。 李 :彼がひどい機械音痴だってこと知らないの?僕でさえ四苦八苦なのに、いわんや山田においてをやだよ。 ♯ 解説 ♭  「況(いわん)や」「況(まし)て」と助詞「~において」(→文型291)が結合した文型で、「Aは~ 、だからBは言うまでもなく、(もっと・更に)~」を意味する文語です。話し言葉としては「まして ~ には、なおさらだ」が多く使われるでしょう。  専門家にさえ直せない。   →いわんや素人においてをや。   →まして素人にはなおさらだ。 § 例文 § 1.この高校入試問題は大学生の僕にさえ難しいのに、まして中学生にはなおさらです。 2.僕が子供の頃、日本の家庭にはテレビもなかった。ましてパソコンにおいてはなおさらだ。 3.彼は英語すら読めない。況やフランス語においてをや。 4.源氏物語を原書で読める日本人はそう多くない。いわんや外国人においてをやだよ。 5.約束は守るもの。いわんや首相の公約においてをやだ。 ★ 例題 ★ 1) (これ/この)ほどの山と(する/なる)と、登るのは若者でも容易ではない。(だから/まして)老人においてをや。 2) 当時の私は食べ物に( )( )事欠く始末(だ→   )。( )( )( )本を買う金などあろうはずがなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(「~のに」は因果の逆説)/一方(反面も可)/続けて(他V) 2) が/豊かに(ナ形+なる)/貧しく(イ形+なる) 013 *~上で/**~後で 名詞: の   +  上で     ・ 動詞:原形   名詞: の   +  後(で)    ・ 動詞:た形      上(で) ♪ 会話 ♪ 銀行:御融資の件ですが、私の一存では決め兼ねます。本店の審査を仰いだ上で、お返事を差し上げます。 社長:そこをなんとか・・・。私も今回ばかりは無理を承知の上で、お願いに伺っています。 銀行:本店とも相談はしてみますが、御期待にそえるかどうかは、ここでは何とも申し上げようがございません。 ♯ 解説 ♭  「~上で」は二つの使い方があって、前が動詞で「原形」の時は「~する場合~」(方面・分野)を意味し、「た形」の時は「~た‐あとで」と同じ意味になります。ただし、前が名詞のときは文脈から理解するしかありません。  なお、「~た‐上で」は人の意志動作を強調するので、自然現象や状態発生には使えませんし、「~た‐上で/~た‐後で」は継続事態を表すときには使えません。例えば「~てから」「~た‐後で」「~た‐上で」を比較すると、以下のような違いがあります。   風呂に入ってから(・た後で/・た上で)、寝た。    <動作発生>   家に帰ってから(・た後で/×た上で)、雨が降り出した。<状態発生>   離婚してから(×た後で/×上で)、ずっと一人暮らしだ。<継続事態> § 例文 § 1.辞書は言葉を学習する上で欠かせないものだ。 2.形の上では夫婦でも、実際は家庭内別居というケースが増えている。 3.先の事件は、法律の上では犯罪にならなくても、道義的責任は免れない。 4.この問題は拙速な結論は避け、慎重に検討した上で(⇔後で)ということでいかがでしょうか。 5.採用か否かは面接の上(⇔後で)、決めることにする。 ★ 例題 ★ 1) 買う(か否か/や否や)は、実物を(見る/見た)上で決める。先ず品物を見せて(くれ/あげ)たまえ。 2) いかに酔っ(ている→   )とはいえ、あのような暴言は酒の上で( )過ちで済むこと(だ→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) これ(これほど≒ここまで)/なる(→文型253)/まして 2) すら(「さえ」も可)/だった/まして 014 ~上(に) 名詞    :である           +  上(に) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :もう遅いので、そろそろ失礼いたします。 田中:今日はお休みのところを、わざわざ遠いところをおいでいただいた上に、遅くまでお引き留めいたして・・・、それに何のおもてなしもできなくて・・・。 李 :いえいえ、ごちそうになった上、お土産までいただきまして、本当にありがとうございます。 ♯ 解説 ♭  「~上(に)」は「~ し、(それに /しかも/更に) ~」と同義で、添加・累加の表現です。類義語に「~し、~」(→文型107)、「~も~ば、~も~」(→文型199)、「~ばかりか~」(→文型363)などがあります。   彼女は優しい上に、美しい。  →彼女は優しいし、美しい。  →彼女は優しくもあれば、美しくもある。  →彼女は優しいばかりか、美しい。  この文型は良いことには良いことを、悪いことには悪いことを添加・累加しないと誤文になります。例えば、「彼女は優しい上に、背が低い」は誤文です。 § 例文 § 1.このカメラは小型である上に、性能もすばらしい。 2.彼は弁が立つ上に、知恵と勇気を兼ね備えている。 3.お世話になった上に、送別会まで開いていただき、誠にありがとうございます。\ 4.わが家は手狭な上、子供も多くて、日曜日もゆっくりくつろげません。 5.生活が苦しい上に、妻の入院も重なって、もうどうしていいのかわかりません。 ★ 例題 ★ 1) 彼は頭がいい(上で/上に)、ユーモアもある(ので/のに)、女性(だけか/ばかりか)男性にも人気がある。 2) この店は安い上( )うまいので忘年会の会場( )は打ってつけだが、一応みんなと相談した上( )決めないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) か否か(→文型040/→文型428)/見た/くれ(→文型182) 2) ていた(あのような=過去)/の(格助詞+のN)/ではない 015 ~上は 名詞    :である      +  上は 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 社長:君、今回の不祥事の責任をどうとるつもりだ。このままでは、社内のけじめがつかないぞ。 部長:ひとえに私の監督不行き届きです。かくなる上はいかような処分でも・・・。 社長:君の辞表1枚で済む問題じゃない。会社の信用がかかっているのが、まだわからないのか! ♯ 解説 ♭  「~上は」は「~だから、当然・必ず ~」と言う意味を表す原因・理由表現で、「~以上」(→文型009)、「~からには」(→文型056)と同義表現です。「~ 上は」は文語で硬い印象を与えますから、日常会話では「~以上」「~からには」の方が適切です。 § 例文 § 1.軍人である上は、戦場での上官の命令は絶対である。 2.日本に留学した上は、一日も早く日本の生活に慣れることだね。 3.君の協力が得られない上は、この計画は諦めるしかない。 4.ここまで証拠が揃った上は、包み隠さず、素直に話した方が刑も軽くなるぞ。 5.選挙民に公約した上は、政治家たるものに二言があってはならない。 ★ 例題 ★ 1) 日本代表に(選んだ/選ばれた)(上は/上に)、皆様の御期待に添う(べく/べき)全力を尽くします。 2) たとえ不満で(ある→     )と、多数決で(決まる→   )上( )、それに従うのが民主主義だ。 (^^)前課の解答(^^) ・ 上に/ので/ばかりか ・ に/に/で(「上に」と「上で」の違いに注意) 016 *~うちに/*~ないうちに 名詞 :     の           +  うちに 動詞 : 普通形 (一般動詞は「ている」)    うち(が/は) 形容詞:<イ形:ーい・ーくない>     <ナ形:ーな・ーでない> ♪ 会話 ♪ 真理:さあさあ遠慮しないで、冷めないうちに召し上がれ。でも、お口に合うかしら? 佐藤:真理さんの手料理なら、冷めてもおいしいですよ。 真理: まあ、佐藤さんったらお上手ね!どんどんお代わりしてね。 佐藤:うまい!お袋の味を思い出しましたよ。 ♯ 解説 ♭  「~うちに」は「~の状態の間に ~する」という意味を表す表現で、「~間(あいだ)に」(→文型002)とほぼ同義表現ですが、状態変化に関心をおいたのが「~うちに」で、時間を問題にしたのが「~間に」です。  どちらも動作・状態が継続中に発生したことを表すので、状態動詞(ある・いる・できる・わかる・要る)を除いて、「~ている」形か「~ない」形に接続します。また、時間だけを問題にするのであれば、「~ないうちに」は「~する前に」に置き換えることができます。   あなたが寝ている(×寝る)うちに、地震があったんですよ。   子供が帰らないうちに(≒ 子供が帰る前に)、掃除する。  なお、「~うちに」<事態完了>と「~うちは」<事態継続>の関係は「~間に」と「~間は」と同じです。→例題1)2) § 例文 § 1.鉄は熱いうちに打て。 2.あの先生の授業は退屈で、聞いているうちに、いつも眠くなる。 3.生きてるうちが花なのさ。死んで花実が咲くものか。 4.あ、もう五時ですね。暗くならないうちに帰りましょう。 5.そうそう、忘れないうちに話しておこう。実は・・・ ★ 例題 ★ 1) うとうと(する/している)うち(に/は)、(つい/うっかり)畳にタバコの火を落として焦がしてしまった。 2) この件につきましては、この場での即答は(いたす→     )兼ねますので、一旦会社に持ち帰り、上司と相談の上、一両日( )うち( )御連絡申し上げたいと思います。 (^^)前課の解答(^^) 1) 選ばれた(受身形)/上は/べく(→文型382/→文型385) 2) あろう(未然形+と:→文型437)/決まった/は 017 *~得る/*~得ない 動詞:[ます]形  + 得る             得ない ♪ 会話 ♪ 百恵:ねえねえ、山田さんが昨夜UFOを見たって言ってたわよ。 李 :あり得ないよ。でも、嘘を付く男じゃないから、あいつの目の錯覚だろう。 百恵:まるっきしロマンがないんだから。この広い宇宙のどこかに宇宙人がいることだってあり得るわよ。 ♯ 解説 ♭  「~得る/~得ない」は可能表現の一種で、一般動詞につくときは可能形「~られる/~ られない」と意味はあまり変わりません。しかし、「話し得る」は状況から判断して「~話せる可能性がある」が本来の意味なので、単に能力を言うだけの「彼は英語が話せる」を「彼は英語が話し得る」とは言えません。  また、「~得る/~得ない」は可能形が作れない「ある・できる」などの状態動詞や無意志性の自動詞について、「あり得る/あり得ない」「起こり得る/起こり得ない」のように「~する可能性がある/ない」ことを表します。   あり得る(=存在する可能性がある/×あれる)   できうる(=できる可能性がある/×できれる) § 例文 § 1.人類が火星に移住するってことは、近い将来、起こり得ることだ。 2.私ができ得る限りのことは、喜んでいたしましょう。 3.これが今選択し得る最良の方法ではないでしょうか。 4.申し訳ないが、まだ公表し得る段階ではないので、あしからず。 5.彼ほどの財力があれば、なし得ないものはないと言っていいだろう。 ★ 例題 ★ 1) 考え(得る/兼ねる)限りの手は尽くし(ておいた/てみた)が、もはや倒産を免れる道は(絶った/絶たれた)。 2) あなたの主張は支離滅裂で、私( )は到底(納得す る→   )(得る→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) している/に/うっかり(不注意は「うっかり」) 2) いたし(→文型044)/の/に(「うちに」と「うちは」の違いに注意) 018 *~おかげで/*~おかげか/*~おかげだ 名詞    :    の      +  おかげで 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     おかげだ                      おかげか ♪ 会話 ♪ 母親:おかげさまで、息子も志望校に無事合格できました。本当に夢のようです。 先生:本人の努力のたまものですよ。本当によくがんばったと思います。 母親:いえいえ、先生のお力添えがなければ、とても・・・。全て先生のおかげです。 ♯ 解説 ♭  「~おかげで」は「~(の)援助・恩恵があって~」という意味を表す原因・理由の表現で、いい結果が生じたときに使われます。悪い結果が生じたとき使うのが「~せいで」(→文型122)、どちらの場合にも使えるのが「~ために」です。ただし、「~おかげで」は、例4のように皮肉・非難の気持ちを込めて使うことも希にあります。どれも「ので」系(→ 資料編、)なので、後件では発生した事実や確定事実を表し、「~つもりだ/~たい/~だろう」などの意志・希望・推量表現は使えません。  理由が不確かなとき、断定を避けて「~おかげか」の形が使われます。なお、「おかげさまで」という語は文頭でしか使えず、接続助詞の用法や文末で「~おかげさまです」とは使えません。   先生のおかげで(×おかげさまで)、無事合格できました。   合格できたのは、先生のおかげです(×おかげさまです)。 § 例文 § 1.君が手伝ってくれたおかげで、仕事が早く片づいた。 2.私が今日あるのは、田中さんがあのとき助けてくださったおかげです。御恩は一生忘れません。 3.お前が一人前になれたのは、一体、誰のおかげだと思っているんだ。 4.あなたのおかげで、平気で嘘がつける女になれたわ。 5.先生の丁寧な教え方のおかげか、このクラスには落ちこぼれの学生は一人もいません。 ★ 例題 ★ 1) 一人っ子の(おかげか/せいか)、わがまま(が/に)育っ(てしまいました/ていました)。 2) おかげさま( )主人は軽い骨折で済んだのですが、あの事故( )亡くなられた皆様のことを思う( )・・・。 (^^)前課の解答(^^) 1) 得る/てみた(→文型197)/絶たれた(基運「受身」:→ P)\ 2) に/納得し/得ない 019 *御~する/*御~になる 御(お/ご)+  動詞:[ます]形  +  する/いたす   ・                     になる/なさる 御(お/ご)+  動詞:[ます]形  +  ください     ・                     願えませんか                     なさい ♪ 会話 ♪ 李 :部長、田中様がお見えになりました。こちらにお通しいたしましょうか。 部長:うん、そうしてくれたまえ。 田中:突然お伺いいたしまして、御迷惑ではなかったでししょうか? 部長:いえいえ、そんなことはございません。さあ、どうぞ。 ♯ 解説 ♭  「(お/ご)~する/いたす」を謙譲形、「御(お/ご)~になる/なさる」を尊敬形とも呼びます。敬語は場面や相手によって複雑に変化しますので、一言で説明することは困難ですが、私は下げる(=謙譲語)、相手は上げる(=尊敬語)と覚えておくといいでしょう。  「御」は「お」とも「ご」とも読みなす。 「お約束する・お料理する」や「ご案じになる・ご案じいたす」などの例外がありますが、一般に和語動詞には「お」、漢語動詞(「~する」動詞)には「ご」がつくと考えればいいでしょう。 § 例文 § 1.あのう、ちょっとお尋ねしますが、この近くに郵便局はないでしょうか。 2.申し訳ございませんが、もう少々、お待ち願えませんか。 3.私がご案内いたします。さあ、こちらへどうぞ。 4.では、ご主人がお帰りになられましたら、私の方にお電話くださるようお伝えいただけませんか。 5.当ホテルをご利用のお客様には、特別ディナー招待券を差し上げております。どうぞご利用ください。 ★ 例題 ★ 1) お買い上げ(する/になる)かどうかはともかく、一度お(召し/召し上がり)(して/になって)みてください。 2) どうぞ、お(入る→    )ください。( )(待つ →     )しておりました。 (^^)前課の解答(^^) 1) せいか(悪い結果)/に(変化の結果)/てしまいました(不本意) 2) で/で(理由)/と(「お気の毒です」が省略・感情発生→文型203) 020 *~恐れがある 名詞    :    の   +  恐れがある 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 良子:ねえねえ、今夜あたり関東地方に台風が上陸する恐れがあるそうよ。 李 :道理で雲行きが怪しいと思ったよ。早く帰って来て正解だったようだ。 良子:でも、ここらで一雨あった方がいいかもしれないわね。そうでないと、水不足の恐れもあることだし。 ♯ 解説 ♭  「~恐れがある」は「~(の)心配・不安・危険など<良くないこと>が起こる可能性がある」という意味で、否定は「~恐れはない」となります。「~かもしれない」と同じ意味です。しかし、「~かもしれない」はどのような場合にも使えますが、「~恐れがある」は悪い事態の発生の時にしか使えないという特徴があります。なお、この文型は「~兼ねない」(→文型043)とほぼ同義表現です。   台風が上陸するかもしれない。  →台風が上陸する恐れがある。  →台風が上陸し兼ねない。  間違えやすいのは悪い傾向を表す「~嫌いがある」(→文型063)との違いですが、「~嫌いがある」は既定事実で、未来の推測ではありません。→例題1) § 例文 § 1.この病気は伝染する恐れもあるから、気をつけてほしい。 2.地震の影響で津波の恐れがありますから、緊急に避難してください。 3.バーゲン品は安いが、品質が悪い恐れがある。 4.彼は口が軽いから、彼に話すと秘密が漏れる恐れもある。 5.この金融不安がこのまま続くと、最悪の場合、世界恐慌に発展する恐れがある。 ★ 例題 ★ 1) この船は(この/あの)程度の浸水で沈没する(恐れ/嫌い)は(ないから/なくて)、慌てなくてもよい。 2) 未成年者の犯罪を警察力だけで(押さえる→    )(込む→    )とすれば、かえって事態を(悪化する →       )恐れがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) になる/召し(お召しになる=着る)/になって 2) 入り/お/待ち 021 ~落とす/~漏らす 動詞:[ます]形  +   落とす              漏らす ♪ 会話 ♪ 李 :大きな魚をとり逃したんだって? 山田:詰めが甘かったと言おうか、何と言おうか、契約までもう一歩のところまで行っていたんだが。あ~あ、土壇場で敵の大将を討ち漏らした武将の心境だよ。 李 :くよくよしてても仕方がないだろ。元気を出せよ。 山田:ああ、でも、逃げた魚は大きく見えるなあ。 ♯ 解説 ♭  「落とす」は「撃ち落とす・切り落とす・突き落とす…」など、「上から下へ落とす」のように原義に近いものや、「攻め落とす・泣き落とす・口説き落とす・競り落とす…」のように攻略して目的を達する意味の複合動詞も作ります。文法上大切なのはここで取り上げた「~するのを忘れてしまう」という意味を表す用法でしょう。この場合「~もらす」も同じように使えますが、「うっかり(不注意で)~し落とす」「注意していたのに~しもらす」と語感の違いがあります。  なお、「~損なう/~損ねる/~誤る」(→文型125)との意味の違いに注意しましょう。→例題1) § 例文 § 1.報告書は読み落としがないように、細部まで注意せよ。 2.君の意見は、問題の本質を見落としているよ。 3.入学願書に、大事な記載事項を書き漏らしてしまった。 4.そのことについては記憶がないんですが、聞き漏らしていたのかもしれません。 5.押して駄目なら引いてみな。それでも駄目なら、もう彼を口説き落とす手は、泣き落とし作戦しかないね。 ★ 例題 ★ 1) 四者択一の問題は、答えを(書く/書き)さえすれば、四分の一の可能性があるのだから、書き(損なわない/漏らさない)(ように/ことに)しなさい。 2) 試験場では受験番号の(書く→   )落としが(ある→   )よう、(注意する→      )なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) この/恐れ/ないから(文末が意志表現の時、「ので・て」は不可) 2) 押さえ(→文型094)/込もう(→文型441)/悪化させる(使役) 022 ~思いをする/~思いがする/~覚えがある 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  +  思いをする ・                      思いがする ・                      覚えがある ・ ♪ 会話 ♪ 李 :部長の仕事に賭ける情熱には、頭が下がる思いがするよ。正に仕事の鬼だね。 山田:でも頭ごなしに怒鳴られて、嫌な思いをした者も少なくないよ。僕もその一人だがね。 李 :僕は今までに、一度もそんな覚えはないなあ。 山田:たぶん、部長の覚えがめでたいんだろ。 ♯ 解説 ♭  「~思いをする」は話者の感情・感覚を表します。この表現は「悔しい思いをする→悔しく思う」のように言い換えることもできます。「~思いがする」は自然にわき上がる感情・感覚を表しますが、もともと「~がする」(→文型031)は人間の五感を表す文型です。  なお、「~覚えがある」は 感情・感覚ではなく、「~記憶がある/~経験がある/~自信がある」などの意味を表します。→例題1) § 例文 § 1.湯上がりに冷たいビールを飲むと、生き返る思いがする。 2.日本に来たばかりの頃は、何度となく不愉快な思いや、  恥ずかしい思いをしたものだ。 3.車の運転にかけては、いささか腕に覚えがあります。\ 4.僕は君のやり方を批判したけれど、君自身の人格まで誹謗中傷した覚えはない。 5.あれほど触るなと言っておいたのに、このパソコンをいじったのは君だね。身に覚えがあるだろ? ★ 例題 ★ 1) 私が歌手(にとって/として)一人立ちできる(までに/まで)は、ずいぶん辛い(思いもした/覚えもあった)。 2) 彼には確かどこ( )で会った(ようだ→     )覚えがあるんだけど、どこで(だ→    )っけ? (^^)前課の解答(^^) 1) 書き(→文型100)/漏らす(~損なう:→125P)/ように 2) 書き/ない(~ように:→445P)/注意し(〔ます〕形+なさい) 023 ~折り(に) 名詞    :    の    +   折り(は) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> 折りに(は) ♪ 会話 ♪ 良子:先日、白石さんとお会いした折り、「また李君と一杯やりたいなあ」って言ってらしたわよ。 李 :そう言えば、卒業以来会ってないもんなあ。折りを見てこちらから連絡するよ。 良子:それがいいわ。学生時代はあんなに仲良しだったんだから。 ♯ 解説 ♭  「~折り(に)」は「~(の)とき」の意味で使われます。しかし、この「折り」は「機会」という語義も含んでいて、いくつかの慣用表現を持っています。   もし折りがあれば、またお会いしたいですね。→例題1)   私は折りにふれて詩を書きます。   折りも折り、うわさしていた彼が来た。  類似表現に同じ時を表す「~(の)際」「~(の)節」(→文型098)がありますから、各項を参照してください。 § 例文 § 1.上京の折りには、御一報ください。 2.この件は今度会った折りにでも、また相談しましょう。 3.駅前で交通事故があった折り、たまたま僕はそこに居合わせた。 4.暑さも厳しい折から、くれぐれも御自愛ください。 5.折りもあろうに、こんな真夜中に電話をかけてくるなんて、なんと非常識な奴だ。 ★ 例題 ★ 1) 最近、忙しくて先生とお会い(する/になる)(折り/際)がない。君からよろしく伝え(ていて/ておいて)くれ。 2) 訪中( )折りには色々お世話(になる→    )まして、誠にありがとうございました。日本にお越し( )節は、是非、御一報くださいませ。\ (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/までに(→文型402)/思いもした 2) か/ような/だった(副詞:「確か~だった/~した」の形) 024 ~かい(が)あって/~かいもなく/~がい 名詞: の       +  かい(が)あって    ・ 動詞:た形・ている形     かいもなく 動詞:[ます]形      +  がい        ・ ♪ 会話 ♪ 李 :今回のレコード即売会は出かけたかいがあったよ。念願のビートルズの古いアルバムが手に入ったからね。 良子:レコードだけが生きがいみたいねえ。 李 :会社で神経をすり減らしているんだ。寝ることと、レコード聴くことぐらいしか楽しみはないんだよ。 良子:何だか、寂しい人生ね。 ♯ 解説 ♭  「かい(甲斐)」は「効果・成果」や「意義・価値」という意味を表す名詞で、「~かい(が)あって」は例文1~3のように、動詞の「~した・~している」や名詞と結びつき、「~した効果・成果があって~した」という意味を表します。その否定表現は「~かいもなく」となります。どちらも文末が完了(「た」形)になることに注意しましょう。  例文4、5のように動詞の「ます形」と結びつくのは接尾語で「がい」と読み、「~する十分な意義・価値がある」の意味を表します。例として「やりがい・鍛えがい・育てがい・生き甲斐・作りがい・読みがい…」などがあります。 § 例文 § 1.厳しい練習に耐えたかいがあって、ついに長年の念願であった優勝を勝ち取った。 2.合格おめでとう。がんばったかいがあったね。 3.彼は手術のかいもなく、亡くなった。 4.やるからには、やりがいのある仕事がしたい。 5.彼のような選手は鍛えがいもあり、育てがいもある。 ★ 例題 ★ 1) (待つ/待ち)に待ったかいがあって、(ついに/結局)私にもチャンスが巡っ(てきた/ていった)(そうだ/ようだ)。 2) もっと(教える→   )がいのある学生に(教える→   )たいものだ。これではやる気も湧い(てくる→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) する(謙譲形)/折り/ておいて(基運「ておく」:→ P)\ 2) の/になり/の 025 ~がいい/~がよい 動詞:原形/ない形  +  がいい               がよい ♪ 会話 ♪ 部長:今回の企画は一切を君に任せる。何かあっても責任は私がとるから、思う存分に腕を振るうがいい。 李 :任せていただき、ありがとうございます。部長の御期待にそえるよう、全力を尽くします。 部長:成功するかどうかは、君の肩にかかっている。では早速、取りかかりたまえ。 ♯ 解説 ♭  「~がいい/~がよい」は「~方がいい」と同じ提案・勧告の表現です。「~ばいい」や「~といい/~たらいい」(→文型154)も同じような意味を表しますし、「~するのが最善である/一番いい」と言う意味の文型「~に越したことはない」(→文型309)も類義表現です。  その中で「~がいい」だけは少し特殊で、語調によっては例文5や「死にたければ、勝手に死ぬがいい」のように「勝手にしろ」という放任を表したり、話者自身のことには使えないなどの制約があります。 § 例文 § 1.言いたい奴には、好きなように言わせておくがいい。 2.身の程知らずの愚かな夢からは、早く覚めるがよい。 3.彼がそんなにほしがっているなら、やるがいい。 4.殺したければ殺すがよい。俺を殺しても歴史の歯車を止めることはできない。 5.そんな奥歯にものがはさまったような遠回しな言い方はやめろ。言いたいことがあれば、はっきり言うがいい。 ★ 例題 ★ 1) もう僕には要らないもの(で/だから)、いくらでもほしい(だけ/ほど)持っ(てくる/ていく)がよい。 2) 僕の言葉がどうしても(信じられる→       )と言うなら、君自身の目( ) 確かめる( )いい。 (^^)前課の解答(^^) 1) 待ち(→文型285)/ついに(期待した結果)/てきた/ようだ 2) 教え/教え/てこない(~てくる→文型181) 026 *~限り(は)/*~ない限り(は) 名詞    :である /でない   +  限り(は) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :部長からこの企画を任された限りは、なんとしても成功させたくてね。それで、君の力を借りたいんだけど。 真理:私にできることなら、何でもするわよ。 李 :今度の新商品は主婦層を対象にしたものなので、女性の視点から発想しない限り無理だと思ってね。 真理:一口に主婦層といっても、ニーズも多様化してるわ。 ♯ 解説 ♭  「~限り」は仮定と既定(理由)の接続助詞の働きをします。仮定の時は「~する間は絶対~」、既定の時は「~からには」(→文型056)や「~以上」(→文型009)と同様に「~だから、必ず~」を表す理由の表現になります。  学生である からには 勉強しろ。        以上        限り  「~ない限り」は、例文4、5のように「(~する/~しない)間は、絶対~/~しなければ、絶対~」を意味するようになりますが、これは「~なければ」の強調表現と考えていいでしょう。 § 例文 § 1.生きている限り、先生から受けた御恩を忘れることはありません。 2.戦争が続く限り、人類の悲劇は終わらないだろう。 3.土下座でもして謝らない限り、決して彼を許さない。 4.相手方が非を認め賠償金を支払わない限り、我々は告訴することも辞さない。 5.彼は頑固だから、よほどのことがない限り、自分の説を変えることはないだろう。 ★ 例題 ★ 1) 使い捨ての消費文化(が/を)(変わる/変わらない)限り、ゴミ問題(を/が)根本的に解決されることはない。 2) 雨天( )(ある→    )限り、運動会は予定通り(行う→     )つもりです。\ (^^)前課の解答(^^) 1) だから/だけ (→文型131)/ていく(~ていく→文型177) 2) 信じられない/で(手段)/が(「と」も可→文型154) 027 *~限りだ 数詞・名詞:     ×      +  限りだ  ①                      限りで 感情形容詞:連体形<ーい/ーな>  +  限りだ  ② ♪ 会話 ♪ 李 :田中教授の家は箱根に別荘があって、夏休みは家族そろって、そこで過ごすんだって。 良子:羨ましい限りだわ。お金って、ある所にはあるものね。「金は天下の回りもの」って言うけれど・・・。 李 :僕たちの所には回ってこないね。あ~あ、夏の休暇も今週限りだけど、どこにも行けそうにないなあ。 ♯ 解説 ♭  「~限りだ」は日時について「~までだ」<期限>、数量について「~だけだ」<限定>を表します。「限り」は名詞なので、「限りで~/限りの<名詞>」の形も使われます。  また、「~限りだ」は感情形容詞につくと、「非常に~だ」という程度表現になります。多くの類義表現がありますが、代表的なものを挙げると、名詞に直接接続する「~極まる/~の極みだ/~極まりない」(→文型069)や、「~と言ったらない/(→文型219)」、「~のなんのって」(→文型358)や「~てたまらない/~てしかたがない」(→文型183)などです。   苦しい限りだ。   苦しいのなんのって。   苦しいと言ったらなかった。   苦しくてたまらない。 § 例文 § 1.この資料の貸し出しは、三日間限りです。 2.今日限りで、皆さんともお別れです。色々お世話になりました。 3.君と10年ぶりに再会できて、うれしい限りだ。 4.あんな奴に負けたなんて、くやしい限りだ。 5.根も葉もない噂をたてられ、腹立たしい限りだ。 ★ 例題 ★ 1) 一夜(限り/限って)の恋の(つもり/わけ)だったが、(いつしか/いつか)僕たちは深い仲へと発展し(ていった/てきた)。 2) 娘が(嫁ぐ→    )からというもの、わが家はまるで火( )消えた(ようだ→    )静まり返り、寂  しい限りです。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/変わらない/が(他Vの受身文) 2) で/ない/行う(~つもりだ→文型175) 028 *~限りでは 動詞: 普通形  +  限りでは ♪ 会話 ♪ 李 :それって、今はやりのヨーヨーかい。面白そうだね、ちょっとやらせて。 小平:いいよ。でも、これってこつがあって、案外、難しいんだよ。 李 :やってるのを見た限りでは、それほど難しくなさそうだけれど・・・。あれっ?できないや! ♯ 解説 ♭  「~限りでは」は「~範囲に限って言えば~」という意味で、後件で意見・判断や感想を表します。この文型が伝聞や判断の根拠の場合は、「~ところでは/~ところによると」(→文型233)を使って表すことができます。  私が見た 限りでは  それは本物のようです。       ところでは  なお、「<この/その>限りではない」という否定の形は、「(前の文の内容の)範囲に限定されない」という意味を表します。 § 例文 § 1.私が診た限りでは、ただの風邪のようです。 2.私の知っている限りでは、彼女はまだ独身のはずです。 3.私が理解した限りでは、そもそもボタンの掛け違いから生じた問題ですね。 4.この度の殺人事件に関し、私の捜査した限りでは、Aがきわめて黒に近いですね。\ 5.この病院の受け付けは午前中ですが、急患の場合はこの限りではありません。 ★ 例題 ★ 1) 私が聞いた(限っては/限りでは)、中国の都市部の変わり(方/よう)はすさまじい(こと/もの)がある。 2) その記事( )ざっと目を通した限り( )( )、これといって目新しい内容は(あった→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 限り/つもり(→文型175)/いつしか/ていった(→文型177) 2) 嫁いで(~てからというもの→文型180)/が(自V)/ように 029 *~かけだ/*~かける/*~かけの 動詞:[ます]形  +  かける              かけの + 名詞              かけだ ♪ 会話 ♪ 李 :おい、おい、言いかけた話を途中でやめるなよ。気になるじゃないか。 良子:きっとあなたは怒るから、やはりやめとくわ。 李 :よけい気になるよ。もったいぶらないで言いなよ。絶対怒らないからさ。 良子:実は、10万円のダイヤの指輪を買っちゃったの。 ♯ 解説 ♭  「~かけだ/~かけ」 は継続動詞<多くは他動詞>につくと「~している途中」や「~し始める」など開始や途中の状態を表し、瞬間動詞<多くは自動詞>につくと「~しそうになる」<直前状態>を表す表現になります。  今、書きかけたところだ。 <他動詞:開始>  書きかけの原稿があった。 <他動詞:途中>  危うく死にかけた。    <自動詞:直前>  この他に、「~に話しかける・~に呼びかける・~に立てかける…」などのように「(対象)に~する」という意味もありますが、少数の動詞にしかつきませんから、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.やりかけたことは、最後までやり通せ。 2.私が海で危うく溺れかけたところを、助けてくれたのが今の夫なんです。 3.もう日も沈みかけている。道を急ごう。 4.僕がうとうとしかけると、突然電話のベルが鳴った。 5.友達が遊びに来ると、息子は昼御飯も食べかけのまま飛び出していった。 ★ 例題 ★ 1) 臭いを嗅いで御覧よ。この肉はちょっと(腐る/腐り)(抜いて/かけて)いる(らしい/みたいだ)よ。 2) せっかく(まとまる→     )かけた話が、君の不用意な一言( )(壊れる→   )ようとしている。 (^^)前課の解答(^^) 1) 限りでは/よう(→文型435)/もの(→文型419) 2) に(慣用:~に目を通す)/では/なかった(→文型095) 030 ~が最後/~たら最後 これ・それ・あれ:   ×     +  が最後 動詞      :た形(希に原形) 動詞      :た形       +  ら最後 ♪ 会話 ♪ 佐藤:アメリカに2、3年行かないかって言われて、迷ってるんだ。行ったが最後、しばらく帰してもらえない気がしてね。 真理:出世コースじゃないの。このチャンスを逃したら最後、二度と回って来ないわよ。 佐藤:君も一緒に行ってくれないか?どう? ♯ 解説 ♭  「~が最後/~たら最後」は「~が最後で、もう終わりだ」など、絶望的な結果になることを表します。文末で可能形の否定(「~できない/~(ら)れない」)が多く現れます。  類義文型に後件で悪い結果が発生することを強調する仮定表現「~(よ)うものなら」(→文型448)がありますが、「~が最後/~たら最後」は確定事実であることが強調されていて、「もし/もしも/万一」といっしょに使えません。しかし、「もし~(よ)うものなら」は成立します。→例題1)  そんなことを  言ったが最後、  この国では刑務所行きだ。          言ったら最後、          言おうものなら、 § 例文 § 1.あの男はこの業界の顔役で、彼ににらまれたら最後だ。 2.今度の仕事は少しでもミスをしたが最後、取り返しがつかないことになる。 3.彼は言い出したら最後、一歩も後へ引かない。 4.あいつはマイクを握ったが最後、離そうとしないカラオケ狂だ。 5.あんな女につかまったら最後、骨の髄までしゃぶられてしまうぞ。 ★ 例題 ★ 1) 万一大地震でも(起ころう/起こった)(が最後/ものなら)、この地域は地盤沈没の(嫌い/恐れ)がある。 2) 一旦(落後する→     )が最後、なかなか(はう→    )上がれない( )がこの競争社会だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 腐り/かけて/みたいだ(→文型408) 2) まとまり/で(理由)/壊れ(→文型441) 031 *~がする 五感・感覚を表す名詞 : ×  +  がする                    がしない ♪ 会話 ♪ 李 :あれっ、どうしたの?なんだか顔色が悪いような気がするなあ。 百恵:ええ、夕べから少し寒気がするの。 李 :どれどれ、あれっ、すごい熱だ。早退して医者に行った方がいいよ。仕事も大切だけど、体を壊しちゃ元も子もないよ。 ♯ 解説 ♭  「~がする」は「~を感じる」を意味しますが、前につく名詞は「味・臭い・声・音・~感じ・気・寒気・光…」など、五感で直接感じる対象です。  「不安・怒り・喜び・危険」など抽象的・心理的対象は「不安を感じる」のように「~を感じる」を使います。この表現は「~を覚(おぼ)える」を使っても表せますが、少し古い言い方になります。→例題1) § 例文 § 1.隣は今留守のはずなのに、人の声がしました。 2.誰でも褒められたら悪い気はしないものだ。 3.私の家は道路の側にあるので、真夜中まで車の音がして、慣れないうちは眠れなかった。 4.なんだか変な味がするよ。これ腐ってるんじゃないか。 5.第六感というか、嫌なことが起こりそうな感じがする。 ★ 例題 ★ 1) あっ、稲光が(感じた/した)わ。夕立になるかもしれない(から/ので)、ねえ、あなた、早く帰り(ます/ましょう)よ。 2) 同じ過ち( )何度も繰り返す( )は、あきれ果てて、怒る気も(する→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 起ころう/ものなら(「万一~」は仮定文型)/恐れ(→文型020) 2) 落後した/はい(→文型003)/の(→文型354) 032 ~かそこら/~辺り/~足らず/~余り 数詞: ×  +  かそこら  ① 名詞: ×  +  辺り    ② 数詞: ×  +  足らず   ③ 数詞: ×  +  余り    ④ ♪ 会話 ♪ 良子:あ~あ、寒い。今朝なんか五度かそこらだったのじゃないかしら。マフラーを買わなきゃ。 李 :この辺りにはセンスのいい店がないね。アメ横辺りで買えば一万円でお釣りが来るだろう。行ってみる? 良子:買ってもらえるなら、どこでもいいわよ。いつものあそこで、5時半に待ち合わせましょうよ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~かそこら」は「~くらい」(→文型071)と同義ですが、その数量を軽視する話者の受け止め方があります。ですから、「この家は五千万円かそこらで買えるよ」と言えば、その人にとって五千万円は大金ではありません。  ここで概数を表す表現<数量詞+くらい・かそこら・ほど・ばかり・足らず・余り>を整理しておきましょう。   十日±α  = 十日かそこら   十日≧α  = 十日足らず   十日≦α  = 十日余り  「~辺り」は名詞(時/ところ/人/こ・そ・あ)について大体の見当・推測を表すのですが、「付近・周囲」という意味の「辺り」から派生しています。 § 例文 § 1.東京から京都まで、あっという間だよ。新幹線で三時間かそこらで着くんだから。 2.あなたにとっては十万円かそこらは小遣い銭でも、私にとっては大金よ。 3.駅まではあっても二キロ足らずだよ。歩いて行こうよ。 4.この仕事には田中君辺りが、適任ではないでしょうか。 5.確か、ここら辺りに置いたはずなんだが、ないなあ。 ★ 例題 ★ 1) 来年(かそこら/辺り)、大阪支店に転勤という(ことになる/ことになり)そうだから、その(つもり/はず)でいてくれ。 2) 10分余り( )仕事も片づくから、ちょっとここ( )待っていて(いただく→    )ないかしら? (^^)前課の解答(^^) 1) した/から(文末が意志表現)/ましょう(勧誘・提案) 2) を(他V)/と(~とは②→文型242)/しない 033 *~か、それとも~か/*~か、或いは~か/~か、または~か 名詞    :    ×     +  か、それとも~か 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>    か、或いは                     か、または ♪ 会話 ♪ 良子:小平も一人部屋をほしがってるし、広い所に引っ越すか、それとも思い切ってマンションを買うか、決めなくてはいけないわね。 李 :今の給料じゃ、どちらも無理だよ。 良子:あ~あ、甲斐性のない夫を持つと、妻が苦労するわねえ。いっそ、夫を取り換えようかしら? ♯ 解説 ♭  これらの文型は例文1~3のように疑問句AとBを対比させ、どちらか一方の選択を求める場合に用います。この場合、「Aか、それともB」「Aか、或いはBか」「Aか、またはBか」は同じように使えます。  しかし、「それとも」は二者択一の時にしか使えません。なお、「或いは」「または」には例文4、5のようにそれ以外の用法があり、その場合には「それとも」が使えません。それ以外に次のような違いがあります。→例題1)  <AもBも、どちらも>   英語も、或いは(×それとも/×または)中国語も通じない。  <AでもBでも、どちらでもいい>   円或いは(×それとも/○または)ドルで支払ってください。 § 例文 § 1.バスで帰ろうか、それとも歩いて帰ろうか? 2.中華料理にするの、それとも和食にするの。 3.突撃して活路を開くのか、或いは降伏して命ごいをするのか、もはや道は二つに一つだ。 4.泣いて詫びようが、或いは(×または/×それとも)いくら慰謝料を払おうが、君の犯した罪は消えない。 5.この署名欄には、日本語か、または(⇔或いは/×それとも)英語で御記入ください。 ★ 例題 ★ 1) 海外ビジネス(において/について)は、現地語(または/それとも)英語ができ(なくて/ないと)困る。 2) 参加するの( )、それともしないの( )、この場ではっきり返事をして(もらう→     )ませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) 辺り(「N+」に注意)/ことになり(様態の「そうだ」)/つもり 2) で/で/いただけ(可能形を使うと依頼) 034 *~難い 動詞:[ます]形  + 難い ♪ 会話 ♪ 佐藤:初代の中国事務所の所長を、課長から打診されたんだけど、日本は住みやすいので離れたくないよ。 李 :離れ難いのは日本ではなくて、真理さんなのと違うかい?でも、どこでも「住めば都」だよ。 佐藤:所長だなんて急に言われても、にわかには受け難いよ。気持ちの準備もできていないしさ。 ♯ 解説 ♭  「~難い」は「~するのが困難だ」と意味ですが、人間の心理・思考面を表していて、実際は「しようとしても~できない」不可能な事態を表します。この点が類義表現「~にくい」(→文型306)との大きな違いで、「~にくい」は「難しいが、しようと思えば~できる」事態を表しています。→例題1)   その要求は受け入れ難い。 ≒ 受け入れられない   その要求は受け入れにくい。≒ 受け入れられないことはない § 例文 § 1.信じ難いことだが、彼は会社の金を使い込んでいたそうだ。 2.彼は得難い人材だ。会社の将来は彼のような若者の肩にかかっている。 3.耐え難きを耐えてこそ、忍耐と言える。 4.これはちょっと言葉では表し難い珍味ですなあ。 5.君の企画案は単なる思いつきに過ぎず、具体的なプランもない。これでは採用し難いね。 ★ 例題 ★ 1) もしこの交渉(が/を)決裂(すれば/しても)、両国の全面的な軍事衝突は、もはや避け(難く/にくく)なる。 2) 香港の夜景の(美しい→    )は、正に筆舌( )(尽くす→    ) 難いものだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) において(→文型291)/または/ないと(理由か条件か) 2) か/か/もらえ(可能形を使った依頼) 035 ~かたがた 名詞: ×  +  かたがた ♪ 会話 ♪ 山田:打ち合わせを早めに切り上げて、工場見学かたがたお花見に行かないか。夕日を浴びながらのお花見。たまにはのんびりしようじゃないか。 佐藤:おやおや、お花見かたがたの工場見学と言った方が正確じゃないの?困った方々だなあ。 山田:行きたいなら、がたがた言わないこと! ♯ 解説 ♭  「~かたがた」は「AかたがたB」の形をとり、同一主語文で使われ、同一時間帯のなかで「Aをする機会を使って、Bをする」並行動作を表します。丁寧な語感なので、手紙や公式の会話で多く使われます。同義表現に「~がてら」(→文型038)があり、こちらは日常会話で 多く使われます。どちらも動作Aが主で動作Bが従の関係にあります。    散歩かたがた(・がてら)、話しましょう。  「AついでにB」(→文型163)も似た意味を表しますが、Bは付け足しの行為で異なる時間帯の動作です。→例題1) § 例文 § 1.夕涼みかたがた、図書館に寄ってみた。 2.墓参りかたがた、幼友だちに会って来ようと思う。 3.お願いかたがた、近況御報告まで。 敬具 4.近くに来るついでがございましたので、先日のお礼かたがた、お伺いしました。 5.上海出張かたがた、足を伸ばして黄山に登ってきた。 ★ 例題 ★ 1) 近日中に(お/ご)挨拶(のついでに/かたがた)、(お  /ご)伺い(になりたい/したい)と思っ(ております/ていらっしゃいます)。 2) お寺参り( )かたがた、浅草へ(遊ぶ→    )に(行く→     )みませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/すれば/難く(不可能の意味の方が自然) 2) 美しさ(Nの形)/に/尽くし(「筆舌に尽くしがたい」は慣用語) 036 ~かたわら 名詞: の   +   かたわら 動詞:原形 ♪ 会話 ♪ 課長:新聞でも紹介されていたけど、田中さんは仕事のかたわら、自治会の会長としても地域で大活躍だね。李  :奥さんも、中国帰国者に日本語を教えているボランティアグループのリーダーらしいです。 課長:有能な男のかたわらに良妻ありというところだな。君も地域活動で中国語を活かしてみたら? ♯ 解説 ♭  「AかたわらB」は「Aする一方でBする」とほぼ同義表現ですが、動作Aと動作Bは異なる時間帯で行われ、しかも習慣的な行為に用いることが多いでしょう。この点がAとBが同一時間帯で行われる並行動作を表す「~ながら」(→文型269)と異なっています。→例題1)   歩きながら(×かたわら)タバコを吸う。  その他、「かたわら」には会話中の「男の傍(かたわ)ら」や「母が料理を作るかたわらで、子供たちが遊んでいる」のように「側」という場所も表します。 § 例文 § 1.彼は会社に勤めるかたわら、英語学校で勉強している。 2.A社は不動産業のかたわら、飲食店も経営している。 3.あの人は農業のかたわら、農閑期は演奏活動もしているシンガー・ソング・ライターよ。 4.あいつは嫌な奴だ。本人の前では胡麻をするかたわら、裏で陰口をたたいている。 5.子育てのかたわら書きつづった随筆が、ベストセラーになった。 ★ 例題 ★ 1) 休日(ぐらい/ほど)は、音楽でも(聴きながら/聴くかたわら)、のんびり過ごしたい(こと/もの)だ。 2) 留学生の(多い→   )は大学( )通うかたわら、学費を稼ぐ( )( )にアルバイトもしている。 (^^)前課の解答(^^) 1) ご/かたがた(~ついでに→文型163)/お/したい/ております 2) ×/遊び(「ます形+に行く」)/行って(→文型197) 037 *~がちだ 名詞: ×     +   がちだ 動詞:[ます]形       がちなことだ               がちの  +  名詞 ♪ 会話 ♪ 課長:君、この頃元気がないね。いつもの君らしくないので、部長と心配しているのだよ。 李 :子供がよく熱を出すので、どこか悪いのではないかと心配で。医者は何でもないと言っているのですが。 課長:子育てに慣れないうちは、親もあれこれ悩みがちだが、小さな子にはありがちなことだよ。 ♯ 解説 ♭  「~がちだ」は「~する傾向がある」「よく<回数>~する」という意味を表す表現で、述べられることは良くない傾向です。例えば、下の例のように良い傾向には「よく~する」を使ってください。○ あの人は、よく公園をジョギングしている。× あの人は、公園をジョギングしがちだ。  ほぼ同義語に性向を表す「~嫌いがある」(→文型063)がありますが、この表現は回数が多いことや一時的現象には使えません。 § 例文 § 1.この種の間違いは、初心者にありがちなことだ。 2.この子は小さい頃から病気がちで、しょっちゅう医者通いをしていました。 3.明日は午後から、曇りがちの天気になるでしょう。 4.疲れているときは、不注意による事故が起こりがちだ。 5.ふと浮かんだアイディアというのは忘れがちだから、必ずメモに残すことにしている。 ★ 例題 ★ 1) 若いうち(は/に)、正義心から、(とかく/とにかく)極端に(走る/走り)がちだが、理想論だけで世の中は変わる(こと/もの)じゃないんだよ。 2) その人は遠慮( )( )に、 「あのう、ここ( )タバコを吸ってもいいですか」( )私に聞いた。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぐらい(最低限→文型072)/聞きながら/もの(→文型130) 2) 多く(「多く」はN)/に/ため(目的の「ため」→文型152) 038 ~がてら 名詞: ×     +    がてら 動詞:[ます]形 李  :夕涼みがてら、井の頭公園でも散歩しないか。 ♪ 会話 ♪ 良子:男の人って優雅でいいわねえ。女の私はどこへ行くにも買い物がてらよ。 李 :わかった、わかった。ついでに吉祥寺の街に出て、夕食の材料も買って来よう。荷物は僕が持つからさ。 良子:ねえ、夏物の服も買っていいかしら? ♯ 解説 ♭  「~がてら」は「Aをしている時間を使って、Bをする」と言う意味を表す表現で、同一時間帯のなかで、主たる動作Aに並行して、従たる動作Bをすることを表現します。  また、同義表現の「~かたがた」(→文型035)、「~ついでに」(→文型163)も併せて参照してください。なお、このふたつの文型は同時並行動作は表せません。  散歩がてら(・かたがた/・ のついでに)本屋に寄る。  散歩がてら(・かたがた/×のついでに)話をしよう。 § 例文 § 1.神社のお祭りを見物がてら、夜店でものぞいてこようよ。 2.中国旅行がてら、教え子に会って来ようかと思う。 3.私は毎朝この道をジョギングがてら、思い浮かんだことを俳句にしている。 4.市場調査がてら都内の繁華街を冷やかして歩くのが、まあ、私の道楽のようなものです。 5.料理を作りがてら、聞くともなく聞いていたラジオから、  懐かしい歌が流れてきた。 ★ 例題 ★ 1) A君は病気療養中との(こと/もの)だから、見舞い(ながら/がてら)、家に寄って(みる/みよう)よ。 2) (散歩する→      )がてら、古本屋に(寄る→       )、本を数冊(買う→    )来た。 (^^)前課の解答(^^) 1) は/とかく(傾向)/走り/もの(~ものではない→文型420) 2) がち/で/と(内容・発言を取り上げる「と」」 039 ~かと言うと/~かと言えば なぜ  ~ 名詞    :    ×     + かと言うと どう    動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×>   かと言えば どうして どちら ♪ 会話 ♪ 李 :ねえ、どちらの服が似合う? 良子:どちらかと言えば、右手に持っている明るい色の方がいいと思うわ。若々しくていいんじゃない? 李 :少し派手じゃないか? 良子:そんなことないわよ。日本のサラリーマンは黒っぽいのとか、灰色っぽいのとか、とにかく地味すぎるのよ。\ ♯ 解説 ♭  「~かと言うと/~かと言えば」は疑問詞と呼応して、「~のことに関して語れば」という意味を表します。多くは「なぜ~かと言うと~からだ/どうして~かと言えば~からだ」のように理由を述べることが多いのですが、「どう/どちら/どんな…」などとも一緒に使うことができます。  なお、「なぜかと言うと/どうしてかと言うと」などの接続詞もここから生まれています。例文5のように、希に疑問詞を含まない用例もありますが、相手方にとって意外なこと、想像もしなかったことを表すことが多いでしょう。 § 例文 § 1.どちらが好きかと言えば、やはり僕はこちらの方ですね。 2.誰が適任かと言えば、やはり山田君以外にいないだろう。 3.日本語の学習にはどんな方法が一番いいかと言うと、とにかく丸ごと暗記することでしょうね。 4.成功の秘訣ですか?どうすれば夢を実現できるかと言うと、そうですねえ、夢を持ち続けることでしょうね。 5.親が教師だから、その息子も勉強ができるかと言えば、  そうとばかりは言えないようです。 ★ 例題 ★ 1) なぜ僕(は/が)怒っているかと(言えば/言って)、君が自分の失敗を人のせいに(する/しよう)とするからだ。 2) お金があるから幸せ( )と言う( )、一概にそうとは(言える→ )わけです。 (^^)前課の解答(^^) 1) こと(~とのことだ→文型209)/がてら/みよう(勧誘・提案) 2) 散歩し/寄って(=~て、それから)/買って(→文型181) 040 *~かどうか/~か否か 名詞    :    ×     + か否か 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>   かどうか                    かどうかにかかっている                    か否かにかかっている ♪ 会話 ♪ 良子:その人が成功するか否かは、何によって決まるのかしら。あなた、どう思う? 李 :才能があるかどうかじゃないのかなあ。いくら努力しても駄目な人もいるしね。それに運もあるなあ。\ 良子:でも、「玉磨かざれば光なし」って言うし、努力なくして成功はあり得ないと思うわ。 ♯ 解説 ♭  「~か否か」は文語表現で、口語の「~かどうか」と同義です。また例文5のように「(~かどうか/~か否か/~如何)にかかっている」の形もよく使われますが、この「~にかかっている」は「~によって決まる」を意味します。  合格するかどうか(・か否か)は、努力するか(・か否か)にかかっている。 § 例文 § 1.それが事実かどうか、調査する必要がある。 2.賛成か否か、自分の意見をはっきり言いなさい。どっちつかずは卑怯です。 3.原発を存続させるか否かをめぐって、国論は真っ二つに割れている。 4.やるか否かは、状況如何にかかっている。 5.この製品が売れるかどうかは、宣伝が充分かどうかにかかっている。 ★ 例題 ★ 1) 勝てる(や否や/か否か)は天(のみ/しか)ぞ知るだよ。やってみなく(たって/ちゃ)わからないさ。 2) おいしい( )どう( )は食べてみればわかる。実践  こそ真理に近づく道では(ある→   )まいか。 (^^)前課の解答(^^) 1) が/と言えば/しよう(→文型441) 2) か/と/言えない(陳述副詞:一概に~とは言えない) 041 *~かと思うと/*~かと思いきや/~かと見ると 名詞    :    ×     + かと思うと/かと思えば 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×>  かと思ったら                    かと思いきや                    かと見ると/かと見れば (注:「~(の)かと思うと」のように「の」が入ることもある) ♪ 会話 ♪ 真理:さっきのお客さん、入ってきたかと思ったら、いきなり大声で文句を言い始めたんだから。 李 :ゆゆしき一大事かと思いきや、結局はどういうこともなかったね。よかった、よかった。 百恵:そうかと思うと昨日みたいに、言葉少なでも迫力があって恐いお客さんもいるわね。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~(だろう)かと思ったら、意外にも~した/だった」という予想外の事態の発生を表します。どれも既定事実の表現なので、文末は完了形(「た」形)になります。「~かと見ると・~かと見れば」は視覚判断が強調されていますが、「~かと思うと・~かと思えば」と基本的な意味は同じです。なお、「~かと思いきや」は「~かと思うと」の文語的表現です。  「か」のない「~と思うと/と思ったら/と思いきや」の形も使われますが、そのときの接続は次の通りです。  名詞 :   だ      と思うと  動詞 :  普通形     + と思ったら  形容詞:普通形<ナ形ーだ>   と思いきや § 例文 § 1.静かなので勉強してるのかと思うと、ぐうぐう寝ていた。 2.右かと見れば左から、左かと見れば右から、そのボクサーは多彩なパンチを繰り出した。 3.怒るのかと思いきや、なんと笑い出したではないか。 4.もう出かけたかと思ったら、まだ家でぐずぐずしていたのか。急がないと遅れるぞ。 5.一つ解決したかと思うと、また一つと、次から次に問題が出てくる。 ★ 例題 ★ 1) この子(って/ったら)、さっき(まで/までに)泣いてたかと思ったら、(もう/まだ)笑ってるわ。 2) 彼は(怒る→    )出した( )と思いきや、突然(立つ→    )上がり、私に握手を求めてきた。 (^^)前課の解答(^^) 1) か否か/のみ/みなくちゃ(口語:~ちゃ=ては/~たって=ても) 2) か/か/ある(~まい→文型398) 042 *~か~ない(かの)うちに/~か~ないかに 動詞:原形  +  か、動詞:ない形  +  かのうちに                         うちに                         かに ♪ 会話 ♪ 小平:あれ、まだ八時か。夕御飯から一時間たつかたたないかなのに、なんだかお腹が空いたなあ。 良子:今、食器を洗い終わったばかりなのに・・・。 小平:口に入る物なら何でもいいから、何かないの? 良子:あ~あ、片づくか片づかないうちに、またそんなことを言われてもねえ。これじゃ気が休まる暇もないわ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~すると、すぐ~した」(連続発生)という意味を表します。既定事実なので、習慣を述べる場合以外は文末は完了形(「た」形)になります。同時発生を表す文型は多くあり、「~が早いか」(→文型046)、「~なり」(→文型280)、「~とたんに」(→文型 148)や「~そばから」(→文型 127)、「~や否や」(→文型428)などですが、各項を参照してください。  注意してほしいのは、上記の文型はどれも「~と、すぐ~」のグループで、後件で「~たい・~つもりだ・~だろう」などの意志・推量表現は使えません。これは条件を表す「と」と「たら」の違い(→資料・)から発生したものです。○ 帰ったら、すぐうがいをしなさい。× 帰ると、すぐうがいをしなさい。 § 例文 § 1.ホームに着くか着かないかに、発車のベルが鳴り出した。 2.彼女は、会社から送られてきた不採用の通知を読むか読まないうちに、わっと泣き出した。 3.彼はベットに横になるかならないうちに眠ってしまった。 4.黒い雲が現れるか現れないうちに、激しい突風が吹き荒れ、その妖怪は姿を現した。 5.この店のパンは、店頭に並ぶか並ばないかのうちに、飛ぶように売れていく。 ★ 例題 ★ 1) 夜(が/を)明けるか(明ける/明けない)うちに、母は台所に立って朝御飯の支度(が始まった/を始めた)。 2) 解答を(書く→    )終えるか(終える→    )かのうちに、試験官の「そこまで」という声( ) した。 (^^)前課の解答(^^) 1) ったら(「~と言ったら」の口語→文型219)/まで/もう 2) 怒り(→文型137)/か/立ち(→文型003) 043 *~兼ねない 動詞:[ます]形  +  兼ねない ♪ 会話 ♪ 課長:李君もずいぶんと危ない賭けをやったものだ。うまくいったからいいようなものの、一歩間違ったら取り引き停止になり兼ねなかったぞ。 係長:私が商いの「いろは」から教え直します。 山田:しかし、話し方に注意しないと、誇り高い彼のことですから、辞めるなんて言い出し兼ねませんよ。 ♯ 解説 ♭  「~兼ねない」は不確実な推量を表す「~かもしれない」系の表現で、「(良くない事態が発生する)可能性がある」という意味を表します。「~する恐れがある」(→文型020)とほぼ同義の推量表現です。この二つは常に悪い事態にしか使えませんが、「~かもしれない」と同じく、事態の良し悪しに関係なく使える表現に「~ないとも限らない」(→文型264)があります。   秘密が漏れるかも知れない。   秘密が漏れ兼ねない。   秘密が漏れる恐れがある。   秘密が漏れないとも限らない。 § 例文 § 1.会社命令に背こうものなら、首にされ兼ねない。 2.あいつは金のためには人殺しだってやり兼ねない男だ。 3.そんなにスピードを出したら、交通事故を起こし兼ねない。 4.部下を無能呼ばわりするなんて、人を傷つけるひどい言い方だけど、あの部長なら言い兼ねないね。 5.このままでは両国の国境紛争は、全面戦争に発展し兼ねない。まさに一触即発の状態と言えるだろう。 ★ 例題 ★ 1) 旅先(に/で)は飲み水に注意しなさい。そう(する/しない)と、食あたりを(起こり/起こし)兼ねない。 2) 過ち( )( )学ぶことが(ない→   )ば、再び同じ過ちを(繰り返す→    ) 兼ねない。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(「明ける」は自V)/明けない/を始めた(自Vか、他Vか) 2) 書き/終えない/が(~がする→文型031) 044 *~兼ねる 動詞:[ます]形  +  兼ねる ♪ 会話 ♪ 李 :今回の措置は少々理解し兼ねますので、よろしければ、説明していただけないでしょうか。 課長:色々と事情があってねえ。私の口からは説明し兼ねるから、佐藤君から聞いてくれよ。 佐藤:およその事情は存じておりますが、私には説明役は少し荷が重過ぎます。 ♯ 解説 ♭  「~兼ねる」は「心理的・感情的理由で~できない」を意味する表現です。「~できない」を意味する可能表現は下例のように色々ありますが、各項を参照してください。下例の中で「~得ない」は「~する可能性がない」を表すので、第三者のことでないと少し不自然ですが、意味の差は別にすれば、どれも使えます。→例題2)  お世話になった人の頼みだから、   断れない。   断り兼ねる。   断り得ない。     (→文型017)   断るわけにはいかない。(→文型457)   断り難い。  (→文型034) § 例文 § 1.あなたの意見には、どうしても賛成し兼ねます。 2.その種のことは、同僚の僕の口からは言い兼ねるね。 3.今か今かと子どもの帰りを待ち兼ねて、何度も玄関口まで見に行った。 4.彼は能力はあるが、協調性がなく、私には扱い兼ねる存在だ。 5.当館では、傘の保管には責任を負い兼ねます。各自ビニール袋に入れてお持ちください。(張り紙から) ★ 例題 ★ 1) たとえあなたの頼み(なら/でも)、こんな歴史を歪曲する(ように/ような)本は推薦し(得ない/兼ねる)。 2) 当店( )いたしましては、申し訳ございませんが、その種のご相談( )は(応じる→    )兼ねます。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(動作の場所)/しない(→文型203)/起こし(他V) 2) から/なけれ/繰り返し 045 *~かのようだ 名詞    : ×  / である    +   かのようだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×> ♪ 会話 ♪ 祖父:自分の家での昔ながらの披露宴もいいもんじゃ。皆が集まると、昔に戻ったかのようじゃ。 祖母:でも裏方はもう大変。台所は盆と正月がいっしょに来たようでしたよ。 祖父:次男と末っ子にも、もう結婚相手が決まっとるかのようじゃったが、時が経つのは早いものじゃのう。 ♯ 解説 ♭  「~かのようだ」は「<実際はそうではないが>まるで~ようだ」(類似)を意味します。実際はそうではないことが暗示されているため、「~ふりをする」という意味や非難・軽蔑の感情を込めるときはこの文型がぴったりです。その際は「あたかも・さも」という副詞と結びつことが多いでしょう。例えば、「さも知っているような態度 」は「知っているふり」とほぼ同義です。なお、例文5のように「~ようだ」のかわりに古語「如し」(→文型083)が使われることもあります。 § 例文 § 1.寒いなあ。もう3月なのに、真冬に戻ったかのようだ。 2.新宿は不夜城の名にふさわしく、毎晩が祭りであるかのようににぎわっている。 3.彼女はペットの猫を、あたかも実の子であるかのように可愛がっている。 4.彼は毎日エネルギッシュで、疲れを知らないかのようだ。 5.この度の金融破綻が、全て政府・与党の無能無策から生じたかの如き主張は、我が党としては受け入れ難い。 ★ 例題 ★ 1) (ただ/ほん)の風邪なのに、(あたかも/実に)重病人であるかの(ように/ような)大げさに騒いでいる。 2) 彼( )きたら、さも何でも(知る→     )かのような口振り( )話す。  (^^)前課の解答(^^) 1) でも/ような(~ような+N)/兼ねる(~得ない→文型017) 2= と(「~としては」の謙譲の形→文型237)/に/応じ 046 ~が早いか 動詞:原形  +  が早いか ♪ 会話 ♪ 李 :小平のしつけがなってないなあ。座るが早いか、「いただきます」も言わないで夕食に食らいついたぞ。 良子:あなたって家に帰ってくるが早いか私に小言ですか。あなたにも半分は責任があるのよ。 李 :坊主、雲行きが怪しいと思ったのか、食事が終わるが早いか逃げ出していったよ。 ♯ 解説 ♭  「~が早いか」は「~すると、すぐ~」を意味します。「~が早いか」は動作の同時発生を強調する点に特徴があり、以下のような自然現象や状態発生に使うと不自然になります。また、現実に起こった既定事実描写なので、後件で「~たい・~つもりだ・~だろう」などの意志・推量表現は使えません。→例題1)   家に帰るか帰らないうちに(?帰るが早いか)、雨が降りだした。   帰ったとたんに(×帰るが早いか)、涙が出てきた。  同義表現は多くありますから、「~か~ないかのうちに」(→ 文型042)の項を参照してください。 § 例文 § 1.ベルが鳴るが早いか、彼は教室を飛び出した。 2.彼女は卒業するが早いか、結婚してしまった。 3.バスが着くが早いか、乗客は先を競って乗り込んだ。 4.主人の足音を聞くが早いか、子犬は駆け寄ってきた。 5.店が開くが早いか、お客はバーゲン会場に殺到した。 ★ 例題 ★ 1) (まもなく/ただちに)取引先からの電話がある(はず/つもり)なので、(入ったとたんに/入り次第/入るが早いか)、(まもなく/ただちに)教えてください。 2) 隊員たちは「○○地区で火事が発生!」( )の連絡を受けるが早いか、消防車に(乗る→    )込み、現場( )と急いだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ただ(副詞の語義)/あたかも/ように 2) と(~ときたら→文型229)/知っている/で 047 *~かもしれない/~かもわからない 名詞    :  ×       +  かもしれない 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×>   かもわからない ♪ 会話 ♪ 小平:難しいかもしれないけれど、私立の○○中学を受験してみようかと思うんだ。お母さん、いい? 良子:えっ?あの有名な○○中学? 小平:もしかしたら、合格の可能性もあるかもわからないと、先生が言ってくれたんだ。 良子:わかったわ。駄目でもともと、やってみたら? ♯ 解説 ♭  「~かもしれない」は初級文型ですが、「~かもわからない」の形もあって意味も用法も変わりません。関連表現を挙げれば、可能性が高いと思えば「~だろう」、ほぼ確実だと思えば「~はずだ」が使われます。   明日は雨が降るかもしれない。   明日は雨が降るだろう(60~80%)   明日は雨が降るはずだ(95~99%)  以上は知的推量に属しますが、人間の五感に基づいて感覚的に推量するときは「~ようだ/~そうだ/~らしい」(→資料「)が使われます。例えば、人の額に触って「熱があるようだ」とは言っても、「熱があるだろう」とは言えません。 § 例文 § 1.帰りが遅すぎる。娘の身に何かあったのかもしれない。 2.そう言えば、そんなことを言ったかもしれないなあ。 3.ずいぶん勝手な奴だとお思になるかもしれませんが、先日の話は一旦白紙に戻していただけないでしょうか。 4.一時父は重体で、もう助からないかもしれないと思ったが、どうやら峠は越したようだ。 5.ひょっとしたら、行方不明の息子が帰ってくるかもしれないと思って、部屋はそのままにしてあるんです。 ★ 例題 ★ 1) 机上の理論(として/にとって)は成立する(はずだ/かもしれない)が、現実から(は/が)遊離した空論だ。 2) 旅先( )何があるかもわからないから、その際はここ( )電話を(入れる→     )なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) まもなく/はず(→文型367)/入り次第(→文型111)/ただちに 2) と(内容の引用)/乗り(→文型094)/へ(~へと→文型387) 048 ~からある/~からする/~からの 数詞: ×  +  からある          からする          からの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 山田:例の他社から引き抜かれて来た彼、懸案だった○○物産を見事に開拓しちゃったよ。やはり凄腕だよ。 李 :「営業の鬼」と言われる人物だけあるねえ。今まで10人からの営業が当たっても無理だったのにねえ。 山田:その報賞として、社長から金一封と50万円からする時計をもらったそうだ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型の用法は「~を越える~」「~以上ある~」という意味を表します。話者とって数量がとても多いと感じられるとき使われる文型で、距離・重量・高さなどには「~からある」、金額には「~からする」、人数には「~からの人」が使われます。  例えば実際は二万円でも、その数量をどう感じるかで表現は異なります。   二万円ぽっちの時計 <その時計をとても安いと感じている>   二万円しかない時計 <その時計を安いと感じている>   二万円ばかりする時計<その時計を少し高いと感じている>   二万円からする時計 <その時計をとても高いと感じている> § 例文 § 1.彼は50キロからあるバーベルを軽々と持ち上げた。 2.この骨董品は明代の物で、買うとなると50万円からします。 3.この前の地震では、二万人からの人々が家を失い、五千人からの人が死にました。 4.この湖は、深いところは三百メートルからあります。 5.数名しか採用しない会社の社員募集に、五百人からの人が応募した。 ★ 例題 ★ 1) 二億円から(ある/する)絵画をぽんと買っていく(なんか/なんて)、一体どんな人なん(だい/かい)? 2) 日本人が中学まで( )習う教育漢字だけで881字からある。非漢字圏の学生たちから、とても(覚える→   )切れないという悲鳴( )聞こえてくる。 (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/かもしれない/は 2) で/に(「へ」も可)/入れ(V〔ます〕形+なさい) 049 *~から言うと/*~から言えば/*~から言って 名詞: ×   +  から言うと            から言えば            から言って ♪ 会話 ♪ 李 :営業担当として言わせていただくと、新製品の開発はできるだけ急いでいただきたいです。 佐藤:今一歩のところまで来てはいるんですが、現状から言って、もう一ヶ月程度はみてください。 課長:他社に先を越されては困るし、かといって品質に問題があっても困る。とにかく、部長の指示を仰ごう。 ♯ 解説 ♭  「~から言うと/*~から言えば/*~から言って」は「~ の観点から判断して言えば ~」という意味で、用法の差はありませんが、仮定の「と/ば」がないため、「~から言って」は断定に近い語感になります。  同義表現に「~から見ると/~から見れば/~から見て/~から見たら」(→文型059)、「~からすると/~からすれば/~からして」(→文型052)がありますから、各項を参照してください。 § 例文 § 1.A社の製品は、デザインから言えばB社に勝るが、実用性から言えば劣っている。 2.彼の性格から言って、その程度のことでくよくよしたりしないでしょう。 3.健康という観点から言えば、激しい運動は「百害あって一利なし」です。\ 4.この成績から言うと、○○大学は少し無理かと思う。 5.交渉の進展状況から言って、今夜が山場になるだろう。 ★ 例題 ★ 1) 親の気持ち(から言えば/からと言って)、血を分けた自分の子供(ほど/しか)大切なもの(は/が)ない。 2) 気候( )( )言うと、北海道の方( )北京より寒いんじゃない( )と思える。 (^^)前課の解答(^^) 1) する/なんて(→文型274)/だい(→文型129) 2) に(→文型402)/覚え(~切る→文型067)/が(自V) 050 *~からこそ/~ばこそ 名詞    : だ/である         +  からこそ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーだ/である> 名詞    : であれば/なら       +  こそ 動詞・形容詞:仮定形<ナ形ーであれば/なら> ♪ 会話 ♪ 良子:心配してると思えばこそ、こうして電話してるのに、いきなり怒鳴りつけることもないでしょ。 李 :一体全体、今何時だと思ってるんだ。帰りが遅すぎるから、何かあったのかと心配してたんだぞ。 良子:それにしても、もう少し優しく話してくれたっていいんじゃないの? ♯ 解説 ♭  「~からこそ/~ばこそ」は、どちらも「正に~だから~」と原因・理由を強調する表現です。副助詞「こそ」と結びついて、文末が「~んです」と呼応するのが特徴です。「~からこそ」と「~<仮定形>ばこそ」の多くは置き換え可能ですが、仮定形の「~ば」は文末に完了形(「た」形)がとれない制約があるため、例文4、5のような場合は不自然になります。  君が来いと ○言ったからこそ 僕は来たんだ。        ×言えばこそ § 例文 § 1.親は子を愛するからこそ、厳しくしかることもある。 2.健康だからこそ、幸せな日々が過ごせるのよ。 3.君のことを心配すればこそ、注意しているんです。 4.この作品は、妻の協力があったからこそ完成したのです。 5.私の話に耳を貸さなかったからこそ、失敗したんだ。こうなっては、もう取り返しがつかない。 ★ 例題 ★ 1) 苦し(さ/み)が多いほど、また喜びも大きい。そして、悲し(さ/み)が多いほど、人に優しくなれる。このように人生は、表裏一体だ(からこそ/からには)おもしろいんじゃないか。 2) 希望が(ある→    )ばこそ、人は(生きる→       )いけるんじゃないでしょう( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) から言えば/ほど/は 2) から/が/か 051 *~からして 名詞: ×  + からして ♪ 会話 ♪ 李 :今度の新入社員、どうなってるんだ。お辞儀の仕方からして、まったくなってないよ。 山田:ぎこちないくらいだと可愛いんだけど・・・。それに身なりからして堅気の会社員には見えないな。 課長:彼らは君たちにない何かを持っているんだから、一日も早く戦力化する方法を考えようや。 ♯ 解説 ♭  「~からして」は主に例文1、2のように「~をはじめとして、その他はもちろん~」という意味を表しますが、「~をはじめとして」(→文型474)の強調と考えていいでしょう。それ以外にも例文3のように「から」の強調として使われます。また、例文4、5のように「~から判断して」を意味することもありますが、その場合は、次項の「~からすると/~からすれば」(→文型052)と同義表現になります。<≒をはじめとして>   A国は食料からして欠乏状態だから、衣類・燃料も欠乏しているに違いな   い。<≒から判断して>    A国の深刻な食糧事情からして、衣類・燃料も欠乏しているに違いない。 § 例文 § 1.金持ちというのは、靴からして我々庶民の物とは違うね。 2.あいつは言葉遣いからして生意気だ。 3.天才というのは、もう生まれたときからして凡人とは違っているらしい。 4.最近の株価の動きからして、景気は上向いていると言えるでしょう。 5.あの先生、顔つきからして恐そうねえ。 ★ 例題 ★ 1) 一流モデル(ともなると/ともすると)、歩き方(と/や)身のこなし方(からして/からすれば)、(どこが/どこか)普通の人と違って優雅だ。 2) 先日会った老人は、その身なりや上品( )言葉遣い( )( )して、一角の人物だ( )すぐわかりました。 (^^)前課の解答(^^) 1) み(→文型097)/み/からこそ 2) あれ/生きて(~ていく→文型177)/か 052 *~からすると/*~からすれば 名詞: ×  + からすると          からすれば ♪ 会話 ♪ 佐藤:この一泊二日の職場旅行のプラン、どう思う?僕にしてみれば、ずいぶん思い切って張り込んだんだけど。 百恵:温泉というのはありふれてるんじゃない? 李 :正直に言わせてもらうけど、この値段からすると中身も余り期待できないんじゃないかなあ。 佐藤:何もかもうまくいく案なんてないよ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~から判断すると~」という意味を表す表現で、この「する」には「見る・言う・考える」などの多くの語義が含まれています。なお、以下はほぼ同義表現です。  この成績から    すると/すれば/して    言うと/言えば/言って(→文型049)    見ると/見れば/見て (→文型059)  合格は間違いないと思う。 § 例文 § 1.儲けしか考えない企業は、長期的な観点からすると、将来性はありませんねえ。 2.わが家の経済状態からすると、家を買うのは夢のまた夢だ。 3.法律的見地からすれば責任はなくても、道義的責任は免れない。 4.男からすれば、家族のために働いているのに、妻から粗大ゴミ扱いされたのではたまらないよ。 5.妻の立場からすれば、そう考えるのは当然でしょうね。 ★ 例題 ★ 1) 今年の天候(からして/からこそ)、小豆の収穫はあまり期待(できる/でき)(そうではない/そうもない)。 2) 患者の立場からすると、薬の成分は何( )、副作用はどう( )、無関心では(いられる→       )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ともなると(→文型253)/や/からして/どこか 2) な(ナ形)/から/と(内容を示す「~と」) 053 *~からと言って/*~からって/~からとて 名詞    :    だ     + からと言って ~ ない 動詞・形容詞::普通形<ナ形ーだ>   からって                    からとて ♪ 会話 ♪ 李 :景気がいくらいいからと言って、何もしなくても自然に物が売れるってわけじゃあないよ。 山田:でも店の前でやたらに呼び込みをしたからって、お客が来てくれるとは限らないよ。 課長:しかし、客足が少ないからと言って、むざむざと店をたたむわけにはいかないからなあ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「いくら~(の)理由があったとしても~」という意味を表します。「~からと言って」の短い形が「~からって」で、文語が「~からとて」ですが、意味・用法は同じです。これらの文型はどれも「~ても」で置き換えることが可能ですが、この文型は文末に否定判断を加えるのが特徴で、多くは「~からと言って~ない」と呼応します。   熱が 熱が下がっても(≒ 下がったからと言って)、安心してはいけない。   誰が反対しても(×反対したからと言って)、私は行く。 § 例文 § 1.日本人だからと言って、正しく敬語が使えるとは限らない。 2.相手が弱そうに見えるからって、決して油断するな。 3.苦しいからとて、途中で投げ出すわけにはいかない。 4.健康に自信があるからって、そんなに無理をしてると体を壊しますよ。 5.夫婦だからと言って、お互いに何の秘密もないなどということはあり得ませんよ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「いくら~(の)理由があったとしても~」という意味を表します。「~からと言って」の短い形が「~からって」で、文語が「~からとて」ですが、意味・用法は同じです。これらの文型はどれも「~ても」で置き換えることが可能ですが、この文型は文末に否定判断を加えるのが特徴で、多くは「~からと言って~ない」と呼応します。   熱が 熱が下がっても(≒ 下がったからと言って)、安心してはいけない。   誰が反対しても(×反対したからと言って)、私は行く。 § 例文 § 1) ボーナスが出た(からには/からと言って)、無駄遣いをするな。社会人になった(からには/からといって)、いざというの時のための蓄えをし(ておけ/てしまえ)。2) 一度( )二度、受験に(失敗する→     )からって、(しょげる→   )込むことはないよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) からして/でき/そうもない(様態「そうだ」の否定形に注意) 2) か/か/いられない(~てはいられない:→191P) 054 ~から成る 名詞: ×  +  から成る ♪ 会話 ♪ 課長:今日の慰労会には、各地の販売代理店の社長などの幹部から成る方々がお集まりだ。 山田:八時からカラオケ大会が予定されていますが、会場設定の事前チェックが必要ですね。 李 :でも、百人からの団体となると、まとまりがつかなくなりそうで、何かと気を使いますね。 ♯ 解説 ♭  「~から成る」は「~は~ の(要素・部分・材料)からできている」という意味を表す表現です。類形文型に「~からある」(→文型048)があり、混同しやすいので注意しましょう。   当校のサッカーチームは20人の部員から成る(×からある)。   試験まで、まだ10日からある(×から成る)。 § 例文 § 1.水は水素と酸素から成る。 2.この全集は、全部で五巻から成っている。 3.大小五十の島々から成るこの○○諸島は、美しい珊瑚礁でも有名である。 4.日本の国会は、衆議院と参議院から成り、国会は国の最高決定機関である。 5.今回の訪米使節団は、総勢20名の国会議員と経済界代表から成っている。 ★ 例題 ★ 1) 仏教(によって/によると)、人間の欲望は108の煩悩 (からなる/からある)と(言っている/言われている)。 2) その草野球チームは、同じ地域( )住む様々( )職業の人たち( )( )成っていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) からと言って/からには(→文型056)/ておけ 2) や/失敗した/しょげ(~込む→文型094) 055 *~から~にかけて/*~から~にかけ 名詞・数詞:×  +  から              ・ 名詞・数詞:×  +  にかけて             にかけての + 名詞             にかけ ♪ 会話 ♪ 李 :夜半から明け方にかけて風が強かったけど、君、気がついたかい? 良子:雨もどしゃ降りだったらしくて、台所から居間にかけてびしょ濡れよ。 李 :それで濡れたタオルが、何枚も外の物干しにかけてあるんだね。 ♯ 解説 ♭  「~から~にかけて」は「~から~まで」のグループで、時・場所・空間を表す名詞と結びついて、「~から ~まで、ずっと~」を意味する表現です。  類似表現に「~から~にわたって」(→文型057)がありますが、日時・場所の起点と終点を特定し、その継続性を強調するときは「~から~にかけて」が使われ、「~から~にわたって」は使えません。逆に、○ヶ月・○年・○週間・○日間のように期間を述べるときは「~から~にわたって」が使われ、「~から~にかけて」が使えません。→ 例題1)   今月の十日から二十日にかけて(×にわたって)、研究会が開かれた。   今月の十日から十日間にわたって(×にかけて)、研究会が開かれた。 § 例文 § 1.六月から七月にかけて、日本は梅雨のシーズンです。 2.名古屋から大阪にかけて、高速道路は百キロ以上にわたる大渋滞が続いています。 3.日本では年末から正月にかけて、JRも飛行機も帰省ラッシュになります。 4.金曜日から日曜日にかけて、新宿の夜はにぎわいます。 5.額から眉にかけて、三日月形の刀傷がある。 ★ 例題 ★ 1) 中央線は、(たった今/ただ今)、新宿駅から中野駅(にわたって/にかけて)、信号故障の(ために/せいで/おかげで)不通となっております。 2) 私は中学( )( )高校( )かけて、甲子園( )目指して、野球( )熱中していました。 (^^)前課の解答(^^) 1) によると(→文型350)/からなる/言われている(→文型221) 2) に/な(漢語形容詞はナ形)/から 056 *~からには/*~からは 名詞    :   である       +  からには 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーである>      からは ♪ 会話 ♪ 課長:この仕事、わが課が引き受けたからには、立派にやり遂げたいと思う。なんだか闘志が湧いてきたぞ。 李 :課の名誉がかかっているからには、万が一にも失敗は許されませんね。 山田:不肖、私が助っ人に来たからはご安心ください。 李 :やけに大口をたたくねえ。お前が一番心配なんだよ。 ♯ 解説 ♭  「~からには/~からは」は「~だから、当然/必ず ~」という意味を表す「から」系の原因・理由表現で、文末には「~なければならない」や「~べきだ」(→文型382)、「~つもりだ」や「~たい」などの義務や意志・希望の表現、「~はずだ」(→文型367)や「~にちがいない」(→文型305)などの断定判断が多く現れます。この文型は、「~以上」(→文009)や「上は」(→文型015)と同義表現となります。   原因・理由の表現には「から」系、「ので」系、「て」系があります。大きく分ければ、「から」系は未定・未来・意志表現に、「ので」系は既定や過去表現に、「て」系は形容詞や状態の自然発生に使われます。詳しくは「資料、」を参照してください。 § 例文 § 1.こんなに安いからには、きっと偽物に違いないよ。 2.共同生活をするからには、そこには最低限の規則が必要となる。 3.誰だって闘うからには勝ちたいと思う。それは人情だ。 4.こうなったからには、もう、運を天に任せて、捨て身でぶつかるしかない。\ 5.彼があんなに自信を持って断言するからには、何か根拠があるんだと思う。 ★ 例題 ★ 1) そこ(ほど/まで)言う(からこそ/からには)、私が犯人だという証拠があって(の/×)ことなんだろうねえ。 2) 君( )我々の秘密を知られた( )( )には、気の毒だが、生かしておく( )( )にはいかない。 (^^)前課の解答(^^) 1) ただ今/にかけて/ために(客観的に理由伝えるときは「ために」) 2) から/に/を(→文型479)/に(対象) 057 *(~から)~にわたって/*(~から)~にわたる 名詞・数詞: ×  +  から               ・ 名詞・数詞: ×  +  にわたって              にわたり              にわたる + 名詞 ♪ 会話 ♪ 部長:今朝の経営会議で、社長から直々に新製品計画の詳細にわたる説明があった。 李 :説明は新製品の商品企画から補修計画にまでわたったのですか? 部長:うん、三時間にもなって、社長もお疲れのようだった。不謹慎なようだが、聞いてる方も疲れたよ。 ♯ 解説 ♭  「(~から)~にわたって」は期間・場所・空間を表す名詞や数量を表す語について、その「(~から~までの)およその範囲内で」を表します。類義表現である「~から~にかけて」(→文型055)との用法の違いを簡単に言えば、「~から~にかけて」は<線>、「~から~にわたって」は<面>の感覚です。この文型は起点を明示しないで、単独で「~にわたって/~にわたり」と使われることも多く、現象や動作が時間・空間の範囲全体に広がっている語感をもっています。名詞を修飾するときは「~にわたる+名詞」の形を取ります。 § 例文 § 1.九州地方から四国地方にわたって、暴風雨に見舞われ、 多くの家屋が倒壊した。 2.十年にわたる内戦に次ぐ内戦で、国土は荒れ果てた。 3.長年にわたる経験のなかから生まれた知恵は、学問的知識に勝ることもある。 4.日本と大陸の間には二千年にわたる交流の歴史がある。 5.その腎臓移植手術は、六時間にわたる大手術となった。 ★ 例題 ★ 1) ただ今、関東南部一帯(にかけて/にわたって)、震度五の地震が(あります/ありました)。沿海部では津波の(嫌い/恐れ)もありますから、御注意ください。 2) この問題は延べ十回( )わたって議論された( )、結論には(至った→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) まで(形に注意:「それほど」「そこまで」)/からには/の 2) に(受身文)/から/わけ(→文型457) 058 *~から~に至るまで 名詞・数詞: ×  +   から               ・ 名詞・数詞: ×  +   に至るまで               に至るまでの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 山田:彼は面倒見がいいね。帰国者のために、住む所から働き口の世話に至るまで至れり尽くせりだ。 佐藤:その中国帰国者のグループは、男性ばかりでなく女性も混じっていて、年齢も子供から老人までだろ。 山田:うん。あれじゃあ、朝早くから夜中まで、のんびり休める暇なんてないんじゃないかな。 ♯ 解説 ♭  「(~から)~にわたって」は期間・場所・空間を表す名詞や数量を表す語について、その「(~から~までの)およその範囲内で」を表します。類義表現である「~から~にかけて」(→文型055)との用法の違いを簡単に言えば、「~から~にかけて」は<線>、「~から~にわたって」は<面>の感覚です。この文型は起点を明示しないで、単独で「~にわたって/~にわたり」と使われることも多く、現象や動作が時間・空間の範囲全体に広がっている語感をもっています。名詞を修飾するときは「~にわたる+名詞」の形を取ります。 § 例文 § 1.「赤トンボ」は大人から子供に至るまで、日本人なら誰でも知っている歌です。 2.当社は設計から施工に至るまで、一切をお引き受けいたします。 3.借金の額に至るまで、根ほり葉ほり聞かれた。 4.「出会いから新婚旅行に至るまで」、これがわが結婚相談所のモットーです。 5.先の戦争は開戦から敗戦に至るまで、多くの謎が存在する。 ★ 例題 ★ 1) 幼児期から老年期(まで/に至るまで)の生涯教育という観点が、最近(になって/にして)注目(して/されて)きた。 2) この旅館は、細部に至る( )( )、心( )こもっていて、サービスが(行き届く→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) にわたって/ありました/恐れ(→文型020/→文型063) 2) に/が(逆説)/至らなかった 059 *~から見ると/*~から見れば/*~から見て 名詞: ×  +  から見ると           から見たら           から見れば           から見て ♪ 会話 ♪ 部長:私の目から見ても素晴らしい製品だ。開発担当の諸君には、これまで本当に苦労をかけた。 李 :価格性能比から見ると確かに画期的ですが、製造面から見たらどうなんでしょうね。 部長:工場長の表情から見ると、決して楽観できなさそうだよ。この製品は正に新技術の固まりだ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「~から見て判断すると」という意味を表す表現で、「~から言うと/~から言えば/~から言って」(→文型049)、「~からすると/~からすれば」(→文型052)と同義表現です。視覚判断や、他の意見・評価と比較・対比が強調されることが特徴と言えるでしょう。 § 例文 § 1.子供の頃から見ると、世の中、ずいぶん豊かになったものだ。 2.卒業当時から見たら、格段に会話力が進歩したね。 3.大人の目から見ればくだらないと思える物も、子供には宝物だったりする。 4.動物たちから見れば、人間ほど残酷な生き物はいないだろうよ。 5.外見から見て、まともな職業に就いている人とは思えませんでした。 ★ 例題 ★ 1) 国民の目(によると/から見ると)、政策不在の権力争い(ほど/しか/だけ)情けないもの(は/が)ない。 2) 漢字は、その(作られる→     )方と性質から見て、(大きい→  )六つ( )分けられます。 (^^)前課の解答(^^) 1) に至るまで(△まで)/になって/されて(受身形) 2) まで/の(「が」も可)/行き届いている(辞書形は未来) 060 *~ かわりに 名詞    :    の      +   かわりに 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 小孫:頑張ってるのに日本語が上達しなくて・・・。 良子:あの有名な兎と亀のかけっこの話を知ってる? 小孫:兎が高をくくって、途中で昼寝してしまい、亀に追い越されたっていうあの話? 良子:あなたは進歩が遅いかもしれないけど、そのかわりに着実さがあるわ。それがあなたの大きな取り柄だわ。 ♯ 解説 ♭  「かわる」は漢字で「換わる/替わる/代わる/変わる」と書くように多義語です。「~ かわりに」の用法は大きく分けて、例文1の「~の代理に」、例文2の「~の代理・代替に」、例文3、4の「~けれども」、例文5の「~交換・代償に」という四つの意味に分かれます。どの意味で使われているかは、文脈から理解する以外にありません。この中で注意するのは、交替から対比へと意味が拡大した「AけれどもB」という逆説の表現でしょう。  なお、例文1の代理の用法の時には「名詞+にかわって」(→文型303)の形も使えます。   社長にかわって(・のかわりに)、専務が出席することになった。 § 例文 § 1.この仕事は君の方が適任だ。僕のかわりに君がやってくれないだろうか。 2.「戦時中はご飯のかわりにさつまいもを食べた」という話を母から聞いたことがある。 3.このアパートは駅に近くて便利なかわりに、家賃が高いのが玉に瑕だ。 4.この種の商売は儲けも大きいかわりに、リスクも大きい。 5.先日おごってもらったかわりに、今日は僕がおごるよ。 ★ 例題 ★ 1) 僕が日本語を教え(てあげる/てくれる)(かわりに/にかわって)、君が中国語を教えて(あげないか/くれないか)。 2) この車はガソリン( )食わないかわり( )、スピー ド( )出ない( )が難点だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) から見ると/ほど/は(~ほど~はない→395P) 2) 作られ(方法)/大きく/に(「~を~に分ける」の受身文) 061 ~きっての 名詞(集団・組織を表すもの): ×  + きっての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :日本きっての名勝古跡というと、どこかなあ。 良子:難しい質問だけど、私なら京都の嵐山を挙げるわ。 李 :あそこもいいけど、奈良のひなびた雰囲気も捨てられないなあ。 良子:人によって好きなところは違うってことね。近くでは箱根が一番好きよ。 ♯ 解説 ♭  「きっての」は「~の範囲内で最も優れている」という意味を表します。前に来る語は組織・団体などの名称です。これは最上級を表す比較文型の一種でしから、「この町きっての物知り=この町で一番の物知り」のように「~の中で、一番の~」を使っても表せます。 § 例文 § 1.○○先生は当代きっての日本画家としての誉れが高い。 2.何と言っても、彼女はわが校きっての秀才と言えるだろう。 3.彼はこの町きっての人気者で、何か催し物があると引っ張りだこだ。 4.専務は会社きっての切れ者と噂されている。 5.わが社きっての歌自慢と言えば、李君をおいてほかにいないだろう。 ★ 例題 ★ 1) 村(あっての/きっての)力自慢だったが、東京に来(てみると/てみれば)、上には上がある(のだ/ものだ)と思い知らされた 2) 彼はこの会社きって( )中国通という評判だ( )、果たして本当なん(だ→     )か。 (^^)前課の解答(^^) 1) てあげる/かわりに(交換・代償)/くれないか(→文型182) 2) を(他V)/に/が(自V)/の(→文型354) 062 *~ 気味 名詞: ×    +  気味だ 動詞:[ます]形     気味で             気味の + 名詞 ♪ 会話 ♪ 小孫:大学入試が近づいているのに、少しも勉強が進まないんだ。それに全然自信が持てないし・・・。 良子:少々、焦り気味のようねえ。そんな時は思い切って山にでも行って、気晴らしした方がいいわよ。 小孫:そんな心境にはとてもなれないよ。それにこの数日、風邪気味で冴えないし・・・。 ♯ 解説 ♭  「気味」は「気味の悪い男が、家の周りをうろうろしている」のように、元々嫌な感触や感情を表す語です。  「~気味」はそれが接尾語化したもので、「(体や心に)少し~と感じる状態」という意味を表しますが、「風邪気味・疲れ気味・下がり気味・上がり気味・遅れ気味…」など、不満やよくないと評価する気持ちを込めて使わる場合がほとんどです。  注意してほしいのは、「疲れがち・下がりがち…」などの類義文型の「~がち」(→文型037)との違いですが、「~がち」は「~する回数や傾向が多い」という意味ですから、用法に違いが生じます。→例題1) § 例文 § 1.就職してからは、運動不足のせいか、少し肥り気味だ。\ 2.ちょっとやせ気味で、目つきの鋭い男でした。 3.彼女は離婚してから、少しヒステリー気味です。 4.どうも工事の進行が遅れ気味だ。もっと現場にハッパをかけてくれ。 5.一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、最近、A歌手の人気も下がり気味だねえ。 ★ 例題 ★ 1) 納期に(迫り/迫られ)と、休日(だけ/すら)返上して働いているので、工員達は疲れ(気味/がち)です。 2) 君は少し(うぬぼれる→      )気味じゃないか。本当の(強い→  )とは、自分を拠り所に(する→   )ながら、うぬぼれでない自信をもつことだよ。 (^^)前課の解答(^^) 1)    きっての/てみると(過去文では「と」)/ものだ(→文型420) 2) の/が(逆説)/だろうか(→文型161) 063 ~嫌いがある 名詞:  の     + 嫌いがある 動詞:原形/ない形 ♪ 会話 ♪ 李 :深刻な顔して、何を考え込んでいるんだい? 良子:妹にいい就職先が見つかるかどうか心配で・・・。 李 :まだ、五月だよ。一年も先の事じゃないか。「来年のことを言うと鬼が笑う」ってさ。 良子:あなたは現実を甘く見る嫌いがあるわね。もう会社まわりしてるクラスメートもいるのよ。 ♯ 解説 ♭  「~嫌いがある」は「~という良くない傾向がある」という意味を表します。ほとんどは人が主語の文ですが、仮にもの・ことが主語になるときも背後に人の責任が存在している場合に使われます。ですから自然現象や、単に回数が多いことを表すときは使われません。その点、同義語に「~がちだ」(→文型037)は、回数・傾向・自然現象まで広範に使えます。どちらも「ともすれば/よく/しばしば」などの副詞と呼応することが多いので、一緒に覚えておきましょう。→例題1)   年の暮れは交通事故が多発しがちだ(・多発する嫌いがある)。   明日の天気は曇りがちになる(×曇る嫌いがある)。 § 例文 § 1.この消費社会は、物を使い捨てにする嫌いがある。 2.彼は協調性はあるが、決断力に欠ける嫌いがある。 3.最近の小説は、内容が浅薄な嫌いがある。(「ナ形」の例) 4.どうも彼は結論だけ言って、丁寧に説明しようとしない嫌いがあるようだ。 5.若者は、その理想主義から、ともすれば過激な行動に走る嫌いがある。 ★ 例題 ★ 1) 君は(もしかすると/ともすると)、独断専行に走り(がちだ/嫌いがある)から、もっと周りに気を配る(ように/みたいに)心がけた方がいい。 2) 日本の企業( )は学歴偏重( )嫌いがあるが、これでは国際競争に(生き残れる→      )まい。 (^^)前課の解答(^^) 1) 迫られ(受身)/すら(→文型100)/気味(~がち:→文型037) 2) うぬぼれ/強さ(→文型097)/し(~ながら:→文型270) 064 *~ きりだ/*~きり~ない 名詞・これ・それ・あれ: ×  +  (っ)きりだ 動詞         :た形     (っ)きり ~ ない                    (っ)きりで ~ ない ♪ 会話 ♪ 李 :給料日の前は辛いよ。二千円しか残っていないから、寝て暮らすしかないよ。 良子:あっ、思い出したわ!この前の二万円貸したきりで、まだ返してもらってないわ。 李 :しまった!口は災いの元だ。 良子:「後悔先にたたず」ということわざもあるわ。 ♯ 解説 ♭  「~きりだ」は名詞・数量、或いは「こ・そ・あ」について、「~だけだ」と同じ意味を表しますが、「非常に僅かだ/とても不足している」といった話者の感情が強調されます。また、動詞の完了形と結びついて「~したきり~ない」という文型を作りますが、「~したのが最後で、その後、ずっと~ない」という意味を表します。この表現は「~したまま~ない」と「まま」(→文型406)を使っても表せますが、「まま」は「~の状態を変えない」という意味ですから、不安や心配や失望の感情は「~したきり~ない」の方が強く現れますし、例文によっては「きり」と「まま」の意味の違いが用法の違いとして現れる場合もあります。→例題1) § 例文 § 1.歳をとって、ひとりっきりで暮らすのは心細いものです。自分しか頼れる者がいませんからねえ。 2.今日は特別に許しますが、これっきりですよ。 3.張君はアメリカに行ったきり、何の音沙汰もなくなった。 4.張先生とは、五年前にお会いしたきりです。 5.彼に声をかけたが、ふんとそっぽを向いたきり、見向きもしなかった。 ★ 例題 ★ 1) その報告書には(じっと/ざっと)目を通した(きり/まま)で、細かい内容(まで/だけ/しか)はよく覚えていません。 2) 彼女は(うつむく→     )きり、何を尋ねても一言( )口を(きく→    )とはしなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) ともすると/がち(Vます形+)/ように(~みたいだ→文型408) 2) に/の/生き残れ(一段動詞+まい→文型398) 065 ~ きりしか~ない/~だけしか~ない 名詞(+格助詞 : ×  +  きりしか ~ ない これ・それ・あれ: ×     だけしか ~ ない 数詞      : ×                          ♪ 会話 ♪ 李 :すまんが、給料日まで一万円ほど貸してもらえないかなあ。恩にきるから。 良子:またなの?返せるめどがあるの?やはり、私が財布の紐を握ってて正解だったわ。待ってて。あっ!5千円きりしか残っていないわ。 李 :あ~あ、いつもわが家は火の車か。 ♯ 解説 ♭  「きり」は名詞や数詞、また「こ・そ・あ」と結びついたとき、「だけ」と同じ意味を表しますが、この「きり」「だけ」が「~しか~ない」と結びついたのがこの文型で、限定を表します。話者の「非常に僅かだ/とても不足している」という感情を一層強調する「~しか~ない」と考えていいでしょう。   500円しかない。   500円だけしかない。   500円きりしかない。 § 例文 § 1.僕の手元には、お金はこれだけしかありません。 2.まだその本は見出しだけしか読んでいないから、感想まではちょっと・・・。 3.彼とは一度きりしか会ったことがないんです。 4.田中角栄は小学校きりしか出ていないが、総理大臣にまで上り詰めた。 5.僕は絵を描くことだけしか能がない男ですが、絵は僕にとって命です。 ★ 例題 ★ 1) その件は彼(だけ/にだけ)しか話さなかったはずな(ので/のに)、なぜ君が知っている(んだい/かい)? 2) 今日、学校( )は僕きりしか(来ている→     )けど、まさか休校( )んじゃないだろうなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ざっと/きり(~まま→文型406)/まで(→文型403) 2) うつむいた/も/きこう(→文型441) 066 ぎりぎり/すれすれ 名詞: ×  +   ぎりぎり  ・            すれすれ  ・ ♪ 会話 ♪ 小孫:辛うじて日本語能力試験一級に合格できました。 李 :おめでとう。で、何点だったの? 小孫:あのう、281点です。 李 :合格点ぎりぎりだね。でも、何はともあれよかった。 小孫:でも、僕のクラスには合格点すれすれの279点で涙を飲んだクラスメートがいるんです。 ♯ 解説 ♭  「ぎりぎり」は例文1のように「境界線や限界」、「すれすれ」は「境界線や限界にとても近いところ」を表す語ですが、同時に名詞に直接つく接尾語の用法をもっています。どちらも置き換えられる例が多いのですが、意味上の違いから、下の例のように用法の違いが生じることがあります。それは、「すれすれ」は境界線に接触していないからです。   発車時間すれすれに(・ぎりぎりに)駅に着いた。   鴎が海面すれすれに(×ぎりぎりに)飛ぶ。 § 例文 § 1.これが譲歩できるギリギリの線です。これ以上は無理です。 2.その川下りの遊覧船は岩すれすれのところを通り、実にスリル満点だった。 3.僕の体すれすれ(×ぎりぎり)のところを車が走り去った。 4.みんなやきもきしているのに、待ち合わせ時間ぎりぎり(?すれすれ)になっても、彼は姿を現さなかった。 5.入学願書の提出の締め切り日ぎりぎり(⇔すれすれ)になっても、彼はまだ願書を書き上げていなかった。 ★ 例題 ★ 1) 昨夜の大雨(で/に)川の水(が/を)増水し、道路(すれすれ/そこそこ)に(さえ/まで)達している。 2) 試験の開始時間ぎりぎり( )なって、彼は試験会場( )(駆ける→ )込んできた。 (^^)前課の解答(^^) 1) にだけ/のに(理由の逆説)/んだい(→文型129) 2) に/来ていない/な 067 *~ 切る/*~切れる/*~切れない 動詞:[ます]形  +  切る              切れる              切れない ♪ 会話 ♪ 山田:あ~あ、やっぱりふられちゃった。でも、彼女のこと、諦め切れないなあ。 佐藤:一度や二度の失恋が何だって言うんだよ。自慢じゃないが、俺なんて失恋歴五回だぞ。 山田:それで悟り切った顔をしてるんだ。 佐藤:おい、それって俺を褒めたつもりかい? ♯ 解説 ♭  「~切る」は元々「噛み切る・叩き切る・焼き切る…」のように切断を意味していますが、終わらせる行為、更に「完全に~する」という意味が派生します。他動詞や「人」が主語になる自動詞(例:走る・歩く・勝つ…)など、動作性動詞につくと行為の完了・完遂を表します。   ビールを一気に飲みきった。   ゴールまで走りきった。  状態性の自動詞や「あきらめる・苦しめる・信じる・軽蔑する…」などの感情・心理を表す動詞につくと極限状態を表します。   腐りきった金権政治を正せ。   親はその子を信じ切っていた。 § 例文 § 1.私は彼女への思いを断ち切ることができない。 2.やった!三年かかったが、ついに原文で源氏物語を読み切ったぞ。 3.わかり切ったことを言うんじゃない。 4.澄み切った青空、なんとさわやかな秋なんだろう。 5.ちょっと彼は自分勝手すぎて、僕はとても付き合いきれませんね。 ★ 例題 ★ 1) 男(っぽく/らしく)、思い(抜いて/切って)彼女に思いを(打ち明けたら/打ち明ければ)どうかしら。当たって砕けろよ。 2) 何があったの( )、彼は(やつれる→     )切った顔( )していた。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(原因・理由)/が(自V)/すれすれ/まで(→文型403) 2) に/に(~に達する)/駆け(→文型094) 068 ~際/~間際 名詞: の     + 際に 動詞:[ます]形       際の + 名詞 名詞: ×     + 間際に 動詞:原形         間際だ               間際の + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:夕べのあなたの寝る間際の一言が気になって、なかなか寝つけなかったのよ。 李 :ごめん、ごめん。提案書が書き終わってなかったもんだから、焦りぎみだったんだ。 良子:間際になって慌てるのは、あなたの悪い癖ね。仕事のとばっちりを受けるのは真っ平御免よ。 ♯ 解説 ♭  「~際/~間際」は「~する直前に~」を表す点では共通しています。なかでも「~間際」は特に用法上の制約もなく、ひろく直前を表すことができます。  一方、「~際」は「名詞+の際」の時は「きわ」と読み、それ以外は「ぎわ」と読みますが、「いまわの際」「往生際」「去り際」など、死や別離と関係する慣用的言い方がほとんどです。  注意してほしいのは、漢字「際」を使って「~とき」を表す「~際(さい)」(→文型098)と読む用法があることです。接続の違いに注意してください。   別れ際(ぎわ)に彼女の手を握った。(動詞[ます]形:~する直前に)   別れる際(さい)に彼女の手を握った。(動詞普通形:~するとき) § 例文 § 1.そのマラソン選手は、ゴール間際で倒れた。 2.出発間際になって、彼は突然「行かない」と言い出した。 3.父は死に際(=いまわの際)に、息子たちへの遺言を残した。 4.父は死ぬ間際に、母の手を握って「ありがとう」と言った。 5.昔の武士は、散り際を大切にしたと言われる。 ★ 例題 ★ 1) 試験(まぎわ/ぎわ/さい)になって慌てることがない(ために/ように)、今から勉強し(てある/ておく)(こと/もの)だね。 2) 帰国間際( )なって、現金とパスポートが(紛失する→       )こと( )気がついた。 (^^)前課の解答(^^) 1) らしく(→文型174/→文型450)/切って/打ち明けたら 2) か(疑問句の「か」)/やつれ/を(→文型466) 069 ~極まる/~極まりない/の極みだ 名詞・名詞句: ×  +  極まる ナ形容詞  : ×     極まりない               の極みだ ♪ 会話 ♪ 李 :小学校の同窓会の折りに、6年の時の担任の先生が感極まって泣き出してね。 良子:先生に昔のお礼をちゃんとしたの。カラオケに夢中だったら、失礼極まりないわよ。 李 :そんなことするはずないだろ。先生が僕のことよく覚えてくれていて感激の極みだったよ。 ♯ 解説 ♭  この三つの表現は形は違っていますが、どれも程度が極度であることを表す点で共通です。漢語名詞やナ形容詞の語幹と結びつくことがほとんどで、いいことにも悪いことにも使われます。同義表現に「名詞+の至りだ」(→文型355)がありますが、いいことに使われます。しかし、どちらも文章語ですから、特に改まった場での会話でない限り、口語として使われることはほとんどありません。 § 例文 § 1.酒・麻雀・女遊びと、君の生活は不健康極まりない。 2.どうして自殺なんて!そんなに苦しんでいたのなら、なぜ一言、僕に話してくれなかったのかと、残念極まる。 3.テレビはつけっぱなし電気もつけっぱなし、不経済極まる。 4.不眠不休で子供を看護をした母も、とうとう疲労の極みに達した。 5.女性一人で、真夜中に見知らぬ外国の街を出歩くなんて、危険極まりないことだ。 ★ 例題 ★ 1) 目上の人(について/に対して)「さん」づけもしないで呼び捨てにする(なんか/なんて)、無礼の(極まる/極みだ)。 2) 老人を食い物( )する霊感商法の手口は、詐欺そのもの( )。(卑劣だ→       )極まりない。 (^^)前課の解答(^^) 1) まぎわ/ように(目的→文型153)/ておく/こと(→文型084) 2) に/紛失している(一般動詞の現在形は「~ている」)/に 070 *~くせに/*~くせして 名詞    :    の      +  くせに 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>    くせして ♪ 会話 ♪ 良子:一日中、ずっと家にいたくせに、部屋が少しも片づいていないじゃないの?大人のくせに、自分の身のまわりの始末もできないのね。 李 :この掃除機、新しいのに力がないよ。 良子:ちょっと、私の話をはぐらかさないでよ。掃除機のせいにするつもり?いいわけもいいとこね。 ♯ 解説 ♭  「~くせに/~くせして」は逆説「のに」のグループですが、非難・軽蔑・反発の感情を強く表します。「のに」に置き換えることができますが、「のに」は失望・残念・不安などの感情が現れます。また、「くせに」は用法上の制約があって、必ず人が主語で、同一主語文でなければ使えません。→例題1)   僕の部屋は風呂もないのに(×くせに)、家賃が六万円もするんです。  この他、「~にもかかわらず」が「のに」のグループですが、客観的な判断を表しています。つまり、話者の感情の違いによって使い分けられているのです。   あいつは金持ち なのに    <残念・失望> けちだ。           のくせに   <非難・蔑視>           にもかかわらず<客観的判断> § 例文 § 1.弱いくせに、口ばかりが達者な奴だ。 2.事情も知らないくせに、他人のことに口を挟むな。 3.わかってもいないくせして、わかったような口を利くな。 4.マイクを握ったら離そうとしない。下手なくせに好きなんだから困ったもんだ。 5.いつもはオートバイを乗り回しているじゃじゃ馬のくせに、見合いとなると神妙にしている。 ★ 例題 ★ 1) 奥さんが必死で働いている(のに/くせに)、彼は家で朝から酒浸りと(なっている/きている)。あれじゃそのうち奥さんに愛想を(つかす/つかされる)よ。 2) 彼は(知る→     )くせに、私( )は(知る→      )ふりをしていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) に対して(→文型322)/なんて(→文型274)/極まる 2) に(「~を食い物にする」は慣用語)/で/卑劣 071 *~くらい/*~頃 数量   : ×  +  ぐらい/ほど/ばかり 名詞   : ×  +  ぐらい/ほど こ・そ・あ: ×  +  くらい 日時・年齢: ×  +  ぐらい/頃 ♪ 会話 ♪ 山田:6時頃から2時間ぐらいどうだい、一杯?残業続きだから、たまには気分転換でもしようよ。 李 :いいねえ、隣のビルの屋上ビアガーデンはどう?ところで、何人ぐらい集まりそうなの? 山田:5人ほどだよ。いつもの顔ぶれさ。 李 :せっかくだから、課長も誘ってみたら? ♯ 解説 ♭  だいたいの数量を表したいときは「~くらい」を使えば、どんな場合も可能です。読み方は人によって少し異なるのですが、「こ・そ・あ」につくときは「くらい」、それ以外は「ぐらい」と覚えてください。  「10時頃・三月頃…」のような時を表す数詞につく「~頃」の使い方は初級で習ったと思いますが、「終わり頃・若い頃・その頃…」のように数字を含まない名詞・形容詞にいて「~のとき/~の時期」を表します。後者は概数ではないので、「ぐらい」が使えません。  時以外の数量につくときには「ぐらい・ほど・ばかり」のどれも概数表現として使えますが、「10人ぐらい」は9~11人、「10人ほど」は多くても10人(9~10人)、「10人ばかり」はやや多い10~11人といった語感を持っています。 § 例文 § 1.風邪で三日ぐらい(⇔ほど/ばかり)休んだ。 2.それはメロンぐらい(⇔ほど>の大きさでした。 3.一ヶ月ぐらい(⇔ほど/⇔ばかり)帰国しますが、留守中よろしくお願いします。 4.今日、帰りは八時ぐらい(⇔頃>になるよ。 5.買ってあげてもいいけど、その自転車の値段はどのくらい(⇔どれほど)するの? ★ 例題 ★ 1) わずか一年(ぐらい/頃)で、こんなに日本語が上手に話せる(ように/ことに)なる(というのは/とは)驚きましたよ。 2) さすが元電気技師( )( )あって、壊れたテレビをたった30分ぐらい( )修理(する→  )終えた。 (^^)前課の解答(^^) 1) のに/ときている(→文型229)/つかされる(受身) 2) 知っている/に/知らない(→文型378) 072 *~くらい 名詞    :    ×    +  くらい(ぐらい) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> (注:「こ・そ・あ・ど」接続する時を除けば「ぐらい」が普通) ♪ 会話 ♪ 良子:わざわざ出かけて来たのだから、お茶の一杯ぐらい入れてくれてもいいと思うけど。 小孫:揚げ物の最中だから待ってよ。一口食べれば、僕の料理の腕がどのくらいかわかるよ。 良子:それにしても孫君はまめね。いつも自炊してるの? 小孫:自炊しなけりゃ、僕たち留学生は生活できないよ。 ♯ 解説 ♭  程度を表す「~くらい」の用法ですが、総じて言えるのは低いレベルの例示に多く使われます。「~ほど」(→文型392)も同様に程度を表します。  例えば下の例で「~ほど」を使った場合、「~ぐらい」で表現された「新聞を読むわずかな時間もない」という話者の失望や残念な感情は消え、普通の客観的な程度の例示になります。   忙しくて、例えば新聞を読む時間がないぐらいだ(・ほどだ)。  そして、例文3~5や下例のように、「そんな簡単でささやかなこと」という最低限の程度を例示する文では「ほど」が使えなります。→例題1)   ひらがなぐらい(×ほど)読めますよ。馬鹿にしないでください。   遅れるときは電話ぐらい(×ほど)しなさい。 § 例文 § 1.この一ヶ月というもの、忙しくて新聞を読む暇もないぐらい(⇔ほど)だ。 2. 彼女の清潔癖は、ほとんど病的なぐらい(⇔ほど)だった。 3.転んでちょっとけがをしたぐらいで、大げさに騒ぐな。 4.手紙の一本ぐらいくれてもいいのに、日本に行ってから何の音沙汰もない。 5.食事の前には、手ぐらい洗いなさい。 ★ 例題 ★ 1) 馬鹿(に/を)しないでください。これ(くらい/ほど)のことは、子供に(だって/って)できますよ。 2) その事件が(起こる→    )のは、それは(不気味だ→     )ぐらい(静かだ→     )ある夜のことだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぐらい/ように(→文型446)/とは(→文型242) 2) だけ(~だけあって→文型132)/で/し(→文型429) 073 *~ぐらい~はない 名詞    :    ×      + ぐらい ~ はない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> (注:「こ・そ・あ・ど」接続する時を除けば「ぐらい」が普通) ♪ 会話 ♪ 佐藤:君と会ってるときは楽しいけど、別れるときぐらい辛いことはないよ。 真理:毎日会えるのは嬉しいけど、会社の方も頑張ってね。 佐藤:ありがとう。でも、会わなきゃ夜が長すぎるよ。ひとりだったら、もうとっくに崩れてるな。 真理:私だって後ろ髪を引かれる思いなのよ。 ♯ 解説 ♭  「~ぐらい~はない」は「他と比べても、それ以上のものはない」という最高の程度を表します。この用例は「~ほど~はない」(→文型395)文型を使って表せます。   自分の家ぐらい(・ほど)いいところはない。   あの人ぐらい(・ほど)自分勝手な人はいない。  しかし、蔑視や嫌悪の感情を含む時は「ぐらい~はない」の方が多く使われます。つまり、驚きや怒りや蔑視などの話者の感情が強く表れるのは「ぐらい~はない」で、「~ほど~はない」は客観的な説明になります。 § 例文 § 1.言葉もわからない外国で、病気をするぐらい不安なことはありません。 2.何もすることがないぐらい、辛いことはない。 3.陰口ぐらい聞いていて嫌なものはない。 4.お前ぐらい馬鹿な奴は見たことがない。 5.見せかけの親切ぐらい、人を傷つけるものはない。 ★ 例題 ★ 1) あの時ぐらい(恥ずかしく/恥ずかしい)思いをしたこと(は/が)なかった。穴があったら入りたいぐらい(だ/だった)よ。 2) あいつ( )( )( )むかつく奴( )いない。顔を見る( )さえ(嫌だ→     )ぐらいだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/くらい/だって(「~でも」の口語形→文型198) 2) 起こった/不気味な(ナ形)/静かな(ナ形) 074 ~ぐらいなら、(むしろ)~ 名詞    :  ×      +  ぐらいなら 、(むしろ)~ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> (注:「こ・そ・あ・ど」接続する時を除けば「ぐらい」が普通) ♪ 会話 ♪ 李 :あれっ、また計算が合わないや。 山田:帰って休んだ方がいいよ。疲れがたまってるんだろ。 李 :女房からなんだかんだと小言を言われるぐらいなら、会社にいた方がずっと気楽なんだよ。 山田:そんな思いをするぐらいなら、いっそ結婚しなければよかったのに。 ♯ 解説 ♭  「Aぐらいなら、(むしろ)B」文型は、多くは文末で「~方がいい/方がましだ/~なさい」などと呼応します。そして例文1~4のように、最低の事態Aを条件にして、そのAを強く否定し、対立するBの選択を打ち出す表現です。上の例文は全て「~より、むしろ~」を使って表すことができますが、相手に対する詰問や非難の感情を込めるときは「Aぐらいなら、(むしろ)B」の方が釣り合います。→例題1)   負けて泣く ぐらいなら、  勝つために泣け。         より、むしろ  しかし、例文5のようにAを否定しないで「どちらかと言えばBの方が適切だ」という選択のときは「~ぐらいなら、(むしろ)~」が使えません。 § 例文 § 1.あんな男と結婚するぐらいなら(⇔より)、死んだ方がましだわ。 2.途中で投げ出すぐらいなら(⇔より)、むしろ初めからやらない方がいい。 3.負けて泣くぐらいなら(⇔より)、勝つために泣け。 4.君に金を貸すぐらいなら(⇔より)、どぶに捨てた方がましだ。 5.あの人は学者と言うより(×ぐらいなら)、むしろ評論家と言った方がいいだろう ★ 例題 ★ 1) 今頃になって後悔する(より/ぐらいなら)、どうして(あの/この)時、私の忠告を(聞く/聞こう)としなかったのか。 2) 最近( )は、この種の電気製品は修理( )出す( )( )も、むしろ新品を買った方( )安くつくんだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 恥ずかしい(→文型022)/は/だった(あの時=過去) 2) ぐらい/は/の(名詞句を作る「の」)/嫌な(ナ形) 075 ~ぐるみ 名詞 : ×  + ぐるみ ♪ 会話 ♪ 李 :バス旅行中の日本人たちが強盗に身ぐるみ剥がれたけれど、命には別状なかったらしいね。 山田:話しがうまくできすぎてて、あれでは運転手ぐるみの犯行だと疑われても言い開きができないね。 李 :その点、日本は安全でいいね。安全がただの国は珍しいよ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「ぐるみ」は「~を含めて全部・全員」を意味します。そして、「~ぐるみで~する」「~ぐるみの<名詞>」形がよく使われます。   家族ぐるみで旅行する  →  家族ぐるみの旅行  接尾語「毎(ごと)」(→文型088)にも「そのまま全部」を意味する用法がありますが、「毎(ごと)」は名詞を分けられない一単位で一体の物としてとらえています。その違いが下の例です。→例題1)2)   家族ぐるみで旅行する。 (父も母も兄も姉も、そして私も家族全員で)   家族ごと旅行する。(Aさんの家族、Bさんの家族、C・・・が別々に) § 例文 § 1.この夏は家族ぐるみでハワイに行きました。 2.この邸宅は土地ぐるみで二億円だそうだ。 3.街ぐるみのゴミを少なくする運動が効を奏して、一年でゴミの量が半減した。 4.身ぐるみ脱いで置いていけ。そうすれば命だけは助けてやる。 5.会社ぐるみで事故の真相を隠蔽していた。 ★ 例題 ★ 1) 村(ぐるみ/ごと)の選挙違反が(発覚したが/発覚しても)、当事者たちはそれほど悪いことをしたとは(思っている/思っていない)ようだ。 2) 宿泊料・交通費は言う( )( )もなく、サービス料( )ぐるみで一泊二日2万円のお(得だ→   )パック旅行です。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぐらいなら/あの(既知・共通情報は「あ」)/聞こう(→441P) 2) で(範囲限定)/に/より/が(「~より~方が~」比較文) 076 *~げ 形容詞語幹:ー[い]/ー[な]   +  げだ ある   :[ます]形          げな + 名詞                     げに + 動詞          ♪ 会話 ♪ 良子:この店はいつも楽しげな家族連れで一杯ね。ところで今日は何を食べさせてくれるの? 李 :ねえ、外にいるあの子、食堂のサンプルを覗き込んでるけど、とても食べたげだよ。 良子:どうしたのかしら。本当にひもじそうだわ。ホームレスなのかしら。 ♯ 解説 ♭  「~げ」は外から見ての推量を表す接尾語で、「すこし~そうな様子だ」という意味を表します。希に「大人げがない」のように名詞や、「意味ありげな態度」のように動詞につくこともあるのですが、ほとんどは形容詞の語幹について、ナ形容詞をつくります。この「~げ」は様態の「そうだ」と置き換えが可能です。→例題1)2)  悲しそうだ・悲しそうな顔  → 悲しげだ・悲しげな顔  不安そうだ・不安そうな様子 → 不安げだ・不安げな様子 § 例文 § 1.お前って、本当にかわいげのない女だな。 2.怪しげな男が家の回りをうろついている。 3.彼は何やら言いたげな様子だったが、結局口を開かなかった。 4.あなたを尋ねて男の人が来ましたが、何かいわくありげでしたよ。 5.手塩にかけて育てた娘が嫁ぐ日、父親はどこか寂しげだった。 ★ 例題 ★ 1) 男はなにやら意味(ある/あり)げ(の/な)笑いを(浮かべて/浮かんで)、僕を見ていた。 2) 彼は「大丈夫だ。俺( )任せろ」と言ったが、みんなは(心配だ→    )げ( )顔を見合わせた。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぐるみ/発覚したが(「が」と「ても」の違い)/思っていない 2) まで(までもない→文型338)/×/得な(ナ形) 077 *~こそ 名詞(+格助詞) : ×  +  こそ~ これ・それ・あれ : ×      こそ~が、~ (動詞・形容詞には、「て形」「ます形」「~ば」などと多様に接続) ♪ 会話 ♪ 課長:新製品の立ち上がりが今ひとつなので、販促(販売促進)キャンペーンを大々的に打つ。君の出番だよ。 李 :前回は思わしくありませんでしたが、今回こそ成果をあげて、皆をあっと言わせますよ。 課長:それでこそわが社のホープだ。最少の費用で最大の効果をあげてほしいからこその君の起用だよ。 ♯ 解説 ♭  「~こそ」は前の語を「正に~だ」と強調する副助詞です。「~こそ」については「名詞・これ・それ・あれ」と接続する形や、例文2、3のように「~こそ~が、~」の形も一番よく使われます。→例題1)  それ以外のものは、「~からこそ/~ばこそ」(→文型050)、「~てこそ」(→文型192)、「~こそあれ/~こそすれ」(→文型078)のように文型を作りますから、別に覚えればいいでしょう。  なお、限定の「~だけ」との混同がよく起こりますが、「君こそ間違っている」と「君だけ間違っている」は意味が異なりますし、「反対しているのは君だけだ」を「反対しているのは君こそだ」とは言えません。 § 例文 § 1.「どうぞよろしくお願いします。」「いいえ、こちらこそ」 2.彼は学校の成績こそ悪いが、素直でいい子ですよ。 3.口にこそ出しませんでしたが、専務のやり方には賛成ではありません。 4.これこそ私が探し求めていたものです。 5.好きこそものの上手なれ。<ことわざ> ★ 例題 ★ 1) 彼は口(だけ/こそ)悪い(が/のに)、根はいたって優しい男なんだよ。むしろ甘言を弄する人間に(だけ/こそ)気をつける(はず/べき)だろう。 2) 今年こそ今年こそと(思う→   )ながら、どうも僕って男は結婚運( )恵まれない( )か、相も変わらぬ独身暮らしだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) あり/な/浮かべて(他V) 2) に(~を~に任せる)/心配/に 078 ~こそあれ/~こそすれ 動詞:[ます]形  +  こそすれ 名詞: ×     +  こそあれ ♪ 会話 ♪ 課長:残念だが、昨年始めた新規事業から、年度末をもって撤退することになった。 山田:期待こそあれ、挫折は想像すらしなかっただけに意外です。時、我に利あらずでしたね。 李 :誰もが成り行きを心配しこそすれ、無関心な社員は一人もいませんでしたのに。残念がるでしょうねえ。 ♯ 解説 ♭  「~こそあれ/~こそすれ」は「~けれども/~ても」を強調する逆説の言い方です。改まった場面では年配者が使うことがありますが、今日では古い書面語ですから、読んでわかれば十分です。 § 例文 § 1.仕事には分業こそあれ、上下、貴賎の区別はない。 2.程度の差こそあれ、誰でも出世欲というものは持っている。 3.あなたには感謝こそすれ、恨みを抱くなんてあろうはずがありません。 4.苦労こそあれ、やはり子育ては楽しいものです。 5.盗みこそすれ、非道はせず。 ★ 例題 ★ 1) 彼女は国民的歌手(にとって/として/に対して)、日本人なら知ら(ぬ/ず)人はいないが、名誉、財産(こそあれ/こそすれ)、幸せ少ない女性だった。 2) お恥ず かしいことながら、英語は(読める→   )こそ( )( )、話す方 ( )なると、さっぱり駄目なんです。 (^^)前課の解答(^^) 1) こそ/が/こそ/べき(~はずだ→文型367/~べきだ→文型382) 2) 思い(→文型270)/に(~が~に恵まれる)/の 079 *~ことか/*~ことだろう どんなに + 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  + ことか どれほど                       ことだろう なんど なんと ♪ 会話 ♪ 李 :忙しくて、てんやわんやなのに、あろうことか、うちのかみさん、風邪を引いちまってね。 山田:なんだ、そんなことか。僕はてっきり奥さんが大病で倒れたのかと、本気で心配してたんだぞ。 李 :「なんだ、そんなことか」はないだろう?女房が寝込むとどんなに大変なことかを思い知らされたよ。 ♯ 解説 ♭  「~ことか/~ことだろう」は話し手個人の気持ちを表す感嘆表現で、「どんなに/どれほど/何度/なんと」などの副詞と呼応することが多いのでしょう。文末では「~ことか」「~ことだろう」のどちらを使ってもかまいませんが、会話では「~ことだろう/~ことでしょう」や、「なんと~こと!」のように「だろう」も省略して使うことが多いでしょう。「~ことか」はどちらかといえば、書面語に属します。  感嘆表現には「~ものだ」(→文型421)もありますが、使う場面が異なりますから、併せて参照してください。 § 例文 § 1.君のことをどんなに心配したことか。でも、無事でよかった。 2.何度君に忠告したことか。しかし君はそれに耳を貸そうともしなかった。 3.あれからもう十年か、何と月日の経つのは早いことだろう。 4.いじめを受けて自殺した少年は、どんなに辛く、くやしかったことだろう。 5.あなたのいない毎日が、どれほど寂しかったことか。 ★ 例題 ★ 1) 今までに何度死にたいと思った(の/こと)か。(そんな/あんな)時、いつもこの子が私に生きる勇気を与え(てもらった/てくれた)んです。 2) 君のお父さん( )生きていたら、君の立派に成人した姿を見て、どれ( )( )喜んだこと( )( )( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/ぬ(→文型121)/こそあれ 2) 読め/すれ/と(~となると→文型253) 080 *~ことがある/*~こともある 動詞:た形      +  ことがある  ・               こともある 動詞:原形・ない形  +  ことがある  ・               こともある ♪ 会話 ♪ 李 :ちょっと息子のことで残念なことがあってね。 山田:残念って、何が? 李 :息子のサッカー・チームは今まで一度も全国大会まで行ったことはなく、今度こそと応援していたんだが、今一歩のところで負けちゃってね。 山田:うまく行くこともあれば、行かないこともあるさ。 ♯ 解説 ♭  「~ことがある」「~こともある」は前に来る動詞が原形か過去・完了形かで意味が変わてくるので、注意する必要があります。  動詞の過去・完了形(た形/なかった形)と結びついたときは過去の経験を表します。しかし、動詞の原形・ない形と結びつくときは「現在もときどき~している」経験や事実を表します。   彼には会ったことがある。<以前>   彼には会うことがある。 < 今も、ときどき> § 例文 § 1.どこかで見たことがある顔だなあ、えっと、誰だったっけ? 2.○○って何?見たことも聞いたこともないなあ。 3.「猿も木から落ちる」とでも言いましょうか、彼ほどのベテランでも失敗することはあります。 4.言葉遣いを間違うと、相手に誤解されることもあるから、気をつけた方がいい。 5.この子の将来を考えると、心配で夜も眠れないことがある。 ★ 例題 ★ 1) 彼(と/に)は知人の葬式で一度顔を(合わせる/合わせた)きりで、ゆっくり(話す/話した)ことはない。 2) その店には今でも時々(行く→   )ことがあるが、彼にはまだ(会う→  )ことが(ある→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ことか/そんな(相手の発言を指す「そ」)/てくれた 2) が(従属節中の主語は「が」」/ほど/だろう 081 *~ことができる 動詞:原形   +  ことができる (注:する→できる/結婚する→結婚できる) ♪ 会話 ♪ 李 :この夏のボーナスは、期待できそうもないなあ。 山田:うん、会社の売り上げも落ちているし、「減給もやむなし」という声すらあがっているようだしね。 李 :会社に残ることができれば、むしろ、幸せだと思うべきかもしれないね。 山田:ああ、サラリーマンは、つくづく哀しい稼業だよ。 ♯ 解説 ♭  「ことができる」は「能力があってできる/条件があってできる/技能を体得した結果できる」など広く可能を表すことができる文型です。ただし、「~ことができる」や可能形が使われない動詞があるので注意してください。??雨が降ることができる/??雨が降れる。  おかしいですね。つまり「ある・いる・要る・わかる」などの状態動詞や物が主語になる自動詞「光る・壊れる…」などには可能形がないのです。  今も、ときどき その他、「~する」動詞や「お~する」などの敬語形は、それぞれ次のようになります。→例題2)   研究する→研究できる   貸す→お貸しする→お貸しできる § 例文 § 1.自分ができないことを他人に「やれ」と言うべきではない。 2.きれいごとだけでは、生きてゆくことはできない。 3.資金がもう少しありさえすれば、この事業を軌道に乗せることができるのだが・・・。 4.「小さな火花も広野を焼き尽くすことができる」(中国格言) 5.「愚公山を移す」という寓話の主旨は、「雨垂れ石を穿つ」という格言で表すことができる。 ★ 例題 ★ 1) 結婚後も男女別姓に(する/している)ことができるようにする民法改正案(をめぐって/を通して)、国会内外で喧々囂々の大論争が(起こった/起こした)。 2) プライベート( )こと( )ので、私からお(話す→    )できることはこれだけです。 (^^)前課の解答(^^) 1) と(~と顔を合わせる)/合わせた/話した 2) 行く/会った/ない 082 *~ことから/*~ところから 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  +  ことから                     ことからも                     ところから ♪ 会話 ♪ 李 :日本人は、人前で恥をかきたくないと思うことから、外国語を話す力が身につかないんじゃないのかなあ? 良子:耳の痛い話だけど、的を射ていると思うわ。日本文化のことを「恥の文化」と言った人もいたわ。 李 :言い得て妙だなあ。そんなところから「自己主張が苦手な日本人」と言われるのかもね。 ♯ 解説 ♭  これらは根拠や理由を述べる「から」から生まれた表現です。例えば例文1、2は判断の根拠や理由を表していて、文末では「~と考える/~とわかる」や「~らしい/~ようだ」がよく現れまます。この場合は「~ことから」も「~ところから」も使えます。  例文3、4は「百科事典・東洋のベニス…」と呼ばれるようになった由来を説明する文で、「~ところから」は使えません。これは「~ことから~と言われる/と呼ばれる」と文型として覚えた方がいいでしょう。  例文5は実例を挙げる用法で、多くは「~ことからも~がわかる/うかがえる/うかがい知ることができる」という形で使われます。この場合も「~ところから」は使えません。それは「~ことから」は「~という事実から」、「~ところから」は「~という状況・場面から(主として視覚判断)」という違いから生じています。→例題1) § 例文 § 1.足跡が大きいことから、どうやら犯人は男らしい。 2.何でも自分一人でやろうとするところから、無理が生じる。 3.彼は物知りであるところから、生き字引と言われている。 4.彼の絵は独創性にあふれ、色彩感覚も豊かなことから、現代のピカソと呼ばれている。 5.古代人がいかに高い文明をもっていたかは、今まで述べてきたことからもおわかりいただけると思います。 ★ 例題 ★ 1) 各地の古代遺跡から大陸製の銅鏡が大量に発掘(した/された)(こと/ところ)からも、紀元前には既に活発な交易が(行って/行われて)いたことがうかがえる。 2) 彼は面倒見がいい( )( )から、部下から( )厚い信頼を(受ける→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) する/をめぐって(→文型470/→文型478)/起こった(自V) 2) な(カタカナ形容詞はナ形)/な/話し(敬語形→文型019) 083 ~如し/~如く/~如き 名詞・副詞:の /が  +   如し 動詞   :普通形      如き + 名詞                如く + 動詞・形容詞 ♪ 会話 ♪ 李 :今度の日曜、結婚記念日だよね。もう十年か、「光陰、矢の如し」とはよく言ったものだ。 良子:色々なことがあったけれど、楽しいことばかり思い出すわ。小平が生まれて生き甲斐もできたし。 李 :僕は何から何までないないずくしだった、あの二人だけの新婚の頃を今更の如く思い出すなあ。 ♯ 解説 ♭  「~如し」は現代語の「~ようだ」に相当する古語ですが、用法的には慣用的なものに限られています。接続も例文4のように動詞に「が」をつけて用いられることもあります。会話や作文では「ようだ」を使えば十分でしょう。  速きこと風の如し(如し・ようだ)  風の如く速し  (如く・ように)  風の如き速さ  (如き・ような)  なお、例文2のように人称を表す語と接続するときは、「あいつら如き/田中如き」のように「~如き(者)が/如き(者)に」のように「者/人間」が省略されることもあります。→例題1) § 例文 § 1.その男は鬼の如き形相で、私をにらみつけた。 2.あいつら如き駆け出しの若造に負けてなるものか。 3.その娘は蝶の如く軽やかに、花の如くあでやかに舞った。 4.彼は眠るが如くやすらかに、最期の時を迎えた。 5.今まで述べてきた如く、今回のことにつきましては、当社は無関係でございます。 ★ 例題 ★ 1) 彼はお前(如き/如く)が(勝つ/勝てる)相手ではない。今彼と闘うのは、むざむざ(死ぬ/死に)に行くようなものだ。 2) 今回の作戦の失敗は起こるべくして起こったと(言う→    )。当初から指摘されていた(如し→   )、この作戦にはそもそも無理が(ある→    )のだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) された(受身)/こと/行われて(他動詞の受身文) 2) こと/の/受けている(一般動詞の「ている」形は現在形) 084 *~ことだ 名詞    :   の     +   ことだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :外国語は難しく考えずに、できるところから始めることだよ。習うより慣れろだからね。 百恵:でも私って、いつも中途半端になってしまうの。意志が弱いのかしら? 佐藤:途中で挫折しないためには、欲をかき過ぎないことだね。継続は力なりって言うだろ。 ♯ 解説 ♭  「~ことだ」は一つ一つの個別事例を取り上げ、例文1、2のように「まさに~だ」と自分の意見・感想・事実を強調するのが特徴です。  しかし、動詞の原形・「ない」形につくときは、例文3~5のように「(~する/しない)ことが 最善だ」という勧告や忠告の意味を表すことが多いでしょう。実質的には「~方がいい」(→文型388)を断定的に言ったもので、「 ~に越したことはない」(→文型309)とほぼ同義表現になります。  なお、「~ものだ」(→文型420)は「人間は死ぬものだ 」「成功の裏には苦労があるものだ」のように一般義務や普遍事実を取り上げて強調するので、「~ことだ」と対照的です。→例題1) § 例文 § 1.やれやれ、一難去ってまた一難とは正にこのことだ。 2.誰でも死は恐いものです。それは当たり前のことです。 3.勝負は最後まであきらめないことだ。 4.捨て身でかかることだ。そうすれば、万に一つのチャンスも生まれる。 5.今更見苦しい真似はしないことだ。言い訳がましい弁解はせず、自分の蒔いた種は自分で刈ることだ。 ★ 例題 ★ 1) 疲れた時はね、何も考え(ないで/なくて)ゆっくり休む(ことだ/ものだ)。そうすれば、また元気が湧いてくる(ことだ/ものだ)よ。 2) すぐに人に(頼る→   )ず、先ず自分の力( )(やる→    )みることだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 如き/勝てる/死に(V[ます]形+行く・来る・帰る) 2) 言える/如く/あった(時制に注意) 085 *~ことだから/~こととて/~こともあって 名詞    :    の     +  ことだから 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>    ことだし                     こととて                     こともあって ♪ 会話 ♪ 良子:小平がお隣の柿を盗み食いしたらしいの。お隣さんも子供がやったことだし、大目に見てくれたけど、恥ずかしいと言ったらありゃしないわ。 李 :僕も子供の頃に似たような経験をしていることもあって、注意しにくいなあ。 良子:蛙の子は蛙っていうわけね。 ♯ 解説 ♭  どれも原因・理由の表現で、「他でもない~<ひと・こと・もの>だから」とそれ自身が持っている固有の理由を取り上げることに特徴があります。「なにしろ/なにせ~(ことだ)から」と副詞と一緒に使うといいでしょう。  「~ことだから」は話し言葉で多く使われ、「~こととて」は手紙や書き言葉で多く使われると言う違いはありますが、例文1~4のように同じように使えます。なお、「~こともあって」は「~て」系の理由表現(→資料、)なので、文末で意志・推量表現が使えないという制約があります。  注意しなければならないのは、「~こととて」には例文5のように「~ことであっても」と逆説条件の用法があることで、この場合、「~ことだから/~ことだし/~こともあって」は使えません。 § 例文 § 1.慣れぬこととて時間ばかりがかかり、少しもはかどらない。 2.何しろ一刻を争う時のことだったから、上司の判断を待っている余裕はなかったんです。 3.病弱なこともあって、少年は読書を友として育った。 4.天候も不順なことですし、くれぐれもお体にお気をつけください。 5.いくら子供がやったこととて(×ことだから)、謝って済まないこともある。 ★ 例題 ★ 1) 社長不在の(ことだし/こととて)、この件については日を改めてご返事(して/させて)(いただき/いただけ)ませんか。 2) 遅刻常習犯の彼の( )( )だから、今日も(遅れる→    )来る( )決まっている。 (^^)前課の解答(^^) 1) ないで(→文型257)/ことだ/ものだ(→文型420) 2) 頼ら(→文型121)/で/やって(~てみる→文型197) 086 *~ことなく/~ことなしに/~ことなくして~ない 動詞:原形  + こと(も)なく          ことなしに          ことなくして ~ ない ♪ 会話 ♪ 山田:よく「万里の長城を見ることなくして、中国を見たと言うなかれ」って言われるね。 李 :そんなことで、中国を見たことにはならないよ。 山田:どういう意味? 李 :広大な内陸部の農村地帯を見ることなしに、中国も中国の抱える悩みも見えないってことさ。 ♯ 解説 ♭  「~ことなく」は「~しないで~する」、「~ことなしに」は「~しない状態で~する」という意味を表します。置き換えが可能な場合が多いのですが、「~ことなく」は「~ことなしに」より広範に使えます。   箸を使うことなく(?ことなしに)、スプーンで食べた。   ご飯を食べることなく(・ことなしに)、学校へ行った。  「~ことなくして~ない」は常に文末で否定形(「ない」形)や否定を意味する語と呼応し、「~しなければ、~決して~ない」という意味を表します。例えば、例題1)も「~ことなくして」を使うと、後件は「社会を変えていくことは不可能だ」となります。 § 例文 § 1.彼は雨の日も風の日も、休むことなく働き続けた。 2.相手の心を傷つけることなしに、間違いを正すことは難しいことだ。 3.原則を変えることなく、現実に柔軟に対応することが大切だ。 4.犠牲を払うことなくして勝利を得ることは不可能だ。 5.額に汗して働くことなしに手に入れた泡銭は、身に付かぬものだ。 ★ 例題 ★ 1) 暴力(による/に基づく)こと(なしに/ないで/なくしては)、社会を変え(てくる/ていく)ことは可能だ。 2) 心( )( )お二人の前途を祝福いたします。いつ( )( )も変わること( )( )お幸せに。 (^^)前課の解答(^^) 1) こととて(丁寧)/させて(→文型102)/いただけ(許可) 2) こと/遅れて/に(~に決まっている→文型305) 087 *~ことに(は) 感情・感動を表す形容詞:ーい/ーな  + ことに(は) 感情・感動を表す動詞 :た形 ♪ 会話 ♪ 李 :大学時代の友達が結婚することになったよ。びっくりしたことに、相手は現役の女優だったんだよ。 山田:それじゃ、スケジュールがびっしりで、会うこともままならないだろうな。 李 :意外なことに、先週仲間で集まったときに、彼女も来てたよ。実を言うと、俺、彼女のファンだったんだ。 ♯ 解説 ♭  「~ことに(は)」は感情・感動を表す形容詞や、動詞の完了形(「た」形)について、文頭で話者の気持ち・感情を強調する表現です。普通は話者が驚き・喜怒哀楽などの感動をもってとらえたときに使われます。  この「~ことには」はもう起こった既定事実の表現なので、文末も「~した/~だった/~のです」が多く現れます。「~ことには~した」と覚えればいいでしょう。文末で動作動詞の辞書形(=未来)や、「~だろう」「~つもりだ」や「~たい」などの推量・意志・希望表現は使えませんから注意してください。 § 例文 § 1.不思議なことに声はするのに姿が見えないのです。 2.悔しいことに、僅か一点差で相手チームに負けてしまった。 3.ありがたいことには、五体満足で健康な体を両親から授かりました。 4.困ったことに、今日は事故で電車が止まって、約束の時間に間に合わなくなった。 5.不幸中の幸いとでも言いましょうか、幸いなことに、軽いけがで済みました。 ★ 例題 ★ 1) (てっきり/きっと)独身かと思っていたら、(驚く/驚いた)(ことは/ことに)彼女は三人の子持ちだった。 2) (信じられる→      )こと( )、あの空手四段の彼が、お酒が一滴も(飲める→    )そうだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) による(方法→文型346)/なしに/ていく(→文型177) 2) から/まで/なく 088 *~毎に/*~おきに ♪ 会話 ♪ 数詞: + 毎に    ・      おきに   ・ 李 :彼は今時珍しい親孝行だよ。四日おきに養老院の母親のもとへ通ってるらしいよ。 真理:確か彼は三人兄弟だったわね。交代で毎日誰かが訪ねてるのかしら? 李 :二日おきぐらいになるらしいよ。みんな所帯持ちらしいから、色々事情があるのだろうよ。 ♯ 解説 ♭  下図は「毎に」と「おきに」の違いを表したものです。例えば「一週間毎に・一ヶ月毎に・一年毎に」は「毎週・毎月・毎年」の意味になりますし、「一週間おきに・一ヶ月おきに・一年おきに」は「隔週・隔月・隔年」の意味になります。   毎に :○● ○● ○● ○●  二駅毎にトイレがある   おきに:○○ ● ○○ ● ○○ 二駅おきにトイレがある  この例外は時間(秒・分・時間)と距離(ミリ・センチ・メートル・キロ)で連続したものを区切るときで、この場合は違いはありません。その違いを敢えて挙げれば、例えば「10分毎に」は「10分の中で一回」ですが、「10分おきに」は「10分終了後一回」でしょう。これ以外に「毎」には「魚を骨ごと食べる」(一緒に全部)、「一雨毎に暖かくなる」(変化)、「家毎に新聞を配達する」のような用法があります。 § 例文 § 1.私の団地では、一ヶ月毎に掃除当番がまわってきます。 2.この雑誌は、一ヶ月おきに発売されています。 3.この歩道には五メートル毎に(⇔おきに)木が植えられている。 4.三分おきに(⇔毎に)電車が通ります。 5.一雨毎に暖かくなります。 ★ 例題 ★ 1) 毎朝、一軒(ごとに/おきに/たびに)新聞を配達するんですが。季節の移り変わりが肌身に(感じ/感じられ)、(それで/それでは)結構気に入っているんです。 2) 医者の話によると、腰痛( )は水泳が一番だとの( )( )なので、二日おきに市営プールに(行く→    )は、体を鍛えています。 (^^)前課の解答(^^) 1) てっきり(事実は逆が「てっきり」)/驚いた/ことに 2) 信じられない/に/飲めない 089 *~ことにする/*~こととする/*~ことにしている 動詞:原形/ない形   +  ことにする   ・ (受身形・可能形は不可)    こととする                ことにしている ・ ♪ 会話 ♪ 李 :この春、中国に里帰りすることにしているんだけれど、今年は何かと物入りで大変だよ。 山田:四月五日に会社の創立記念パーティがあるけど、ぶつからないの? 李 :その日までには帰国するから大丈夫だよ。子供の学校も始まるしね。 ♯ 解説 ♭  「~ことにする」は自分の意志で決定することを表しますが、他動詞の「~ことに決める」と同義です。「~ことにする」と「~こととする」は基本的には同じ意味を表しますが、「~ことにする」は自らの考えを変えた結果、「~こととする」は相手方の考え方にそのまま同意した結果を表します。そして、「~ことにしている」と「ている」形になったときは、自らの予定・計画或いは自己の習慣を表すようになります。   来年、日本に留学することにしています。    <自分の予定>   毎朝、健康のために早起きすることにしています。<自分の習慣>  注意してほしいのは「~ことにする」と「~ことになる」(→文型090)との違いですが、これについては次項を参照してください。 § 例文 § 1.卒業したら帰国することにしていたが、もう一、二年ほど日本に残ることにした。 2.この議論は、このまま続けてもらちがあかない。一旦、  棚上げすることにしないか。 3.君には失望した。今後一切君には頼らないことにする。 4.結婚以来、給料はそっくり妻に渡すことにしている。 5.私は大切な用件は電話でなく、必ず会って直接伝えることにしている。 ★ 例題 ★ 1) 彼に頼ん(でみる/でいる)こと(にする/になる)が、彼の賛同が(得る/得られる)かどうかはわからないよ。 2) 彼( )口が軽いから、このことは彼には(話す→     )ことに(する→    )か。 (^^)前課の解答(^^) 1) 毎に/感じ(形は受身だが、自然・自発表現)/それで(理由) 2) に(→文型336)/こと(伝聞→文型209)/行って(→文型188) 090 *~ことになる/*~こととなる/*~ことになっている 動詞:原形/ない形   +  ことになる     ・                こととなる                ことになっている  ・                こととなっている ♪ 会話 ♪ 李 :僕は日本が好きだから言うんだけれど、過去の過ちを認めないということは、未来に過ちを再び犯すこととなるんじゃないのかなあ。 山田:最近の歴史教育論争のことを言ってるんだね。 李 :うん、昨夜、その討論番組をテレビで見てね。 山田:でも、どのみち事実が勝つことになると思うよ。 ♯ 解説 ♭  「~ことになる」は「必然的に~なる」か、国や会社・学校などの決定を表しますが、自動詞の「~ことに決まる」と同義です。「~ことになる」は以前の状態や決定が変わった結果を、「~こととなる」は「自然ななりゆき」を表すことが多いでしょう。そして、「~ことになっている/~こととなっている」は会社や学校などで決まった予定や、法律・規則・風俗・慣習を表すようになります。   日本では葬式には黒い服を着ることになっている。  <風俗・慣習>   会議中、タバコを吸ってはいけないことになっている。<規則>   来年、出張で中国に行くことになっている。     <予定>  「~ことにする」(→文型089)と「~ことになる」の違いは、自己の意志が関わる決定は「~ことにする」、会社・組織などの周囲の決定は「~ことになる」、自己の習慣は「~ことにしている」、社会や周囲が決めた規則や風俗や慣習は「~ことになっている」となることです。 § 例文 § 1.私たち、この度、結婚することになりました。 2.ここで君がこの任務を投げ出したら、今までの君の努力は、全て「水泡に帰す」ことになるよ。 3.この会場で、来月外国人スピーチコンテストが開かれることになっています。 4.お買いあげいただいて一週間以上たった品は、返品できないこととなっております。 5.日本では車は左側を通行することになっている。 ★ 例題 ★ 1) 守れない約束は、最初からしない(べきだ/ことだ)。そう(する/しない)と、信用を失う(ことに/ように)なるよ。 2) 幹部会の決定( )、この件は山田君( )やらせて(みる→   )じゃないかということになった。 (^^)前課の解答(^^) 1) でみる(→文型197)/にする/得られる(可能形) 2) は(「~は~が~」文)/話さない/しない(=~ませんか) 091 ことによると~/ことによれば~/ことによったら~ ことによると  名詞    :   ×     ~ かもしれない ことによれば  動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> ことによったら ♪ 会話 ♪ 李 :中座したのでわからないけど、ことによると彼に迷惑をかけてしまったのかもしれないな。 山田:君には世話になるばかりだと恐縮していたから、君の役に立てたと喜んでいるんじゃないかな。 李 :大した世話なんかしてないよ。彼一流の社交辞令さ。ことによれば勝手な奴だと笑ってるかもしれないよ。 ♯ 解説 ♭  「ことによると/ことによれば/ことによったら~かもしれない」は「もしかして/もしかしたら/ひょっとして/ひょっとしたら~かもしれない」と基本的には同じ意味で、どれもすべて「~の可能性は少ないだろうが~かもしれない」という気持ちを表しています。また、明示されなくても「たぶんそうならないはずだが」という予想が前提になっているので、「そんなことはないと思うが~かもしれない」のように作文するといいでしょう。  (そんなことはないと思うが)ことによると、その噂は事実かもしれない。 § 例文 § 1.予定では10日ですが、ことによったら、一日ぐらい遅れるかもしれません。 2.会議には出席するつもりでおりますが、ことによれば多少遅れるかもしれません。 3.彼女は見た目は若いけれど、ことによれば四十歳を過ぎている可能性がありますね。 4.ことによると、関東大震災は本当に起こるかもしれない。 5.ことによるとA国の民族紛争は内乱に発展する恐れがある。 ★ 例題 ★ 1) 天気予報(に/で)は、雨の(恐れ/嫌い)はないと言っているが、ことによったら外れる(だろう/かもしれない)。 2) ことによれば、近いうち( )二人は離婚ってことに(なる→   )(兼ねる→     )ね。 (^^)前課の解答(^^) 1) ことだ(→文型084)/ない(→文型203)/ことに 2) で(根拠)/に(使役文:「~が~をやる」)/みよう(→文型440) 092 ~ことは~が、~/~には~が、~ 名詞    :である     + ことは ~ が、~ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>   名詞    :である     + には  ~ が、~ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>   ♪ 会話 ♪ 山田:心配な点もあるにはあるが、いつまでも心配してるだけでは先へ進めないよ。 李 :君はいつも前向きだなあ。君の爪の垢でも煎じて飲んだ方がよさそうだよ。 山田:僕は前向きなことは前向きなんだけど、夢中になるとほかが見えなくなっちゃってねえ。 ♯ 解説 ♭  「AことはA」は同語を繰り返して、「Aであるのは確かですが、しかし、~」とAを認めながら、実際はいろいろ矛盾する問題があることを指摘する表現で、「AにはA」も同じ意味を表します。形に注意してください。   美しいことは美しい → 美しくはある <イ形>   元気なことは元気だ → 元気ではある <ナ形>   飲むことは飲む   → 飲みはする  <動詞>  否定形は「美しくないことはない/元気でないことはない/飲まないことはない」「美しくなくはない/元気でなくはない/飲まなくはない」となります。この「~ないことはない」(→文型256)は婉曲な肯定になります。 § 例文 § 1.刺身は食べられるには食べられるが、それほどおいしいとは思わない。 2.その会合に参加することはするが、あまり気が進まない。 3.彼女は美しいことは美しいが、少しそれを鼻にかけている。 4.その件は、私から彼に話すには話してみるが、説得する自信はないねえ。 5.彼のことは好きなことは好きだけど、結婚したいほどじゃないわ。 ★ 例題 ★ 1) 事情を(知りたい/知りたく)はあるが、彼が言い(たければ/たくなければ)、敢えて(聞く/聞こう)とは思わない。 2) 難しいこと( )難しい( )、かといって、全く歯が立たないほど(難しい→     )はない。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(理由)/恐れ(→文型020/→文型063)/かもしれない 2) に(→文型016)/なり/兼ねない(→文型043) 093 *~ことはない/*~こともない 動詞:原形 + ことはない         こともない ♪ 会話 ♪ 李 :君が謝ることはないよ。あくまでも共同作業なんだから、今後の対応策をつめる方が肝心だよ。 山田:自分がやれることはやったんだから、悔いはないと思っていたけど、やはり失敗は骨身にこたえるよ。 李 :今回のことで先方とのお付き合いを深められるなら、「塞翁が馬」でこれ以上のことはないよ。 ♯ 解説 ♭  「~ことはない/~こともない」は動詞の原形とむすびついたとき、例文1~3のように、「~することはない」は「~する必要はない」<不必要>を表します。そして、「~までもない/~には及ばない」(→文型338)と同義表現になります。動詞の完了形(「た」形)と結びついたときは「~したことがある/~したことはない」(→文型080)のように、過去の経験を表します。   行くことはない。 <必要がない>   行ったことはない。<過去の経験がない>  また例文4、5のように、「~ような事態は決して~ない」<全面否定>を表すときがありますが、この場合、例題のように「~ことはあっても~ことはない」は対比させて強調する文型もよく使われます。→例題1) § 例文 § 1.息子はもう中学生なんだし、少々帰りが遅いぐらいで、いちいち心配することはない。 2.焦ることはない。時間はまだ十分にある。 3.誰にもまちがうことはあるんだし、そんなに怒ることもない。 4.体が健康で手に職があれば、どこに行っても生活に困ることはないさ。 5.人の世は、流れ続ける大河のように絶えず変化していて、一刻もとどまることがない。 ★ 例題 ★ 1) 彼は正直者で、人に(騙す/騙される)ことはあっ(た ら/ても)、人を(騙す/騙される)ようなことはない。 2) 君が手伝ってやる( )( )はない。親切も度を過ごす( )、相手のためには(なる→     )ものだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 知りたく/たくなければ/聞こう(「~(よ)うと思う」の否定形) 2) は/が/難しく 094 ~込む 動詞:[ます]形  + 込む ♪ 会話 ♪ 李 :工場の担当者が「品質を工程に作り込む」とか言ってたけど、どういうことか説明してよ? 佐藤:一言では説明できないねえ。品質管理の基礎知識が必要だから、勉強会でも開こうか? 李 : 品質管理は難しいと思い込んでる人が多いよ。専門用語が、いきなり飛び出してくるんだから。 ♯ 解説 ♭  「~込む」は多くの複合動詞を作ります。意味は場所や状況に入るという原義に近い内部移動と、「十分に~する」から「完全に~する」までの広がりを持った程度深化に分かれます。例えば「地面に杭を打ち込む」は「打って入れる」内部移動ですが、「仕事に打ち込む」は「~に熱中する・~専念する」の意味の程度深化の表現になります。なお「~を投げる→~を投げ込む/~と思う→~と思い込む/~が寝る→~が寝込む」のように、助詞は原則として前の動詞によって決まります。  内部移動:上がり込む・打ち込む・押し込む・買い込む・詰め込む・連れ込む…  程度深化:教え込む・考え込む・決め込む・冷え込む・眠り込む・話し込む… § 例文 § 1.酒と博打にのめり込んだ彼は、借金を抱え込み、やがて貧困のどん底に落ち込んだ。 2.人の弱みにつけ込むやり口は、決して許されることではない。 3.辣腕でならした彼も、退職後めっきり老け込んでしまった。 4.会社の金の使い込みがばれて、彼は首になった。 5.親の遺産を当て込んでいた彼は、自分が相続人から外されていると知らされ、すっかりしょげ込んだ。 ★ 例題 ★ 1) 少し冷え(込んで/切って)(きた/いった)ね。寒ければ、暖房を(点こう/点けよう)か。 2) パソコン市場( )は、激しい新製品の(売る→   )込み合戦が(展開する→      )ている。 (^^)前課の解答(^^) 1) 騙される(他Vの受身)/ても(条件の逆説)/騙す(他V) 2) こと/と(→文型203)/ならない 095 これといって~ない/これといった~ない/これという~ない これといって     ~    ない これといった + 名詞(は/も)  ~  ない これという  + 名詞(は/も)  ~ ない ♪ 会話 ♪ 佐藤:わが社も創立五周年なのに、これといった記念行事がないのは寂しいな。 李 :入社して日が浅いわけでもないけど、創立記念日だからといって、これといった感慨もないなあ。 山田:僕もさ。ただこの会社は、これといった長所もないかわりに、平々凡々と一生を過ごすにはいい会社だよ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は常に否定形(「ない」形)と呼応して、「特に<語るほどのこと・名詞>はない」という意味を表します。「これといって」はすぐ後ろに動詞や形容詞が続く、「これといった/これという」はすぐ後ろに名詞が続くと覚えておけばいいでしょう。そして用例のほとんどは、「これといってすることもなく/これといった名案も出てこない/これという進展もない」のように助詞「~も」と呼応します。 § 例文 § 1.一日中、これといってすることもなく、平穏ではあるが退屈な日々が過ぎていった。 2.いろいろ相談したが、これといった名案も出て来なかった。 3.これという進展もないまま、和平会談は終わった。 4.別にこれといった理由があるわけではないんですが、どうも不安が残りますね。 5.適当な人材がいればいいのですが、これといった心当たりもありません。 ★ 例題 ★ 1) (これといった/これといって)趣味も、特に(ある/ない)んですが、(特に/強いて)あげれば、晩酌ですかねえ。 2) この地方( )は、( )( )といって取り上げるほどの特産も(あります→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 込んで(~切る→文型067)/きた(→文型181)/点けよう(他V) 2) で(範囲限定)/売り/展開され(受身:「~を展開する」) 096 ~ごろ/~盛り 名詞: ×    +  ごろ  ・ 動詞:[ます]形     盛り  ・ ♪ 会話 ♪ 李 :さあ、食欲の秋だ。柿も食べごろ、さんまも出盛りで安いし、たくさん食べて冬に備えようよじゃないか。 良子:あなたは気楽ね!食べ盛りの子供がいるから、毎週、お米を10キロも食べるのよ。お金も大変だけど、買い物の帰りがもう大変なのよ。腕は痛くなるし・・・。 李 :運動不足の解消に打ってつけじゃないか。\ ♯ 解説 ♭  「~ごろ」は「10時頃・夕方頃」などの用法の他に、「ちょうど適当な<とき・もの・状態>」などの意味を表すことがあります。「~盛り」は「花盛り」のように植物の例もありますが、多くは人間のある段階の絶頂期を表します。  例えば「食べごろ」は物を食べるのにちょうどいいときですが、「食べ盛り」は中学校の2~3年の一番たくさん食べるピークの年代を表しますし、「年ごろ」は結婚適齢期ですが、「娘盛り」はだいたい16~17歳ごろを指します。  多くは慣用的に使い方が決まっていますから、自由に造語することはできません。主な接尾語「~ごろ/~盛り」のつく語は例文に入れてありますから、そのまま覚えましょう。 § 例文 § 1.この鞄は手ごろな大きさだし、値ごろだから、これにしよう。 2.娘も年ごろになると、扱いにくくなります。 3.三十代の後半から四十代というのは、男は男盛り、女は女盛りで、人生が一番充実した年代だと言われている。 4.夫はまだ働き盛りなのに、会社からリストラの対象にされています。 5.最近はどこもかしこも、習いごと教室やスポーツセンターが花盛りです。 ★ 例題 ★ 1) うちの子は中三で、育ち(ごろ/盛り)伸び(ごろ/盛り)だが、成績(だけ/ばかり)がなぜか伸びない。 2) 紅葉は今がちょうど(見る→   )ごろだよ。今度の日曜日あたり(見る→   )(行く→    )か。 (^^)前課の解答(^^) 1) これと言った/ない/強いて(副詞≒敢えて) 2) に(「~には~がある」文→文型419)/これ/ありません 097 ~さ/~み 形容詞の語幹:<イ形ー[い]>  +  さ  ・        <ナ形ー[な]>     み  ・ ♪ 会話 ♪ 百恵:自分で処理できることなら、少しくらい大変でもそうしたら。あの人に借りをつくると、後が面倒よ。 李 :彼のしつこさは人並み外れてるからなあ。いつまでも恩着せがましく言われるのも嫌だし、そうするか。 百恵:高みの見物を決め込むつもりだったけど、こうなったからには、私があなたのために一肌脱ぐわ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~さ」は多くの形容詞の語幹について、一般属性を表す名詞に変えます。接尾語「~み」は「~ような<感覚・感情/様子・色・味/ところ>」などの印象や特徴を表す名詞を作ります。以下が主な「ーみ」のつく形容詞です。イ形:赤み・青み・厚み・甘み・ありがたみ・痛み・うまみ・重み・    面白味・辛み・臭み・苦しみ・強み・弱み・苦み・憎しみ・    深み・丸み・柔らかみ・親しみ…ナ形:憐れみ・真剣味・堅実み・憐れみ…  「~さ」「~み」の両形がある場合も意味の違いがあり、例えば「深さ」は何メートルか計れますが、「深み」は「深いような感じ/深いと思う場所」ですから、計れません。→例題1)   川の深さを測ったら10メートルでした。   川の深み(=深いところ)にはまって溺れた。 § 例文 § 1.可愛さ余って、憎さ百倍。 2.二月も末になると、しだいに暖かさが増してきた。 3.彼女は頭はいいが、人間に暖かみがない。 4.彼は年をとって丸みがでてきたようだね。 5.薬を飲んでしばらくすると、しだいに痛みもやわらいできた。 ★ 例題 ★ 1) 記者たちの努力(によって/にとって/について)、某政治家の地位を利用した株取引の真相が(明るさ/明るみ)(を/に)出された。 2) 「いくら勝つためとは言え、僕はそんな汚い手を(使いたい→    )」「それが君の世間を知らない(甘い→  )だよ。勝つためには手段を(選ぶ→ )ずさ」 (^^)前課の解答(^^) 1) 盛り/盛り/だけ(「~ばかり」は単なる限定ではない→文型362」 2) 見/見(V[ます]形+行く)/行かない(提案:~ないか) 098 *~際(に)/~節(に) 名詞    :の      +   際(に/は/には) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     節(に/は/には) ♪ 会話 ♪ 山田:君と良子さんの出会いのきっかけというのは、一体何だったの? 李 :良子とは大学のサークルで知り合ったんだよ。そのうち、何となく結婚しようかってことになって。 山田:はっは、何となくか。それで、その際どちらの両親も賛成してくれたの?何と言っても国際結婚だから。 ♯ 解説 ♭  「~際/~節」のどちらも「とき」を表します。「~際」は「~の時を利用して~する」という積極的な表現で、後件では意志表現が使われます。ですから、偶発的な出来事や自然現象など無意志現象に使うと不自然になります。この場合は「~折」(→文型023)が自然になります。         先生に会うつもりだ。<・際/?折り>   上京のとき 雨に降られた。   <?際/・ 折り>         偶然先生に会った。 <?際/・ 折り>  「~節」は意味用法とも「~折」と共通しますが、手紙や電話などのていねいな会話で多く使われ、敬語と結びつくことが多いのが特徴です。ただし、文末で「~なさい/~なければならない/~だろう」などの強い意志表現や推量表現が使えません。 § 例文 § 1.この際だから、言いたいことは言わせてもらうよ。 2.非常の際には、このドアから避難してください。 3.何か困った際は、いつでも連絡してください。 4.その節はいろいろお世話になりまして、本当にありがとうございました。 5.お暇な節は、是非お越しくださいませ。 ★ 例題 ★ 1) 先日お会いした(際/際/間際)に御相談した件でございますが、(なにとぞ/なにかと)よろしく御検討ください。御返事をお待ち(して/になって)おります。 2) 貴国を(訪問する→    )節、何かと私どものためにお骨折りくださり、誠に感謝( )堪えません。一同を代表して心からお礼を(述べて→      )いただきます。 (^^)前課の解答(^^) 1) によって(→文型348)/明るみ/に(「~が明るみに出る」は慣用) 2) 使いたくはない/甘さ/選ば(~ず→文型121) 099 *~最中に/*~最中は/*~最中だ 名詞:    の      +  最中に 動詞:~ている/~ていた     最中は (注:形容詞「忙しい」につく例もある) ♪ 会話 ♪ 山田:今は決算期で忙しい最中なので、日を改めてお電話ください。それではまた! 李 :以前つき合っていた彼女からの電話だろ?冷たいこと言わずに、話だけでも聞いてやれよ。 山田:私用電話を仕事の最中にかけてこられると、往生するよ。それに、もう彼女とよりを戻す気はないし。 ♯ 解説 ♭  「~最中」は「ちょうど~ているところ」<動作継続中>を表します。しかし「最中」は行為の最も重要なピーク時を表す語なので、例文1の「タバコを吸っているところ」を「~最中に」変えると不自然になりますし、例文2の「慌てているところ」ような行為ではなく心理状態を表すときは使えなくなります。その点、「~ところ」は動作動詞でも、感情・感覚・心理を表す動詞でも広く使うことができます。  この「~最中」と類義語に「~中」(→文型188)がありますが、名詞との接続の形が違いますから、注意しましょう。  食事の最中 ー 食事中  電話の最中 ー 電話中 § 例文 § 1.トイレでタバコを吸っているところ(×最中)を教師に見つかり、停学処分にされた。 2.引っ越しの真っ最中に雨が降り出し、慌てているところ(×最中)です。 3.みんなが食事をしている最中を、突然、大地震が襲った。 4.今、容疑者の取り調べをしている最中だが、なかなか口を割らない。 5.人が話している最中に、横から口を挟まないでください。 ★ 例題 ★ 1) 山で道(で/に)(迷ったから/迷って)、途方に暮れていた(最中/ところ)に、地元の人が通りかかった。 2) 今は締め切り( )前にして、原稿を(書く→    )最中だから、その話は今度( )してくれ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 際(さい)/なにとぞ(副詞:依頼)/して(謙譲→文型019) 2) 訪問した/に(→文型323)/述べさせ(→文型102) 100 *~さえ/~すら 名詞 : ×          +  さえ 格助詞:に・で・と・から・の     すら 動詞 :て形/ます形 ♪ 会話 ♪ 李 :雑談には乗ってくれたけど、肝心の商売の話はきっかけすらつかめなくてねえ。\ 山田:君でさえ説得できないのだからね。でも、彼は聞く耳は持ってるから、最後まで諦めるなよ。 李 :今でさえこんなに競争が激しいから、年度末には八掛け二割り引きはおろか、半値すら登場するよ。 ♯ 解説 ♭  「~さえ/~すら」は接続が複雑ですが、よく使われる形を次項で取り上げています。名詞に直接接続し、格助詞「が/を」の位置で使われるとき、「~でさえ」の形もあります。どちらも極端な一例を取り上げて、「だから、他はもちろん~だ」という意味を表します。強い「~も」と考えてもいいでしょう。  ただし、「~さえ」はいいことにも良くないことにも使えるのですが、「~すら」は軽視・蔑視の感情を含んでいるため、良くないことに使われます。   小学生なのに、高校の数学問題さえ(?すら)できる。   高校生なのに、小学校の数学問題さえ(⇔すら)できない。 § 例文 § 1.一年も日本語を勉強していながら、カタカナすら読めないのか。恥ずかしいとは思わないのか。 2.なぜ黙っている?この私にさえ話せないようなことなのか。 3.足し算すらろくにできないんだよ。微分積分がわかるはずがないじゃないか。 4.腰が痛くて、じっと寝ているのさえ辛い。 5.あきれてしまって、怒る気にさえなれない。 ★ 例題 ★ 1) 私の生まれたところは、駅からタクシー(に/で)(乗るさえ/乗ってさえ)、一時間は(かける/かかる)山村です。 2) 毎日の御飯( )すら、ろくに(食べられる→       ) 人がいるというのに、ぜいたくを言うんじゃない。罰( )当たるぞ。 (^^)前課の解答(^^) 1) で/迷って/ところ
回复

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2006-5-2 20:37:25 | 显示全部楼层
101 *~さえ~ば 名詞 : ×          +  さえ ~ ば 格助詞:に・で・と・から・の (注:動詞・形容詞接続の場合については解説部で説明する) ♪ 会話 ♪ 李 :部長は社長の信任が厚いから、部長さえ説得できれば、ゴー・サインは決まったようなものさ。 山田:購入予約さえあれば、生産に踏み出せるのになあ。いつもあと一歩のところまで行くのに・・・。 李 :部長も見通しさえ立てば、あんなに躊躇しないよ。製品スペックを見直してみようか。 ♯ 解説 ♭  「~さえ~ば」文型は「そのひとつの条件が満たされれば~」という意味で、それが駄目なら他は全て駄目だという判断が常に裏側にあります。なお、この文型は「~すら」が使えませんから注意してください。ここでは次の形を覚えてください。→例題1)2)イ形 :おもしろい→ おもしろくさえあればナ形 :元気だ  → 元気でさえあれば動詞 :飲む → 飲みます → 飲みさえすればする :努力する → 努力さえすれば/努力しさえすればている:飲んでいる→ 飲んでさえいれば/飲んでいさえすれば § 例文 § 1.自分さえよければ、他人はどうなってもいいというのか。 2.あなたさえよければ、私は別にかまいません。 3.多少品質に問題があっても、安くさえあれば何でもいいです。 4.私としては息子に高望みはしていません。元気でいてくれさえすればいいんです。 5.金さえあれば何でもできるという風潮が支配的だ。 ★ 例題 ★ 1) うちの主人は、お酒を飲んでさえ(すれば/いれば/あれば)ご機嫌で、まあ酒さえ(すれば/あれば)幸せな人なんですが、夫の健康が気(に/を)かかります。 2) あなた( )協力して(くれる→     )さえ(する→     )ば、私は百人力です。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(移動Vの「に」目的地は)/乗ってさえ/かかる(自V)\ 2) で(×も可)/食べられない(副詞「ろくに~ない」)/が(自V) 102 *~(さ)せて(あげる/くれる/もらう) 動詞の使役形:て形  +  やる/あげる/さしあげる               もらう/いただく               くれる/くださる ♪ 会話 ♪ 李 :例の試作車に乗らせてもらったんだけど、印象の薄い車だったよ。発売されても僕は買わないな。 木村:自動車部の仲間のよしみで紹介したのに。それじゃあ、僕の顔が丸つぶれじゃないか。 李 :僕のとっておきのブランデー、もう残り少なくなったけど、君に飲ませてやるから、機嫌を直してくれよ。 ♯ 解説 ♭  この文型は動詞の使役形と受給表現が結びついた形で、許容・許可の表現を作ります。会話では例文1~3のように「~(さ)せてください・~(さ)せてもらえませんか・~(さ)せていただけませんか」などの許可の依頼表現が一番よく使われます。        私が ここで 働く。  →あなたが 私を ここで 働かせる。  →     私を ここで 働かせて ください。  なお、例文5のように恩恵の強調を表すこともあります。 § 例文 § 1.少し疲れました。すみませんが、30分ほど休ませていただけませんか。 2.どんなことでもいたします。給料はいくらでもかまいません。私をここで働かせてください。 3.その仕事は私も興味があります。私にも協力させてくださいませんか。 4.今日は急用がありますので、お先に失礼させていただきます。 5.あ~んと口を開けて、お母さんが食べさせてあげる。 ★ 例題 ★ 1) おい、俺にも一言(だけ/さえ)(言って/言わせて)くれ。(言い/言われ)っぱなしじゃ、気がおさまらない。 2) これ( )もちまして、御挨拶( )(代える→    )ていただきます。 (^^)前課の解答(^^) 1) いれば/あれば/に(慣用語「~が気にかかる」) 2) が(従属句中の主語は「が」)/くれ/すれ 103 *~(さ)せておく 動詞の使役形:て形 + おく ♪ 会話 ♪ 山田:よくもあんなに休まずに仕事ができるな。 佐藤:やりたい奴にはやらせておくさ。我々は一服だ! 李 :彼に任せておいても大丈夫だよ。どうせ、機械が勝手に作って、人間はほんの付属品に過ぎないんだから。 百恵:言わせておけば、好き勝手なことばかり言ってるわねえ。彼が気の毒よ。もういいかげんにしたら。 ♯ 解説 ♭  使役形は行為の強制ですが、消極的強制から、消極的な容認へ、更に放置・放任へと意味は拡大していきます。   兄は妹に部屋を掃除させた。          <強制>   その作品は人々に環境問題の重要さを考えさせた。<誘発>   父は子供たちにやりたいことをやらせた。    <許容・放置・放任>  「~ておく」(→資料。)は事前準備の意味を表すほかに、状態保持や放置・放任の意味も表します。その許容・放置・放任の意味をはっきりさせるのが、この「使役形+ておく」文型です。→例題1) § 例文 § 1.どうせ大した用事じゃないんだ。待たせておけ。 2.反対する奴には反対させておけ。結果よければ全てよしだ。 3.今日は疲れているんだろう。ゆっくり寝させておけ。 4.今は泣きたいだけ泣かせておけばいい。 5.あまりわがままにさせておくと、大きくなってから、ろくな人間にはならないぞ。 ★ 例題 ★ 1) がみがみ(言わないで/言わなくて)、そっとし(ていて/ておいて)やれ。今は ひとりで反省(して/させて)おいた方がいい。 2) (言う→     )たい奴( )は、(言う→    )ておけばいい。君は君の道を行け。 (^^)前課の解答(^^) 1) だけ/言わせて/言われ(受身形&「~っぱなし」→文型173) 2) を(「~をもって」の丁寧語→文型480)/に/代えさせて 104 *~(さ)せてしまう 動詞の使役形: て形 + しまう ♪ 会話 ♪ 李 :山田さんが馬鹿なことばっかり言うから、百恵ちゃんをかんかんに怒らせてしまったじゃないか。 佐藤:君がそれとなく注意して、山田さんを黙らせてしまえばよかったのに。 李 :事ここに至っては、なんとかこの場をまるく収めるしかないよ。山田さんには、いつも手を焼くよ。 ♯ 解説 ♭  「~(さ)せてしまう」は「あ~あ残念だ」「あ~あ、失敗した」という感情を込めた不本意の表現です。前に来る動詞は感情や心理、また自然・自発の生理自然現象を表す動詞が多いでしょう。  もし前に来る動詞が意志動詞の時は、会話中の「黙らせてしまえばよかった」のように、「完全に・徹底して~させる」という強制の文ともなりますが、用例としてはあまり多くありません。 § 例文 § 1.待たせてしまったね。ごめん、ごめん。その償いに食事をおごるよ。 2.水をやり忘れて、花を枯れさせてしまた。 3.ちょっとしたミスが、全体の計画を挫折させてしまうことがある。 4.軽い冗談のつもりで言っただけなのに、彼女を怒らせてしまった。 5.ふとした運命のいたずらが、彼の人生を狂わせてしまった。\ ★ 例題 ★ 1) 僕が非行(に/を)走った(だけに/ばかりに)、親(を/が)悲しませ(てしまった/ていた/ておいた)。 2) 君( )何もかも(やる→     )しまってごめん。この償いはいつ( )きっとする。 (^^)前課の解答(^^) 1) 言わないで(→文型257)/ておいて/させて 2) 言い(V〔ます〕形+たい)/に(使役文「が→に」)/言わせて 105 *~(さ)せられる 動詞使役形:~(さ)せる   → ~(さ)せられる      :~(さ)す    → ~される ♪ 会話 ♪ <注:「~される」の形は「する」と「~す」で終わる動詞を除く> 山田:人の不始末の尻拭いで、毎日遅くまで残業させられたんじゃたまらないよなあ。 百恵:残業させられる人の身にもなってほしいものだわ。若い独身の女性がこんな時間まで残業してるようじゃあ、いい人に巡り合えないわ。 山田:独身男性がここにも一人いるのをお忘れ? ♯ 解説 ♭  「~(さ)せられる」は「使役の受身」と呼ばれています。使役形には「~(さ)せる」と「~(さ)す」の形がありますから、使役の受身形も二通りあります。意味の上では「~ことを強制される」という強い被害感を表すときと、感情・感覚を表す動詞について「自然に~になる/になってしまう」という自発・誘発を表すときに分かれますが、用例としては自発・誘発の方がはるかに多いでしょう。            私が 歌を 歌う。<使役文>  部長が 私に 歌を 歌わせる。                  歌わす<被役文>  私は 部長に 歌を 歌わせられる。                  歌わされる。 § 例文 § 1.上司に飲めない酒を無理矢理飲まされて、立って歩くこともできなかった。 2.食べたくもないのに食べさせられるのは、ほとんど拷問に近い。 3.父親に雨の中をタバコを買いに行かされた。 4.昨日の空中ブランコは見ていてはらはらさせられた。 5.糠味噌の腐るような部長の歌を何曲も聴かされても、「もう一曲」と拍手しなければならない身の辛さ。 ★ 例題 ★ 1) 小さい妹の世話を(するし/したり)、食事の支度を(するし/したり)、本当にあの子には感心(する/させられる)。 2) あの先生( )はいつも本文( )暗記させられたが、今思えば、それが会話力( )つける一番の近道だった。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/ばかりに(→文型364)/を(自Vの使役文)/てしまった 2) に(他Vの使役文)/やらせて/か(「誰か・どこか」などの「か」) 106 *~ざるを得ない 動詞:[ない]形  +  ざるを得ない ♪ 会話 ♪ <注:「する」→「せざるをえない」。可能形や「ある・わかる」などの状態動詞、「疲れる・困る」などの状態性の動詞にはつかない> 李 :あれだけの証拠を突きつけられたのでは、流石の彼も自分の落ち度を認めざるを得なかったようだ。 山田:ぐうの音も出ないとは正にこのことだね。その直後のリーダーとしての再指名とあっては、彼も名誉挽回のためにも死にもの狂いで頑張らざるを得ないだろう。 李 :部長の人使いのうまさには脱帽するよ。 ♯ 解説 ♭  「~ざるを得ない」は少し硬い言い方ですが、例文1~3のように「(何か事情があって)~するしかない/~しなければならない」という意味を表します。また、例文4、5のように、「諸事情を考えると/いろいろ賛否はあっても~という結論に至る」という婉曲な断定の用例も生じてきます。  どちらの場合でも「そうしたくはないが、しかたなく~」という感情を込めた不本意な選択で、積極的な選択ではありません。類義表現に「~よりほかない」(→文型391)や「~ないわけにはいかない」(→文型457)などがありますが、日常の会話で多く使われるのはこちらの方でしょう。   やらざるを得ない。  =やるしかない/やるよりほかない。  =やらないわけにはいかない。 § 例文 § 1.君がしないなら、僕がやらざるを得ないだろう。 2.風邪気味なので休みたいのだが、社長命令では出社せざるを得ない。 3.したくなくても、せざるを得ないことはあるものだ。 4.今回の原発事故の責任は、単に現場担当者だけでなく、政府にもあると言わざるを得ない。 5.いろいろな医学データーから見て、タバコは癌の原因になると言わざるを得ない。 ★ 例題 ★ 1) (こんな/こんなに)雨が(ひどくては/ひどくて)、野外パーティは中止(せざる/しざる)を得まい。 2) 君一人の責任ではないが、君( )も非があると(言う→   )ざる( )得ないだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) したり(→文型158)/したり/感心させられる(自発・自然) 2) に/を(他Vの使役文「~に~を~させる」)/を(他V) 107 *~し、~/*~し、~し~ 名詞    :  だ      + し、~ 動詞・形容詞:普通形 <ナ形ーだ>     し、~も~し~ ♪ 会話 ♪ 李 :体はだるいし、頭も痛いし、今日は会社を休みたい気分だなあ。 良子:たまには年休をとって、のんびりしたら?働き詰めじゃ、体が持たないわよ。 李 :そうしようか。出世の階段を上るためにあくせくするより、自分の時間を大切にしたいし。 ♯ 解説 ♭  「~し」は事物を累加するときに使う接続助詞です。一度しか「~し」が使われていないときにも、同類の何かがあることを暗示しています。多くの場合は副助詞「も」と呼応し「~し、~も~し~」という形で使われますから、そのまま覚えておきましょう。この場合、「~も~ば、~も~」文型(→文型427)と同義表現になります。また、「~し/~し、~し~」が文脈上、原因・理由を表すときは、「~て~て~から/~て~て~ので」と同義表現になります。→例題1)   お金もないし、暇もない。    <添加>    =お金もなければ、暇もない。   お金もないし、暇もないし、家で寝ているしかない。<理由>    =お金もなくて、暇もないから、家で寝ているしかない。 § 例文 § 1.もう時間も遅いことですし、そろそろ失礼いたします。 2.急に残業しろと言われたって、こちらにも都合があるし、困ったなあ。 3.雨も降っているし、風も強いし、最悪の天気だ。 4.彼はスポーツ万能だし、ハンサムだし、女の子にもてないわけがない。 5.瀬戸内地方は気候も温暖だし、魚もうまいし、果物も豊富です。 ★ 例題 ★ 1) どんな場合に(は/も)、賛成者もいるし、反対者(は/も)いる。反対を恐れるのは何(を/も)しないのに等しい。 2) 人( )はそれぞれ事情というものがある( )、余り無理強い(する→  )方がいい。 (^^)前課の解答(^^) 1) こんなに/ひどくては(~ては→文型188)/せざる 2) に/言わ/を 108 *~しかない/*~しか~ない 名詞/数詞   :    ×      +  しかない これ・それ・あれ:    ×         しか ~ ない 格助詞     :    × 動詞      :原形/ている形/て形 ♪ 会話 ♪ 李 :このディジタル・カメラは予定外の買い物だよ。現金が1万円しかないので、カードを使うしかないな。 小平:ママ、僕、お腹が空いたよ。早く何か食べようよ。 良子:今日は外食は取りやめて、お家で食べましょうね。あなたも節約よ。愛しい恋女房の手料理では、まずくても食べるしかないわよね。それとも、カメラ、諦める? ♯ 解説 ♭  「しか~ない」は「だけ」と同じ限定の用法ですが、語感の違いが生じます。「~だけ」は感情を含まない限定ですが、「~しか~ない」は「不足・不満・残念」などの話者の感情が強く現れます。この「~しか~ない」を更に強調したのが「~だけしか~ない」(→文型065)です →例題1)     5000円だけあります。<客観事実>     5000円しかありません。<不足・不満・残念>  動詞と結びつくときは「遊ぶしかない/遊んでしかいない/遊んでいるしかない」、形容詞と結びつくときは「美しくしかない/不幸でしかない」のようになるのですが、形容詞の用例は少ないので取り上げませんでした。 § 例文 § 1.試験まで、泣いても笑っても、あと一週間しかない。 2.これはこの店でしか手に入らない品物ですよ。 3.あなたって人は、自分に都合がいいことしか覚えていないのね。 4.人は過去には戻れない。辛くったって、前に歩くしかないんだよ。 5.進むも地獄、退くも地獄、こうなったら、なるようになれと開き直るしかない。 ★ 例題 ★ 1) 頼れる人は、私には(もう/まだ)あなた(だけ/しか)(いる/いない)んです。 2) この世( )は、その人( )しか(できる→    )ことが一つあると言われている。 (^^)前課の解答(^^) 1) も/も/も 2) に(「~には(こと)がある」文/し/しない(→文型388) 109 ~しき これ・それ・あれ: ×  +  しき                 しきの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :神社の前の坂道、なんのこれしきと思ったけれど、途中で息切れがして、やむなく自転車を押して登ったよ。 良子:お腹も出てきたし、何か運動を始めたら?学生時代はあんなにスリムだったのに、今は見る影もないわ。 李 :よし、心を入れ替えて、毎朝ジョギングしよう。 良子:三日坊主にならないでね。 ♯ 解説 ♭  「~しき」は希に数詞につきますが、「これ・それ・あれ」と結びつく場合がほとんどです。「~しき~ない」は「~だけしか~ない」に相当し、「~しきの+名詞」は「この程度/その程度/あの程度」や「これぐらい/それぐらい/あれぐらい」を使って表すことができます。用例としては「~しきの+名詞」が一番多いでしょう。どの場合も「(程度や量が)とるに足りない/とても簡単だ/とても僅かだ」という感情が強く現れる表現で、残念・失望・軽蔑・軽視といった気持ちが強く現れます。 § 例文 § 1.それしきのことで、君はもう諦めるのか。 2.だらしないぞ。これしきのことで音を上げるな。 3.汗水たらして働いて、わずかこれしきの給料とは情けなくなる。 4.私にとってそれしきのこと、何でもありません。三日もあれば、やって御覧にいれます。 5.「あれしきのことなら、俺にだってできるよ」「だったら、やってみせてよ。口先だけなら何でも言えるわ」 ★ 例題 ★ 1) 男(のくせに/にもかかわらず)、(あれ/それ)しきのけがで泣いたりする(んじゃない/んじゃないか)。 2) 試合はまだ(始まる→    )ばかりだ。これ( )( )の点なら挽回できる。決して勝負を投げる( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) もう/しか/いない 2) に(「~には(こと)がある」文/に(~に~できる)/できない 110 *~次第 動詞:[ます]形 + 次第  ~ する ♪ 会話 ♪ 良子:支度はすっかりできたから、小平が帰り次第、出かけましょ。車は大丈夫? 李 :いつでも大丈夫だよ。最近、寝不足気味だから二階で寝てるよ。仙台まで、ちょっと距離があるからねえ。 良子:あなた~、母から電話で、仙台手前のサービスエリアに着き次第、電話をかけてくださいだって。 ♯ 解説 ♭  「~次第」は「~たら、すぐ~」に相当する丁寧な表現で、電話の応対などでよく使われます。改まった会話では「~ 次第」の方が適切です。なお、例文5の「手当たり次第」は慣用語なので、そのまま覚えてください。  文法上注意するのは、「~たら、すぐ~」と「~と、すぐ~」の用法の違いです。条件の「と」と「たら」の違い(→資料・)があるため、「~と、すぐ~」の後件では、「~てください/~なければならない/~ほうがいい」などの意志表現ができませんから、この項の例文はどれも「~と、すぐ~」が使えません。  荷物が ○着いたらすぐ  連絡してください。      ○着き次第、      ×着くとすぐ § 例文 § 1.調査結果がわかり次第、そちらに御報告いたします。 2.犯人を見つけ次第、逮捕せよ。 3.先方から矢のような催促がきてるので、食事が終わり次第、ただちに仕事に取りかかってくれ。 4.今、主人はあいにく留守にしておりますが、帰り次第そちらにお電話させます。 5.夫の浮気を知った妻は怒りの余り、手当たり次第に物を投げつけた。 ★ 例題 ★ 1) 社長の了解が(得られる/得られ)次第、(たちまち/ただちに)この計画(に/を)着手する。 2) 原稿が(書く→   )(上がる→    )次第、至急、編集部に送って(もらう→    )ませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) のくせに(非難→文型070)/それ/んじゃない(禁止→文型190) 2) 始まった(→文型146)/しき/な(禁止命令:V原形+な) 111 *~次第だ/*~次第で 名詞   : ×    +  次第で(は)   ・                次第だ 連体修飾句: ×    +  次第で     ・                次第だ (注:・の時は、「~ような次第/~という次第」 などの形が多い) ♪ 会話 ♪ 李 :明日は状況次第で、行き先を変えようか。今は季節がいいから、海でも山でも楽しいよ。 良子:私は紅葉が見たいけど、道がとても込むんでしょうね。こればかりはパパの気力次第ね。 李 :渋滞が長いと小平が飽きるし、その時は紅葉を諦めて、近くのサファリパークへでも行こうや。 ♯ 解説 ♭  「~次第だ」は例文1~3のように「~によって決まる」という意味を表します。例えば「やり方次第で、早くもできれば遅くもできます」は「やり方によって、早くもできれば遅くもできます」と言い換えることができます。しかし、「国によって文化や習慣が違う/人によって考え方が違う」のように、人間の意志を越えたところにある客観事実や現象には「~次第だ」が使えません。つまり、人間の意志で左右できることにだけ、「~次第だ」は使われます。   やり方によって(・次第で)、早くもできれば遅くもできる。   教師によって(×次第で)教え方が違う。  例文4、5の「次第」は「事情・経過」の意味の名詞として使われている用例で、「名詞+次第で」とは接続も違いますから、注意しましょう。 § 例文 § 1.地獄の沙汰も金次第。(俗語) 2.ものは考えようだよ。見方次第では「禍が転じて福となる」かもしれないよ。 3.ものは言いようで角が立つ、言い方次第で好感を持たれることもあれば、反発を招くこともある。 4.ことと次第によっては、社長自らご出馬いただかなければならなくなるかもしれません。 5.・・・につきましては、以上述べたような次第です。 ★ 例題 ★ 1) 君(って/だって)その日の(お/ご)天気次第で、気分がころころ(変える/変わる)人だね。 2) (やる→   )方次第( )、早く( )できれば遅くもできる。 (^^)前課の解答(^^) 1) 得られ/ただちに(「たちまち」は自然現象)/に 2) 書き(→文型003)/上がり/もらえ(依頼) 112 ~しな/~がけ 動詞:[ます]形 + しな(に)           がけ(に) ♪ 会話 ♪ 山田:彼も隅に置けないよ。ふらりと現れて、帰りしなに百恵ちゃんとデイトの約束をしていたよ。 李 :彼が女に手が早いのは有名だけど、よりにもよって百恵ちゃんにまで手を出すとはねえ。 真理:百恵ちゃんにしたら、彼は遊び相手として手ごろなのよ。最近の若い娘は、意外としたたかなのよ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「しな」「がけ」は動詞の[ます]形に接続して、「~するときに、ちょっと~する/~するついでに、ちょっと~する」を意味を表します。時間的には「~する前・~している途中・~した直後」を表せます。  「がけ」は普段語で、電話の応対などではていねいな会話では「しな」の方がいいでしょう。なお、例文5の「行きがけの駄賃」は慣用句なので「しな」が使えませんが、それ以外はどちらも置き換えが可能です。 § 例文 § 1.近くを通りしなに、ちょっとなじみの飲み屋に寄った。 2.寝しなにいっぱい飲むのが、毎日の習慣になっている。 3.彼は起きしなで、まだ寝ぼけているようだ。 4.「病院への行きがけに、お見舞いの花でも買って行くよ」「退屈しのぎに雑誌も持って行ってあげたらどう?」 5.「行きがけの駄賃に、旅館のタオルを失敬したよ」「私も旅館の帰りがけに、記念に下駄をもらっといたわ」 ★ 例題 ★ 1) 部屋(を/に)出しな(に/で)、突然走っ(て来た/て行った)子供とぶつかった。 2) 「その足の傷はどう(する→   )んですか」「バスを(降りる→   )しなに、(つまずく→     )しまいましてね」 (^^)前課の解答(^^) 1) って(~って→文型172/~だって→文型198)/お/変わる(自V) 2) やり(→文型435)/で/も(~も~ば、~も~→文型427) 113 ~渋る 動詞:[ます]形  + 渋る ♪ 会話 ♪ 李 :小平が人参を食べたくないって、渋っているよ。料理の仕方を工夫してみたら? 良子:できるだけ細かく切ったり、すり下ろしたりしてるのよ。今日のはちょっと手抜き。 李 :料理教室で習ってるんだろ。小平と僕が期待してるんだから出し渋らないで、腕を披露したら。 ♯ 解説 ♭  「渋る」は「調子が悪い」とか「嫌がる/ためらう」という意味を表す動詞で、例1のように単独でも使われます。しかし、動詞の[ます]形に接続したときは、例2~5のように「~するのを嫌がる/~するのをためらう」意味を表す補助動詞になります。ですから、「言い渋る≒言うのを嫌がる」とほぼ同義です。 § 例文 § 1.答えを渋るのは、要するに気が進まないと言うことだね。 2.あいつは決まった会費さえ出し渋るけちな奴だ。 3.あの会社は値上げを見込んで、在庫があるのに売り渋っている。 4.このような不況の時代は、誰でも高価なものは買い渋るものだ。 5.女に結婚を迫られたが、男は返事を言い渋った。 ★ 例題 ★ 1) 「(どうにか/どうしても)新しい発想(が/を)浮かば(なくて/ないで)、筆が渋っています」  「気分転換に旅行(を/でも)したらどうですか」 2) 彼はわずか5000円のお金を(出す→   )渋り、クラスの親睦旅行( )すら(行く→    )としなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) を(離れる場所)/に/て来た 2) した/降り/つまずいて(不本意:~てしまう) 114 ~始末だ こ・そ・あ:この/こんな  +  始末だ 動詞   :原形/ない形 ♪ 会話 ♪ 係長:息子にもう少し根性があるといいんだがな。一時間も勉強しないうちに、居眠りを始める始末でね。 李 :うちの子供にも呆れます。忘れ物を注意すれば、今度は落とし物をする始末です。 係長:あっ、しまった!僕も会社に大事な書類を忘れてきた。大人も子供のことは言えないなあ。おーい、お勘定! ♯ 解説 ♭  「始末」という名詞は、例文1のように「処理」、例文2のように「(よくない結果に至った)事情・経過」という意味を表しています。  そこから、「~始末だ」という文型が生まれますが、例文3~5のように「こ・そ・あ」や動詞について「~というよくない結果や事態になった」という意味を表します。後件でいい結果になったことが表せませんから、注意しましょう。  ○受ける大学の全てに不合格になる始末だ。  ×努力して○○大学に合格する始末だ。 § 例文 § 1.お前は自分のやったことの始末も自分でできないのか。全く始末に負えない奴だ。 2.ことの始末は、今まで述べたとおりです。 3.何だ、この始末は!一体、自分の責任をどうとる気だ。 4.あの二人は犬猿の仲で、ちょっとしたことでも、すぐ口論になる始末だ。 5.借金に借金を重ねたあげく、ついには夜逃げまでしでかす始末だ。 ★ 例題 ★ 1) お宅のお嬢さん(に/で)は手を焼いています。いつも男の子を殴っ(て/ては)(泣く/泣かせる)始末です。 2) 最近( )は、遊ぶ金(ほしい→    )に、売春( )走る女子中学生まで出る始末だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) どうしても/が/なくて(→文型257)/でも(=例えば~など) 2) 出し/に/行こう(→文型441) 115 *~上/~面 名詞: ×  +  上             ・           上の  + 名詞 名詞: ×  +  面(が/で/に・・・)   ・           面の  + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :捕鯨禁止条約をどう思う? 佐藤:鯨だけを特別視するのは理屈に合わないよ。日本人は昔から鯨を食べてきたから、生活感覚上も納得できないね。地上の全ての種を保存せよなど、机上の空論だよ。 李 :人類がこれだけはびこるとなると、いずれは恐竜の二の舞だろうなあ。 ♯ 解説 ♭  「~上(じょう)」は、例文1、2のように場所を表す名詞について「~の上で」を表すときと、例文3~5のように抽象名詞について「~の方面/点で」「~の観点から見て」の意味を表すときに分かれます。  類義語に「~面」がありますが、「面」は「良い面を伸ばす/社会の暗い面」のように、事態の一面または一部分を表しています。例文3~5のようにどちらも使える用例もありますが、下のような例では用法の違いも生じます。→例題1)   尊敬している歴史上(×歴史面 )の人物   政界の暗黒面(×暗黒上)を暴く。 § 例文 § 1.道路上で遊んではいけませんよ。 2.彼女は船上で、見送りの人の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。 3.この種の露骨な性描写は、教育上(⇔面で)好ましくない。 4.彼とは仕事面で(⇔上)のつきあいだけで、それ以上の関係ではありません。 5.日本の福祉は財政面で(⇔上)問題があるのはもちろんですが、元々制度面で(⇔上)欠陥があるのです。 ★ 例題 ★ 1) この賞は、学問(上/面で)有益な貢献をした人に(贈る/贈られる)(こと/もの)です。 2) 業務上(知る→   )得た個人情報( )関しては、規則上、口外できない(ことになる→       )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(慣用「~に手を焼く」)/ては(反復→文型188)/泣かせる 2) で(範囲限定)/ほしさ(→文型097)/に(<行為>に走る= 116 *~末(に)/*~末の 名詞: の  +  末(に)  ~ した 動詞:た形     末の  +  名詞 ♪ 会話 ♪ 佐藤:両派は長い争いの末にたもとを分かったね。仲を取り持とうとした努力も、水の泡と消えたわけだ。時間とともに利害関係が生まれて、組織をむしばむね。 李 :どんな争いも、終わってみると空しいなあ。公害裁判も長いこと争った末に和議に持ち込まれたけど、患者の多くは亡くなっているし、双方に不満は残ってるよ。 ♯ 解説 ♭  「~末(に 」は「~した結果~した」を表しますが、その過程で色々な困難や問題があったことが暗示している点に特徴があります。  同じ結果を表す「~あげくに」(→文型002)は、必ず悪い結果の発生ですが、「~末に」は悪い結果も良くない結果も表すことができます。これら「~末に」「~あげくに」は人為の事柄で何らかの話者の感情が含まれますから、自然現象そのものや、新聞報道のように客観事実をそのまま伝える文では不自然になります。そのときは「~結果」を使いましょう。  大雨の結果、山崩れが起こった。<自然現象>  裁判の結果、有罪が確定した。 <客観事実の伝達>  その他、「末」は単独の名詞として、「年の末<終わり頃>」「この子は末が楽しみだ<将来>」などの用法があります。 § 例文 § 1.いろいろ考えた末、進学をあきらめることにしました。 2.大恋愛の末の結婚が、なんと一年間で破綻とはねえ。 3.実験に実験を重ねた末に、ついに新薬の開発に成功した。 4.経営会議で協議の末、君を副社長に抜擢することにした。会社再建のため、腕を振るってくれたまえ。 5.別れるの別れないのとすったもんだの末、結局、元のさやに収まった。 ★ 例題 ★ 1) 戦後生き別れ(にした/になった)娘を(捜し求める/探し求めた)末、50年目にしてやっと(巡り会える/巡り会えた)。 2) あいつ( )きたら、人( )さんざん迷惑を(かける→   )末に、礼も(言う→   )ずに出て行った。 (^^)前課の解答(^^) 1) 上/贈られる(「~を~に~する」→「~が~に~られる」)/もの 2) 知り(→文型017)/に/ことになっている(規則→文型090) 117 *~過ぎる/~過ごす 動詞:[ます]形 +  過ぎる   ・             過ごす    ・ ♪ 会話 ♪ 李 :しまった、行き過ぎた。 良子:次の交差点を左折と言ったでしょ。 李 :右側のスタンドが気になってね。なんとレギュラーが90円を切ってたよ。 良子:あのトラックをやり過ごしてからUターンしたら?ねえ、右に寄り過ぎないでよ。恐いわ。 ♯ 解説 ♭  補助動詞「~過ぎる」(自動詞)は例文1、2のように、「程度が普通以上だ/過度だ」を表す初級表現で、広範に使われます。  「~過ごす」(他動詞)の形があって、例3~5のように「うっかり(予定された時間・場所や適度を)越えてしまう」という意味の表現になります。しかし接続する動詞は多くありません。「見過ごす・思い過ごす・やり過ごす・聞き過ごす…」のように慣用的に決まった使い方が多いので、語彙として覚えた方がいいでしょう。→例題1) § 例文 § 1.う~ん、食べ過ぎた。お腹がパンクしそうだ。 2.彼の業績はいくら高く評価しても、し過ぎることはないだろう。 3.うつらうつらしているうちに、うっかり乗り過ごしてしまった。 4.しまった!寝過ごしてしまった。 5.彼が君を恨んでいるなんて、それは君の思い過ごしだよ。 ★ 例題 ★ 1) 今度(だけ/ばかり)はこの失敗を見(過ぎ/過ごし)て(やる/くれる)が、「仏の顔も三度(だけ/ばかり)」だと思え。 2) 考えごとを(する→  )ながら(歩く→     )うちに、自分の家を(通る→   )過ごしてしまった。 (^^)前課の解答(^^) 1) になった/探し求めた/巡り会えた(文末は常に完了形) 2) と(~ときたら→文型229)/に/かけた/言わ(→文型121) 118 ~ずくめ 名詞     : ×     + ずくめ 一部の「ナ形」:<ナ形ー×> ♪ 会話 ♪ 李 :彼の話はいつも結構ずくめだが、どこまで信用できることやら。彼と一緒に出張してどうだった? 山田:彼のことは別にして、充実した一週間だったよ。仕事の外に、従弟の結婚式に出席できたし・・・。 佐藤:結婚式と言えば、あの黒ずくめの集団は異様だよね。前から来ると、思わず道をあけるよ。\ ♯ 解説 ♭  「~ずくめ」は「全て~ばかりだ/全て~一色だ」を表す接尾語で、良いことにも良くないことにも使われます。注意してほしいのは類義語の「だらけ」(→文型155)との違いです。    間違いだらけの作文    間違いずくめの作文  「だらけ」は「間違いがが普通以上にたくさんある」こと、「ずくめ」は「最初から最後まで、全てまちがいばかり」という点にあるでしょう。→例題1)  また、「だらけ」は常に良くないことに使われますから、「楽しいことだらけ/幸せだらけ」という表現はありません。しかし、「~ずくめ」を使って「楽しいことずくめ/幸せずくめ」と言うことができます。 § 例文 § 1.この学校は規則ずくめで、窮屈でしかたがない。 2.楽しいことずくめの毎日なんて、あるはずがないだろ。 3.幸せずくめに見えた彼女にも、人知れぬ悩みがあったんだね。 4.昇進したし、子供も生まれたし、今年はいいことずくめだった。 5.社長の話は、最初から最後まで小言ずくめで、もう聞いててうんざりしたよ。 ★ 例題 ★ 1) (この/こんな)誤字(だらけ/ずくめ)の作文を書いて、君、(恥ずかしい/恥ずかしくない)かい? 2) このところ、何をやっても(失敗→    )ずくめ( )、自分が嫌に(なる→    )ちゃうよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) だけ(→文型131)/過ごし/てやる/だけ 2) し(→文型269)/生歩いている(~うちに→文型016)/通り 119 ~ずじまい 動詞:[ない]形  + ずじまい ♪ 会話 ♪ 李 :東京にいらっしゃる間に、一度お会いしたかったのですが、今回も会えずじまいでしたね。 難波:李さん、来月は大阪にいらっしゃるのでしょう。そのとき、どこかおいしい店にお連れしますよ。 李 :ええ、是非。残念なことに、前回行ったときも、本場のお好み焼きを食べずじまいでしたから。 ♯ 解説 ♭  「~ずじまい」は「~ないで」を表す「~ず(に)」と「終わり」を表す「じまい」が結びついた文型で、多くの動詞について「(~しなければならないことを)結局~しないで終わる」という意味の名詞になります。後悔・残念・失望などの感情が強く現れる表現です。  また「~じまい」は一部の名詞や形容詞の語幹について「店じまい・五時じまい・早じまい」のように「<店を/五時に/早く>終わる」を意味することもあります。これは「終わり」の意味の接尾語です。 § 例文 § 1.出さずじまいのラブレター、そっと広げて懐かしむ。 2.「結婚しよう」という一言がとうとう言えずじまいだった。 3.やりたいことは山ほどあったが、結局、何もできずじまいでこの歳になった。 4.軍によって公表されずじまいになっていた開戦の真相が、ひとつ、またひとつと明るみに出てきた。 5.高価な百科事典を買ったものの、結局、読まずじまいで、本棚に飾ってあるだけだ。 ★ 例題 ★ 1) その調査報告書は企業の圧力(に/によって)握りつぶされ、発表(せず/されず)じまい(が/に)終わった。 2) あれほど見たかった映画(だ→   )が、仕事に(追って→     )、結局(見る→  )ずじまいだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) こんな/だらけ(「~ずくめ」は全て誤字)/恥ずかしくない 2) 失敗/で/なっ(口語:なってしまう→なっちゃう) 120 *~ずつ 数量詞・少し: + ずつ ♪ 会話 ♪ 山田:この窓口は凄い行列だね。あまり動いていないし、一時間ぐらいはかかりそうだよ。 李 :てきぱき処理しているのに、時間がかかっているようだ。システムに改善の余地ありだな。 佐藤:ちょっと窓口の数も足りないね。一人に三分ずつかかっても、一時間で二十人の勘定だよ。 ♯ 解説 ♭  「~ずつ」は「少しずつ/わずかずつ」のような例もありますが、ほとんど数量を表す語について、同じ量を均等に分けたり、均等に繰り返す事態を表す副助詞です。  なお、「毎に」(→文型088)と「ずつ」の間違いが多いので、次に違いを取り上げておきます。下例の「二時間毎に」は二時間休んで勉強するという意味の解釈できますが、やはり意味不明の文です。   毎晩、二時間ずつ勉強する。<二時間の勉強を毎晩繰り返す>   毎晩、二時間毎に勉強する。<二時間休んで一回勉強する> § 例文 § 1.毎朝、この錠剤を三粒ずつ服用してください。 2.五人一組のチームを作ります。じゃ、みなさん、五人ずつに分かれてください。 3.病状は少しずつ回復に向かっている。 4.この時計は毎日二分ずつ遅れるんです。 5.「ちりも積もれば山となる」だね。わずかずつでも積み立てた貯金が三十万円になったよ。 ★ 例題 ★ 1) ここに飴が十個(います/あります)。子供が五人(います/あります)。一人(で/に)何個(毎/度/ずつ)配ればいいですか? 2) 言葉は一度( )たくさん(覚える→      )とするより、毎日30分( )( )でも復習した方がよい。 (^^)前課の解答(^^) 1) によって(→文型348)/されず(受身)/に(結果の「に}) 2」 だった/追われ(受身:~を追う→~に追われる)/見 121 *~ず(に)/~ぬ/~ずば/~ずして/~ずとも 動詞:[ない]形  +  ず(に)     ・              ずして             ぬ + 名詞             ずば       ・             ずとも      ・ ♪ 会話 ♪ 李 :うちの部長が、この店のすき焼きを食べずして、すき焼きを語ることなかれと言ってましたよ。 難波:そこまでおっしゃられるのでは、食べずに大阪へ帰るわけにはいきませんね。 李 :食い道楽の部長のことですから、きっとうまいに違いありません。じゃ早速、注文しましょうか? ♯ 解説 ♭  「~ず」は「~ない」に相当する古語で、現代でも「~ないで」に相当する「~ず(に)」や、「ず」の連体形「ぬ」は「許されぬことだ」「浮かぬ顔をしているね」のように口語でも使われます。語形は「する→せず/せぬ」「来る→こず/こぬ」、その他は「行く→行かない→行かず/行かぬ」となります。   食事をしないで会社に行った。=食事をせず(に)会社に行った。  「~なければ」に相当する「~ずば」や、「~ず(に)」の強調形「~ずして」はことわざや決まった言い方に残っているだけですから、読んでわかれば十分です。 § 例文 § 1.彼は脇目もふらずに、研究に打ち込んでいる。 2.二人の間には、知らず知らずのうちに、愛が芽生えていた。 3.「雉も鳴かずば撃たれまいに」とは、自分の置かれた状況を考えずに、よけいな発言をし、自ら災いを招くことのたとえだ。 4.浮かぬ顔をしてるけど、何かあったの? 5.これは君のあずかり知らぬことだ。知らずともよい。 ★ 例題 ★ 1) 勉強も(しず/せず)に遊んで(だけ/ばかり)いる(と/とき)、また来年も浪人するわよ。 2) 警察から何を(聞く→    )ても、知ら( )存 ぜ( )で押し通せ。 (^^)前課の解答(^^) 1) あります/います/に(割合の「に」)/ずつ 2) に(割合:一度にたくさん)/覚えよう(→文型441)/ずつ 122 *~せいだ/*~せいで/*~せいか 名詞    :    の      +   せいだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>      せいで                       せいか (注:「~せいにする」という慣用的言い方がある→解説) ♪ 会話 ♪ 李 :自分の思い通りにならないのを、世の中や部下のせいにするようになったら終わりだよね。そう思わない? 百恵:それって、社長の歳のせいもあるんじゃない? 李 :今期の減益は為替差損のせいだけど、経営陣の見通しの甘さにこそ責任があると思うねえ。それにしても、何もかも担当者のせいにされては気の毒だよ。 ♯ 解説 ♭  「~せいで」は例文1~3のように、「~(の)原因・理由で~」を表しますが、常に後件で悪い結果を表します。同じ原因・理由の表現「~おかげで」(→文型018)は、常に後件で良い結果を表しますから、正反対の表現となります。どちらにも使える中立の表現が「~ために」(→文型152)です。  また、例文4の「気のせい」は「錯覚」を意味する慣用語ですが、「~せいか」と不確かさを表す「か」がつくと、「断定的できないが、たぶん~(の)せいで」という語感になります。「~せいで/~おかげで/~ために」はすでに起こったことを表す「ので」系表現(→資料、)で、文末で推量・意志表現はできませんから注意しましょう。  なお、例文5のように「~せいだ」の形や、単独で「せい」が使われるとき、「過失/過ち/(悪い結果になった)責任」の意味となります。 § 例文 § 1.このところ運動不足のせいか、体重が10キロも増えてしまいました。 2.生まれつき頭がよくないせいで、小さい頃から勉強の方は全然駄目でした。 3.熱があるせいか、頭がふらふらします。 4.気のせいか、ドアの外に誰かいるような気がします。 5.「この子がぐれたのは、お前の教育が悪いせいだ」「人のせいにしないでよ」 ★ 例題 ★ 1) 今回のことは誰の(おかげ/せい)でもない。上司(だ/である)私が判断を誤った(おかげだ/せいだ)。 2) あの時は(笑う→   )(過ぎる→    )せいで、お腹が(痛い→  )なったよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) せず/ばかり(→文型362)/と(→文型203) 2) 聞かれ(受身:~から~られる)/ぬ/ぬ(慣用語「知らぬ存ぜぬ」) 123 (せめて)~だけでも(いいから)/   (せめて)~なりとも せめて 名詞・数量詞  : ×  +  だけでも      ・     これ・それ・あれ : ×  だけでもいいから     名詞+格助詞   : ×     なりとも     ・ ♪ 会話 ♪ 良子: ひとかけらの誠意なりとも見せてくれていれば、こんなに頭に来ないんだけど、「一度ご使用になられたものは、お取り替えできません」の一点張りなの。 李 :せめて修理だけでもしてくれてもいいのになあ。それにしても、履いて一週間でかかとが折れるハイヒールなんて、粗悪品そのものだね。 ♯ 解説 ♭  「せめて~なりとも」は 最低限の条件を取り上げて「せめて~だけでもいいから」の意味を表し、文末では「~てください」「~たい」などの依頼や希望の表現と呼応します。   人目なりとも(・だけでも)会いたい。   お顔なりとも(・だけでも)拝見したい  しかし、「なりとも」には副助詞「~でも」に相当する表現があり、この場合は「~だけでも」が使えません。この「なり/なりと(も)」(→文型280・281)で別に取り上げています。   一円なりとも(=でも)無駄に使ってはいけない。   どこへなりとも(=でも)あなたについて行きます。 § 例文 § 1.せめて話しだけでも、聞いていただけませんか。 2.手紙でとまでは言わないが、せめて電話でなりとも近況を知らせてくれ。 3.ひと目だけでも戦後生き別れになった娘に会いたい。 4.そんなに困っていたのなら、親友の僕になりとも相談してくれればよかったのに。 5.先日、お顔なりとも拝見したいとお伺いしたのですが、あいにくお留守でした。 ★ 例題 ★ 1) ハワイは無理(でも/なのに)、せめて熱海へ(なりとも/たりとも)行って、のんびり(したい/しよう)ものだなあ。 2) 百点(取る→    )とは言わない( )、せめて60点なり( )( )取ってくれよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) せい/である(助動詞「~だ」は終止形)/せいだ 2) 笑い(→文型117)/過ぎた/痛く(イ形+なる→~くなる) 124 *~そうなら 動詞    :  [ます]形    +  そうなら 形容詞の語幹:ー[い]/ー[な] ♪ 会話 ♪ 李 :八時頃までは飲んでるから、来られそうなら店に電話をくれよ。電話番号は知ってたよな? 佐藤:手帳に書いてあるよ。少し仕事が残ってるけど、まあ良いか、今日は早めに切り上げるよ。 李 :まったく、お前も会社人間だなあ。ところで、真理さんも都合がつきそうなら誘って来いよ。 ♯ 解説 ♭  「~そうなら」は様態の「そうだ」(→ 資料「)の仮定形で、「もし~その可能性があれば」という意味を表します。見ての判断か、予感に使われます。  注意してほしいのは、様態の「~そうだ」は動詞につくときの否定形は「~そうにない/~そうもない」で、「<動詞>そうではない」の形はありません。ですから、その仮定は「~そうにないなら/~そうもないなら」になります。なお、「~そうにない」よりも「~そうもない」の方が失望・残念と言った感情が強く表れます。   間に合いそうにないなら(・そうもないなら/×そうではないなら)、~。 § 例文 § 1.もし雨になりそうなら、今日のハイキングは見合わせよう。 2.市場に行ってみて、ものがよさそうなら、すき焼きの材料を買ってきてください。 3.その作業、僕にもできそうなら、やってみてもいいですよ。 4.勝てそうなら闘うが、負けそうなら逃げるが勝ちさ。 5.もし金になりそうなら、その話しに乗ってもいいよ。\ ★ 例題 ★ 1) 「彼が忙しくてやれそう(ではない/にない)なら、外にやれ(そうな/そうに)人を探すしか道はないね」  「でも、彼に代わる人物(とすると/となると)、ちょっと簡単に(見つかる/見つかり)そうもないよ」 2) 全員の合意が(難しい→     )そうなら、多数決( )(決める→    )じゃないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) でも/なりとも(~たりとも→文型159)/したい(→文型130) 2) 取れ(命令形)/が/とも 125 ~損なう/~損ねる/~損ずる 動詞:[ます]形 + 損なう            損ねる           損ずる ♪ 会話 ♪ 李 :あれっ、もう二時か。食事に行き損なっちゃった。もう社員食堂は閉まっているし、出前でもとろうかなあ。 百恵:そう言えば、いつも真っ先に食堂に行く山田さんの姿も見えなかったわよ。珍しいこともあるものね。 李 :彼は今晩デートらしくて、いつになくビシッと決めた格好をしてたから、他人と見誤ったんじゃあないの? ♯ 解説 ♭  「~損なう/~損ねる」は「うっかり/つい~(行為や判断)を失敗してしまう」という意味を表します。どれも「実際はできるのに、不注意で失敗してしまって残念だ」という語感で共通しますが、「~損ずる」は会話で使われることは少なく、事物を駄目にしてしまったという結果の方に強調点があるでしょう。  同じような語に間違った結果を強調した「~誤る/~違える」がありますが、動詞の意味からわかりますので、取り上げませんでした。「見誤る」「見違える」「見損なう」のように、共通の意味の他に異なる意味が派生するものもありますから、辞書で確認してください。→例題1)   書き損なうー書き損ねるー書き損ずるー書き誤るー書き違う § 例文 § 1.一度や二度やり損なったからって、あきらめちゃいけない。 2.「急がば回れ」とは言い得て妙であるが、確かに「急いては事をし損ずる」ことが多い。 3.あの時、もし株を買っていたら大儲けしたのに、あ~あ残念、儲け損ねた。 4.でき損ないの息子をもつと苦労するよ。 5.こんなことで音を上げるなんて、お前のことを見損なっていたようだな。 ★ 例題 ★ 1) お前がぐずぐずしている(おかげ/せい)で、電車に乗り(誤って/損ねて)(しまう/しまった)じゃないか。 2) そのバイクはカーブ( )(曲がる→     )損ねて、ガードレール( )衝突した。 (^^)前課の解答(^^) 1) にない/そうな/となると(→文型253)/見つかり 2) 難し/で(方法)/決めよう(~(よ)うじゃないか→文型440) 126 ~そのもの/~そのものだ/~以外の何ものでもない 名詞・ナ形容詞の語幹: ×   +  そのもの                    そのものだ                    以外の何ものでもない ♪ 会話 ♪ 良子:裏の空き地に、大きな冷蔵庫が捨ててあって危ないわ。この前も子供が閉じこめられた事故があったばかりなのに、役所の怠慢そのものじゃないかしら。 李 :自分が何もしないで、役所の責任だけを追及するのは納税者の横暴以外の何ものでもないよ。 良子:住民の鏡そのものね。じゃ、あなた、何とかして? ♯ 解説 ♭  「そのもの」は名詞と接続するときは、前に来る語を強調して「他の何物でもなく、正しくそれ自身」という意味を表す名詞になります。「~以外の何ものでもない」はそのもっと強調した表現になります。  また、ナ形容詞につくときは、「真剣そのもの・元気そのもの・窮屈そのもの・幸せそのもの・正直そのもの・熱心そのもの…」のように、「非常に~だ」という程度強調の表現になります。 § 例文 § 1.彼は真面目そのものだ。ただ、ちょっと融通が利かないところがあるけれど。 2.彼は金八先生顔負けの熱血教師そのものだ。 3.コンピューターそのものは、使う人がいなければ、何も生み出さない。 4.「若いときの苦労は買ってでもせよ」と言われるが、苦労そのものに価値はない。 5.あの二人の関係は純愛以外の何ものでもない。 ★ 例題 ★ 1) 祖父は95歳な(ので/のに)、富士山に歩いて登れる(んだから/のに)、元気その(もの/こと)だ。 2) 気骨があると言う( )、何と言うか、あの老人の(頑固だ→    )は明治の男( )( )ものだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) せい/損ねて(「乗り誤る」は間違って他の電車に乗る)/しまった\ 2) を(通過地び「~を」)/曲がり/に 127 ~そばから 動詞:原形 + そばから ♪ 会話 ♪ 山田:稼ぐそばから奥さんが使ってしまい、いつまでもその日暮らしだと、彼の嘆くこと嘆くこと・・・。 佐藤:でも、彼もよくないですよ。給料が入るそばから、競輪・競馬場通いですから。似たもの夫婦ですよ。 山田:二人で使ってるんじゃ、世話ないや。「目くそ、鼻くそを笑う」といった類だね。 ♯ 解説 ♭  「~そばから」は完了形(「た」形)と接続する例も希にありますが、ほとんど動詞の原形に接続して「~すると、すぐ~」という意味を表します。「~と、すぐ~」に属する「~なり」(→文型280)、「~や否や」(→文型428)、「~が早いか」(→文型046)や「~とたんに」(→文型148)などと同義表現ですが、同一場面で反復される事象に使われるのが特徴で、以下のような一回限りの出来事に使うと不自然になります。この文型は「~そばから、すぐ繰り返して~」と副詞を入れて作文するようにするといいでしょう。→例題1)  君たちは私が教えるそばから(×が早いか)忘れていく。  泥棒は警官を見るが早いか(×そばから)逃げ出した。 § 例文 § 1.もうこの子ったら、作るそばから食べちゃうんだから。 2.歳を取ると物覚えが悪くなり、聞くそばから忘れてしまう。 3.私が飲み干すそばから、またなみなみと酒がつがれた。 4.消すそばから落書きがされて、これじゃまるでいたちごっこだ。 5.私が注意するそばから、ほら、また間違って。 ★ 例題 ★ 1) いくら洗濯し(たら/ても)、子供たちは洗う(が早いか/や否や/そばから)服を汚し(てしまう/ている/ておく)。 2) 君たち( )はあきれるよ。私が(教える→     )そばから忘れていき、次の日になると何一つ(覚えている→       )( )きている。 (^^)前課の解答(^^) 1) のに(理由の逆説)/んだから(理由の順接)/もの 2) か(→文型208)/頑固さ(ナ形から名詞へ)/その 128 ~そろい/~ぞろい/~そろって 名詞: ×  +  そろい/ぞろい   ・           そろって      ・ ♪ 会話 ♪ 良子:このディナーセット、素敵ね。手の届かない金額じゃないけど、置くところに困りそうだわ。 李 :どうせなら、お揃いのコーヒーカップも買わないか。あれっ、一そろいで5000円もするの? 良子:父と子そろっておっちょこちょいだし、いい物を買ってもすぐ割っちゃうから、やっぱりあきらめるわ。 ♯ 解説 ♭  動詞「揃う」から生まれた接尾語で、名詞に直接接続して、「全部整う/全て~だ」という意味を表し、接尾語「~揃い」は「ひと(一)そろい」以外は「~ぞろい」と読みます。  「~揃(そろ)って」は「(二人揃って/夫婦揃って/兄弟揃って…)どこへ行くの?」のように、「一緒になって」を意味することが多いのですが、例文4の例のように「どちらも」を表すときもあります。なお、「不揃いのリンゴ ・不揃いな歯並び 」のように「不揃い」という言い方もあるので覚えておきましょう。 § 例文 § 1.A航空のスチュワーデスは、実に美人ぞろいだなあ。 2.さすが中国を代表する書家の作品展だけあって、傑作ぞろいですねえ。 3.三つぞろいのスーツを一着買ったものの、着ていく機会がとんとない。 4.A教授の家の子は兄弟そろって秀才だが、遺伝だろうか。 5.味といい配膳の美しさといい手頃な値段といい、この店の料理は三拍子そろっているね。 ★ 例題 ★ 1) お前ら(といえば/ときたら)、何の役にも(立つ/立たない)ぼんくら(そろい/ぞろい)だ。 2) 結婚( )先立って、二人揃ってデパート( )家具 を一そろい(買う→   )に行きました。 (^^)前課の解答(^^) 1) ても(条件の逆説)/そばから(反復性のこと)/てしまう 2) に(感情Vの理由)/教える/覚えていない/と(→文型229) 129 ~だい/~かい 名詞    : ×        +  かい  動詞・形容詞:普通形 <ナ形ー×>     だい (注:名詞・ナ形と接続するとき「~なんだい/~だい」の両形) ♪ 会話 ♪ 李 :今夜あたり、横浜のベイ・ブリッジを見に行かないかい?今夜は満月だし、風もないようだし。 良子:橋もいいけど、中華街も魅力ね。しばらく行ってないし、それに烏龍茶や中華の食材も買いたいわ。 李 :よし、決まりだ。じゃ、久しぶりに家族そろって中華のフルコースを食べるというのはどうだい? ♯ 解説 ♭  「~だい/~かい」は「~(です)か/~(ます)か」に相当する男性専用の終助詞で、女性語はどちらも「~(な)の?」です。両者の違いは、「~かい」は疑問詞を含まない質問文の文末で使われ、「~だい」は疑問詞を含む質問文の文末で使われることでしょう。→例題1)2)  また「~のかい?」「~んだい?」など形もありますが、「~んですか」と同じで、事実は知った上で、事情・理由などの説明を求める文型です。   ほしいかい?ほしければあげるよ。<ほしいかどうか不明>   ほしいのかい?正直に言いなよ。 <ほしそうな顔や態度を見て> § 例文 § 1.ずいぶん歩いたけど、足はどうだい?痛くないかい? 2.君の彼氏はどんな人(なん)だい?いい人かい? 3.どういう風の吹き回しだい?突然訪ねてくるなんて、珍しいこともあるもんだ。 4.その言い方は少し失礼じゃないかい?いつからそんなに偉くなったんだい? 5.「こんな損害を出しておいて、ごめんで済む問題とでも思っているのかい?」「じゃ、どうしろと言うんだい」 ★ 例題 ★ 1) どこが失礼なん(だい/かい)?僕が君にどんな失礼なことを(言う/言った)と言うん(だい/かい)? 2) どうして(食べる→     )としないん( )い?おいしくないの( )い? (^^)前課の解答(^^) 1) ときたら(→文型229)/立たない/ぞろい 2) に(→文型311)/へ(「に」も可)/買い(移動の目的) 130 *~たいものだ/*~たくないものだ 動詞:[ます]形 + たいものだ            たくないものだ 動詞: て形  + ほしいものだ           ほしくないものだ ♪ 会話 ♪ 李 :たまには国内旅行でぱーっと豪遊したいものだ。外国旅行には飽き飽きしたよ。 山田:羨ましいなあ。僕なんか香港に行ったきりだよ。少しは君にあやかりたいものだ。 李 :人件費が高くて大変なんだろうけど、国内旅行は、もう少し安くなってもらいたいものだなあ。 ♯ 解説 ♭  「~たい」と「~たいものだ」(その否定は「~たくないものだ」)の一番大きな違いは、「~たいものだ」は今の希望ではなく、長い間ずっと持っている願望に使われることです。  今日は何かおいしいものが  ○ 食べたいなあ。(今の一時的感情」)  × 食べたいものだなあ。  いつか自分の家を  ○ 持ちたいものだ。(長年の夢)  ○ 持ちたい。(今の一時的感情) § 例文 § 1.歳はとっても、心の若さだけは保ち続けたいものだ。 2.仕事、仕事に追われる毎日から離れて、一ヶ月ほどのんびりしたいものだ。 3.もう一度、あの夢に燃えた時代に戻りたいものだ。 4.望むらくは、戦争と差別のない世界になってほしいものだ。 5.出世のためとあれば、友人でさえ踏み台にする。あんな彼みたいな人間にだけは、なりたくないものだ。 ★ 例題 ★ 1) 誰だって汚い仕事には(就きたい/就きたくない)ものだ。しかし、誰かがそれをしている(からこそ/からには)、この社会は成り立っている(の/こと)だ。 2) 命を捨てても(惜しい→     )(ようだ→   )燃える恋愛がして(みる→  )たいものだわ。 (^^)前課の解答(^^) 1) だい/言った/だい 2) 食べよう(「~ようとする」の否定形→文型441)/だ/か 131 *~だけ/*~のみ 名詞(+格助詞):  ×        +   だけ  ・ 動詞・形容詞  :普通形<ナ形ーな>    のみ  ・ ♪ 会話 ♪ 李 :やるだけやったんだから、後は試験結果の発表を待つのみだよ。今日は好きなだけ飲みな。 小孫:でも、もし落ちたらと思うと、やっぱり心配で。 李 :その時はその時だよ。「天は人の道を閉ざさず」さ。 良子:あれだけがんばったんだから、きっと合格するわよ。さあ、冷めないうちに召し上がれ。 ♯ 解説 ♭  限定「だけ」の書き言葉が「のみ」で、例えば例文1、2の「~だけ」は「~のみ」に置き換えることができます。例文3は「~だけ」が程度を表す例で、「これだけ=これほど=ここまで」は同義なので、形を正確に覚えてください。  例文4、5は肯定では「~ば、その全て~」、否定では「~ても、その全て~」を表す慣用文型です。よく使われるのは以下の形です。   ほしければほしいだけ、どうぞ。   食べられるだけ、どうぞ。   食べたいだけ、どうぞ。   言うだけ無駄さ。  なお、「~のみ」は限定する用法があるだけで、例文3~5や上例のような「~だけ」の慣用文型では使えません。 § 例文 § 1.このことは君にだけ(⇔のみ)話すよ。 2.口約束だけ(⇔のみ)では信じられないね。 3.これだけ(⇔これほど/⇔こんなに/⇔ここまで)言っても、お前はまだわからないのか。 4.さあさあ遠慮なく、この苺、ほしいだけ持って行ってください。 5.その客は文句を言うだけ言って、帰って行ったよ。 ★ 例題 ★ 1) できる(だけ/のみ)やってみますが、もし期日(まで/までに)間に合わなくても、怒らない(でいただけ/でいただき)ませんか。 2) 彼( )なんかお金を貸す( )( )無駄よ。あの人はお金があればある( )( )、全部使ってしまうんだから。 (^^)前課の解答(^^) 1) 就きたくない/からこそ(→文型050)/の(~からこそ~んだ) 2) 惜しくない/ような(+N=燃える恋愛)/み 132 *~だけあって/*~だけの/*~だけのことはある 名詞    :   ×       +   だけあって    ・ 動詞・形容詞:普通形 <ナ形ーな>     だけある                       だけのことはある                       だけの+名詞    ・ ♪ 会話 ♪ 良子:ガイドブックで紹介されるだけあって、店も多いし、大変な人出ねえ。迷子になりそうだわ。 李 :迷子になったら、ここで落ち合おう。日曜日とあって、僕らみたいな観光客も多いなあ。 良子:それに、産地直売だけのことはあって、何もかもめちゃ安よ。買いたいものが多くて、目移りするわ。 ♯ 解説 ♭  「~だけの」は「~にふさわしい/~に相応する程度の」を表し、例えば「~するだけの<価値・能力・効果/量・意味・もの・金…>」の形を作ります。意味は文脈で異なりますが、例文1は「~のに必要な~」、例文2は「~のにふさわしい~」という意味になるでしょう。  ここから「~だけのことはあって」と、その短い形の「~だけあって」という文型が派生しますが、「~にふさわしい価値があって」という感嘆・賛辞を表す文型となります。「~だけのことはある/~だけある」は、例文5のように文末で助動詞として使われます。この用法は副詞「さすが」と呼応し、「さすが~だけあって/だけのことはある」のように使われることが多いでしょう。 § 例文 § 1.もちろんほしいことはほしいんですが、それを買うだけのお金がないんですよ。 2.買う買わないは別として、一見するだけの価値はある。 3.時間をかけた作品だけあって、さすがに見事なものだ。 4.京都はさすが長い歴史をもった古都だけあって、名所古跡には事欠かない。 5.この不況にもびくともしないとは、さすが大企業だけのことはある。 ★ 例題 ★ 1) さすが名菓(にとって/として)(知っている/知られている)だけあって、その名(を/に)恥じない味だ。 2) 警視庁きって( )辣腕刑事と言われている( )( )のことはあって、外の刑事( )は目の付け所が違う。 (^^)前課の解答(^^) 1) だけ/までに(→文型402)/でいただけ(可能形を使うと依頼) 2) に/だけ/だけ(解説参照) 133 *~だけでなく~も/* ~のみならず~も 名詞(+格助詞):   ×       + だけでなく~も~ 動詞・形容詞  :普通形 <ナ形ーな>   のみでなく~も~                      のみならず~も~                      のみか~も~      ♪ 会話 ♪ 李 :ナイフを鞄にいつも入れて持ち歩いている中学生が、四人に一人はいるって書いてあるけど、こうなると親や学校だけでなく、社会全体でも取り組む問題だなあ。 良子:うちの小平だって、外で何してることやら。まさか喝あげなんてしていないでしょうねえ。 李 :念のために、鞄の中を調べておけよ。 ♯ 解説 ♭  「~だけでなく~も~」は「~に限定できない。それ以外にも~」という意味を表しますが、その改まった言い方として「~のみならず~も~/~のみか~も~」文型があります。しかし、「~のみならず~も~」は文語なので、会話で使うと硬い印象になります。  また「~ばかりでなく~も~/~ばかりか~も~」(→文型363)なども同じ意味の用法で、自由に置き換えることができます。 § 例文 § 1.彼は優しいだけでなく、勇気もある好青年です。 2.その方法は効率的なだけでなく、経済的でもある。 3.彼女は英語のみか、フランス語・ロシア語もぺらぺらです。 4.殴った方だけでなく殴られた方にも問題はあったはずです。けんかの一方だけしかるのは不公平です。 5.口先のみでなく、実際に行動しろ。不言実行あるのみだ。 ★ 例題 ★ 1) 「人間の頭脳は目指す(べき/べく)目的が(与えられれば/与えられなければ)、活性化しない(だけ/のみ)ならず、退化(さえ/こそ)する」と脳学会で発表された。 2) タイのバーツ( )端( )発した金融危機は、近隣諸国のみ( )日本( )まで波及した。 (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/知られている/に(→文型324) 2) の(→文型061)/だけ/と(「AはBと違う/AはBと同じだ」) 134 *~だけでも/*~だけでは~ない 名詞(+格助詞):   ×       +  だけでも 動詞・形容詞  :普通形 <ナ形ーな>    だけでは~ない ♪ 会話 ♪ 李 :列車の出発時間までに、まだ二時間もあるなあ。 良子:市場にでも行かない?見ているだけでも楽しいわ。 李 :それだけでは、ちょっと物足りないなあ。そうだ、せっかく港町に来たんだし、海鮮でも食べようよ。 良子:ついでに一杯飲もうって魂胆ね。図星でしょう。 李 :はっは、ばれたか。 ♯ 解説 ♭  「~でも」「~では」には元々条件の用法がありますが、それが限定の「だけ」と結びついたのがこの文型です。「~だけでは」は文末が肯定となり、「~だけでは」は文末が否定になることに注意すればいいでしょう。→例題1)2)   私一人でも(→だけでも)できます。   私一人では(→だけでも)できません  「せめて~だけでも」(→文型123)の形で依頼や希望を述べる場合がありますが、別項で取り上げてあります。 § 例文 § 1.全額とは言わないが、利子だけでも払ってくれ。 2.見ているだけではつまらないよ。君もやってみたら? 3.そのような生物兵器が実際に使われるとしたら、想像しただけでも身の毛がよだつ。 4.戦前の日本は、天皇制を批判しただけでも監獄にぶち込まれたものだ。 5.才能があるだけでは成功できず、また成功しただけでは幸せになれないのが人生というものだ。 ★ 例題 ★ 1) 三食きちんと食べて(いく/いける)(だけでも/だけでは)、幸せと思わ(ないでは/なくては)ならないよ。 2) (負ける→    )(悔しい→    )がっているだけでは、あのチーム( )は(勝てる→     )ぞ。 (^^)前課の解答(^^) 1) べき(→文型382)/与えられなければ/のみ/さえ(→文型100) 2) に/を(慣用語「~に端を発する」)/か/に(~まで→文型404) 135 *~だけに 名詞    : ×       +   だけに  動詞・形容詞:普通形 <ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :今回の総選挙は、○○党にとっては、後がないだけに、絶体絶命のピンチだね。 山田:与党なのか野党なのか、旗幟も不鮮明になって、従来の支持層も分解しているだけに、苦戦は免れないね。 李 :いずれにしても、政治への失望と無関心が蔓延していることが、日本社会の一番の問題だろうなあ。 ♯ 解説 ♭  「~だけに」には二つの用法があります。一つは「~だけあって」(→文型132)と同じ「~にふさわしい価値があって」という感嘆・賛辞の表現で、例えば例文1、2の「~だけに」は「~だけあって」で置き換えられます。  もう一つは「~だから、なおさら~」という理由を表す表現で、客観事実Aの理由で、一層Bであると相関関係を強調します。これが「~だけに」特有の用法ですが、この場合は「~だけあって」が使えません。→例題1)   新聞記者だけに(・だけあって)、政界の裏にも詳しい。   女の子だけに(×だけあって)、夜道の一人歩きはしない方がいい。 § 例文 § 1.スポーツマンだけに(⇔だけあって)、体格が立派だ。 2.老舗だけに(⇔だけあって)、店構えに風格がある。 3.女の子だけに、一人で外国旅行に行かせるのは心配だ。 4.合格するとは思っていなかっただけに、合格通知を受け取ったときの喜びはひとしおだった。 5.世間の恐さを知らないだけに、彼は思ったことが平気で言えるのだ。 ★ 例題 ★ 1) 銀行(をめぐる/に対する)風当たりが強い折り(だけに/だけあって)、関係者は発言にくれぐれも注意して(もらいたい/あげたい)。 2) うちの子は(生まれつく→     )体が弱く、それだけ( )、親元から離すこと( )不安があるんです。 (^^)前課の解答(^^) 1) いける/だけでも/なくては(→文型271) 2) 負けて/悔し(イ形の語幹+がる)/勝てない 136 ~た‐ことにする/~た‐ことになる 動詞:た形 +  ことにする          ことになる ♪ 会話 ♪ 課長:君の対応に問題なしとはしないよ。しかし今回だけはなかったことにしておこう。 山田:ありがとうございます。 李 : 部長には、「相手の方針変更でやむを得ず」ということにしておいたらどうでしょうか。 課長:君も悪知恵が働くねえ。 ♯ 解説 ♭  「~ことにする/~ことになる」は動詞の原形と結びつくか、完了形(「た」形)と結びつくかで意味が異なってきます。  「原形+ことにする」(→文型089)は「~することに決める」、「原形+ことになる」(→文型090)は「~することに決まる/~必然的結果になる」という意味を表します。一方、「~したことにする」は「(実際はそうではないが、)~したと考える」の意味で、現実はそうではなかったことを、仮に「そうである」とみなす場合に使われます。「~したことになる」は「(実際はそうではないが、)一般にそのように考えられている/考えることができる」という意味の客観表現になります。→例題1)2)   出席したことにする。<~とみなす>   出席したことになる。<一般に~とみなされる> § 例文 § 1.説明不足の点はあるが、これでこの課は終わったことにする。 2.今の話は聞かなかったことにするが、発言には注意した方がよろしい。 3.今のカンニングは見なかったことにするが、もう一度したら許さない。 4.汚いわねえ。これじゃ掃除をしたことにならないわよ。 5.表向きは研修費として使われたことになっているが、実は幹部連中の遊興費なんだよ。 ★ 例題 ★ 1) 大学(を/から)(卒業する/卒業した)こと(にしている/になっている)が、実を言うと中途退学なんだ。 2) これ( )10課までが一通り(終わる→    )ことに( )( )ので、明日、試験をすることにします。 (^^)前課の解答(^^) 1) に対する(→文型322/→文型478)/だけに/もらいたい 2) 生まれついて(「生まれつき」とも言う)/に/に 137 ~出す/~始める 動詞:[ます]形  +  出す              始める ♪ 会話 ♪ 百恵:ねえ、ねえ、課長が昨日、若い女性と新宿を歩いてたっていうもっぱらの噂、知ってた? 李 :田舎から孫娘が出てきて、語学学校に通い始めると聞いていたけど・・・。 佐藤:でも何だか臭いなあ。田中さんが声をかけたら、課長、突然慌て出したとか言ってたよ。 ♯ 解説 ♭  「~始める」は動作動詞について「食べ始める/読み始める…」のように動作の開始を表しますが、「~出す」も自然現象や感情・生理などを表す動詞についたり、「今にも~出しそうだ/~出さんばかりだ」の形で現象の発生や開始を表します。  「~出す」しか使えない動詞として、感情・生理を表す「泣く・笑う・怒る・はにかむ・照れる・慌てる…」や、音の発生を表す「鳴る・とどろく・響く…」などがあります。これらの無意志性の動詞には「~始める」が使えません。逆に、同じ開始でも「~出す」は自然・突発性の強い表現で人為的・意志的なことではありませんから、「~始める」のように後件で「~しなさい/~てください/~つもりだ」などの意志表現が使えません。どちらも使える場合も、「雨が降り始める」は「しだいに/だんだんと」、「雨が降り出す」は「突然/急に」というような語感の差を生みます。→例題1)  なお、「~出す」は開始以外に、「引き出す/取り出す…」<外への移動>、「作り出す・考え出す・編み出す…」<創出>を表す複合動詞も作ります。 § 例文 § 1.制限時間は1時間です。すぐ書き始めてください。 2.突然何を言い出すのかと思ったら、何だそんなことか。 3.後ろの席のみんなが急に騒ぎ出したので、私は思わず振り向いた。 4.気になり出すと、もう居ても立ってもいられなくなった。 5.洪水で川の水が溢れ出したとの情報を聞いて、周辺の住民は次々と避難し始めた。 ★ 例題 ★ 1) 市長がその事故のいきさつを(話す/話し)始めると、傍聴席の市民は「先ず、責任の所在を明らかに(する/しろ)」と騒ぎ(出した/始めた)。 2) 雨が(降る→   )(出す→   )(そうだ→    )嫌な雲行きだなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) を/卒業した/になっている 2) で(時間・期間の限定)/終わった/なる 138 ただ(単に/ひとり) ~ だけだ/のみだ ただ ~ 名詞(+格助詞):    ×     +  だけだ 単に   動詞・ 形容詞  :普通形 <ナ形ーな>   のみだ ひとり ♪ 会話 ♪ 課長:厳しいことを言うようだが、このパンフレットはただ見た目がよいだけという印象だな。 李 :人事を尽くしたのですから、後はただ天命を待つのみです。客先にも配布済みですし・・・。 課長:ちと大げさだな。でも確かに最近の消費者は、中身より見た目で選ぶ傾向があるからなあ。 ♯ 解説 ♭  これらの副詞は文末で「~だけだ/~のみだ」と呼応して、事物を一定の範囲内に限定します。「ただ」と「単に」は例文1~5のどの例にでも使えますが、「ただ」は「他のことを考えず、ひたすら/一心に~する」という意味を持っています。一方、「単に」は単なる限定です。   ただ金儲けだけ考えている。<=専念>   単に金儲けだけ考えている。<=限定>  この中で「ひとり」という副詞は、例文5のように「人」または擬人化できる対象にしか使えません。ですから、例文1~4では「ひとり」は使えません。多くは「ひとりAだけではなくBも~だ」の形で使われます。→例題1) § 例文 § 1.私はただ彼に忠告しただけで、悪気などさらさらありませんでした。 2.単に知識があるだけでは、実際の役には立たない。 3.私はただ心の命ずるところに従うのみだ。 4.それは単に今までの作品を模倣しただけで、なんの創造性もない。 5.これはひとりわが国だけの問題ではなく、アジアの安全保障に関わる問題だ。 ★ 例題 ★ 1) この件(について/にとって)反対している(の/こと)は、ひとり私(のみだ/のみではない)。 2) 彼を(怒る→     )のは拙かったが、僕は(思う→    )ことを、ただ(言う→    )だけだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 話し/しろ(命令形)/出した 2) 降り/出し/そうな(様態の「そうだ」の連体形) 139 ~たつ/~だつ 自動詞:[ます]形 + たつ 名詞 : ×    + だつ ♪ 会話 ♪ 良子:株が大暴落したわよ。テレビに映ってた人達、殺気立ってたわ。 李 :一本調子に上げてきたから、一旦崩れ出すと、市場全体が浮き足立つのさ。この低迷は長引くよ。 良子:色めき立ったり、落ち込んだり忙しいことね。まあ、株式投資なんて、私たちには縁のない世界だけど。 ♯ 解説 ♭  自動詞「~たつ」は動詞の[ます]形と結びついて、「降り立つ・切り立つ・旅立つ・飛び立つ…」や、例文1~3のように「激しく~する/非常に~する」という意味を表す複合動詞を作ります。その例として、「いきり立つ・勇み立つ・色めき立つ・気負い立つ・奮い立つ…」などがあります。  「~だつ」は動詞「立つ」から生まれた接尾語で、名詞について名詞を動詞化しますが、例文4のように出発を表す場合と、例文5のように通常以上の事態やその発生を表す場合があります。後者の例として「苛立つ・泡立つ・浮き足立つ・目立つ・鳥肌立つ」などがありますが、多くは慣用的に使い方が決まっていますから、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.煮え立った湯をかぶって大やけどをした。 2.いきり立った群衆は、首相官邸に押しかけた。\ 3.男は燃え立つ火の中に飛び込み、中にいた子供を救った。 4.子供はいずれ親元から巣立つもの、暖かくわが子の旅立ちを見送ってやろうよ。 5.彼の能力は際だっているが、チームワークに必要な協調性に欠けるようだ。 ★ 例題 ★ 1) 華があると言うか、(何と/どう)言うか、彼女はどこ に(いたら/いても)目(たつ/だつ)ねえ。 2) ヒットラーの演説は、人を(煽る→    )たて、(奮う→   )立たせる魔力の(如く→  )ものがあったと言われている。 (^^)前課の解答(^^) 1) について/の(=人)/のみではない(「~のみだ」の否定形) 2) 怒らせた(使役形&完了)/思った(完了)/言った(完了) 140 *~たっけ/*~だっけ 名詞    :  だ / だった     +  っけ 動詞・形容詞:た形<ナ形ーだ/だった> ♪ 会話 ♪ 山田:えーっ、そんなこと頼まれていたっけ? 百恵:この頃、忘れっぽいのね。痴呆症が始まったの? 山田:冗談がきついよ。何を買って来る約束だったっけ? 百恵:ブランド物の旅行用かばんよ。 山田:あれっ、そんな約束したっけ? 百恵:あきれた人ね。人の話を上の空で聞いてるからよ。 ♯ 解説 ♭  終助詞「~たっけ/~だっけ/~だったっけ」は過去回想の表現です。多くの場合、例文1~3のように「一度聞いたことがあるようなんですが、確か~でしたね?」という気持ちで相手に尋ねるときに使われます。しかし、もしそれが独り言だったり、詠嘆が込められたりしていれば、例文4、5のように過去の回想そのものになります。  会話では、例えば「今度の試験はいつだったっけ」を例にとると、最後を「け↑」のように上げれば質問、「け↓」のように下げれば独り言・自問となるでしょう。 § 例文 § 1.今度の試験、範囲はどこからどこまでだったっけ? 2.あなたのお名前はなんとおっしゃいましたっけ? 3.君んち、確か八百屋だっけ? 4.あれからもう20年だねえ。子供の頃、よく君とけんかしたっけなあ! 5.そういえば、そんなこともあったっけ!懐かしいなあ。 ★ 例題 ★ 1) 売れない前座歌手時代が長くてね、これまで何度も歌を(やめる/やめよう)と(思う/思った)ことも(ある/あった)っけなあ!でも、やめなくてよかったよ。 2) 彼、どこの(誰だ→    )っけ?どこか( )会った覚えがあるんだが、(思う→   )出せないんだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 何と(→文型208)/いても(条件の逆説)/だつ 2) 煽り/奮い/如き(→文型083) 141 ~たて/~たてだ 動詞:[ます]形  +  たてだ             たてが             たての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :あ~っ、うまい!湯上がりのビールは最高だ!あと一本、飲みたいなあ。 良子:この料理はできたてがおいしいのよ。ビールを飲んでばかりいないで、熱いうちに召し上がれ。李  :うん、これはうまい!とても習いたてとは思えない。 良子:お世辞を言ったって、もうビールは出ないわよ。 ♯ 解説 ♭  「~たて」は動詞の[ます]形について、「~したばかりの<時・状態・もの>」を表す名詞を作りますが、「産みたての卵・炊きたてのご飯・入学したて・入れたてのお茶・入りたての社員・採れたての果物…」のように、常に新しさ・新鮮さなどのプラス面を強調するのが特徴です。「~たて」の用例は「~したばかり」(→文型148)で置き換えられますが、「~したばかり」は動作や事態の終了して時間がたっていない状態を表すだけです。逆に言えば、「~たて」には新しさや新鮮さを表さない動詞にはつかないことで、例えば、「食べたて・寝たて・壊したて…」などの用法はありません。  また、類義語に「~あがり」(→文型003)がありますが、一部の自動詞について「~した完成品」を表します。意味の違いに注意してください。→例題1)  できたての料理   <まだ暖かくておいしい>  できたばかりの料理 <少し前にできた>  料理のでき上がり  <完成> § 例文 § 1.牛乳は搾りたてが一番おいしいよ。 2.日本に留学したてのころは、言葉がわからなくて困りました。 3.焼き芋、石焼き芋、焼きたてのほやほや。 4.ペンキ塗りたてですから、触らないでください。 5.あのふたりは結婚したての熱々で、こちらはすっかり当てられっぱなしだよ。 ★ 例題 ★ 1) お~い、みんな、やっと学校新聞が刷り(あがった/あげた)よ。刷り(たて/あがり)だから、まだインクのにおい(が/を)するよ。 2) 医者に(なる→    )たて( )頃は、手術室で血を見て、貧血を(起こす→    )こともあった。 (^^)前課の解答(^^) 1) やめよう/思った(~ことがある→文型080)/あった 2) だった(過去回想)/で/思い 142 ~たてる 他動詞:[ます]形 + たてる ♪ 会話 ♪ 李 :どうしたんだい?さっきから会社の不満ばかり言いたてているけど、課長に嫌みでも言われたの? 山田:今年の冬のボーナス、いくらだか知ってるか?あの金額を見たら、とても冷静ではいられないよ。 李 :出るだけでもましだと思った方がいいよ。みんなが仕事する気をなくしたら、それこそ会社は倒産だよ。 ♯ 解説 ♭  「~立てる」は動詞の[ます]形について、例文1、2のように「突き立てる・埋め立てる・組み立てる・積み立てる…」などのように原義に近い意味の複合動詞や、例文3~5のように「激しく~する」という意味の程度強調の複合動詞を作ります。後者の例としては、「煽りたてる・言い立てる・追い立てる・駆り立てる・せき立てる・責めたてる・攻めたてる・吠えたてる・ほめたてる…」などがありますが、「~立てる」の前につく動詞はほぼ決まっていますから、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.この一帯は東京湾をごみで埋め立ててできた埋め立て地だ。 2.その雑誌は民主主義の旗手として、戦後の出版界に不滅の金字塔をうち立てた。 3.彼が新人賞を取った頃は口々に褒め立てた人々が、落ち目になると、てのひらを返したように冷たくなった。 4.ちょっとしたことで、すぐ騒ぎ立てる最近のテレビ報道には問題が多い。 5.自分の責任は棚に上げて、部下の失敗を責めたてた。 ★ 例題 ★ 1) 飾り(尽くした/切った/たてた)部屋よりも、シンプル(な/で)清楚な部屋の方(が/は)僕は好きだ。 2) 新聞で(盛んだ→    )汚職事件の事を(書く→  )立てているが、当人は平然と(する→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 上がった(助詞「が」に注意→文型003)/たて/が(→文型031) 2) なり/の/起こした(→文型080) 143 *たとえ~ても/*いくら~ても/*どんなに~ても たとえ/たとい ~ 名詞    : で      + も いくら       動詞・形容詞:て形 <ナ形ーで> どんなに どんな+名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :たとえ山田君から誉められても、適当に割り引いて聞かないとね。その日の気分でころころ変わる人だよ。 百恵:でも淡白で、どんなときでも後を引かないからいいわ。いつまでもねちねちしてる誰かさんとは大違いよ。 李 :それって、俺のこと?でも、くよくよしない彼の性格が羨ましいよ。明日は明日の風が吹くって感じだ。 ♯ 解説 ♭  「たとえ~ても」は仮定条件の逆説で、まだ起こっていないことを条件にしています。「たとえ~ても」と「たとい~ても」は意味も用法も同じですが、話し言葉では「たとえ~ても」がほとんどです。  一方、「いくら~ても」「どんなに~ても」は既定条件の逆説で、もう起こったことを条件にしています。そのため、以下のような違いが現れます。   たとえ読んでも、わからない。<まだ読んでいないが、わからないだろう>   いくら読んでも、わからない。<もう何度も読んだが、わからなかった>  なお、「いくら」と「どんなに」は違いがあって、「いくら」は「何度も・何回も」という回数から程度まで広く使えますが、「どんなに」は程度しか表さないので、用法としては「いくら」よりも狭くなります。→例題1) § 例文 § 1.たとえ何億の金があっても、死に直面したきには、何の意味もない。 2.たとえ冗談でも、言っていいことと悪いことがある。 3.いくらお金があっても、使い方を知らなければ、ただの紙切れに過ぎないよ。 4.愛しているよ。たとえ死んでも、君を離さない。 5.どんなに時代が変わっても、変わらぬものもあるんだ。 ★ 例題 ★ 1) (いくら/どんなに)電話しても、彼につながらなかったんだ。まさか、部屋で死んでる(なんか/なんて)ことはない(だろう/かもしれない)ね。 2) たとえ冷血漢と(言う→     )ても、(貸す→     )金は返してもらう( )が俺の商売だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) たてた/で/が(比較文「~より~の方が~」) 2) 盛んに(ナ形)/書き/している(眼前の事実は「~ている」形) 144 *~た‐ところ~した 動詞: た形  + ところ  ~ した                  だった ♪ 会話 ♪ 良子:海外旅行の懸賞に応募したところ、なんと当選したのよ。「こいつは春から縁起がよい」だわ。 李 :僕も組合の役員に立候補したところ当選したよ。色々と経験できるので期待してるんだ。でも、君も知ってのとおり、半ば割り当てみたいなものだけどね。 良子:でも、当選は当選よ。お祝いしましょ。 ♯ 解説 ♭  「~た‐ところ~した」は既定・発見の用法で、「~したら~した」と同じ意味になりますが、意外感や驚きをいっそう強調した表現です。実際に発生した既定事実なので、文末で 完了形(「~した/~だった」)と呼応します。→例題1)2)  「~すると~した」も既定・発見を表しますが、「と」は習慣的・反復して起こっていることを表しますから、それを自然で当然のこととして受け止めています。これは、条件の「~と」と「~たら」の違い(→資料・)から生まれたものです。   家に帰ると、妻が料理を作っていた。 <習慣、いつものように>   家に帰ったら、妻が料理を作っていた。<驚き、珍しいことに> § 例文 § 1.見たところ、特に問題はないようだね。 2.先生に電話したところ、あいにく不在でした。 3.医者に診てもらったところ、悪性の腫瘍ではないとわかりました。 4.色々試してみたところ、この方法が一番いいという結論に達しました。 5.彼女を食事に誘ったところ、あっさりと断られてしまった。 ★ 例題 ★ 1) 受付の人(に/で)(尋ねる/尋ねた)ところ、そんな名前の社員はいないとのこと(だ/だった)。 2) 大学に願書を(送る→     )ところ、もう(締め切る→     )を(過ぎている→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) いくら/なんて(→文型274)/だろう 2) 言われ(受身:人に~と言われる))/貸した/の 145 *~た‐ところが ~ した 動詞: た形  + ところが ~ した                  だった ♪ 会話 ♪ 山田:彼、一目ぼれの彼女と結婚したところが、いろいろと大変なことを背負い込んだみたいだよ。 李 :あいつ、面食いだからなあ。とかく美人というのはわがままなんだよ。 山田:どうだって彼に聞いたところ、洗濯物は山のよう、部屋の中は散らかしっぱなしだってさ。 ♯ 解説 ♭  「~た‐ところが」は「~したが/~したけれども」という逆説を表すのですが、予想外・意外な事実の発生を後件で述べるのが特徴で、「~と思ったが、実際はその予想や期待に反して~」という意味を表します。例えば、下の用例ですが、「~た‐ところが、~」を使うと、「しまった!困った!どうしよう!」などの大慌ての情景が浮かんできます。しかし、「~が/~けれども」は単なる事実の描写になります。   お金を払おうと思ったが、財布が見あたらなかった。<客観的叙述>   お金を払おうと思ったところが、財布が見あたらなかった。<慌てた様子>  その他、例文5のように「ところが」は接続詞としても使われます。→例題1) § 例文 § 1.親切のつもりで忠告したところが、恨まれてしまった。 2.ローンで家を買ったところが、火事で焼けてしまった。 3.日曜日なのでいると思って、彼の家に行ったところが留守だった。 4.軽い気持ちでカラオケコンクールに出たところが、優勝してしまった。 5.天気予報は「明日は曇りのち晴れ」と言っていた。ところが、なんと雨が降りだした。 ★ 例題 ★ 1) この商品は絶対(売る/売れる)と(誰/誰も)が思っていた。(やはり/ところが)、さっぱり駄目だった。 2) (似る→    )人っているね。てっきり劉君だと思って声を(かける→    )ところが、別人(だ→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/尋ねた/だった 2) 送った/締め切り([ます]形は名詞)/過ぎていた 146 *~た‐ところだ/*~た‐ばかりだ 動詞:た形  + ところ(だ/で/に)          ばかり(だ/で)          ばかりの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :日本に来たばかりの頃は、電車の切符も満足に買えなかったなあ。 良子:先ほども、自動券売機の前で困っている外国の人に、買い方を教えてきたところよ。 李 :君と初めて会ったのも、券売機の前だったね。あの時のことを思い出したよ。 ♯ 解説 ♭  「~た‐ところだ/~た‐ばかりだ」は初級文型ですが、用法上気をつけなければならないことがあります。「~た‐ところだ」は終わった直後の場面なので、「今・たった今・ちょうど」などの副詞とは一緒に使えますが、「一時間前に/三日前に」のような過去を表す語や副詞「まだ」とは一緒に使えません。  一方、「~た‐ばかりだ」は「まだ終わって時間がそれほどたっていない状態」を表す文型なので、「戦争が終わったばかりの頃」のように戦争が終わって2~3年経っていても使えます。また、「~た‐ばかりだ」には「~したばかりの+時/頃/ところ」の形がありますが、「~た‐ところ」にはありません。→例題1)   たった今、食べたばかり(⇔ところ)だ。   二時間前に食べたばかりだ(×ところ)だ。   まだ食べてから十分たったばかり(×ところ)だ。 § 例文 § 1.「遅くなってごめん」「ううん、僕も今来たところだよ」 2.「噂をすれば影が差す」とはよく言ったものだ。ちょうど彼の噂をしていたところに本人がにょこっと現れた。 3.会議は始まったばかりで、まだ、本題には入っていないよ。 4.昨日買ったばかりの服に、うっかり醤油をこぼし、しみをつけてしまった。 5.先の戦争が終わったばかりの頃、多くの日本人は茫然自失の状態だった。 ★ 例題 ★ 1) (まだ/もう)日本には(来る/来た)(ばかり/ところ)で、右も左もわかりません。 2) 田中はたった今(出かける→     )ところです が、何( )急用でもお(ある→    )でしたか。 (^^)前課の解答(^^) 1) 売れる(自V)/誰も/ところが 2) 似ている(「似た」も可)/かけた/だった 147 ~た‐ところで~ない 動詞・形容詞: た形  + ところで ~ ない ♪ 会話 ♪ 佐藤:さあ、三曲終わったら、交代、交代。 李 :君がマイクを放さないものだから、もう、こんな時間だよ。女房が心配してるよ。 山田:あれ、もう12時か。今から出たところで、終電には間に合いそうもないし、サウナで一泊しないか。 李 :独身は気が楽だねえ。悪いが、僕は失礼するよ。 ♯ 解説 ♭  「~た‐ところで」は常に文末で否定形(「ない」形)や「無駄だ/無意味だ/無理だ 」のような否定の意味の語と呼応して、「たとえ~ても、~ない」を表します。後件では「役に立たない・大したことはない・無駄だ」などの否定的な判断を表すのが特徴です。「~ても」と違って、文末で「~てください/~たい/~ほうがいい/~なければならない」などの意志表現や、「~した/~だった」などの既定表現が使えませんから、注意してください。   今更後悔しても(・後悔したところで)、仕方がないよ。   たとえ苦しくても(×苦しかったところ)で、がんばりなさい。   いくら待っても(×待ったところで)彼は来なかった。 § 例文 § 1.これ以上議論を続けたところで、堂々めぐりだ。 2.考えてばかりいたところで、一歩も前には進まない。 3.私が言ったところで、素直に聞くような奴じゃない。 4.この子にこんなに高価な百科事典を買ってやったところで、猫に小判ですよ。 5.たとえ失敗したところで、失うものがあるわけじゃないし、駄目でもともとさ。先ずやってみるよ。 ★ 例題 ★ 1) 学校の成績が少しばかりよかった(ところで/ところが)、それで将来が約束(する/される)(わけがない/わけにはいかない/わけではない)。 2) もう泣くのはおやめ、いくら(泣く→   )ところで、(死ぬ→   )息子は帰っては(来る→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) まだ/来た/ばかり 2) 出かけた/か/あり(→文型019) 148 *~た‐とたん(に)/~た‐矢先に 動詞:た形  + とたん(に) ~ した          矢先に ♪ 会話 ♪ 李 :山田の奴、課長が出かけたとたんに居眠りかい。あれっ、やばいぞ。課長が戻って来ちゃったよ。 課長:玄関を出ようとしたとたんに夕立が来てね。出かけるのは明日にしたよ。 百恵:ねえ、山田さんったらあ、このプログラム、どうなってるの?動き始めたとたんに画面が消えちゃったわよ。 ♯ 解説 ♭  「~た‐とたんに」は「~した瞬間に~した」を表す同時・連続発生の表現で、後件で予期しなかった突発・偶発事態の発生を表すのが特徴です。そのため最初から予定していた行動や意図的な動作には使えません。ここが同時発生を表す「~が早いか」(→文型046)や「~か~ないうちに」(→文型042)などとの違いですが、逆に偶発事態の発生には動作面に焦点がある「~が早いか」(→文型046)や「~か~ないうちに」が使えなくなります。→例題1)2)   座ったとたんに(×座るが早いか)、椅子が壊れた。   部屋に入るが早いか(×入ったとたんに)、テレビをつけた。  なお、「~た‐矢先に」は「~た‐とたんに」とほとんど同じ意味を表しますが、日常会話よりも新聞や報道などでよく使われる客観的な表現です。 § 例文 § 1.彼女は私の顔を見たとたんに泣き出した。 2.教室を飛び出したとたんに、先生とぶつかった。 3.荷物を持ち上げたとたん、腰に激しい痛みが走った。 4.息子の戦死の知らせを聞かされたとたんに、母親は全身の力が抜けていくのを感じた。 5.その原発事故は、科学者たちが安全対策の不備を警告した矢先に起こった。 ★ 例題 ★ 1) 「僕は彼女を一目(見る/見た)とたんに、好き(にして/になって)(しまう/しまった)んだ」  「つまり、彼女に一目惚れという(はず/わけ)ね」 2) 彼は(結婚する→     )とたんに、人( )変わったように横暴(になる→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ところで/される(受身)/わけではない(→文型455) 2) 泣いた/死んだ/来ない 149 ~だに 名詞(+格助詞):   ×     +  だに 動詞      :辞書形/ます形 ♪ 会話 ♪ 部長:旧い世代の私の目から見ても、彼はなかなかの人物だよ。何かやってくれそうな男だねえ。 李 :でも、周りの女性は彼のことなんか一顧だにしていませんよ。むしろ気味悪がっていますよ。百恵さんは? 百恵:あの彼と二人だけになるなんて、想像するだに恐ろしいわ。ブルドッグの方がまだましよ。 ♯ 解説 ♭  「~だに」は極端な例を取り上げて強調する古い表現で、「~だけでも/~さえ/~すら」に相当する表現です。例えば例文2は「~だけでも」に置き換えることができますし、それ例外は「~さえ/~すら」を使うことができます。この「~だに」は今日では書面語に属しますが、一般には否定形と呼応して「~だに~ない」の形で使われることが多いでしょう。   想像だにしなかった。  →想像さえしなかった。  →想像すらしなかった。 § 例文 § 1.えっ?私の絵が入選したの?夢にだに思わなかったわ。 2.死ぬ前に、一目だに行方しれずの息子に会いたい。 3.まさかこんなことになろうとは、思いだにしなかった。 4.あの当時ことは、思い出すだに嫌ですねえ。できれば忘れてしまいたい記憶です。 5.彼にいくら声をかけても、知らんぷりで、振り向きだにしなかった。 ★ 例題 ★ 1) 市場調査(だに/しか)(し/せ)ず、商品開発ができる(わけがない/わけにはいかない/わけではない)。 2) 溺れる子供を(助ける→     )んがため、身の危険だに(顧みる→  )ず、彼は荒れ狂う海に(飛ぶ→    )込んだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 見た/になって/しまった/わけ(→文型454) 2) 結婚した/が(自V)/になった 150 ~た‐弾みに/~た‐拍子に 動詞:た形  +  弾みに  ~  した           拍子に (注:その他に「その弾みに/何かの弾みに/その拍子に/何かの 拍子に」などの形もある) ♪ 会話 ♪ 李 :今朝、子供を抱き上げた拍子に腰を痛めてねえ。前にもぎっくり腰をやっているので心配で・・・。 佐藤:大丈夫ですか?ちょっとした弾みでなるらしいですね。私も若いけど気をつけていますよ。 李 :痛い!立ち上がるのも辛いよ。 佐藤:会社を休めばよかったのに。 ♯ 解説 ♭  名詞「弾み」「拍子」には「瞬間・機会・勢い・動機」などの共通する意味を持っています。そこから生まれた「~た‐弾みに~した/~た‐拍子に~した」は「~したとたんに~した」(→文型148)と同様に偶発事態の発生を表す表現になります。しかし、これらは「人が~した瞬間に、それがきっかけや機会になって、<うっかり/つい/ふと/誤って>~が起こった」という人間の不注意や動作に伴って偶発した事態を表す表現なので、「~た‐とたんに」と違って後件で人間の行為と無関係の現象は表せません。   大声で怒鳴ったとたんに(○弾みに/○拍子に)、入れ歯が落ちた。   家を出たとたんに(×弾みに/×拍子に)、雨が降りだした。 § 例文 § 1.転んだ弾みに頭を壁にぶつけて、たんこぶができた。 2.滑った弾みに足をくじいてしまった。 3.ふとした弾みに、いいアイディアが浮かぶこともある。 4.くしゃみをした拍子に眼鏡が落ちた。 5.今ちょっと度忘れしましたが、何かの拍子に思い出すかもしれません。 ★ 例題 ★ 1) 慌てて電車(に/で/を)飛び乗ったが、その(とたんに/弾み)に片方の靴が脱げ、線路(に/で/を)落ちてしまった。 2) 「どうしたの、その傷は?」  「対向車( )(よける→     )拍子に、ハンドルを(切る→   )損なって電柱( )ぶつかったんだ」 (^^)前課の解答(^^) 1) だに/せ/わけがない(→文型453/→文型455/→文型457) 151 ~度に 名詞: の  +  度に 動詞:原形 ♪ 会話 ♪ 山田:君んとこに行く度に、大歓迎を受けて悪いなあ。それに、良子さんも見る度にますます垢抜けてきたな。 李 :俺とお前の仲だろう。取ってつけたみたいなお世辞はやめろよ。でも、お前も来る度に株が上がってるぞ。 山田:それはうれしいな。近所でもぴか一のケーキを、いつもお土産にしてるからかなあ。 ♯ 解説 ♭  「~度に」は例文1~3のように、多くは「~とき、いつも/毎回~する」という意味を表します。この場合、「~と、いつも」「~と、決まって」とほぼ同義表現で、「~度に」は毎回の反復を強調した表現になるでしょう。  春になる    度に    と、いつも    と、決まって  蓮華の花が咲いた。  違いが現れるのは「~度に」が例文4、5のように「ますます~になる」と「~につれて」(→文型330)と同じく変化を表す表現として使われるときで、この場合は「~と、いつも」「~と、決まって」が使えません。→例題1) § 例文 § 1.この写真を眺める度に、昔のことが思い出される。 2.日ごろから復習をしていないから、試験の度に大慌てするんだよ。 3.私の家はJR中央線の側にあって、電車が通る度に家が揺れます。 4.彼は試合を重ねる度に腕を上げている。 5.「君は結婚してから、会う度に美しくなるねえ」「まあ、あなたこそ、会う度に口が上手になるわ」 ★ 例題 ★ 1) 最近の上海の(変え/変わり)ようは凄い。行く(といつも/度に)、町の様子が変わっ(てくる/ていく)。 2) 大雨( )度にこの川は水( )溢れ、道路まで(水浸し→    )なる。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(移動・進入の目的地は「に」)/弾み/に(到達地) 2) を/よけた/切り(~損なう→文型125)/に(対象) 152 *~ため(に) ・/*~ためか/*~ためだ 名詞    :   の       +  ため(に) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>     ためか                      ためだ (注:動詞の多くは「た形」か「~ている形」となる)  ♪ 会話 ♪ 李 :お前のために、みんなが散々な目にあったんだぞ。 山田:えっ?僕が何かしたっけ? 李 :A商店への製品の納期は今日だったんじゃないか。 山田:しまった!すっかり忘れてた。 李 :「取引停止だ」って大変な剣幕だったんだ。それをなだめたり、すかしたり、冷や汗ものだったよ。 ♯ 解説 ♭  「~ため(に)」は原因・理由を表すときと目的を表すときがあります。ここで取り上げるのは原因・理由の「~ため(に)」で、因果関係を客観的に説明するとき使われる表現です。「~ため(に)」が原因・理由を表すか目的を表すかは、名詞に接続したときは文脈から理解するしかありませんが、「ある・いる・できる・わかる」などの状態動詞や形容詞、例文3のように「~すぎる」と接続した「~ために」は原因・理由を表します。一般動詞の場合、「完了形(「た」形)+ために」は原因・理由を、「原形+ために」は目的を表します。   家を買うために貯金している。   家を買ったために、ローンの支払いに追われている。  なお、助詞「か」のついた「~ためか」は「たぶん~の理由で」という不確かさを表す表現になります。類義表現に「~おかげで」(→文型018)や「~せいで」(→文型122)については各項を参照してください。 § 例文 § 1.台風のために多くの被害が出た。 2.働きすぎのためか、最近、肩こりがひどくなった。 3.楊貴妃は美しすぎるために、数奇な生涯をたどることになった。 4.入試に失敗したのは、面接試験の準備を怠ったためだと思う。 5.人の保証人になったために、借金のかたに自分の家まで人手に渡す羽目に陥った。 ★ 例題 ★ 1) 世界各地で大雨などの異常気象(による/に関する)被害が発生しているが、専門家は「これらは地球温暖化の(ため/おかげ)ではないか」(を/と)指摘している。 2) ただ今、新宿駅構内( )人身事故( )(発生する→     )ため、山手線は全線不通となっております。 (^^)前課の解答(^^) 1) 変わり(~よう→文型435)/度に/ていく(→文型177) 2) の/が(自V)/水浸しに(N+になる) 153 *~ため(に)・/*~よう(に) 名詞:   の     +  ため(に/には/にも) 動詞:原形 /ない形     ための  +  名詞                よう(に) ♪ 会話 ♪ 李 :じゃあ、みんなで乾杯しよう。 真理:何のために乾杯するの? 山田:お酒を飲むのに、いちいち何のためもないもんだ。楽しけりゃいいのさ。じゃんじゃんやろう。 百恵:とにかく、日本中の酒飲みのために、乾杯! 李 :山田、お前、酒癖が悪いから、適当にしとけよ。 ♯ 解説 ♭  目的表現で難しいのは「ために」と「ように」の使い分けですが、前後同一主語文で、前件が意志性動詞(他動詞や、一部の人が主語になる自動詞)の時だけが「~ために」で、それ以外はすべて「~ように」です。→例題1)2)   日本語を勉強するために、辞書を買った。            <同一主語文・前件意志動詞>   息子が日本語を勉強するように、私は辞書を買った。            <前後異主語文・前件意志動詞>   日本語が話せるように、毎日テープで練習している。            <同一主語文・前件無意志動詞>   (私が)わかるように、(あなたが)話してください。            <前後異主語文・前件無意志動詞>  異主語文や、前に可能形や「わかる」、自動詞(人が主語になる意志性自動詞を除く)や否定形(「~ない」)が来るときは「~ように」を使えばいいでしょう。 § 例文 § 1.病気を治すために、治療を続けている。(他動詞) 2.病気が治るように、治療を続けている。(自動詞) 3.人は食べるために生きるのか、生きるために食べるのか? 4.念のために言っておくが、くれぐれもこちらの動きを相手に悟られないように、極秘で行動せよ。 5.万一の時のために、また、その時になって慌てないように、非常持ちだし用バッグを枕元に置いて寝ている。 ★ 例題 ★ 1) 後で後悔しない(ため/よう)、若いうちに学べ。勉強 は自分の(ために/ように)する(こと/もの)だ。 2) 広範な選挙民の支持を得る( )( )には、老人や子供にも理解できる( )( )に、(わかる→   )やすい言葉( )語りかけることだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) による(理由→文型346)/ため(~おかげ→文型018)/と 2) で/が/発生した 154 *~たらいい/*~といい/*~ばいい 動詞:た形<~た/~なかった>  +  らいい 動詞:辞書形/ない形       +   といい 動詞:仮定形<~ば/~なければ> +  ばいい ♪ 会話 ♪ 李 :山田ったら、またこんなに酔っぱらって。 真理:これじゃ、酒を飲んでいるのか、酒に飲まれているのか、わからないわねえ。 山田:う~い、何をごちゃごちゃ言ってるんだ。う~い。 百恵:こんなに悪酔いするほど、飲まなければいいのに。 李 :僕が何とかするから、ふたりは帰るといいよ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型はどれも「~するのが適当だ/~するのが妥当だ」という意味を表します。相手に勧告したり提案したりするときによく使われる表現で、疑問詞と一緒に使われるときは、「どうしたらいいでしょうか?/いつ行けばいいですか?」のように相手の意見を求める表現になります。ただ口調によっては、例文5のように「勝手にしろ」と相手を突き放した言い方にもなりますし、非難の感情を表すこともあるでしょう。  形の似た文型に希望・願望を表す「~たらいいなあ/~といいなあ」(→文型254)がありますから、混合しないようにしましょう。 § 例文 § 1.無理をすると病気の回復が長引くよ。しばらく休暇でもとり、ゆっくり静養するといい。 2.やりたければ、やればいい。やりたくなければ、やらなければいい。どうするかは、君自身で決めたらいい。 3.こういった問題は、どこで相談したらいいでしょうか。 4.どうすればいいか、ここは腰を落ちつけて、みんなで考えようじゃないか。 5.行きたければ、一人で行ったらいい。お好きにどうぞ。 ★ 例題 ★ 1) この仕事は今月中(に/は)(終われば/終わっても)いいのだから、急ぐには(至らない/及ばない)。 2) 息子が高校を辞めて寿司職人( )(なる→  )たいと申しているんです( )、どうしたらよろしいものでしょうか。 (^^)前課の解答(^^) 1) よう/ために/もの(~ことだ→文型084/~ものだ→文型420) 2) ため/よう/わかり(→文型300)/で(方法) 155 *~だらけ/~まみれ 名詞: ×  +   だらけ  ・            まみれ  ・ ♪ 会話 ♪ 課長:雨には降られるし、おまけに道が舗装されていないしで、車が泥まみれになってしまったよ。 李 :山田君、駐車場で車を洗ってましたよ。泥だらけになっても、車に触ってられれば幸福みたいですねえ。 課長:山田君も運転して疲れただろうに。\ 李 :デスクワークより、彼の性に合っているんですよ。 ♯ 解説 ♭  「~だらけ」は名詞に直接ついて「~が多い/~がいっぱいだ」という意味を表す接尾語で、常に不快・汚い・過度だといったマイナスの印象を表しています。いいことには「~がいっぱいだ」を使うといいでしょう。   おいしいそうな料理がいっぱいだ(×だらけだ)。  「~だらけ」と「~まみれ」の違いについて言えば、「~まみれ」は汚い物が表面に付着した場合、つまり付着物にしか使えませんが、「~だらけ」はそれ以外の場合にも使えることでしょう。   間違いだらけ(×まみれ)の作文   欠点だらけ(×まみれ)の人間   血だらけ(・まみれ)の手 § 例文 § 1.そんなしわだらけ(×まみれ)のワイシャツを着て、みっともないったらありゃしない。 2.その男は、血だらけ(⇔まみれ)になって、そこに倒れていた。 3.汚い部屋ねえ。ほこりまみれ(⇔だらけ)じゃないの。 4.借金だらけ(×まみれ)で、首が回りません。 5.どこで何があったのか、彼は体中傷だらけ(×まみれ)で帰ってきた。 ★ 例題 ★ 1) 民族問題(は/が)分からないこと(だらけ/まみれ)で、解決の糸口(しか/すら)つかめないのが実状だ。 2) 確かに俺は欠点( )( )( )の人間だが、友人を裏切る(ようだ→  )真似は決して(する→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(~中→文型162)/終われば/及ばない(不必要→文型000) 2) に(N+になる)/なり(V〔ます〕形+たい)/が(前置き) 156 ~たら~で/~ば~で/~なら~で  ~ たら  +  動詞・形容詞:た形   +  で  ~ ば             ない形  ~ なら            原形 (注:名詞・ナ形の時は「~なら~で」がよく使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :このままじゃ、いつまで経っても、この2DKの社宅から抜け出せないなあ。何でも金、金の世の中か。 良子:お金って、あればあったで悩みも増えるものよ。小平ひとりだし、贅沢を言わなければやっていけるわ。 李 :なければないで、また困るものさ。やはりお金は、ないよりあった方がいいよ。 ♯ 解説 ♭  「AたらAで/AばAで/AならAで」のように同語を反復して、「~の場合は、必然的に~という結果になる」または「~の場合は、当然~するべきだ」という意味を表します。よく使われる基本的な形を載せておきます。  <動詞>  ~たら~たで、~  ~なかったら~なかったで、~  ~ば~たで、~  ~なければ~ないで、~  ~たなら~たで、~  ~するなら~するで、~  ~ないなら~ないで、~  <イ形>  ~ければ~いで、~  ~くなければ~くないで、~ § 例文 § 1.もし失敗したら失敗したで、その時また考えればいいさ。 2.反対なら反対で、きちんとした論拠を示すべきだ。 3.厳しくすればしたで音を上げるし、甘くすればしたでつけあがるし、最近の学生は扱いにくい。 4.プロになったらなったで、厳しい競争があるものさ。 5.欲しいんだったら欲しいで、やせ我慢せずに言ったらどうだい? ★ 例題 ★ 1) 「話によると、あの子、名門中学に(合格した/合格し)そうよ」「あんな秀才(だらけ/ぞろい)の受験校だと、入ったら(入る/入った)で、苦労すると思うよ。」 2) 彼が協力を拒む( )( )拒む( )、それもまたやむを得ない。その時は我々の力( )やるのみだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) は/だらけ/すら(→文型100) 2) だらけ/ような/しない(陳述副詞「決して~ない」) 157 *~たらどうですか/~てはどうですか 動詞:た形 + らどう?/らどうですか/らどうでしょう?         らいかが?/らいかがですか/らいかがでしょうか 動詞:て形 + はどう?/はどうですか/はどうでしょう?         はいかが/はいかがですか/はいかがでしょう? ♪ 会話 ♪ 部長:今度のA社との商談、李君に任せてはどうだ? 課長:お言葉ですが、今回ばかりは佐藤が適任かと思います。何事にも適材適所というものもございますし。 部長:李君のやり方に問題があるのなら、はっきり注意したらどうだ。君も彼を高く買っていたんじゃないのか。 課長:デリケートな商談には、彼は不向きと考えます。 ♯ 解説 ♭  「~たらどうですか/~てはどうですか」は、相手にどうしたらいいかを提案する表現です。「いかが」系は「どう」系よりも丁寧な言い方で、「~ですか」を「~でしょうか」にすればもっと丁寧になります。もっとも短い形は「~たら?」、もっとも丁寧な言い方は「~たらいかがでしょうか」になります。  しかし、例文4、5のような例や、発話時のイントネーションでは、どの表現も詰問の語感が生じます。中でも「~たらいいじゃないですか」は、「どうしてそうしないのか」といった詰問・非難の語感が強く現れます。 § 例文 § 1.みなさん、お疲れの御様子、もうお休みになったらいかがでしょうか。 2.さあさあ、遠慮せずにもっと召し上がったら? 3.まだ雨も降っていますし、もう少しごゆっくりなさってはいかがですか。 4.人にすぐ聞くんじゃなくて、少しは自分で調べたらどうなんだ? 5.好き嫌いばかり言わないで、食べたらどうなの? ★ 例題 ★ 1) これ(ほど/まで)言っ(たら/ても)わからないなら、自分の好きなように(すれば/したら)どうだ。 2) この件( )関しては、法律( )詳しい田中さんに、御(相談する→  )なさったらいかがですか。 (^^)前課の解答(^^) 1) 合格した(「~によると」=伝聞)/ぞろい(→文型128)/入った 2) なら/で/で(手段・方法の「で」) 158 *~たり~たりする 名詞    : だった       +  り ~ たりする  ・ 動詞・形容詞: た形<ナ形ーだった> りする      ・ ♪ 会話 ♪ 李 :今日は踏んだり蹴ったりだったよ。 良子:いつになく不機嫌だと思ったら、何かあったのね。 李 :満員電車の中で痴漢に間違えられたり、定期を落としたり、朝から全くついてなかった。 良子:どう、気分直しにビールでも飲む? 李 :いやあ、それは願ったりかなったりだ。 ♯ 解説 ♭  「~たり~たりする」は例示で、複数の事例の中からいくつかの事例を取り上げるときに使われます。同類の語を並べるときもあれば、反対の語を並べるときもありますし、肯定と否定を並べることもあります。また、同類の物の中から話者が重要と思う例を取り出す場合、「~たりする」のように単独でも使われます。   泣いたり笑ったり(同類語)   行ったり来たり(反対語)   来たり来なかったり(肯定・否定)  このほかにも「願ったりかなったり・似たり寄ったり・踏んだり蹴ったり」などの慣用的な言い方がありますから調べておきましょう。 § 例文 § 1.立ったり座ったりして、さっきから落ちつかないけど、  何かあったの? 2.社員食堂の定食は、和食だったり中華だったりと実に多彩だ。 3.店によって値段は高かったり安かったりするけど、味の方はどの店も似たり寄ったりだね。 4.未成年者がタバコを吸ったりしてはいけません。 5.その程度のけがで死んだりすることはないから、大げさに騒ぐな。 ★ 例題 ★ 1) 彼はいい加減な(の/こと)を言ったりする(ように/ような)人間(だ/ではない)。 2) この前の香港旅行( )は、(飲む→    )だり(食う→    )たり、十分に香港の味を満喫したよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ほど/ても/したら(「~すればどう」の形はない) 2) に(→文型304)/に/相談(敬語「お~なさる」→文型019) 159 ~たりとも~ない 名詞・数詞: ×  +  たりとも ~ ない                     な (注:否定形の他に、禁止表現「動詞の原形+な」もよく現れる) ♪ 会話 ♪ 佐藤:今の取り組み体制では、期限内に終わらせる自信はありません。 部長:ところで君達、昼飯から戻ってきたのは何時だった?これからは一分たりとも無駄にしないことだ。 山田:おいおい、佐藤、そんなに落ち込むなよ。一睡たりともするなって言われなかっただけ、まだましだよ。 ♯ 解説 ♭  「~たりとも」は文末で否定の表現と呼応して「~であっても、決して~ない」という全面否定を表します。強い「~も~ない」に相当すると考えればいいでしょう。前に来る語は「一」と結びついた数詞が多く、また文末で禁止の「~な」と呼応することも多いでしょう。なお、下の例はどれも同じ意味を表しています。  ほんとうの商人は、一円    たりとも    であっても    であろうと    も、決して  粗末にしたりはしない。 § 例文 § 1.私は母に「御飯の一粒たりとも無駄にするな」と厳しく叱られたことがある。 2.一瞬たりとも彼から目を離すな。動きがあれば報告せよ。 3.油断大敵、小敵たりとも侮るなかれ。 4.一刻たりとも時間を浪費するな。今は一秒一刻を争う事態なのだ。 5.女・子供たりとも見逃すな。不審な行動をするものがいたら、連行せよ。 ★ 例題 ★ 1) 彼は刑事の取り調べ(について/に対して)、一言(なりとも/たりとも)語ら(ぬ/ず)、完全黙秘を貫いた。 2) 沖縄の反戦地主達は、「一坪たり( )( )米軍に(渡す→    )な」を合い言葉( )している。 (^^)前課の解答(^^) 1) こと(内容は「こと」)/ような/ではない 2) で/飲ん/食べ 160 ~たる者/~ともあろう者が/~としたことが 名詞(人・組織): ×  + たる者     ・                ともあろう者が  ・                としたことが   ・ ♪ 会話 ♪ 百恵:今朝、課長ともあろう者が、混んだ電車の中で、競艇新聞を広げていたのよ。 佐藤:当社の課長たる者、せめて一般新聞にしてほしいとは思わない? 百恵:それって社長の台詞みたい。失礼だけど、一介の平社員たるあなたの口から聞くとは思わなかったわ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「<人や国・会社など擬人化できる対象>は当然~であるべきだ」という社会的常識・評価を共通の認識にしています。  「~たる者」はほとんどの場合、「~なければならない/べきだ」と呼応し、当然あるべき姿はどうかという判断を後件で表します。「ともあろう者が」は、「当然そうあるべきなのに、実際はそれに反して~」と矛盾した事態を述べる表現で、非難・批判・疑問を強く表します。  一方、「~としたことが」は自分を含めて「~がそんな過ちをするはずがないのに、どうして~んだろう?」と不注意や思慮不足の結果、予想しなかった過ちを犯したときに使われます。 § 例文 § 1.仮にも医者たる者は、「医は仁術」と心得るべきだ。 2.教師たる者、生徒のお手本にならなければならない。 3.政治家ともあろう者が、金儲けのために目の色を変えるとは何事か! 4.警察官ともあろう者が、暴力団に捜査情報を流していたとは、許し難いことだ。 5.私としたことが、どうしてこんなミスをしたんだろう。 ★ 例題 ★ 1) 日頃、何事にも慎重な彼(としたことが/たる者/ともあろう者が)、このようなミスをする(とは/というのは)、全く予想(しか/だに)できないことだった。 2) 信用第一の銀行( )( )あろう者( )、焦げ付き債権の事実を(隠す→    )続けていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) に対して(→文型322)/たりとも/ず(→文型121) 2) たりとも/渡す(禁止)/に(慣用語「~を合い言葉にする」) 161 *~だろうか 名詞    : ×        +  だろうか 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>   でしょうか ♪ 会話 ♪ 李 :最善を尽くしたけど、客先は喜んでくれてるのだろうか?顧客満足度が、当社の評価基準だからね。 山田: 要求仕様はかろうじてクリアしたけど、心配だよ。 佐藤:ぎりぎりの予算の中で、できることは全てしたよ。それで認めてもらえないなんてことがあるだろうか。 山田:そうあってほしいけどね。でもねえ・・・。 ♯ 解説 ♭  「~だろうか」は、例文1のように普通に質問を表すことも、例2のように「~だろ(う)?」の形で確認・念押しする用法もあります。しかし、「~だろうか」にはそれ以外にも、例3~5のように、「~だろうか?いや、たぶん~ないだろう」という意味の反語表現の用法があります。その場合、「果たして~だろうか?」のように副詞と呼応した形で現れることが多でしょう。  これよりも強い反語表現に「~ものか」(→文型417)がありますが、推量の気持ちをいっさい含まない「いや、絶対~ない」と断定する表現になります。   彼にできるだろうか? ≒たぶんできないだろう   彼にできるものか。  ≒絶対できない § 例文 § 1.彼は一体どうして、あんなに怒ったんだろうか?(疑問) 2.ね、やはり僕が言った通りになっただろ(う)。(確認) 3.ひとつも欠点のない人間なんて、果たして存在するだろうか。(反語) 4.彼の話をそのまま信じていいだろうか。(反語) 5.自分の子どもがかわいくないなんて親が、どこの世界にいるだろうか。(反語) ★ 例題 ★ 1) 国家の浮沈(に関わる/に関する)ような大事を、(果たして/やはり)首相ひとりの判断に任せていい(こと/もの)(だろう/だろうか)? 2) 「地球連邦だって?そんなの、絵に描いた餅( )過ぎないよ」「そうとばかり(言う→    )だろう( )」 (^^)前課の解答(^^) 1) としたことが/とは(→文型242)/だに(→文型149) 2) とも/が/隠し(V〔ます〕形+続ける) 162 *~中に/*~中は/*~中だ 動作名詞   : ×  +  中だ 期間を表す名詞: ×     中に 状態を表す名詞: ×     中は                中を ♪ 会話 ♪ 李 :お話中を申し訳ございませんが、部長にお電話がかかっております。 部長: ありがとう。「はい、もしもし、部長の白石ですが。あっ、○○様でございましたか。・・・」 課長:今、新しい企画を検討中だ。すまんが、今日中にこの書類を仕上げておいてくれ。 ♯ 解説 ♭  「~中」にはいくつかの用法があります。一番よく使われる「~中」は動作名詞(「営業・会議・工事・試験・修理・調査・食事・仕事・話し・お取り込み・アルバイト…」)につくときで、「~ちゅう」と読み、「~の最中/~ているところだ」と同義表現になります。  次によく使われるのは、特定の期間を表す名詞(「午前・*今日・今週・今月・*今年・*明日・来週・来月・来年…」)や、状態を表す名詞(「在米・不在・失業・在学・在職…」)につくときで、「~の間(は/に)」(→文型001)に置き換えられる表現になります。人によって多少異なりますが、*印を除いて「ちゅう」と読みます。  その他、「一晩・一日・一年・夜・夜中…」につくときは「じゅう」と読み、「~の間ずっと~」の意味になります。 § 例文 § 1.試験中は、隣の人と話しをしてはいけません。 2.工事中につき、足下にご注意ください。 3.この原稿を午前中に書き上げないと、締め切りに間に合わなくなる。 4.私の不在中に会社からの書類が届いたら、電子メールで送ってくれ。 5.一年中あれこれと仕事に追われ、「貧乏暇なし」ですよ。 ★ 例題 ★ 1) 在日(中/間)は、色々お世話(になりまして/をしまして)、お礼の(申す/申し)ようもございません。 2) 誠に申し訳ございませんが、ただ今課長は会議中( )ございますので、少々お(待つ→   )(いただく→     )ませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) に関わる(→文型293)/果たして/もの(→文型420)/だろうか 2) に(~に過ぎない→文型320)/言える(可能形)/か 163 *~ついでに 名詞:  の     +   ついでに 動詞:原形/た形 ♪ 会話 ♪ 課長:出張のついでに、時間を作って中国の御両親に会ってこいよ。これでお土産でも買ってってくれ。 李 :お心遣いありがとうございます。今回は御好意に甘えさせていただきます。 課長:仕事の方もしっかり頼むよ。 李 :はい、アフターサービスのよさを印象づけてきます。 ♯ 解説 ♭  「ついで」は「機会」を意味する名詞で、この「AついでにB」文型は主たる 行為Aをする機会を利用して、付帯行為(+α)Bをするという意味を表します。「AするついでにBする」「AしたついでにBした」と作文するといいでしょう。  この「~ついでに」は「~がてら」(→文型000)と類義文型ですが、「~がてら」は同時進行なので、下図のような用法上の違いがあります。     図あり  また、例文4のように副詞として使われることも、例文5のように名詞として単独で使われることもあります。 § 例文 § 1.買い物に出かけたついでに、李君の家に寄ってきた。 2.出張で京都支社に行くついでに、大阪まで足を延ばして、友人に会ってくるつもりだ。 3.部長のところに行くの?だったら、そのついでにこの書類も持って行ってくれない? 4.ついでに社長のお耳に入れたいことがございます。 5.東京に来るついでがおありでしたら、是非、私のうちにお立ち寄りください。 ★ 例題 ★ 1) あなた、洗濯の(ついでに/がてら)、お風呂の掃除も(ていて/ておいて)ね。(その/この)ついでに○○も頼むわ。 2) 伊豆まで来たんだし、ついでに伊東あたり( )温泉( )一泊して、骨休めをして(行く→    )よ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 中/になりまして/申し(~ようがない→文型435) 2) で/待ち(→文型019)/いただけ(可能形を使うと依頼) 164 ~つく/~づく・ 擬音語・擬態語の語幹: ×  +  つく 名詞        : ×  +  づく(一部例外あり) ♪ 会話 ♪ 良子:高い山が紅葉してきたわねえ。一ヶ月もしないうちに東京の紅葉も色づくわね。 李 :「秋来たりなば冬遠からじ」だね。 良子:あれ?それって「冬来たりなば春遠からじ」だったんじゃないかしら。 李 :いちいち揚げ足を取るなよ。むかつくなあ。 ♯ 解説 ♭  補助動詞「~つく」は多くの畳語形式の擬音語・擬態語の語幹について、「ぎらぎら→ぎらつく/がたがた→がたつく」のように自動詞を作ります。これらは「ぎらつく=ぎらぎらする/がたつく=がたがたする」のように「~する」を使っても表せます。多くの擬音語・擬態語につくので、応用度の高い接尾語です。→例題1)  また「~づく」は名詞について、「片づく・気づく・勢いづく・色気づく・怖じ気付く・傷つく・調子づく・たてつく…」のように「そのような事態や傾向になる」という意味の自動詞を作ったり、「ゴルフづく・小説づく・客づく…」のように「頻繁に~する/盛んに~する」という意味の自動詞を作りますが、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.変な男が家の回りをうろついていて、気味が悪いわ。 2.新婚早々だし、言いたくはないんだけど、そんなに人前でいちゃつかないでくれよ。 3.彼女のことが頭の中でちらついて、勉強どころではない。 4.海外に進出した企業がその土地に根づくには、色々苦労がある。 5.さあ、勝負しようじゃないか。それとも、今になって怖じ気づいたのか。 ★ 例題 ★ 1) あいつ(ときたら/と言うと)、(おだてると/おだてれば)すぐ調子(つく/づく)。 2) ネオンも(きらきら→   )つき出した( )、夜の歌舞伎町でも(ぶらぶら→   )ついて帰らないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) ついでに/ておいて(事前動作の「ておく」)/その 2) で(「の」も可)/に/行こう(→文型440) 165 ~つく ・ 動詞:[ます]形  + つく ♪ 会話 ♪ 李 :競馬でとった五万円を飲んじゃった。すっかり酔っちゃってさ、家まで帰りつくのがやっとだったよ。 良子:悪銭身につかずとはよく言ったものね。 李 :やはり一番落ちつけるところは、わが家だなあ。悪いが、ふとんを引いてくれ。すぐ寝るよ。 良子:その前に、お風呂に入って酔いを覚ましたら? ♯ 解説 ♭  補助動詞「つく」は動詞の[ます]形について、到着・密着・定着などの意味を表します。漢字を使うと「着く・就く・付く」と書くように多義になります。<到着>行き着く・追いつく・帰り着く・泳ぎ着く・たどり着く…<密着>噛みつく・しがみつく・抱きつく・吸いつく・すがりつく・食いつく…<定着>落ちつく・染みつく・住みつく・考えつく・錆びつく…<完全に~した事態>凍てつく・焦げつく・焼けつく・凍りつく… § 例文 § 1.足が棒のようになって、やっとふもとにたどり着いた。 2.単なる思いつきのプランじゃ駄目だよ。 3.インクが服に染みついて、いくら洗っても落ちないわ。 4.余りに悲惨な光景に、私の心は氷のように冷たく凍りついた。 5.焼けつくような太陽が、さんさんと頭上に輝いていた。 ★ 例題 ★ 1) 旅は帰るところがある(から/ので)楽しいんだ。落ちつく場所もない流浪の旅の(どこ/だれ)が楽しいと言える(だろうか/だろう)。 2) 足下( )(すがる→    )ついて泣いた娘の姿が、今も目に(焼く→  )ついて離れない。 (^^)前課の解答(^^) 1) ときたら(→文型229)/おだてると(→文型203)/づく 2) きら/し(理由の「し」→文型107)/ぶら 166 ~尽くす 動詞:[ます]形 +  尽くす ♪ 会話 ♪ 社長:若いときには飲む・打つ・買うの三道楽をし尽くしたが、その報いで親の死に目にも会えず、後悔したよ。家の財産も食いつぶし、残ったのは借金だけ。 専務:戦時中は、明日がどうなるかもわからない日々でしたから、私も投げやりなところがありました。 社長:当時のことを思い出すと、今でも胸が痛むよ。 ♯ 解説 ♭  「尽くす」は「ある限りのものや力を全て出す」という意味の動詞で、例文1、2や「全力を尽くす/手段を尽くす/国に尽くす」のように単独でも使われます。そこから補助動詞として「残らず全部~してしまう」という意味を表すようになります。  類義文型に動作の完了を表す「~終わる」「~切る」がありますが、そこには以下のような違いがあります。  料理を   食べ終えた。 <~が終わった>   食べ切った。 <完全に~した>   食べ尽くした。<残らず全部~した>  目標の完遂を強調したいときは「~切る」、残らず全部(数量)を強調したければ「~尽くす」が基本的使い分けとなります。そのため例文3~5のような例には「~切る」が使えません。→例題1) § 例文 § 1.八方手を尽くして探しましたが、ついに彼を見つけだすことはできませんでした。 2.それは筆舌に尽くし難い美しさだった。 3.もう意見は出尽くしたようだ。そろそろ結論を出そうじゃないか。 4.あり金全部を使い尽くして、今夜の飯代もない始末だ。 5.当時の苦労は、ちょっと一言では語り尽くせません。 ★ 例題 ★ 1) 優勝は逃した(ものの/ものを)、自分(について/として)は持てる力を出し(切った/尽くした)ので、後悔はありません。 2) 彼は元政治記者だけに、政界の裏( )裏 ( )( )(知る→    )尽くしている。 (^^)前課の解答(^^) 1) から(強調「~から~んだ」)/どこ/だろうか(反語→文型161) 2) に/すがり/焼き 167 ~つける/~慣れる/~こなす 動詞:[ます]形 +  つける   ・            慣れる   ・            こなす   ・ ♪ 会話 ♪ 部長:やりつけた仕事でも、慣れによる油断は禁物だよ。「慣れても狎れるな」だよ。 李 :「猿も木から落ちる」ということですか。 部長:自分が何でもやりこなせるようになったと過信したとき、とんでもない失敗をしでかすものなのさ。 李 :心しておきます。 ♯ 解説 ♭  他動詞「つける」は「張り付ける・植えつける…」<接着>から、「叱りつける・決めつける…」<強意>、「聞きつける・かぎつける…」<感覚>まで広く複合動詞を作ります。ここでは「~つける」が「~することに慣れている」という意味を表す用例を取り上げますが、この「~つける」は「日頃からたびたび~している」<習慣性の反復行為> を表します。  「~慣れる」は「日本の生活に慣れる」の表現でわかるように、対象に自分の方から順応することです。自然や生活・社会・風土などの環境は、人の方が対象に順応しなければならないことですから、「住み慣れた町」のように「~慣れる」しか使えません。「やりつけた仕事・やり慣れた仕事」のようにどちらも使える場合、動作に注目したのが「~つける」で、対象に注目したのが「~慣れる」です。  一方「~こなす」は、「(難しいことに習熟した結果)上手に~する」という人間の習得能力・技術面に注目した表現です。意味から使い分けしましょう。→例題1) § 例文 § 1.ここらではあまり見慣れない(×つけない)人ですね。 2.ここは通いつけ(×慣れ)の店なので、つけがきく。 3.やりつけない(⇔慣れない)ことをしたもんで、今日は体の節々が痛くなりました。 4.凄いもんだねえ。モンゴルの子ども達は、裸馬を自由自在に乗りこなして(×慣れて/×つけて)いる。 5.彼は数カ国語を使いこなせる(×慣れる/×つける)、まあ一種の天才だ。 ★ 例題 ★ 1) 彼女は上手に和服を着(つけて/こなして)いるが、普段から着(つけて/こなして)いるに(違いない/過ぎない)。 2) 作業( )は、やはり(使う→   )慣れたパソコン( )限るよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ものの/として/切った(出し尽くした=「もう余力はない」) 2) の/まで(「裏の裏まで」は慣用的言い方)/知り 168 *~っこない/~っこ 動詞:[ます]形 + っこない             っこ ♪ 会話 ♪ 良子:人間の科学技術って凄いわね。火星を人間が住める星に変えるって計画も、夢じゃないわ。 李 :できっこないと思っていたことが、知らない間にできるようになっているんだからね。 良子:でも、クローン人間を作るようになったら、恐いものがあるわ。 ♯ 解説 ♭  「~っこ 」は動詞の[ます]形と結びついて、例文1~3のように「~っこない」の形で「絶対に~ない」を表す口語の用法があり、男女を問わず日常会話ではよく使われます。「~はずがない」(→文型366)や「~わけがない」(→文型453)とほぼ同義表現です。   彼にできっこない=彼にできるはずがない=彼のできるわけがない。  このほかにも「~っこ」には例文4のように「お互いに~する」という用法があり、例として「教えっこ・取りっこ・恨みっこ…」などの語を作ります。また、例文5のように「~比べ/~競争」を意味する「かけっこ・にらめっこ・鬼ごっこ…」などの慣用語を作りますが、これらは語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.守れっこない約束は、最初からしないことだ。 2.「ばれたらまずいぞ」「大丈夫。誰がしたかなんて、わかりっこないから」 3.たくさん作っても食べられっこないし、無駄になるよ。 5.腹のさぐり合いはやめて、お互い隠しっこなしで、本音の話をしないか。 4.にらっめっこしましょ、あっぷっぷ。 ★ 例題 ★ 1) 君が逆立ちし(たって/たっけ)、彼には(勝ち/勝て)っこない。やる(だけ/のみ)損だから、やめときな。 2) 「(恨む→    )っこなしで、別れましょうね」なんて女性から(言った→    )ら、男はどんな気持ち( )なるかなあ? (^^)前課の解答(^^) 1) こなして/つけて/違いない(→文型305/→文型320) 2) に(~には→文型336)/使い/に(~に限る→文型297) 169 *~つつ/*~つつも 動詞 :[ます]形  +  つつ              つつも ♪ 会話 ♪ 李 :社長は業務改革を推進しつつ、財務体質の強化にも手を打ったよ。守りに関しては完璧だ。 山田:リストラの手腕もさることながら、若手を起用しての攻めの体質作りも、銀行筋から評価されているね。 李 :必要だとは知りつつも、なかなか抜本的な対策を講じられない会社も多いねえ。 ♯ 解説 ♭  「~つつ」には動詞の[ます]形と結びついて、例文1、2のように「~けれども、同時に~/~のに、同時に~」に相当する逆説をあらわすときと、例文3~5のように同時進行動作を表すことがあります。「~つつ」がどちらを表しているかは、文脈から理解するしかありませんが、「~つつも」の形は常に逆説です。これらの「~つつ」は「~ながら」を使って表せる表現で、口語ではほとんど「~ながら」が使われます。  注意してほしいのは、「~ながら」と違って「~つつ」は、動詞の「ます形」としか結びつかず、名詞や形容詞と結びつく用法がないことです。→例題1)   悪いと知りながら(・つつ)、つい・・・   若いながら(×つつ)しっかりしている。   女ながら(×つつ)男より力がある。 § 例文 § 1.悪いと知りつつ、つい落とし物の財布を自分のポケットにしまい込んだ。 2.親というものは、厳しく子どもをしかりつつも、心の中では愛しくてたまらないものなのです。 3.今は将来の再起を期しつつ、この逆境に耐えるしかない。 4.妻は航海の無事を祈りつつ、夫の船出を見送った。 5.お二人の末永いお幸せを念じつつ、これで筆を置きます。 ★ 例題 ★ 1) 昨年の最下位(という/とする)屈辱から立ち上がり、優勝の栄冠を勝ち取ったのは、敵(つつ/ながら)立派であり、敬服(に値する/に堪える)。 2) タバコが体( )悪いことは百も(承知する→    )つつ、どうしても(やめる→     )ない。 (^^)前課の解答(^^) 1) たって(=ても/~たっけ→文型140)/勝て/だけ(→文型131) 2) 恨み/言われ(受身文「~から~られる」)/に(N+になる) 170 ~つ~つ 動詞A:[ます]形 + つ  動詞B:[ます]形 + つ ♪ 会話 ♪ 李 :どうしたの?目が兎みたいに赤いよ。 佐藤:謝ろうかどうしようかと、彼女の家の前を行きつ戻りつしているうちに、東の空が白んできちゃってね。 李 :君たち二人はどうなってるの。いつも二人で順番に振りつ振られつじゃないの。 佐藤:そろそろ年貢を納めて、プロポーズしようかなあ。 ♯ 解説 ♭  「~つ~つ」は「~たり~たり」(→文型158)とほぼ同じ意味を表しますが、同一場面・同じ時間帯の中で起こっていることを表すのが特徴で、下のような例には使えません。   昨日の日曜日は漫画を読んだり、洗濯をしたりしてのんびり過ごした。   人生、泣いたり笑ったり、いろいろあるものだ。  これらは異なる場面を例示しているからです。逆に「~つ~つ」文型は、どれも「~たり~たり」を使って表せます。   抜きつ抜かれつの接戦 →抜いたり抜かれたりの接戦 § 例文 § 1.昨日のマラソンは、実に手に汗を握る抜きつ抜かれつの大接戦でしたねえ。 2.人間は持ちつ持たれつの関係ですよ。 4.雲間から富士山が見えつ隠れつしていた。 5.追いつ追われつ、彼ら二人はすばらしい勉強面のライバルです。 7.気のおけない仲間達と、差しつ差されつ飲む酒の味は格別だ。 ★ 例題 ★ 1) 地図を片手(に/で)、行きつ(来/戻り)つして探したが、(やっと/とうとう)彼の家は見つからなかった。 2) まるで木の葉の( )( )に、小舟が波間で(浮く→   )つ(沈む→    )つしている。 (^^)前課の解答(^^) 1) という(→文型207)/ながら/に値する(→文型324) 2) に(→文型336)/承知し/やめられ(可能形) 171 *~つつある 動詞:[ます]形  + つつある ♪ 会話 ♪ 李 :日本の海外協力に対する地道な努力は、世界的に認められつつあるね。 良子:私も地域の国際交流の催しに参加したり、海外旅行したりして、個人レベルで国際化を進めつつあるのよ。 李 :君も中国語を学ばない?ご希望とあれば個人授業を喜んで引き受けさせてもらうよ。 ♯ 解説 ♭  「~つつある」は動詞の[ます]形と結びついて、眼前で正に進行中の動作を表します。「刻一刻と/日々/ますます」など状況変化を伝える語と結びつくことが多いでしょう。多くは「年々増えつつある・増えている」「回復に向かいつつある・回復に向かっている」のように「~ている」に置き換えられます。しかし、この表現の特徴は、例文5の「消える/死ぬ/崩れる…」のような瞬間動詞について、スローモーションの映像のように、その進行を表せることです。これは他の表現に代えることができない「~つつある」の独自の世界です。例えば、下の「死ぬ」ような瞬間動詞(多くが自動詞)と結びついたとき、「ている」形は死んだ状態を表しますが、「~つつある」は死が近づく百分の一秒の世界が現せます。   死んでいる。 <死んだ状態>   死につつある <刻一刻と死が迫っている> § 例文 § 1.地球人口は、年々増えつつある。 2.病状は回復に向かいつつあるので、ご安心ください。 3.今わがチームは劣勢を挽回し、優勢に転じつつある。 4.元気そうに見えた彼ではあったが、彼の体は癌にむしばまれつつあった。 5.まさに風前の灯火、さしもの帝国にも終わりの日が刻一刻と迫りつつあった。 ★ 例題 ★ 1) 若者の間(に/で)は、一つの会社に一生勤める(ことだ/ものだ)という考え方は次第に(変わり/変え)つつある。 2) 中国経済は驚く(べし→   )スピードで(発展する→     )つつあり、それにつれて国民の生活水準も急速に(上向く→     )つつある。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/戻りつ(慣用語「行きつ戻りつ」)/とうとう(「やっと」は実現) 2) よう(比喩・比況:まるで~ようだ)/浮き/沈み 172 *~って 名詞    :    ×     +   って 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ーだ> (注:広く句と結びつく口語で、各種引用を表す→解説) ♪ 会話 ♪ 佐藤:真理さん、もう帰っちゃったって?ことによると怒らせてしまったのかな? 百恵:ずいぶん長いこと待ってらしたわよ。散々待たせておいて、怒らせたかなって言い草はないんじゃないの? 佐藤:俺って、完全につきに見放されてるみたいだ。人身事故で、電車の中に一時間も閉じこめられていたんだ。 ♯ 解説 ♭  「~って」は例文1~3のように、「~と/~という/~というのは/~とは」の全てを表せる便利な格助詞で、話し言葉で広範に使われます。  また、例文4のように、「えっ?今、~と言ったのか?」という意味の聞き返し(再確認)の終助詞用法があり、この「~って」は文末に現れます。更に例文5のように、多くは「~んだって」(→文型209)の形で伝聞の意味も表します。 § 例文 § 1.劉君が帰国したって(⇔というのは)、本当ですか。 2.福田さんって(⇔という)方から、お電話が・・・。 3.本日休業って(⇔と)書いてあったが、どうしたんだろう? 4.えっ?何だって?俺には関係ないって?ふざけるなよ、この話を最初に切りだしたのは、お前じゃないか。 5.聞くところによると、近く人事異動があるんだって(⇔そうだ)。 ★ 例題 ★ 1) 「手紙」って(<というのは/という>)、中国語ではトイレットペーパーって(<というのは/という>)意味なんだって(<という/そうだ>)。 2) えっ、今何と(言う→   )んだ?給料を(上げる→    )だって?半人前のくせ( )、十年早いよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(範囲限定)/ものだ(≒べきだ→文型420)/変わり(自V) 2) べき(→文型382)/発展し/上向き 173 ~っ放し 動詞:[ます]形  +  っ放しだ             っ放しで             っ放しの  + 名詞             っ放しにする ♪ 会話 ♪ 山田:最近、佐藤は真理さんにお熱みたいだね。昨日、飲みに行ったんだろ?噂だと近々結婚するらしいけど。 李 :ああ、でも、彼と飲みに行ったりするんじゃなかったよ。のろけ話を聞かされっ放しで、当方被害甚大さ。 百恵:ふっふ。でも、彼ったら彼女に押されっ放しだって、もっぱらの噂よ。彼女に頭が上がらないんだって。 ♯ 解説 ♭  「~っ放し」は放置・放任の表現で、動詞の[ます]形と結びついて、「~したまま、放っておく」という意味を表します。「~したまま」(→文型406)を使っても表せますが、「~っ放し」はいい意味で使われることはなく、よくない評価にたっている点に特徴があります。もう一点注意してほしいのは、「~まま」は「~ないまま/N+まま」の形もありますが、「~っ放し」には名詞や否定形と結びつく形はないことです。→例題1)  五時間も座ったまま(・座りっ放し)だったので、腰が痛い。  今日は座ったまま(×座りっ放しで)話します。 § 例文 § 1.あいつは俺から金を借りっ放しで、催促しても返そうとしない。 2.水道の水は出しっ放しにしないで、必ず蛇口を閉めること。 3.何だ、このあり様は。部屋中、散らかしっ放しじゃないか。 4.靴は脱ぎっ放しにするんじゃありませんよ。きちんとそろえておきなさい。 5.このままやられっ放しじゃ、腹の虫が治まらない。 ★ 例題 ★ 1) 仕事もやり(まま/っ放し)、後かたづけもしない(まま/っ放し)帰るなんて、無責任(極みだ/極まる)。 2) 日本( )は、子供の教育を母親に(任せる→    )っ放し( )している父親がほとんどだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) というのは/という/そうだ 2) 言った/上げろ(命令形)/に(~くせに→文型070) 174 *~っぽい/~じみる 名詞 :  ×       + っぽい   ・ 形容詞:ー[い]/ー[な] 動詞 :[ます]形 名詞 :  ×       + じみる   ・ ♪ 会話 ♪ 李 :あれっ、いつも若づくりの隣の部長、今日はずいぶん年寄りじみた格好をしているね。 山田:今日くらいで年相応だよ。若さは外見ではなくて精神だと言ったら、嫌みっぽく聞こえるかい? 李 :ところで、あの部長の秘書、急に色っぽくなったと思わないかい。恋人でもできたのかな。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~っぽい」はいろいろな語について、「~の傾向が強い」「~の要素が多い」という意味を表す形容詞を作ります。また、接尾語「~じみる」は「~の要素・傾向が内部まで染み着いている」という意味を表す自動詞を作ります。  「~っぽい」も「~じみる」も「本来はそうあってはいけないのに~だ」という悪い評価に立っている点で共通していますが、「~っぽい」はそのときその場の外見からの印象が多く、本来の姿に戻せるものが多いでしょう。一方、「~じみる」はより深くその内面に染み着いた本質、つまりもう元には戻らないもので、嫌悪感・軽蔑の感情が更に強く表れます。なお、「~じみる」は限られた語にしかつきませんから、「汗じみる・油じみる・年寄りじみる・子供じみる・貧乏じみる・所帯じみる…」など、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.僕はね、少し男っぽいぐらいのボーイッシュな女性にひかれるんだ。 2.なんだいこのスープ、水っぽくて飲めたもんじゃない。 3.彼は飽きっぽい性格で、何をやっても三日坊主だ。 4.汗じみた服に、油じみた手、そんな男らしい労働者の姿が、私にはまぶしく見えた。 5.彼の考え方は、理想と現実の区別もつかず、子供じみている。 ★ 例題 ★ 1) 学園のマドンナだった彼女も、結婚して10年(ともすると/ともなると)、所帯(じみて/っぽくなって)(いった/きた)ね。 2) その犯人は(白い→    )っぽいセーター( )、(きざだ→     )っぽい髪型をしていました。 (^^)前課の解答(^^) 1) っ放し/まま/極まる(→文型069) 2) で(範囲限定)/任せ/に(N+にする) 175 *~つもりだ/*~つもりで/~つもりだった 名詞     :   の        +  つもりだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     つもりで                      つもりだった ♪ 会話 ♪ 良子:コート、いつ買ってくれるつもりなの? 李 :定価で買う気にはなれないし、特売になったらね。 良子:特売になるのは春先よ。それじゃ、何のために買うのかわからないじゃないの。 李 :コートを買ったつもりで、貯金するというのはどうだい?今年は古いのでがまんしなよ。 ♯ 解説 ♭  「~つもり」は初級文型で、辞書形・「ない」形と結びつくときは意図・意志を表しますが、「~つもりだった」と完了形になると、例文2のように実際には実現しなかった意図、または意図に反する事態の発生を表します。   行くつもりだ。  <=行く予定>   行くつもりだった。<=実際は行かなかった>  この「~つもり」は、それ以外に動詞の完了形(「た」形)や形容詞・名詞と結びつく用法があって、例文3~5のように「実際はそうではないが、自分だけがそう思う」という意味を表します。頭の中での仮定・思いこみを表す用法です。 § 例文 § 1.「卒業後、どうするつもり?」「数年は国に帰らないつもりだ」 2.このことは君には話さないつもりだったが、この際だから話しておこう。実は・・・ 3.死んだつもりでやれば、なんだってできる。 4.自分では一人前のつもりでいるようだが、私から見ればまだ半人前のひよっこだ。 5.父は自分ではまだ若いつもりでいるけど、階段を上るときは息切れがしています。 ★ 例題 ★ 1) その件は彼には先日(伝える/伝えた)つもりだったんだが、(何が/何か)手違いが(ある/あった)んだろうか。 2) 軽い冗談( )つもり(だ→   )のに、彼はそれを本気にして(怒る→    )出した。 (^^)前課の解答(^^) 1) ともなると(→文型253)/じみて/きた(変化→文型181) 2) 白/に(累加の「に」→文型285)/きざ 176 ~であれ/~であろうと 名詞・ー格助詞 :      + であれ         ・ ナ形容詞    :<ー×>    であろうと 疑問詞や副詞など:        であれ~であれ     ・                  であろうと~であろうと ♪ 会話 ♪ 李 :今度の連休に中国へ行くんだって?中国は広いから、どこへ行くか迷ったんじゃない? 真理:ええ、でも、たとえ一時間であろうと無駄にしないよう予定を詰め込んじゃったから、超過密なの。 李 :寝る時間もないようなスケジュールであれ、行けさえすれば幸せなんだろ、君の中国語を試す時だからね。 ♯ 解説 ♭  「~であれ/~であろうと」は「~でも/~であっても」を意味する点で同じです。「AであれBであれ」また「AであろうとBであろうと」と繰り返されると、「A、Bのどちらの場合でも」という意味を表すようになります。    学生だ   ・ 学生でも    学生である ・ 学生であれ/学生であっても/学生であろうと  「である」は文語的・論文調の「だ」に相当しますから、名詞のほかにも広範な語と結びつきます。「元気だ/きれいだ」(ナ形容詞)、「私にだ/私とだ」(名詞+格助詞の形)、「ゆっくりだ/少しだ」(副詞)など、この「だ」は全て「である」で置き換えられ、この文型は この「~である」の形から作られます。 § 例文 § 1.誰であれ、欠点の一つや二つは持っています。 2.いかなる天才であれ、人知れぬ努力はしているものだ。 3.彼ときたら、ビールであれウイスキーであれ、およそ酒と名のつくものには目がない。 4.たとえ困難であろうと、やると決めたからには途中で投げ出すような真似はしない。 5.学生であろうと教師であろうと、学問の前には平等でなければならない。 ★ 例題 ★ 1) 本当にお腹が空いた時は、一杯の粥(であれ/であれば)、何物(にもまして/にもかかわらず)おいしい(ことだ/ものだ)。 2) そのことを私( )であれ、事前( )話してくれていたら、こんな失敗は(避けた→      )のに。 (^^)前課の解答(^^) 1) 伝えた/何か(「何が」と「何か」の違いに注意)/あった 2) の/だった/怒り(→文型137) 177 *~ていく 動詞 :て形  + いく ♪ 会話 ♪ 李 :君が手当たり次第に買い込むから、どんどん荷物が重くなっていくよ。手が抜けそうだよ。 良子:買い物で、日頃のストレスを発散させているのよ。 李 :そんな身勝手なことを言ってると、二人の間に見えない溝が、だんだんできていくんじゃないかい? 良子:ストレスの原因の半分は、あなたにあるのよ。 ♯ 解説 ♭  「行く」から生まれる補助動詞の用法で、「本を持って行く」のように本来の移動動詞として使われる他に、例文2、4のように継続、例文3のように変化の進行、例文5のように消滅を表す用法が派生します。  「~ていく」の特徴は、常に現在から未来への継続・変化です。反対に過去から現在への継続・変化は「~てくる」で表します。→例題1)  なお、継続の「~ていく/~てくる」の前にくる動詞は「パンを食べる・酒を飲む…」のような目に見える動詞ではなく、「生きる・暮らす・続ける・育てる…」のような外形ではとらえられない継続動詞です。そして、「疲れる・慣れる・増える・~なる…」や可能形など状態性の動詞が前に来るときは変化を、「死ぬ・消える・滅ぶ…」などの現象を表す動詞につくときは消滅を表します。 § 例文 § 1.疲れたし、ここで少し休んでいかないか。 2.これから先、どうやって生きていけばいいんだろう。 3.最近の日本経済は悪くなっていくばかりですねえ。 4.「住めば都」さ。だから、これからもこの国で暮らしていくつもりだ。 5.炭坑の町の灯が、一つまた一つと消えていった。 ★ 例題 ★ 1) ことばの学習は一夜漬けではできません。少し(度/毎/ずつ)積み上げ(てくる/ていく/ている)しかない(もの/こと)なんです。 2) 生者必滅・会者定離、人の世は絶えず(変わる→   )いく。そして、川の水の(如し→    )、一時も同じところに留まることは(ある→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) であれ/にもまして(→文型345)/ものだ(一般→文型420) 2) に/に/避けられた(可能形) 178 *~てから/*~て以来/~てこのかた これ・それ・あれ: ×  +  から 動詞      :て形     以来 (注:「~以来」は「N(結婚・卒業・・・)+以来」の形もある) 動詞      :て形  +  このかた 期間を表す数詞 : × ♪ 会話 ♪ 李 :自慢じゃないが、結婚してこのかた、無断外泊したことは一度もないよ。でも、食生活が安定したおかげか、それ以来、太り気味でね。 山田:模範亭主ってことかな、それともかかあ天下? 李 :お好きなように解釈を。太ったのは、一平が生まれてから、タバコをやめたせいもあるけどね。 ♯ 解説 ♭  「~てから」は制約もなく広範に使うことができる初級文型です。「~て以来/~てこのかた」は「~てから、ずっと~」の意味を表しますが、後件で継続状態か継続動作しか表すことができません。そのため、下例のように続けて連続して行った行為や、新しく発生した事態を表すことができません。   食事をしてから(×て以来)歯を磨く。       <連続行為>   結婚してから(×て以来)、5年目に子供が産まれた。<新事態発生>  類義表現に「~た‐後で」(→文型013)がありますが、後件で「~ない」が使えませんし、継続状態や継続動作も表せません。→例題1)   卒業してから(×卒業した後で)、彼には会っていない。   肝臓の病気をしてから(×た後で)、禁酒している。 § 例文 § 1.あの事件があってから、彼の性格は変わってしまった。 2.卒業以来、先生にはお目にかかっていません。 3.彼女を一目見て以来、僕は彼女の虜になってしまった。 4.あの二人は結婚してこのかた、口喧嘩一つしたことのないおしどり夫婦です。 5.肝臓を壊しましてね。そのとき以来、十年このかたお酒は飲んでいません。 ★ 例題 ★ 1) 子ども(が/を)生まれ(た後で/て以来)、うちの人、毎晩早く家に帰る(ことに/ように)なりました。 2) 恋人が(できる→     )から、彼女は表情が以前より(明るい→ )(なる→    )きたと思わないかい? (^^)前課の解答(^^) 1) ずつ(→文型120)/ていく(継続)/もの(→文型420) 2) 変わって/如く(→文型083)/ない(一<つ/人・・>も~ない= 179 *~てからでないと/~た‐上でないと 動詞:て形 + からでないと        ~  できない         からでなければ 動詞:た形 + 後でないと/後でなければ  ~  できない         上でないと/上でなければ ♪ 会話 ♪ 李 :検定試験に受かっても、すぐに運転できるわけではないよ。免許証をもらってからでないとね。 良子:そうよね。それに、まだ自信がないから、あなたのテストをパスしてからにするわ。 李 :何かあると大変だから、しばらくは横に乗るよ。三ヶ月は経ってからでなければ、独りでは無理だと思うよ。 ♯ 解説 ♭  「~てからでないと/~てからでなければ」は、常に文末で不可能を表す表現と呼応する仮定表現です。同じ意味を表すものに「~た後でないと/~た後でなければ」や「~た上でないと/~た上でなければ」がありますが、会話の中でもっともよく使われるのは「~てからでないと/~てからでなければ」でしょう。   上司と 相談してからでないと、 決められません。       相談した後でないと、       相談した上でないと、 § 例文 § 1.この件に関しては一旦会社に持ち帰り、上司と相談してからでないと、私の一存では決められません。 2.もう少し彼が実務経験を積んでからでなければ、この仕事はまだ任せられない。 3.もう二、三年勉強してからでないと、彼に通訳は無理だ。 4.何事であれ実践してからでないと、事の是非は分からない。 5.詳しい事情を知った上でなければ、いい加減なアドバイスはできません。 ★ 例題 ★ 1) この商品が売れる(か否か/や否や)は、少し様子を見た(後/から)でないと、何とも(言える/言えない)。 2) その国の実状をこの目で(確かめる→     )からでなければ、投資する( )どう( )決定できない。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/て以来/ように(状態変化→文型446) 2) できて/明るく/なって(変化の「~てくる」→文型181) 180 ~てからというもの/ここ~というもの 動詞:   て形         +  からというもの ・ ここ/この + <期間を表す語> +  というもの   ・ ♪ 会話 ♪ 山田:李君は昔は三日にあげず酒や麻雀で忙しく、いつも寮に戻るのは午前様だったんだよ。 佐藤:息子ができて、父親になってからというもの、まるで伝書鳩みたいですね。 山田:自分も肝臓を壊してからというものはお酒は控えてるけど、あんな伝書鳩にはなりたくないやね。 ♯ 解説 ♭  形式名詞「もの」のつくる慣用文型で、「ここ一週間というもの/この五年というもの」のように期間を表す数詞と結びついて、「~の間ずっと~」を表します。動詞とは「~てからというもの」の形で接続し、「~てから、ずっと~」を表す強調表現になります。  同義文型の「~て以来」(→文型178)と「~てからというもの」を比べたとき、前者は客観的・無感情ですが、後者は話者の喜怒哀楽の感慨・感情が現れる点に特徴があります。 § 例文 § 1.この一週間というもの、ろくに睡眠もとっていません。 2.ここ一、二年というもの、いつも仕事に追われ、妻と二人でゆっくり旅行をする時間もなかった。 3.退職してからというもの、何か心に穴が空いたようだ。 4.子供が生まれてからというもの、妻は子供のことにかかりっきりで、私のことなど放ったらかしです。 5.あなたに会ってからというもの、僕の心は千千に乱れ、  何も手につかなくなった。 ★ 例題 ★ 1) (ここ/そこ)一ヶ月という(こと/もの)、客足が遠のいていて、御覧(の/×)通りの有り様です。 2) よほど辛い( )だろう。(離婚する→     )からというもの、彼は酒と博打( )明け暮れている。 (^^)前課の解答(^^) 1) か否か(=かどうか→文型040)/後(接続に注意)/言えない 2) 確かめて/か/か(~かどうか→文型040) 181 *~てくる 動詞:て形  + くる ♪ 会話 ♪ 李 :頼まれたお豆腐、買ってきたよ。1個80円だけど2個で120円だったので、2個買っちゃった。 良子:今日は寒いし、張り込んで寄せ鍋にしようかしら? 李 :鍋にするなら、ねぎや魚介類がいるだろ?買ってこようか?ついでに酒もね。何だか嬉しくなってきたぞ。 良子:でも、財布はだんだん軽くなっていくわね。 ♯ 解説 ♭  「~てくる」は「来る」から派生する表現で、「~ていく」(→文型177)の正反対になる表現です。まず、例文1のように本来の移動動詞としての用法があります。   持ってくる   ・ 持っていく   近づいてくる  ・ 遠ざかっていく  また、例文2、3のように過去から現在への継続・変化を表します。   今まで女で一つでこの子を育ててきましたし、これからも育てていきます。  そのほか「~てくる」は、例文4、5のように「(考えが)浮かぶ・(興味/怒り/喜び…が)湧く・現れる・蘇る・(痛み/眠気/悲しみ…が)襲う…」などの動詞について心理現象の発生や、「雨が降ってきた」のように自然現象の発生を表します。 § 例文 § 1.明日は作文のテストをするから、中日辞典を持って来なさい。 2.この年まで生きてきたが、今日ほどくやしい思いをしたことはなかった。 3.会社のために三十年も尽くしてきた私を、今になって要らなくなったからやめろとおっしゃるんですか。 4.バブル崩壊以後、土地やマンションの値段も下がってきましたが、まだ我々庶民の手には届きませんね。 5.日も暮れてきたし、今日はこの近くで宿を取らない? ★ 例題 ★ 1) 日本語の勉強をしている(最中/時/うち)に、日本の文化(に/で)興味が湧い(ていった/てきた)。 2) ワープロ( )慣れてくる( )、もう手書きをする( )が(おっくうだ→      )なります。 (^^)前課の解答(^^) 1) ここ/もの/の(~とおり→文型225) 2) の(「ん」も可)/離婚して/に(慣用語「~に明け暮れる」) 182 *~てくれ/~てちょうだい/~たまえ 動詞:て形  + くださいませんか/ていただけませんか(男女:外&丁寧)    ないで   ください/くださいますか(男女:普通)      くれ/くれないか/ほしい/もらいたい(男:仲間&上か ら下へ)          ちょうだい/もらえないかしら/くださらない(女:仲間&丁 寧) 動詞:[ます]形 + たまえ(男:上から下へ、命令に近い) ♪ 会話 ♪ 李 :おい、小平、そこのタバコをとってくれないか? 小平:嫌だよ。自分のことは自分でしろって、いつもお父さんは僕に言ってるじゃないか。 良子:小平、ちょっと買い物に行ってちょうだい? 小平:お駄賃、くれる?だったら行ってもいいよ。 李 :なんと現金な奴だなあ。 ♯ 解説 ♭  これらは全て依頼表現に属します。依頼表現の形は多くありますが、ここでは代表的なものを取り上げるにとどめます。用法上注意するのは男言葉と女言葉があることです。例えば「~てちょうだい」は女言葉、「~たまえ」は男言葉で、共通しているのはどちらも目上から目下に対して使われるます。特に「~たまえ」は強制力のある言い方で、語調によってはほとんど命令になります。なお、初級で学んだ「~てください」は指示に近い語感をもっていて、目上の人に使うととても失礼になります。ですから、目上の人や知らない人に依頼するときは、「~ていただけませんか/~ていただけないでしょうか」(男女共通)を使ってください。 § 例文 § 1.そこに座って。実はあなたに話したいことがあったの。 2.誤解なさらないでください。私はそんなつもりで言ったんじゃありません。 2.さあさあみんな、集まってちょうだい。せっかくの料理が冷めてしまうわよ。 4.見たまえ。これが東洋最大と言われるAホテルだ。 5.もし君に反論があるなら、遠慮はいらん。言ってみたまえ。 ★ 例題 ★ 1) このことは誰にも話さない(を/と)約束して(いかだきます/いただけます)か。でしたら、お話し(して/しても)かまいません。 2) 今(忙しい→    )手が離せないから、もうしばらくそこで(待っている→     )(くれる→  )たまえ。 (^^)前課の解答(^^) 1) うち(期間≒~間に→文型016)/に(対象)/てきた 2) に(対象)/と(→文型203)/の(→文型354)/おっくうに 183 *~てしかたがない/*~てたまらない 動詞・形容詞:て形<ナ形ーで>  +  しかたがない (感情・状態を表すもの)  しようがない                     たまらない                  かなわない (注:「~てはかなわない」については解説部参照のこと) ♪ 会話 ♪ 李 :蚊に刺されたらしくて、首がかゆくてしょうがない。ねえ、かゆみ止め、持ってきた? 良子:私も刺されたけど、かゆいより眠くてたまらないわ。昨夜は隣の部屋がうるさくて、よく眠れなかったの。 李 :旅先で羽をのばしたい気持ちはわかるけど、夜遅くまで騒がれてはかなわないなあ。 ♯ 解説 ♭  「~てしかたがない/~てしようがない/~てたまらない」は「悲しい・うれしい・寂しい…」や「~たい/~てほしい」や「心配だ・残念だ・無念だ・かわいそうだ・不思議だ…」などの感情や感覚を表す形容詞、また、「疲れる・悔やまれる・腹が立つ・のどが渇く…」などの心理や生理状態を表す動詞について、「非常に~の程度・状態」を表します。これらの文型はいいことにも悪いことにも使えます。  この中で「~てかなわない」は「程度がひどすぎて嫌だ/困る」と悪いことに使われるケースがほとんどで、「うるさい・熱い・単調だ・~過ぎる…」などマイナスの語にしかつきません。→例題1)   うれしくてたまらない(・てしかたがない/×てかなわない) § 例文 § 1.刺激のない田舎暮らしは、単調でしかたがない。 2.ときどき国に帰りたくてたまらなくなることがある。 3.日本に来たばかりの頃は、見るもの聞くもの全てが珍しくてたまらなかった。 4.うちの母親は僕の顔を見ると、いつも「勉強、勉強」とうるさくてかなわない。 5.もう彼のことは言わないでくれ。名前を聞くだけでも、腹が立ってきてしょうがない。 ★ 例題 ★ 1) 彼(ほど/ぐらい)の人物が何故こんなことで自殺した(のだ/のか)と思うと、残念で(かなわない/たまらない)。 2) どうしてあんな美人があんな男( )惚れたの( )、(不思議だ→  )しようがない。 (^^)前課の解答(^^) 1) と(相互:~と約束する)/いただけます/しても(→文型200) 2) 忙しくて(理由を並べる:~て~て~から)/待っていて/くれ 184 ~てしかるべきだ 動詞・形容詞:て形<ナ形ーで>  +  しかるべきだ (注:「しかるべく/しかるべき+N」については解説部参照) ♪ 会話 ♪ 山田:消費税は引き上げられたし減税はないし、これじゃ、庶民の暮らしはお先真っ暗だよ。 李 :それに所得の半分以上を持っていかれる層のことも配慮してしかるべきだ。でないと、外国に逃げ出すよ。 山田:でも、何となく納得できないんだよなあ。先ず消費税の使用目的を明らかにしてしかるべきだと思うね。 ♯ 解説 ♭  「しかるべき(だ)」は「当然(だ)/適当(だ)」を表す語で、例文1、2のように、「しかるべく~する」「しかるべき+名詞」の形で単独でも使われます。  「~てしかるべきだ」は例文3~5のように「~するのが当然だ/~するのが適当だ」の意味を表しますが、古い言い方で公式の改まった場でしか使われません。普通の会話では「当然だ/当たり前だ」を使えばいいでしょう。  君が悪いんだから、謝ってしかるべきだ(・当然だ/当たり前だ)。 § 例文 § 1.一切君に任せる。しかるべく取り計らってくれ。 2.しかるべき人をして、しかるべき任務に就ける。これが適材適所だ。 3.先輩にはそれ相応の敬意を払ってしかるべきだ。 4.これだけの味なら、値段が高くてしかるべきだ。 5.今回のことは君の自業自得としか言いようがない。自分のまいた種は、自分で刈ってしかるべきだ。 ★ 例題 ★ 1) この種の交渉には(しかるべき/しかるべく)調停人を(たてれば/たてなければ)、利害や面子が衝突し、うまく(いく/いかない)ものだ。 2) (法治国家→      )からには、それが悪法で(ある→    )と(守る→    )しかるべきだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ほど(高い評価「~ほどの+N」→文型392)/のか/たまらない 2) に(~に惚れる=~を好きになる)/か/不思議で 185 ~て済む/~で済む/~ば済む 名詞    : で   +  済む(自動詞)                済ませる/済ます(他動詞) 動詞・形容詞:て形   +  済む(自動詞)        仮定形     済ませる/済ます(他動詞) (注:「~たら済む」の形もあるが、「~ば済む」が多く使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :彼はどうしてあんなに意固地なんだ?誰が見ても、彼の言い分に無理があるよ。「間違っていた」と言えば済むことなのに。 佐藤:引くに引けない男の面子って奴じゃないのか。中国人だってあるだろ? 百恵:そんな男の面子なんかには、つき合いきれないわ。 ♯ 解説 ♭  自動詞「済む」は名詞と結びつくときは「名詞+で済む/なしで済む」の形を取り、動詞または形容詞と結びつくときは「~て済む/~ば済む」や「~たら済む」の形で、「それで解決する/十分だ」という意味を表します。  自動詞「済む」に対応する他動詞は「済ます/済ませる」ですが、それぞれ「~が~て済む」「~が~を~て済ます/済ませる」などの形を取ります。  なお、「~なしで済む/~ないで済む/~なくて済む」(→文型260)のように否定形と結びつく形は別に取り上げましたので、その項を参照してください。 § 例文 § 1.電話で済むことを、わざわざお越しくださり恐縮です。 2.謝って済むなら警察は要らない。(俗語) 3.不幸中の幸いとでも申しましょうか。おかげさまで、けがも軽くて済みました。 4.辞書を引いて調べれば済むようなことまで、いちいち教師に聞くもんじゃない。 5.この程度の故障なら、電気屋に頼まなくても、自分で修理すれば済むじゃないか。 ★ 例題 ★ 1) 非を認めれば済む(ものの/ものを)、彼はあくまで自己を正当化し、謝罪(する/しよう)とは(した/しなかった)。 2) 君は何でもお金( )( )払えば(済ませる→       )と(思う→      )んじゃないのか。 (^^)前課の解答(^^) 1) しかるべき/立てなければ/いかない 2) である(→文型056)/あろう(~(よ)うと→文型437)/守って 186 ~でなくてなんだろう/~と言わずしてなんだろう 名詞・名詞句: ×  +  でなくてなんだろう               でなくてなんだ 引用句   : ×  +  と言わずしてなんだろう               と言わずしてなんだ (注:口語では断定を強めた「だろう→だ」の形も現れる) ♪ 会話 ♪ 李 :お前、最近やけに嬉しそうだね。廊下を歩いてるときなんか、まるでスキップしてるみたいだぞ。 佐藤:彼女のことが頭から離れない。ああ、これが愛でなくてなんだろう。 李 :馬鹿を言うのも休み休みにしたら。僕に言わせりゃ、女の何たるか、「知らぬが仏」と言わずしてなんだろう。 ♯ 解説 ♭  この文型は反問表現で、どちらも「正に~こそ、~である」という強い断定になります。会話で使われることはあまり多くなく、書面語と言えます。  「~でなくてなんだろう」は広範な語と結びつきますが、「~と言わずしてなんだろう」は格言や一般によく使われる言葉を引用する場合がほとんどです。  また類義語の「~そのものだ」(→文型126)や「~にほかならない」(→文型341)と比べたとき、「~でなくてなんだろう」「~と言わずしてなんだろう」は、より話者の感嘆・感動などの感情が表れるのが特徴でしょう。   これこそ、ほんとうの愛だ。  →これこそ愛そのものだ。  →これこそ愛にほかならない。  →これが愛でなくてなんだろう。  →これを愛と言わずしてなんだろう。 § 例文 § 1.武力で自国の「正義」を他国に押しつけるようなやり方が、覇権主義でなくてなんだろう。 2.環境破壊が近代産業社会の産物でなくてなんだろう。 3.よく見てみろ。これが偽作でなくてなんだと言うんだ。 4.この奥深い味を、匠の味と言わずしてなんだろう。 5.平凡な暮らしの中にこそ幸せがあると言わずしてなんだろう。 ★ 例題 ★ 1) 人権(とか/と)正義(とか/と)、大義名分をつけてはいるが、アメリカの中東介入の真の目的が、石油利権(でなくて/でないで)なんだろう。 2) 彼らの(如し→    )友情( )刎頚の交わりと(言う→    )ずしてなんだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) ものを(→文型426)/しよう(→文型441)/しなかった 2) さえ(→文型100)/済ませられる(可能形)/思っている 187 *~てならない 動詞・形容詞: て形<ナ形ーで> + ならない ♪ 会話 ♪ 佐藤:最近は、聞くこと見ること、ことごとく腹が立ってならない。何で世の中はこんなに不公平なんだろう。 李 :俺たちがいくら怒り狂っても、どうにもならないよ。 山田:僕はあの南の島で会ったつぶらな瞳の彼女に逢いたくてならないなあ。住所を聞いておくんだった。 佐藤:お前みたいに、無思想・無節操になりたいものだ。 ♯ 解説 ♭  「~てならない 」は例文1~3のように、「~てしかたがない/~てしようがない/~てたまらない/~かなわない」(→文型183)と同じように、感情・状態を表す形容詞・動詞について「非常に~の程度・状態」を表します。  しかし、「~てならない」の特徴は「どうしても、自然に~なってしまう」という自然に湧き上がる強い感情が表すことに特徴があります。そして例文4~5のように、「見える・思える・気になる・~てくる…」や、「思う・感じる・忍ぶ・案じる…」などの感覚・知覚・思考を表す動詞の自発形(「~られる」<受身形と同じ>)について、自然・自発表現をつくることです。このような自然・自発表現には「~てたまらない/~てかなわない」が使えません。→例題1) § 例文 § 1.息子の帰りが、待ち遠しくてならない(⇔てたまらない)。 2.どうして彼が部長の椅子を辞退したのか、今も不思議でならない(⇔でたまらない)。 3.彼はね、やっと娘の縁談がまとまったので、うれしくてならない(⇔てたまらない)んだ。 4.この国の行く末が案じられてならない。 5.この写真を見るにつけ、当時のことが思い出されてならない。 ★ 例題 ★ 1) どうしてあの時、自分の気持ち(に/を)もっと素直に(なれた/なれなかった)のかと、悔やまれ(てたまらない/てならない)。 2) 外国で長く暮らしている( )、自分の国が(恋しい→    )(ならない→     )なることがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) とか(→文型227)/とか/でなくて 2) 如き(→文型083)/を/言わず 188 ~ては~/~ては~ては~ 動詞・形容詞:て形<ナ形ーで>  +  は       ・                     は ~ ては  ・ (注:口語では「~ては→ちゃ/~では→じゃ」となることが多い) ♪ 会話 ♪ 山田:中国語講座を録音しては聞いているうちに、簡単な会話なら聞き取れるようになったよ。 李 :それは素晴らしいね。ところで異国関係もいいけど、異性関係の方のその後の進展はどう? 山田:彼女のこと?誘っては断られ、誘っては断られさ。こんなに冷たくされては、もうあきらめるしかないよ。 ♯ 解説 ♭  「~ては」(「~ては」「~では」→口語形「~ちゃ」「~じゃ」)は、例文1~3のように「~たら」(仮定・既定)の意味を表すことがあります。この「~ては」は「~たら、当然の結果~」という意味を含んでいて、後件で望ましくない事態を招く時しか使えない特徴を持っています。   雨が降ったら(・降っては)、中止するしかないね。<悪い事態>   雨が降ったら(×晴れては)、水不足が解消する。 <いい事態>  もうひとつは、例文4、5のように動詞について動作の反復を表します。例えば、「酔って喧嘩をする」は一回の行為ですが、「酔っては喧嘩をする」は習慣的に反復されている行為になります。この場合、「~ては~ては~/~ちゃ~ちゃ~/~じゃ~じゃ)~」の形で、反復を強調する表現もよく使われます。 § 例文 § 1.「壁に耳あり障子に目あり」。この話は人に知られてはま  ずい。声を抑えて。 2.見ちゃ駄目、今、着替えているところだから。 3.そこまで馬鹿にされては、黙って引き下がるわけにはいかない。 4.達磨のように転んでは立ち上がり、雑草のように踏まれ  ては強くなる、そんな人間になりなさい。 5.飲んじゃくだまく、くだまいちゃまわりの客と喧嘩をす  る。なんと酒癖の悪い奴だ。 ★ 例題 ★ 1) あんなに(頼んでは/頼まれては)、僕も断り(きれ/抜け)(ない/なかった)んだよ。 2) (寄せる→     )は返す波の音を(聞く→   )ながら、私はいつしか深い眠り( )落ちていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(~に素直になる)/なれなかった/てならない 2) と(自然・必然の条件「と」/→文型203)/恋しくて/ならなく 189 ~ではあるまいし/~ではあるまいに 名詞・名詞句: ×  +  ではあるまいし               じゃあるまいし               ではあるまいに               じゃあるまいに (注:「~じゃなかろうし」「~じゃなかろうに」の形もある) ♪ 会話 ♪ 佐藤:おい、今晩空いてないか?チケットが二枚あるんだけど、いま評判のあの映画、見に行かないか? 李 :さては振られたな。彼女も子どもじゃあるまいし、君の気持ちに気づいてもよさそうなものを。 佐藤:「女心と秋の空」でもあるまいに、なに考えてるのか、てんで見当がつかなくて、振り回されてばかりだよ。 ♯ 解説 ♭  「~で(は/も)あるまいし」(「~で(は/も)なかろうし」も同じ意味)は、例文1~4のように「~ではないのだから」に相当する原因・理由の表現を作ります。会話では「~じゃあるまいし」が多く使われるでしょう。  一方「~ではあるまいに」は「~ではないのに」に相当する逆説表現です。強い失望・残念・不満・反発の感情を表すのが特徴で、したがっていい事態については使えません。この逆説「のに」に相当する助詞の「に」は、今もときどき文では見かけますので、覚えておきましょう。→例題1)2)   もう夜の10時になるというに、子ども達は帰ってこない。 § 例文 § 1.神や仏じゃあるまいし、何から何まで完全な人間なんているはずがないじゃないか。 2.十四、五の小娘じゃあるまいし、めそめそ泣くな。 3.君一人が悪いわけではあるまいし、そんなに落ち込むことはないよ。 4.悪意があってしたんじゃなかろうし、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。 5.子供じゃあるまいに、親のすねかじりなんて恥ずかしくないか。 ★ 例題 ★ 1) 小中学生じゃあるまい(し/に)、こんなことも親に相談し(てからでないと/てはじめて)(決め/決められ)ないのか。 2) 子供の使いじゃあるまい( )、手ぶらでこんな大切なことを(頼む→   )には(行く→   )ないよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 頼まれては(受身文)/きれ(~きる→067)/なかった 2) 寄せて/聞き(→文型269)/に(眠りに落ちる:慣用的言い方) 190 *~てはいけない/~ちゃ駄目だ/~なかれ 動詞:て形  +  はいけない           は駄目だ (注:口語では「~ては→ちゃ/~では→じゃ」が多く使われる) 動詞:原形  +  んじゃない           (こと)なかれ ♪ 会話 ♪ 李 :熱も下がっていないんだから、無理をするんじゃないよ。今日もう一日、ゆっくり寝ていなよ。 良子:ありがとう。でも、今日は一平の授業参観日なの。 李 :欠席しては駄目なのか。 良子:一平が必ず来てくれと言ってたの。行かないわけにはいかないわ。それに、その後で個人面談もあるし。 ♯ 解説 ♭  これらは「~てはいけない」系の相手に直接向けられる禁止の表現です。「~てはならない」系との違いについては、文型195を参照してください。「~ちゃいけない(男女)/~ちゃ駄目だ(男女)/~ちゃいかん(男)」は話し言葉です。「~なかれ」は古語で、会話で使われることはありませんが、慣用的言い方には残っています。  なお、「~んじゃない」は読み方がによって意味が変わってきますので、注意を要します。禁止の時のイントネーションに気をつけてください。   行くんじゃない?<語尾上げて↑> =たぶん行くでしょう。   行くんじゃない。<じゃな↑い↓> =行ってはいけない。 § 例文 § 1.危ない!それに触っちゃいけない。 2.まだ食べちゃ駄目。みんながそろうまで待ちなさい。 3.ゆめゆめ疑うことなかれ。 4.驚くなかれ、あのいじめられっ子が、今や押しも押されもせぬ大出版社の社長だ。 5.ささいなことで、いちいち叱るんじゃない。子供はもっとおおらかに見てやれ。 ★ 例題 ★ 1) (そう/こう)しちゃ駄目、(そう/ああ)しちゃ駄目と、学校というところは、何から何まで規則(だけ/ずくめ)で、窮屈でかなわないよ。 2) 心機一転、一から(出る→  )直せ。商いは一度( )二度の失敗で、(あきらめる→    )ちゃいかん。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/てからでないと(→文型179/→文型192)/決められ 2) し/頼み(V〔ます〕形+に行く)/行け(可能形・否定) 191 *~てはいられない/~てばかりはいられない 動詞:て形  +  (は)いられない  ・           もいられない           ばかりはいられない ・           ばかりもいられない ♪ 会話 ♪ 佐藤:彼女、なかなか中国から戻って来ないなあ。まさか向こうで恋人ができたなんてことはないだろうなあ。 百恵:待っていられないのなら、迎えに行ったら?首に縄つけて、しょっ引いていらっしゃいよ。 山田:プレーボーイの佐藤も今やおちおちしていられないな。つまり、ミイラ取りがミイラになったってわけだ。 ♯ 解説 ♭  「~てはいられない」は「~ていることができない」という可能表現ですが、そこから「~状態を続けられない」という意味が現れ、更に例文1~3のように、「自分の気持ちを止められず、自然にそうなってしまう」という自然・自発の表現が生まれます。また、例文4、5のように過度であることを強調する「~てばかりはいられない」という形もよく使われるので、文型として覚えた方がいいでしょう。  遊んでばかりいる → 遊んでばかりはいられない § 例文 § 1.今日、入学試験の結果が発表されるかと思うと、心配で居ても立ってもいられません。 2.彼は正義感が強いから、上司の不正を黙ってみていられなかったんだと思う。 3.A社の倒産をひと事と笑ってはいられないよ。 4.入試も近いし、俺だって遊んでばかりはいられないよ。 5.いつまでも嘆いてばかりはいられない。さあ、気を取り直して、がんばろうじゃないか。 ★ 例題 ★ 1) 就職(が/を)決まった(からには/からと言って)、喜んで(だけ/ばかり)はいられない。 2) まもなく妻の出産( )と思うとじっとし(ている→   )ず、夫は分娩室の前( )行ったり来たりしていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) こう/ああ/ずくめ(~ずくめ→文型118) 2) 出(~直す→文型268)/や/あきらめ 192 *~てはじめて/~てこそ 動詞:て形  +  はじめて       ・           こそ         ・           こそ、はじめて ♪ 会話 ♪ 李 :僕は一平が生まれてはじめて、家族への責任というものを感じるようになったよ。 良子:私は一平がお腹の中にいるときから、守るべき命を体で感じていたわ。ああ、私も母親になるんだって。 李 :「母親は生まれながらに母親だが、父親は子どもを育ててこそ、はじめて父親になれる」って言葉があったね。 ♯ 解説 ♭  これらの文型はどちらも前提条件を表す文型です。「~てはじめて」は例文1~3のように「~してから、(そのときになって)やっと~した」という意味も、例文4、5のように、「~という条件があって、はじめて~できる」の意味も表すことができます。  「~てこそ」は「~という条件が満たされれば~が可能だが、その条件がなければ不可能だ」という強い表現で、後件で話者の判断を表します。会話中の「~てこそはじめて」は、それを更に強調した表現です。  注意してほしいのは「~てこそ」は例文1~3のように既に発生した事態には使えないことです。反対に「~てこそ」の文は語感は弱まりますが、どれも「~てはじめて」を使って表せます。→例題1) § 例文 § 1.日本に来てはじめて(×てこそ)刺身を食べました。 2.病気になってはじめて(×てこそ)、健康のありがたさを知った。 3.子を持ってはじめて(?てこそ)知る親の恩(俗語) 4.玉は磨いてこそ(⇔てはじめて)光る。磨かなければただの石に過ぎない。 5.働いて己の力で生きてゆけ。それができてこそ(⇔てはじめて)、一人前と言える。 ★ 例題 ★ 1) 外国で暮らし(てはじめて/てこそ)、自分の国の良さが客観的に(見る/見える)ように(した/なった)。 2) 何事( )苦労なくして成し遂げられない( )、それに苦労が(ある→  )こそ喜びもあるのです。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/からと言って(→文型053/→文型056)/ばかり 2) か(「だ」も使える)/ていられ/を(移動の場所は「を」」 193 *~ではないか/*~じゃないか 名詞    :    ×      +  ではないか 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>     じゃないか (注:「~んじゃないか」については、文型356を参照のこと) ♪ 会話 ♪ 李 :このマンションは買い得じゃないか?駅から近いし、間取りもよく考えられているし・・・。 良子:近くに商店街があるし、学校や病院も遠くないし。でも問題は値段ね。 李 :年収の5倍はきついかもしれないね。でもこんなにいい物件は、なかなか出ないんじゃないかな? ♯ 解説 ♭  「~ではないか/~じゃないか」は、形は質問ですが一種の反語で、実際は強い肯定の語気をもっています。意味から言えば、例文1~4のようにな同意・確認・詰問、例文5のような予想外の出来事への驚きを表しています。  なお、丁寧な言い方には「~じゃありませんか/~ではございませんか」、軽卑体には「~じゃねえか」等があります。  このほかにも、「~ではないか/~じゃないか」には、動詞の意向形(「~(よ)う」)と結びついた「~(よ)うではないか/~(よ)うじゃないか」(→文型440)の形で提案・呼びかけを表す用法があります。 § 例文 § 1.やはり彼は来なかったじゃないか。言った通りだろ。 2.あんなに堅く約束したではありませんか。それを今になって取り消すのは、ひどすぎるじゃありませんか。 3.ほら、あそこに見えるじゃないか。あれが富士山だよ。 4.あれ、もう一時過ぎじゃないか。とにかくひと休みして、昼飯にしよう。 5.あのA証券が倒産するなんて、いやあ、耳を疑ったじゃないか。<驚き> ★ 例題 ★ 1) 独身(とばかり/とだけ)思っていたのに、(なんと/なんで)彼女には子供(さえ/まで)いるじゃないか。 2) あそこ( )若い娘と(楽しい→    )そうに話してる( )は、田中じゃないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) てはじめて/見える(自V)/なった(~ようになる→文型446) 2) も/し(「~し、~それに~」→文型107)/あって 194 *~ではなく~だ/*~ではなくて~だ 名詞       :× +  ではなく/ではなくて ~ だ 句+の/ため/から:×    じゃなく/じゃなくて (注:強調の語気を強めて文末が「~のだ」になることが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :結婚、決まったんだって?水臭いじゃないか、俺達に言わないなんて。 佐藤:隠すつもりじゃなくて、話すきっかけがなかったんだよ。それに、日取りも式場も決まったわけではないし。 山田:あ~あ、わが課の独身男性は、これで俺一人か・・・。 李 :「待てば海路の日和あり」ってこともあるさ。 ♯ 解説 ♭  この文型は一種の強調の表現形式で、強い断定の語気を含んでいます。この文型は名詞以外にも、例文3~5のように「~のではなく~のだ」「~からではなく~からだ」「~ためではなく~ためだ」などの形で、様々な句とも結びつきます。  口語では「~じゃなくて~だ」「~じゃなく~だ」の形が使われることが多いでしょう。また、書面語として「~ではなく~である/~で(は)なしに~である」などがあります。   勉強は親のためではなく、自分のためにするのだ。   勉強は親のためでなしに、自分のためにするのである。 § 例文 § 1.これは私の物ではなく、友人から借りた物なのです。 2.歴史を変えるのは選ばれた政党や集団ではなく、民衆の意志なのだ。\ 3.僕は誰のためでもなく、自分自身のために闘うのだ。 4.私が怒っているのは、あなたが過ちを犯したことじゃなくて、それを私に隠そうとしたことだ。 5.あなたが私と結婚するのは、私が好きだからじゃなく、私の家の財産が目当てなんじゃないの? ★ 例題 ★ 1) 私(について/にとって)仕事は、金や名誉を得る(ため/から)ではなく、自己を実現する(ため/から)なのだ。 2) あなたが彼を悪く言うのは、彼( )嫌いだからじゃ(ない→   )て、彼( )羨ましいからじゃないの? (^^)前課の解答(^^) 1) とばかり(→文型222)/なんと(驚き)/まで(→文型404) 2) で/楽し(様態の「そうだ」)/の 195 *~てはならない/*~てはならぬ 動詞:て形  +  はならない           はならぬ           はならん (注:口語では「~ては→ちゃ/~では→じゃ」がよく使われる) ♪ 会話 ♪ 山田:何だい?この「きれる」「むかつく」って言葉は。 百恵:まだ若いくせに、そんなことも知らないの? 山田:僕がわからないのは、どうしてささいなことで、きれたり、むかついたりして、ナイフで人を刺したりするのかってことだよ。 李 :理由の如何を問わず、あってはならないことだよ。 ♯ 解説 ♭  「~てはならない」は「~てはいけない」と同じく禁止を表します。「~てはいけない」系は話者が個々の状況から自己の責任で判断して下すもので、相手の行動を直接禁止する文型です。しかし「~てはならない」系は社会常識・規則・習慣などに照らして判断するもので、多くの場合、特定の個人に向けられる直接の禁止ではなく、不特定多数に向けて「~するべきではない」(→文型384)と説明するときに多く使われます。用例を比較しても、「~てはいけない」とはかなり異なってきます。 § 例文 § 1.国際世論に逆行するような核実験を、決して許してはならぬ。 2.人に騙されることがあっても、人を騙すようなことはあってはならない。 3.いじめ問題が起こる背景、つまり学校・社会そのもののが持っている病理を見逃してはならない。 4.小事に拘り、大事を見失ってはならぬ。 5.自分の失敗を人のせいにするなんてことは、決してしちゃならないことだ。 ★ 例題 ★ 1) A国の地下核実験というあっ(てはならない/てはいけない)こと(が/を)(とうとう/やっと)起こった。 2) 見ろよ、部長、若い娘( )腕を組んで歩いてるぞ。何だか(見る→  )はならないものを(見る→  )感じだなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) にとって(~にとって→文型331)/ため/ため 2) が/なくて(理由は「~なくて」→文型257)/が 196 ~手前 名詞: の    + 手前 動詞: た形 ♪ 会話 ♪ 李 :小平に約束した手前、買ってやらないわけにはいかないよ。人の話では、なかなかのゲームソフトらしいし。 良子:でもテレビゲームに夢中で、勉強しなさいって言っても、全然聞かないのよ。 李 :実はね、僕もあのゲームやりたいのさ。世間の手前、僕が買うというのも恥ずかしいしね。 ♯ 解説 ♭  「手前」という語は「体面・体裁・面子」の意味を持っています。この文型はそこから派生していて、「~から、ほんとうはそうしたくはないが~するしかない」という不本意な感情が強く表れる原因・理由の表現となります。そのため、文末では「~つもりだ/~たい/~(よ)う」等の積極的な意志表現は使えません。多くの場合、「~しないわけにはいかない/~ざるを得ない/~しかない/~なければならない/~よりほかない」などが文末に多く現れます。 § 例文 § 1.近所の手前、私がこんなところでアルバイトをしていることは、内緒にしていただきたいんです。 2.やくざに絡まれたが、子供の手前、逃げ出すわけにはいかなくなった。 3.一旦やると言った手前、やらざるを得ないよ。 4.「俺にまかせろ」と大見得を切った手前、今更できないとは言いづらい。 5.酒はやめると妻に誓った手前、飲むわけにはいかないんだ。 ★ 例題 ★ 1) 客(への/にの)手前、朝帰り(する/した)娘を大声で叱る(わけではなかった/わけにもいかなかった)。 2) 風邪( )理由( )会社を(休む→    )手前、同僚にここにいるのを(見る→     )ては拙い。 (^^)前課の解答(^^) 1) てはならない/が/とうとう(「やっと」は期待したこと) 2) と(双方向は「と」、一方向は「に」)/見て/見た 197 *~てみる/~てみせる/~て御覧 動詞: て形 +   みる  ・            御覧            みせる ・ ♪ 会話 ♪ 李 :小平は僕に似て、字が下手だなあ。良子、お手本を書いてみてよ。僕にくれた手紙は字がきれいだったよ。 良子:あの頃は一生懸命お習字を習ったのよ。練習したことのある字が一つもないけど、やってみるわ。 李 :姿勢とか筆の持ち方とかは、目の前でやってみせるのが効果的だよ。親子の交流の時間も持てるしね。 ♯ 解説 ♭  「~てみる」は「~かどうか試す」という意味を表していますが、例文1、2のように、しばしば「と/ば/たら」と結びついて、「~してみた時~/~状況なった時、~」という意味も表します。  「~てみる」の命令表現が「~てみなさい」で、その丁寧な言い方が「~て御覧」です。そのほかに使役形「みせる」を使った「~てみせる」という文型がありますが、この「~てみせる」は例文4や「必ず成功してみせる」のように、自己の強い決意・決心・覚悟を表したり、例文5のように他者に行為をして、はっきりと提示することを表したりします。 § 例文 § 1.おいしいかどうかは、食べてみたらわかる。 2.考えてみれば、私にも言い過ぎた点がある。その点はお詫びする。 3.さあ、自分でやって御覧。私がしたとおりにすれば、きっとできるから。 4.この悔しさを忘れない。今度こそ勝ってみせる。 5.やってみせて、やらせてみせ、誉めてやらねば人は動かぬ。 ★ 例題 ★ 1) 入試(で/に)失敗したが、母に心配を(かけない/かけまい)と、笑って(みた/みせた)。 2) 習った文型を実際に(使う→   )(話す→   )御覧よ。(使う→ )はじめて、身に付くんだよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) への(「にの→への」)/した/わけにもいかなかった(→文型457) 2) を/に(「~を理由に」)/休んだ/見られ(~ては→文型188) 198 *~ても/*~でも/*~たって/*~だって 名詞     :    ×     + も 動詞・形容詞 :て形<ナ形ーで> 名詞・ナ形容詞:だ<ナ形ーだ>   + って 動詞・イ形容詞:   た形 ♪ 会話 ♪ 李 :どうしても、日本人の習慣には溶け込めないなあ。 良子:どんなところが? 李 :不満があっても何も言わないくせに、酒が入ると上司の悪口ばかり。会社では猫をかぶっているんだ。 良子:「長いものには巻かれろ」と思ってるのよ。お酒はそんな人の「心の憂さの捨てどころ」なんじゃないの? ♯ 解説 ♭  逆説の接続助詞「~ても/~でも」は初級文型ですが、「~ても」の話し言葉として「~たって」、「~でも」の話し言葉として「~だって」があります。用法は「ても/でも」と意味も用法も変わりませんから、仮定・既定に関わらず、条件の逆説に広く使えます。   雨が降っても、必ず行きます。・ 雨が降ったって、必ず行くよ。   雨でも、必ず行きます。   ・ 雨だって、必ず行くよ。 § 例文 § 1.矢でも鉄砲でも持ってこい。俺は逃げ隠れはしない。 2.嘘でもいいから、あのときの気持ちに嘘はなかったと言ってくれ。 3.いくら泣いたって、済んでしまったことは、もう取り返しがつかない。 4.一寸の虫にだって、五分の魂があるんだ。人を侮ってはいけない。 5.俺にだって男の意地ってものがある。今更後に引けるかよ。 ★ 例題 ★ 1) 僕はいつ(も/でも)いい。君の都合のいい日に(合 う/合わせる)から、君の方で決めて(もらえ/くれ)。 2) 急に「残業する→     」と(言う→    )たって、私( )も都合ってものがあります。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/かけまい(「~まいと思って」の略→文型398)/みせた 2) 使って/話して/使って(~てはじめて→文型192) 199 *~でもあり~でもある/*~でもなく~でもない 名詞       :   ×     + でもあり~でもある 句+の/ため/から:   ×       でもなく~でもない ナ形容詞の語幹  :<ナ形ー[×]> (注:イ形は「~くもあり~くもある/~くもなく~くもない」の 形となる。<例>「美しい→美しくもあり/美しくもなく」) ♪ 会話 ♪ 李 :僕の生活の場は家庭でもあり会社でもあるけど、地域社会に対する意識が低いことに気づいたよ。 良子:私も結婚してからは、家庭一辺倒だったわ。それにしても、日本の男性が関心があるのは、家庭でもなく地域でもなく、ただ会社だけって嫌いがあるわ。 李 :確かに。ただ、若者はもっと私生活中心志向だね。 ♯ 解説 ♭  これらは並立・並列の表現で、それぞれ「~であると同時に~である」「~でないと同時に~でない」という意味を表します。下に並列文の例を挙げてみましたが、意味上の違いはほとんどありません。強いて言えば、・は断定的で文語的な口調になります。・ この寿司屋は、店がきれいで、味もいい。(並列・列挙)・ この寿司屋は、店もきれいだし、味もいい。(並列&添加)・ この寿司屋は、店がきれいでもあり、味がよくもある。(並列&断定)  この文型は例文5のように動詞の終止形にもつくことで、その場合、「~のでもあり~のでもある/~のでもなく~のでもない」となるのが普通です。 § 例文 § 1.彼は医者でもあり、ボランティア活動家でもある。 2.時代を動かしているのは、政治家でもなく経営者でもない。大衆の動向そのものだ。\ 3.この方法が一番簡単でもあるし、また効率的でもある。 4.最近の売れ行きは良くもなく悪くもない。まあまあってところだな。 5.人に言われたのでもなく命じられたのでもなく、人々は進んで救援に立ち上がった。 ★ 例題 ★ 1) 君の意見に賛成(でもあり/でもなく)反対(でもある/でもない)。慎重に検討すべきだと言ってる(ばかり/だけ)だ。 2) 私は君( )怒っている( )でもなく、君( )失望した( )でもない。ただ残念な( )( )だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) でも/合わせる(他V:~に~を合わせる)/くれ(→文型182) 2) 残業しろ(命令形)/言われ(受身文)/に 200 ~てもかまわない/~てもさしつかえない **編集者殿:一部修正あり。ここは原本でなく、こちらの方を使ってください* * 名詞 ・疑問詞: で   +   もいい/もよろしい 動詞・形容詞:て形<ナ形ーで>      もけっこうだ               もかまわない                     もさしつかえない (注:口語省略形は「~たっていい…」のように変わる→文型199) ♪ 会話 ♪ 李 :この店は食べ放題だから、自分で好きなものを好きなだけ取って来てもかまわないんだよ。 良子:私が太ったっていいの?今持ってる洋服、ほとんど着られなくなるわよ。 李 :僕は一向にかまわないけど。太ると健康によくないから、まあ、ほどほどに。 ♯ 解説 ♭  「~てもかまわない/~てもさしつかえない」は許可・許容の文型ですが、「~てもいい」系と「~てもかまわない」系には微妙な違いがあります。「~てもいい/~てもよろしい/てもけっこうだ」は話者の自己責任の判断で、相手に直接許可を与えます。しかし、「~てもかまわない/~てもさしつかえない」は周囲の事情・常識・規則などから考えて「~ても問題はないだろう」という判断を示していて、消極的許容の語感を持っています。 § 例文 § 1.教室は間違ってもいいところだよ。 2.自分の発言に責任を持つなら、何をしゃべってもよろしい。それが民主主義です。 3.疑問点があれば何でも結構、どうぞ質問してください。 4.話したくなけりゃ、話さなくたっていいんだよ。 5.今日の試験は辞書を見たければ見てもかまわない。 ★ 例題 ★ 1) 心配し(ても/なくても)いいさ。子供を信じて、やりたい(みたいに/ように)(やって/やらせて)(やる/やろう)じゃないか。 2) 「店員さん、ここ( )タバコを(吸う→    )もかまいませんか」「申し訳ございませんが、こちらは(禁煙→     )なっております」 (^^)前課の解答(^^) 1) でもなく/でもない/だけ(限定→文型131
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2006-5-2 20:38:51 | 显示全部楼层
201 ~ても仕方がない/~てもはじまらない 動詞・形容詞:て形<ナ形ーで>  +  も仕方がない                     もしようがない                     もはじまらない                     もせんな(詮無)い (注:口語では「ても→たって/でも→だって」となることが多い) ♪ 会話 ♪ 良子:一平、こっちに来なさい。何よ、この模擬テストの成績は。こんな点じゃ、行ける高校なんてないわよ。 李 :そんなに怒っても仕方がないじゃないか。まだ、中 二だから、今からがんばれば間に合うよ。なあ、一平。 良子:あなたがそんなに甘いから駄目なのよ。父親らしく叱るときは、きちんと叱ってよ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は形は違いますが、どれも「~ても<役に立たない/無意味だ/手遅れだ/無駄だ>」という意味を表します。口語では「~ても」が「~たって」(→文型198)になることが多いでしょう。→例題2)  「~てもはじまらない」はもともと「~ても元には戻れない」、「~てもせんない」は「~ても効果がない」と言う意味ですが、「~てもしかたがない/~てもしようがない」と用法上の大きな違いは見られません。  注意してほしいのは、「も」がない「~てしかたがない/~てしようがない」(→文型183)の形は「非常に~だ」という程度の文型になることです。→例題1) § 例文 § 1.どうにもならないことを、悩んでもしようがないさ。 2.もうばれているんだから、隠したってはじまらないよ。 3.どうしても必要なものだから、多少高くたって仕方がな  い。買うしかないよ。 4.議論はどこまでも平行線だ。これ以上は続けても仕方が  あるまい。 5.今更言ってもせんないことだが、もう少し早くそのこと  に気づいてさえいたら。 ★ 例題 ★ 1) 受験(中/最中)の娘のことが心配(で/しても)仕方がないが、私がここで心配(で/しても)仕方がないことだ。 2) (泣く→    )たって(騒ぐ→    )だってせんないことだ。もう取り返しが(つく→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) なくても/ように/やらせて(使役文)/やろう(→文型440) 2) で/吸って/禁煙に(N+になる) 202 ~てやまない/~てやまぬ 動詞:て形  + やまない          やまぬ ♪ 会話 ♪ 李 :うちの部長、今度、子会社に社長として出向するらしいよ。社長だったら、思う存分に腕を振えるよな。 佐藤:人柄といい仕事ぶりといい、私の尊敬してやまない方だったので、お別れするのがとても残念だよ。 李 :残念なことは残念だが、またいつか御一緒できるさ。 佐藤:そうだね。近いうちに送別会を開こうよ。 ♯ 解説 ♭  「や(止/停)む」は「雨が降り止んだ」のように使われる動詞です。この「~てやまない/~てやまぬ」は「止む」の否定形「止まない」から作られていて、「ずっと~ている」「永遠に~する」という話者のひたすら思い続けている感情を表すようになります。この文型は今日では書面語に属するもので、前につく動詞もある程度限られています。口語では「ずっと~している/~し続けている」を使えばいいでしょう。   彼は私が 尊敬してやまない(≒ずっと尊敬している)政治家だ   私が愛してやまない(≒ 愛し続けている)祖国 § 例文 § 1.先生の一日も早い御健康の回復を念願してやみません。 2.彼が求めてやまぬ権力とは、果たしてどれほどの価値があるものなのか。 3.御結婚おめでとうございます。お二人の末永いお幸せを願ってやみません。 4.どこまでも社長の座を争ってやまぬ二人は、ますます亀裂を深めていった。 5.オリンピックにおける諸君の活躍を期待してやまない。 ★ 例題 ★ 1) 自殺(する/した)あの歌手は、うちの娘も憧れ(てたまらなかった/てやまなかった)若者達のヒーロー(です/でした)。 2) 大使館に(閉じこめる→     )ている人質の方々が無事(救出する→    )ことを(祈る→    )やみません。 (^^)前課の解答(^^) 1) 中(接続注意:~中→文型162/~最中→文型099)/で/しても 2) 泣いた(~ても→たって)/騒いだ(~でも→だって)/つかない 203 *~と/*~ないと/*~とき 名詞    :  の               + 時  ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> 名詞    :  だ/でない          + と   ・ 動詞・形容詞:原形/ない形<ナ形ーだ/でない> ♪ 会話 ♪ 良子:あなた、急がないと遅刻するわよ。 李 :おい、茶封筒に入った書類を知らないか。昨日帰った時、確かに机の上に置いたんだが。困ったなあ。 良子:あなたって人は、出かける前になると、いつもこうね。もしかして、これじゃないの? 李 :あっ、それだ!急がなくちゃ、じゃ行って来るよ。 ♯ 解説 ♭  条件「~と」と「~時」は、接続の形以外にも用法上の大きな違いをもっています。例えば、「~時」は後件で以前・同時・以後の事態をどれも表すことができます。  食事をする時、手を洗う(以前)         はしを使う(同時)  食事をした時、後片づけする(以後)  しかし、「~と」は「~した時(=~した後で)、~する」事態を表せるだけです。もし、「食事をすると<手を洗う/はしを使う>」のように使うと、意味上は「食事をした後で<手を洗う/はしを使う>」となり、おかしな文になります。そのほか、「~と」(→ 資料・)は後件で必然的に発生する事態や習慣的事柄に使われること、また意志表現が文末で使えないなどの制限があります。 § 例文 § 1.父は死ぬ時(×死ぬと)遺言を残した。 2.彼女は笑うと(⇔笑ったとき)、えくぼができます。 3.もう少し安いと(×安いとき)買えるけど、この値段だと(×値段のとき)ちょっと手が出ない。 4.さあ、買った買った。今買わないと(×とき)損するよ。 5.彼は口がうまいから、気をつけないと(×とき)騙されるよ。 ★ 例題 ★ 1) 外国に(行った時/行くと)、注意しなさいよ。生水を(飲む時/飲むと)、病気(にする/になる)からね。 2) 若いうちに勉強し(ておく→    )と、後に(なる→    )後悔することになるよ。そう(だ→   )と、この私の二の舞に(なる→   )兼ねない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 自殺した/てやまなかった/でした(三問とも時制に注意) 2) 閉じこめられ(受身文)/救出される(受身文)/祈って 204 ~とあって/~とある 名詞    : × / だ      +  とあって ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    とある  ・ (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :大き目のテントを買ってきたよ。大は小を兼ねるし。 良子:里帰りの道すがらだけど、小平は久しぶりのキャンプとあって大喜びよ。 李 :一平に会えるとあって、ご両親も楽しみにされてるようだね。手紙にも「早く一平の顔が見たい」とあるけど、目に入れても痛くないほど可愛い初孫だからねえ。 ♯ 解説 ♭  「ある」は事物の存在や、「~てある」(→資料。)の形で人為動作の結果、残っている状態を表したりします。この「ある」が「と」と結びついたのが「~とあって」で、「~という事態なので」という意味を表します。これは「~ので」系(→資料、)に属するする原因・理由の表現で、すでに起こったことを表しますから、文末で「~でしょう/~かもしれない/~つもりだ/~たい/~(よ)う」などの意志・推量表現が使えません。  なお、「~とある」という形は、例文5のように「~と書いてある/~と書かれている」という意味を表します。   手紙に「来年、帰国する」とあった(・と書いてあった)。 § 例文 § 1.夏休みが始まるとあって、子ども達はうれしそうだ。 2.まもなく大学入試とあって、学生たちの表情にも緊張の色が隠せない。 3.優勝した横綱を一目見たいとあって、駅前は押すな押すなの人だかりだった。 4.土地や家屋の値下がりが続いているとあって、不動産業者は四苦八苦している。 5.立て札に「芝生内に立ち入るべからず」とある。 ★ 例題 ★ 1) (もうすぐ/早速)正月(とあって/とあれば)、人々の足どりもせわしく(して/なって)きた。 2) 年( )一度のお祭り( )あって、街には露店が並び、大変な(にぎわう→      )ようだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 行った時/飲むと/になる 2) ておかない/なって(=~てから)/でない/なり(→文型043) 205 ~とあれば/~とあっては 名詞    :  ×  / だ     + とあれば 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> とあっては ~ ない (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い) ♪ 会話 ♪ 良子:ねえ、折り入ってあなたにお願いがあるんだけど。 李 :あなたの頼みとあれば、たとえ火の中、水の中・・・。それで、何、折り入っての頼みとは? 良子:じゃ、言うけど、私、働きに出てもいいかしら? 李 :えっ?突然、何を言い出すんだい。 良子:一平の教育資金もいるし、広い部屋にも移りたいし。 ♯ 解説 ♭  「~とあれば/~とあっては」は「~(の)であれば」という意味の条件の表現で、書面語です。会話では「たら/なら」を使えばいいでしょう。   あなたのためとあれば、私は死ぬことだってできます。   → あなたのためなら、私は死ぬことだってできます。   → あなたのためだったら、私は死ぬことだってできます。  なお、「~とあれば」は広く使えますが、「~とあっては」は常に文末で「~しないわけにはいかない/~するほかない/~しかない」などの否定表現と呼応します。→例題1)   あなたのためとあれば(・とあっては)、協力しないわけにはいきません。   あなたのためとあれば(×とあっては)、喜んでいたしましょう。 § 例文 § 1.あなたのためとあれば、私は死ぬことだってできます。 2.必要とあれば、いかなる援助もいたしましょう。 3.この子の命が助かるとあれば、私は自分の命を投げ出したって惜しくない。 4.この妥協案すらのめないとあっては、交渉の決裂は避けられまい。 5.スポンサーが反対だとあっては、この企画はあきらめるしかない。 ★ 例題 ★ 1) 電話(で/が)済む(とあれば/とあって)、わざわざ行く(までもない/しかない)だろう。 2) 住民の賛同( )(得られる→    )とあっては、ごみ処理場の建設は(あきらめる→     )ざるを得ない。 (^^)前課の解答(^^) 1) もうすぐ(「早速」は行為)/とあって/なって 2) に/と/にぎわい(様態の「ようだ」ではない→文型435) 206 ~といい~といい/~といわず~といわず 名詞A:× + といい   + 名詞B:× + といい         といわず            といわず ♪ 会話 ♪ 李 :君の着てるドレス、色といい柄といい申し分ないね。 良子: どうせ誉めるなら、ドレスといいモデルといい申し分ないと言うの!肝心のことを忘れてるわ。 李 :「馬子にも衣装」って言葉があったよね。 良子:あなた、何が言いたいの? 李 :いやいや、こちらの話し。触らぬ神に祟りなし。 ♯ 解説 ♭  「~といい~といい/~といわず~といわず」はA・Bを例示することで「AもBも、全部~」ということを表しています。両者の違いは次のような例で現れます。   手と言い足と言い血だらけだった。  <手足の至る所>   手と言わず足と言わず血だらけだった。<手足だけでなく体の至る所>  つまり、「AといいBといい」は取り上げたA・Bに焦点があり、「AといわずBといわず」は「A・Bを含めて、他のCもD…も」全体に焦点があるということになります。→例題1) § 例文 § 1.この陶器は、その渋い色といい素朴な形といい、実にすばらしい。 2.君といい妻といい、どうして女はそんなに現実的なんだろうねえ。 3.彼女は容姿といい知性といい、申し分のない女性だ。 4.山といわず野といわず、一面雪におおわれた。 5.彼は昼といわず夜といわず、つきっきりで妻の看病をした。 ★ 例題 ★ 1) 彼はウイスキー(といい/といわず)ビール(といい/といわず)、酒であれば、何に(も/でも)目がない。 2) 学歴(という→    )将来性(という→    )、願ってもない(相手→    )のに、どこが(気に入る→     )の?ほかに好きな人でもいるの? (^^)前課の解答(^^) 1) で(方法)/とあれば/までもない(不必要→文型338) 2) が(可能文)/得られない/あきらめ(~ざるを得ない→文型106) 207 ~という/~という~ 名詞・句:× + という + 名詞   ・ 名詞A :× + という + 名詞A  ・ 数詞  :× + という + 名詞   ・ ♪ 会話 ♪ 李 :辛い方がいいという御希望だったから、台所にあった香辛料という香辛料を全部入れてみたよ。 小平:パパ、このカレーライス、変な味がするよ。 李 :わさびもついでに入れたけど、いけなかったかな? 良子:あなたは中華と名のつく料理は何でも上手だけど、レパートリーから一歩外れると、めちゃくちゃね。 ♯ 解説 ♭  「~という」は例文1のように名詞を修飾し「~の名で呼ぶ」という意味や、会話中の「辛い方がいいという御希望」のように内容を説明する用法があります。  また、「AというA」と同じ名詞を繰り返すと、例文2、3のように「例外なく全てのA」という強調表現になります。例えば、「全ての家」と言うよりも「家という家」と言った方がはるかに強い表現です。もう一つは例文4、5のように、「(数詞)というA」の形で、数量を強調する強い「~も」に相当する用法があります。 § 例文 § 1.あの田中という奴は、煮ても焼いても食えぬ奴だ。 2.今日という今日は、もう堪忍袋の緒が切れた。 3.激しい炎は、家という家をことごとく焼き尽くした。 4.香港返還の日、何千何万という群衆が、手に手に国旗をもって祝賀行進をした。 5.一千万円という大金を、ぽんと寄付する人がいるとは、驚いたなあ。 ★ 例題 ★ 1) その地方では十二月の末(ともなると/ともすると)、山(といい/という)山は一面の雪に(覆った/覆われた)。 2) 広島に(投下した→     )原爆は、何十万人という人命を一瞬のうち( )奪い去った。そして、黒い放射能の雨を(降った→      )。\ (^^)前課の解答(^^) 1) といわず(~だけでなく、何でも~)/といわず/でも 2) といい/といい/相手な(N+なのに)/気に入らない 208 ~と言うか~と言うか/~と言おうか~と言おうか 名詞    :     ×       + と言うか~と言うか 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ >   と言うか、何と言うか                      と言おうか~と言おうか                      と言おうか、何と言おうか (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :今度入った新入社員、どう思う? 百恵:人づきあいが上手と言うか、調子がいいと言うか、確かに如才のない若者達ね。 山田:周りにあわせるのがうまいと言おうか、自分の意見がないと言おうか、何となく頼りない気もするなあ。 李 :まさか、君の口からそんな言葉を聞くとはねえ。 ♯ 解説 ♭  「Aと言うかBと言うか/Aと言おうかBと言おうか」は「Aと言っていいのか、それともBと言っていいのか、よくわかりませんが、~」という意味を表します。どちらも、どう表現したらいいのか、よくわからないときに使われる文型です。  これらの他にも、「Aと言ったらいいか、Bと言ったらいいか/Aと言ったらいいか、何と言ったらいいか」、或いは「Aと言えばいいか、Bと言えばいいか/Aと言えばいいか、何と言えばいいか」などの形も使われますが、どれも同義文型です。 § 例文 § 1.彼は単純と言うか素朴と言うか、とにかく一本気な性格だ。 2.霧と言うか霞と言うか、その竹林は白いもやに包まれていた。 3.よく気がつくと言うか何と言うか、彼女は実に細やかな方です。 4.彼は頭が切れると言おうか、才気走ると言おうか、確かに優秀ではあるが、問題がないわけでもないね。 5.優しいと言おうか何と言おうか、まあ、人がいいのが彼の取り柄ですね。 ★ 例題 ★ 1) 悔しいと言うか何と言うか、あの時(しか/ほど)惨めな気持ち(になる/になった)こと(は/が)ない。 2) 彼女は暖かみがあると言おう( )、愛嬌があると(言う→    )( )、男性からの人気は抜群です。 (^^)前課の解答(^^) 1) ともなると(→文型253)/という/覆われた(他Vの受身文) 2) 投下された(受身文)/に/降らせた(自Vの使役文:~が→~を) 209 *~ということだ/~とのことだ/~由 名詞     :    だ      +  そうだ 動詞・形容詞 :普通形<ナ形ーだ>     ということだ 各種助詞・副詞:    ×         とのことだ                       (との)由 (注:広く句と結びつく。口語形として「~(ん)だって」がある) ♪ 会話 ♪ 李 :今年の新入社員は、変わったのが多いらしいよ。多様な人材を採るよう、採用基準を手直ししたそうだ。 山田:僕らが新人類だと言われていた頃が懐かしいね。今じゃ新新人類とか言うんだって。次は異星人かな? 百恵:お気楽言ってられるのも、配属されるまでよ。この課にも一人配属されるということよ。 ♯ 解説 ♭  「~ということだ/~とのことだ」は他から聞いたことを客観的に引用しそのまま伝える伝聞の表現で、新聞・テレビなど報道で広く使われています。前は命令形でも意向形でも何でもそのまま引用できます。  一方、伝聞の「~そうだ」は終止形にしかつきませんし、用法上の制約があって、例文4のように、「(~だろう)とのことだ/(~に・で・を・から…)とのことだ」のように推量の助動詞・助詞・副詞などと結びつく表現はできませんし、例文5のように「~そうだった」という過去形もありません。さらに、順接の「~そうで/~そうだから」は使えますが、「~そうだが~/~そうなのに~」などの逆説で文を続けることもできないなどの制約があります。→例題1)  なお、手紙でよく使われる「~(との)由」は「~とのことだ」に相当する書面語で、「~んだって」は口語専用の表現です。 § 例文 § 1.天気予報によると、明日は雨が降るんだって(⇔そうだ)。 2.○○大学に合格なされたとのこと(⇔そうで)、本当におめでとうございます。 3.御子息の医科大学への御入学がお決まりになった由(⇔とのこと/⇔そうで)、心からお祝い申し上げます。 4.社長から午前中に連絡をとのことでした(×そうでした)。 5.景気は秋あたりには回復に向かうだろうということだ(×そうだ)。 ★ 例題 ★ 1) 田中さんは十時(まで/までに)来る(そうだった/とのことだった)が、(来る/来)そうもないねえ。 2) 気象庁の予報( )は、今年は(寒い→   )(なる→   )そうだから、そろそろ冬着を出そうかしら。 (^^)前課の解答(^^) 1) ほど/になった(あの時=過去)/は(~ほど~はない→文型395) 2) か/言おう(形の問題)/か 210 *~と言うと 名詞    :   ×         +  と言うと 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> (注:広く句と結びつく。相手の言葉を受けて使うことが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :今度遊びに来ない?僕の手料理をごちそうするよ。ところで君が中華料理で食べたい物と言うと何? 山田:食べたいものと言うと、北京ダックにフカヒレのスープだな。君の腕前はなかなかのものらしいしね。 李 :作ったことないので弱ったなあ。まあいいか、何とかやってみるよ。ただし、材料費は君持ちだよ。 ♯ 解説 ♭  「~と言うと」は話題提示で、「~に関して語ると<≒は>」という意味を表します。相手が話したことを、すぐ次に取り上げ、それを話題として連続して展開していくのが特徴です。   「昨日の地震には驚いたよ」   「うん、地震というと、縦揺れの時が一番危ないそうだ」  「~と言えば」(→文型217)も話題提示なのですが、思い出したり心に浮かんだことを新しく話題にすることが多いでしょう。「~と言うと」と「~と言えば」の一番の違いは、「~と言うと」には例文5のような聞き返しの用法がありますが、「~と言えば」にはないことです。→例題1)2)   「あの店の娘さんはかわいいなあ」   「あの店と言うと(×と言えば)、駅前のそば屋のこと?」<聞き返し> § 例文 § 1.黒い革表紙の本と言うと、確か教室の机の上にあったようだけど。 2.この仕事が任せられる者と言うと、彼しかいないね。 3.京都と言うと、やはり舞妓を思い出しますね。 4.怖いと言うと、昔は「地震・雷・火事・親父」なんてよく言ったものだが、今では親父は怖くなくなった。 5.「高橋さんから、お電話がありました。」  「高橋さんと言うと、三井商事の高橋さん?」 ★ 例題 ★ 1) 地震(と言うと/と言えば)、(その/あの)神戸の被 災地は今頃(どうして/どうなって)いるんだろう。 2) 「彼( )は本当に頭に来るなあ」  「頭に来ると言う( )?彼( )何かあったの?」 (^^)前課の解答(^^) 1) までに(→文型402)/とのことだった/来(様態「そうだ」) 2) で(伝聞の「~では」=~によると)/寒く/なる(伝聞「そうだ」) 211 ~というところだ/~といったところだ 名詞・数詞 :    ×     +  というところだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>    といったところだ                     ってところだ<口> (注:広く句と結びつき、およその数量・程度を表す) ♪ 会話 ♪ 良子:ねえねえ、このワンピースはお買い得だわ。買おうかしら。ねえ、あなたどう思う? 李 :見た目はいいけど、こんな安物はすぐに飽きるよ。二、三回着たらおしまいってところだな。 良子:「安物買いの銭失い」といったところかしら。じゃあ、もっと高いの、買ってもらおうっと!いいでしょ? ♯ 解説 ♭  形式名詞「ところ」には程度を表す場合があって、そこから作られた「~というところだ/~といったところだ」は「~と言ってもさしつかえないだろう/だいたい~程度と言えるだろう」という自己の状況判断や評価を表します。口語では「~ってところだ」が多く用います。なお、下の例はどれも同義と考えていいでしょう。   二人の力はほとんど同等だと思う。  →二人の力は同等といったところだ。  →二人の力は同等といってもさしつかえない。 § 例文 § 1.この車は高くても五百万円といったところだろう。 2.両者の勢力は伯仲していて、ほぼ互角ってところだ。 3.君の成績は、合格ラインすれすれというところかな。 4.彼は指導者というより、全体のまとめ役といったところだ。 5.最悪の事態は脱したというところだが、まだまだ予断を許さない。 ★ 例題 ★ 1) この調子で進めば、(年内に/年内は)工事(が/を)完成するのは、ほぼ間違いない(というものだ/というところだ)。 2) 彼の財力( )もってすれば、次期首相の座( )左右することも、不可能ではないといった( )( )( )だろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) と言えば/あの(過去の時を指す)/どうなって(主語が「被災地」) 2) に(~に頭に来る)/と(聞き返し)/と 212 ~というのは/~とは ・ 名詞    :    ×       +  というのは 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    とは                       って<口> ((注:広く句と結びつく。口語形は全て「~って」となる) ♪ 会話 ♪ 李 :仕事って先輩から盗むものだと教えられてきたけど、最近の新入社員は欲がないねえ。 山田:欲がないわけじゃあないよ。会社というのは給料をもらえばいい所で、生涯をかける所ではないんだよ。 真理:確かにそうね。でも、何に生涯をかけたらいいのかもわからないのが実状じゃないかしら。 ♯ 解説 ♭  「~というのは」(口語形は「~って」)の用法は、大きく二つに分けることができます。ひとつは例文1、2のように物事や語の意味・内容を説明するもので、文末には「~ことだ/~意味だ/~略だ」などが多く現れます。これは「~とは」を使っても表せます。  しかし、「~とは」は断定的で、また驚き・失望・感嘆を伴うのが特徴なので、微妙な使い分けが生じます。例えば、例文3、4のように「~というのは」が伝聞内容を引用したり、例文5のように婉曲な言い回しのときは「~とは」が使えません。この婉曲表現の時は「~かもしれない/~ようだ/~でしょうか」などの推量表現が文末に現れることが多いでしょう。  なお、「~とは」には別の用法もあるので、「~とは」(→文型242 )も併せて参照してください。→例題1) § 例文 § 1.週刊誌というのは(⇔とは)、週一回発行される雑誌のことだ。 2.「手紙」というのは(⇔とは)、中国語でトイレットペーパーという意味だってこと、君、知ってた? 3.この投資が危険だというのは(×とは)、何かわけがあってのことでしょうか。 4.李さんが学校を辞めるというのは(×とは)、本当ですか。 5.結婚というのは(×とは)、いわば恋愛の墓場のようなものですかねえ。 ★ 例題 ★ 1) 夢(とは/というのは)、心の中で思い描いている間(が/は)一番いい(の/こと)かもしれませんねえ。 2) あなたが(見る→    )という( )は、もしかしてUFOじゃないんです( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 年内に(~以前に)/が(自V)/というところだ 2) を(~をもってすれば→文型480)/を(他V)/ところ 213 *~というものだ/*~というものではない 名詞    :    ×     + というものだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>   というものではない                    ってもんだ<口>                    ってもんじゃない<口> (注:口語では多く「~という→って」「~もの→もん」となる) ♪ 会話 ♪ 課長:慣れてきたらしく、ずいぶん早くなったな。だが、早く済ませればいいというものではないぞ。 山田:似たような仕事でも、何から何まで同じというものでもありませんからね。 課長:そうだ。臨機応変に一通りこなせるようになってこそ、独り立ちしたというものだ。甘くはないよ。 ♯ 解説 ♭  「~というものだ」「~というものではない」は形式名詞「もの」が作る慣用文型で、それぞれ「正に~だ/一般に~だ」「決して~ではない/一般に~ではない」という断定や一般論を表します。この話し言葉が「~ってもんだ」、「~ってもんじゃない」です。  断定か一般論かは文脈から理解するしかないでしょうが、会話では口調によっても変わってきます。例えば例文5の「弁償すれば済むってもんじゃない」は静かな口調で話せば「一般にそうではない」になりますし、強く叱るような口調で言えば「決してそうあってはならない」という批判や非難にもなるでしょう。 § 例文 § 1.儲けを独り占めしようなんて、虫が良すぎるってもんだ。 2.合格おめでとう。努力したかいがあったというものだ。 3.同じ仕事をしているのに、女性の方が給料が低いのは不公平というものです。 4.何でも自分の思い通りになると思ったら、大間違いってもんだ。 5.弁償すれば済むってもんじゃない。金には換えられないものもある。 ★ 例題 ★ 1) 結婚って(こと/もの)は、愛情(さえ/すら)あればいいって(こと/もん)じゃないんだよ。 2) 学校の成績も大切だ( )、勉強だけできればいいという( )( )(でもない→    )かろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) というのは/が(「~は~が~」文と同じ)/の(→文型354) 2) 見た/の(→文型354)/か 214 ~というものは/~なるものは 名詞: ×  +  というものは           ってものは<口>           ってもんは<口>           なるものは (注:口語では多く「~という→って」「~もの→もん」となる) ♪ 会話 ♪ 李 :今までの日本人にとって、会社というものは一種の擬似家族のようなものだったんじゃないかなあ。 百恵:日本型経営なるものがそれね。 李 :給料をもらって働く会社の仕事だけが仕事じゃないんじゃないかって、最近、考えるようになったんだ。 佐藤:じゃ、仕事というのは、一体、何だろうねえ。 ♯ 解説 ♭  「~というものは」は「一般に~は、~である」という話題提示の用法となります。口語では「~ってものは」が使われ、書面語として「~なるもの」があります。前に来る語は抽象的意味の名詞が多く、後件ではその内容説明文がきますが、一般論を表すのが特徴なので、文末には「~ものだ/~ものではない」といった表現が多く現れます。   人の一生というものは、はかないものだ。   人間というものは、逆境によって鍛えられるものだ。  これらの文例は「~というのは」(→文型213)も使えるのですが、「の」は個人的感想や意見となり、「もの」は一般論・普遍事実を伝える特徴がありますから、一般論を述べるときは「~というものは」がいいでしょう。 § 例文 § 1.人間というものは一人では何もできない、そんな弱い存在なのだ。 2.愛ってものは、ガラス細工みたいに壊れやすいものさ。 3.どんな親にとっても、子供というものはかけがえのない宝物だ。 4.真の友情なるものは、金で買えるものではない。 5.夫婦ってもんは元々他人なんだから、努力しなければ、  うまくやっていけないものなんだ。 ★ 例題 ★ 1) 歴史という(の/もの)は、いつも勝者(につれて/によって/について)(書いて/書かれて)きた。 2) 夫婦なるものは、(喜ぶ→   )も(苦しむ→   )も共に(分け合う→      )ねばならない。 (^^)前課の解答(^^) 1) もの(→文型214)/さえ(~さえ~ば→文型101)/もん 2) が(逆説)/もの/でもな(~ない→なかろう=~ないだろう) 215 ~と言うより、むしろ~/~より、むしろ~ 名詞    :    ×      + より(も)、むしろ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> 名詞    :    ×      + と言うより(も)、むしろ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> (注:口語では「~と言う→って言う/って」となることが多い) ♪ 会話 ♪ 旧友:今度の人事は栄転というより、むしろ左遷だ。笑ってやってくれ、この出世レースからの落伍者を。 李 :何を言う。明日は我が身だ。笑うなんてできないよ。 旧友:その君の言葉が身にしみるよ。 李 :いつも誰かと競争しなくちゃなんない世の中の方が、むしろ狂ってるんだよ。 ♯ 解説 ♭  「A(という)より、むしろB」は「(AとBと比べたとき)どちらかといえばBと言う方が適切だ」を意味する比較文型です。「むしろ」を省略しても意味は通じます。この文型はAを必ずしも否定していないのが特徴です。   美しいというより、可愛い人だね。  同類の比較文型に「~ぐらいなら、むしろ~」(→文型 074)がありますが、これは積極的にAを否定しBを選択する文型です。→例題1) § 例文 § 1.僕は刺身より、むしろ天ぷらの方が好きだなあ。 2.この状況では進むより、むしろ退いて、相手の出方をみた方がいい。 3.彼は天才って言うより、むしろ狂人だね。 4.あの人は学者と言うよりも、むしろ評論家と言った方がふさわしい。 5.くやしいと言うより、むしろ自分自身が情けないと言った方が今の気持ちに近いかな。 ★ 例題 ★ 1) 彼女は美人(と言う/と言った)(より/ぐらいなら)、むしろチャーミング(の/な)女性と言った方がぴったりだね。 2) 彼の場合、できないと言う( )( )、むしろ(やる→    )としないと言った方( )正確だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) もの/によって(「によって」受身文(→文型348)/書かれて 2) 喜び/苦しみ/分け合わ(~ねばならない→文型353) 216 ~と言えど(も) 名詞    :  × / だ     +  と言えど(も) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :大工仕事だって、小平もやらせればちゃんとできるじゃないか。子供と言えども馬鹿にできないな。 良子:でも、あなたも老いたりと言えど、昔とった杵柄というところね。見直したわ。 李 :まだ三十歳そこそこの僕に、「老いたり」はないぜ。おい、小平、そこの釘と金槌をとってくれ。 ♯ 解説 ♭  「~と言えども」は書面語で、「~ても/~であっても/~と言っても」を表す「~ても」系の逆説表現です。この表現は「たとえ/いくら/いかに/いかなる~と言えども」のように副詞と呼応させて使うことが多いでしょう。そして、この文型は「~ても、例外なく全て~」という強い語感を持っています。   子供と言えども、馬鹿にはできない。  →子供でも、馬鹿にはできない。  →子供といっても、馬鹿にはできない。 § 例文 § 1.当たらずと言えども遠からず。(慣用表現) 2.一粒の米と言えども、粗末にしてはいけない。 3.いかなる人と言えども、許可のない者を通すわけにはいかない。 4.いかに親しき仲と言えど、わきまえるべき礼儀はある。 5.いかなる困難が待ちかまえていると言えども、わが決心は微動だにせず。 ★ 例題 ★ 1) 「風邪は万病の元」。軽い風邪(と言えば/と言えども)、(用心する/用心した)(に過ぎない/に越したことはない)。 2) 景気の先行き( )まだ不安があると言えども、手をこまねいて、嵐の(通る→    )過ぎる( )を待っている( )( )では、わが社の活路は開けない。 (^^)前課の解答(^^) 1) と言う/より/な(ナ形) 2) より/やろう(~(よ)うとする→文型441)/が 217 *~と言えば/~ってば/~と言えば~ 名詞    :    ×        +  と言えば 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>     ってば<口> (注:広く句と結びつく。相手の言葉を受けて使うことが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :経費削減と言えば聞こえはいいけど、人材育成への投資は惜しむべきではないよ。 佐藤:人材と言えば、後発の当社がここまで発展できたのは、人を重視する経営をしてきたからだよね。 李 :目先の損得しか見えないとしたらおしまいだよ。それに社員がやる気をなくしてしまうよ。 ♯ 解説 ♭  「~と言えば」(口語形が「~ってば」)は話題提示で、「~に関して語ると<≒は>」という意味で使われる点は「~と言うと」(→文型210)と共通します。しかし、「~と言えば」はその場の話題から何かを突然思いだしたたり、思いついた別のことを新しい話題として持ち出すときに使います。  どちらも使える例も多いのですが、「~と言えないこともないが、しかし~」という意味を表す「Aと言えばAだが、~」という形があって、この用法は「~と言うと」にはありません。この「Aと言えばA」は相手の見解に婉曲に疑問を付け加えるときに使われる表現で、「美しいと言えば美しいが・美しいことは美しいが」のように「AことはAだが、~」(→文型092)を使っても表せます。(→例題1) § 例文 § 1.1945年と言えば、日本が敗戦した年ですね。 2.李君と言えば、卒業して建設会社に勤めたはずだが。 3.○○○○市と言えば、治安が悪く、凶悪犯罪も多発していると聞いていますが。 4.確かに彼は勉強ができると言えばできるが、特に秀才というわけではない。 5.この病院は設備といい医者といい申し分ないが、入院費が高いことが、不満と言えば不満だ。 ★ 例題 ★ 1) 麻雀という(の/こと)は遊び(と言うと/と言えば)遊びだが、金を賭ければ博打(この/その)ものだね。 2) 平田君って( )、いつ(だ→   )かな、一度一緒に(旅行する→  )ことがあったなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) と言えども/用心する/に越したことはない(→文型309) 2) に/通り/の(→文型354)/だけ(~だけでは→文型134) 218 ~といった/~といって~ない/~といった~ない 二つ以上の名詞を並列: ×  + といった+名詞     ・ 疑問詞・これ    : ×  + といって~ない     ・                  といった+名詞 ~ない                  という +名詞 ~ない ♪ 会話 ♪ 李 :僕はこれといった特技がないなあ。強いてあげれば二カ国語が話せることと、料理作りだけど・・・。 良子:私もよ。お茶、お花といった習いごとは一通りしたけど、どれもみな月並みだし・・・。 李 :君は仕事をしながら子育てもしているのだから、立派なものだよ。それに人並み以上の節約家だよ。 ♯ 解説 ♭  「~といった」は「A、B(AやB)といった+N」のように二つ以上の事柄を例示して「~などの/~のような」という意味を表します。→例題1)   味噌や醤油といった(・などの)調味料  その他、「これ」や疑問詞と結びついて「これといって~ない/これといった~ない」のように文末で否定表現と呼応して、「特に取り上げるほどの~はない」という意味を表します。この文型は一般に「~といって+用言(動詞・形容詞)~ない」「~といった+名詞~ない/~という+名詞~ない」という形を取ります。   これといった趣味もない。   これといってやりたいことはない。 § 例文 § 1.彼女には、絵画や音楽といった芸術面の才能がある。 2.これという名案も出ないまま、会議の時間だけけが過ぎ  ていった。 3.これといってすることもなく、一日ぶらぶらしていた。 4.別にこれといった用事はなかったんだけど、ちょっと君  の顔が見たくなって、寄ってみたんだ。 5.誰といって特別につきあっている男性はいないわ。 ★ 例題 ★ 1) (どこ/誰/いつ)といって、行きたい所は(ある/ない)が、機会があればチベット、ネパール、ブータン(という/といった)地域に行って、のんびりしたいね。 2) 彼は( )( )といった取り柄も(ある→   )けど、あなたより誠実な人(だ→    )ことは確かだわ。 (^^)前課の解答(^^) 1) の(→文型212)/と言えば/その(~そのもの→文型126) 2) ば/だった/旅行した(~したことがある→文型080) 219 *~と言ったら/~ったら/~ったらありゃしない 名詞    :    ×    + といったら      ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>  ったら<口>                   といったらない    ・                   ったらない<口>                   ったらありゃしない<口> ♪ 会話 ♪ 山田:この十月に佐藤と結婚するんだって?おめでとう!羨ましいったらありゃしない。 真理:山田さんったら、よく言うわね。いつかの彼女とうまくいってるんでしょ。 山田:それが、彼女ったら外にも彼がいてさ、ばかばかしいったらないよ。僕はいつも損な役回りの道化役さ。 ♯ 解説 ♭  「~と言ったら」(口語形は「~ったら」)は話題提示で、「~と言うと」(→文型210)や「~と言えば」(→文型217)と同じく「~に関して語ると <≒は>」という意味を表しますが、感動・感嘆・驚き・失望など話者の感情を強く打ち出すのが特徴です。  ここから例文3、4のように「~と言ったらない/~と言ったらありゃしない/~ったらありゃしない」などの形で名詞・形容詞・感情を表す動詞について、「言葉で表せないほど~だ/最高に~だ」という驚きや感情を強く強調する程度表現や、例文5のように「Aと言ったらA」という形で「絶対~だ/する」を強意の表現が生まれます。「~と言ったら」は感情強調の話題提示と言えるでしょう。→例題1) § 例文 § 1.そのときの悔しさと言ったら、もう口では表せません。 2.その女性の美しさと言ったら、まるでこの世の人とは思えないほどだったよ。 3.何よこれ。この部屋の汚いと言ったらありゃしないわ。まるで足の踏み場もないじゃないの。 4.毎日が同じことの繰り返しで、退屈ったらないよ。 5.行かないと言ったら絶対に行かない。もう、私の気持ちは変わらないわ。 ★ 例題 ★ 1) その時の彼の(驚く/驚き)よう(と言ったら/と言うと)なかったよ。もう目を白黒(して/させて)たよ。\ 2) いやだと言ったら絶対に( )( )よ。(死ぬ→   )だって、あんな男と結婚する( )はいやよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) どこ/ない/といった 2) これ/ない/である(「だ」には連体用法がない) 220 ~と言っても過言ではない 名詞    :   × / だ    + と言っても言い過ぎではない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>   と言っても過言ではない (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略されないことが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :銀行やゼネコンで経営が行き詰まるところが出てきた現状は、制度疲労だと言っても過言ではないな。 佐藤: 消費税の引き上げが、消費を長い低迷の淵に突き落としたんじゃないだろうか。 百恵:そうね。今や、どこが業界で最初に倒れるかが、最大の関心事だと言っても言い過ぎではないわね。 ♯ 解説 ♭  「~と言っても過言ではない」は「~と言って(も)いい/~と言うことができる」と基本的に同義ですが、語感とすれば、「~と言っても、少しの誇張もない。いや、正にそのものである」という強い口調になることでしょう。以下のような類義文型がありますが、これらの中ではこの文型が一番強い断定口調になります。   彼こそ 天才だと言っても過言ではない。       天才そのものだ。      (→文型126)       天才でなくてなんだろう。  (→文型186)       天才と言わずしてなんだろう。(→文型186)       天才にほかならない。    (→文型341) § 例文 § 1.愛こそ力だと言っても言い過ぎではない。 2.彼の芸は素人の域を越えていて、すでに玄人芸と言っても過言ではない。 3.彼はこの分野の第一人者だと言っても過言ではない。 4.この発明は従来の常識を破る画期的なものだと言っても過言ではない。 5.直接手を下さなくても、言葉で人を自殺に追い込むことは犯罪と言っても言い過ぎではない。 ★ 例題 ★ 1) この一戦(で/に)勝てる(や否や/か否か)は、諸君の奮闘(次第/如何)にかかっていると言っても過言ではない。 2) 逆境の中( )こそ、その人の本当の真価が(問う→      )と言っても言い過ぎ(だ→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 驚き(→文型435)/と言ったら/させて(使役文) 2) いや/死ん(~でも=だって→文型198)/の(→文型354) 221 *~と言われている/*~と見られている 名詞・名詞句:  × / だ     +  と言われている ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    と見られている ・ (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略されないことが多い) ♪ 会話 ♪ 部長:当社は業界で万年三位と言われているが、ここらでなんとか順位を上げたいものだ。 課長:しかし、世間から不動のトップだと見られている会社にだって、いくつか弱みはあります。そこを突けば、当社がトップになる可能性も十分あると思います。 部長:二位を飛ばしてのトップとは、威勢がいいな。 ♯ 解説 ♭  「見る」という動詞は「判断する・推定する」という意味も持っていて、例えば、「この国の将来をどう見ますか」のように使います。  これらの文型は広く引用句と結びつき、「~と言われている」は「多くの人が広く~と言っている」、「~と見られている」は「多くの人が広く~と考えている」という意味を表します。新聞やテレビなどの報道で多く使われる表現で、定説や一般評価を表す文型と言ってもいいでしょう。ちなみに、この受身形「~られる」は客観的に事実を伝える「~られる」です。 § 例文 § 1.彼は将来、首相になる人物と見られている。 2.日本人は働き蜂だと言われていたが、最近の若い人はそうでもないねえ。 3.二一世紀の前半には、地球人口は百億人を越すと見られている。 4.先進国の経済成長は、もう頭打ちだと言われている。 5.彼は子供の頃は天才歌手と言われていたが、今ではブラウン管からも姿を消した。 ★ 例題 ★ 1) 歴史(は/が)繰り返す(と言っている/と言われている)が、全く同じことの繰り返しでは(あろう/あるまい)。 2) あの事件( )起こるまでは、日本は世界( )一番治安がいい国だと(見る→    )ていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/か否か(→文型040/→文型428)/如何(→文型008) 2) で/問われる(受身文:~を問う→~が問われる)/ではない 222 ~と言わんばかり/~とばかり 名詞    :   × / だ    + と言わんばかりに ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>   と言わんばかりの                      とばかり(に)                      とばかり思う ・ (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略されないことが多い) ♪ 会話 ♪ 百恵:最近の山口さん、どうしたの?何だか目が空ろで、おどおどしていて元気がないわね。 山田:本当だね。つい最近までは、もっと年俸を上げろとばかりにしゃにむに仕事をしていたのに。 李 :課長から会社を辞めろと言わんばかりに海外勤務を言い渡されたらしいよ。 ♯ 解説 ♭  この文型中の「~んばかり」(→文型487)は動詞の「ない形」と結びついて、「今にも~しそうだ」と同じ意味を表します。   今にも泣き出しそうな顔 = 泣き出さんばかりの顔  ここから「~と言わんばかり」が生まれていますから、「今にも言いそうだ」、つまり、「(実際にはそう言っていないが)今にも~しそうな様子・態度・表情で」という意味を表します。「~とばかりに」はその省略形です。  注意してほしいのは、例文5のように「~とばかり思っていた」の形で前に来る語や句を強調する文型を作ることがあります。この「~とばかり」は省略しても意味は変わりません。形は同じでも、上の「~と(言わん)ばかり」とは全く異なる文型です。 § 例文 § 1.死ねと言わんばかりに(⇔とばかりに)殴りつけた。 2.顔も見たくないとばかりに(⇔と言わんばかりに)、彼女は顔を背けると、部屋を出て行った。 3.黙れと言わんばかりの(⇔とばかりの)顔で、彼は私をにらみつけた。 4.「いい気味だ。ざまを見ろ」とばかりに(⇔と言わんばかりに)、彼は私を笑った。 5.え?試験は今日なの?僕は明日だとばかり思っていたよ。 ★ 例題 ★ 1) 最初(は/に)冗談で言ってる(とばかり/と言わんばかり)思っ(ている/ていた)が、実は彼は本気だった。 2) 彼はそれを口に入れるか(入れる→     )うちに、まずい( )ばかり( )吐き出した。 (^^)前課の解答(^^) 1) は/と言われている/あるまい(=ないだろう→文型398) 2) が(自V)/で(範囲限定)/見られていた 223 どうして~ことができようか/どうして~(ら)れようか どうして ~ 動詞:原形  +  ことができようか                  ことができるだろうか        動詞:て形  +  ていられようか (注:可能形が使われる場合は「~(ら)れようか」の形になる) ♪ 会話 ♪ 李 :今日は風が強いなあ。まだ七月だというのに気の早い台風でも来るんだろうか? 良子:テレビでは上陸する恐れはないと言っていたけど。 李 :そんな予報を、どうして信じることができるだろうか?科学が万能ってわけではないよ。この雲行きでは、台風が首都圏を直撃する可能性は無視できないよ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は形の上では質問文ですが、意味上は反語表現で、「いや、決して~できないだろう」という意味を表します。文末には「~できようか/~できるだろうか/~(ら)れるだろうか/~(ら)れようか」など各種の可能表現が現れます。→例題1)2)  こんな重労働がどうして子供にできようか。(=できるはずがない)  初級では意向形として習った「~(よ)う」の形は未然形と言われ、意志も・推量も表しますので、注意しましょう。また「ある/いる/できる/わかる/要る」という五つの状態動詞の未然形「~(よ)う」は常に推量を表します。例えば「できよう=できるだろう」「あろう=あるだろう」と同じ意味です。 § 例文 § 1.どうしてあの日のことを忘れることができようか。 2.友が困っているのを、どうして見て見ぬふりをしていられようか。 3.この背信行為を、どうして怒らずにいられようか。 4.その国で暮らしてみないで、どうしてその国のことがわかるなんてことがあり得ようか。 5.この世は聖人君子ばかりじゃないし、きれい事だけでどうして生きていけようか。 ★ 例題 ★ 1) あんな嘘つきの言う(こと/の)が、どうして(信じよう/信じられよう)か。(信じられる/信じられない)はずがない。 2) 泥棒が一人も(いる→   )(ようだ→   )国が、どうしてこの世に(ある→   )得ようか。 (^^)前課の解答(^^) 1) は/とばかり/ていた(過去文) 2) 入れない(~か~ないうちに→文型042)/と/に 224 *どうしても~たい/*どうにかして~たい どうしても   ~ 動詞:[ます]形  + たい     ・ 何としても                たいものだ どうにかして ~  動詞:[ます]形  + たい      ・ 何とかして                たいものだ (注:文末には意向形や依頼も使われる→解説) ♪ 会話 ♪ 李 :昨日のボクシング、両者とも何とかして主導権を取ろうと激しい打ち合いで、手に汗を握ったよ。 良子:そのタイトルマッチは、どうしても見たかったようね。でも、殴り合いを見て喜ぶ男の人の気が知れないわ。 李 :えっ?ボクシングを、単なる殴り合いだなんて言ってもらっちゃ困るなあ。 ♯ 解説 ♭  「どうしても/何としても」は「どんなことがあっても、必ず~」、「どうにかして/なんとかして」は「何とか方法を見つけて、できれば~」という意味を表します。一般に文末では「~たい」と呼応しますが、それ以外にも「~てください/~(よ)うと思う/~ませんか」などの希望や勧誘を表す文型が使われます。→例題1)  なお、副詞の「どうしても」は「どうしても~ない」と否定形と呼応して、「どんな手段を用いても~ない」という意味を表すことがあります。→例題2) § 例文 § 1.この仕事だけはどうしても自分の力でやり遂げたい。 2.「どうしても彼女と結婚したいの?」「ええ、彼女以外の女性は考えられません」 3.何としてもあなたのお力をお借りしたいんですが、何とかならないでしょうか。 4.どうにかしてこの苦境を切り抜け、この会社を建て直したいものだ。 5.何とかしてこの子を立派な医者にしたいと思っている。 ★ 例題 ★ 1) (どうにかして/どうしても)若者は結論を急ぎ(たい/たがる)(嫌い/恐れ)がある。 2) 何とかして日本語が(上手だ→   )話せるように(なる→   )たいのだが、どうしても(上達する→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) こと(内容→文型354)/信じられよう/信じられる 2) いない/ような/あり(~得る→文型017) 225 *~とおり(に)/*~どおり(に) 名詞:  の    +  とおり(に) 動詞:原形/た形     とおりの + 名詞 名詞:  ×    +  どおり              どおりの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 真理:言われたとおりに仕事をしてても、何かとケチをつけられるし、女も三十過ぎると会社にいづらくなるわ。 百恵:日本の企業は、まだまだ昔通りの男性中心社会だものね。でも、女は度胸って開き直ってればいいのよ。 佐藤: 普通は「女は愛嬌、男は度胸」じゃなかったっけ? 百恵:そうとも言うわね。でも、それは一昔前の話よ。 ♯ 解説 ♭  「通(とお)り」から作られた文型で、「~と同じように/~そのまま」という意味を表します。名詞に直接つくのは接尾語の用法で、「考えどおり/基本どおり/希望どおり/計画どおり/指示どおり/マニュアルどおり/文字どおり/元どおり/予想通り…」のように「どおり」と読みます。この「Nどおり」は、「噂のとおり美しい・噂どおり美しい」のように「N のとおり」と言うこともできます。また、動詞につく「~とおり」は「~ように」や「~まま」(⇔文型406)を使っても表せます。   見たとおりに(・ように/ままに)話す。  それ他、「~とおり」は例文5のように数字について種類・方法も表します。 § 例文 § 1.君の考えどおりに(⇔考えのとおりに)すればいいんだよ。 2.私の命ずるとおりに(⇔命令どおりに)していれば、問題はない。 3.予想したとおり(⇔予想どおり)の結果になった。 4.この世の中、何でも自分の思いどおりに(⇔思ったとおりに)なると思うな。 5.この問題には二通りの解き方があります。 ★ 例題 ★ 1) 主観を挟ま(ないで/なくて)、(見た/見る)とおり(聞いた/聞く)とおりを話しなさい。 2) お客様の御希望( )どおりの髪型( )いたしましたが、( )気に召していただけたでしょうか。 (^^)前課の解答(^^) 1) どうしても/たがる(第三者・不特定の感情)/嫌い(→文型063) 2) 上手に/なり/上達しない 226 *~とか/~とやら/~とかいう/~とやらいう 名詞    :  ×         +  とか 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    とかいう + 名詞                       とやら                       とやらいう + 名詞 (注:広く句と結びつく。伝聞の場合は「~だ」は省略しない) ♪ 会話 ♪ 課長:若気の至りとまでは言わんが、君は自己主張が強すぎる。もっと周りと歩調を合わせたらどうだ? 李 :「出る杭は打たれる」とか言う言葉が日本にはあるそうですが、その種の事なかれ主義は、もはやこの世界には通用しないのではないでしょうか。 課長:和の心がないと、世の中はうまくいかないものだ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は広く引用句と結びつき、伝聞や不確かな情報を引用する用法です。なお、「と→とか→とやら」と進むほど不確実になってきます。   山田さんという人  (確実な情報)   山田さんとかいう人 (少し不確実)   山田さんとやらいう人(不確実)  実際はこうした曖昧な表現を使って責任を回避する態度をとることもあり、その方が多いかも知れません。また、この「~とか/~とやら」には終助詞の用法もあり、多くは例文1のように伝聞の「~そうだ」と同じ意味を表します。→例題1) § 例文 § 1.天気予報では、明日は雪になるとやら。 2.六時には着くとか言っていたが、もう七時だよ。 3.今頃になって来られなくなったとやら言ってきたが、いつもながら彼のいい加減さには困ったものだ。 4.よく店に来ていた、え~っと、銀行に勤めている何とか言う人、しばらく顔を見せないね。 5.日銀の介入がありそうだとか言う情報が流れ、金融市場は様子見の状況だ。 ★ 例題 ★ 1) 彼の話(によって/によると)、晴れた日は自宅から富 士山が(見る/見える)(と/とか)。 2) 彼女は今、沖縄の石垣島( )( )いう島( )暮ら していると、風の便りに(聞く→   )ことがある。 (^^)前課の解答(^^) ・ ないで(「~ないで」か「~なくて」か→文型257)/見た/聞いた ・ ×/に(謙譲語=にいたす)/お(敬語:お気に召す=気に入る) 227 *~とか~とか/~だの~だの/~の~のと 名詞    :  × / だ      +  とか ~ とか 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>     の ~ のと 名詞    :  ×          +  だの ~ だの 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> (注:「~だの~だの」は「~とか~とか」の口語形) ♪ 会話 ♪ 李 :どうも日本は、外国人にとって「開かれた社会」だとは思えないなあ? 良子:商社とか航空会社とか、外国人を採用する企業も増えてるけど、まだまだね。 李 :入管はアジアからの留学生に対しては高圧的だしね。 良子:日本人としては耳が痛い話だわ。 ♯ 解説 ♭  これらは形は違いますが、いくつかある中から代表例を取り上げて提示する点で共通しています。一番中立的なのが「~とか~とか」で、話し言葉・書き言葉のどちらにも使われます。「~だの~だの」は話し言葉で、話者の感情が多く現れ、不満や非難の感情が込められることが多いでしょう。  なお、「~の~のと(言って)」は発話の内容を引用するときにだけ使える文型で、例文1のような一般的な例示には使えません。    部屋が狭い とか 家賃が高い とか、   文句ばかり言っている。          だの       だの(と)          の        のと  例示の「~やら~やら」(→文型431)も似た意味を表しますが、副助詞「~とか」が代表例を取り出すのに反し、「~やら」は「そのほかにも色々」を強調します。→例題1) § 例文 § 1.タイとかマレーシアとか、東南アジアの国々の経済発展はめざましい。 2.彼は裏ではあなたのやり方を、強引だとか非民主的だとか言って批判しています。 3.これがいいだの、あれがいいだのとなかなか決まらず、  妻の買い物につきあうと疲れてしまう。 4.生きるの死ぬのと、大げさに騒いでいる。 5.何のかんのと言って、結局やろうとしない。 ★ 例題 ★ 1) テレビ(だけ/ばかり)見てい(なくて/ないで)、少しは家の手伝い(とか/やら)、勉強(とか/やら)したらどう? 2) あの二人は別れる( )別れない( )と夫婦喧嘩が絶えないが、半ばレクレーションみたい( )ものさ。 (^^)前課の解答(^^) 1) によると/見える/とか 2) とか/で(動作の場所)/聞いた(→文型080) 228 ~と~(と)が相まって 名詞A:× + と  +  名詞B:× +  (と)が相まって ♪ 会話 ♪ 佐藤:今回のプロジェクトは、当社始まって以来の大成功だったね。 李 :時流をとらえた企画と我々のチームワークとが相まって、はじめて実現できた成果だよ。 佐藤:僕はつきもあったと思うよ。うまくいく時は、何でもこんなもんだよ。 ♯ 解説 ♭  「AとBとが相まって」は「AとBが一つになって~」や「AとBの相互結合の結果、~」という意味を表します。後件は必ずいい結果の発生ですので、悪い結果には使えません。悪い結果の場合は動詞「からむ」を使うといいでしょう。× 色と欲とが相まって、この殺人事件は起こった。○ 色と欲とがからんで、この殺人事件は起こった。 § 例文 § 1.いい素材と技とが相まってこそ、おいしい料理は生まれる。 2.好天と子供の日が相まって、行楽地は大変な人出だ。 3.都心に近いのと環境の良さが相まって、その土地は高価格でも飛ぶように売れている。 4.自己に対する厳しさと他人に対する思いやりが相まってこそ、真のリーダーと言える。 5.東の文化と西の文化が相まって、長安は国際色豊かな雰囲気を漂わせていた。 ★ 例題 ★ 1) 天才は才能(と/に)努力(を/が)相まって(生む/生まれる)と言われる。 2) 古来の神道( )新しく伝来した仏教( )相まって、日本人は独特の宗教観を持つ( )至った。 (^^)前課の解答(^^) 1) ばかり(→文型362)/ないで(→文型257)/とか/とか 2) の/の/な(「~みたいだ」はナ形) 229 ~ときたら/~ときては/~ときている 名詞    :   ×        +  ときたら  ・                       ときては 名詞    :   ×        +  ときている ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> ♪ 会話 ♪ 李 :小平ときたら、僕に叱られて、さっきまで泣いてたかと思ったら、もう笑ってるよ。 良子:とても立ち直りが早いのよ。悪く言えば気まぐれなのね。誰に似たのかしら? 李 :気まぐれさでは君にはかなわないよ。君ときたら、気まぐれな上に、わがままときている。 ♯ 解説 ♭  「~ときたら/~ときては」は話題提示で、「~と言うと」(→文型210)、「~と言えば」(→文型217)や「~と言ったら」(⇔文型219)と同じく「~に関して語ると <≒は>」という意味を表しますが、相手に対する非難・批判・不満・怒りや、自分に向けられるときは自嘲などの感情を込めた表現を作るのが特徴です。  その助動詞用法が「~ときている」で、やはり、非難や・怒り・不満などの感情を強く含んでいる断定の助動詞「だ」に相当します。そのため会話では「~ときたら~ときている」のように使われることが多く、一緒に覚えた方が便利でしょう。  注意してほしいのは「~ときたら」と「~と言ったら」(⇔文型219)の用法上の違いですが、「そのおいしさと言ったら、ほっぺたがおちそうだった」のように、後件でいい事態を表すときは「~と言ったら」を使わなければなりません。→例題1) § 例文 § 1.最近の新入社員ときたら、不平不満ばかり言って少しも働かない。 2.あいつときたら、何にでも口を挟みたがる。 3.あ~あ、俺ときたら、どうしてこんなに馬鹿なんだ。 4.最近の若者ときたら、目上に対する言葉の使い方ひとつ知らないときている。 5.うちの部長ときては、まったく融通の利かない石頭ときている。 ★ 例題 ★ 1) 彼(と言ったら/ときたら)口先(ばかりで/ばかりに)、自分の発言に責任をとった例しが(ある/ない)ときている。 2) この子( )きたら頭は悪い( )、おまけに愚図( )きている。 (^^)前課の解答(^^) 1) と/が/生まれる(自V) 2) と/が/に(~に至る→文型289) 230 *~どころか/*~どころではない 名詞    :    ×       +  どころか 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/な>    どころではない                       どころじゃない ♪ 会話 ♪ 課長:ものはとりようだよ。「災い転じて福となす」とも言うしね。僕は君のチャレンジ精神を買うよ。 李 :課に御迷惑をおかけしたのに、叱られるどころか励ましていただき感激です。 課長:君一人で背負い込むべきではない。それどころか、これは会社全体として考えるべき大きな課題だよ。 ♯ 解説 ♭  「AどころかB」は相手が予想していること<A>と事実は大きく違って実際は<B>だと述べる用法です。「事実はAの正反対でB」を表したり、「程度はA以上でB」を表したりします。この助動詞の用法が「~どころではない」です。実際の会話では、相手が先に言ったことを受けて、それを否定して話を続けるときに使われます。  「彼女は独身ですか」  「いいえ、独身どころか、三人の子持ちですよ」<正反対に>  「彼は漢字が読めるんですか」  「いいえ、漢字どころか、ひらがなも読めません」<程度はもっとひどくて> § 例文 § 1.喉が痛くて、食事どころか水を飲むのも辛いんだ。 2.「○○先生ってやさしいの?」  「やさしいどころじゃないよ。鬼みたいな人だ」 3.そこは安全かって?安全などころか置き引き・スリ・強盗など日常茶飯事だよ。 4.君に金を貸すどころか僕自身が借金で首が回らないんだ。 5.「彼女のことを知ってるかい?」  「知ってるどころか僕の妻だよ」 ★ 例題 ★ 1) 彼のためにした(ので/のに)、感謝される(ところが/どころか)、逆に(恨んで/恨まれて)しまった。 2) (左遷する→    )て気落ちしていない( )って?気落ちどころ( )、むしろ僕は喜んでいますよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ときたら/ばかりで(→文型362/~ばかりに→文型364)/ない 2) と/し(~し~し、それに→文型107)/と 231 *~ところだった もう少しで    ~  動詞:原形  +  ところだった 危うく すんでのところで (注:「~したところだった」の形も希にある) ♪ 会話 ♪ 良子:いいところに帰ってきたわ。買い物に出かけるところだったのよ。早く普段着に着替えて。 李 :会社から帰ってきたばかりなのに、何だよ。 良子:近くのスーパーで、魚やお肉の大安売りがあるの。いい物は早く行かないとなくなっちゃうの、急いで。 李 :何かと思ったら、買い出しの手伝いかい? ♯ 解説 ♭  「ところ」は「~するところ/~しているところ/~したところ/~しようとするところ/~しようとしたところ」などの形で動詞と接続して「時」や「場面」を表します。  しかし、「~ところだった」の形があり、多くは動詞の原形と接続して、「そうなるかもしれない寸前の事態だった」という意味を表します。最悪の事態になる寸前だったことを表す場合が多いでしょう。副詞「もう少しで/危うく/すんでのところで」と呼応することが多いので、一緒に覚えておきましょう。  なお、この「~ところだった」は、以下のように「~そうになった」を使っても表せます。   危うく階段から 落ちるところだった。           落ちそうになった。 § 例文 § 1.あっ、危ない!危うく車にひかれるところだった。 2.すんでのところで、対向車と衝突するところだった。 3.やばい、先公が来たぞ。タバコを隠せ。やれやれ、もう少しで見つかるところだった。 4.君が私のアリバイを証明してくれなければ、私は犯人にされるところだった。 5.もう少し手当が遅れていたら、君は死ぬところだったんだよ。 ★ 例題 ★ 1) あの時あなたに助け(ていただかなければ/てくださらなければ)、私たち一家は路頭(で/に)迷うところ(です/でした)。ご恩は一生忘れません。 2) 甘い言葉に(騙す→    )て、もう少しで偽物を(買う→     )ところ(だ→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) のに(理由の逆説)/どころか/恨まれて(受身文:彼に恨まれる) 2) 左遷され(受身文)/か(疑問句の「か」)/か 232 *~ところに/*~ところを 名詞     :    の     +  ところに ・ 動詞・イ形容詞: 普通形/ている形    ところを ・ ♪ 会話 ♪ 李 :あの地震は、明け方、住民がまだ眠っているところを襲ったんだそうだ。 良子:慌てて布団から飛び起きた人も多かったでしょうね。 李 :しばらくは大阪支社に電話しても通じなくてね。みんながやきもきしているところに、インターネット経由で現地の情報が入ってきたんだ。 ♯ 解説 ♭  時や場面を表す「ところ」は「に/で/へ/を」など助詞と一緒に使われます。例えば、「~ところに」は「ちょうど~の時に」と同じ意味で、後件では「行く・来る・~がある・~が起こる」などが使われます。助詞は後ろに来る動詞によって決まります。  難しいのは「~ところを」の用法です。「AところをB」の用例のほとんどは、Aが進行中の場面で、それを中断する予想外の事態が発生したことを表すもので、逆説の「~のに」に近い用法になります。意味から言えば、「~時だったが、(運良く・運悪く・偶然・意外にも)~」や「~時なのに、~」を表すでしょう。よく使われる「~ところをすみません/~ところをありがとう/~ところを申し訳ありません」などは、そのまま慣用表現として覚えた方がいいでしょう。→例題2) § 例文 § 1.いいところに来たね。ちょうど一杯やってたところだ。 2.私から連絡をとろうと思っているところに、ちょうど当人から電話がかかってきた。 3.人が話しているところに、口を挟まないでください。 4.お忙しいところを、わざわざお出向きいただき、誠にありがとうございました。\ 5.カンニングしようとしたところを、運悪く先生に見つかってしまった。\ ★ 例題 ★ 1) 危ないところ(に/を)(助かって/助けて)いただき、お礼の(申す/申し)ようもございません。 2) あのう、お(話す→    )中のところ( )すみませんが、この近く( )公衆電話はないでしょうか。\ (^^)前課の解答(^^) 1) ていただかなければ/に(慣用語「路頭に迷う」)/でした 2) 騙されて(受身)/買わされる(使役の受身→文型105)/だった 233 ~ところによると/~ところによれば/~ところでは 動詞:原形/た形/ている形  + ところによると                  ところによれば ♪ 会話 ♪ 佐藤:山田の奴、仕事が終わるが早いか、脱兎の如く部屋を飛び出していったけど、何かあったのかなあ。 百恵:聞いたところによると、新しい彼女ができたらしいわ。六時に渋谷駅で待ち合わせだってさ。 李 :あの遅刻常習犯の山田も、デートとなると話は別なんだなあ。まったく現金な奴だ。 ♯ 解説 ♭  「~ところによると/~ところによれば/~ところでは」の「ところ」は内容を表していて、この文型は情報源・判断の出所を提示します。主に伝聞表現に用いられ、例文1~3のように文末で「~そうだ/~ということだ/~とのことだ」と呼応します。その場合、「ニュースで聞いたところによれば」は「ニュースによれば」のように短く言うことができます。「句+ところによると」「N+によると」と覚えましょう。  その他、例文4、5のように判断の出所を表すこともあり、多くは文末で推量の「~ようだ/~らしい/~そうだ」と呼応します。この場合、意味上の微妙な違いはありますが、範囲を表す「~限りでは」(→文型028)と類義表現になります。   私が見たところによると(・限りでは)、それは偽物のようです。 § 例文 § 1.今朝のニュースで聞いたところによると、内閣は総辞職するとのことです。 3.彼が語るところでは、彼の実家はかなりの資産家らしい。 3.新聞が伝えるところによれば、A国ではまた食糧事情が深刻になっているらしいです。 4.私が見たところでは、どうもそれは偽物のようだ。 5.経済企画庁の調査したところによれば、まだまだこの不況は長引きそうな気配ですね。 ★ 例題 ★ 1) 私が調べた(こと/ところ)(によって/によれば)、その企業合併の話は本当の(みたい/よう)です。 2) 伝え聞くところに( )( )と、彼女はアメリカの青年実業家( )結婚した( )( )ことです。 (^^)前課の解答(^^) 1) を/助けて(他V)/申し(→文型435) 2) 話し(N+中→文型162)/を/に 234 ~ところの 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  + ところの + 名詞 (注:古い翻訳調の言い回し) ♪ 会話 ♪ 李 :A党が主張するところの改革とは、つまるところ、社会的弱者を切り捨てるだけの、金持ちのための改革に過ぎないんじゃないか。 百恵:特に福祉や教育にしわ寄せがいく内容ね。 佐藤:だけど、年金にせよ健康保険にせよ、今のままでは、財政破綻は火をみるより明らかだよ。 ♯ 解説 ♭  「~ところの+N」という形は古くは漢文の翻訳に使われたもので、明治以後は英文の中の連体修飾句の翻訳にも使われていました。しかし、現在使われることはほとんどないので、読んでわかれば十分です。今日では「~ところの」を省略し、以下のように使います。  私が読んだところの資料では → 私が読んだ資料では § 例文 § 1.私のめざすところの理想とは、社会的公平の一言に尽きる。 2.私が知るところの彼は、明るくて積極的な性格の持ち主だ。 3.妻が通っているところの病院は、癌治療にかけては日本で一、二を争うところです。 4.私が得たところの心証では、社長は専務を後継者にとは考えていないようです。 5.私が納得しがたいところの問題点は、ここまで事態が悪化する前に、打つ手はなかったのかということだ。 ★ 例題 ★ 1) 私が知る(ところ/こと)の中国は、(必ず/必ずしも)手放しで楽観を許す(もの/こと)ではない。 2) 明日(開催する→     )ところの株主総会( )は、経営陣の総入れ替えが(行う→    )模様だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ところ/によれば/よう(Nのようだ・Nみたいだ) 2) よる/と/との(伝聞「~とのことだ」→文型209) 235 ~ところまで来る/~ところまで行く 動詞:原形/可能形  + ところまで来る              ところまで行く ♪ 会話 ♪ 山田:君もこれほど日本語が使いこなせるところまで来れば、もう困ることはないだろう。 李 :そうでもないんだ。発想や文化の違いがあってね。 百恵:おもしろいわ、どんなところ?例えば? 李 :中国人は意見をぶつけ合った後で妥協点をさぐるけど、日本人は相手の腹を探ってから意見を言うだろ。 ♯ 解説 ♭  「~ところまで行く/~ところまで来る」は、主に可能形や可能を表す動詞と結びついて、「~できる地点<範囲・状態・程度>になるまで」を表す程度表現になります。この「行く・来る」は到達点を表していて、一般に過去から現在への過程に焦点を置けば「~ところまで来る」、未来への過程に焦点を置けば「~ところまで行く」と覚えておけばいいでしょう。なお、この文型は少し意味は変わりますが、状態変化の「~ようになる」(→文型446)を使っても表せます。   日本語で簡単な日常会話ができるところまで来た。<程度の到達点>   日本語で簡単な日常会話ができるようになった。 <状態変化> § 例文 § 1.敬語が使えるところまで来れば、もう日本語も上級だ。 2.この国はもう革命以外に救う道がないところまで来ている。 3.わが国の自動車生産は、国内需要を満たすところまでは行っていません。 4.人は行き着くところまで行かないと、なかなか自分の間違いには気がつかないものだ。 5.自分で歩けるところまで行くには、もうしばらくリハビリが必要でしょう。 ★ 例題 ★ 1) パソコン操作は簡単(にし/になり)、マニュアル(だけ/さえ)読めば、誰にでも(使う/使える)ところまで来た。 2) もう少し( )ビル完成というところまで(行く→  )ながら、今一歩のところ( )資金不足に陥った。 (^^)前課の解答(^^) 1) ところ/必ずしも/もの(→文型420) 2) 開催される/で/行われる(受身文) 236 *~としたら/*~とすると/*~とすれば 名詞    :    だ     +  としたら 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーだ>    とすると                     とすれば ♪ 会話 ♪ 李 :電子メールって実に便利だよ。すべてが順調だとしたら、五秒かそこらで相手に届くんだから。 良子:便利なことは便利だけど、電子メールでラブレターをもらったとしたら、あなたうれしい? 李 :そりゃあ相手によるよ。でも自分の気持ちを込めようとすると、自筆の手紙でないと難しいのかもね。 ♯ 解説 ♭  この「する」は「仮定する」の意味で用いられていて、「~としたら/~とすると/~とすれば」は「~と仮定したら/~と仮定すると/~と仮定すれば」と同義です。そして、これらの文型の逆説は「~としても」(→文型239)となります。  「~としたら」は会話で広範に使われます。「~とすると」は「当然~という結果になる」という必然・自然の帰結の語感を、「~とすれば」は「もし~が正ししければ、~ということになるが、しかし、~」という懐疑的語感を持っています。この違いは、「と/ば/たら」(→資料・)の違いから発生したものです。また、これらは接続詞としての使い方があります。   「十秒一の記録が出たぞ」「としたら、百メートルの日本新記録だ」 § 例文 § 1.行けるとしたら明日しかないんだけど、それでいい? 2.えっ、あの銀行が倒産しそうだって?それが事実だとしたら、国中が大騒ぎになりますよ。 3.それが本当だとすれば、彼が真犯人ということになる。 4.電車で行ったのでは間に合わないとすると、もうタクシーしかありませんね。 5.この妥協案にも不満だとすれば、いったいどんな解決策があるというのですか。 ★ 例題 ★ 1) こんなに探し(たら/ても)ない(とすると/としても)、(盗んだ/盗まれた)のかもしれませんね。 2) そのショーがそんなにすばらしい( )したら、(見る→  )に(行く→    )わけにはいかないね。 (^^)前課の解答(^^) 1) になり/さえ(~さえ~ば~→文型101)/使える 2) で/行き(逆説「ながら」→文型270)/で 237 *~として(は/も)/*~としての 名詞: ×  +  として           としては           としても           としての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :自分としては世の中がどう変わろうと、人間として誠実に生きて、悔いのない人生を送りたいな。 良子:私には女としてより母親としてという意識が強いわ。   次の世代を残せることに何よりも誇りを感じるわ。 李 :子供に関しては女性にかなわないから、男の僕としては仕事でがんばるよ。 ♯ 解説 ♭  「~として」は代表的な格助詞で、「~の<立場/資格/名目/条件>で」という意味を表します。「AはBとして」は「A=B」の関係にあります。「~として」は話題提示の「は」や「も」を伴って現れることもありますが、「~としては」は「Aの<立場/観点>に立って言えば」と、Aの立場や観点から下す判断になります。   (私は)医者として忠告する。<私は医者の立場で>   医者としては、忠告しないわけにはいかない。<医者の立場に立って言えば> § 例文 § 1.手数料として1万円いただきます。 2.日本には古くからの民間信仰としての神道があった。 3.彼とは友達としてつき合っているだけで、あなたが御想像なさっているような関係ではございませんわ。 4.彼は弁護士としては一流だが、政治家としては二流だ。 5.彼女は妻としてはもちろん、仕事の協力者としても、かけがえのない伴侶であった。 ★ 例題 ★ 1) これ(まで/までに)戦争体験は被害者の立場で(語る/語られる)ことが多かったが、加害者(にとって/に対して/として)の日本も見つめなければならない。 2) 今日は教師と( )( )ではなく、ひとりの日本人と( )( )、君たちに(話す→   )たいことがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) ても(条件の逆説→文型198)/とすれば/盗まれた(受身文) 2) と/見/行かない(~ない・わけにはいかない→文型457) 238 ~として~ない だれ/一のつく数詞: ×  +  として ~ ない ♪ 会話 ♪ 李 :あれっ、誰一人として来てないや!時間を間違えたのかな?まさか日にちを間違えてるはずないよな。 良子:場所が違うんじゃないの?ここって特徴のないところね。何一つとして目印になるものがないわよ。 李 :集合場所を変えようと言ったのに、幹事が頑として自説を曲げなかったんだよ。 ♯ 解説 ♭  「~として~ない」は強い全面否定の表現を作ります。ほとんどの場合、「ひとり・ひとつ…<一がつく数詞>/誰」と結びついて、「(ひとつ・ひとり…)も~ない」という意味を表します。そして、この「~として~ない」は「~たりとも~ない」(→文型159)と類義文型になります。   一言として語らなかった。  ≒一言も語らなかった。  ≒一言たりとも語らなかった。  なお、この「~として~ない」と格助詞「~として」(→文型237)は前にくる語も意味も違いますから、混同しないようにしましょう。 § 例文 § 1.半日も粘ったのに、魚は一匹として釣れなかった。 2.何と落ちつきのない子。一時としてじっとしていない。 3.何だこれは?一つとして満足のいく作品はないじゃないか。 4.夫が出征してからというもの、一日として心の安まる日はありませんでした。 5.そんな馬鹿げたことを信ずる者は、一人としていないだろうよ。 ★ 例題 ★ 1) かつて交易で栄えた敦煌。しかしその古代都市は、今(で/に)は草木の一本として生えて(いる/いない)砂漠の中(で/に)眠っている。 2) 残飯( )せよ紙屑( )せよ、再利用(できる→     )ゴミは何一つとして(ある→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) まで(→文型402)/語られる(受身形)/として 2) して/して/話し 239 *~としても/*~としたって/~とて 名詞    :    だ       +  としても 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーだ>      としたって<口> 名詞    :  × / だ     +  とて 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> ♪ 会話 ♪ 佐藤:今から貯金を始めたとて、とうてい間に合わないよ。いっそシンプルに、二人だけの結婚式を挙げないか? 真理:嫌よ。私だって女よ、白ウェディングドレスを着るのが少女時代からの夢だったの。花嫁姿を両親にも見てもらいたいわ。それに多少お金がかかったとしたって、お祝い金が集まるから、何とかなるわよ。 ♯ 解説 ♭  「~としても/~としたって/~とて」は、「~と仮定しても」という意味を表します。ただし、「~とて」は今日では古語に属します。これらは「~としたら/~とすれば/~とすると」(→文型236)に対応する逆説の文型です。→例題1)  なお、「~とて」には副助詞の用法があり、例文5や下の例のように名詞と接続して「~も/~さえ」と同じ意味を表すことがありますが、この場合は「~としても/~としたって」は使えません。   僕とて(・も)君と同じ思いだ。   教師とて(・さえ)できない難問 § 例文 § 1.その品は、安いとしたって五万円は下らないよ。 2.仮に目的が正しいとしても、手段を誤れば必ず失敗する。 3.たとえ試験に落ちたとしても、これまでの勉強が無駄になるわけではない。 4.今更愚痴を言ったとて(⇔としても)何になる。 5.もし彼と同じ状況に置かれていたとしたら、君とて(⇔も/であっても)同じことをしただろうよ。 ★ 例題 ★ 1) いくらお金があった(としたら/としても)、使い方を知らなかった(としたら/としても)、(これは/それは)紙屑と同じだ。 2) ああ(する→   )よかった、こう(する→   )よかったと、今更(後悔する→    )とて後の祭りだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) で/いない/に(状態の存在は「に」の方がいい) 2) に(~にせよ~にせよ→文型319)/に/できない/ない 240 *~と共に 名詞    :  × / である     + と共に 動詞・形容詞: 普通形<ナ形ーである> ♪ 会話 ♪ 李 :風俗習慣は時代と共に移り変わるね。昔の写真を見ても、自分が住んでいた国だとは、とても思えないよ。 良子:上から強制されたものは長続きしないようね。例えば文革当時の人民服。 李 :はっは、それは僕が小学校の頃の話だよ。文革が終わると、一夜にして町の風景も変わったからね。 ♯ 解説 ♭  「共」という語は複数の事物が一つになっていることを表す語で、ここから「~と共に」は、例文1、2のように「~と同時に」や、例文3のように「~と一緒に」を表す用法が生まれます。  文法上大切なのは例文4、5のように「~とともに」が動詞の原形や変化を意味する名詞について、「Aが変化すのと平行してBが変化する」という「~につれて/~に伴って」(→文型330)とほぼ同義の比例変化の表現を作ることでしょう。これは話し言葉にもにも書き言葉にも多く使われていますが、「~とともに」はAとBの同時に進行する変化を表す点に特徴があります。 § 例文 § 1.彼女は主婦であると共に、小説家としても活躍している。<~であると同時に~である> 2.日本では、結婚と共に退職する女性はまだ多い。<~と同時に> 3.家族と共に暮らせる日を待ち望んでいます。<~と一緒に> 4.心の傷も時が経つと共に、やがて薄らいでいくものだ。 5.交通手段や情報手段が発達すると共に、世界はますます狭くなっていく。 ★ 例題 ★ 1) 地球人口の増加(といっしょに/と共に)、食糧不足の問題が、ますます深刻(化/的)(する/し)つつある。 2) 生活が便利になる( )共に、電力消費量が大幅に伸び、供給が需要に(追いつく→     )事態( )起こっている。 (^^)前課の解答(^^) 1) としても/としたら/それは 2) すれば(後悔「~ばよかった」→文型383)/すれば/した 241 ~となく/~となく~となく 何(+数詞):× +  となく               ・ 名詞A  :× +  となく + 名詞B:× + となく ・ ♪ 会話 ♪ 李 :国の両親の顔が見たくなったなあ。テレビ電話があればなあ!何度となく電話しようと思いながら、結局、かけずじまいになってたんだ。 良子:しばらくお会いしていないから、お盆休みにみんなで揃って行きましょうよ。小平も喜ぶわ。 李 :そうだな、じゃ、早速電話するよ。 ♯ 解説 ♭  どちらも「~も」に相当する強調表現です。「AとなくBとなく」文型は対立する語A・Bを並べて、「A・Bという時間・場所・条件に関係なく、(いつも/どこでも/だれでも)~」という意味を表しています。多くは慣用的表現になっていますので、例文の用法を覚えておけばいいでしょう。  注意してほしいのは、「AといいBといい/AといわずBといわず」(→文型206)も似た意味を表すことですが、「AとなくBとなく」は「A、Bに関係なく、(いつも/どこでも/だれでも)」という意味なので、用法上の差が生じることもあります。→例題1) § 例文 § 1.今年の夏は何日となく雨が降り続き、うっとうしい毎日だ。 2.電線に何羽となく燕がとまっている。 3.女となく子供となく、誰もが祖国の危機を救わんと立ち上がった。 4.この高速道路は昼となく夜となく車が走り、一日中、車の流れが途絶えることがない。 5.野となく山となく、どこもかしこも春の気配が感じられるこの頃だ。 ★ 例題 ★ 1) 雨の日(といい/となく)風の日(といい/となく)、毎日黙々と田を耕す農夫の姿(で/に)僕は感動を覚えた。 2) 私は幾度( )なく上海を訪れたが、(行く→   )度にその変化の(激しい→    )に驚かされた。 (^^)前課の解答(^^) 1) と共に/化/し(~つつある→文型171) 2) と/追いつかない/が(自V) 242 ~とは ・/~とは思ってもみなかった 名詞    :   × / だ    + とは          ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>   とは思ってもみなかった ・                      とは考えもしなかった                      とは想像だにしなかった ♪ 会話 ♪ 山田:大変お世話になりました。これは一同からのほんの気持ちばかりのものですが、どうぞ。 部長:歓送会を開いてもらったばかりか、こんなにすばらしい記念品までいただけるとは、本当にありがとう。 山田:そんなに喜んでいただけるとは思ってもみませんでした。今後の一層の御活躍をお祈りしております。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げた「~とは」は「~というのは/~とは」(→ 文型212)とは異なり、予想もしなかったことに直面して、信じられない気持ち・驚き・感嘆など感情を引き起こされたとき、その事物・対象を主題として取り上げる表現です。→例題1)  「~とは信じられない/~とは驚いた」や、「~とは思ってもみなかった/~とは思いもよらなかった/~とは想像だにしなかった/~とは考えてもみなかった」などの形で使われることが多く、文末にあって驚き・怒り・感動などの気持ちを表します。 § 例文 § 1.あの有名な事業家が、そんなに若い女性とは驚いた。 2.一ヶ月も休暇がとれるとは、羨ましい限りだねえ。 3.奇遇だね。こんな所で君に会えるとは思ってもみなかったよ。 4.ひどいとは聞いていたが、こんなにひどいとは想像だにしなかった。 5.あのソ連邦が一夜にして崩壊するとは、誰が想像し得ただろうか。 ★ 例題 ★ 1) いくら人気歌手(とは言え/と言えば)、離婚の内輪話を書いただけの手記(が/を)50万部も売れる(というのは/とは)思わず耳を疑ったね。 2) (驚く→    )ねえ。君がこんな( )スキーが上手だ( )( )思ってもみなかったよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) となく/となく/に(感情発生の理由:Nに+感情V) 2) と/行く(→文型151)/激しさ(感情発生の理由:Nに+感情V) 243 *~とは言え/*~とは言っても/~とは言うものの 名詞    :   × / だ    +  とは言え 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    とは言っても                       とは言うものの                       とは言いながら ♪ 会話 ♪ 李 :日本は島国だとは言っても、一万年以上前は大陸と地続きだったらしいから、日本人も元々は大陸の住人だったかもしれないよ。 良子:モンゴル語・朝鮮語・日本語は同一母語とも言われているから、そうかもしれないわ。 李 :とは言え、民族としては分化してるね。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は同一主語文で使われ、「Aであるとは言えるが、<実は/やはり/まだ>Bという問題がある」と、Aの内容は認めながら、いろいろ問題点や説明不足をBで付け足す表現です。異主語文では使えませんから、注意しましょう。   兄は成績が優秀だが(×とはいえ)、弟は劣等生だ。   <異主語>   兄は成績が優秀だが(・とはいえ)、少し協調性に欠ける。<同一主語>  「~とは言え」は中立的で、「~とは言っても」が一番逆接の語感が強いですが、どちらも文脈上「~けれども」「~ても」の両方の逆接を表すことがあります。一方、「~とはいうものの/~とはいいながら」は婉曲な言い回しで、「けれども」の逆接しか持っていません。→例題1) § 例文 § 1.中国語ができるとは言っても、日常会話程度なんです。 2.いくら気丈だとは言え、やはり彼女は女ですからね。 3.駅から近いとは言え、歩けば二十分はかかります。 4.三月とは言うものの、北国の春はまだ遠い。 5.知らぬこととは言いながら、誠に失礼いたしました。どうか御容赦ください。\ ★ 例題 ★ 1) (いくら/たとえ)刺身が好きだ(とは言っても/とは言いながら)、とてもこんなには(食べ切りません/食べ切れません)よ。 2) 男女雇用機会均等法が(制定した→      )とは言うものの、男女平等( )はまだほど遠いと(言う→   )ざるを得ません。 (^^)前課の解答(^^) 1) とは言え(→文型243)/が(自V「売れる」)/とは 2) 驚いた(既定)/に/とは 244 ~とは限らない/~とは言えない 名詞    :   × / だ    +  とは限らない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    とは言えない                       とばかりは限らない                       とばかりは言えない (注:広く句と結びつく。「~だ」は省略しないことが多い) ♪ 会話 ♪ 李 :毎日毎日、残業続き。こんな生活が続くと、僕も過労死しないとは限らないよ。 良子:えっ、誰が?あなたに限ってその心配はないわ。アルコール依存症になる恐れはあるけど。 李 :僕だって生身の人間なんだぜ。いつかばったり倒れないとは言えないよ。 ♯ 解説 ♭  「~とは限らない」は「ほとんど~と言えるが、しかし、そうでない例外もある」、「~とは言えない」は「~と言うことはできない」という意味を表します。多くは「必ずしも/いつも/常に/誰でも/どこでも/何でも」などの副詞と一緒に使われます。  その違いがはっきりするのは、「決して/絶対」などの副詞と一緒に使う時で、下の例では「~とは限らない」が使えません。しかし、「~とは言えない」は、はっきりした断言にも使えます。  金持ちが必ずしも幸せとは限らない(・とは言えない)。  金持ちが決して幸せとは言えない(×とは限らない)。  また、例文3、5のように「~とばかりは限らない/~とばかりは言えない」という強調した言い方がありますので、併せて覚えてください。 § 例文 § 1.この世の中、何でも理屈で割り切れるとは限らない。 2.何でもお金で解決できるとは限らないんですよ。 3.事業というものは、いつも順調にいくとばかりは限らない。 4.値段が高いものが、必ずしもいい物だとは言えないよ。 5.「彼ほどの腕があれば、引く手あまただろう」  「そうとばかりも言えないよ」 ★ 例題 ★ 1) ご主人は癌(とは限りません/とは言えません)から、奥さん、ここは冷静(な/に)検査結果が出るのをお(待つ→   )ください。 2) 知能指数( )高い者が、必ずしも社会( )出てから成功するとは言えないという調査報告が、アメリカの学会で(発表する→    )た。 (^^)前課の解答(^^) 1) いくら(既定)/と言っても/食べ切れません(とても~できない) 2) 制定された(受身文)/に/言わ(~ざるを得ない→文型106) 245 ~とは比べものにならない/~の及ぶところではない 名詞A:× + は、名詞B:× + とは比べものにならない ・                  の及ぶところではない  ・                  の足下にも及ばない   ・ ♪ 会話 ♪ 部長:最近のステレオは小型で性能もいいし、値段も昔とは比べものにならないくらい安くなったな。しかし、レコードが使えなくて困ったよ。 真理:部長はCDを御存じですね。でも、もっと新しいMDは御存じですか?とても便利ですし、音質もCDの及ぶところではありませんよ。 ♯ 解説 ♭  「~とは比べものにならない」は比較文型の一種で、「AはBと比べたら問題にならないほど~だ/Aの方がはるかに~だ」と強い断定を表す表現です。なお、同類の表現に「AはBの及ぶところではない」「AはBの足下にも及ばない」がありますから、一緒に覚えましょう。  注意してほしいのは、「~とは比べようがない」は文脈によっては「~とは比べものにならない」と同じ意味を表しますが、本来の意味は「~と比べる方法がない」という意味です。→例題1)2) § 例文 § 1.それよりこちらの方が、比べものにならないほどいい。 2.いくら彼女がピアノが上手だといっても、プロとは比べものにならないよ。 3.彼が今日になるまでの努力は、君なんかとは比べものにならないよ。 4.北欧諸国の充実した福祉政策は、日本の及ぶところではない。 5.彼の中国語は中国人も顔負けだ。いくら逆立ちしても、  僕は彼の足下にも及ばない。 ★ 例題 ★ 1) どちら(は/が)がおいしいかと(言っても/言われても)、比べ(ものにならない/ようがない)よ。 2) サービス面( )( )言えば、今のJRは以前の国鉄とは比べようがない( )( )(向上する→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) とは限りません/に(ナ形)/待ち(敬語形→文型019) 2) が(「の」も可)/に/発表された(受身文:~を発表する→) 246 ~とまでは言えない/~とまでは行かない 名詞・名詞句:   × / だ    + とまでは言わない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>   とまでは言えない                      とまでは行かない (注:広く句と結びつき、程度・水準を「~と」で示す) ♪ 会話 ♪ 李 :プロ並みとまでは言えませんが、腕によりをかけて準備いたしました。小春日和の一日、ごゆるりとお過ごしいただければ幸いでございます。 良子:大した挨拶ねえ。でもね、主人の料理はレストランと同じとまでは行かないけど、なかなかのものなのよ。 百恵:あらあら、どうもごちそうさま。 ♯ 解説 ♭  「~とまでは言えない/~とまでは行かない」は程度の到達点を表す副助詞「まで」から生まれた用法で、どちらも「~という程度・水準には達していない」という意味を表しています。「~とは言えない」は動詞「言う」の原義が残っていますが、ほとんど入れ替えが可能です。一般には「~とまでは言えないが、~/~とまでは行かないが、~」のように使われることが多いでしょう。そして、謙遜表現としてよく使われる「~と言うほどではない」もほぼ同義表現となります。   私などとても専門家 とまでは言えませんが、~             とまでは行きませんが、~             と言うほどではありませんが、~ § 例文 § 1.けちとまでは言わないが、倹約家というのとも彼は違うね。 2.完全無欠とまでは行かないとしても、才色兼備で気だてがよく、魅力的な女性だった。 3.殺したいとまでは行かないが、それほど憎いと思ったことがあったのは事実だ。 4.女一人の海外旅行は危険だとまでは言いませんが、注意するに越したことはありません。 5.納得したとまでは言わないが、彼の言い分はわかった。 ★ 例題 ★ 1) 日本人(並/風)とまでは言えないが、生活に困らない(だけ/ばかり)の日本語を身に(ついた/つけた)。 2) 頼まれた彫刻は、完成( )まではいきません( )、八割がた(できる→   )上がっています。 (^^)前課の解答(^^) 1) が/言われても(受身文)/ようがない(→文型435) 2) から(→文型049)/ほど/向上した(「向上している」も可) 247 ~と見える/~と思える/~かに見える 名詞・名詞句:   × / だ   + と見える 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>  と思える/と思われる 名詞・名詞句:    ×      + かに見える/かと見える 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>    かに思える/かと思われる ♪ 会話 ♪ 李 :景気が上向いてきたと見えて、高速道路にタクシーやトラックが増えたよ。 山田:一時はこのまま日本沈没かと思われたけど、なかなか日本経済の底力は凄いもんだ。 李 :製造業は何と言っても日本がぬきんでているよ。日本が進むべき道は、技術立国にこそあると思えるね。 ♯ 解説 ♭  「~と見える」は外見からの推量・判断を、「~と思える/~と思われる」は情報や対象から受ける印象を述べるという違いはありますが、どちらも感覚推量の表現で、ほとんど「~ようだ」(→資料「)と同義になります。   相当生活が苦しい と見える/と思われる(・ようだ)。  また、例文5のように更に不確かな気持ちを表す「~かに見える/~かに思える」という表現もありますので、併せて覚えましょう。 § 例文 § 1.彼は相当酔っていると見えて、足下がふらついている。 2.商いの方も暇だと見えて、店員達はおしゃべりに興じていた。 3.あの落ち着き払った態度からして、相当自信があると思われる。 4.回復するかに見えた景気は、四月を境に再び下降に転じた。 5.事態は収拾に向かっているかに思えたが、実は正反対だった。 ★ 例題 ★ 1) 一時はもう(助かる/助からない)かに思えた(が/のに)、夫は危篤状態を脱し回復(に/へ)と向かった。 2) 彼はこのところ仕事( )忙しい( )見えて、こちらの店にはほとんど顔を(見る→    )ません。 (^^)前課の解答(^^) 1) 並(→文型275)/だけ(~だけのN→文型132)/つけた(他V) 2) と/が(逆説)/でき(→文型003) 248 ~とも/~共 名詞・名詞句:  だ / です   + とも    ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーだ>        ます形<ナ形ーです> 名詞・数詞 :    ×      + 共(に)   ・ ♪ 会話 ♪ 李 :週末、空いてる?いつか言ってた本場の餃子の作り方、手ほどきでもしようか? 佐藤:いい機会だし、真理さんと一緒でもいいかい? 李 :もちろんだとも。当家の餃子には皮、具ともに先祖伝来の秘伝があるんだよ。 佐藤:ついでに、夫婦円満の秘訣も伝授してくれよ。 ♯ 解説 ♭  終助詞「~とも」は例文1、2のように「もちろん~する/だ」を意味する表現を作ります。前にくる句は、普通体でも丁寧体でもかまいません。これ以外に「~とも」(→文型249)には接続助詞の用法がありますから、次項を参照してください。   もちろん僕は行くとも。(終助詞=必ず行く)   君が行くとも、解決しない。(接続助詞=行っても)  間違えやすいものに同音の接尾語「共(とも)」があります。この接尾語は例文3、4のように複数のものを表す名詞や数詞について「~の全て/~のどちらも」を表したり、例文5のように名詞について「~を含めて」を表したりします。   三人とも合格した。(=どちらも)   送料とも千円(=を含めて) § 例文 § 1.「これ、お借りしてよろしいですか」「いいですとも」 2.「まさか信じられないよ、それ、本当かい?」「嘘じゃないって、本当だとも」 3.その子は心身ともに、たくましい若者に育っていった。 4.よかった、よかった。二人とも無事だったか。どんなに心配したことか。 5.宿泊料は、税・サービス料とも込みで一泊1万円です。 ★ 例題 ★ 1) 喜ばしい(の/こと)に、今回の冬季オリンピック(において/にかけて)は、男女(も/とも)好成績を収めた。 2) 「そんな難しいことが私なんか( )できるでしょうか」「できる( )( )。自信を持ってやって(みる→  )なさい」 (^^)前課の解答(^^) 1) 助からない/が(「のに」は失望が現れる)/へ(→文型387) 2) が/と/見せ 249 ~とも/~なくとも/~ずとも 動詞     :原形       + とも イ形容詞   :原形<い→く> 動詞・イ形容詞:[ない]形     + なくとも                    ずとも ♪ 会話 ♪ 課長:今夜はおごりだ。四人ともまとめて面倒みよう。仕事が片づいてなくとも、五時になったら即出発だ! 山田:最近の課長は、やけにはしゃいでるなあ。少なくとも、焼鳥屋にぐらいには連れて行ってくれるだろうさ。 李 :でも課長の気が変わらないとも限らないよ。早く五時にならないかなあ。 ♯ 解説 ♭  接続助詞「~とも」は動詞・形容詞に接続して、逆説の「~ても」に相当する表現を作ります。動詞の否定形と接続するときは「~なくとも」と「~ずとも」の両形があります。「~とも」は今では古語に属しますが、「少なくとも/多くとも/遅くとも/早くとも/多少とも」などの副詞が この「~とも」から生まれていますから、知識と知っておくと役に立つでしょう。   行くとも   → 行っても   行かなくとも → 行かなくても   行かずとも  → 行かなくても   安くとも   → 安くても   安くなくとも → 安くなくても § 例文 § 1.学もし成るなくんば、死すとも帰らず。(漢詩) 2.海山遠くへだつとも、二人の心は離れることはない。 3.いくらか高くともかまわない。手に入るなら、金に糸目はつけない。 4.「あいつが目の上のたんこぶだ。始末しろ」  「そんなことは言わずとも知れたことだ」 5.無理に彼を引き留めなくともよい。「去る者は追わず、来る者は拒まず」だ。 ★ 例題 ★ 1) たとえ生活が(貧しく/貧しい)とも、心(さえ/まで)貧しく(して/なって)はならない。 2) 贅沢は(できる→    )とも、家族仲良く暮らして(いける→   )さえすれば、それ( )いい。 (^^)前課の解答(^^) 1) こと(→文型087)/において(→文型291)/とも 2) に(~に~ができる)/とも/み(命令:V〔ます〕形+なさい) 250 ~ど(も)/~ど(も)~ど(も) 動詞・形容詞:仮定形 + ど(も)   ・              ども~ども  ・ ♪ 会話 ♪ 李 :「働けど働けど、わが暮らし楽にならざり、じっと手を見る」。あれっ、爪が伸びてる。 良子:爪切りならここにありますよ。 李 :でも、この石川啄木の短歌、実に実感がこもっているなあ。身につまされるよ。 良子:ごちゃごちゃ言ってる暇があったら、働け、夫よ。 ♯ 解説 ♭  接続助詞「~ど(も)」は「~ても」に相当する古い仮定形です。現在では慣用的言い方や古い歌の歌詞の中でしか残っていませんから、意味が分かればいいでしょうが、ここから、「~と言えども」(→文型216)、「~であれ(ども)」(→文型176)や「~こそあれ(ども)/~こそすれ(ども)」(文型078)などの文型が生まれています。   行け ば     悲しけれ ば      静か なれば      ども         ども        なれども § 例文 § 1.声はすれども、姿は見えず。 2.行けども行けども山また山で、人家ひとつ見あたらなかった。 3.押せども引けども動かない。 4.子供と言えども、馬鹿にはならぬ。 5.待てど暮らせど来ぬ人の、宵待草のやるせなさ。今宵は月も出ぬそうな。(「宵待草」の歌詞より) ★ 例題 ★ 1) いくら歩け(ば/ども)、目的地が(見ず/見えず)、途方に暮れることも人生にはある(ことだ/ものだ)。そんなときは出発点に戻っ(てみる/ておく)といいよ。 2) 僕たちが(幸せだ→      )あの頃は、(呼ぶ→    )ど(叫ぶ→    )ど、もう戻って来ない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 貧しく/まで(→文型404)/なって(「~する」は意志動作) 251 ~とも~ともつかない 名詞A: × + とも + 名詞B: × + ともつかない ♪ 会話 ♪ 良子:この魚はドジョウともウナギともつかない格好してるけど、何と言う魚なの? 李 :ああ、これは田ウナギだよ。中国からの輸入品だと思うよ。赤とも茶色ともつかない変わった色だろ。 良子:買っちゃったけど、あなた、料理できる? 李 :おちゃのこさいさいさ。田舎風味で作ってみるよ。 ♯ 解説 ♭  動詞「付く」は「目に付く/気が付く/見当がつく…」の用例のように、「~が五感に達する」という意味も持っていて、その否定形「つかない」ですから、「わからない」の意味になります。そこから派生したのが「AともBともつかない」という文型で、「AなのかBなのか、わからない/AなのかBなのか、はっきりしない」という意味で使われます。   賛成とも反対ともつかない。  =賛成なのか反対なのか、はっきりしない。 § 例文 § 1.海のものとも、山のものともつかぬ変な奴だ。 2.真剣に議論しているときに、賛成とも反対ともつかない無責任な発言は慎んでほしい。 3.パンダという動物は、狸とも熊ともつかない動物だね。 4.男とも女ともつかぬような、妙な人種が増えました。 5.朝飯とも昼飯ともつかない食事が終わって、彼らはまた遊びに行った。 ★ 例題 ★ 1) 鯨というのは魚(でも/とも)獣(でも/とも)つかない生き物ですが、地上最大の哺乳類との(こと/もの)です。 2) この陶器は有名な陶工の作となっている( )、(残念だ→    )ながら、本物とも偽物とも私には見分けが(つく→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ども/見えず(→文型121)/ものだ(→文型420)/てみる 2) 幸せだった(「あの頃」は過去)/呼べど/叫べど 252 ~と(も)なく/~と(も)なしに 疑問詞(+格助詞): ×  +  と(も)なく 動詞       :原形     と(も)なしに ♪ 会話 ♪ 良子:近所に中国帰国者の方が引っ越してきたの。 李 :言葉で困ってるだろうなあ。 良子:ええ、でも子供たちって二カ月もしないうちに話せるようになって、今では親の通訳をしてるんだって。 李 :子供というのは、語学の天才だね。誰から習うともなく言葉を覚えてしまうんだから。 ♯ 解説 ♭  「~と(も)なく/~と(も)なしに」は疑問詞(疑問詞+助詞)につくときは、「<いつ・どこで・誰が・何を>かよくわからないが、~」という不確かさを表します。また、感覚・知覚・思惟などを表す動詞 を反復し、「見るともなく見る/聞くともなく聞く」のように「~しようというつもりはなく、ただ、なんとなく~する」という無意識で行われた動作を表します。日本語の不作為・無意識の行為を表す代表がこの「~ともなく/~ともなしに」だと言えるでしょう。 § 例文 § 1.彼は夕焼けの空を見るともなく、ただぼんやりと見つめていた。 2.電車の中で聞くともなしに隣の女子高校生たちの話を聞いていたが、余りのどぎつさに唖然とした。 3.読むともなく週刊誌をめくっていると、なんと昔なじみのA君のことが載っているではないか。 4.どこからともなくいい匂いがしてきた。 5.誰言うとなく、彼のことを阿Qと呼ぶようになった。 ★ 例題 ★ 1) (聴く/聴いた)ともなしに(聴いた/聴いていた)有線放送から、昔懐かしい歌が(流して/流れて)きた。 2) 彼は誰に語る( )もなく「さようなら」とつぶやく( )、まるで風の(如し→   )、どこ( )ともなく去って行った。 (^^)前課の解答(^^) 1) とも/とも/こと(~とのことだ→文型209) 2) が(逆説)/残念(逆説「~ながら」→文型270)/つかない 253 ~と(も)なると/~と(も)なっては 名詞    : ×       +  と(も)なると  動詞・形容詞:普通形 <ナ形ー×> と(も)なれば                     と(も)なっては~ない ♪ 会話 ♪ 課長:年末ともなると、何かと気ぜわしいな。ボーナスもいいけど、右から左へ飛んでいくだけだしなあ。 真理:でも、課長ともなれば、ボーナスもドカンと出るんでしょう。羨ましいですわ。 課長:家のローンもあるし、この歳ともなると老後の心配もしないわけにはいかないし、楽じゃないんだよ。 ♯ 解説 ♭  「~と(も)なると/~と(も)なれば」は「~という状況・場合になると」という意味を表し、後件でどんな結論になるかを述べます。「~と(も)なると」は当然の結果という気持ちが現れます。一方、「~と(も)なれば」には推量の気持ちが含まれていて、文末で「~だろう」などの推量の表現が多く現れます。  「と(も)なっては~ない」は例文4、5のように常に後件で良くない結果になることを強調するのが特徴で、文末で否定形か否定の意味を表す語と呼応します。失望、残念といった感情が強く現れる表現でしょう。→例題1) § 例文 § 1.ゴールデンウイークともなると、観光地は人で溢れる。 2.安楽死問題ともなれば、様々な問題があり、一朝一夕に答えは出せません。 3.口では勇ましいことを言っていながら、いざ実行となると、しり込みしてしまう者が続出する始末だ。 4.今となっては、もう手の打ちようがないですねえ。 5.校内暴力もこれほどとなっては、もはや教師だけでは手に負えません。 ★ 例題 ★ 1) 彼は人には面倒な仕事を(する/させる)くせに、いざ自分がやる(となると/となっては)(嫌だ/嫌がる)。 2) 現代医学( )もってしても(治せる→    )難病とも( )( )と、ご両親の心痛は察するに余りある。 (^^)前課の解答(^^) 1) 聞く/聞いていた(過去・継続)/流れて(自V) 2) と/と(→文型203)/如く(→文型083)/へ 254 ~ないかなあ/~といいなあ/~たらなあ 動詞・形容詞:ない形<ナ形ーでない>  +  かなあ 動詞・形容詞:原形<ナ形ーだ>     +  と(いい)なあ 動詞・形容詞:た形<ナ形ーだった>   +  ら(いい)なあ ♪ 会話 ♪ 良子:この夏に、南の島に遊びに行けたらいいなあ!バリ島だとか海南島だとか。でも先立つものがないわね。 李 :業績は文句ないんだから、ボーナスを大盤振る舞いしてくれるといいんだがなあ! 良子:あなた、組合の執行委員でしょ。もっと組合幹部らしく戦う姿勢を示してくれないかなあ。 ♯ 解説 ♭  「~と(いい)なあ/~たら(いい)なあ」も「~ないかなあ」も感嘆を込めた願望の表現を作ります。願望の表現は他にも「~たいなあ/~ほしいなあ」などいろいろありますので、以下の例文を参照してください。なお、「~なあ」は感嘆・詠嘆の感情を表す終助詞です。   早く試験が 終わってほしいなあ         終わらないかなあ         終わるといいなあ         終わったらいいなあ         終わったらいいがなあ § 例文 § 1.もうちょっと、値段が安くならないかなあ。ねえ、サービスしてよ。 2.一億円とは言わないが、せめて百万円でもいいから、宝くじが当たらないかなあ。 3.一戸建ての家とまでは言わないが、せめて、中古マンションでも買えるといいなあ。 4.しばらく彼とは会っていないが、元気だといいがなあ。 5.もう一度、人生を一からやり直せたらいいなあ。 ★ 例題 ★ 1) 「苦労し(ないで/なくて)、金が(儲ける/儲かる)方法がないかなあ」「あったら僕が(教えてほしい/教えたい)よ」 2) (暑い→    )たまらない。(早い→   )秋に(なる→    )らいいのになあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) させる(使役文)/となると/嫌がる(三人称の感情:「~がる」) 2) を(~をもってしても→文型480)/治せない/なる 255 *~ないことには 名詞    :    でない    + ことには ~ ない 動詞・形容詞:ない形 <ナ形ーでない> ♪ 会話 ♪ 良子:片ひじをついて食事をしては駄目。それからお味噌汁のお椀は、ちゃんと左手でもって。 小平:昨日、パパだって同じことしてたよ。ママってパパにだけは甘いんだぁ。 良子:パパに協力してもらわないことには、小平のしつけもできないわ。帰ってきたら言わなきゃ。 ♯ 解説 ♭  「~ないことには~ない」は「もし~なければ、~ ない」という意味を表し、文末では「~(ら)れない」(可能形の否定)や、よくない事態が起こる可能性を意味する「~する恐れがある」(→文型020)や「~兼ねない」(→文型043)などと呼応します。「~しなければ不可能だ」「~しなければ悪い結果となる」という恐れ・心配の感情が強く現れる表現です。  注意してほしいのは、「~なければ」はどんな場合でも使えますが、「~ないことには」は否定判断を表すことができるだけで、文末で肯定表現や「~つもりだ/~なければならない」などの意志表現ができないことです。   急がなければ(×ないことには)、もう少しここでゆっくりしませんか。   急がなければ(・ ないことには)、間に合わなくなる。 § 例文 § 1.急がないことには、終電に間に合わなくなる。 2.勉強にせよ、クラブ活動にせよ、楽しくないことには子供たちはついてきてくれませんよ。 3.この食中毒の原因が何かは、専門家でないことにはわからないでしょう。 4.実際に見て確かめないことには、真偽のほどはわからない。 5.精密検査をしてみないことには、悪性腫瘍かどうかの判断はつかない。 ★ 例題 ★ 1) 今ここ(で/に)手を打って(おく/おかない)ことには、事態はもっと悪化する(はずだ/に違いない)。 2) 実際に暮らし(てみる→   )ことには、その国の(いい→   )も(悪い→    )もわからない。 (^^)前課の解答(^^) 1) ないで(→文型257)/儲かる(自V)/教えてほしい 2) 暑くて(→文型183)/早く(イ形の連用形)/なった 256 *~ないことはない 名詞    :    でない     +  ことはない 動詞・形容詞:ない形 <ナ形ーでない>    こともない ♪ 会話 ♪ 李 :ドリアンは食べられないことはないけど,あまり口に合わないな。どちらかと言えばマンゴの方がいいよ。 良子:店先に並んでいると、どちらにしようか迷わないこともないけど、私はドリアンを買ってしまうわ。 李 :いずれにしたって、たまに食べるからおいしいので、しょっちゅうだと飽きちゃうね。 ♯ 解説 ♭  多くは「~ないことはないが、~」の形で使われ、「~ことは否定しないが、いろいろ問題が残されている」という意味を表します。これは一種の断定を避けた婉曲表現と言えるでしょう。形から言うと、「AことはA」(→文型092)と次のような関係があります。→例題1)   おいしいことはおいしい → おいしくないことはない   きれいなことはきれいだ → きれいでないことはない   食べることは食べる   → 食べないことはない § 例文 § 1.その価格なら、買えないこともない。 2.納豆は食べられないことはないんですが、あまりおいしいとは思いませんねえ。 3.行ってみたくないこともないが、お金を払ってまで行きたいとは思わないねえ。 4.やってやれないことはありませんが、あまり気が進みません。 5.君に協力しないこともないが、ただし、いくつか条件がある。 ★ 例題 ★ 1) (確か/確かに)彼女は歌唱力が(ある/ない)ことはあるが、大衆受けするかどうか不安が(ある/ない)こともない。\ 2) 子供の成長はうれしい( )はうれしい( )、親離れする姿を見て、(寂しい→     )こともない。 (^^)前課の解答(^^) 1) で/おかない/に違いない(→文型305/「はず」は期待→文型367) 2) てみない/よさ(イ形→N)/悪さ(イ形→N) 257 *~ないで/*~なくて/*~ず(に) 動詞:[ない]形  +  ないで              なくて              ず(に) (注:「する→せず/来る→こず」となる) ♪ 会話 ♪ 李 :せめて一ヶ月、何も考えず、何もせず、ただぼんやりと過ごせたらいいなあ。 良子:老人ホームでの話しだけど、お年寄り達が「ここの暮らしは衣食住には困らないが、何の生き甲斐も見いだせなくて、それが死ぬより辛い」と口々に言ってたわ。 李 :う~ん、考えさせられる話しだなあ。 ♯ 解説 ♭  日本語の動詞の否定形は「~ないで」と「~なくて」の二つの形があります。そして、「~ずに」(→文型121)は「~ないで」に相当します。  日本語の「て形」を意味から見ると、「~、そして~」(並立)、「~、それから、~」(順序)、「~、それで~」(理由)の大きく三つに分かれますが、「~、そして~」と「~、それから、~」に対応するのが「~ないで=~ずに」、「~、それで~」に対応するのが「~なくて」と言えるでしょう。この「~なくて」は状態や感情の自然発生を表す「~て」系の理由表現(→資料、)なので、文末で「~つもりだ/~たい」などの意志表現が使えません。→例題1)2)   朝御飯を 食べないで、会社に行った。 <それから:順序>        食べなくて、困っている。  <それで:理由> § 例文 § 1.雨が降っているのに、傘もささないで(⇔ずに/×なくて)歩いている。 2.これぐらいのことで挫けたりしないで(⇔せずに/×しなくて)、さあ、元気を出して。 3.彼は脇目もふらず(⇔ないで/×なくて)、勉強に打ち込んだ。 4.アルバイトが見つからなくて(×ないで)困っている。 5.そうしたい気持ちは山々ですが、市の予算が足りなくて(×ないで)、そこまで手が回らないんです。 ★ 例題 ★ 1) 夜遅い(のに/けれど)、いくら待っ(たら/ても)娘からの連絡が(ないで/なくて)、心配している。 2) 大学( )卒業しても、定職にも(つく→  )ずに遊んでいる青年達が最近(増える→    )きた。 (^^)前課の解答(^^) 1) 確かに(「確か」は推量)/ある(→文型092)/ない 2) に(「~には~が、~」→文型092)/が/寂しくない 258 *~ないでいる/*~ずにいる 動詞:[ない]形  +  ないでいる             ずにいる             ないでおる              ずにおる ♪ 会話 ♪ 李 :山田、お前もそろそろ潮時じゃないか。いつまでも結論を出さずにいると、彼女に逃げられちゃうぞ。 真理:そうよ、思い切ってプロポーズしなさいよ。 山田:僕の給料でやっていけるかどうかって、どうしても踏ん切りがつかないでいるんだ。 李 :「案ずるより生むが易し」さ。なんとかなるものさ。 ♯ 解説 ♭  「~ないでいる/~ずにいる」は、「~しない状態を続ける」という意味を表します。ここでは例文5の「~ておる」について説明します。この「~ておる」は「~ております」の形で使われるときは、丁寧な謙遜語になります。しかし、そのまま「~ておる」の形で使うと、目上の人が目下の人に対して使う尊大語となります。これは「~ないでおる」のように「ない形」と結びついたときも同じです。ですから、みなさんは「~ております」だけ使うようにした方がいいでしょう。   はい、知っています。 (普通)   はい、知っております。(丁寧)   ああ、知っておる。  (尊大) § 例文 § 1.そんなに食べないでいると、体を壊してしまうよ。 2.はい、息を止めて。そのまま動かないでいてください。  はい、終わりました。(レントゲン検査) 3.今日述べたことは、努々、忘れずにいてほしい。 4.どうやらスランプのようで、アイディアも浮かばず、筆も進まず、何も書けずにいるんです。 5.伝統工芸の火を絶やさずにおるには、どうしても後継者養成のための国の援助を必要としておる。 ★ 例題 ★ 1) 悩みを胸に(しまう/しまった)まま、口に(出して/出さずに)いると、かえって辛くなる(ことだ/ものだ)よ。 2) 今まで君には(話す→    )でいたんだが、実は今年( )会社( )辞める予定なんだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) のに(理由の逆説)/ても(条件の逆説)/なくて(理由) 2) を/つか/増えて(変化→文型181) 259 ~ないでおく/~ずにおく/~ずにある 動詞:[ない]形  +  ないでおく  ・              ずにおく              ずにある    ・ ♪ 会話 ♪ 真理:ね、この話、佐藤さんにはまだ言わないでおいてね。びっくりさせてやりたいの。 李 :それはいいけど。でも、君のうきうきした態度を見たら、彼だって気づかずにはいないよ。 真理:でも、妊娠したなんて言うと、また彼のことだから、大騒ぎするに決まっているもの。 ♯ 解説 ♭  「~ないでおく/~ずにおく」は動詞の「ない形」と「~ておく」(→資料。)が結びついた文型で、「意図的に~しないでそのままの状態にしておく」という意味を表します。  なお、現在口語ではあまり使われなくなりましたが、例文3、4のように「~てある」と動詞の「ない形」が結びついた「~ずにある」文型があり、「まだ~しない状態が続いている」という意味を表します。これらの文型は「~ている/~ておく/~てある」の用法と不可分なので、資料。を参照してください。 § 例文 § 1.この机の上は、このまま触らずにおいてくれ。 2.このことは、君が成人するまで知らせないでおくつもりだったんだが、この際だから話そう。 3.私が困っているときは助けずにおいて、自分が困ったら助けてくれとは、ちょっと虫が良すぎないか。 4.彼女に何度も恋文を書いたが、どれも出さずにある。 5.学生時代に思い描いた夢は、今も変わらずにある。 ★ 例題 ★ 1) 外国語は使わない(でいる/でおく)と忘れる(こと/もの)だから、忘れない(である/でおく)には、少しずつでもその言葉に触れておく(こと/もの)だ。 2) まもなく息子も(帰る→    )来るし、鍵は(かける→     )(おく→   )たって大丈夫だよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) しまった(~まま→文型406)/出さずに/ものだ(→文型420) 2) 話さない/で(期限)/を 260 ~ないで済む/~ずに済む/~なしで済む 名詞: ×     +  なしで済む 動詞:[ない]形  +  ないで済む             ずに済む ♪ 会話 ♪ 部長:私が頭を下げて済むなら、この頭、何度下げてもかまわないが、今度ばかりはそれで済みそうにない。 課長:先方は、そんなに態度を硬化させているのですか。 部長:ああ、ことによったら裁判ざたにもなり兼ねない。 李 :なんとか穏便に済ませる方法はないのでしょうか。 課長:せめて訴訟にならずに済めばいいのだが。 ♯ 解説 ♭  この「済む」という動詞は、「終わる・完了する」という意味の他に、「足りる・解決する」という意味も持っています。後者の意味で使われるのが「~ないで済む/~ずに済む/~なしで済む」で、「~なくても問題はない」「~なくても足りる」という意味を表します。  「~て済む/~で済む」(→文型185)の項も併せて参照してください。 § 例文 § 1.駐車違反で散々しぼられたが、罰金なしで済んだ。 2.今年は暖冬で、ストーブなしで済みました。 3.けがも軽くて済み、大事に至らずに済んだのは何よりでした。 4.これほどの不始末をしでかしながら、首にならないで済んだだけでもありがたいと思え。 5.自ら望んで引き受けたことではないし、やらずに済むなら、それに越したことはない。 ★ 例題 ★ 1) 検査の(結果/始末)、軽い胃潰瘍とわかったので、どうやら手術(なしで/ないで)(済む/済み)そうだ。 2) 日頃から復習( )( )していれば、試験の前になって(慌てる→ )ずに済む( )( )を。 (^^)前課の解答(^^) 1) でいる/もの(→文型420)/でおく/こと(→文型084) 2) 帰って/かけないで(「かけずに」も可)/おい(~ても=たって) 261 *~ないではいられない/*~ずにはいられない 動詞:[ない]形  +  ないで(は)いられない             ずに(は)いられない ♪ 会話 ♪ 真理:ねえ、私たちの老後、どうなるのかしら?年金もどうなるかわからないし、心配せずにいられないわ。 李 :取り越し苦労はしない方がいいよ。 佐藤:とは言っても、ある程度蓄えがないと、いざというとき困るからね。ところで、この長者番付を見たかい?この世の不公平を恨まないではいられなくなるよ。 ♯ 解説 ♭  「~ないではいられない/~ずにはいられない」は「~ないでいる/~ずにいる」の可能形(否定)が使われて、「自分の心が抑制できず、自然にそうなってしまう」という意味を表しています。文法的には自発・自然の文型に属しますが、「~てはいられない」(→文型191)も併せて参照してください。  なお、「~ざるを得ない」(→文型106)も自発・自然の感情を表すことがありますが、「そうしたくないが、そうなってしまう」という不本意の意味を表しています。一方、「~ずにはいられない」は自然にわき上がる感情です。   彼に対しては    不信感を抱かずにはいられない。    不信感を抱かざるを得ない。 § 例文 § 1.亡くなった妻のことを思い出さずにはいられない。 2.彼は一旦思い立ったら、すぐにせずにはいられない性分だ。 3.たまには仕事を忘れて、のんびり息抜きをしないではいられないですよ。 4.私の著作を改ざんし、自分の名前で発表するなんて、これが怒らずにいられましょうか。 5.赤提灯の灯を見ると、飲まないではいられなくなって、  足が勝手に動き出すんです。 ★ 例題 ★ 1) 盲目(ながら/つつ)も東大(を/に)合格した彼に、私は感動を覚えずには(いられなかった/おかなかった)。 2) 悪いこととは(知る→    )つつ、娘の日記を(読む→   )ないでは(いる→    )なかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) 結果/なしで(N+なしで)/済み(様態の「~そうだ」) 2) さえ(→文型101)/慌て/もの(~ば~ものを→文型426) 262 *~ないではおかない/*~ずにはおかない 動詞:[ない]形  +  ないではおかない              ずにはおかない ♪ 会話 ♪ 良子:お隣の奥さんって凄いわよ。小二の子どもを毎晩十時まで勉強させないではおかないらしいのよ。 李 :お前だって大したものさ。毎晩疲れて帰って来る俺に、家事を手伝わせずにはおかないじやないか。 良子:もしそんなことを外で言ったら、ただじゃおかないわよ。帰って来る家はないと思いなさい。 ♯ 解説 ♭  「~ないではおかない/~ずにはおかない」は動作動詞に付くと、例文1、2のように「~しなければ、自分の気が済まない/必ず~てやる」という強い決意を表します。また、心理・感情を表す動詞に付くと、例文3~5のように「必然的に/思わず~させてしまう」という自然・自発の感情を表します。  この文型は動詞の使役形と結びつくことも多く、強制的に或いは自然にある状況・心理状態に追い込むことを表します。その場合、「~ないではいられない/~ずにはいられない」(→文型261)と主語が好対照の文型になります。   その映画は私を感動させずにはおかなかった。(映画は・私)   私はその映画に感動せずにはいられなかった。(私は・映画) § 例文 § 1.あいつは生意気な奴だ。一度、あいつの鼻っ柱をへし折ってやらないではおかない。 2.彼らがこのような内政干渉をつづけるなら、我々はいかなる手段をもってしても、撃退せずにはおかない。 3.大臣のその一言は、波紋を呼ばずにはおかなかった。 4.彼の言動は、私を不安にさせずにはおかなかった。 5.その子の学校に対する抗議自殺は、大人達を反省させずにはおかなかった。 ★ 例題 ★ 1) A紙が我々に根も葉もない中傷を加えた(以上/からこそ)、謝罪(しない/させない)では(いられない/おかない)。 2) 彼女の献身的( )母親を看護する姿は、見る人を(感動する→    )ずには(おく→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ながら(逆説→文型270)/に/いられなかった 2) 知り(逆説の「~つつ」→文型169)/読ま/いられ 263 ~ないでは済まない/~ずには済まない/~なしでは済まない 動詞:[ない]形 +  ないでは済まない             ずには済まない 名詞:  ×    +  なしでは済まない ♪ 会話 ♪ 百恵:この前の約束、どうしたの。私、ずっと待っていたのよ。一杯おごっていただかないでは済まないわよ。 山田:あーあ、会社でも失敗しちゃって、始末書なしでは済まないだろうっていうのに・・・。 李 :お前、厄年じゃないのか。どうだい今晩あたり、厄払いに一杯。 ♯ 解説 ♭  「~ないでは済まない/~ずには済まない/~なしでは済まない」は、どれも「~しなければ、問題は解決しない」「~しなければ、許されない」という意味を表します。「~なければならない」と基本的には同じ意味と考えていいでしょう。  類義文型に「~ざるを得ない」(→文型106)がありますが、意味上次のような違いが生じます。   謝らないでは済まない ≒ 謝らなければならない   謝らざるを得ない   ≒ 謝るしかない § 例文 § 1.このことは、君が直接、彼に謝らないでは済まないぞ。 2.人から借りた金を、返せないでは済まないよ。 3.これだけの被害者を出したとあっては、刑事責任を問われずには済まないだろう。 4.潔く自分の非を認めなさい。知らぬ存ぜぬでは済まされない。 5.君も料理人の端くれなんだから、客から注文された品を作れませんでは済まないよ。 ★ 例題 ★ 1) どこかで妥協(する/しない)ことには、交渉は決裂(せずには済まない/せざるを得ない)。円満解決にはこちらも一歩譲歩せずには(済むまい/いられまい)。 2) 部下の失敗で(ある→    )と、上司としての君が責任を(問われる→   )には(済む→   )よ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 以上(=からには→文型009)/させない/おかない 2) に(「~的」はナ形)/感動させ/おかなかった 264 ~ないとも限らない 名詞    :    でない     +   とも限らない 動詞・形容詞:ない形 <ナ形ーでない> ♪ 会話 ♪ 良子:小平のことだけど、この成績では公立高校の入試に失敗しないとも限らないって、先生から言われたの。 李 :滑りどめに、私立も受けておいた方が良さそうだなあ。しかし私立に行くとなると、お金もかかるなあ。 良子:それで当たらないとも限らないと思って、宝くじ十枚買ってみたんだけど・・・。 ♯ 解説 ♭  「~ないとも限らない」は「もしかしたら~かもしれない」と同じ意味ですが、「そうなる可能性はとても低いが、しかし~」という懐疑的語感を持つ表現です。よくない事態の発生の可能性を述べるときは、ほぼ「~恐れがある」(→文型020)や「~兼ねない」(→文型043)と同義語となりますが、接続には注意しましょう。   失敗しないとも限らない。(ない形+)≒ 失敗する恐れがある。  (原形+)≒ 失敗し兼ねない。    ([ます]形+) § 例文 § 1.滅多なことを言うと、やぶ蛇にならないとも限らない。 2.いつ何が起こらないとも限らないから、生命保険には入っておいた方がいい。 3.他社に知られないとも限らない。このことは内密に進めよう。 4.このまま円安を放置しておくと、最悪の事態にならないとも限らない。 5.一見ピンチに見える中に、チャンスが潜んでいないとも限らない。「災いを転じて福となす」って言うだろ? ★ 例題 ★ 1) A国・B国(と/に)続く核実験で、世界は再び核軍拡(に/を)(走る/走らない)とも限らない。 2) 火事に(なる→     )とも限らないから、ストーブは(つける→   )っ放し( )しないでね。 (^^)前課の解答(^^) 1) しない(→文型255)/せざるを得ない(→文型106)/済むまい 2) あろう(~(よ)うと→文型437)/問われず/済まない 265 ~ないまでも 名詞    : でない      +  までも 動詞・形容詞:ない形 <ナ形ーでない> ♪ 会話 ♪ 李 :若手歌手の中で最高だとまでは言わないまでも、この歌手はかなりいい線いってると思うな。 山田:CDを買い込むほど熱を上げているとは知らなかったよ。気だけはまだ若いんだね。 李 :「気だけは」とは失敬な奴だなあ。頭にはこないまでも、気分を害したよ。 ♯ 解説 ♭  「~ないまでも」は「その程度までに達していなくても」という意味を表す逆接表現になります。文脈によって、例文1~3のように、「~ないけれども、かなり~だ」を意味を表したり、例文4、5のように「~なくても、せめて~」を表したりします。後者の場合、文末には「~たい/~てください/~てほしい/~たらどうですか/~なさい」などの希望や要求の表現が多く現れます。  その他、「~とは言わないまでも」の形が多く使われますが、「~とまでは言えないが/~とまでは行かないが」(→文型246)と類義表現になります。 § 例文 § 1.十分とは言えないないまでも、あなたにはそれ相当のお礼をしたつもりです。 2.美人とは言わないまでも、チャーミングな娘さんだ。 3.彼が首謀者であることは断定できないまでも、十中八九間違いはない。 4.全額でないまでも、せめて利子ぐらいは払ってくれ。 5.勝てないまでも、一発殴り返してやらねば気が収まらなかったんだ。 ★ 例題 ★ 1) 毎日とは(言う/言わない)までも、週(で/に)一回(ほど/ぐらい)は掃除をしなさい。 2) A君、静かに!真面目( )授業を(受ける→    )までも、回りの学生の邪魔だけは(する→   )な。 (^^)前課の解答(^^) 1) と{「と」はそれで全て、「に」は更に添加)/に/走らない 2} ならない/つけ(~っ放し→文型173)/に(N+にする) 266 ~ないものでもない 動詞:ない形  + ものでもない ♪ 会話 ♪ 李 :駅の付近で、歩きながらたばこを吸う人が多いね。 山田:僕たち愛煙家には、長い通勤時間の間ずっとタバコが吸えないというのは、死ぬほど辛いものなんだ。駅構内も至る所が禁煙ときているときているからねえ。 李 :同情できないものでもないけど、嫌煙権は時代の流れだよ。それに吸いがらのポイ捨てはよくないね。 ♯ 解説 ♭  「~ないものでもない」は婉曲表現で、漠然とした可能性を表し、文脈によって「状況によっては~そうなるかもしれない/そうしてもいい」などの意味を表します。意味は「~ないこともない」と共通していますが、「こと」は自分に属する個別的・内在的事態で、「もの」は自分の外に存在する一般的・外在的事態ですから、下の例では理由が自分自身にあるのか、周囲の事情にあるのかの違いが生じます。→例題1)   歌わないこともないが、僕は歌が下手だから <個人的理由>   歌わないものでもないが、周りに迷惑だから <周囲の事情> § 例文 § 1.どうしてもとおっしゃるなら、やらないものでもありませんが、もっと適任者がいるんじゃないでしょうか。 2.食事だけなら、つき合ってあげないものでもないわ。 3.その子が置かれた家庭環境を考えれば、非行に走ったのも理解できないものでもない。 4.相手に譲歩する気があれば、再交渉に応じないものでもない。 5.それは手に入らないものでもないが、非売品だから入手するには困難が伴うよ。 ★ 例題 ★ 1) それ相当の報酬(すら/さえ)払って(くれれ/あげれ)ば、引き受けない(こと/もの)でもないんだが。 2) 頑張れば家が(買える→    )ものでもない( )、ローンに(追う→    )生活はまっぴらだね。 (^^)前課の解答(^^) 1) 言わない/に(割合の「に」)/ぐらい(最低限→文型072) 2) に(ナ形)/受けない/する(禁止命令:V原形+な) 267 ~ないものはない/~ない<名詞>はない 名詞    : でない         + ものはない 動詞・形容詞:ない形 <ナ形ーでない>    名詞 + はない ♪ 会話 ♪ 李 :鯨を一度食べてみたいなあ。 良子:子どもの頃はまだ食卓に上っていたけど、今じゃ専門店でしか食べられないわ。頭のてっぺんから尻尾の先まで、利用できないものはないらしいわよ。 李 :人間が食べないものはないみたいだね。広東では、四つ足はテーブル以外何でも食べるなんて言うよ。 ♯ 解説 ♭  「~ないものはない/~ない<名詞>はない」は二重否定になっていて、「全て~できる/ある/である」を意味する強調表現になります。「~ない<名詞>は<何一つ/誰一人/一時も・・・>ない/いない」などの形が多いでしょう。そして、「できないものはない」は「何でもできる」よりも、はるかに強い語感になります。   知らない漢字はない ≧ 漢字は全て知っている § 例文 § 1.およそ薬と名の付くもので、危険でないものはない。 2.秋葉原に行けば、電気製品で手に入らないものはないと言っていいだろう。 3.この世に自然の創造物でないものは何ひとつとしてない。 4.知らない漢字はないと彼は豪語しているが、果たして本当かなあ? 5.自分の子どもが可愛くない親など誰一人としていない。 ★ 例題 ★ 1) 彼は温泉好きで、日本の温泉(で/に)行ったことが(ある/ない)(もの/ところ)はないと自慢していた。 2) 中華料理( )(食べられる→      )ものはないが、あの蛇料理だけは、ちょっと食べるの( )勇気が要った。 (^^)前課の解答(^^) 1) さえ(「~すら~ば」の形はない→文型101)/くれれ/もの 2) 買えない/が(逆説)/追われる 268 ~直す/~返す 動詞:[ます]形  +  直す  ・              返す   ・ ♪ 会話 ♪ 李 :もう一度生まれ直せるなら、どちらになりたい?女それとも男? 良子:また女に生まれて、あなたと結婚したいわ。 李 :やけにうれしいことを言ってくれるなあ。小平は? 小平:男でも女でもいいけど、試験のない国に生まれたい。   こんな毎日をまた繰り返すかと思うとぞっとするよ。 ♯ 解説 ♭  「~直す」は例文1~3のように、一度した行為の結果に間違いや不満な点があり、正しい状態に改善・修正することです。一方、「~返す」は例文4、5のように、逆方向・元の状態に戻す反転行為が主たる用法です。例えば「読み返す」は読む行為の繰り返すだけですが、「読み直す」は分からないところがあったのでもう一度考えながら読むと言う意味の違いとなります。下の例もかなり大きな意味上の違いが生じる例です。→例題1)   私は言い直した。<発言訂正>   私は相手に言い返した。<反論> § 例文 § 1.この番組は生放送ですから、やり直しがききません。 2.ほう、もう英語で手紙が書けるのか。ちょっと見直したねえ。(「見直す」には慣用的意味もある) 3.顔を洗って出直してこい。 4.もう死んだかと思っていたら、息を吹き返した。 5.やられたら、やり返せ。殴られたら、殴り返せ。「目には目を、歯には歯を」だ。 ★ 例題 ★ 1) 「もう一度、計画を(立て/立てる)(返そう/直そう)じゃないか」「うん、そうする(だけ/しかない)な」 2) この作文は間違いが(多い→   )過ぎて、これでは(直す →    )ようもない。もう一度、(書く→   )直して来なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(範囲限定)/ない/ところ 2) で(範囲限定)/食べられない/に(目的・場合→文型336) 269 *~ながら ・/~ながらに/~ながらの 名詞: ×   +  ながら 動詞:[ます]形     ながらに              ながらの+名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :小学生達が「今日は塾はやめて、ゲームセンターに行こうよ」って笑いながら話し合ってるのを聞いたよ。 良子:共働きしながら、ようやくの思いで子どもを塾に通わせてる御両親もいらっしゃるのでしょうにね。 李 :「親の心、子知らず」ってよく言われるけど、いつものことながら、親子関係は難しいと思うなあ。 ♯ 解説 ♭  「AながらB」は、ABのどちらもが動作性の動詞のときは同時進行の並行動作を表します。この「~ながら」は「~つつ」(→文型169)を使うことができます。   テレビを見ながら〔・見つつ)、ご飯を食べている。  それ以外に、「~ながら(に)/~ながらのN」の形で主に名詞や一部の動詞にもついて、「Aのままの状態でB」を表すことがあり、この場合、前件Aが後件Bが起こったときの状態・状況説明となっています。この「~ながら」は「生まれながらに/涙ながらに/昔ながらの/いつもながら/生きながらに」などですが、慣用表現として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.あなた、食事をしながら新聞を読むのはやめて。 2.ゴーと音をたてながら、電車が通り過ぎて行った。 3.彼は生まれながらに目が見えなかったが、世界でも指折りのギター奏者となった。 4.いつもながらの鮮やかなお手並みですなあ。 5.昔、王が死んだとき、多くの奴隷たちや妻たちは生きながらに葬られたと言う。 ★ 例題 ★ 1) 中国残留孤児の方々が、日本の土を踏んだ喜びを涙(つつ/ながら)に語っていた。それを(見ると/見て)、 私は涙を禁じ(得た/得なかった)。 2) そのボクサーは、何度( )挫折から(はう→   )上がる→   )ながら、ついにチャンピオンの座を手にした。 (^^)前課の解答(^^) 1) 立て/直そう(~(よ)うじゃないか→文型440)/しかない 2) 多(→文型117)/直し(~ようがない→文型435)/書き 270 *~ながら(も) 名詞 : ×       +  ながら(も ) 動詞 :[ます]形/ない形 形容詞:普通形 <ナ形ー×> ♪ 会話 ♪ 李 :会社で人からかかあ天下と笑われながらも、これでようやく俺も一国一城の主になれたぞ。 良子:女の子がもう一人ほしいし、毎月のローンも大変なんだから、これからも節約節約よ。 李 :念願のマイホームを手に入れたのはうれしいことながら、ローンのことを考えると先が思いやられるよ。 ♯ 解説 ♭  この「~ながら」は各種の語について「~けれども、同時に~」や「~のに」に相当する逆説表現を作ります。状態動詞(「ある/いる/できる/わかる/要る」)や名詞・形容詞や動詞の「ない形」につくもののは、ほとんど逆説の用法になると考えていいでしょう。しかし、動作動詞につくときは、同時並行の「~ながら」か、逆説の「~ながら」か文脈から理解する必要があります。   ビールを飲みながら、テレビを見ている。      <平行動作>   一人で10本もビールを飲みながら、まだ注文している。<逆説>  注意してほしいのは、動詞の[ます]形につくときは「~つつ」が使えますが、「~つつ」は動詞の「ない形」や名詞・形容詞とは接続できないことです。→例題1) § 例文 § 1.こんな失敗をするなんて、我ながら情けなくなる。 2.「狭いながらも楽しいわが家」って歌があったね。 3.親に勧められ、嫌々ながらおつきあいを始めた方でしたが、知らず知らずのうちに好きになっていました。 4.及ばずながら、私でよければお力になりましょう。 5.不自由な体ながらも、一生懸命に生きていこうとしている彼女の姿に、私は感動を覚えた。 ★ 例題 ★ 1) 私があなたにし(てあげられる/てもらえる)ことは、残念(ながら/つつ)、ここ(まで/から)です。 2) 公務員で(ある→    )ながら、企業からの高額接待を受け、しかもそのお返しに情報を提供するような( )( )が許されていい( )( )か。 (^^)前課の解答(^^) 1) ながら/見て(原因・理由)/得なかった(→文型464) 2) も/はい(→文型003)/上がり 271 *~なければならない/*~なくてはならない 名詞・ナ形容詞:で<ナ形ーで>  +  なければならない 動詞・イ形容詞:[ない]形        なくてはならない                      なければいけない                      なくてはいけない (注:口語形は「~なければ→~なきゃ」「~なくては→なくちゃ」) ♪ 会話 ♪ 李 :つき合いたいんだけど、今日は結婚記念日だから、早く帰らなくちゃならないんだ。 山田:今日おごるつもりだったけど、それじゃ仕方ないな。 李 :えっ?おごる?だったら一時間ぐらいつき合うよ。 山田:駄目駄目、君は帰らなくちゃいけないよ。僕のせいで家庭争議なんてことになると困るからね。 ♯ 解説 ♭  「~なければならない/~なくてはならない」は周囲の事情や、法律・規則などの外在条件から下す判断です。名詞や形容詞または状態性の動詞と結びつくときは当然・必要・必然を表し、動作性の動詞と結びつく場合は義務や責任を表します。  一方、「~なければいけない/~なくてはいけない」は、自分の責任で判断し、相手に要求する表現で、意味上は命令の「~しなさい」に近い表現になります。  注意してほしいのは、自分がしなければならないことや、自分自身に言い聞かせるときは、この「~なければならない/~なくてはならない」を使わなければならないことです。なお、「~なきゃならない/~なくちゃならない」と「~なきゃいけない/~なくちゃいけない」は口語、「~ねばならぬ」(→文型353)は書面語です。 § 例文 § 1.男は男らしくなければならず、女は女らしくなければならぬと言われてきた。 2.裁判所は国家権力から独立し、政治に対しては中立でなければならない。 3.政府は国民の福祉に貢献しなければならぬ存在だ。 4.一平、もう遅いし、早く寝なきゃいけないよ。 5.お父さんが入院したんだって?こんなときこそ、長男の君がしっかりしなくちゃいけないよ。 ★ 例題 ★ 1) 人がしている(からには/からって)、君がそうし(ては/なくては)ならないってことは(ある/ない)よ。 2) (守る→   )なければならないよき伝統( )( )も、旧悪として断罪する風潮には(賛成する→    )兼ねる。 (^^)前課の解答(^^) 1) てあげられる/ながら/まで(これだけ=ここまで) 2) あり/こと/もの(反語「~ものか」→文型417) 272 ~なしに/~なくして/~なしには~ない 名詞: ×  +  なしに           ・           なくして           なしには  ~ ない    ・           なくしては ~ ない (注:動詞の時は「~ことなしに/~ことなくして」等の形となる) ♪ 会話 ♪ 李 :小平を抱いてる時の君は、幸せそうな顔をしてるなあ。小平の寝顔を見ながら何を考えてるの? 良子:この子が大きな病気や事故なしに育ってほしいなあ、幸せな一生を送ってくれるといいなあなんて。 李 :そんなことを考えてるとは、想像すらしなかったよ。やはり母親の愛なしには子供は大きくなれないね。 ♯ 解説 ♭  「~なしに/~なくして/~なしには~ない」は通常は名詞に直接接続するのですが、たまに「~がなしには」や「~もなしに」の形が現れることもあります。動詞のときは例文5のように「~すること<なしに/なしには/なくして>」(→文型086)のように「こと」を使って名詞句を作れば使えます。  「~なしに」は「~しないで/~せずに」に相当し、文末で肯定表現と呼応します。「~なくして(は)/~なしには」は、どちらも「~しなければ」を相当し、文末で否定表現(ほとんどは可能形「~(ら)れない」)と呼応します。   許可なしに図書館の本を持ち出した。   許可なしには図書館の本を持ち出せない。 § 例文 § 1.災害は予告(も)なしにやってくる。 2.あなたなしには、私は生きてはいけません。 3.周到な準備なくして事を始めると、必ず失敗する。 4.経済的自立なしには、個人も、また国家の独立もあり得ない。 5.苦労することなしに金儲けをしようなんて、ちょっと虫が良すぎるんじゃないか。 ★ 例題 ★ 1) 皆様の御支援(ないで/なくして)、この厳しい選挙戦には勝ち(切れ/抜け/尽くせ)ません。皆様の(清き/清く)一票を是非とも私に。 2) 親(と言う→      )ども、断り(ない→   )に、僕の部屋 ( )入らないでくれ。 (^^)前課の解答(^^) 1) からって(=からと言って→文型053)/なくては/ない 2) 守ら/さえ(「まで」も可→文型100)/賛成し(→文型044) 273 *何故なら~からだ/*というのは~からだ 何故なら        名詞    :   だ       +   からだ 何故かと言うと      動詞・形容詞:普通形 <ナ形ーだ> 何故かと言えば ~ と言うのは       名詞    :   の       +   ためだ   どうしてかと言うと 動詞・形容詞:普通形 <ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 李 :君のパソコン嫌いは、最初につまずいたからだと思うな。教えてやるから、一から勉強し直さないかい? 良子:遠慮しとくわ。夫婦で教え合うのは難しいわ。何故かというと、お互いに遠慮がないからよ。 李 :君にはインターネットをマスターしてほしいんだ。というのも世界がパッと広がるからさ。 ♯ 解説 ♭  これらは先に事実を述べて、その後で理由を述べる表現です。「なぜなら~からだ」は硬い学術的表現で、「なぜかというと/どうしてかというと~からだ」も何か重大な出来事の理由説明に使われますから、日常会話では「それは/というのは~からだ」を使うといいでしょう。   今お金がない。というのは(・それは/?何故かというと)給料前だからだ。  また、「~からだ」のかわりに、理由の「~ためだ」(→文型152)が使われることもありますが、「~ためだ」は客観的に因果関係を述べる文型ですから、新聞や報道で使われることが多くなります。 § 例文 § 1.今度の会議には欠席させてもらう。というのは娘の結婚式とぶつかっているからなんだ。 2.日本経済は心配ない。何故なら製造業が健在だからだ。 3.やりたいことをやれ。何故なら人生は一度しかないからだ。 4.僕はこんなことではあきらめない。それというのも僕にはやり遂げる自信があるからだ。 5.そんなにがっかりすることはない。というのはチャンスはまた必ず巡ってくるからだ。 ★ 例題 ★ 1) 君は(行った/行かない)方がいい。それは相手が君と会うの(が/を)(嫌だ/嫌がっている)からだ。 2) この鉄道建設は(中断する→     )たままだ。というのも資金不足( )(陥る→     )からだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) なくして/抜け(→文型352)/清き(イ形の古い連体形) 2) と言え(~と言えども→文型216)/なしに/に 274 *~など/*~なんか/*~なんて 名詞・格助詞: ×  +  など               なんか               なんて 動詞・形容詞: ×  +  など               なんて ♪ 会話 ♪ 山田:これ、女性ならではの斬新な提案だね。 真理:あら、ありがとう。お世辞でもそう言っていただけたらうれしいわ。もっとも、「豚もおだてりゃ木に登る」なんて言われそうだけど。 山田:おいおい、僕はお世辞なんか言ってないよ。ただ、会社が採用してくれるかどうか、話は別だけどね。 ♯ 解説 ♭  「~など」の口語形が「~なんか」「~なんて」と言うことができますが、「~なんか/~なんて」は相手や対象を軽視・軽蔑する感情、自分に対しては謙遜・自虐という感情が強く表れるのが特徴です。  用法から見てみると、前が名詞の時はどれも使えますが、動詞・形容詞の後には「~なんか」は使えません。また「~なんて」には「~など/なんか+格助詞(が/を/に/で/と/へ)」のように後ろに格助詞が来る用法がありません。また「~なんて」には「~なんて+名詞(人・こと・物)」の用法がありますが、「~など/~なんか」にはありません。→例題1)   お前なんか(・など/・ なんか)死んでしまえ!   重要な会議に遅刻するなんて(・など/×なんか)、許せない。   例えば、推理小説なんか(・など/×なんて)が好きですね。   田中さんなんて(×など/×なんか)人は知らない。 § 例文 § 1.ハワイやバリ島なんか(⇔など/×なんて)が、日本人に人気がありますね。 2.お歳暮には、例えばビール券なんか(⇔など/×なんて)を送ると喜ばれますよ。 3.学生が教師に対して暴力をふるうなんて(⇔など/×なんか)、もってのほかだ。 4.あなたの顔なんか(⇔など/なんて)見たくもないわ。 5.知らないなんて(×など/×なんか)ことは言わせないぞ。 ★ 例題 ★ 1) 「今まで嘘なんか(つく/ついた)ことが(ある/ない)」(なんか/なんて)嘘を平気でつく奴がいる。 2) 私なんて、どこ( )だっているよう( )平凡なただ( )サラリーマンに過ぎません。 (^^)前課の解答(^^) 1) 行かない/を/嫌がっている 2) 中断された/に/陥った 275 ~並/~並み 名詞: ×  +  並(だ/に/の+名詞)           並み(だ/に/の+名詞) ♪ 会話 ♪ 良子:大連で回転寿司を食べてみたいわ。香港で見たときも驚いたけど、味は日本並なのかしら? 李 :捨てたもんじゃないよ。お寿司は柔道並に国際化してるよ。日本の寿司職人が直接指導に当たったそうだが、先達には並々ならぬ苦労があったはずだよ。 良子:そういえば、カラオケも日本発の文化輸出ね。 ♯ 解説 ♭  「並」は例文1のように単独でも使われ、「普通の/平均的な」と言う意味を表しますし、「並みの」「並々ならぬ」「並外れた」などの慣用表現を持っています。  そこから名詞に直接接続する接尾語の用法が生まれ、「男並み/世間並み/人並み/課長並み/例年並み…」などのように、「~とほとんど同程度」という意味を表すようになります。注意するのは「十人並」と言う表現で、これは「普通の人と同程度」を表します。  これ以外に並んだ状態を表す場合があり、例としては「軒並み/家並み/歯並み」などですが、これらは前につく語が限られていますので、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.彼の力は並外れて優れているというわけではない。言うならば十人並だね。 2.せめて人並みの生活がしたいものだ。 3.古代においては、奴隷たちは家畜並に扱われ、売買の対象でもあった。 4.月並みの表現で申し訳ありませんが、「過ぎたるは及ばざるが如し」です。 5.車両故障があったため、電車は軒並みに遅れている。 ★ 例題 ★ 1) この旅館は設備がいいとは(限らない/言えない)が、サービス(にかけては/にわたっては)一流旅館(的/並)だ。 2) 物の(豊かだ→    )という点( )( )言えば日本は先進国並になったと(言う→    )のですが、・・・。 (^^)前課の解答(^^) 1) ついた(~した・ことがある→文型080)/ない/なんて 2) に(~に~いる)/ような/の(ただのN=普通のN/平凡なN) 276 ~ならいざ知らず/~ならともかく 名詞・名詞句(ーの): × +  ならいざ知らず                 はいざ知らず                 ならともかく ♪ 会話 ♪ 李 :中高生の言葉がよく聞き取れなくて。どこの国の人かなと思って聞いていたら、日本人だったりして。 良子:本人達はナウいと思ってるのよ。でも、小さい子供ならいざ知らず、舌足らずな話し方はいただけないわ。 李 :外国語ならともかく、母国語の発音は大切にしてほしいものだな。テレビの悪い影響かなあ。 ♯ 解説 ♭  「~ならいざ知らず/~はいざ知らず」は「~がどうかは知らないが/~の場合は可能かも知れないが」という意味を表し、後件ではそれと対立する事柄を述べます。この「なら」は「君はできる→君ならできる」のように強い「は」に相当する用法なので、「~ならいざ知らず」の方が「~はいざ知らず」より強い語調となります。  「~ならともかく」も「~の場合は別にして」という意味の用法があり、意味の違いはありますが、多くの場合、「~ ならいざしらず」と同じ文脈のなかで使うことができます。この文型については「~はともかく」(→文型371)を併せてご参照ください。 § 例文 § 1.専門家ならいざ知らず、素人ではこの機械を修理することはできないよ。 2.できないのならいざ知らず、できるのにしようとしない。 3.仙人ならいざ知らず、生身の人間が霞だけ食って生きていけるかい。きれいごともいい加減にしろ。 4.君ならともかく、僕はそんな愚かなまねはしないね。 5.子供ならともかく、今だに親のすねかじりとは・・・。 ★ 例題 ★ 1) 君自身が(やれる/やれない)ことならいざ知らず、自分がやれないことを人に(する/しろ)と言う(べきだ/べきではない)。 2) 外の人( )( )ともかく、親友( )信じてきた君にまで(裏切る→   )とは思ってもみなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) とは言えない(→文型244)/にかけては(→文型298)/並 2) 豊かさ(ナ形→N)/から(~から言えば→文型049)/言える 277 ~ならでは 名詞: ×  +  ならでは           ならではの + 名詞           ならではだ ♪ 会話 ♪ 課長:今回の大売り出しのための品ぞろえは、当社ならではのものです。お客様の高い評価は間違いなしです。 部長:これだけ海外の有名ブランドが勢ぞろいするとは。国際化時代ならではのラインアップだ。 課長:やはり、李君ならではですよ。この企画を彼に任せた部長の人を見る目はさすがですね。 ♯ 解説 ♭  「~ならでは」は「~だけが持つ特有の」という意味を表し、必ず高い評価と賛嘆の言葉が続きます。文例とすれば「~ならではのN」の形が多いでしょう。この表現は「~でなければできない」や「~であってはじめてできる/~であってこそできる」を使うことができますが、「~ならでは」が一番よく使われています。   この店ならではの味  →この店特有の味  →この店でなければ出せない味  →この店であってはじめて出せる味  →この店であってこそ出せる味 § 例文 § 1.彼女にはベテランならではの演技力と華がある。 2.澄み切った海、潮の香り、南国の島ならではだねえ。 3.その店ならではの特徴と、きめ細かいサービスが競争に勝ち残るための決め手となるだろう。 4.札幌の雪祭りを見に行きましたが、北国ならではの風情がありました。 5.これだけ多彩な料理と豊かな風味が味わえるのは、中華料理の本場ならではですねえ。 ★ 例題 ★ 1) 郷土料理というのは、素朴ながら(も/に)、その土地(ならでは/ならこそ)の味わい(に/で)魅力がある。 2) う~ん、凄い。立体映像( )( )では( )迫力に体が(吸い込まれる→      )そうになったよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) やれる/しろ(命令形)/べきではない(→文型384) 2) なら/と(内容の取り上げ)/裏切られる(受身文:~を裏切る→) 278 ~ならまだしも/~からまだしも 名詞    :  ×        +  ならまだしも ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> 名詞    :  だ        +  からまだしも ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーだ> ♪ 会話 ♪ 係長:女のくせに、気がきかないなあ。忙しいのならまだしも、みんなにお茶の一杯ぐらい出したらどうだ。 百恵:女のくせになんていう言い方は、セクハラものですよ。セクハラ対策セミナーで習いませんでしたぁ? 係長:口だけは一人前だな。かわいげのない奴だ。 百恵:私だからまだしも、ほかの女性なら告訴しますよ。 ♯ 解説 ♭  「まだしも」は「(十分とは言えないが、)まだましだ/まだ少しはいい」という意味で、「~ならまだしも」は「~ならまだいいが、~/~なら、まだ許せるが、~」という意味の文型をつくります。  また、「まだしも」は「~からまだしも」のように「~から、まだよかったが、~」という意味の理由を表す文型も作りますが、これは「~からまだよかったようなものの、~」という連語を使っても表せます。この二つの文型はどちらも非難や叱責を表す表現となります。 § 例文 § 1.注意されて謝るならまだしも、逆に開き直っている。 2.酒を飲むだけならまだしも、うちの主人は酔うと暴力をふるうんです。 3.単なる冗談ならまだしも、彼の話にはいつも刺がある。 4.私がその場にいたからまだしも、いなかったらお客とけんかになっていたところだぞ。 5.小さい事故で済んだからまだしも、一歩間違ったら大災害になるところだった。 ★ 例題 ★ 1) 「お金だけ(だから/なら)まだしも、パスポート(さえ/まで)盗まれたよ」「命があった(から/なら)まだしもだよ」 2) 一人二人( )( )まだしも、大勢( )会社に押しかけてきて、話し合い( )( )( )ではなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) も(→文型270)/ならでは/に(~に<こと>がある) 2= なら/の/吸い込まれ(様態の「そうだ」) 279 ~なりだ/~なりに/~なりの 名詞: ×  +  なりだ           なりに ~ する           なりの + 名詞 (注:動詞接続の慣用語「言いなり」という語を作る) ♪ 会話 ♪ 良子:子持ちで共働きなんだから、たまにはあなたなりに家のことぐらいしてくれたらどう? 李 :お風呂を洗ってるし、食事も作ってるじゃないか。会社で恐妻家って言われてるぐらい君の言いなりだよ。 良子:その程度で、家事やってるって顔をしてもらいたくないわ。見てご覧なさい、この山のような洗濯物を。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~なり」は多くの意味を持っています。ここでは名詞について、「~にふさわしい/~それ相応の」という意味を表す用法を主として取り上げました。  このほかに「弓なり・鈴なり・身なり・山なり…」や「曲がりなりに・なりふり構わず…」など外形・外見を表す熟語を作りますが、付く語が限られているので、語彙として覚えた方がいいでしょう。更に「人の言いなりになる」のように動詞につく例もあり、「~まま」(→文型406)と同じ意味を表しますが、これも「言いなり」という語を覚えておけばいいでしょう。 § 例文 § 1.人の言いなり放題になるのではなくて、自分なりの意見を持って行動せよ。 2.葬式にはそれなりに決まった礼服があるんですから、身なりには気をつけなさいよ。 3.子供には、子供なりの悩みもあれば意見もある。 4.彼は有能とは言えないが、彼なりに一生懸命やっている。 5.私なりに努力もし、曲がりなりにも今日まで勤め上げてまいりました。 ★ 例題 ★ 1) 誰でもその人(だけ/なり)の夢もあり、その人(だけ/なり)に大切な(こと/もの)を持っている。 2) プロにはプロ( )( )の苦労がある。何事( )趣味で(やる→ )うちが、一番気楽なのさ。 (^^)前課の解答(^^) 1) なら/まで(「~まで」か「~さえ」か→文型404)/から 2) なら/で(数量の限定)/どころ(~どころではない→文型230) 280 ~なり ・ 動詞:原形  + なり ・ 動詞:た形  + なり ・ ♪ 会話 ♪ 百恵:もう係長のセクハラには耐えられません。善処をお願いします。 課長:おいおい、顔を見るなり会社への抗議かい? 百恵:詳細はこの文書をお読みください。失礼します。 課長:彼女はこれを僕に渡すなり、何も言わずに出て行ったけど、係長と何かあったのか? ♯ 解説 ♭  接続助詞「~なり」は「~するなり、~」と原形に接続するときは、例文1、2のように「~するや否や」(→文型428)や「~か~ないうちに」(→文型042)などと同じ「~すると、すぐ」を表します。ただし、この「~なり」は同一主語文でしか使えない制約があります。→例題1)   私が窓を開けるや否や(×なり)、虫が飛び込んできた。<異種語文>   彼女はうつむくや否や(・なり)、泣き出した。    <同一主語文>  「~したなり~」と完了形(「た」形)につくときは、例文3~5のように「~したまま」(文型406)と同じ「~した状態で」という意味を表します。→例題2)   彼女はうつむいたなり(・うつむいたまま)、泣き続けた。 § 例文 § 1.その手紙を読むなり彼は顔面蒼白になった。 2.彼は「勝手にしろ」と言うなり、部屋を出ていった。 3.主人は朝早く出かけたなり、この時間になっても帰ってきません。 4.娘が部屋に閉じこもったなり、いくら呼んでも出て来ないの。学校で何かあったのかしら。 5.彼は腕を組んだなり、黙って何かを考え続けていた。 ★ 例題 ★ 1) 私(が/は)ドアを開ける(なり/や否や)、警官たちはどやどやと土足の(なり/まま)部屋になだれ込んだ。 2) 彼女は何を聞いても、顔を(背ける→    )なり、一言( )口を(開く→    )とはしなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) なり/なり/もの 2) なり/も/やっている(~うちに/~うちが→文型016) 281 ~なり(と) ・/~なり~なり/~でも 名詞・疑問詞:   ×     +  なり(と/とも) 動詞・形容詞:原形<ナ形ー×>    なり ~ なり                    でも ♪ 会話 ♪ 李 :ぼんやり立ってないで、ほかの人の仕事を手伝うなりしたらどう?仕事はチームワークなんだから。 山田:全くその通り。 百恵:けなすなり何なりと御自由に。でも山田さん、あなたにだけは、そんなこと言われたくないわ。 李 :何だか、最近の百恵ちゃん、妙に怒りっぽいね。 ♯ 解説 ♭  「~なり/~なりと(も)」は「例えば~でも」と例示する副助詞です。例えば、「お茶なり(と)いかがですか」は「お茶をいかがですか」と限定するより、はるかに丁寧になります。また、「どこへなりと/いつなりと/どれなりと」のように疑問詞につくと、「どこへでも/いつでも/どれでも」と同じ意味を表します。これらの「なり」は丁寧な「でも」と考えていいでしょう。  なお、「~なり~なり」と重ねて使われると、「例えば~か~かを選んで」という選択を示す用法になります。文法上注意してほしいのは「~とか~とか」(⇔文型226)との違いです。「~とか~とか」は同じ例示でも選択ではありませんから、「お茶なりコーヒーなり、好きなものをどうぞ」とは言えますが、「お茶とかコーヒーとか、好きなものをどうぞ」とは言えません。→例題1) § 例文 § 1.御用の際は何なりとお申し付けください。 2.娘の海外留学については、私も父親として心配で経験者の方に相談するなりしたものです。 3.そんなに食べないでいると体に毒ですよ。せめて味噌汁なりとも召し上がれ。 4.焼いて食うなり煮て食うなり、好きなようにしろ。 5.ファックスでなり電話でなり、ご連絡くだされば、いつでもお伺いします。 ★ 例題 ★ 1) 君にあげた(からには/からといって)、人にやる(とか/なり)捨てる(とか/なり)、それは君の勝手だ。 2) どこへ( )( )と行くがいい。もう親でも(ない→    )ば子でも( )( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(従属句の主語=が)/や否や(異主語)/まま(→文型406) 2) 背けた(=~したまま)/も/開こう(→文型441) 282 何と言っても~/何と言う~ 何と言っても ~ に限る/に越したことはない  ・          ほど~はない 何と言う   ~ だろう/ことだろう      ・          んだ/ことか ♪ 会話 ♪ 李 :何と言っても、家族ほど大切なものはないと思うよ。 山田:会社も国も、いざとなったら当てにはならないって言いたいんだね。 百恵:何という過激な御発言! 李 :そうさ、会社や国が面倒を見てくれるって考える日本人の方がおかしいんだよ。 ♯ 解説 ♭  これらは文法的機能を持つ陳述副詞で、形も似ていて混同しやすいものなので、ここで取り上げました。  「何と言っても~」は「いろいろ取り上げる例はあるが、その中で一番いいのは、~」という意味を表すもので、後件には「~に限る」(→文型297)、「~に越したことはない」(→文型309)や「~ほど~はない」(→文型395)などの最高程度や最前の選択を表す表現と呼応します。  一方、「何と言う~」は、驚き・感嘆・失望などの感情を強調する語で、後件では「~だろう」「~んだ」「~ことだろ/~ことか」(→文型079)などと呼応します。 § 例文 § 1.何と言っても、人命ほど尊いものはないでしょう。 2.「百聞は一見にしかず」と言うじゃないか。何と言っても自分の目で見て確かめるに越したことはないよ。 3.おいしい料理は数々あるが、何と言ってもお袋の味が一番だ。 4.お前という奴は、何と言う親不孝者なんだ。 5.何と言ううまい餃子なんだ。他の店のとは月とすっぽんだ。 ★ 例題 ★ 1) 君は、何と言う愚か(な/の)まねをして(くれた/もらった)んだ。我々の今までの苦労が台無し(にして/になって)しまったじゃないか。 2) 何と言っても、母親( )( )子供の( )( )に 自己犠牲的になれる存在は(ある→    )だろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) からには(~からには→文型056)/なり/なり 2) なり(「でも」も可)/知なければ(→文型427)/ない 283 何となく~/何とはなしに~/何だか~ 何となく    ~     ・ 何とはなしに 何だか     ~     ・ ♪ 会話 ♪ 李 :今度の会社の人事、何となく割り切れないなあ。 山田:社長の身内が副社長に昇進したこと? 百恵:同感。身びいきが過ぎる気がするわ。それに、女性が管理職になかなかなれないのも腑に落ちないわ。 李 :口では国際化とか何とか言っていても、何だか体質的には何も変わっていないみたいに感じるよ。 ♯ 解説 ♭  「何となく/何とはなしに」は理由がはっきりしないが引き起こされる感情や感覚、或いは無意識のうちに起こった行為や現象のときに使われる副詞です。「何だか」は疑問を表す「か」が付いているように、理由がはっきりしないが引き起こされる感情や感覚に使われますが、何か疑念を抱くときに使う副詞です。語感の違いはありますが、どちらも使える場合があります。   何となく落ちつかない。(漠然)   何だか落ちつかない。 (疑念)  しかし、意味上、「何だか」が使えない用例も出てきます。→例題1)   何となく(×何だか)一日が過ぎた。 § 例文 § 1.聞くともなく聞いていたが、おもしろい話なので、私もつい何となく、身を乗り出してしまった。\ 2.隠していても、何とはなしに態度に出るものだし、何となくわかるものさ。 3.話し合っているうちに、何となく私が責任者を引き受ける羽目になった。 4.何だか胸騒ぎがする。妻の身に何かあったのではなかろうか。 5.何だか幽霊でも出そうな気味の悪い場所だね。 ★ 例題 ★ 1) 卒業(してから/した後で)、彼とは(何となく/何だ か)行き来も(ない→   )なり、音信も途絶えた。 2) 何だか急に(暗い→   )なってきたが、まさか雨 が(降る→   )出すんじゃあ( )( )だろうな。 (^^)前課の解答(^^) 1) な(ナ形)/くれた/になって 2) ほど(~ほど~はない→文型395)/ために(目的)/ない 284 何ら~ない/何らの~ない 何ら      ~  はない 何らの+名詞     もない            も ~ ない ♪ 会話 ♪ 真理:課長、佐藤さんから、課主催の新入社員歓迎レセプションについての連絡を受けられましたか? 課長:えっ?僕は何らの連絡も受けていないよ。 真理:おかしいわ。課長のご都合さえよければ、来週の金曜日にしようと話し合っていたのに。 課長:じゃ、その日で何ら問題はないと彼に伝えてくれ。 ♯ 解説 ♭  「何ら/何らの」は常に文末で否定形(「ない」形)と呼応して、「何一つ~ない」「少しも~ない」と同じ意味を表します。この「何ら」は話者の否定や拒絶の感情が強く出る副詞ですから、話者と無関係な客観現象の説明に使うと不自然になります。   私とは全然(○少しも/○何ら)関係がない。   最近は全然(○少しも/×何ら)雨が降らない。  類義表現についてみると、「全然~ない」は制約がありませんが、「少しも~ない」は数量や程度を問題にするときに使うものなので、用法に制約があります。   ずいぶん探したが、その品は全然(×少しも/×何ら)売っていない。 § 例文 § 1.彼と付きあっても、何ら得るところはない。 2.原告の証言には何らの疑いを差しはさむ余地もない。 3.天に誓って、私には何ら恥じるところはない。 4.最近の彼の作品はマンネリ気味だね。従来の作品と何ら変わり映えがしない。 5.みんな彼女にお熱のようだけど、僕は何らの興味もわかないね。 ★ 例題 ★ 1) 「便りのないのはいい知らせ」と言うが、(それにしては/それにしても)、タイに(行く/行った)きり五年も何ら音さたが(ある/ない)のは、ちょっとおかしい。 2) あなたは自分と何らの関わりも( )( )他人( )ため( )、どうしてそんなに真剣になれるんですか? (^^)前課の解答(^^) 1) てから(→文型178/~した・後で→文型013)/何となく/なく 2) 暗く(イ形+なる)/降り(~出す→文型137)/ない 285 ~に~/~に~て/~に~を重ねて 動詞A:[ます]形  + に + 動詞A:て形                      た形 + 名詞 名詞A: × + に + 名詞B 名詞A: × + に + 名詞A: × + を重ねて ♪ 会話 ♪ 李 :昨夜は山田と飲みに飲んで、気がついたら駅のベンチに寝ていてね。電車がなくなっていたら大事だった。 良子:もう若くないのですから、気をつけてくださいよ。よりによって、ドライブの前日に深酒だなんて。 李 :残業続きで無理に無理を重ねていたから、つい飲みたくなってね。今日の運転は君が代わってくれよ。\ ♯ 解説 ♭  副助詞「に」は列挙・累加する表現で、名詞につくときは「~に加えて」と考えるといいでしょう。「と」と「に」を比較すると、「に」は密着し累加されるのですが、「と」は単なる並列です。従って、人の服装を表すときは例文1のように「AにB」の形が使われます。また、パンの上にバターを塗ったトーストは、「パンにバター」であって、「パンとバター」ではありません。  この他に「~に~を重ねて」のように同じ名詞を繰り返したり、或いは「~に~て」のように、同じ動詞を繰り返して、「~して、また~する」という動作が激しく行われたことを表す程度の累加表現を作ります。動作の反復だけを言うのなら「~ては~ては」(→文型188)がありますが、例えば、「書いては破り、破ってはまた書き」と「書きに書いて」を比べたとき、「~ては~ては」は反復に、「~に~て」は程度の激しさに焦点があります。 § 例文 § 1.その男は黒のジーンズに白いセーターを着ていた。 2.「鬼に金棒」という慣用語は、これ以上強いものはないというたとえです。 3.待ちに待った息子の帰国の日が、いよいよ近づいた。 4.飛行機の出発の刻限が近づいているのに、成田に向かう途中で渋滞に巻き込まれ、私は焦りに焦った。 5.苦労に苦労を重ねて勝ち取った今の地位を、手放してなるものか。 ★ 例題 ★ 1) 長年(にわたって/にかけて)研究(に/と)研究を重ね、実用化に成功した(の/こと)がこの製品だ。 2) (走る→   )に走って、やっと駅に(着く→   )ときには、電車はもう(出る→   )後だった。 (^^)前課の解答(^^) 1) それにしても(→文型316)/行った(~きり→文型064)/ない 2) ない/の(目的:N+のために)/に 286 *~に当たって/*~に当たり 名詞: ×  +  に当たって(は) 動詞:原形     に当たり           に当たっての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 佐藤:部屋ももう契約済みだし、新生活を始めるに当たって、そろそろ必要なものをそろえなくてはね。 真理:家財道具から妻としての心得まで、「嫁ぐに当たって」と母が書いてくれたメモがあるの。 佐藤:どれどれ、見せて。さすが年の功だね。はっは、「人前では夫を立てなさい」って一項が特にいい。 ♯ 解説 ♭  「~に当たって」は「~する前に」のグループに属します。しかし、話者が具体的行動がはじまる、その直前と感じる場合に使われますから、「私は結婚する前に証券会社に勤めていました」のような例では使えません。一方、「~するまえに」は以前でさえあれば、一年前のことでも、もっと前のことでも使えます。→例題1)  これ以外にも、以前を表す類義文型に「~に際して」(→文型310)や「~に先だって」(→文型311)がありますから、各項を参照してください。         図あり   § 例文 § 1.開会に当たり、一言ご挨拶を述べさせていただきます。 2.競技大会開催に当たっての注意をしたいと思う。 3.卒業に当たって、みんなで記念文集でも作りませんか。 4.アパートに入居するに当たり、隣近所に挨拶回りをするのは日本の習慣です。 5.この高層ビルの設計に当たっては、震度八の地震にも耐えられるよう検討に検討を重ねました。 ★ 例題 ★ 1) もし近くにお越し(に当たって/に際して/の際)は、(きっと/ぜひ)私どもの家にも、お(立ち寄って/立ち寄り)ください。 2) 就職( )当たっては、今( )( )の学生気分をきっぱり捨てて、社会人としての自覚を持つ( )( )に。 (^^)前課の解答(^^) 1) にわたって(→文型057)/に/の(=物) 2) 走り/着いた(時制に注意)/出た(「~した後」の形) 287 ~にあって 名詞: ×  +  にあって      ・           にあっては           にあっても     ・ ♪ 会話 ♪ 山田:この会社創立以来の非常時にあっても取り乱さないのだから、本当にうちの部長は肝がすわっている。 佐藤:それにひきかえ他の幹部連中ときたら、責任逃れをしたり、右往左往したり。 山田:当社にあって、このような事態に対応できるのは、やはりあの部長をおいてほかにないよ。 ♯ 解説 ♭  「~にあって」は動作が行われる状況・時・場面を表し、格助詞「で」や「~において」(→文型291)に置き換えることができます。しかし、この「~にあって」は「~において」より用法に制約があります。  例えば以下の用例ですが、「~にあって」は「自らの身が~に在って」という意味なので、上例のように特定の場所を客観的に叙述するときは使えません。下例ではどちらも使えますが、「~において」は客観的立場に立った叙述で、「~にあって」は話者自身が現代という時代に生きていて、その実感を述べる表現です。   今日講堂で(・において/×にあって)、全校討論会が開かれます。   現代では(・においては/・にあっては)、男女平等は時代の趨勢です。 § 例文 § 1.いかなる苦境にあっても、希望を見失わないことだ。 2.この不況下にあって、大学生の就職難は一段と厳しさを増してきた。 3.今重要なのは、この状況にあって誰の責任かを論ずることではなく、協力してどう活路を開くかにある。 4.あの老人こそ、野にあって政界を裏で操る戦後政治の黒幕である。\ 5.いつどこにあっても、僕は君のことを見守っているよ。 ★ 例題 ★ 1) ストレス(による/における)病気というのは、この現代(にあって/によって)は避け(にくい/がたい)現象だろう。 2) 戦時下( )あって、議会は力を失い、軍部の権限は(強い→   )まる一方( )あった。 (^^)前課の解答(^^) 1) の際/是非(依頼・希望は「是非」)/立ち寄り(敬語→文型019) 2) に/まで/よう(~ように→文型443) 288 ~に合わせて/~合わせる/~合う 名詞:   ×   +  に合わせて  ・ 動詞:[ます]形  +  合う     ・             合わせる ♪ 会話 ♪ 部長:みんな示し合わせたように黙り込んでいるが、意見はないのか。 佐藤:会社の新方針に合わせて宣伝企画を練り直すのは、今からではとても間に合いません。 李 :出演者のことや、いろんな問題が絡み合っていて、その折り合いがつきません。放映は三日後です。 ♯ 解説 ♭  他動詞「合わせる」から発生したのが「~に合わせて」で、「~に調和させて/~に一致させて」という意味を表します。この文型は「~に応じて」(⇔文型292)や「~に沿って」(⇔文型321)と類義文型になります。   お客様の御希望に合わせて(・に応じて/・に沿って)・・・  これ以外に、自動詞「合う」は「話し合う/押し合う/殴り合う/愛し合う/助け合う…」のように、相互行為を表す多くの複合動詞を作ります。他動詞「合わせる」も、「組み合わせる/混ぜ合わせる」や「打ち合わせる/待ち合わせる」のように、事物や行為や内容を一致させる意味の複合動詞を作ります。 § 例文 § 1.さあ、みんな、リズムに合わせて手を叩きましょう。 2.カラオケの伴奏に合わせて歌うのは、慣れないうちはうまくいかないものだ。 3.身長や体型などに合わせて、服装をデザインする。 4.料理の取り合わせも各種ございまして、御予算に合わせて、お好きなコースをお選びいただけます。 5.君はいつも上司の意見に合わせて、それに付和雷同しているが、今日はもっと本音で話し合おうじゃないか。 ★ 例題 ★ 1) 待ち(合わせ/合い)は、東京駅九時に(する/しよう)。皆、その時間(に応じて/に合わせて)来てくれ。 2) いつも大勢( )合わせて、仲間外れになる( )を(避けたい→     )がる傾向が日本人にはある。 (^^)前課の解答(^^) 1) による(原因→文型346)/にあって/がたい(不可能→文型034) 2) に/強(~まる→文型413)/で(だった→であった) 289 ~に至って~した/~に至った 名詞: ×  + に至った       ・ 動詞:原形    に至って  ~ した ・ ♪ 会話 ♪ 李 :昨日はうちの坊主が、夕食時間になっても学校から戻らず、九時を過ぎるに至ってようやく帰宅してね。 百恵:誘拐でもされたかと心配だったでしょう。最近は物騒な事件がいろいろ起こっているから。 李 :もはや警察に連絡するしかないと覚悟を決めたら、玄関が開いてね。とたんに気が抜けたよ。 ♯ 解説 ♭  「~に至る」は「~になる」を更に強調した表現で、変化の結果、最終的にある状況・事態に達するという意味を表します。   深夜に至っても会議は続いた。  →深夜になっても会議は続いた。  ここから派生する「~に至って~した」文型は、「Aという状況になって、ついに/やっとBした」という意味を表しますが、多くは「状況Aに迫られ嫌々Bした」ことに対する失望や不満や怒り感情が現れます。  注意してほしいのは「~に至って~した」と「~に至っては~ない」(→文型290)の文末の違いです。これについては次の項を参照してください。→例題1)2) § 例文 § 1.日本経済は1950年代の前半には、戦前並の水準に回復するに至った。 2.試行錯誤を繰り返し、改良に改良を重ねながら、ついにコンピューターは実用化されるに至った。 3.学生達も受験を目前にするに至って、やっとやる気になった。 4.いじめによる自殺が社会問題化するに至って、やっと文部省は重い腰を上げた。 5.A銀行が倒産するに至って、人々は事態の深刻さに気づいた。 ★ 例題 ★ 1) 妻にまで(去る/去られる)に及んで、(やっと/ついに)自分の愚かさを悟るに(達した/至った)。 2) 最近( )なって、画面上の作品の著作権問題がクローズアップ(する→  )( )至った。 (^^)前課の解答(^^) 1) 合わせ/しよう/合わせて(~に応じて→文型292) 2) に/の/避けた(感情形容詞の語幹+~がる) 290 ~に至っては/~に至ると 名詞:×   +  に至っては ~ ない 動詞:原形     に至ると           に至っても ♪ 会話 ♪ 山田:株式投資も病膏肓に至ると、身を滅ぼし兼ねないよ。   何でも限度があろうというものさ。 李 :株価がここまで下落するに至っても、彼はまだあきらめていないらしいが、何か成算でもあるのかな? 山田:彼も「もうはまだなり、まだはもうなり」なんて口走るに至ってはおしまいだよ。 ♯ 解説 ♭  「~に至る」と「~になる」はほとんど同じ意味で、「ここに至っては」のような慣用表現以外は、入れ替えが可能です。  「~に至っては/~に至ると」は「~の状況・段階になってしまうと、もう~」と最終事態になったことを表します。そのため、多くの用例は文末で否定的事態(多くは「~ない」と呼応)になったことを表します。   貧しい農民になると(・に至ると/・ に至っては)食べ物すらない。  「~に至っても」は「~になっても、まだ/やはり~」を表す逆説表現になり、残念・仕方がない・憤りという感情が強調されます。 § 例文 § 1.孫に至っては、祖母の年齢どころか名前さえ知らない。 2.癌も全身に転移するに至ると、もはや打つ手はない。 3.別居するに至っては、離婚はもはや時間の問題だ。 4.A国の核実験は近隣諸国はもちろんのこと、日本に至っては全く寝耳に水で、予想だにしないことだった。 5.血清によるエイズの伝染が立証されるに至っても、厚生省はその責任を認めようとはしなかった。 ★ 例題 ★ 1) こう事故が(多発する/多発した)に至って(は/も)、原発の安全性に疑問を(抱き/抱か)ざるを得ない。 2) 首相が交代しても景気は好転(する→   )ず、株価に至って( )、ついに××円の大台を(大きい→   )割り込んだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 去られる(受身文)/やっと/至った(「達する」は数量) 2) に/される(~をクローズアップする→受身文)/に 291 *~において(は/も)/*~における/*~にて 名詞: ×  +  において(は/も)           における + 名詞           にて ♪ 会話 ♪ 李 :人生において一番大切なものは何なのだろう?あれもこれもで、ひとつには絞り切れないなあ。 良子:私は健康だと思うけど。次は家族、その次はお金、あれあれ、次々に出てきて頭がこんがらがってしまうわ。 李 :結論が出そうもないから、この件はこれにて一件落着にしようか。ところで今夜は何食べるの? ♯ 解説 ♭  「~において」は動作が行われる場所・場面・状況を表し、格助詞の「で」で置き換えられますが、全てが「で」の用法と対応しているのではありません。なお、格助詞「で」は元々「にて」が変化したものですが、今日では書面語です。   学校で(・において)勉強する。  <場所>   外交で(・において)腕をふるう。 <場面>   その時点で(・において)決める。 <状況>   手紙で(×において)知らせる。  <方法>   会社は5時で(×において)終わる。<刻限>   癌で(×において)死んだ。    <理由>   石で(×において)造られた家。  <材料>   全部で(×において)いくらですか。<限定> § 例文 § 1.日本社会において最重視されるのは、「和」と言えよう。 2.二一世紀においても、おそらく戦争と貧困はこの地球上からなくならないだろう。 3.国際経済における基本原則は市場を通じた公正な競争だ。 4.中国は古代において、紙・羅針盤・印刷・火薬など、人類史に残る四大発明を成し遂げた。 5.このまま人口増が続けば、遠くない将来において、食料・エネルギーの危機が現実のものとなるだろう。 ★ 例題 ★ 1) 彼は仕事の上(で/に)は厳しい人だが、私生活(にかけて/において)は、(良き/良く)パパである。 2) 社会( )おける女性の地位の向上は、今後一層進むだろう( )、また、そう(ある→   )べきだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) 多発する/は/抱か(~ざるを得ない→文型106) 2) せ(する→しない=せず)/は/大きく 292 *~に応じて/~に応えて 名詞: ×  +   に応じて/に応じ     ・            に応じた + 名詞            に応えて/に応え     ・            に応えた + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:今日は餃子パーティの日ね。 李 :材料は人数に応じて買えばいいよ。さあ、みんなの期待に応えて、家伝の餃子をごちそうしなくちゃ。 良子:買う物はいつもの通りでいいわね。 李 :ああ、ある物を買ってくればいいよ。状況に応じていろいろ工夫をこらすのが、料理の醍醐味なんだよ。 ♯ 解説 ♭  動詞「応じる」は「回答する・呼応する・対応する・適応する」などの意味を持った語で、「力には力で応じる/募集に応じる/招きに応じる…」のように使われます。一方、「応〔答)える」は「回答・呼応・報いる」などの意味を表します。  例えば、例文1~3の「~に応じて」は対応・適応を表していますが、この場合、「~に応えて」が使えません。「~に応えて」の用例の多くは例文4、5のように「期待・声援・恩義に報いる」の意味で使われていて、この場合は「~に応じて」が使えません。どちらもが使えるのは、「政府の呼びかけに応じて(・応えて)」のように、他からの働き掛けに呼応して、こちらも行動を起こす場合です。→例題1) § 例文 § 1.気候や風土に応じた(×に応えた)食文化が育つ。 2.健康のためには、体力に応じて(×に応えた)運動することが大切で、 無理をすると逆効果です。 3.社員の能力や業績に応じた(×に応えた)給料を支払う。 4.このような時こそ、先生のご恩に応え(×に応じ)、私たち教え子が協力すべきではなかろうか。 5.地元の声援に応えて(×に応じて)、そのA高野球チームは、ついに念願の甲子園出場を果たした。 ★ 例題 ★ 1) 御予算に(応じて/応えて)、御予約を承っ(ております/ている)ので、遠慮なくお(申しつけ/申しつけて)ください。 2) 経営者( )( )者は常に時代を先取りし、そのニーズ( )(応える→  )なくてはならない。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(=において)/において(=で)/良き(イ形の古い連体形) 2) に/し(~し、それに~→文型107)/ある(~べきだ→文型382) 293 *~に関わらず/*~に関わる 名詞   : ×  + に関わる    ・ ~か~か : ×    に関わらず   ・ ~かどうか: ×    に関わりなく ♪ 会話 ♪ 李 :今朝、電車が遅れるという車内放送があったら、みんなあちこちで携帯電話を取り出していたよ。 良子:周りが迷惑してるかどうかお構いなしに、車内で大声でしゃべるのはいただけないわ。 李 :わかるけど、今じゃビジネスかプライベートかに関わらず、携帯電話は必需品になっているんだ。 ♯ 解説 ♭  「~に関(かか)わる」は「~に関係する/~に影響する」という意味の語ですから、「~に関わらず/~に関わりなく」は「~に関係なく/~に影響されずに」という意味を表します。学習者が混同しやすいのは類形文型の逆説の「~にもかかわらず」(→文型343)です。全く意味が異なりますので注意しましょう。    晴雨にかかわらず、決行します。   <≒雨かどうかに関係なく>    雨にもかかわらず、外で遊んでいる。 <≒雨なのに> § 例文 § 1.命に関わるような病気じゃないから、安心してくれ。 2.こと米の自由化問題は、わが国の食糧自給政策に関わるもので、工業製品と同一視するのは間違いだ。 3.国籍・年齢・性別に関わらず、有能な人材は登用する。 4.会社の業績の良し悪しに関わりなく、最低限の生活ができる賃金は保障してもらいたい。 5.君が反対かどうかに関わらず、組織の大勢は既に決している。 ★ 例題 ★ 1) これは国家の存亡(に関わる/に関する)大事であり、野党(として/にとって)は、行政府の権限如何(にかかわらず/にもかかわらず)、臨時国会開催を要求する。 2) あなたが賛成する( )(する→    )かに(関わる→    )なく、私たちはこの方針でやります。 (^^)前課の解答(^^) 1) 応じて/ております(謙譲語)/申し付け(敬語形→文型019) 2) たる(~たる者→文型160)/に/応え(→文型271) 294 *~に限って/*~に限り 名詞:×  + に限って         に限り ♪ 会話 ♪ 李 :女性同伴に限り半額にサービスっていうのは、男女平等に反すると思わない? 百恵:そういう所に限って、案外高くつくのよ。美人同伴に限りなんて言うなら、私も行ってみたいけどさ。 山田:ずいぶん背負ってるね。少しお持ちしましょうか? 百恵:それ、どういう意味? ♯ 解説 ♭  動詞「限る」から生まれた文型で、「~だけ(特別に/絶対/決して)」と言う意味を表します。意味は限定の「~だけ」同じですが、「~だけ」より強い語感となります。そして、「~に限って~ない」のように文末で否定の意味や否定形(「~ない」形)と呼応して、「~だけは決して~ない」という意味を表します。   今日だけ(・に限って)特別に許します。   彼だけは(・に限って)そんな失敗をするはずがない。 § 例文 § 1.彼って忙しいときに限って、会社を休むんだね。 2.うちの子に限って、そんな悪いことをするはずがない。 3.当駅では朝夕の通勤時間帯に限りまして、禁煙タイムとなっておりますので、御協力をお願いいたします。 4.本日に限り、先着五十名様にコーヒーを無料サービスいたします。 5.「能ある鷹は爪を隠す」と言うが、力のない者に限って自分の力を見せびらかすものなのだ。 ★ 例題 ★ 1) 努力(する/しない)者(に限って/に限らず)、失敗 したとき、人のせいに(したい/したがる)ものさ。 2) いつも(早い→    )来る彼が、今日に限ってこ んなに遅い( )は、何( )あったのではないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) に関わる/として(→文型237)/にかかわらず 2) か/しない/関わり 296 ~に限らない/~に限ったことではない 名詞: ×  +  に限らない           に限ったことではない           に限ったことじゃない ♪ 会話 ♪ 李 :最近の援助交際とかに限ったことではないけど、若い人の性のモラルの乱れはひどいようだねえ。 百恵:何も若い人に限らないわよ。高校の先生がテレクラ通いだなんて、はっきり言って買春じゃない。 李 :学校で不まじめだとは限らないけど、子供を預ける気には到底なれないな。娘だったら特にね。 ♯ 解説 ♭  どちらも「~だけではなく、そのほかにもある」という意味を表しますが、「~に限ったことではない」は「~に限らない」よりも強調された表現になりますから、「決して・絶対」などの副詞と呼応させるときはぴったりします。  なお、この文型は名詞としか接続できない制約があるので、通常の会話では「~だけではない」を使えばいいでしょう。また、類型文型に「~とは限らない」(→文型244)がありますが、「全てがそうではなく、例外もある」という意味ですから、用法が異なります。→例題1)   生活が大変なのは君に限らない(×とは限らない)。   金持ちが誰でも幸せとは限らない(×に限らない)。 § 例文 § 1.後継者不足で悩んでいるのは、農家に限らない。 2.いじめや校内暴力は、何も日本一国に限ったことではない。 3.老後の生活に不安を感じているのは、君に限らないよ。 4.彼が人の意見に耳を傾けないのは、今日に限ったことじゃない。 5.あなたに限ったことじゃないけれど、男の人ってどうしてそんなに見栄や面子に拘るの? ★ 例題 ★ 1) 学校嫌いは不登校の子供たち(に限らない/とは限らない)。まじめに(見る/見える)子供達の方が、むしろ爆発寸前にまで(追いつめて/追いつめられて)いる。 2) 辛くて汚い仕事を(嫌だ→  )がる( )は、現代の若者に限ったことでは(ない→   )かろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) に限らず/にとって(→文型331)/にくい(→文型306) 2) 限ら/な「~的」はナ形)/強まり(~つつある→文型171) 297 ~に限る 名詞    :    ×        + に限る 動詞・形容詞:原形<ナ形ー×>/ない形 ♪ 会話 ♪ 李 :やばい!右折できるのは路線バスに限るって書いてあるのに、うっかり見落として曲がっちゃった。 良子:警官がいなければ、何をやってもいいなんて考えないでね。交通法規を守って安全運転するに限るわ。\ 李 :日本は交通標識がやたら多くて、見きれないよ。標識は瞬間に判断できる簡単なものに限るよ。 ♯ 解説 ♭  「~に限る」は例文1、2のように「~だけだ」と同じ限定の意味を表します。更にそこから派生して、例文3~5のように「~(の)が一番いい」という話者の判断や印象を表すようになります。後者は「~に越したことはない」(→文型309)と同じ意味を表しますが、「~に越したことはない」は相手に対する勧告の表現で、ほとんど「~した方がいい」(→文型388)と同じ意味を表しています。一方、「~に限る」は自分の印象や感想ですから、使い分けが必要な場合も生じます。→例題1)   何と言っても、やはり歌は演歌に限る(?に越したことはない)よ。   遅れてはいけないから、早めに出かけるに越したことはない(△に限る)。 § 例文 § 1.貸しマンション・1DK。ただし、女性に限る。 2.一人当たりの予算は、二万円に限られている。 3.疲れたときは何も考えず、ゆっくり休むに限ります。 4.接客サービスが似たり寄ったりなら、ホテルは安いに限るよ。 5.無理はしないに限る。無理はきっとどこかで破綻するからね。 ★ 例題 ★ 1) (何と/いくら)言っても、夏は冷たいビールに(越したことはない/限る)よ。いやあ、うまい!生き返る(そうだ/ようだ/らしい)。 2) 嘘は(言う→     )に限る。さもないと嘘を隠す( )( )に、嘘( )嘘を重ねることになる。 (^^)前課の解答(^^) 1) に限らない/見える(自V)/追い詰められて(受身文) 2) 嫌(第三者の感情)/の/な(なかろう=ないだろう) 298 *~にかけては/~に賭けて(も) 名詞: ×  +  にかけては         ・           にかけても           にかけましては           にかけちゃ           に賭けて(も)       ・ ♪ 会話 ♪ 李 :餃子づくりにかけては、僕の右に出る奴は、そうざらにはいないよ。まあ中華料理なら自信があるがね。 良子:うぬぼれにかけてはじゃないの? 李 :先日も玄人はだしだって、Aホテルの主任コックにほめられたんだよ。会社を辞めて、うちに来いってね。 良子:はっは、「井の中の蛙、大海を知らず」ってとこね。 ♯ 解説 ♭  「~にかけては」は「~に関しては/~の分野では」の意味ですが、必ず述部で「自信がある/一番~だ/非常に優れている」など優れた点を取り上げるのが特徴で、自分の能力を誇ったり、相手の能力を賞賛するときに使う文型です。  一方、同音の「賭ける」という動詞があって、そこから「~にかけても」という文型が生まれます。これは「命・名誉・威信・信用・面子・面目・~の名…」などについて、述部では決意・誓約を表します。この二つは意味は全く異なりますが、平仮名で書いたときは同形・同音になりますから、注意しましょう。→例題1) § 例文 § 1.あの人は野生動物の生態研究にかけては、知る人ぞ知る第一人者だ。 2.あなたを愛することにかけては、私は他の誰にも負けない。 3.中国語にかけましては、いささか自信がございます。 4.命にかけても、あなたをお守りいたします。 5.会社の信用にかけても、そのような裏談合はしていないと断言します。 ★ 例題 ★ 1) 国家の威信にかけて(は/も)、この度のようなテロ事件(にかけて/に対して)は、毅然たる態度(に/で)臨むと、首相は政府声明を発表した。 2) わが社( )あって、部下の統率力にかけて( )、ま た企画力にかけて( )、彼( )及ぶ者はいない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 何と/限る/ようだ(身体感覚は「~ようだ」)) 2) 言わない/ため(目的)/に(→文型285) 299 ~にかこつけて/~を口実に(して) 名詞: ×  +  にかこつけて           にかこつける           を口実に(して)           を口実にする ♪ 会話 ♪ 李 :確かに昨日は午前様だったけど、人の弱みにかこつけて、家事を全部押し付けるのはいかがなものか? 良子:弱みと感じるのは、ほかにも後ろめたいところがあるからじゃないの?香水のにおいもしてたわよ。 李 :今日は旗色が悪いや。さーてと、何か口実にすることないかな?仕事にでもかこつけて逃げ出すか。 ♯ 解説 ♭  動詞「かこつける」は「口実にする」と同義で、どちらも「~を(嘘の/表向きの)理由に~する」という意味を表します。簡単に言えば、嘘の理由を言ったり、無理に理由をこじつけることです。→例題1)   病気を理由に欠席した。  →病気を口実にして欠席した。  →病気にかこつけて欠席した。  類似表現に「~ を大義名分に」がありますが、「開発を大義名分に自然環境を破壊する」や「革命を大義名分にテロ行為をする」のように、社会的・政治的な行為に使うことが多いでしょう。 § 例文 § 1.病気にかこつけて、学校をずる休みした。 2.彼は職場のつき合いにかこつけては、毎晩のようにお目当てのホステスのいる店に通っている。 3.彼はいつも何かにかこつけて、嫌な仕事を他人に押しつける。 4.出張を口実に浮気旅行をしていたなんて、もし妻に知られたら、それこそただでは済まない。 5.今度は何を口実にする気だい?ネタも切れたんじゃないの? ★ 例題 ★ 1) 君の言っているのは、何もかもこじつけだ。(要するに/ただし)接待に(口実に/かこつけて)、会社の金を自分の遊興費に当てていた(だけ/きり)じゃないか。 2) (ある→    )ことか、安全保障( )口実にして、憲法改正を(図る→   )としている政治家がいる。 (^^)前課の解答(^^) 1) も/に対して(→文型322)/で 2) に(~にあって→文型287)/も/も/に 300 ~に難くない/*~やすい/*~よい 動詞:ます形  +  やすい   ・            よい 名詞: ×   +  に難くない ・ 動詞:原形 -------------------------------------------------------------------------------- ♪ 会話 ♪ 李 :あの国の現在の孤立と苦境は、察するに難くないよ。でも、起こるべくして起こったことだ。 山田:君に言わせれば、当然の報いというわけかい。それでは、どうすべきだったと言うんだい? 李 :過去を詮索してもはじまらないよ。でも必死で打開策を模索していることだけは想像するに難くないよ。 ♯ 解説 ♭  「~やすい」は対象の性質を客観的に表す表現で、「書きやすいペン・折れやすいペン」のように、いい場合にも悪い場合にも使えます。しかし、「~よい」は「折れやすいペン→×折れいいペン」のように、「良い・快適だ・楽だ」など常に良い評価にしか使われません。この対義語が「~にくい」(→文型306)です。  一方、「~に難くない」は心理・思考面を表す動詞「想像する/察する/理解する/同情する…」や名詞に接続し、容易に推察できるという意味を表します。同情や共感が表れる表現です。ですから、例文4、5のような客観事実を述べる文では「~に難くない」は使えません。この対義語が「~難い」(→文型034)です。→例題1)  理解しやすい内容  <内容が平明>  理解に難くない内容 <同情・共感> § 例文 § 1.豊かな社会に憧れる開発途上国の人々の気持ちは、理解するに難くない。 2.カルト教団に息子・娘を奪われた親たちの嘆きは、察するに難くない。 3.祖国が民族に別れて争う悲劇は、想像に難くない。 4.この小説はわかりやすい言葉で書かれているから、外国人にも読みやすい。 5.社会施設も整っていて環境も良く、住み良い街ですね。 ★ 例題 ★ 1) あの鬼社長が、料理を作るのが趣味だった(なんか/なんて)、(想像する/想像し)(に難くない/難い)ね。 2) 子供の心は(傷つく→    )やすいから、子供の前( )言い争いを(する→   )りしない方がいい。 (^^)前課の解答(^^) 1) 要するに/かこつけて/だけ(~した・きり→文型064)
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2006-5-2 20:49:40 | 显示全部楼层
301 ~にかまけて 名詞: ×  +  にかまけて ♪ 会話 ♪ 山田:趣味もほどほどだね。彼みたいに将棋に病みつきになると、夢の中でも将棋の駒がちらつくそうだ。 李 :将棋にかまけて、仕事がおざなりになっては困るね。 山田:彼の頭の中は、寝ても覚めても将棋だけさ。 李 :勝負事は凝ると親の死に目にも会えないって言うからねえ。彼もその口か。 ♯ 解説 ♭  「~にかまけて」は「~に熱中し過ぎて/~に忙し過ぎて/~に没頭し過ぎて」などの意味があります。そのため後件では、「しなければならないことをしない/ほかのことを顧みなくなる」などの悪い結果が引き起こされたことを表します。  この「~にかまけて」と対照的なのが「~に(も)かまわず」(→文型302)で、これは「~を気にしないで/~を無視して」という意味を表しています。   商売にかまけて、家を顧みない。<没頭・熱中>   商売にかまわず、遊んでいる。 <無視・放置> § 例文 § 1.うちの子はサッカーにかまけて、少しも勉強しない。 2.子供にかまけて、旦那のことがお座なりになりがちだ。 3.仕事にかまけて、家庭のことをほったらかしにしておくと、奥さんに逃げられちゃうわよ。 4.うちの女房は自然食の店とかボランティアとか、そんなことばかりにかまけて、家のことを何にもしない。 5.家事や育児にかまけて、長い間、自分をふりかえる余裕もなかった。 ★ 例題 ★ 1) 私は会社のことばかり(にかまけて/にかまわず)、父親(にとって/として)の役目を果たして(きた/こなかった)。 2) 教師で(ある→   )ながら、人の子の教育( )かまけて自分の子供( )遊んでやることも忘れがちだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) なんて(→文型274)/想像し/難い(→文型034) 2) 傷つき/で/した(~たりする→文型158) 302 *~にかまわず/*~もかまわず 名詞 : ×  +  にかまわず(に)            もかまわず(に)            にもかまわず(に) (注:「相手かまわず・辺りかまわず・委細かまわず・なりふりかまわず」 のように助詞を省略した慣用語がある。) ♪ 会話 ♪ 李 :緑のおばさんの制止にもかまわず、赤信号でも突っ走る大人がいるけど、子供の教育上よろしくないね。 良子:本当ね。子供はそれを見て、どう感じてるのかしら?悪い大人の真似はしてほしくないわ。 李 :自分の子供の目の前でも、同じことをするのだろうか?まあ格好の反面教師にはなるかもね。 ♯ 解説 ♭  「かまう」という動詞は「気にする/拘る」を意味する語で、例文1のように単独でも使われます。そして、「~に(も)かまわず/~もかまわず」は「~を気にしないで/~に拘らないで」を意味する文型となります。  類義表現に「~をよそに」(→文型484)、「~を顧みず」(→文型459)がありますから、関連項目を参照してください。また類型文型に「~にもかかわらず」(→文型293)や「~にかかわらず」(→文型343)などがあって混同しやすいですから注意しましょう。→例題1)  なお、この「かまう」という動詞は、ほかにも「~てもかまわない」(→文型200)や「~にかまってはいられない」などの文型も派生させます。   自分のことで精一杯で、他人のことにかまっていられない。 § 例文 § 1.他人のことにかまう暇があったら、自分の頭の上のハエを追え。 2.私にかまわず、どうぞ先に行ってください。 3.なりふりかまわず、母は私たちを育てるために働いた。 4.愛する子の遺体を前に、母親は人目もかまわずに、泣き崩れていた。 5.あいつはいつもこちらの都合もかまわず、いきなりわが家にやってくる。 ★ 例題 ★ 1) あんな男(なんか/なんて)(にかまわず/にかかわらず)、もっと自分(を/が)幸せになることを考えろよ。 2) 君は周囲の雑音に(かまう→    )ず、予定( )とおり、ことを(進める→   )なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) にかまけて/として(→文型237)/こなかった(→文型181) 2) あり(逆説→文型270)/に/と 303 *~にかわって/*~にかわり/~にかえて 名詞: ×  +  にかわって           にかわり           にかわりまして           にかわる + 名詞           にかえて ♪ 会話 ♪ 李 :今度の土曜日、君にかわって僕が小平の授業参観に行くよ。たまには父親らしいことをしなくてはね。 良子:6年5組の教室は、今月から一階にかわって二階になってるから、間違えないでね。 李 :相変わらず父親の参加は少ないんだろうね。この前なんか、お母さんたちの中で僕一人だったからねえ。 ♯ 解説 ♭  自動詞「か(代/替/換)わる」から作られた文型です。「~にかわって」は、人または国・会社など組織体を表す名詞につくと、「~の代理として/~と交代して」という意味を持ちます。その場合は「~のかわりに」(→文型060)に置き換えられます。しかし、「~のかわりに」は代用や代償を表す表現がありますが、「~にかわって」にはありません。   社長のかわりに(・にかわって)専務が挨拶する。   箸のかわりに(×にかわって)スプーンを使う。<代用>   先日のかわりに(×にかわって)今日は僕がおごるよ。<代償>  他動詞「かえる」は、例文5のような慣用的言い回しのほかに、「張り替える/買い換える/取り替える/履きかえる/塗り替える/書き換える/作り替える…」などの交換を意味する複合動詞を作ります。→例題1) § 例文 § 1.首相にかわって、外相が外国の来賓を出迎えた。 2.いかにロボットが優秀とはいえ、ロボットが人間にかわって主役になるわけではあるまい。 3.主催者一同にかわりまして、厚く御礼申し上げます。 4.21世紀は欧米にかわり、アジアが世界をリードする時代の幕開けとなるだろう。 5.これをもって、御挨拶にかえさせていただきます。 ★ 例題 ★ 1) アメリカ式自由化とは、言い(換われば/換えれば)、共生共存(にかえて/にかわって)弱肉強食が社会原理(とする/となる)ことではなかろうか。 2) 病身の母親( )かわって、長女( )ある彼女が、母親代わりに幼い兄弟の面倒を(みる→   )きた。 (^^)前課の解答(^^) 1) なんか(→文型274)/にかまわず/が(~が~になる) 2) かまわず/の(→文型225)/進め(V〔ます〕形+なさい) 304 *~に関して/*~に関する/~にまつわる 名詞: ×  +  に関して(は/も)           に関し           に関しちゃ<口>           に関する + 名詞           にまつわる + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:団地の盆踊り大会に関するアンケートがあったので、条件付きで開催に賛成しておいたわ。 李 :盆踊りにまつわるトラブルはいろいろあるようだけど、どんな条件を書いたの? 良子:開催時間に関して、いくつかお願いしておいたわ。 李 :確かにあまり夜遅くまでだと近所迷惑にもなるしね。 ♯ 解説 ♭  「~に関する」は「~に関係する事柄や内容を語ると~」という意味を表します。書面や、改まった会話や演説、学術方面で使われることが多いでしょう。なお、「~に関して」の丁寧体に「~に関しまして」があります。  「~に関して」と「~について」(→文型325)の違いについて語れば、右の図の黒丸に限定して述べるのが「~について」、少し関連分野を広げて述べるのが「~に関して」で、数の点々部に相当します。なお、「~にまつわる」は「絡み付く」と言う意味の語で、そこから起こる様々なことを取り上げて外の曲線範囲まで述べます。        図あり   § 例文 § 1.政府は○○事件の真相に関し、国会で調査報告を明らかにすると表明した。 2.このプロジェクトに関しては一切の責任は私が負っている。 3.最近、日本に関する書籍は多くあるが、どれも大同小異で、「当たらずと言えども遠からず」という類のものだ。 4.ソ連邦崩壊にまつわる謎めいた話は多くある。 5.この湖にまつわる伝説のひとつに、湖の主である大蛇と村の娘の恋愛物語がある。 ★ 例題 ★ 1) 日本(に関する/における)留学生の生活実態(に関して/において)、詳しい調査報告書(を/が)出された。 2) 彼はいつもマイペースを(崩す→   )ず、周囲の評価( )関しては気にも(とめる→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 換えれば/にかわって/となる(「~を~とする」「~が~となる」) 2) に/で/みて(継続の「~てくる」→文型181) 305 *~に決まっている/*~に違いない 名詞    :    ×    +  に決まっている 動詞・形容詞:原形<ナ形ー×>    に決まってる<口>                    に違いない                    に相違ない ♪ 会話 ♪ 李 :今度の土日は雨に違いないよ。夏休みに入ってこのかた、週末はいつも天気が悪いな。 良子:小平もかわいそうに、せっかく家族で海に行けるって、ずっと前から楽しみにしてるのに。 小平:大丈夫だよ。照る照る坊主を作ったから、絶対に晴れるに決まってるよ。 ♯ 解説 ♭  「~に決まっている」は何か根拠となるものがあって、「~なることは必然だ」という断定表現です。「~に違いない」は自分の確信を表す主観的な表現で、「~に相違ない」はその書面語です。ほとんどの場合は置き換えできるのですが、「~が、しかし~」と対立する事態を述べるときは「~に決まっている」が使えません。   父親としては娘の結婚は嬉しい    ○に違いないが、    ×に決まっているが、   反面、寂しくもあるだろう。  なお、類義文型の「~はずだ」(→文型367)は常に期待の感情が表れますから、次のような例で「~はずだ」を使うと父の死を期待していることになります。   もう父の病気は治らないに違いない(?はずだ)。 § 例文 § 1.彼は失業中だし、旅行する余裕なんてないに決まっている。 2.あいつの言うことなんか、信じられるものか。ほらに決まってる。 3.彼は今のところ猫をかぶっているが、そのうち化けの皮がはがれて、正体を現すに決まっている。 4.虫の知らせと言うか、胸騒ぎがする。娘の身に何かよくないことがあったに違いない。 5.彼の才能をもってすれば、将来成功するに相違ない。 ★ 例題 ★ 1) 子供にそんなお菓子を(見/見せ)(たら/ても)、(ほ しがる/ほしい)に決まっている。 2) 今はわかって(もらう→    )なくても、いつかは君( )も私の気持ちがわかる日が来る( )違いない。 (^^)前課の解答(^^) 1) における/に関する/が(受身文:~を出す→~が出される) 2) 崩さ(→文型121)/に/とめない(慣用語:気にとめる→) 307 *~に比べて/*~と比べて 名詞: ×  +  に比べて           に比べると           と比べて           と比べると ♪ 会話 ♪ 李 :去年に比べて、15センチも背が伸びてるのか! 良子:この勢いだと、2、3年でパパを追い越しそうね。それにパパに比べると足が長いし、かっこういいわ。 李 :僕たちの時代とは栄養が違うよ。まあ、その栄養がもっと頭の方に回ってくれたらいいんだけどね。 小平:蛙の子は蛙さ。「瓜の蔓に茄子はならぬ」ってさ。 ♯ 解説 ♭  「比べる」には相互に関連することを比較するときと、相反する物を対比するときがあります。前者を比較、後者を対比と呼ぶことにします。  「と」は双方向、「に」は一方向なので、この違いが「~と比べて」と「~に比べて」の違いに現れてきます。一般に、例文1、2のように、ABのどちらにも関連する同類の事柄を相互に比較するときは「Aと比べてB」が使われますが、例文5のようにABが対立する関係がある事柄を対比するときは「Aに比べてB」が使われます。どちらにも解釈できる例文2、3のような例もありますが、比較は「~と比べて」、対比は「~に比べて」と覚えてください。→例題1) § 例文 § 1.以前の製品と比べて、新製品は機能面の充実という点で数段勝っている。 2.翻訳を原文と比べると、やはり微妙な点で違いがある。 3.子供の頃と比べると、確かに生活は豊かになったが、果たして、それで幸せは増したのだろうか。 4.今年は天候に恵まれたおかげか、昨年に比べて米が豊作だ。 5.人生は喜びに比べて苦しみの方が多いのかもしれない。 ★ 例題 ★ 1) 男(に比べて/に反して)女の方が、生命力が強いと(言っている/言われている)が、それは男の方が幼児死亡率が高い(こと/もの)からもわかる。 2) 自分の子( )よその子( )比べて、あれこれ言う のは(やめる→  )方がいい。 (^^)前課の解答(^^) 1) たまっている(現在の状態)/づらい/しよう(提案) 2) 熱し(~やすい→文型000)/冷め/で(材料) 308 *~に加えて/*~に加え 名詞    : ×        + に加えて                    に加え 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> + の(・こと)に加えて                    の(・こと)に加え ♪ 会話 ♪ 李 :雨に加え風まで出てきたようだね。小平の照る照る坊主は効き目なしかい? 良子:小平の神経を逆なでするようなことを言わないで。 小平:気にしてないよ。いつものことだから。 李 :先週に加えて今週も週末が雨では、海の家だって泣きっ面に蜂だね。まあ、明日は出たとこ勝負で行こう。 ♯ 解説 ♭  「~に加えて」は累加・添加の表現になります。名詞としか結びつきませんが、「~上に」(→文型013)や「~し、それに」(→文型107)と同義表現です。「~だけでなく~も」(→文型363)のグループを使って同じ意味が表せる例も多いでしょう。   彼女は優しいことに加えて美しい。  =彼女は優しい上に美しい。  =彼女は優しいし、それに美しい。  =彼女は優しいばかりでなく美しい。 § 例文 § 1.家が手狭なことに加えまして子供も多く、騒々しいことこの上なしです。 2.大企業の社員は賃金が高いのに加えて休暇も多い。 3.日本は国土が狭いのに加えて資源も乏しく、貿易に頼らなければやっていけません。 4.退職してからというもの、毎日が暇なのに加えて交際も途絶え、生きる張り合いがなくなった。 5.彼女はその美貌に加えて才気煥発、その上人当たりもいい。 ★ 例題 ★ 1) この決算書は項目(は/が)整理されていないの(に反し/に加え)、計算も間違い(だらけ/まみれ)だ。 2) この子は人一倍食べる( )に加えて、体を動かそう( )(する→    )ので、肥満児になってしまった。 (^^)前課の解答(^^) 1) に比べて/言われている(→文型221)/こと(→文型082) 2) を/と/やめた(→文型388) 309 ~に越したことはない 名詞    :  ×       +  に越したことはない 動詞・形容詞:原形<ナ形ー×>        ない形 (注:「~のに越したことはない」の形も使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :お金を少し余分に持って行こう、用心に越したことはないからね。手元不如意じゃ安心して遊べないよ。 良子:ええ、でも、今月も貯金できそうもないわ。 李 :貯金するに越したことはないけど、生活も楽しまなければね。貯めるばかりが能じゃないよ。 小平:何をぐずぐずしてるの?早く出かけようよ。 ♯ 解説 ♭  「越す」には「勝る/秀でる」という意味もあり、「~に越したことはない」は「~するのが最善だ」という勧告の表現になります。動詞・形容詞や「Nである」などと結びつくとき、「~のに越したことはない」の形も使われます。  類義表現に「~方がいい」(→文型388)がありますが、この「~に越したことはない」はそれがベストという選択になります。ただ、どちらも入れ替え可能ですから、話者の判断で使い分ければいいでしょう。   早く行った方がいいよ。   早く行くに越したことはない。 § 例文 § 1.中国語を学ぶなら、中国人の先生に越したことはない。 2.お金はあるのに越したことはないが、お金のためにあくせくしたいとは思わない。 3.あなたがお口添えくださるなら、それに越したことはありません。 4.品質に違いがないなら、価格が安いに越したことはない。 5.直接会って話すに越したことはないが、電話でもかまわないだろう。 ★ 例題 ★ 1) 苦労は(する/しない)に越したことはないが、「苦労(ないで/なくして)喜び(が/も)なし」だよ。 2) 海外旅行( )は、いつ盗難に(遭う→     )とも限らないから、用心する( )越したことはない。 (^^)前課の解答(^^) 1) が(従属句の主語は「が」)/加え/だらけ(→文型155) 2) の/と(「~(よ)うとする」→文型441)/しない 310 *~に際して/*~に際し/*~に際しての 名詞: ×  +  に際して(は/も) 動詞:原形     に際し           に際しまして(は/も)           に際しちゃ<口>           に際しての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :危機に際しての対応マニュアルを、事前に準備しておくことは大切だよ。 山田:なければパニックになるだろうな。まあ、そんなことになってほしくないけど、転ばぬ先の杖だね。 李 :去年のぼや騒ぎの反省会に際し、部長から作成するよう指示があったよね。確か君の担当だろ? ♯ 解説 ♭  「~に際して」は「~するすぐ直前」を表し、「~に当たって」(→文型286)や「~に先だって」(→文型311)とほぼ同義表現です。そして、「開会に際して(・に当たって)一言ご挨拶を申し上げます」のようにどちらも使える用例も多いのですが、「~に際して」はより直前の行為を表す気持ちが強いので、下例のような時間にに幅がある例では不自然になります。  旅行 ○ に当たって     ○ に先立って     × に際して  何日もかけて綿密な計画を立てた。         図あり    § 例文 § 1.入居に際し隣近所に挨拶回りをするのは日本人の習慣だ。 2.卒業式を始めるに際しまして、当学院を代表して校長先生から祝辞をいただきます。 3.出国するに際して、税関で所持品の検査を受けた。 4.受験に際しての注意事項が書いてありますから、御一読ください。 5.君を部長に推薦するに際しては、僕も色々と骨を折ったことを忘れるなよ。 ★ 例題 ★ 1) この会議を(終わる/終える)(際に/に際し)、関係 各方面の(方々/人々)に心からお礼申し上げます。 2) 食事( )始める( )際して、胸( )手を合わせ て、神に感謝するのがキリスト教圏の人々の習わしだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) しない/なくして(→文型)/も 2) で/遭わない(~ないとも限らない→文型264)/に 311 *~に先立って/*~に先立ち 名詞: ×  +  に先立って 動詞:原形     に先立ち           に先立ちまして           に先立つ + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :新製品の販売開始に先立って、商品在庫をどれだけ積み増していくかは、本当に難しいよ。 山田:在庫を抱え込むと大変だからなあ。下手をすると次の新商品開発に先立つ資金ぐりがつかなくなる恐れだってあるしな。 李 :かといって、商品が足りなくなると追加生産が大変だよ。 ♯ 解説 ♭  「~に先立って/~に先立ち」は「~に当たって」(→文型286)とほぼ同義表現で相互に置き換えられる表現ですが、「~に先立って」は事前の準備という意味が強く、「~に先立って~ておく」と呼応することが多いでしょう。  また、例文5のように「~の先頭に立って」という意味を表したり、お金を表す「先立つもの」、先に死ぬを意味する「親に先立つ不幸」のような慣用的な言い方があります。   つきあいたいが、あいにく今日は先立つものがないんだ。   先立つ不孝をお許しください。 § 例文 § 1.披露宴を始めるに先立ちまして、媒酌人でもある社長から、お祝いの言葉をいただきたいと存じます。 2.出発に先立ち、忘れ物はないか、各自点検してほしい。 3.開演に先立ち、主催者を代表してご挨拶申し上げます。 4.明日の決勝戦に先立って、もう一度、作戦について意思統一を図りたい。 5.日本はアジア諸国に先立って非軍事平和国家の道を進み、模範となるべきだ。 ★ 例題 ★ 1) 競技を開始する(に先立って/にあって)、審判(に対して/として)、諸君に一言注意し(ておく/てある)。 2) 中華料理とは、調理( )先立つ下準備( )時間をかけ、そして一気に(作る→   )上げる火の芸術だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 終える(他V)/に際し(~際→文型098)/方々(敬語) 2) を/に/に 312 *~に従って/*~に従う  名詞: ×    +  に従って  動詞: 原形      に従い              に従う ♪ 会話 ♪ 李 :日本人は車も通っていないのに、赤信号の時、じっと待ってる人が多いね。律儀なのか、頭が固いのか? 良子:駄目よ、あなた。法規に従わなきゃ。年をとるに従って動作も鈍くなるし、事故でもあったら、お仕舞いよ。 李 :はいはい、でもこれ日本人の七不思議のひとつ。そのくせ、「旅の恥はかき捨て」なんだから。 ♯ 解説 ♭  「Aに従ってB」は、Aが変化するのに対応してBも変化することを表します。「~につれて」(→文型330)や、「~とともに」(→文型240)、「~に伴って」(→文型330)などとほぼ同義表現になりますが、「~に従って」は因果関係を強調することに特徴があります。また「従う」は多義語で、同じ形が現れても意味の異なるときもあります。   勉強しない。従って成績が悪い。 <~の後ろについて>   ガイドに従って奈良見物をする。 <接続詞=その結果/だから>   能力に従ってクラス分けをする。 <対応=によって/に応じて>   古人の筆法に従って字を書く。  <習う/模倣する>   上官に命令に従って行動する。  <服従> § 例文 § 1.私は軍人として、ただ国家の命ずるところに従うのみ。 2.時代の流れに逆らわず、流れに従って生きることも覚えなさい。 3.人は経験を積むに従って、思慮深くなる。 4.研究が進むに従って、人間の脳の持つ奥知れぬ神秘な世界が明らかになってきた。 5.上流に行くに従って、川幅が狭くなり、流れも急になってきた。 ★ 例題 ★ 1) 市民の自覚が(高まる/高める)と(共に/従って)、情報公開の要求が(強まって/強めて)きた。 2) イランという国を(知る→    )に従って、イスラム世界( )動かす原理( )見えてきた。 (^^)前課の解答(^^) 1) に先立って/として(→文型237)/ておく(=事前に~する) 2) に/に(~に~をかける)/作り(→文型003) 313 *~にしたら/~にすれば/~にしてみれば 名詞(人・組織): ×  +   にしたら                 にすれば                 にしてみれば                 にしてみりゃ<口> ♪ 会話 ♪ 李 :会社にしたら、年功序列制の下で高給をもらってる中高年層が、目の上のたんこぶなんだろうが・・・。 良子:でも、会社のために身を粉にして働いてきた彼らにしてみれば、これほど残酷な話はないわ。 李 :僕に言わせれば、盲目的に欧米型経営方式に追随する姿が情けないね。もっと誇りを持てといいたいよ。 ♯ 解説 ♭  「~にしたら/~にすれば/~にしてみれば」は「~の立場・視点に身を置いて見れば」という意味を表し、主として人を主題として取り上げる表現です。  これらの文型は「~としては」(→文型237)を使っても表せますが、中立的な「~としては」に比べて、「誰それの身になって考えれば」と同情や共感が多く現れる点が特徴でしょう。また文末では「~だろう/~かもしれない」など推量表現が多く現れます。 § 例文 § 1.彼にしたら、あのように言うしかなかったのだろう。 2.教師から頭ごなしに叱られたが、僕にすれば言い分もあった。 3.両親にしてみりゃ、自分の娘が「援助交際」をしていたなんて、寝耳に水だったろうさ。 4.車椅子の人にしてみれば、駅の階段や歩道橋は、そびえ立つ山のようなものだろう。 5.A国にしてみれば、米国の人権政策は内政干渉として目に映ることだろう。 ★ 例題 ★ 1) 所長(にして/になって)みれば、本社の命令(の/である)以上、(従う/従わない)わけにはいかなかった。 2) そんな所長( )したら、自殺が精いっぱいの会社に対して( )抗議(だ→   )のかもしれない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 高まる(→文型413)/共に/強まって(→文型413) 2) 知る/を(他V)/が(自V) 314 ~にして/~にして~(ら)れない  名詞: ×  +  にして            ・            にして、かつ~        ・ にして~(ら)れない     ・ にして、はじめて~(ら)れる ・ ♪ 会話 ♪ 山田:これは彼にして、はじめてできることです。とても素人とは思えません。正に玄人はだしですね。 課長:君にしては、珍しく手放しの褒め方だね。他人の良さが認められるのは、人間としての成長だよ。 山田:三十にして、ようやく人の苦労がわかるようになりましてね。私もそれなりの苦労はしたようです。 ♯ 解説 ♭  「~にして」の多くは「~で」「~でも」「~であって」に置き換えられる状況や場面や時を強調する表現になります。また、例文2のように「Aにして、(かつ/同時に)B」の形で、「Aでもあり(かつ/同時に)Bでもある」の意味を表します。文型として重要なのは「~でさえ~できない」に相当する「~にして~(ら)れない」と、例文4の「~であってこそ~できる」に相当する「~にして、はじめて~(ら)れる」でしょう。この二つの文型は口語でもよく使われます。  なお、「幸いにして/不幸にして/一瞬にして/緊急にして」などは語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.ローマは一日にしてならず。 2.彼は政治家にして、かつ敬虔なクリスチャンでもあった。 3.留学中は貧しくて食事も満足に食べられなかったが、今にして思えば、ひたすら勉強に専念できた幸せな時代だった。 4.このような偉業は、私心のない彼にして、はじめて成し遂げることができたのだ。 5.不幸中の幸いとでも言いましょうか、大事故にもかかわらず、主人は幸いにして軽いけがですみました。 ★ 例題 ★ 1) 孔子曰く「我四十(に/にして)惑わず」。でも僕は五十になっ(たら/ても)、(迷う/迷って)ばかりいる。 2) 会社の倒産で、彼が(築く→   )上げた富も地位も、一瞬( )して(崩れる→   )去った。 (^^)前課の解答(^^) 1) にして/である(→文型009)/従わない(→文型457) 2) に/の(→文型322)/だった 315 *~にしては/*~わりに(は) 名詞・それ :  ×          +  にしては 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーである>     にしちゃ <口> 名詞・そ  :  の          +  わりに(は) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー な >     わりにゃ <口> ♪ 会話 ♪ 李 :ここは免税店のわりに、交換レートがいいね。両替えで儲けようとしていないだけ、この店はまだ許せるな。 良子:あなたがそんなことを言うから、財布の紐がすっかり緩みっばなしよ。 李 :「後は野となれ、山となれ」さ。ただ、日本に着いてからの交通費だけは残しておいてよ。 ♯ 解説 ♭  「~にしては」と「~わりに」は接続の形に違いがありますが、どちらも「のに」系に属する逆説表現で、「当然の<結果や予想>に反して、事実は~」という意味を表します。常に一般常識や標準を念頭に置いて、実態がそれに反することを述べる点に特徴があります。そして、ここから作られるのが、接続詞「それにしては」「そのくせに」です。  注意する点は、「~わりに」は用法上の制限がないのですが、下のように前後の主語が異なるとき、「~にしては」が使えなくなることです。  親が苦労しているのに(・わりに/×にしては)子どもは気楽に遊んでいる。 § 例文 § 1.12歳という年齢にしちゃ、ひねた子だねえ。 2.スキーは初めてだと聞いていたが、それにしては、なかなかうまく滑るじゃないか。 3.あの子は親が教育熱心なわりに、余り勉強ができない。 4.君は食べるわりに太らないねえ。羨ましい限りだ。 5.彼は体が大きいが、そのわりにゃ力がないねえ。 ★ 例題 ★ 1) 「ここは銀座一の高級料理店だが、値段の(わりに/にしては)(おいしい/おいしくない)ねえ」  「(それにしては/それにしても)、コーヒー一杯が1200円とは驚くねえ」 2) 2年もアメリカ( )留学していたにして( )、君の英語は少しも上達して(いる→    )ねえ。 (^^)前課の解答(^^) 1) にして/ても(条件の逆説)/迷って(→文型362) 2) 築き/に/崩れ(V〔ます〕形+去る:奪い去る・消え去る) 316 ~にしても/それにしても  ・ 名詞・それ :    ×      +  にしても 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>     にしたって<口> ♪ 会話 ♪ 良子:遅いわね。お父さん、道に迷っているのかしら。 李 :うん。「駅に着いた」っていう電話があってから、もう三十分もたってるぞ。 良子:「ひとりで行けるから、迎えはいらない」なんて言ってたのにね。 李 :それにしても遅いよ。途中まで迎えにいってみようか。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げたのは既定条件の逆説「~にしても」で、眼前にある既定事実に立って、「~ことは認めるが、<予想・標準>以上に~」や、「~ことは認めるが、まだ/やはり~」を意味します。不足・不満、或いは感嘆などの感情が多く表れるのが、この文型の特徴です。この「~にしても」は「~にしては」(→文型315)と対照的になりますので、関連させて覚えましょう。  <予想・標準以上>   夏にしても、暑すぎる。   高校生にしても、漢字をよく知っている。  <予想・標準に反して>   夏にしては、涼しいね。   高校生にしては、漢字を知らない。 § 例文 § 1.やせたいにしたって、食事もしないのはよくないよ。 2.いくら頭にきたにしても、手をあげたのはやり過ぎだ。 3.まずいとまでは言わないにしても、とても商売になる代物じゃありませんね。 4.それにしても、突然どうしたの?学校をやめるなんて。 5.試合に負けたのはしかたがないが、それにしても一点もとれないとは情けない。 ★ 例題 ★ 1) 「大山君って、元相撲部(だけあって/ばかりに)、いい体格をしてるね」「う~ん。でも(それにしては/それにしても)少し(太る/太り)過ぎているんじゃない?」 2) 寿命で死ぬのはしかたがないにしても、彼(みたいだ→    )交通事故( )死ぬ( )は嫌だなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) わりに(→文型000)/おいしくない/それにしても 2) に/は/いない 317 ~にしても ・ 名詞    :   × / である   + にしても 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/である>  にしたって<口> ♪ 会話 ♪ 父 :いやあ、すまん、すまん。 良子:何があったんじゃないかと心配してたのよ。遅れるにしても、電話ぐらいは入れられたでしょうに。 父 :小平にみやげをかっておったんじゃ。ほれ、駅前に大きなおもちゃ屋があるじゃろ。 良子:おもちゃ?小平はもう中学生なのよ。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げたのは仮定条件の逆説「(たとえ)~にしても」で、前件が未成立である点が既定条件・逆説の「~にしても」(→ 文型 316)と異なります。  この「~にしても」は「~としても」も使える表現ですが、「~としても」は客観的・中立的ですが、「~にしても」には話者の様々な感情が多く含まれる点で違いがあるでしょう。ですから、感情は強く表す次のような例文は「~にしても」の方が多く使われます。   彼女が誰と結婚するにしても(△としても)、僕には関係ないことさ。 § 例文 § 1.冗談にしても、ほどがある。口を慎め。 2.たとえ何十万かの金が借りられたにしても、焼け石に水だ。 3.十分ではないにしても、これだけの金があれば、なんとか2、3年は暮らしていけるでしょう。 4.仮ににっちもさっちも行かなくなり、僕に泣きつくようなことがあったにしても、僕は知らないよ。 5.百歩譲って、仮に君の主張が正しいにしても、議決されたことに従わないのは民主主義のルールに反することだ。 ★ 例題 ★ 1) 家を買うにし(たら/ても)、せめて頭金(ほど/ぐらい)は貯め(ていない/ておかない)と、後で困るよ。 2) 人の(生きる→   )方は様々である( )しても、求めている( )は幸せになることだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) だけあって(→文型132)/それにしても/太り(→文型117) 2) みたいに(→文型408)/で(理由)/の(→文型354) 318 *~にしろ/*~にせよ 名詞・疑問詞:   × / である     +  にせよ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/である>     にしろ ♪ 会話 ♪ 良子:行くにせよ行かないにせよ、連絡だけは入れておかないとまずいわ。お友達を足止めした形になってるし。 李 :熱は下がったけど、子供は体力がないから、無理は禁物だよ。いずれにしろ今日はやめよう。 良子:こぶつきはどこに出かけるにしろ、ままならないわね。でも、親の心子知らず、すやすや寝てるわ。 ♯ 解説 ♭  「~にしろ/~にせよ」は「~にしても」(→文型316・317)と同じで、「~ても」に相当する既定・仮定の逆説表現です。この文型は「いつ・どこ・だれ・なに」など疑問詞を受ける場合があり、その場合「いつにせよ=いつでも/だれにせよ=だれでも」のように、例外なく全てを表す「でも」に相当します。  注意してほしいのは、逆説「ても」は常に前件の後で後件が発生しますが、「~にせよ/~にしろ/~にしても/~としても」は普通形接続なので、どのような場合でも使えることです。例えば下の例文の「乗るにせよ、~」(原形+にせよ)は乗る以前のことを表していますから、「~ても」が使えません。→例題2)   10時の電車に乗ったにせよ(・乗っても)、もう間に合わないよ。   10時の電車に乗るにせよ(×乗っても)、9時だから出かけた方がいい。 § 例文 § 1.子供のいたずらにせよ、少し悪質だ。 2.相手を批判するにせよ、人格攻撃は厳に慎むべきだ。 3.あなたが直接手を下したのではないにせよ、犯行に手を貸したことは疑いの余地がない。 4.「損して得取れ」、どんな商売をするにしろ、目先の利益だけ追っていては、成功はおぼつかない。 5.「溺れる者は藁をもつかむ」でね、誰にせよ、困ったときはなりふりにかまってはいられないものさ。 ★ 例題 ★ 1) 故意ではなかった(にしたら/にしろ)、相手にけがを(した/させた)のだから、治療費は払う(はず/べき)だ。 2) 会社を(辞める→    )にせよ、後の計画をしっかり(立てる→    )からに(する→  )なさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) ても/ぐらい(最低限→文型072)/ておかない(「~ておく」→) 2) 生き(~方→文型435)/に/の(「~のは~ことだ」文) 319 *~にしろ~にしろ/*~にせよ~にせよ 名詞    :   × / である    + にせよ~にせよ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/である>   にせよ~ないにせよ                        にしろ~にしろ                        にせよ~ないにせよ (注:「にしても~(ない)にしても」も同じ意味を表す) ♪ 会話 ♪ 百恵:会社命令であるにせよないにせよ、法律に触れるようなことはまずいわ。手が後ろにまわっちやうわよ。 李 :ライバル会社の情報を買うぐらいのこと、違法とまでは言えないんじゃないか。 佐藤:生き馬の目を抜く企業競争下では、違法であるにしろないにしろ、喉から手が出るほどほしい情報だね。 ♯ 解説 ♭  「~にせよ/~にしろ」(→文型318)から生まれた並立助詞の用法で、「(Aの場合)も(Bの場合)も」どちらの場合でも成立するという意味を表します。「~にせよ~ないにせよ」「~にしろ~ないにしろ」と肯定と否定を組み合わせる形も多く使われます。→例題2)  類似表現に「~といい~といい」(→文型206)がありますが、この表現は名詞としか結びつきませんし、肯定と否定を組み合わせることもできません。もう一つの類義表現に 「~(よ)うが~(よ)うが/~(よ)うが~まいが」、「~(よ)うと~(よ)うと/~(よ)うと~まいと」(→文型438)がありますが、「A、Bと無関係に~」を強調します。→例題1) § 例文 § 1.本当にしろ嘘にしろ、実物を見てからのことにしよう。 2.賛成だったにせよ反対だったにせよ、一旦決まったからには、君にも従ってもらう。 3.高いにしろ安いにしろ、必要な物は買わざるを得ない。 4.この地球上の生物は、植物にせよ動物にせよ、水と空気がなければ生きてゆけない。 5.この経営方針を続けるにせよ続けないにせよ、いずれにせよ従来のやり方の踏襲では限界がある。 ★ 例題 ★ 1) その話に乗る(にしろ/といい)、(乗る/乗らない)(にしろ/といい)、まず詳しい話を聞いてからにしよう。\ 2) 今が不幸であるにせよ( )( )にせよ、親から授かった命を粗末( )(する→    )はならないよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) にしろ/させた(使役文:~に~をさせる)/べき(→文型382) 2) 辞める(~その前に)/立てて/し(命令:V〔ます〕形+なさい) 320 *~に過ぎない 名詞    :   ×        + に過ぎない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> ♪ 会話 ♪ 李 :大分登ったけど、まだ全体の三分二に過ぎないよ。 良子:あの頂上の先は下りしかないのよね? 李 :「当たらずと言えども遠からず」だね。下りの途中に、小さなこぶがあるだけだったと記憶しているよ。 良子:ぬか喜びにならなければいいんだけど。 李 :それは杞憂に過ぎないよ。 ♯ 解説 ♭  「~に過ぎない」は「~以上ではない/~でしかない」という意味を表しますが、程度表現の一種で、常にその程度は低い、取るに足りない、大したことはないという軽視の感情を含んでいます。この点が強い断定を表す「~に他ならない」(→文型341)との違いで、「~に他ならない」は他を否定して「(ほかの何ものでもなく)正に~そのものだ」と強く肯定する表現ですから、例えば例文1~4 用例では置き換えが可能ですが、例文5を「当然のことをしたに他ならない」は傲慢で不自然な言い方になりますし、例題1)のような場合は誤文になります。→例題1) § 例文 § 1.その話は、単なる噂に過ぎなかった。 2.この世の栄華は、しょせん泡沫の夢に過ぎない。 3.いくら性能がいいコンピューターでも、人間が使ってやらなければ、ただの箱に過ぎない。 4.今回発覚した政財界ぐるみの汚職事件は、氷山の一角に過ぎない。 5.いえいえ、お礼には及びません。当然のことをしたに過ぎません。 ★ 例題 ★ 1) 英語が(話す/話せる)とは言っても、簡単な会話(は/が)できるに(過ぎません/他なりません)。 2) 君の話は言い訳( )過ぎない。私が知りたいのは、君がどのよう( )責任をとるつもり( )、その一点だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) にしろ/乗らない/にしろ\ 2) ない/に(ナ形+する)/して(~てはならない→文型195) 321 *~にそって/*~沿い 名詞: ×  +  にそって           にそい           にそう 名詞: ×  +  沿い           沿いの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :今夜は散歩がてら、どこかに飯を食いに行かないか。   線路沿いの銀杏並木が紅葉できれいだったよ。 良子:少し遠いから、自転車にしない? 李 :では、奥様の仰せにそって、しかるべく。 良子:じゃ、小平にも言わなくちゃ。 小平:聞いてたよ。僕、ハンバーグがいいな。 ♯ 解説 ♭  「沿う/添う」は右の図のように「Aに沿ってB」は拠り所Aから離れないで並行して何かBをすることを表します。前に来るのは、基本となる政策・方針・指針・主旨など一連のものです。      図あり   類義文型に「~に基づいて/~に即して/~に踏まえて」(→文型344)などがありますが、Bは拠り所Aに従属した関係にあり、「~に沿って」のように柔軟に対応するものではありません。「~に沿って」は主体を保持しながら不即不離で対応するという意味を表しています。その他、「沿い」には「川沿い・道沿い・道路沿い…」などの接尾語の用法があります。 § 例文 § 1.この川沿いに一時間ほど歩くと、駅に着きます。 2.会社の経営方針にそわないことは、上司として認めるわけにはいかない。 3.何事も当初の基本計画にそって、進めてほしい。 4.なるべく御希望にそえるよう、努力いたします。 5.改革開放政策にそって、大規模な外国資本の導入が決定された。 ★ 例題 ★ 1) 市財政が極めて厳しい(際/折)から、現状(では/には)皆さんの御要望にそい(兼ねます/兼ねません)。 2) 人生の達人は時代の流れ( )逆らわず、その流れに(そう→   )ながら、しかも自分が(流す→    )ことがない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 話せる/が/過ぎません(~に他ならない→文型341) 2) に/に/か(疑問句の「か」) 322 *~に対して(は/も) ・/*~に対する 名詞: ×  +  に対して(は/も)           に対し           に対しまして(は/も)           に対する + 名詞           に対しての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :最近さあ、僕に対して少し厳し過ぎない?それにひきかえ、小平にはずいぶん甘いよなあ。 良子:子供に対しては寛容にと心がけてるだけだわ。 李 :たまには僕にも子供みたいに甘えさせてよ。 良子:あしからず、私はあなたのママじゃないわ。 李 :やれやれ。 ♯ 解説 ♭  「~に対して」は動作の向かう相手や対象を表します。中国語や韓国語では「~について」(→文型325)も「~にとって」(→文型331)も漢字「対」を使って表すので、辞書で引いてもよくわからないという話を多く聞きます。例えば、下のような用例では「~に対して」と「~について」で大きな違いは現れません。   教師が学生の質問について答える。   教師が学生の質問に対して答える。  しかし、次のように対象が「人」の時には、意味が全く異なってきます。   息子について話す。<息子のことを誰かに話す>   息子に対して話す。<何かを息子に話す> § 例文 § 1.政府は記者団に対し、組閣の概要について説明した。 2.ASEAN諸国は第三世界に対して、影響力を拡大しつつある。 3.え~、今までの経過報告に対しまして(⇔につきまして)、御質問があれば何でもどうぞ。 4.不登校は単に学校に対する拒絶反応ではなくて、大人社会に対する子供たちの異議申し立てではなかろうか。 5.さんざん世話になったこの俺に対して、よくもそんな恩を仇で返すような真似ができたものだな。 ★ 例題 ★ 1) 目上(について/に対して)敬語を使うのは、(ひとり/ひとつ)日本だけの社会習慣(だ/ではない)。 2) 僕が子供の頃は、親( )対して口答えでも(する→   )ものなら、(ぶん殴られる→      )ものだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 折り(→文型023)/では(条件限定)/兼ねます(→文型044) 2) に/そい(→文型270)/流される(受身文:「~を流す」→) 323 ~にたえる/~にたえない 名詞: ×    +  にたえる   ・ 動詞:原形       にたえない  ・ ♪ 会話 ♪ 佐藤:この度のことに関しましては、皆さんの御期待に応えることができず、慙愧にたえません。 李 :上手の手から水が漏れることもあるさ。 課長:この任にたえ得るのは君をおいていないのだから、もうしばらく続投してくれたまえ。七転び八起きだよ。 佐藤:そう言っていただき、感謝にたえません。 ♯ 解説 ♭  「た(耐/堪)える」は「忍耐する・その任務に応じられる・値する」などの意味を持ちます。多くは「~にたえない」の形で使われ、例文1~3のように「感謝・無念・遺憾・悲しみ・同情・~の念・~の思い…」などの感情を表す名詞について「我慢できないほど~だ」という感情を強調する程度表現となります。この場合、「~を禁じ得ない」(→文型464)とほぼ同義表現になります。  また、「動詞・原形+たえる」は例文4、5のように「~するだけの価値がある」という意味も表します。話者自身の主観的評価・心情的気持ちを伝える文型ですが、「~に値する/~に値しない」(→文型324)とほぼ同義表現になります。   同情にたえない。 ≒ 同情を禁じ得ない。   聞くにたえない。 ≒ 聞くに値しない § 例文 § 1.会社ぐるみで選挙違反をするなど、誠に怒りにたえない。\ 2.手塩にかけて育てた愛弟子がこんな死に方をするなんて、無念にたえない。 3.飢餓が蔓延するこの国の惨状を見るにつけ、隣国の一人として同情にたえない。 4.部長の歌は聞くにたえないものだったよ。 5.多くの絵画が陳列されているが、鑑賞にたえる作品というのは少なく、多くは見るにたえない代物ばかりだ。 ★ 例題 ★ 1) 最近の女性週刊誌(といったら/ときたら)、読む(にたえる/にたえない)もの(だけだ/ばかりだ)。 2) 相次ぐ政界の不祥事( )関しては、一政治家( )して、誠に遺憾の念に(たえる→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に対して/ひとり(ひとり~だけだ→文型138)/ではない 2) に/しよう(→文型448)/ぶん殴られた(過去回想→文型422) 324 ~に足る/~に値する/~に恥じない  名詞: ×   + に足る/に足りる/に値する  ・  動詞:原形     に足りない/に値しない    ・            に恥じない          ・ (注:「~に足る」と同じ意味で「~に足りる」も使われる) ♪ 会話 ♪ 部長:今回の第二次OA化計画は、会社全体の予算の半分を投ずるに値する重要な計画だよ 課長:確かにそう思いますが、大量の余剰人員が生じますから、労働組合の総反発を招き兼ねません。 部長:そのことは問題にするに足りない。労務の話では、もう組合との調整はついているとのことだ。 ♯ 解説 ♭  「足る」は「必要量が十分ある/十分条件を満たす」などの意味の動詞で、この「~に足る」は「~に値する」と同じ意味を表すようになります。この文型は必要な質・量・条件などを満たすかどうかという基準に立ち理性的評価を加える文型です。  同義表現に「~にたえる/~にたえない」(→文型323)がありますが、「聞くにたえない」は「聞いているのが我慢できないほどひどい」という感情や心情を表しますから、外部の対象を客観的に評価し、相手に伝えるときは「~に足る/~に足りない」か「~に値する/~に値しない」の方が適切になります。   満足するに足る(×にたえる)成績だった。  なお、「~に恥じない」は、多くは「~の名に恥じない/~たるに恥じない」の形で使われ、「その価値が十分ある」という意味を表します。→例題1) § 例文 § 1.「男として生まれたからには、人生を賭けるに足りる仕事がやってみたいねえ」「女だって同じよ」 2.取るに足りぬことを、重大事かの如く騒ぎ立てるな。 3.彼みたいな小物が我々に対して何を言おうがわめこうが、恐れるに足りない。 4.最近の小説は低俗で、読むに値しないものばかりだ。 5.日本の能は幽玄の名に恥じない深みがあり、一見に値する。 ★ 例題 ★ 1) 「この件、彼ひとりに任せ(てあって/ておいて)大丈夫でしょうか」「大丈夫。彼は我々(は/が)信頼する(に堪える/に足る)男だよ」 2) さすが日本きって( )名酒( )( )あって、その名に(恥じる→  )芳醇な香りと味わいがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) ときたら(→文型229)/に堪えない/ばかり(→文型362) 2) に(→文型304)/と(→文型237)/たえません 325 *~について/*~につき/*~についての 名詞: ×        +  について(は/も) 助詞:~か/~かどうか     につき                 につきまして(は/も)                 についちゃ<口>                 についての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:ごみ焼却場の建設について、住民アンケートがあったから、条件つきで賛成しておいたわ。 李 :ごみ対策は、どの自治体でも尻に火がついているからね。それで、どんな条件をつけたの? 良子:環境アセスメントについての説明会を要求したわ。 李 :そこが肝心だね。 ♯ 解説 ♭  「~について」は取り上げた対象について具体的に内容を述べる用法で、ほぼ「~に関して」と同義表現ですが、日常会話では「~について」が普通です。この「~について」は「~にとって」(→文型322)や「~に対して」(→文型331)と混同しやすいので、使い分けに注意しましょう。→例題1)   日本について語る。<~のことを具体的に>   日本に関して語る。<~に関係することを広く取り上げて>  なお、「~について/~につき」には、例文5のように割合を表す用法があり、そのときは以下の表現と入れ替えが可能です。   時給は1時間  につき   1200円です。           について           に対し           あたり § 例文 § 1.この件について、君の率直な意見を聞かせてくれ。 2.不都合なことについては、君はいつも口をつぐむんだね。 3.君の功績についちゃ、僕たちも十分認めているんだよ。 4.机上の空論をもてあそばず、もっと地に足が着いた実行可能なことについて討論しないか。 5.一人につき(⇔について/⇔に対し/⇔あたり)50円の参観料をいただきます。 ★ 例題 ★ 1) ある宣教師から「人間(について/にとって)幸せとは何か(について/に対して)考えたことがありますか」と(尋ねた/尋ねられた)。 2) この法案が参議院で(可決する→      )( )否( )については、今は何とも判断がつきません。 (^^)前課の解答(^^) 1) ておいて(放置・放任の「ておく」)/が/足る 2) の(→文型061)/だけ(~だけあって→文型132)/恥じない 326 ~に次いで/~に次ぐ 名詞 : ×  +  に次いで       ・            に次ぎ 名詞A: ×  +  に次ぐ + 名詞A  ・ ♪ 会話 ♪ 真理:ねえ、見て見て、このポスター。 百恵:な~に? あら、また香港の歌手の来日公演ね。最近やけに多いわね。 真理:アメリカに次いで多いんじゃないかしら。 李 :確か中国語を勉強する人の数も、英語に次ぎ第二位だったんじゃなかった? ♯ 解説 ♭  「~に次いで/~に次ぐ」は例文1~3のように「すぐ後に続く」、或いは「程度や地位がすぐ下にある」を意味し、この表現は「~の次に」を使っても表せます。→例題2)   地震に次いで津波が起こる。=地震の次に津波が起こる。   大阪は東京に次ぐ大きな都会=大阪は東京の次ぎに大きな都会  その他、例文4、5のように、同じ名詞を「Aに次ぐA」の形で繰り返して、次から次へと連続して起こる事態を表す用法があります。→例題1) § 例文 § 1.自動車・電気製品に次いで精密機械が、日本の主な輸出品だ。 2.今や中国は、アメリカに次ぐスポーツ大国と言える。 3.大学入試は午前中に筆記試験が行われ、次いで午後から面接試験が行われることが多い。 4.連勝に次ぐ連勝で、あのチームは波に乗っている。\ 5.戦争に次ぐ戦争で国土は荒れ、多くの尊い人命が毎日のように奪われている。 ★ 例題 ★ 1) 悪いことは重なる(こと/もの)で、不幸(に次ぐ/に次いで)不幸(が/を)重なり、父も病に倒れた。 2) 現在、中国( )次に人口が多い( )はインドだが、近い将来には、インドの人口は中国を越すと(言って→      )いる。 (^^)前課の解答(^^) 1) にとって/について/尋ねられた(「~から~られる」受身文) 2) 可決される(~可決する→受身文)/か(→文型040)/か 327 ~につき 名詞:  ×  + につき ♪ 会話 ♪ 良子:このインスタント・ラーメン、二つにつき一つおまけになるみたいよ。買っとこうかしら。 李 :「売り出し中につき、出血大サービス」ってあるけど、安かろうまずかろうじゃかなわないよ。 良子:そうね。いつかの冷凍食品の二の舞は嫌だもんね。 李 :それにさ、毎日食べさせられる僕の身にもなってよ。 ♯ 解説 ♭  「~につき」は名詞に接続して「~という理由で」を表す接続助詞です。掲示物や手紙、通知文で多く使われる文章語で、日常会話ではあまり使われません。  格助詞の「~について/~につき」や、比率の「~につき」と混同しやすいので注意しましょう。   ただ今会議中につき、少々お待ちく ださい。   <理由>   会議の内容につき、書面にてお知ら せします。  <内容>   一時間につき千円の時給が支払われ ます。    <比率> § 例文 § 1.面会謝絶につき、入室はお断りします。 2.準備中につき、今しばらくお待ちください。 3.店内改装中につき、しばらく休業いたします。 4.工事中につき、御迷惑をおかけします。 5.この薬品は危険につき、取り扱い注意。 ★ 例題 ★ 1) 社長はただいま会議(中/最中)(について/につき)、秘書の私が、かわって御用件を(聞きます/承ります)。 2) お客様にはご迷惑をお(かける→   )しております。ただ今、連絡船は強風( )つき、運行を見合わせております。天候が(回復する→     )次第、出航の予定でございますが、今のところ、見通しは立っておりません。\ (^^)前課の解答(^^) 1) もの(ものだ→文型420)/に次ぐ/が(自V) 2) の/の(=国)/言われている(→文型221) 328 *~につけ/*~につけて(も) 名詞     : ×  +  につけ 動詞・イ形容詞:原形     につけて(も) (注:接続詞の形は「それにつけても」、「何かにつけ」は慣用) ♪ 会話 ♪ 李 :それにつけても景気が悪いなあ。商店街でも店を閉めてるところが増えたよ。 良子:デパートの売上げも長期低落傾向ね。みんな財布のひもが堅くなっているのよ。 李 :この事態を見るにつけ、バブルの頃が懐かしく思い出されるよ。まあ、はかない一炊の夢だったけど。 ♯ 解説 ♭  「~につけ/~につけて(も)」は「~すると、自然に~」を表す文型で、「~と、決まって/~と、いつも」や「~度に」(→文型151)と類義表現になります。この文型の特徴は後件に「思い出される/しのばれる/案じられる/よみがえる/感じられる」などの自発の動詞が多く現れることで、話者の感慨や感情を込めた自然・自発の時の表現です。そのため、この文型は後件で意志行為が表せませんが、「~と、いつも/~度に」はどんな場合にも使えます。  クリスマスになる   ○ 度に   ○ といつも/と決まって   × につけ  母はケーキを作ってくれた。 § 例文 § 1.今日の祖国の繁栄を思うにつけ、戦場に散っていった戦友のことが偲ばれる。 2.君は何かにつけて僕に辛くあたるが、何か僕に恨みでもあるのかい。 3.何事につけても「石の上にも三年」だよ。それが辛抱できないようで何も身につかない。 4.それにつけても思い出すのは初めて東京に来た日のことだ。 5.一人二人と友がこの世を去るにつけ、老いの寂しさを感じる。 ★ 例題 ★ 1) 寒い(にせよ/につけ)心配し、暑い(にせよ/につけ)心配し、母が子(を/と)思う愛は海より深い。 2) この写真を(見る→    )につけ、優しかった母の面影( )まぶた( )浮かんでくる。 (^^)前課の解答(^^) 1) 中(→文型162)/につき/承ります(謙譲語) 2) かけ(謙譲形→文型019)/に/回復し(~次第→文型110) 329 ~につけ~につけ 名詞     :  ×      + につけ ~ につけ 動詞・イ形容詞: 原形 ♪ 会話 ♪ 山田:良きにつけ悪しきにつけ、子は親から影響を受けるね。うちの姉など、口うるさいところが母そっくりだ。 李 :「この親にしてこの子あり」とは、けだし名言だな。 百恵:特に娘は年をとると母親に似ると言われるけど・・・。 李 :一方、息子の方は父親の背中を見て育つと言われるね。となると、僕の責任も重大だなあ。 ♯ 解説 ♭  「~につけ」(→文型328)から生まれた並立助詞の用法で、「AにつけBにつけ」と対になる語を重ねて、「~の時も~の時も~」を表します。後件では自然に引き起こされる事態が述べられます。そのため、後件で人為的な事柄は表せません。  問題になるのは「~にせよ~にせよ/~にしろ~にしろ」(→文型319)が同じような意味を表すことがあることです。これらは後件で自由に人の判断・推量・意志を表します。逆に言えば後件で自然・自発の事態を表すときは「~につけ~につけ」が適切で、「~にせよ~にせよ/~にしろ~にしろ」が不自然になります。→例題1)   雨につけ風つけ(×雨にせよ風にせよ)、故郷のことが思い出される。 § 例文 § 1.雨につけ風につけ、故郷のことが思い出される。 2.嬉しいにつけ悲しいにつけ、酒は心の友となる。 3.この庭に梅の花が咲くにつけ散るにつけ、思い出されるのは、若くして亡くなった娘のことだ。 4.楽しいにつけ悲しいにつけ、あなたと過ごした幾年月が懐かしく偲ばれる。 5.良きにつけ悪しきにつけ、親は巣立っていく子供を見守ることしかできない。 ★ 例題 ★ 1) いい(にしろ/につけ)悪い(にしろ/につけ)、もう(決定する/決定した)ことをとやかく言うな。 2) 祖国のニュースを見る( )つけ聞く( )つけ、国にいる妻子のことが(案じる→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) につけ/につけ/を 2) 見る/が/に(「まぶたに浮かぶ」は慣用的言い方) 330 *~につれて/*~に伴って/*~に伴う 名詞: ×  +  につれて 動詞:原形     につれ           に伴って           に伴い           に伴う + 名詞 ♪ 会話 ♪ 小孫:帰国されたと聞きましたが、いかがでしたか。 李 :まるで雨後の竹の子のようにビルが建設されていて、日本の不況など、どこ吹く風といった感じだったよ。 小孫:改革開放に伴う生活の変化も激しいでしょうねえ。 李 :うん。ただ、それにつれて拝金主義の風潮がはびこっていて、よき伝統が損なわれないかと気になったよ。 ♯ 解説 ♭  「AにつれてBする/Aに伴ってBする」は「Aが変わると、いっしょにBも変わる」という比例変化の表現を作ります。意味の差はほとんどありませんが、「~伴って」には「Aに伴う<名詞>」の形がありますが、「~につれて」には「Aにつれる<名詞>」の形がありません。また「~に伴って」には、例えば「地震に伴って(×につれて)津波が起こる」のように、併発・付随現象を表す用法がありますが、この場合は「~につれて」が使えません。→例題1)  ここではいくつかの同義表現の持つ語感の違いを述べておきましょう。   経済の発展     につれて<自然な変化>     に伴って<付随した変化>     とともに<同時進行の変化>     に従って<因果関係を強調>   人々の暮らしも良くなった。 § 例文 § 1.経験を積むにつれて、人は慎重になる。 2.国際化が進むにつれ、従来の教育の在り方についても、改革が迫らることだろう。 3.歌は世につれ、世は歌につれ。 4.医学の進歩に伴い人々の平均寿命も延びてきたが、それに伴う高齢者対策が焦眉の急となっている。 5.日本の円安不況に伴う消費の冷え込みが、アジア諸国の輸出不振をもたらし、更に金融不安を増幅している。 ★ 例題 ★ 1) 火山の噴火(につれて/に伴って)土石流(が/を)発 生し、次々に人家をのみ込んで(きた/いった)。 2) 年を(とる→  )につれ、物忘れが(ひどい→   )なり、朝、何を食べた( )さえ忘れる始末だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) にしろ(→文型319)/にしろ/決定した 2) に/に/案じられる(形は受身形だが自発動詞) 331 *~にとって(は/も)/*~にとり 名詞: ×  +  にとって(は/も)           にとりまして(は/も)           にとっちゃ<口>           にとっての + 名詞 ♪ 会話 ♪ 真理:A社のサッカー部に試合を申し込んだそうね。相手にとって不足はないでしょ? 李 :俺達にとっちゃ雪辱戦なんだ。前回優勝を鼻にかけてるんで、しゃくにさわってね。後には引けないんだ。 百恵:寄せ集めのチームじゃ、百に一つの勝ち目もないかもしれないけど、窮鼠猫を噛むってこともあるから。 ♯ 解説 ♭  「~にとって(は/も)/~にとり」は「~の立場・視点に立って言えば」を意味する表現で、広範に制約なく使える表現です。丁寧な言い方としては「~にとりまして」、口語として「~にとっちゃ」などがあります。  関連表現に「~にしたら/~にすれば/~にしてみれば」(→文型313)がありますが、これは主として人や擬人化できる組織(会社・国…)について、「誰それの身になって考えれば」と共感や同情を表す表現ですから、無生物を受ける場合や事態の客観描写には使えません。   それは学問の進歩にとって(×にしてみれば)、大きな貢献だ。 § 例文 § 1.それは私にとって、はじめての体験だった。 2.酒造りにとっては、水と米こそ命です。 4.あのような男と付き合いましても、私にとりましては一円の得にもなりません。 3.不毛な論争にはピリオドを打とう。我々にとって大切なのは、今、何をなすべきかということだ。 5.この話は、あなたにとっても私にとっても、悪い話じゃないと思いますがね。 ★ 例題 ★ 1) 現代人(として/にとって)パソコンや携帯電話などは、(今こそ/今や)(なくては/ないでは)ならない必需品だ。 2) 子供( )とって何よりも大切なことは、親から(愛する→     )( )( )だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) に伴って/が(自V)/いった(~ていく→文型177) 2) とる/ひどく(イ形+なる)/か(疑問句の「か」) 332 ~に(も)なく/~に(も)ない 名詞: ×  +  になく           にもなく           に(も)ない + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :小平がなついたせいか、お父様はいつになくお喜びだったね。 良子:あんなに嬉しそうな父の顔は私の記憶にないわ。目に入れても痛くないような可愛がりようって、あのことね。 李 :うん、僕もあんなに相好を崩されたお父様を見たのは初めてだ。 ♯ 解説 ♭  「~に(も)なく/~に(も)ない」は名詞を直接受けて、「普段の~と違って/一般の~とは思えない」という意味を表します。話者がいつもの状態や内容と異なる事態に直面したときに使う文型です。間違いが多く現れるのは、類形文型「~と(も)なく」(→文型252)との違いですが、「~と(も)なく」は疑問詞や疑問詞を含む名詞について不確かな状態を表したり、「見るともなく空の雲を見ていた」のように無意識の行為を表す表現です。   彼はいつにもなく上機嫌だった。<いつもと違って>   彼はいつともなくいなくなった。<いつとわからないうちに> § 例文 § 1.柄にもないことをするから、そんな失敗するんだよ。 2.我にもなく興奮して部下を大声で怒鳴ってしまった。 3.彼女はいつになくおめかしをして、そわそわと出掛けていった。 4.好天気に恵まれたおかげか、今年は例年になく、蜜柑が豊作だった。 5.普段は大きい口を叩いているくせに、いざとなると口ほどにもない奴だ。 ★ 例題 ★ 1) どうしたん(かい/だい)?いつ(となく/になく)今日の君(は/が)元気がないじゃないか。 2) 子供( )もなく(かわいい→    )げのない(生意気だ→     )口のきき方をする小僧だなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) にとって/今や/なくては(なくてはならない→文型333) 2) に/愛される(「~から~られる」受身文)/こと(→文型084) 333 ~になくてはならない/~に欠くことができない 名詞: ×  +  に(⇔にとって)なくてはならない           に(⇔にとって)欠くことができない           に(⇔にとって)欠かせない           に(⇔にとって)不可欠だ           に(⇔にとって)不可欠な + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :水は人間にとって欠くことができない物だよ。 良子:洗濯にもなくてはならないし、挙げだしたらきりがないわ。宗教でも汚れを清めるのに使うわね。 李 :ところで、昨日のことは水に流してよ。 良子:朝帰りのこと?だったら、おあいにく様。 李 :機嫌を直してくれよ。心を入れ替えるからさ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型はどれも「名詞+になくてはならない」或いは「名詞+にとってなくてはならない」などの形で接続し、「~に絶対必要だ/~に不可欠だ」という意味を表します。いろいろな同義文型がありますから、例を挙げておきます。   生活に絶対必要な物  =生活になくてなならない物  =生活に欠かせない物  =生活に不可欠な物 § 例文 § 1.彼はわが社にとってなくてはならない人材だ。 2.人間の体にとって、塩はなくてはならないものだ。 3.米は日本人になくてはならない主食であり、何としても自給体制は維持しなくてはならない。 4.日本料理に欠かせないものは、味噌と醤油でしょう。 5.開発途上国にとって、資金と技術面の国際協力は、経済成長に不可欠な要素だ。 ★ 例題 ★ 1) A社(で/と)の技術提携は、この新製品開発を進める上(に/で)、なくては(いけない/ならない)前提条件だ。 2) 人間社会にとって家族という( )( )は、これからもなくてはならない基礎単位( )(ある→   )続けるだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) だい(→文型129)/になく/は 2) に/かわい(~げ→文型076)/生意気な(ナ形) 334 ~に上る/~を下らない/~や~にとどまらない 数詞・数量を表す語: ×  +  に上る       ・                  を下らない     ・                  を越す       ・                  や~にとどまらない ・ ♪ 会話 ♪ 李 :今月は残業続きで、100時間を越しそうだよ。残業手当てだけも、20万を下らないだろうが・・・。 百恵:でも、連日はきついわね。 李 :うん、こんな調子が続くと、過労死し兼ねないよ。 百恵:お金にはかえられないものがあるもんね。 李 :全くその通り。 ♯ 解説 ♭  これらは数詞について、その数量がとても多いという気持ちで用いられることで共通しています。「~に上る」は数詞や「~以上/~の数」に接続して、「~に達する」という意味を表します。「~を下らない」は数詞について「~以下ではない/~より少なくない」という意味を表し、実際は「~を越す」(=それより多い)ことを暗示します。「~や~にとどまらない」は前に小さい数量、後ろにそれより一つ大きい数量を重ねて「それらの範囲に限れない」という意味を表しますが、どれも実際はもっと多いことを暗示します。 § 例文 § 1.今朝の新聞によると、某国内の宗教対立から生じた衝突によって、数千人に上る死傷者が出たそうだ。 2.サラ金から借りた金が積もりに積もって、元利をあわせて500万円に上っている。 3.○○証券の負債総額は、二千億円を下らないとのことだ。 4.毎年交通事故で死ぬ人の数は、二万や三万にとどまらない。 5.あの人はもう七十歳を越しているが、どこから見ても五十歳そこそこの若さだ。 ★ 例題 ★ 1) 噂(によって/によると)、彼が手にした遺産は、一億を(下らない/とどまらない)(ようだ/そうだ)。 2) この地球上( )毎年飢えの( )( )に死ぬ人の数は、相当の数( )上るだろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) と/で(~上で→文型013)/ならない 2) もの(→文型214)/で(「~である」体)/あり(→文型352) 335 ~には/~におかれましては 名詞(人・組織): ×  +  には                 におかれましては ♪ 会話 ♪ 李 :今宵は奥様におかれましては、ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます。 良子:さてさて、貴公には熱でもおありかな?急に時代がかった言い方されるとびっくりするわ。 李 :ビールに枝豆かと思ったら、こんなにごちそうが! 良子:何言ってんの。今日は父の日じゃないの。 ♯ 解説 ♭  「~には/~におかれましては」は主語につく助詞で敬意を込めた「~は」に相当します。「~には」より敬意を込めた表現が「~におかれましては」で、手紙や儀礼的な書面で用いられる表現です。公式な場面での改まった言い方としては使われますが、日常用語ではありません。  注意してほしいのは、「~には」は目的を表したり、行為の相手・対象についたり、目的地を表す用法がありますから、混同をしないようにしましょう。   成田空港に行くにはJRが便利だ。 <目的>   田中さんには手紙で連絡しました。 <対象>   入管には明日行きます。      <目的地> § 例文 § 1.父上には御健勝の由、何よりのことと存じます。 2.天皇陛下におかれましては、ただ今、別室にて御休憩中であらせられます。 3.皆々様にはお変わりもなく、心からお喜び申し上げます。 4.大統領閣下におかれましては、午後から外賓の方々と御会食の御予定でございます。 5.貴社におかれましては、念願のアメリカ進出を果たされたとのこと、誠におめでとうございます。\ ★ 例題 ★ 1) 女王陛下におかれましては、いたく(お/ご)心痛との(由/節)、(お/ご)慰め(する/になる)言葉もございません。 2) お母様( )は無事( )退院とのこと、私どもも心からお(喜ぶ→    )申し上げます。 (^^)前課の解答(^^) 1) によると(情報源→文型350)/下らない/そうだ(伝聞) 2) で(範囲限定)/ため(原因の「ために」→文型152)/上る 336 *~に(は)/*~(の)に 動詞:[ます]形 +  に  +  行く/来る/帰る ・ 名詞: ×    +  に(は)             ・ 動詞: 原形   +  に(は)/のに(は) ♪ 会話 ♪ 山田:旅を楽しむには、何と言っても鈍行に揺られてのひとり旅、これに限るよ。 李 :時間があればの話だね。ところで中国の友人が日本に遊びに来るんだ。長期滞在にいいホテル、知らない? 山田:会社の寮にしなよ。安く上げるには一番だよ。 李 :そうか、その手があったか。灯台下暗しだったなあ。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げたのは 目的の「~に」です。「動詞[ます]形+に(行く・来る・帰る…)<移動動詞>」の形は初級文型で、移動動作の目的を表しています。また、後件に状態性の述語「いい・悪い・便利だ・不便だ・必要だ・~やすい・~にくい…/役立つ・要る・かかる・使う…」などが来るときは、「早起きは健康にいい」のように「名詞+に/原形+のに」の形で目的・用途を表します。更に、話題として目的をはっきり取り出すとき、「~には」という形が使われますが、「ためには」の省略形と言ってもいいでしょう。→例題1)   成功するには(・ためには)、夢を持ち続けることが大切だ。 § 例文 § 1.「体にいいこと、何かしてる?」  「うん、週2回、近くのプールへ泳ぎに行ってるよ」 2.中国語でこの手紙を書くのに、3時間もかかったよ。 3.この辞典は用例も豊富だし、外国人には使いやすいと思う。 4.中国の友達が来るんで、成田まで迎えに行かなくちゃならないんだ。成田に行くには何で行ったらいいかなあ。 5.勝つには相手の手を読むことだ。相手の手を読むには情報を集めることだ。つまり情報が勝敗の雌雄を決する。 ★ 例題 ★ 1) 花嫁探し(に/のに)インターネットが(使ってる/使われてる)ってこと、君、(知った/知ってた)? 2) タバコが健康( )悪いことはわかって(いる→  )ながら、なかなか(やめられる→       )んだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ご/由(→文型209)/お/する(謙譲形→文型019) 2) に/ご/喜び(謙譲語) 337 ~には当たらない 動詞:原形  + に(は)当たらない ♪ 会話 ♪ 佐藤:彼、海水浴に行った先で、溺れている子供を助けて、警察から表彰されたらしいよ。 山田:彼は泳ぎ達者だし、少しも驚くには当たらないさ。僕なら、子供もろとも海の藻くずとなっただろうよ。 李 :僕も先日、2万円も入った財布を拾って、猫ばばもせずに交番に届けたけど、表彰には値しないのかねえ。 ♯ 解説 ♭  「~に当たる」には「~に相当する」という意味があり、「~には当たらない」は「~するほどの大きな問題ではない/~しなくてもいい」という意味を表します。相手が過度に反応しているのに対し、「そこまで~する必要はない」と諌めたり諭したりするのがこの文型の特徴です。この文型は程度の「~ほどのことではない」(→文型394)や、不必要の「~までもない/~には及ばない」(→文型338)と類義表現となりますので、各項を参照してください。   君が行く には当たらない。        ほどのことではない。        までもない。 § 例文 § 1.こんな鼻風邪なんて、病気と言うには当たらないよ。 2.一度や二度受験に失敗したからって、落胆するには当たらない。僕なんか四浪さ。 3.取るに足りぬ過ちじゃないか。いちいちめくじらをたてるには当たらないよ。 4.本人も謝っているんだし、そんなに怒るには当たらない。 5.今は不幸のどん底であっても、禍福はあざなえる縄の如し、前途を悲観するには当たらない。 ★ 例題 ★ 1) 会社の上層部が(する/した)ことを、平社員の君(すら/まで)が謝る(に当たる/には当たらない)よ。 2) 彼はこんなことでへこたれたり( )( )ような人間(だ→    )から、心配する( )は当たらないよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/使われてる(受身文)/知ってた(ていた→てた<口>) 2= に/い(逆説の「~ながら」→文型270)/やめられない 338 ~には及ばない/~までもない 名詞:×   +  に(は)及ばない       ・ 動詞:原形  +  には及ばない         ・           までもない           までのこともない ♪ 会話 ♪ 山田:どんなに努力しても売り上げ成績が佐藤に及ばないなんて、全く嫌になっちゃう。神様も不公平なものだよ。 李 :僕だって彼にはかなわないよ。小さい時から勉強は言うまでもなく、何でも来いだったらしいからね。 山田:僕に気を使うには及ばないよ。とにかく彼はやることなすことにそつがない。 ♯ 解説 ♭  「AはBには及ばない」の形は例文1や「数学では、僕は彼に及ばない」のように、「(能力・地位・実績などの程度が)AはBの水準に達しない」という意味を表します。  それ以外に、動詞の原形と結びつくと、「~には及ばない」や「~までもない/~までのことはない」は「~する必要はない/~しなくてもいい」という意味を表します。「~には及ばない」は名詞や「それ」に直接ついて不必要を表すことができますが、この場合は「~までもない」が使えません。   説明するには及ばない(・までもない)。   説明(/それ)には及ばない(×までもない)。  「~ことはない」(→文型093)も不必要を表すことがありますが、「~までもない」は「そうしても無駄になる」、「~には及ばない」は「まだ必要な状況ではない」、「~ことはない」は「そうしない方がいい」という状況判断の違いで使い分けられています。→例題1) § 例文 § 1.知は情に及ばず、情は信に及ばず、信じる力こそ何ものにも勝る。 2.わざわざお越しになるには及びませんでしたのに。 3.君が心配してもはじまらないし、また心配するには及ばない。 4.君から聞くまでもなく、その件はとっくに承知している。 5.今更繰り返すまでもないが、本殺人事件が保険金目当ての犯行であることは、火を見るよりも明らかである。 ★ 例題 ★ 1) (ほんの/ただの)風邪だから、(わざわざ/せっかく)見舞いに来てくれる(ことはない/には及ばない)よ。 2) 言う( )( )もなく、君と彼の実力は互角と言える。君は技では彼に(及ぶ→     )が、力では彼( )勝っている。勝敗は時の運だ。\ (^^)前課の解答(^^) 1) した/まで(「~すら」と「~まで」→文型404)/には当たらない 2) する(→文型158)/ではない(「じゃない」も可)/に 339 *~に反して/~に背いて 名詞・名詞句(~の/~こと): ×  +  に反して ・                       に反し                       に反する                       に背いて ・                       に背く ♪ 会話 ♪ 李 :中国に戻ってほしいとの親の願いに背いて、日本で就職したばかりか、結婚までしちゃったよ。 百恵:でも日本にしっかり根を下ろしているじゃないの。 李 :人の道に反することをしたわけではないが、なんとなく後ろめたいよ。両親ももう七十歳を越したからね。 百恵:その気持ち、わかるような気がするわ。 ♯ 解説 ♭  「~に反して」は主として「予想・期待・予測・意・願い・希望・規則・法律…」など名詞と結びつき、「違反する・対立する・裏切る・背く」などの意味を表します。もし、例文1~3のように、意図的に「違反する・裏切る・背く」行為であれば、「~に反して」も「~に背いて」も使えます。しかし、例文4、5のように、客観的に事実だけ伝える文では「~に背いて」は使えません。  また、対立する事実を並べて「Aの反対にB」を表すとき、「~に反して」と「~に対して/~にひきかえ」(→文型340)はほとんど同義表現になります。   兄は優秀なのに反して(・のに対し/・のにひきかえ)、弟は劣等生だ。 § 例文 § 1.会社が命じたことに反して(⇔に背いて)、彼は独断で交渉を進めた。 2.日本には「出る杭は打たれる」という言葉があって、組織の和に反する(⇔に背く)言動は批判される。 3.わが国の法に反する(⇔に背く)者は、国籍の如何を問わず、わが国の法によって裁かれる。 4.自分の意に反することは、何と言われようと従う気はない。 5.大方の予想に反して、○○党は参院選で苦戦している。 ★ 例題 ★ 1) みんなが(楽しい/楽し)そうに遊んでいる(の/こと)(に反し/に背き)、その子だけが一人寂しげにしていた。 2) 金に(なる→   )が(なる→    )まいが、道義に反することは(したい→    )ない。 (^^)前課の解答(^^) 1) ただ(「ただ」は「普通」を表すN)/わざわざ/には及ばない 2) まで/及ばない/に 340 ~にひきかえ/~に対して・ 名詞・それ           : ×  +  にひきかえ 動詞・形容詞の普通形<ナ形ーな>: の     に対して                         に対し (注:接続詞は「それにひきかえ」「それに対して」) ♪ 会話 ♪ 山田: 佐藤はこれから真理さんとデートらしいよ。それにひきかえ、俺たちは残業だもんな。やってられないよ。 李 :ふたりは結婚前で、今が一番いい時だよ。それにひきかえ君の方は、最近浮いた話がとんとないねえ。 山田:俺の場合、懐が火の車ときてるから、デートしようにも先立つものがないんだよ。 ♯ 解説 ♭  「AにひきかえB」「Aに対してB」は、AとBを対比させる用法です。「~にひきかえ」は元の意味である「交換する」から派生し、「Aと比べると、反対にBは~」と言う意味を表します。この文型は後件で反対の事実を述べるときは、「~に反して」(→文型339)に置き換えられますが、「~に反して」には比較・対比の気持ちはないので、例文1のような場合に使うと不自然になります。  注意してほしいのは、「~に対して」は例文5のような対比の用法だけでなく、「親に対して反抗する」のように相手・対象を指す格助詞用法もあることです。 § 例文 § 1.お前にひきかえこの俺は、何をやってもどじばかり。 2.御主人は無口なのにひきかえ、奥さんはおしゃべりだ。 3.金持ちには倹約家が多いのにひきかえ、貧乏人はとかくお金があると使ってしまう傾向がある。 4.姉は家庭的なのに対し、妹は活発で一時も家でじっとしていることはない。 5.かつては大量生産の時代だった。それに対して、今は多様なニーズに合わせた多種・少量生産の時代になった。 ★ 例題 ★ 1) 首相は(釈明する/釈明しよう)としたが、それ(に対して/にひきかえ)野党は一斉にヤジを(浴びた/浴びせた)。 2) 最近の小学校( )は「男子( )ひきかえ女子の方( )活発でけんかも強い」という報告が出されている。 (^^)前課の解答(^^) 1) 楽し(様態の「そうだ」)/の(行為=の→文型354)/に反し 2) なろう(「~(よ)うが~まいが」→文型438)/なる/したく 341 *~にほかならない/ほかならぬ~ 名詞・名詞相当語: ×  + にほかならない  ・ ほかならぬ        + 名詞       ・ (注:「ほか」は「外/他」とも書く) ♪ 会話 ♪ 山田:今日は定時退社かい?やけにうれしそうだね。デートだろう、えっ?顔に出てるから、隠しても無駄だよ。 李 :誰とデートだと思う?ほかならぬ良子さんだよ。これじゃ、話のネタにもならないよね。おあいにく様! 山田:それってすごいのろけにほかならないぞ。月曜には寄ってたかってむしってやるから、覚悟しとくんだな。 ♯ 解説 ♭  「~にほか(他)ならない」は「~以外のものではなく、正に~そのものだ」という他の選択を否定する強い断定表現です。この点が軽視の感情を持った類義表現「~に過ぎない」(→文型320)と異なる点で、例えば、例文2や4のような積極的評価の時に「~に過ぎない」に置き換えることはできませんし、下例のようにどちらも使える場合も語感に大きな違いがあります。→例題1)   彼の話は机上の空論に他ならない(・に過ぎない)。  この「ほかならない」は例文4の「~からにほかならない」や、例文5のように「特に大切なかけがえのない(人)」という意味を表す「ほかならぬ+名詞(人)」の形を派生させます。 § 例文 § 1.言語は意思伝達の手段にほかならない。 2.今日のわが国の繁栄は、国民のたゆまぬ努力の結果にほかならない。 3.演技力のない彼が俳優になれたのは、名優だった父親の七光にほかならない。 4.このプロジェクトが軌道に乗ったのは、先生のお力添えがあったからにほかなりません。\ 5.ほかならぬ恩師の頼みとあっては、むげに断れない。 ★ 例題 ★ 1) 彼の今日(いる/ある)のは、(ほかでもない/ほかならない)、努力の賜物(に過ぎない/にほかならない)。 2) ほかならぬ君が窮地( )陥っているのに、どうして僕が(見る→  )見ぬふりが(できる→     )か。 (^^)前課の解答(^^) 1) 釈明しよう(→文型441)/に対して(相手)/浴びせた(使役文) 2) で(範囲限定)/に/が(比較文「~の方が~」) 342 ~に免じて/~に免じ 名詞: ×  +  に免じて           に免じ ♪ 会話 ♪ 課長:今回のことは、君の日頃の勤務態度に免じて、特に不問に付す。二度とこのようなことがないように。 山田:申し訳ございません。心いたします。 李 :ずいぶん絞られたようだな。 山田:うん、冷や汗ものだったよ。もう一度こんなことがあったら、「職を免ずる」ってことにもなり兼ねないよ。 ♯ 解説 ♭  動詞「免ずる」は「許す・免除する・免職にする」などの意味を持っています。   職を免ずる。   授業料を免ずる。   親に免じて許してやる。  この「~に免じて・~に免じ」は「許す」の意味で使われていて、「~という事情・心情・対面を特に考慮して、~」という意味を表します。なお、法律用語ですが、同じ意味を表す表現に「~を情状酌量し、~」があります。→例題1) § 例文 § 1.家庭事情を考慮し、特例として今期の授業料を免ずる。 2.今日のところは、俺の顔に免じて許してやってくれ。 3.お前の兄貴の顔に免じて大目に見てやるが、二度とこんな生意気な口をきいたら、ただじゃ済まさないぞ。 4.許しがたい犯罪ではあるが、その年齢に免じて、懲役2年、ただし執行猶予3年とする。 5.君のお父上に免じて、この度は始末書で済ませてやる。 ★ 例題 ★ 1) 幸い被害者のけがも軽く(て済み/て済ませ)、また故意(による/に伴う)ものでなかったことを(免じ/情状酌量し)、不起訴処分とした。 2) 君の普段の行い( )免じて、この度のことは(穏便だ→   )処理する( )( )にしよう。 (^^)前課の解答(^^) 1) ある/ほかでもない/にほかならない(~に過ぎない→文型320) 2) に/見て/できよう(反語=できるだろうか→文型161) 343 ~にもかかわらず 名詞    :  ×           + にもかかわらず 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/である> (注:動詞・形容詞と結びつくとき、「~のにもかかわらず」も使う) ♪ 会話 ♪ 李 :この暑いのに、重いサンプルを持ち回っての外回りの仕事は大変だね。 山田:何事も慣れだよ。だからノルマがきついにもかかわらず、続けられるのさ。 李 :君は人と話すのが苦手なのにもかかわらず、成績抜群だね。きっと君の誠実さが相手に伝わるんだろうね。 ♯ 解説 ♭  「~にもかかわらず」は逆説の「~のに」(→文型359)と意味上の違いはありませんが、「そうしないのが普通なのに~/本来~すべきなのに~」という意味で使われる客観的な評価です。なお、「~のにもかかわらず」の形も使われますが、これは「特に~にもかかわらず」と強調した表現になります。  また「~くせに」(→文型070)も「~のに」系の逆説ですが、非難や軽蔑の感情を表すので、同じ文で使ったときでも以下のような語感の違いが生じます。   やればできるのに、勉強しない。     (失望・残念・不満)   やればできるにもかかわらず、勉強しない。(不当・不正・疑問)   やればできるくせに、勉強しない。    (非難・反発・軽蔑) § 例文 § 1.雨天にもかかわらずお運びいただき、誠に恐縮です。 2.Aさんは仕事中だったにもかかわらず、突然訪れた私を快く出迎えてくれた。 3.御多忙中にもかかわらず、私どものために御奔走くださり、どうお礼を申し上げてよいのかわかりません。 4.彼は目が不自由なのにもかかわらず、高校を首席で卒業した。 5.一生懸命がんばったのにもかかわらず、善戦むなしく苦杯をなめた。 ★ 例題 ★ 1) 若い(にかかわらず/にもかかわらず)、家でお母さんの手伝い(とは/というのは)、感心(な/の)娘さんだねえ。 2) 彼は医者( )( )酒を(止めている→     )にもかかわらず、毎日のよう( )飲んでいる。 (^^)前課の解答(^^) 1) て済み(自V)/による(→文型356)/情状酌量し(「を」に注意) 2) に/穏便に(ナ形)/こと(~ことにする→文型089) 344 *~に基づいて/~に即して/~に照らして 名詞: ×  +  に基づいて/に基づき/に基づく+名詞           に即して/に即し/に即した+名詞           に照らして/に照らし/に照らした+名詞           を踏まえて/を踏まえ/を踏まえた+名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :今回の経営陣の交代に伴って、部長の一部入れ替えがあったね。 佐藤:これまでの事例に照らしても、妥当な人事だったと思うよ。人事は企業の意思表示だよ。 李 :現実に即した臨機応変の経営が必要だ。従来のやり方を踏襲するだけでは、事態は好転しないよ。 ♯ 解説 ♭  これらは何かを根拠にする点では同じです。以下のような同義文型がありますが、それぞれ少しずつ異なった語感を持っています。   教科書に     即して  <そのまま>     よって  <依拠して、手段として>     基づいて <基礎や土台にして>     照らして <参照し、応用して>     沿って  <流れに合わせて>     応じて  <臨機応変に>   日本語を教える  つまり、下に行くほど個人の裁量は拡大します。 § 例文 § 1.憲法は国の基本法で、法律は憲法に基づいて作られる。 2.空理空論はやめ、実状に即して話し合おうじゃないか。 3.この種の通販は法律に照らして見れば、詐欺罪になる。 4.何事も状況に応じて対処すべきで、先例に照らしてどうだとか、杓子定規に考えるべきではない。 5.実践に基づき、更にその結果を踏まえ、しかる後に是非を判断する。これが実事求是の精神だ。 ★ 例題 ★ 1) 「理論(なし/なき)実践は無、実践(なし/なき)理論は死」と言うが、実践(に基づかない/に即さない)イデオロギー論争は百害あって一利なしだ。 2) 従来の歴史観( )基づいて世界を見ても、複雑( )現代社会は解明(できる→    )だろう。 (^^)前課の解答(^^) 1) にもかかわらず/とは(→文型242)/な(ナ形) 2) から(受身:~から~られる)/止められている/ように 345 ~に(も)まして 名詞・疑問詞: ×  +  に(も)まして (注:接続詞は「それにもまして」) ♪ 会話 ♪ 李 :交通事故で○○君の車が大破したらしいが、それにもまして彼の奥さんのけがの方が気がかりだね。 山田:相手の信号無視が原因らしいね。気がついたら、病院のベッドの上だったとのことだ。 李 :体のけがにもまして、心に受けた傷も大きいのでは。しばらくは運転する気になれないよ、きっと。\ ♯ 解説 ♭  「AにもましてB」は「Aよりも、更にB/A以上にB」という意味を表します。比較表現の一種ですが、「Aより(も)B」と比べたとき、この文型は数量や程度が一層増加したことに重点をおいた表現になります。         図あり    なお、「~に(も)なく」(→文型332)と類似していて混同しやすいので、注意しましょう。   今年の冬は     例年よりも   <いつもと比べて>     例年にもまして <いつも以上に>     例年になく   <いつもと違って>   寒い。 § 例文 § 1.今日の君は、いつにもましてきれいだね。 2.あなたの一言は、何にもまして私を勇気づけてくれました。 3.姉も美人だが、それにもまして妹は美しい。 4.彼は幾多の試練を乗り越え、前にもましてたくましくなった。\ 5.彼の演技力は、以前にもまして磨きがかかり、円熟味が加わってきた。 ★ 例題 ★ 1) 彼女は今(まで/までに)出会った中(に/で)、誰(にもなく/にもまして)思いやりのある女性だった。 2) もちろん息子の受験のことも心配ですが、( )( )にもまして、無理を(する→   )体を(壊す→     )かと気がかりなんです。 (^^)前課の解答(^^) 1) なき(なし→なき+N)/なき/に基づかない 2) に/な(ナ形)/できない 346 *~によって ・ 名詞: ×  +  によって           により           によりまして           による + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:帰ってみると、冷凍庫の中が全部溶けてたのよ。壊れたのかしら?ちょっと見て。 李 :何だよ、コンセントが抜けてるじゃないか! 良子:ちっ(舌打ちの音)、最近よくこんなぽかをするの。 李 :消費者からの苦情は、この種のぽかによるミスが多いって、うちの担当者もぼやいていたよ。 ♯ 解説 ♭  「よる」は漢字で書くと「寄る・依る・拠る・因る」などと書きますが、多くの意味を持っています。この項で取り上げるのは格助詞「で」に置き換えられる手段・方法、原因・理由、根拠の三つです。   辞書によって(⇔で)調べる。  <手段>   台風によって(⇔で)被害が出た。<理由>   法律によって(⇔で)禁止された。<根拠>  「~によって」は対象に全面的に依存してという意味を表しますから、例えば「鉛筆で書く」のような例では「~によって」は使えません。他にもいろいろ方法があり、唯一の手段・方法ではないからです。同じことは原因・理由の表現でも言えます。なお、根拠の「~によって」の改まった言い方が「~に基づいて」(→文型344)です。 § 例文 § 1.この件は話し合いによって解決しよう。<手段・方法> 2.国連の調停努力によっても、その国の流血の民族紛争に終止符を打つことはできなかった。<手段・方法> 3.冬は火の不始末による火災が起こりやすい。<理由> 4.人は見かけによらないものだ。<根拠> 5.いかなる国民も法律によらない限り、その財産を奪われたり、また、身体を拘束されることはない。<根拠> ★ 例題 ★ 1) 新宿区の広報(によると/によって)、来年度からゴミを不法投棄した者(について/に対して)は条例(によると/によって)罰金を課すことにするらしい。 2) 調査( )よると、現代人の病気の多くはストレス( )よって(引き起こす→      )ているそうだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) までに(→文型402)/で(「~の中で~が一番~」)/にもまして 2) それ/して/壊さないか 347 *~によって(は/も) ・ 名詞: ×  +  によって(は/も)           により           によりまして(は/も)           によっちゃ<口>           による + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:このところ連日の午前様よ!事と次第によっては、私にも考えがあるわ。 李 :おお怖!でも浮気をしてるわけじゃなし、そんなに目くじらを立てないでくれ。仕事によっちゃ、取引先とのつきあいで遅くなることだってあるよ。 良子:ふ~ん、終電ぎりぎりまでとはねえ?? ♯ 解説 ♭  この対応の「AによってB」が一番よく使われる「~によって」の用法でしょう。Aが変われば、Bもそれに関係して変わります。いわゆるケース・バイ・ケースの表現です。  関連表現に「~次第で」(→文型111)や「~如何で」(→文型008)がありますから、各項をご参照ください。  人はおかれた環境    によって    如何で    次第で  変わるものだ。 § 例文 § 1.親切も、時と場合によっては相手の迷惑になる。 2.時間によって、忙しい時もあれば、暇な時もある。 3.人によって、得手不得手がある。 4.国によって文化も習慣も違うのですから、「郷に入れば郷に従え」が肝要です。 5.状況によって適切に作戦を変えるのが臨機応変、状況によって無原則に態度が変わるのが日和見。 ★ 例題 ★ 1) 中国は広くて方言も様々であり、所(によると/によって)は百キロ先の村の方言は聞いても(わかる/わからない)という嘘の(ように/ような)本当の話がある。 2) 昔から十人十色と言われますが、好み( )考え方は人( )よって違う( )( )です。 (^^)前課の解答(^^) 1) によると(情報源・伝聞)/に対して(→文型322)/によって 2) に/に/引き起こされ(原因・受身文「~によって~られる」) 348 *~によって~(ら)れる 名詞: ×  +  によって ~ (ら)れる           により ~ (ら)れる ♪ 会話 ♪ 社長:ひとりひとりの努力によってしか、わが社はこの窮地から脱することはできない。諸君の奮闘に期待する。 山田:御多分にもれず、わが社も相当な額の不良資産を抱え込んだみたいだね。 李 :「ひとりひとりの努力」によって解決されるような生やさしい問題じゃないんだよな。 ♯ 解説 ♭  「~に~られる」受身文と「~によって~られる」受身文は用法がかなり異なります。「(人)は(人)に~を~られる」文は直接的で動作性の強く、多くは被害の感情を表します。一般に「~によって~られる」が使われるのは「に」格が「物」や「こと」のときですが、内容面から言うと以下のようです。・ 例文1~3のように、歴史上の事実や既定事実を客観的に伝えたいとき。      (ひと)が     (もの・こと)を    ~した。    → (もの・こと)は  (ひと)によって    ~られた。・ 例文4~5のように、客観的に手段や方法、または原因・理由を述べるとき。      (もの・こと)が  (ひと)を         ~する。    → (ひと)は     (もの・こと)によって   ~られる。 § 例文 § 1.阿Q正伝は魯迅によって書かれた。 2.アメリカはコロンブスによって発見された。 3.アムネスティによって暴かれた人権侵害の数々を、その国の政府は事実無根として一蹴した。 4.世の中には宗教によって救われる人も多い。 5.戦後教育は行き過ぎた競争によって歪められてきたが、今や曲がり角に来ている。 ★ 例題 ★ 1) 子供は親や教師に(ほめる/ほめられる)こと(に/によって)、(勇気づける/勇気づけられる)ものだ。 2) 人によって(作った→      )ものが、どうして人によって(変えられる→       )ことが(ある→     )得ようか。 (^^)前課の解答(^^) 1) によって/わからない/ような 2) や(「と」は例を限定する)/に/もの(→文型420) 349 ~によらず 名詞・疑問詞を含む句: ×  +  によらず ♪ 会話 ♪ 李 :人間の倫理観はあまり変わっていないね。時代によらず、いいことはいいし、悪いことは悪い。 良子:精神面では進歩していないということかしら?でも、宗教が違うと、理解できないことも多いわね。 李 :宗教の問題は難しいね。どんな宗教によらず、自分は正しくて、ほかは間違っていると考えがちだね。 ♯ 解説 ♭  「~によらず」は名詞や疑問詞を含まない名詞句につくときは、例文1、3のように「~の方法に頼らず~/~の方法ではなくて~」という意味を表します。疑問詞につくときは、例文2、4、5のように「(いつ/だれ/どこ/どの+名詞)に関係なく、全て~だ」という意味を表すようになります。  後者の「によらず」は「~にかかわらず」(→文型293)や「~を問わず」(→文型472)と同義表現になりますが、疑問詞や疑問詞を含む名詞句にしかつきません。   男女を問わず(×に限らず/?によらず)応募資格があります。   何事によらず(○を問わず/×に限らず)忍耐が大切だ。 § 例文 § 1.武力によらず国家統一を成し遂げる道はないだろうか。 2.どの国によらず、経済運営が政策の土台になっている。\ 3.多数決によらず、譲歩し合いながら最大限全員の合意を目指すが日本的なやり方です。 4.何事によらず、自らが求めようとしなければ、手に入れることはできない。 5.学歴がどうか、また出身校がどこかによらず、社員を実力本位で採用する企業が、今後増えていくだろう。 ★ 例題 ★ 1) 親というものは、誰(によらず/に限らず)、誰(にもまして/によらず)、わが子の幸せを願っている(こと/もの)だ。 2) 法の前には人は地位や身分( )よらず、誰もが平等で(ない→    )ならず、例外が(ある→   )はならぬ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ほめられる/によって/勇気づけられる 2) 作られた/変えられない(可能形)/あり(~得る→文型017) 350 *~によると/*~によれば/*~では 名詞: ×  +  によると  ~  そうだ           によれば     ということだ           では       とのことだ                    んだって                    らしい ♪ 会話 ♪ 李 :女房から聞いたところでは、社宅の奥さん連中は「亭主元気で留守がいい」ってささやき合っているらしい。 佐藤:あまりいい気持ちはしないねえ。妻の立場からすれば、正直なところなんだろうけど。 李 :新聞によると、家にいても役に立たない夫のことを、「粗大ゴミ」とも言うそうだ、君、知ってたかい? ♯ 解説 ♭  「~によると/~によれば」は情報源を表す助詞で、多くは例文1~3のように伝聞表現で使われ、文末は「~そうだ/ということだ/~とのことだ/~んだって」や、推量の「~らしい」と呼応します。しかし、伝聞表現以外にも例文4、5のように「(~の)判断・経験・記憶・考え・見方・見解…」などの語について、判断の出所を表します。  どちらの場合も「~では」を使って表すことができますし、日常会話では「~では」の方が多いでしょう。なお、丁寧語として「~によりますと」の形があります。 § 例文 § 1.天気予報によると、明日は曇りのち雨だそうです。 2.中国通の識者の話では、元の大幅切り下げはないらしい。 3.噂では、君、今度家を買うそうじゃないか。 4.僕の経験によると、この種の故障は接続部の不良から生じていることが多い。 5.この資料によれば、この国の債務総額はGNPの約半分に達している。 ★ 例題 ★ 1) 政府関係者の話(によって/によれば)、日ソの平和条約の締結はそれ(ほど/ぐらい)遠くない将来に実現する(とのことだ/はずだ)。 2) 私の記憶( )よれば、この辺りは十年ぐらい前( )( )は、海(だ→   )はずです。 (^^)前課の解答(^^) 1) によらず/にもまして(→文型345)/もの(一般→文型420) 2) に/なければ(~なければならない→)/あって(→文型195) 351 *~抜きで/*~抜きにして 名詞: ×/(は/を)  +   抜きで                抜きの + 名詞                抜きにして                抜きでは ~ ない                抜きに(して)は ~ ない ♪ 会話 ♪ 小孫:もしもし、孫です。折り入って御相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか? 李 :いやあ、孫君か。どういう風の吹き回しだい?遠慮は抜きにして、用件というのを言って御覧。 小孫:電話ではちょっと・・・。できれば他人抜きで、良子さんにも内緒で、二人だけでお話ししたいのですが。 ♯ 解説 ♭  動詞「抜く」には「除去する・省略する・取り除く」と言う意味があり、この文型は「~しないで~する」や「~を除いて~する」(→文型372)という意味を表す文型になります。  なお、文末が否定形になるときは「~抜きには~ない/抜きでは~ない/抜きにしては~ない」の形になります。この文型は実質的には「~なければ~ない」と同じ意味となり、「~なくしては~ない」(→文型272)と同義表現になります。   努力抜きでは成功は得られない。  →努力しなければ成功は得られない。  →努力なくしては成功は得られない。 § 例文 § 1.堅苦しい挨拶は抜きにして、何はさておき、まず一杯。 2.俺にとって酒抜きの人生なんて、気の抜けたビールみたいなものだ。 3.冗談や揚げ足取りは抜きにして、お互い真剣に話し合おうよ。 4.妻の協力を抜きにしては、私は何一つできなかったと言えるだろう。 5.本人の出席抜きの欠席裁判はしたくない。 ★ 例題 ★ 1) そんなに毎日のよう(に/な)朝御飯(抜きには/抜きでは)、(いつか/いつのまにか)体を壊しますよ。 2) 楽しいパーティの席( )、仕事の話しをする( )は抜きに(する→  )じゃありませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) によれば/ほど(→文型392)/とのことだ(→文型209) 2) に/まで/だった 352 *~抜く/~通す 動詞:[ます]形 +  抜く   ・             通す    ・            続ける  ・ ♪ 会話 ♪ 良子:今回ばかりは、わがままを通させてね。フルマラソンを走り抜くのは、夢だったの。ホノルルマラソンに参加したいの、いいでしょ? 李 :言い出したら聞かない君だし、止めないよ。スピードは問題じゃない。走り続ければ、ゴールは来るよ。 良子:何だか、最後まで走り通せる自信が湧いてきたわ。 ♯ 解説 ♭  「ー抜く」は「引き抜く/切り抜く…」や「追い抜く/勝ち抜く…」など複合動詞を作りますが、動作性の動詞につくと、「最後まで行為を完遂する」という意味を表します。「ー通す」も「最後まで、ずっと~し続ける」という 複合動詞を作りますが、どちらも人の意志行為なので、「川の水は流れ続ける」のような無生物が主語の文では使えません。  なお、類義表現「ー抜く」と「ー通す」には次のような違いがあります。   ゴールまで走り抜いた。<ゴールまで完全に走り終えた:完遂に重点>   ゴールまで走り通した。<ゴールまで何時間も走り続けた:継続に重点>  また、「ー抜く」は例文5や「困り抜く・悲しみ抜く・弱り抜く・知り抜く…」のように状態性の動詞について、「非常に~する」という程度を表しますが、この用法は「ー通す」にはありません。→例題1) § 例文 § 1.この娘ときたら、もう一時間も電話でしゃべり続けて(△通して/×抜いて)いる。 2.今日は朝から何時間も歩き通し(○続け/×抜き)で、足が棒のようになった。 3.彼は投獄されても信念を守り通した(?続けた/○抜いた)。 4.君の魂胆など、とっくに彼は見抜いて(×続けて/×通して)いるよ。 5.これは悩み抜いた(×続けた/×通した)末の結論だ。 ★ 例題 ★ 1) 身の潔白を訴え(続けて/抜いて)30年、やっと冤罪が(晴れる/晴れた)時、彼は既に80歳(だ/だった)。 2) 彼は政界の裏( )裏( )( )(知る→   )抜いている政治通だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(~ように+用言)/抜きでは/いつか(副詞の意味の意味の差) 2) で/の/しよう(「~(よ)うではないか」→文型440) 353 ~ねば/~ねばならぬ 動詞:[ない]形   + ねば      ・             ねばならない  ・             ねばならぬ             ずばなるまい (注:「~ねばならない」を省略した「~ねば」の形も使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :やらねばならないなんて、思い詰めないことだよ。気が向いたらやることにして、機が熟すのを待ったら。 良子:でも早くやらねばなんて、考えちゃうのが私なのよ。 李 :あれもせねば、これもせねばと焦ったところで、虻蜂取らずになるのが落ちさ。それよりむしろ、果報は寝て待てさ。 ♯ 解説 ♭  「~ねば」は「~なければ」を表す書面語で、更に古い形が「~ずば」ですが、「~ずば」は今日ではほとんど使われない形なので、読んでわかれば十分です。なお、「~ねばならぬ/~ねばならない」は「~なければならない」(→文型271)と同じ意味を表す書面語です。  読む  → 読まなければ  → 読まねば  美しい → 美しくなければ → 美しくあらねば  誠実だ → 誠実でなければ → 誠実であらねば § 例文 § 1.さあさあ、買った買った!今買わねば損だよ。 2.我々としても、反省せねばならぬ点は多々ある。 3.非は向こうにある。私が頭を下げねばならないような筋合いはない。 4.本来なら退学処分にせねばならんところだが、ご両親に免じて、今回だけ大目に見てやる。 5.敵に背を見せるわけにはいかぬ。売られたけんかは、買わずばなるまい。 ★ 例題 ★ 1) お前って奴は、やらねば(ならず/ならぬ)ことを(しず/せず)、やらなくてもいいこと(だけ/ばかり)する奴だ。 2) いくら(やる→   )つけた作業(である→    )と、気を(つける→    )ねば失敗することもある。 (^^)前課の解答(^^) 1) 続けて/晴れた/だった 2) の/まで(「裏の裏まで」は慣用語)/知り 354 *~の/*~こと 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  +  の                      こと ♪ 会話 ♪ 李 :しまった!昨日、家で仕上げたフロッピーを持ってくるのを忘れちゃった。寝たのが遅くて、目が覚めたのが出勤時間ぎりぎりだったからなあ。慌ててたんだ。 山田:そのフロッピーに入れたのは例の企画案かい? 李 :うん、中に入れたことは覚えているから、今からでも何とか作り直せるけど、でもミスったなあ。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げたのは名詞句を作る「の/こと」です。一般に「の」は行為や感覚的事物を表し、「こと」は内容や観念的世界を表します。一番簡単な使い分けは、「の」しか使えない「見る・聞く…」などの知覚動詞、「~のに/~のは~からだ/~のは~ことだ…」などの「の」の慣用文型、「こと」しか使えない「信じる・考える」などの動詞、「~ことがある/ことにする…」などの「こと」の慣用文型をまず覚えることです。それ以外は左の表のようにどちらも使えます。  ただし、例文4を例として言えば「の」を使うと体験的かつ感覚的、「こと」を使うと一般的かつ理念的となります。また、次のように全く意味が異なる場合も起こります。   母に話すのを忘れた  <話す行為>   母に話すことを忘れた <話す内容> § 例文 § 1.彼が走って来るの(×こと)  が見えた。 2.バスが来るの(×こと)を         ここに表が入る  待っているところだ。 3.宿題があったの(⇔こと)  を思い出した。 4.日本語を教えるの(⇔こと)  はむずかしい。 5.行くこと(×の)を命じる。 ★ 例題 ★ 1) あの人の言った(の/こと)は間違っていない。間違っている(の/こと)は君の方だ。 2) 大切な(の/こと)は、常にベストを尽くす(の/こと)だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ならぬ/せず/ばかり(「だけ」と「ばかり」の違い→文型362) 2) つけ(→文型167)/であろう(未然形+と→文型000)/つけ 355 ~の至りだ 感情を表す名詞: ×  + の至りだ ♪ 会話 ♪ 李 :彼は「私の不徳の至りです」なんて謝っていたけど、内心、腹の虫が収まらなかっただろうなあ。 山田:彼も立つ瀬がないよ。会社のためにと相手方とやりあったのに、せっかくの愛社心が徒になってはねえ。 佐藤:時には聞き流したり、一歩引くのも生活の知恵さ。相手の対応に腹を立てたのは、やはり若気の至りだよ。 ♯ 解説 ♭  「~の至りだ」は感情を表す名詞(ほとんど漢語)について、「最高に~の気持ちだ」という意味を表しますが、多くは慣用的に決まった表現で、公式の改まった場でしか使われません。  同義語に「~の極みだ」(→文型069)があり、「~の至りだ」の用例は全て「~の極みだ」に置き換えることができます。この「~の極みだ」は「疲労の極みだ/親不孝の極みだ」のように感情以外の語にも付くことができますが、その場合には「~の至りだ」は使えません。それ以外にも、どんな場合にも使える「~の極みだ」とは異なり、「~の至りだ」はいいことにしか使えないという制約があります。 § 例文 § 1.憧れの女優に握手してもらって、もう感激の至りだ。 2.このような失態を演じ、誠に恐縮の至りです。 3.あの生意気な男がこてんぱんに負けたなんて、はっは痛快の至りだねえ。 4.このような名誉ある賞をいただき、光栄の至りです。 5.つきっきりで病身の母親を看護する姿は、実の娘ながらも感心の至りだ。 ★ 例題 ★ 1) 香港返還はアジアの歴史(から言って/からと言って)も特筆す(べき/べし/べく)ことであり、同じアジア人(にとって/として)慶賀の(至りだ/極まる)。 2) 大臣閣下の御配慮( )もちまして、わが社は危機( )脱することができ、誠に感謝( )至りでございます。 (^^)前課の解答(^^) 1) こと/の 2) こと(「の」も可)/こと(「~のは/ことは~ことだ」文) 356 *~のではないか/*~んじゃないか 名詞    :  な       + のではないか 動詞・形容詞:普通形 <ナ形ーな> のではないだろうか                      んじゃないか<口>                      んじゃないだろうか<口> (注:「~じゃないか」の形は解説参照のこと) ♪ 会話 ♪ 佐藤:ベア交渉もいよいよ大詰めなんじゃないか。 山田:会社は経営不振を理由に、ベースアップに難色を示しているらしい。李君、君は組合の役員だろ? 李 :今日あたりが山場になるんじゃないだろうか。「ない袖は振れぬ」と会社も開き直っているし、交渉は難航しているんだ。 ♯ 解説 ♭  「~のではないか/~のではないだろうか/~のではないでしょうか」(口語形は「~んじゃないか/~んじゃないだろうか/~んじゃないでしょうか」)は形の上では疑問ですが、実際上は「たぶん~だろう」と思ったときに使われる表現で、断定を避けるために日常会話でよく使われる表現です。  注意してほしいのは、「ん」のない「~じゃないか/~じゃない」(→文型193)の形は文末を下げて発話すると、例文4、5のように強い肯定になり、驚き・詰問・反駁などの感情を表すことです。   やればできるんじゃないか。=たぶんやればできるだろう   やればできるじゃないか。 =ね、やはりやればできる。 § 例文 § 1.捕らぬ狸の皮算用はしない方がいいんじゃない? 2.息子さんの就職も決まったし、あなたも肩の荷がおりたんじゃないの? 3.彼らはいつも集まって、何事かひそひそと話し合っているが、何かよからぬ相談でもしてるんじゃないか。 4.やりたくなけりゃ、やらなきゃいいじゃないか! 5.ほらね、やればできるじゃないか。「案ずるより生むがやすし」とはこのことさ。 ★ 例題 ★ 1) もう一時を回ってる(ん/×)じゃないか。話しに夢中に(して/なって)、時間が経つ(の/こと)を忘れてたよ。 2) 電話したけど、彼は自宅にはもう(いない→     )から、こちらに向かっている( )じゃない( )。 (^^)前課の解答(^^) 1) から言って(→文型049)/べき(→文型382)/として/至りだ 2) を(~をもって→文型480)/を(他V)/の 357 *~のは~からだ/*~のは~からではなく~からだ 名詞    : な       +  のは ~ からだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>            からではなく~から だ (注:文末では「~ためだ/~おかげだ/~せいだ}も使われる) ♪ 会話 ♪ 良子:あなたの部屋を掃除してあげたのは、あまりにも汚かったからよ。足の踏み場もない状態だったわ。 李 :それが余計なお世話だって言うんだよ。どこに何があるか、わからなくなってしまったじゃないか。 良子:ふん、頼まれても、もう二度としてあげないわ! 李 :すまん、怒ったのは悪かった。機嫌を直してくれ。 ♯ 解説 ♭  この文型は原因・理由の倒置・強調構文で、文末には「~からだ/~ためだ/~おかげだ/~せいだ」などが呼応します。「~からだ」は終止形接続、「~ためだ/~おかげだ/~せいだ」は連体形接続ですが、各項を参照してください。→例題1)   娘が嫁ぐから寂しいです。→ 寂しいのは娘が嫁ぐからです。   大雪のために電車が止まった。→ 電車が止まったのは大雪のためだ。  なお、「~のは~からで(は)なく、~からだ」もよく使われるので、文型として取り上げておきました。→例題2) § 例文 § 1.自分に素直になれないのは、君が世間体を気にするからさ。 2.こんな不祥事が起こったのは、君の職務怠慢のせいだ。 3.あの政党が分裂したのは、要するに政権につける見通しがなくなったからでしょう。 4.私が人から何と言われようと平気でいられるのは、自分に一点のやましさもないからだ。 5.僕が君を叱るのは、君が憎いからではなく、君に期待しているからだ。 ★ 例題 ★ 1) この秋、野菜が値上がりしている(の/こと)は、台風で農作物が被害を(受ける/受けた)(ため/おかげ)です。 2) 私がこの案に反対( )のは、主旨に問題がある( )( )ではなく、時期尚早と考える( )( )だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ×(肯定・驚き)/なって/の(→文型354) 2) いなかった(「もう~た」文)/ん(≒たぶん~だろう)/か 358 ~のなんのって/~なんてもんじゃない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> +  の  ~ ないのって                     のなんのって 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> +  なんてもんじゃない (注:どれも口語として使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :パソコン通信の楽しいの楽しくないのって。一度始めたら、もう抜け出せない蟻地獄のようなものだよ。 佐藤:いながらにしてネットワークが広がっていくんだもんね。主婦や外国人にとっては、とりわけ便利だよ。 李 :ただね、日本の電話代は高いなんてもんじゃない。おかげで僕の懐はいつもぴいぴいさ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は「非常に ~だ/驚くほど~だ」を表す口語表現で、驚きや意外感がとても強く現れます。「~の~ないのって」と「~のなんのって」は同じ意味で、後者は短縮形とです。これらは「~といったらなかった」(→文型219)と同義表現になりますし、「超うれしい/超驚いた」などの若者語も、今日では同義文型に加えていいでしょう。   銀座でフランス料理を食べたけど、     高いの高くないのって。     高いのなんのって。     高いなんてもんじゃなかったよ。     高いと言ったらなかったよ。     超高かったよ。 § 例文 § 1.驚いたのなんのって、てっきり女とばかり思っていたのに、なんと男だったんだ。 2.その料理のうまいのうまくないのって、ほっぺたが落ちそうだとは正にあのことだよ。 3.その女性の食べるのなんのって、5人前を軽く平らげたよ。 4.うちのおじいちゃんは元気なんてもんじゃない。5階の階段を駆け上がっても、息切れひとつしないんだから。 5.怒ったなんてもんじゃない。頭から湯気をたてていたよ。 ★ 例題 ★ 1) その女性の美しいの(なんのと/なんのって)、(この/あの)世の人とは(思わない/思えない)ほどだった。 2) その注射の痛いの(痛い→     )のって、思わず悲鳴を(上げる→ )(そうだ→   )なったよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) の/受けた/ため(客観理由の「~ため」/~おかげ→文型018) 2) な/から/から 359 *~のに 名詞    : な       +  のに 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> (注:接続詞は「それなのに」 ) ♪ 会話 ♪ 山田:あの鼻持ちならない新入社員、ふん、ざまを見ろ。 百恵:何があったの?ねえねえ、教えて。 山田:英検一級だとほらを吹いていたくせに、アメリカ人の通訳をやらされて四苦八苦さ。ざまはないよ。 百恵:できないのにできるふりをするから、大恥をかくことになるのよ。自業自得ね。 ♯ 解説 ♭  「~のに」は「~だから当然そうなるはずだが、しかし~」という因果の逆説なので、「~けれども/~が」とは異なっています。「~けれども/~が」は前項と後項が対立する関係にあれば広く使えますが、「~のに」は期待や予想に反する事態に直面した時に使われるので、不満・残念・失望の感情が表れます。   もう春だが(・なのに)、少しも暖かくならない。   日本人だが(?なのに)、英語が話せる。  例えば下の例で「日本人なのに」を使うと、因果関係=「日本人だから英語は話せない」、つまり日本人は外国語習得能力が低いということを暗示していますから、日本人は怒り出すでしょうね。→例題1)  なお、「~のに」系逆説に「~くせに」(→文型070)、「~にもかかわらず」(→文型343)、「~にしては/~わりに」(→文型315)などがありますから、各項を参照してください。 § 例文 § 1.知っているのに知らんぷりをして、空とぼけてる。 2.本当はほしいのに、やせ我慢しなくてもいいんだよ。 3.僕のせいでもないのに、怒られたり、弁償させられたり、いやはや踏んだり蹴ったりだ。 4.警察ですらさじを投げた非行少女なのに、一教師のあなたの手に負えるはずがないわ。 5.だから言わないことはない。あれほどやめろと忠告したのにするからだ。 ★ 例題 ★ 1) 気をつけて(取り扱う/取り扱い)ように言った(が/のに)、こんなに壊れてはもう(直す/直し)ようがない。 2) やればできる(子→  )のに、いくら言っても自分から(やる→   )という気になって(くれる→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) なんのって/この(「あの世」は死後の世界)/思えない 2) 痛くない/上げ(様態の「そうだ」)/そうに(=ナ形+なる) 360 *~の下で/*~の下に 名詞: ×  +  の下(に)           の下(で) ♪ 会話 ♪ 李 :こうやって太陽の下で食事をすると、子供の頃の遠足を思い出すよ。お弁当を作るの、大変だっただろ? 良子:最近はスーパーでもいろんなおかずを売ってるし、手軽に買えるから、手がかからなくなったわ。 李 :スーパーも顧客満足度第一の掛け声の下、お客集めに躍起になってるからね。それに味もまあまあだし。 ♯ 解説 ♭  「~の下(もと)」は場所を指す「<もの>の下」ほかに、条件・前提・名目など「<こと>の下」も表します。  例えば、例文1の「~の下」は場所を指していますが、例文2~5は「条件・前提・名目」などの人為的な<こと>の及ぶ範囲を表していて、前に来るのは「人」や「こと」を表す名詞です。  なお、「~の下に」は後件で存在や状態の発生を表す動詞がつかわれ、「~の下で」は動作動詞が使われます。これは「場所+に」と「場所+で」と基本的に同じです。 § 例文 § 1.同じ屋根の下で暮らす家族ほど、大切なものはない。 2.ある時払いの催促なしという約束の下に金を借りた。 3.国際連合は、1945年、人類と世界の平和を守るという理念の下に発足した。 4.自由と民主主義という大義名分の下で、他国に内政干渉をすることが、果たして許されるのだろうか。 5.開発という名の下に、森林が伐採され山が削られ、海が埋め立てられている。 ★ 例題 ★ 1) 監督の厳しい指導の(上/下)、そのチームは(鍛え/鍛えられ)、(ついに/最後に)念願の優勝を果たした。 2) 教育という名( )下に体罰( )行う教師が、今( )後を絶たない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 取り扱う/のに/直し(方法の「~よう」→文型435) 2) 子な/やろう(意志を表す)/くれない(「~のに」逆説文) 361 ~はおろか/~は言うまでもなく/~は言うに及ばず 名詞: ×  +  はおろか     ~ も  ~           は言うまでもなく   さえ           は言うに及ばず    まで ♪ 会話 ♪ 佐藤:あれあれ、山田ったらおつりは言うに及ばず、万札までチップにしちゃったよ。 李 :あんな美人ににっこりされて、すっかり舞い上がってるんだよ。相手は商売なのになあ。 佐藤:そのうち財布の中身はおろか、鼻毛まで抜かれちゃうよ。あいつ、美人に弱いからなあ。 ♯ 解説 ♭  どれも「Aは言うまでもなく、更にBも~」という語感で共通している文型です。作文や会話の時は、先ずAを取り上げ、それよりも程度の高いBを取り上げなくてはなりません。例えば、「彼は漢字は言うまでもなく、ひらがなも書ける」は誤文になります。また、これらの中で「~はおろか」だけはマイナス評価の文で使われる文型なので、プラス評価の文では「~は言うまでもなく/~は言うに及ばず」を使いましょう。○ その子は中学生なのに、かけ算はおろか、足し算さえできない。× その子はまだ5歳なのに、足し算はおろか、かけ算もできる。  これらは「~はもちろん/~はもとより」(→文型374)や、「~ばかりでなく/~ばかりか/~にとどまらず」(→文型363)ともほぼ同義文型になりますから、一括して覚えましょう。 § 例文 § 1.こんな成績では進学はおろか、卒業だって危ないよ。 2.腰が痛くて、立ち上がることはおろか、寝ているのさえ辛い。 3.その地震は家や財産は言うに及ばず、家族の命まで無惨に奪い去った。 4.「ゆとり教育」という言葉と裏腹に、小中学生は言うまでもなく幼児までもが、受験戦争に巻き込まれている。 5.言うまでもなく、事態は風雲急を告げており、一刻の猶予もなりません。<文頭に現れる例> ★ 例題 ★ 1) 漢字はおろか平仮名(さえ/まで)(読める/読めない)彼に、通訳が勤まる(はずではない/はずがない)。 2) その噂はクラスは言う( )( )でもなく、瞬く間に学校全体( )まで(広い→    )まった。 (^^)前課の解答(^^) 1) 下/鍛えられ(受身文)/ついに(様々の過程を経た結果) 2) の/を(他V)/も 362 *~ばかり~する/*~てばかりだ/*~てばかりいる 名詞(+格助詞): ×  +  ばかり + 動詞                 ばかりする                 ばかりだ 動詞      :て形  +  ばかりだ                 ばかりいる ♪ 会話 ♪ 課長:彼は人の揚げ足取りばかりして、自分からは何の提案もしないし、みんなからもつまはじきにされています。 部長:会社の中をうろうろしては、人の噂話ばかりしているらしいな。困ったものだ。 課長:みんなの志気にも影響しますし、思い切ってどこか地方に転勤させてみてはどうでしょうか。 ♯ 解説 ♭  副助詞「ばかり」(口語形として「ばっかし/ばっかり」)は範囲を限定する機能もあり、その点「だけ」と共通する用法もあるのですが、常に程度が過ぎるという語感を伴っていて、いい意味で使われることはありません。これが動詞と結びつくとき「~てばかりだ/~てばかりいる」という形になります。  ちなみに、限定の「~だけ」と「~ばかり」には次のような違いがあります。下例の(a)のグループは「だけ」と置き換えることができますが、(b)のグループは「だけ」が使えません。それは(b)は同一の行為が多く繰り返される、或いは同類の物が多く存在するという意味で使われているからです。   (a)彼女ばかりと話す/私ばかりに文句を言う/男ばかりの会員   (b)お世辞ばかりを言う/心配ばかりかける/石ころばかりの河原 § 例文 § 1.あいつは人のあら探しばかりする嫌な奴だ。 2.いつもお世話ばかりかけて、申し訳ございません。 3.うちの子は本の虫で、部屋に閉じこもって本ばかり読んでいます。 4.「そんなに食べてばかりいると豚になるよ」  「ふん、よけいなお世話よ」 5.考えてばかりいても、何も前には進まない。そのうち日が暮れちゃうよ。 ★ 例題 ★ 1) (泣く/泣いて)(だけ/ばかり)いても、(わかる/わからない)じゃないか。きちんと事情を話して御覧? 2) 彼は周りに文句( )( )( )言って、自分は何も(する→    )とは(する→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) さえ(→文型100)/読めない/はずがない(→文型366) 2) まで/に(「~に広まる」が元)/広(→文型413) 363 *~ばかりでなく/*~ばかりか/~にとどまらず 名詞(+格助詞):    ×     +  ばかりでなく 動詞・形容詞  :普通形<ナ形ーな>    ばかりか 名詞      :    ×     +  にとどまらず 動詞・形容詞  :普通形<ナ形ー×> (注:多くは「~も/~さえ/~すら/~まで」等と呼応する) ♪ 会話 ♪ 山田:彼女みたいな悪女は怖いよ。年下の坊やばかりか、年上の男まで手玉に取るんだから。 佐藤:てっきりお前もその年上の男の一人かと心配してたが、やけどをしないうちに目が覚めて何よりだよ。 李 :美しいバラには刺があるっていうからね。でも蓼食う虫も好き好きで、熱を上げている男も多いだろうさ。 ♯ 解説 ♭  どれも名詞を受けて、「Aだけでなく、更にその上B」と、先ず程度の低いAをとりあげ、それを上回る程度Bを添加する表現です。  「~にとどまらず」も「~に終わらず~も~」と言う意味ですが、「~ばかりでなく」と用法上の差はあまりありません。  「~ばかりか」は 添加のときは「~ばかりでなく」と 用法上の差はありません。しかし、「~ばかりか」には例文5のように「~ばかりか、逆に/反対に~」という反対の結果を強調する用法もあり、この点が「~ばかりか」の最大の特徴でしょう。この場合は「~ばかりでなく」も「~にとどまらず」も使えません。→例題1)  なお、ほぼ同義で置き換えも可能な「AだけでなくB」(→文型133)や「Aに限らずB」(→文型295)などがありますが、前後の程度差は問題にしない表現です。 § 例文 § 1.その方法は非効率なばかりでなく、費用もかさむ。 2.飲み過ぎで、頭が痛いばかりか、胸もむかつく。 3.不登校現象は70年代を通して大都市にとどまらず、地方にまで波及していった。 4.私はその交通事故の現場に居合わせたばかりか、この目で見たんですから、車の側の信号無視は明らかです。 5.政府による弾圧は闘いをつぶせなかったばかりか、逆に闘いの炎を燃え上がらせた。 ★ 例題 ★ 1) 最近(に/で)は地価の上昇が(止めた/止まった)(ばかりでなく/ばかりか)、反対に値下がりしつつある。 2) ビートルズの音楽は世間を(驚いた→    )にとどまらず、若者に与えた影響( )は大変な( )( )がある。 (^^)前課の解答(^^) 1) 泣いて/ばかり/わからない 2) ばかり/しよう(→文型441)/しない 364 ~ばかりに 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> + ばかりに ♪ 会話 ♪ 李 :学歴がないばかりに、能力があっても認めてもらえないという不合理が、まだ残っているね。 山田:残っているどころか、それが偽らざる現実だよ。 李 :そうした古い学歴信仰が残っているばかりに、多くの才能が宝の持ちぐされになってるんじゃないの? 佐藤:確かに一芸に秀でることが問われている時代だね。 ♯ 解説 ♭  「~ばかりに」は形容詞や動詞の完了形(「た」形)について、「~だけの理由で、(悪い結果になった)」という意味を表します。後悔や残念や不満といった感情が強く表れる原因・理由の表現で、後件ではいい事態の発生は表せません。  その点、「~だけで」も「~だけの理由で」という意味を表しますが、用法上の違いがあります。それが唯一の理由で悪い結果になったときは、「~ばかりに」が一番ぴったりします。下の例を見てください。   あなたが側にいてくれるだけで(×ばかりに)僕は幸せだ。   テストに名前を書くのを忘れたばかりに(△だけで)零点にされた。 § 例文 § 1.彼は人がいいばかりに、人に騙されてばかりいる。 2.対戦相手を侮ったばかりに、敗北の憂き目にあった。 3.なまじ空手を習っていたばかりに、やくざとけんかをして刺し殺された。 4.出世したいばかりに、恋人を裏切り、社長令嬢と結婚するなんて男の風上にも置けない奴だ。 5.英語ができると言ったばかりに通訳をさせられ、赤恥をかく羽目に陥った。 ★ 例題 ★ 1) うっかり口を(滑った/滑らせた)(だけに/ばかりに)、相手を(怒って/怒らせて)しまった。 2) 指名手配の犯人に顔が(似た→    )ばかりに警察に(連行する→ )、取り調べを(した→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(範囲限定)/止まった(自V)/ばかりか 2) 驚かせた(使役文:~が驚く→)/に/もの(→文型419) 365 ~ばかりになっている/~ばかりだ/~ばかりの 動詞:原形  +  ばかりになっている           ばかりだ           ばかりの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :遅いなあ。料理は暖めるばかりになっているのに。 良子: もう少し待ってみましょうよ。あっ、来たようよ。ようこそ、山田さん、お待ちしていましたわ。 山田:いやあ、遅れてごめんなさい。電車に乗るばかりの時に、手土産を忘れているのに気がついて。 良子:そんな気を使ってくださらなくてもよかったのに。 ♯ 解説 ♭  「ばかり」が動詞の完了形(「た」形)と結びついた「~た-ばかりだ」は「~して時間が経っていない状態」を表しますが、文型146で取り上げました。これ以外にも「ばかり」には動詞の原形と結びつく「~するばかりになっている/~するばかりだ」の形があり、「全て準備が終わり、いつでも~できる状態」、つまり準備完了状態を表す用法があります。それを図解すると下のようになるでしょう。     図あり  § 例文 § 1.荷造りも終わり、もう運び出すばかりになっている。\ 2.果樹園のリンゴは赤く実り、収穫を待つばかりだ。 3.お米も刈り入れを待つばかりになっていたのに、台風に襲われ、大損害を受けた。 4.夕食の支度も終わり、もう食べるばかりになっているのに、子供たちはまだ帰ってこない。 5.みんなが出発するばかりの時になって、突然、一人がお腹が痛いと言い出した。 ★ 例題 ★ 1) 飛行機が離陸(する/した)(だけ/ばかり)の時、銃を持った全身黒(だらけ/ずくめ)の男達が乗り込んできた。 2) そのプロジェクトは始める( )( )( )になっていたのに、突如、本社から( )中止命令( )下りた。 (^^)前課の解答(^^) 1) 滑らせた(使役文:口が滑る→)/ばかりに/怒らせて(使役文) 2) 似ていた/連行され(「連行されて」も可)/取り調べられた 366 *~はずがない 名詞     :    の     +  はずがない こんな・そんな:    ×        はずはない 動詞・形容詞 :普通形<ナ形ーな>    はずない<口> ♪ 会話 ♪ 李 :おかしいなあ!彼の住所が見つからない。書き留めておいたはずなのに、ないはずはないがなあ。 良子:私も物忘れがひどくなったわ。しまったはずの洗濯物が見つからなかったり、やはり年のせいかしら? 李 :まさか、まだ30代だよ。だが自分だけはそんなはずはないと思っていても、やはり年だけはとるからねえ。 ♯ 解説 ♭  「はず」は可能性・予定を表す形式名詞で、この「~はずがない」は「~の可能性は全くない」という意味を表します。同じ意味を「~わけがない」を使っても表すことができます。なお、「~ないはずがない」は二重否定で「~はずだ」と同義になります。  「~はずだ」の否定形には「~はずがない」と「~ないはずだ」がありますが、「~はずがない」は「絶対/決して」などの副詞と呼応し、「~ないはずだ」は「たぶん/おそらく」などの副詞と呼応します。つまり、下例のように「~はずがない」は100%の否定ですが、「~ないはずだ」は「来ない可能性が高い」が「来る」可能性も少しあります。   彼は来るはずがない。<来る可能性は100%ない>   彼は来ないはずだ。 <来ない可能性が高いが、来る可能性も少しある> § 例文 § 1.子供だって登れる山だから、危険なはずがないよ。 2.どこの馬の骨かわからない奴の言葉が信じられるはずがない。 3.「どこにもありませんよ」「そんなはずはない。もっとよく探せ」 4.君にできないはずがない。やろうとしないから、いつまでたってもできないんだ。 5.祭日なのに、ディズニーランドが込んでいないはずがないじゃないか。 ★ 例題 ★ 1) 教師で(しか/さえ)(できる/できない)ような難しい問題なのに、中学生に解ける(はずだ/はずがない)。 2) 彼( )は僕が直接連絡(する→    )のだから、今日の会議のことを彼が(知る→    )はずがない。 (^^)前課の解答(^^) 1) する/ばかり/ずくめ(~だらけ→文型155/~ずくめ→文型118) 2) ばかり/の(格助詞+の+N)/が(自V) 367 *~はずだ 名詞    :    の      +  はずだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     はずの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:今日恥をかいちゃったわ。あまりにあなた似た人がいたから声かけたの。そうしたら人違いだったの。 李 :へえ、その人、そんなに僕に似てたの? 良子:ええ、後ろ姿が瓜二つなの。あんなに似ている人はめったにいないはずだけど、世の中にはそっくりな人がいるものねえ。 ♯ 解説 ♭  「はず」は可能性・予定を表す形式名詞で、「~はずだ」は「バスの出発時間は11時のはずだ」のように予定を表すか、或いは、「~可能性はとても高い」と判断した時に使います。問題になるのは「わけだ」との違いですが、下の例を見てみましょう。   彼は五年も米国にいたのだから、     英語が上手なはずだ。  <未知>     英語が上手なわけだ。  <既知>「~はずだ」は彼が英語が上手かどうかはまだ知らないが、「五年も米国にいたのだから、きっと~だろう」という推測です。しかし「~わけだ」は彼が英語が上手だということはよく知っていて、それを「五年も米国にいたのだから、当然だ」と受けとめる表現です。つまり、未知の「~はずだ」、既知の「~わけだ」と言えるでしょう。 § 例文 § 1.星がいっぱい出ているし、明日は晴れるはずです。 2.何を油を売っている!まだ休憩時間ではないはずだ。 3.あの人は、確か大阪出身だったはずだよ。 4.「明日は都民の日だから、区役所は休みかしら?」「そのはずだよ」 5.「彼、デパートの子供用品売場で買い物をしてたよ」「おかしいなあ、彼には子供はいないはずなのに」 ★ 例題 ★ 1) 「発車は八時の(はず/わけ)だから、まだ時間もあるし、コーヒー(を/でも)飲んで(行く/行こう)よ」  「でも、少し早めに行ってた方が安心できるわ」 2) 君は五年も日本( )(住む→     )のだから、もう日本語で困ったり(する→    )はずだろう? (^^)前課の解答(^^) 1) さえ(→文型100)/できない/はずがない 2) に/した(過去のこと)/知らない(=知っているはずだ) 368 ~はずだった/~はずではなかった 名詞     :    の     + はずだった 動詞・形容詞 :普通形<ナ形ーな>   はずではなかった こんな・そんな:    ×       はずじゃなかった<口> ♪ 会話 ♪ 李 :難波君が出迎えに来てくれるはずだったんだが、急に都合が悪くなってね。奥さんが来てくれたよ。 良子:私も一度お会いしてるはずね。感じのいい方だったわ。米国に留学するはずだったんじゃないの? 李 :子供が産まれて、断念したらしい。それにしても、彼女の中国語もなかなかのものだったよ。さすが外大卒。 ♯ 解説 ♭  「~はずだった/~はずではなかった」は、多くは「~はずだったが、しかし~/~はずではなかったが、しかし~」の形で使われ、「~と思っていたが、実際は期待に反する結果になってしまった」ことを表します。失望・残念・不満・後悔などの感情が強く現れる表現です。→例題1)   合格するはずだったが、・・・ =実際は合格しなかった   合格しないはずだったが、・・・=実際は合格した  なお、例文1のように自分が先に意図したことを後で変えたときは、「~つもりだった」(→文型175)を使うことができるでしょう。→例題2) § 例文 § 1.行かないはずだったが、急に気が変わってね。 2.うまくいくはずだったんだがなあ。何でこんなことに。 3.平日なので空いているはずだったが、話題のアニメとあって、映画館は子供連れの家族で満杯だった。 4.あっ、掲示された合格者名簿に僕の名前がない!こんなはずじゃなかったのに。 5.天気予報だと、今日雨が降るはずではなかったが、少し小雨がぱらついてきた。 ★ 例題 ★ 1) こんなに高い(はずだった/はずではなかった)(ので/のに)、(いつの間に/いつしか)値上がりしたんだ? 2) その書類はこの棚( )(しまう→     )はずだったのに、どう(する→   )んだろう?ないなあ。 (^^)前課の解答(^^) 1) はず(予定)/でも(例えば~など→文型281)/行こう(提案) 2) に/住んでいる(継続:「~ずっと」を入れてみる)/しない 369 ~ばそれまでだ/~たらそれまでだ 名詞    :であれば/なら         + それまでだ 動詞・形容詞:仮定形<ナ形ーであれば/なら>        た形 + ら        原形 + と ♪ 会話 ♪ 良子:女も子供ができるとそれまでね。自分のやりたいことが何ひとつできなくなるわ。母親がそばにいてくれれば何とかなるけど・・・。 李 :でもさ、一度でもお母さんに頼ったらそれまでで、何かと便利で居心地がいいから、抜け出せなくなるよ。 良子:それもそうね。それに母もいつまでも若くないし。 ♯ 解説 ♭  この文型は「~まで」(→文型405)から派生した文型で、「<~と/~ば/~たら/~なら>それまでだ」(前に来る語が名詞やナ形のときは「なら」)の形で使われると、「~なったら、全て終わりだ/全てが駄目になる」という諦めや絶望を表します。  「~と/~ば/~たら」をどう使い分けるかは難しい問題ですが、「~と」は必然の結果、「~ば」は「もし~であれば、~と言う結果になる」という一般判断、「~たら」は一回性のことに使われる特徴があります。詳しくは資料・を参照してください。 § 例文 § 1.万引きなんかやめろよ。見つかったらそれまでだ。 2.せっかくの野外コンサートも、雨天ならそれまでだ。 3.これこそ千載一遇の好機、この機会を逃したらそれまでだ。 4.どんなに苦しくても、途中であきらめたらそれまでだ。  今までの苦労が水の泡となる。 5.何があろうと死んではいけない。死んでしまえばそれまでだ。死んで花実が咲くものか。 ★ 例題 ★ 1) いくら教師が一生懸命がんばった(ところが/ところで)、学生にやる気が(あれば/なければ)それ(だけ/まで)だ。 2) いくらいい辞書を(買う→    )ところで、(使う→     )ばそれ( )( )だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) はずではなかった/のに/いつの間に(副詞の意味の差) 2) に/しまった(過去)/した 370 ~は~とされる/~は~とみなされる ~は、名詞    :   × / だ    +  とされる    動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>    とみなされる (注:広く句と結びつき、内容を「~と」で引用する) ♪ 会話 ♪ 李 :あの大学に入るのは難しいとされているけど、毎年数千人もが合格してるんだよね。 良子:神様って不公平ね。勉強しなくても成績のいい人はいるし、寝る間を惜しんで勉強しても駄目な人もいる。 李 :学校の成績がいい者が能力がある者とみなされているけど、IQでは計りきれないのが人間だよ。 ♯ 解説 ♭  この文型は「~を~とする(→文型471)/~を~とみなす」の受け身文で、「~は~と考えられている」と同じ意味を表します。一般にそうみなされているという客観的表現で、個人の見解ではありません。社会通念や社会常識と言えるでしょう。  用例的には例文のように疑問の気持ちを表していることが多く、「~とされているが、しかし~/~とみなされているが、しかし~」のように、後件で逆の事実を表すことが多いでしょう。 § 例文 § 1.猿は人間の祖先とされているが、果たして本当か。 2.女は男より能力が劣るとみなされてきたが、今や女たちの方が元気な時代だ。 3.民主主義は独裁主義に勝るとされるが、一概にそうとも言えないのではないだろうか。 4.漢方薬は副作用が少ないとされているが、実際はどうか。 5.新聞は真実を伝えるものとみなされているが、疑ってかかった方がいいだろう。 ★ 例題 ★ 1) 土地は(上げる/上がる)ことはあっても(下げる/下がる)ことのない資産と(なって/されて)きた。 2) 親が老いたら子( )面倒を見るのが当然だ( )(みなす→     )てきた。 (^^)前課の解答(^^) 1) ところで(~した・ところで~ない→文型147)/なければ/まで 2) 買った(~した・ところで~ない→文型147)/使わなけれ/まで 371 *~はともかく/~はともあれ/~はさておいて 名詞   : ×  +  はともかく(として) ~かどうか: ×     はともあれ              はさておいて              さておき ♪ 会話 ♪ 李 :大変だったね。体力が回復するまで、しばらく入院したら?何はさておき、君の体が第一だ。 良子:ありがとう。どこが悪いかわかるまでは、とても不安だったわ。でも単なる盲腸炎だったから。 李 :病院の食事は味の方はともかく、栄養のバランスはいいのだから、残しちゃ駄目だよ。 ♯ 解説 ♭  「~はともかく/~はともあれ/~はさておいて」は微妙な語感の差があるのですが、どれも「~のことは考えないで/~は一旦保留して」という意味を表します。それまでの話題を一旦保留して、より大事な話題に移りたいときに多く使われます。  この文型は「~は別にして」(→文型372)を使っても表せますが、「~は別にして」には「~を除いて/~以外は」を表す他の用法があり、その場合、この文型は使えません。   このクラスはタパさん     ○は別にして     ○を除いて/以外は     ×はさておいて/はともあれ   全員漢字はわかります。  なお、例文5の「何はともあれ」や「何はさておき」は慣用表現で、「他のことに優先して、先ず~」という意味を表します。 § 例文 § 1.冗談はさておき、今後どうするかを先ず決めよう。 2.勝敗はともかく、私達はこの試合で持てる力を出し切った。 3.主張の是非はともかくとして、先輩に対する君の口のきき方は礼を失している。 4.昔のことはともあれ、今の彼が真面目に働いていることは認めてやるべきだ。 5.さあさあ、お疲れでしょう。何はともあれ、荷物を置いて、おくつろぎください。 ★ 例題 ★ 1) (たとえ/もし)補欠で(ある/あろう)と、何は(ともかく/ともあれ)合格できたんだからよかったよ。 2) 日本人が(働く→   )過ぎ( )どう( )はともかく、批判的な声( )高まっているの( )事実だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 上がる(自V)/下がる(自V)/されて 2) が(~が~の面倒をみる)/と/みなされ 372 *~は別にして/~は除いて 名詞   : ×  +  は別にして/を別にして  ・ ~かどうか: ×     は別にいたしまして              は別として/を別として              は別といたしまして              は除いて/を除いて    ・ ♪ 会話 ♪ 李 :君、髪の毛が薄くなったって気にしてただろ。効くかどうかは別として、これ使ってみたら? 佐藤:今話題の毛生薬だね。効き目があるといいがなあ。今の僕は「溺れる者は藁をもつかむ」心境なんだ。 李 :騙されたと思って試してみなよ。この薬、中国でも特定の店を除いて、手に入らなくなっているそうだ。 ♯ 解説 ♭  「~は別にして/~は除いて」は「~を除外して」という意味を共有しています。しかし、「~は別にして」には例文1~3のように「~はともかく/~はともあれ/~はさておいて」(→文型371)と共通する保留したり考慮外にする用法がありますが、その場合、除外しか表せない「~は除いて」は使えません。   彼は別にして(・は除いて/×はともかく)、他の全員が賛成だ。   良し悪しは別にして(× は除いて/・はともかく)、それが現実だ。  また、他動詞「除く」には「~を除いて~(は)ない」(→文型458)という慣用文型がありますが、この場合「別にして」は使えません。   彼を除いて(×別にして)適材はいない。 § 例文 § 1.好き嫌いは別として、ボーダレスの時代に進みつつある。 2.あの娘さんは器量の良し悪しは別といたしまして、気だての良さではぴか一です。 3.商いとしてものになるかどうかは別にして、話だけは聞いてみてもいいだろう。 4.君を除いて(⇔を別にして)全員が賛成している。 5.方法論の問題を除いて(⇔を別にして)、両者の間には大きな意見の隔たりないと思える。 ★ 例題 ★ 1) 住宅問題は別として、日本人の生活水準は欧米(風/並)(にした/になった)と(言う/言える)だろう。 2) この曲( )メロディーは別として歌詩がいい。若者の社会( )の怒り、(悲しむ→   )が溢れている。 (^^)前課の解答(^^) 1) たとえ(たとえ~ても)/あろう(→文型437)/ともあれ 2) 働き(→文型117)/か/か/が(「高まる」は自V)/は 373 ~は無理からぬ/~はもっともだ 名詞    :    ×     +   は無理からぬ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> +  のは無理からぬことだ                      のはもっともだ ♪ 会話 ♪ 李 :まもなく真理さんと、新生活のスタートだね。 佐藤:うん、ただ彼女、社宅は嫌だと言ってきかないんだ。私生活まで会社に管理されたくないって。 李 :真理さんにしてみれば、そう思うのも無理からぬことだね。社宅の奥さん連中は何かと口うるさいからね。 佐藤:そう言えば、それで君たちも社宅を出たんだったね。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は一般常識や人情、道理から考えて「~するのは当然だ」という意味を表しますが、「無理からぬ」は「そうなったのは仕方がない」と消極的に認める語感を、「もっとも」は「もちろん正しい」と積極的に認める語感をそれぞれ持っています。なお、「~(の)は無理からぬ」は書面語なので、会話では「~(の)は当たり前だ/~(の)は当然だ」を使えばいいでしょう。  彼が怒るのは 無理からぬ。         もっともだ。         当たり前だ。 § 例文 § 1.あんなに働きづめに働いては、過労死するのも無理からぬ。 2.酔っては暴力、あれでは奥さんが愛想を尽かすのも無理からぬことだ。 3.面と向かって馬鹿呼ばわりされたんだから、彼が怒ったのは無理からぬことだ。 4.君が今回の上層部の処置に不満なのはもっともだ。 5.あなたのお怒りはもっともですが、これにはいろいろ事情がございまして。 ★ 例題 ★ 1) あんなに湯水のように金を使っ(ては/ても)、財産を食いつぶす(の/こと)も無理からぬ(の/こと)だ。 2) 君の意見は理屈の上( )はもっともだが、それでは仲間( )の情義を欠くことに(なる→     )か。 (^^)前課の解答(^^) 1) 並(~並→文型275/~風→文型377)/なった/言える 2) は/へ(~に対するN=~へのN)/悲しみ(→文型097) 374 *~はもちろん/*~は元より 名詞    :    ×       + はもちろん ~ も ~ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>+の   は元より   さえ                             まで ♪ 会話 ♪ 良子:あなたの姪っこさんが日本に留学に来る話はどうなったの。学費は元より、日本での生活のこともあるし。 李 :諸手続きはだいたい終わったんだよ。後は入管の審査待ちってところだ。 良子:引っ越しや買い物はもちろん、私にできることは何でも手伝うわ。何だか妹が一人増えたような気分よ。 ♯ 解説 ♭  「もちろん」は副詞で、例文1のように単独でも使われますし、「もとより」も「最初から/元々」という意味の副詞で、例文2や「そんなこと、元より承知だ」のように単独でも使われます。  「~はもちろん/~は元より」は「~はもちろんのこと、その他~も」という意味を表しますが、「Aがそうなのは言うまでもなく自明のことだ」という語感で共通しています。    社長は もちろん、    役員一同が反対だ。        もとより、        言うまでもなく、 § 例文 § 1.もちろん誰だって、自分の身はかわいいさ。 2.元より私はあなたの考えに賛成でした。 3.料理自慢の彼にとっては、和食はもちろん、中華から洋食まで、何でもお茶の子さいさいだ。 4.彼はアメリカ人だが、日本語は元より、日本の伝統・文化そして国民性に至るまで精通している。 5.対人関係づくりが苦手なのは元より、自分自身の意見すら持っていない若者が増えているという報告がある。 ★ 例題 ★ 1) 君がこれ(まで/までに)会社に尽くし(てくれた/てもらった)ことは、僕は元よりみんなが(認める/認めている)。 2) 日本の電気製品は性能( )もちろん、デザイン面( )も世界のトップ水準( )ある。 (^^)前課の解答(^^) 1) ては(反復→文型188)/の/こと(「~のは~ことだ」強調文) 2) で(限定)/へ(~に対するN=~へのN)/ならない(反語) 375 *~反面(で) 名詞    :    である        +  反面(で) 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな/である> (注:「半面」とも書く) ♪ 会話 ♪ 良子: 姪っこさんのことだけど、御両親としたら期待を寄せる反面、心配でもあるでしょうね。一人娘でしょ? 李 :何のための留学か、目的がはっきりしてないと、時間の浪費になり兼ねないよ。遊び半分じゃ困るね。 良子: 東京での生活は誘惑も多いし、それに欲しい物は何でもある反面、何をするにもお金がかかるときてる。 ♯ 解説 ♭  「~反面(半面)」は一つの対象の対立する側面を表すのが特徴で、同一主語文で用いられます。類義表現に「~(の)にひきかえ/~(の)に対して/~(の)に対し」(→文型340)がありますが、異主語文で異なる対象を対比させるので、対照的となります。   日本は給料が高い反面(×のにひきかえ)、物価が高い。   父は無口なのにひきかえ(×反面)、母はおしゃべりだ。  なお、「一方」(→文型011)にも同じような用法がありますが、同一対象の異なる面でも、異なる対象の対比でも制限なく使えます。 § 例文 § 1.子育てというのは、手がかかる反面、楽しみも多い。 2.うちの父は日頃優しい反面、怒ると怖い。 3.この仕事は収入が少ない反面、時間が自由になるので、  僕は気に入っているんです。 4.彼は会社では仕事の鬼とも呼ばれている反面、家庭では子煩悩な父親でもある。 5.生活が豊かになる反面で、人と人との結びつきは紙のように薄くなっている。 ★ 例題 ★ 1) 彼は責任感が強い反面で、自分の(思い/思う)通りに(しない/ならない)と、すぐ癇癪を(起きる/起こす)。 2) 世界はボーダレスに(向かう→    )つつある( )、( )( )反面で少数民族の独立運動も激化し始めている。\ (^^)前課の解答(^^) 1) まで/くれた(会社=私と考えての発言)/認めている 2) は/で/に(基準の「に」) 376 ~びる 一部の名詞     : ×   +  びる 一部のイ形容詞の語幹:ー[い] ♪ 会話 ♪ 良子:小平が急に大人びてきたわね。少し前に声変わりしたかと思ったら、早いものね。 李 :早く成人式にならないかなあ。その日はひなびた温泉宿で、親子水入らず、しんみり酒を飲んでみたいね。 良子:私は小平から手が離れたら、思いきりやりたいことをやってみたいわ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~びる」は名詞やイ形容詞の語幹について、「~に近い様子だ/~に近い状態だ」という意味を表す自動詞を作ります。つく語は限られていて、「大人びる・田舎びる…/古びる・ひなびる・幼びる・ひねこびる…」などですから、そのまま語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.僕は奈良のひなびた風景が、たまらなく好きだ。 2.君はいい歳をして、言うことがどこか幼びている。 3.12歳にしては、ずいぶん大人びた顔をしている。 4.人も通わぬような山奥に、古びた洋館がぽつんと一軒建っていた。 5.彼は若いのにひねこびていて、まるで世間ずれした中年男みたいだ。 ★ 例題 ★ 1) 五日市駅を降りて、十分も(歩いて/歩くと)、そこにはまるで東京の郊外とも(思える/思えない)ような田舎(ぶった/びた)風景が広がっていた。 2) 父は(古い→  )びた鞄を大切に(する→    )が、それは亡くなった母( )( )の贈り物だそうだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 思い(→文型225)/にならない/起こす(他V) 2) 向かい(→文型171)/が(逆説)/その 377 ~風/~ふうだ/~ふうをする 名詞 :     ×      +  風だ       ・                    風の + 名詞 動詞 :    普通形     +  ふうだ/ふうに  ・ 形容詞:<イ形~い/ナ形~な>    ふうな + 名詞                    ふうをする    ・ ♪ 会話 ♪ 良子:このドレス、襟の辺りが中国風ね。気に入ったから買ってもいいかしら?それとも、こちらがいいかしら。 李 :どちらでもいいから、早く決めてほしいなあ。 良子:「もうこれ以上つきあいきれないよ」といったふうね。あそこに和風喫茶があるけど、ひと休みする? 李 :それは願ったりかなったり。ビールもあるかなあ? ♯ 解説 ♭  「風」は名詞に直接接続して、「学者風・昔風・現代風・ヨーロッパ風…」などの「~の傾向・~の様式」を表す語を作ります。  「~ふうだ」は例文2、3のように、「~のような様子だ」という意味の助動詞を作ります。「こういうふうに=このように」「疲れたふうだった=疲れたようだった」のように、様態の「~ようだ」に置き換えられますが、用例は限られています。なお、例文2の「利いたふう」と言うのは「何でも知っているかのような生意気な態度」を表す慣用語です。  なお、例文5の「~ふうをする」は「~様子や態度をする」という意味を表す慣用表現ですが、「~ふりをする」(→文型378)と混同しやすいので注意しましょう。→例題1) § 例文 § 1.その方は一見して学者風の好紳士でした。 2.利いたふうな口をきくな。 3.これ、どういうふうに(=どのように)して作ったの? 4.「それって、どこかで聞いたふうな(=ような)セリフだね」「ばれたか。実はある雑誌にあった言葉の受け売りなんだ」 5.あいつときたら、何でも知っているといったふうをして、鼻持ちならないったらありゃしない。 ★ 例題 ★ 1) あの係長は、部下(にとって/に対して)は偉そうな(ふう/ふり)をしている(わりに/くせに)、上役を見るとゴマをする嫌な奴だ。 2) Aさんは息子さん( )大学に合格したの( )(うれしい→     )たまらないといったふうだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) 歩くと(→文型203)/思えない/びた(~ぶる→文型380) 2) 古/している(過去から今までずっと~)/から 378 *~ふりをする 名詞    :   の        + ふりをする 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     ふりする ♪ 会話 ♪ 百恵:女性が酔っぱらいにからまれているのに、他の乗客は見て見ぬふりしていたのよ。私、腹に据え兼ねて・・・。 真理:どうしたの? 百恵:「いい加減にしなさい」って怒鳴ってやったの。 李 :勇敢だねえ。で、周りの男連中は? 百恵:寝たふりをしてたわ。最低よ! ♯ 解説 ♭  「ふり」は元々、動作・表情・しぐさを表す名詞です。   人のふりみて、わが身を直せ。   なりふりかまわず  しかし、この「~ふりをする」は「(本当はそうではないのに)意図的に~ような様子を装う」という意味を表す文型になります。偽りの姿・様子・態度を意味しますから、いい意味で使われることはありません。   知っているのに、知らないふりをする。   知らないのに、知っているふりをする。 § 例文 § 1.酔ったふりをして、女性にエッチなことをする。 2.嫌いなふりして実は好き、女心のまか不思議。 3.彼女はいつも忙しそうなふりをして、僕と顔を合わせても挨拶もしようとしない。 4.山で熊に出会ったら、死んだふりをしろというのは、日本だけの話ではなかった。 5.実際はお転婆娘なのに、人前ではおとなしいふりをするのを「猫をかぶる」と言う。 ★ 例題 ★ 1) 彼は勉強をしている(ふう/ふり)をし(ながら/がてら)、実は彼女にラブレターを(書いた/書いていた)。 2) 部屋にいるのに(いる→   )ふりをして、電話( )(出る→    )としない。 (^^)前課の解答(^^) 1) に対して/ふう/くせに(=非難の「~のに」→文型070) 2) が(従属句の主語)/が(形容詞文)/うれしくて(→文型183) 379 *~ぶりに/*~ぶりだ/~っぷり 期間を表す数詞・名詞: ×  +  ぶりだ       ・                   ぶりに                   ぶりの + 名詞 動詞      ;[ます]形  +  っぷり/ぶり   ・ 一部の名詞   : ×       っぷり/ぶり ♪ 会話 ♪ 李 :久しぶりに新緑が見たくなったなあ。家族そろって北アルプスに行こうよ。 良子:だったら会社の帰りに緑の窓口に寄って、切符を予約してきてよ。特急で長野まで九十分足らずよ。 李 :峠の釜飯も何年ぶりかなあ。新特急の走りっぷりも見たいけど、在来線が廃止されたのは残念だよ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~ぶり」には二つの用法があります。「期間+ぶり」は、「~の時間が経過した後に、~する」という意味を表します。「一年ぶり・三カ月ぶり…」や「久しぶり」など、一番よく使われる「~ぶり」の用法です。  これ以外に「ぶり」(「~っぷり」)は名詞や動詞の[ます]形に接続して、例文4~5のように様子や状態を表します。慣用的に決まった言い方なので、語彙として覚えた方がいいでしょう。主な用例を挙げておきます。名詞:枝ぶり・話ぶり・羽振り・男っぷり…動詞:話しっぷり・飲みっぷり・食べっぷり・走りっぷり・変わりぶり・驚きぶり… § 例文 § 1.いやあ、しばらく。君と会うのは何年ぶりだろう。 2.恋人との三年ぶりの再会に、私の胸はときめいた。 3.忙中閑あり、久しぶりに温泉にでもつかって、骨休めといこうじゃないか。 4.十年ぶりだが、君は相変わらず飲みっぷりがいいね。 5.久方ぶりに大学時代の友人と飲んだが、相当羽ぶりがいいのか、自信たっぷりの話しっぷりだった。 ★ 例題 ★ 1) 私が中国を訪れたのは十年(ずつ/ぶり/毎)のことですが、(それにしては/それにしても)その(変わる/変わり)ぶり(に/で)驚きました。 2) 最近は(忙しい→     )、ゆっくり新聞を読んだ( )は一週間( )( )のことだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ふり/ながら(「~がてら」は付帯行為→文型038)/書いていた 2) いない/に/出よう(→文型441) 380 ~ぶる 名詞    :    ×     +  ぶる 形容詞の語幹:<イ形ー[い]>        <ナ形ー[な]> ♪ 会話 ♪ 李 :ミセス弁論大会で入賞とは素晴らしいね。君のスピーチのどこが評価されたんだろうねえ? 良子:若い世代への期待を、先輩ぶったり偉ぶったりしないで、肩の力を抜いて話したのが評価されたみたい。 李 :その自然体が君らしいね。それに年増女の魅力で男性審査員の票を集めたのかもね。あっ、にらまれた! ♯ 解説 ♭  接尾語「~ぶる」は名詞や形容詞の語幹について、「わざと~ようにふるまう」という意味を表す自動詞を作ります。話者の嫌悪感が強く現れる表現です。  よく使われるものを以下に挙げておきます。名詞 :学者ぶる・聖人ぶる・かわい子ぶる・金持ちぶる・お嬢さんぶる・     いい子ぶる…形容詞:上品ぶる・偉ぶる・賢ぶる・高尚ぶる・驕り高ぶる・深刻ぶる・悪ぶる・     利口ぶる… § 例文 § 1.何だ、あいつ、かわい子ぶっちゃってよ。 2.驕り高ぶる権力者に、今こそ目に物を見せてやる。 3.聖人君子ぶった奴ほど、腹の中が汚い奴が多いんだ。 4.あいつは教師の前ではいつもいい子ぶっているが、そのくせ裏に回っては弱い子をいじめている。 5.悪ぶるのはやめにしなよ。しょせんお前は、本物の悪にはなれないよ。 ★ 例題 ★ 1) たかが女(に/が)ふられた(ほど/ぐらい)で、そんなに(深刻な/深刻)ぶるなよ。俺なんか、(ふる/ふられる)相手もいないんだから。 2) この辺りは高級住宅街で(上品だ→   )ぶった奥さんが多く、とても(つき合う→    )(きれる→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぶり/それにしても(→文型316)/変わり/に(感情Vの理由) 2) 忙しくて(理由の「て」)/の(行為→文型354)/ぶり 381 ~分/~分には 名詞    :    の     +  分    ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>    分には                     分なら 数詞    :    ×     +  分    ・                     分する ♪ 会話 ♪ 魚屋:今日は開店3周年につき、出血大サービスだよ 良子:安い分には、いくら安くてもかまわないわ。でも、この魚、生きはいいんでしょうね。 李 :もちろんさ。今朝、魚市場で仕入れたばかりだよ。 良子:三人分にはちょっと多いけど、このまぐろの中トロ、もらうわ。それから、このイカも頂戴。 ♯ 解説 ♭  「分」は「部分・分け前・本分・身分・程度・情況」などを表す多義語ですが、この「~分」は用法的には大きく二つに分かれ、ひとつは「部分・分け前」を表し、もう一つは「程度・様子・情況」を表します。  また、例文4、5のように「~分には/~分には」の形も使われ、「(~だけ/~程度)なら」という意味を表します。→例題1)  その他、「四分の一」と言った使い方や、「分に応じて」「分を守る」「己の分を尽くす」などの「本分・責任・身分・地位」の意味で使われる慣用的な言い方があります。 § 例文 § 1.このケーキ、四等分したよ。これは僕の分だ。 2.とりあえず一ヶ月分の薬を入れておきますが、使った分だけお支払いくだされば結構です。 3.彼は口は悪いが、その分、根が正直なんだよ。 4.この分なら明日はたぶん晴れるだろうが、念のため、自分の分の雨具は用意しておくように。 5.パソコンは性能がいいに越したことはないが、ワープロや電子メールに使う分には、古い機種で事足りる。 ★ 例題 ★ 1) 私に言う分(では/には)かまわないが、君の口のきき方は他の人(では/には)誤解を与え(兼ねる/兼ねない)よ。 2) 見る分( )( )さしつかえない( )、くれぐれも商品( )は手を触れないように。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(受身文)/ぐらい(低い程度)/深刻/ふられる(受身文) 2) 上品/つき合い(~きる→文型067)/きれない(とても~ない) 382 *~べきだ/*~べき/~べし 動詞:原形  +  べきだ           べし           べき + 名詞 (注:「する」は「→するべきだ/→すべきだ」の両形がある ) ♪ 会話 ♪ 李 :やるべきことが山積みで、何から手をつけたらいいのか、頭が痛いなあ。 良子:何もかも自分でやろうと思わない方がいいわよ。一人で背負い込むのは、あなたの悪い癖よ。働くべき時は働き、休むべき時は休むというけじめをつけるべきよ。 李 :そうだなあ、我ながら嫌な性格だ。 ♯ 解説 ♭  「~べきだ」(「~べし」は文語)は、社会通念上「~するのが当然だ/適切だ」という判断を表す文型で、当然から義務へ、更に「帰るべき家もない」のように唯一可能な選択へと意味は広がります。当然・義務の用例は「~なければならない」と用法が重なりますが、「~べきだ」は話者の意志に無関係な一般論ですから、自分自身がそうしなければならない行為には使えません。→例題1)   もう遅いので、私は    ○帰らなければならない。    ×帰るべきだ。   サラリーマンは雪で通勤電車が止まった日でも、会社に     行かなければならない。<強制されている行動・義務>     行くべきだ。     <社会のルール・建て前> § 例文 § 1.君が悪いんだから、四の五の言わず、謝るべきだ。 2.リーダーぶるのはいい加減にしな。人にあれこれ指図する前に、まず、自らやってみせるべきだ。 3.すべからく、上官の命令には従うべし。 4.打つべき手は全て打った。あとは天命を待つのみだ。 5.まだ死ぬわけにはいかない。やるべきことが残っている。 ★ 例題 ★ 1) 今日は子供の誕生日(で/だから)、早く(帰らなければならない/帰るべきだ)から、悪いが先に(失礼して/失礼させて)もらうよ。 2) (座る→    )たまえ。君の留学( )先立って、話しておく(べし→   )ことがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) には/には/兼ねない(→文型043/~兼ねる→文型044) 2) には/が(逆説)/に(対象の「に」:~に手を触れる) 383 ~べきだった/~べきではなかった/~ばよかった 動詞:原形       +  べきだった                べきではなかった                べきじゃなかった<口> 動詞:仮定形<~ば>  +  よかった ♪ 会話 ♪ 良子:適当に切り上げたら?夕食の時間よ。 李 :やった!ついにホームページ完成したぞ!もう少し画面を見やすくするべきだったかなあ。 良子:ホームページを開いて、一体何を発信するの? 李 :中国人として日本で思ったこと感じたことさ。 良子:日本に残るべきではなかったなんて書かないでよ。 ♯ 解説 ♭  「~べきだ」は「~するのが当然だ/適切だ」を意味しますが、「~べきだった/~べきではなかった」と過去形になると、「~すべきことをしなかった/~してはならないことをした」という過去を振り返って反省する表現になります。  類義表現に「~ばよかった」(→文型383)がありますが、失望や残念と言った後悔の感情が強く現れる表現です。一方、「~べきだった」にはより理性的に過ちを認める語感があります。   もっと勉強すればよかった<後悔>   もっと勉強するべきだった<反省> § 例文 § 1.嫌なら嫌だと、最初から言うべきだったんだ。 2.日本はドイツ並みにきちんと戦争の総括をするべきだった。 3.当てにした俺が馬鹿だった。君になんか相談するべきではなかったよ。 4.受験に失敗して泣くぐらいなら、もっと勉強すればよかったんだ。 5.思えばこの人生、ああすればよかった、こうすればよかったと後悔することばかりだ。 ★ 例題 ★ 1) こんなことに(なったら/なるんだったら)、彼に(やる/やらせる)べき(だった/ではなかった)。 2) 今更こうすべき(だ→    )、ああすべき(だ→    )と(嘆く→   )もはじまらない。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(理由並列)/帰らなければならない/失礼させて(→文型102) 2) 座り(~たまえ→文型182)/に(~に先だち→文型311)/べき 384 *~べきではない/~べからず/~べからざる 動詞:原形  +  べきではない           べきじゃない<口>           べからず           べからざる + 名詞 ♪ 会話 ♪ 部長:最近の通貨不安で、アジアの中でもこれだけの価格差が生じている事実は、ゆめゆめ見逃すべきではないね。 課長:変化のあるところに儲けの種があることも、忘れるべからずですね。この機に乗じて海外進出すべきでは? 部長:朝から当たるべからざる勢いだね。でも当社のべからず集に、浮利を追わずとあるのを御存知かな。 ♯ 解説 ♭  「~べきではない/~べからず」は「~べきだ/~べし」(→文型 382)に対応する否定表現で、「~てはならない」と同じ禁止の意味を表します。いずれも個人的な判断ではなく、社会通念上許されないという判断です。「~べからず」は今日では書面語ですが、「~するな」という禁止命令に近い表現になります。  また、「~べからず」の連体形が「~べからざる」で、「~べからざる+名詞」は「~てはならない+名詞」と同じ意味を表しますが、書面語で改まった会話の場でしか使われないでしょう。 § 例文 § 1.何事も日々の積み重ねをおろそかにすべきではない。 2.他人のいいところを見るべきであって、あら探しをすべきではない。 3.初心、忘るべからず。 4.関係者以外立ち入るべからず。 5.今日の社会では、コンピューターは欠くべからざるものとなっている。 ★ 例題 ★ 1) この種の言論(に対する/に関する)暴力や脅迫は、民主主義社会(にあって/について)は許す(べからず/べからざる)行為である。 2) アジア諸国は、互いに(助ける→   )合うべきであり、(争う→   )合う(べきだ→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) なるんだったら/やらせる(使役文)/できではなかった 2) だった/だった/嘆いて(~てもはじまらない→文型201) 385 ~べく~/~べくもない 動詞:原形  + べく ~ する  ・          べくもない    ・ ♪ 会話 ♪ 課長:今回の工事は売上げ目標を達成すべく、採算面の不安はあったが受注した。のるかそるかの大博打だ。 佐藤:工期の短縮がポイントになると思います。過度の利益は期待すべくもないですが。 李 :しくじったら目も当てられませんが、一か八か、やってみましょう。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」です。 ♯ 解説 ♭  「べし」の連用形が「べく」で、「(当然しなくてはならないと思うことを)~しようと考えて」ということから目的を表すようになります。「~ために」(→文型153)と置き換えることが可能ですが、個人の意志というより当然の義務という気持ちが「~べく」には込められています。   家を買うべく貯金している。→ 家を買うために貯金している。  「~べくもない」は「(そう望むが)実際はとてもできない」という不可能な事態を表します。「~したくてもできない」や「~しようにもできない」(→文型447)に置き換えられますが、個人の能力ではなく、周囲の条件や社会的理由によって希望が妨げられているという語感になります。どちらも今日では文語表現です。   家か高くて、買うべくもない。→家が高くて、買いたくても買えない。 § 例文 § 1.多くのボランティアが被災者を救援するべく、被災地の神戸に向かった。 2.大学に合格したことを親に伝えるべく、国際電話をかけた。 3.彼は自分のマイホームを持つべく、節約に節約を重ねた。 4.年収の数倍以上もしては、一般サラリーマンにはマイホームを手に入れるべくもない。 5.そうしたいのは山々だが、今の僕には君の窮状を救うべくもない。 ★ 例題 ★ 1) 事態がここ(ほど/まで)悪化し(ては/ても)、もはや平和的解決など望む(べき/べく)もない。 2) 明治維新( )学び、祖国の独立と発展( )貢献す(べし→  )、多くの中国留学生が日本に渡った。 (^^)前課の解答(^^) 1) に対する(→文型322)/にあって(→文型287)/べからざる 2) 助け(相互行為の「~合う」→文型288)/争い/べきではない 386 ~べくして/~べくして~ない 動詞A:原形  +  べくして  +  動詞A  ・ 動詞A:原形  +  べくして  ~  ない   ・ ♪ 会話 ♪ 李 :あれだけ勉強したのだから、中国語通訳ガイド試験は合格すべくして合格したんだよ。おめでとう! 佐藤:ありがとう。李老師という立派な先生が身近にいるなんて、普通は望むべくして望み得ない環境だよ。 山田:君の若さが羨ましいよ。僕なんか最近は記憶力がガタ落ちで、外国語なんてやる気も起きないよ。 ♯ 解説 ♭  「~べくして」は意味が二つに分かれます。先ずこの表現は、例文1~3のように、同じ動詞を繰り返して「~なるのは当然であり、またそうなった」という自明の理・必然の帰結を表し、今でもよく使われます。  もうひとつは例文4、5のように、「~べくして~ない」の形で、「~ことは~が、実際はそれだけで何も~ない」という建前だけのことに使われます。ただ、用例も限られていて、最近ではあまり耳にしない文語表現となっています。 § 例文 § 1.よき伝統というものは、残るべくして残ったのだ。 2.ローマ帝国は滅ぶべくして滅んだのだ。 3.今日の民族紛争は、起こるべくして起こっていると言える。 4.行財政改革だ、行財政改革だと騒がれているが、言うべくして行われない。 5.地球環境を守れとは誰も言う。しかし、なすべくしてなし得ないままでいる。 ★ 例題 ★ 1) 僕たちふたりは、(生む/生まれる)前から、赤い糸で(結んで/結ばれて)いたんだ。そして出会う(べく/べからず)して出会ったんだよ。 2) (潔い→    )負けを認めよう。この試合は(負ける→    )べくして(負ける→    )のだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) まで(ここまで≒これほど)/ては(仮定→文型188)/べく 2) に/に/べく 387 ~へと/~へ~へと 名詞: ×  + へと 名詞A: × + へ  名詞A: ×  + へと ♪ 会話 ♪ 李 :川はとうとうと海へ海へと流れていくね。この川がどれだけの人を養ってきたのか、想像もつかないなあ。 良子:川の流れを見ていると、人間のはかなさを感じるわ。「川の水は絶えずして、しかも元の水にあらず」か。 李 :しかしね、僕たちも今は川底の小石みたいなもんだけど、まだ見ぬ海を探して旅をしてるのさ。 ♯ 解説 ♭  この文型は移動の方向や進路を指す「~へ」と意味は全く同じです。「~へ」を使うときは「行く・来る・帰る」などの移動動詞が使われますが、後件に一般の動作動詞が来るときに使うのが「~へと~する」です。   妻の急病を知り、急いで家へ帰る。<移動V>  =妻の急病を知り、家へと急ぐ。<動作V>  それを更に強調すると、「~へ~へと~する」という文型になり、「ひたすら/ただ一筋~する」という意味になります。 § 例文 § 1.兵士たちを乗せた輸送船は、一路、戦地へと急いだ。\ 2.その少年を非行の道へと走らせたのは、両親の離婚に伴う家庭崩壊が原因だった。 3.渡り鳥が、北へ北へと飛びたっていった。 4.その小舟は沖へ沖へとこぎだし、遠ざかり、やがて見えなくなった。 5.人間というものは、楽な方へ楽な方へと流されやすい。 ★ 例題 ★ 1) (どうか/どうも)世の中が悪い方(に/へ)悪い方(に/へ)と動いているような気がし(てたまらない/てならない)。 2) 上流( )と向かった船は、しだいに急流( )行く手を(阻まれる→  )始めた。 (^^)前課の解答(^^) 1) 生まれる(自V)/結ばれて(受身文)/べくして 2) 潔く(イ形の連用形)/負ける/負けた 388 *~方がいい/*~方がましだ 名詞 :   の      +  方がいい   ・ 動詞 :た形/ない形       方がましだ  ・ 形容詞:原形<ナ形ーな> (注:「原形+方がいい/方がましだ」が使われることもある) ♪ 会話 ♪ 李 :お金はないよりあった方がいい。ただねえ・・・。 良子:ふん、そのためにあくせくしたくないって、そう言いたいんでしょ。 李 :ズバリその通り。その時間をもっと家族のためとか、自分のやりたいことに使った方がましだと思うんだ。 良子:でも、もう少しましな生活がしたいとは思わない? ♯ 解説 ♭  「~方がいい」は一般的な勧告や提案の文型で、「どちらかと言えば~が適当だ」という話者の判断を表します。「~方がましだ」は「(両者を比較して)~よりも、~の方がいい」と、はっきりと対立する二つの選択を比較して優劣を述べます。そのため、時として激しい反発・抗議の感情を表すことがあります。特に「~ぐらいなら、むしろ~方がましだ」(→文型074)という文型は、強い反発を表すでしょう。この他に「ましだ」はナ形容詞なので「ましな生活」や例文5の「ましな物」のように単独でも使えます。  なお「(色々ある中で)~するのが最善だ」を意味する「~に越したことはない」(→文型309)も同じ勧告を表す文型なので、一緒に覚えておきましょう。 § 例文 § 1.安ければ安い方がいいに決まってるじゃないか。 2.知らない方がいいことだってあるんだよ。 3.「覆水盆に返らず」さ。逃げた女房のことなんか、忘れっちまいな。嫌なことは早く忘れた方がいい。 4.どうせやっても無駄骨だから、やめた方がましだ。 5.もう少しましな物を食わせろよ。こんなまずい飯、食わない方がましだ。 ★ 例題 ★ 1) 頑張った(ところが/ところで)、給料が上がる(わけにはいかない/わけではない)んだから、適当にやった(方がいい/に越したことはない)よ。 2) 勉強は(できる→    )より(できる→    )方がいいが、それで人間の価値( )決まるわけじゃない。 (^^)前課の解答(^^) 1) どうも/へ/へ/てならない(自発・自然→文型187) 2) へ/に(受身文:急流が行く手を遮る→)/阻まれ 389 ~放題 動詞  :[ます]形  +  放題                たい放題 (一部のナ形容詞につく「好き放題」のような例がある) ♪ 会話 ♪ 李 :夫婦の間であっても、そんな言い草はないよ。それじゃあ、君の言いたい放題じゃないか。 良子:自分はしたい放題のことをしているくせに、一体全体、私のどこが悪いのか教えてちょうだい! 李 :ちょっと休戦しよう。とても口では君にかなわない。 良子:いつも会社を口実にするけど、何様のつもりなの! ♯ 解説 ♭  「放題」はあるべき大義名分や常識を越えることを意味します。そこから派生したのが動詞の[ます]形に接続する「放題」で、「~したいだけ、無制限に~する」という意味を表します。本来、制限なく、思うままに何でもするという悪い意味で使われたと思いますが、「飲み放題・食べ放題で二千円」のように庶民にも歓迎されるいい意味でも使われるようになっています。  なお、この「~放題」は「~だけ~する」(→文型131)を使っても表せます。  暴れ放題 → 暴れたいだけ暴れる  迷惑のかけ放題 → 迷惑をかけるだけかける § 例文 § 1.食べ放題飲み放題で3000円といった店が増えている。 2.彼は社長の甥であることを笠に着て、好き放題をやってる。 3.やりたい放題のワンマン経営はついに破綻し、ついに倒産に至った。 4.君は昔から母親に甘え放題だったから、いつまでたってもマザコンから抜けられないんだよ。 5.あいつは俺に迷惑をかけ放題かけて、俺が一言文句を言ったら、どこかへ消えちゃったよ。 ★ 例題 ★ 1) いくら財産がある(からには/からと言って)、あんなに使い(次第/放題)使ってれば、なく(なる/する)に決まってる。 2) こんなに暴走族が(暴れる→   )放題に暴れているのに、警察は何も(できる→    )んです( )! (^^)前課の解答(^^) 1) ところで(→文型147)/わけではない/方がいい(Vが「た形」) 2) できない/できた/が(自V) 390 *~ほか(は)ない/*~よりほか~ない これ・それ・あれ:  ×  + ほか(は)ない 動詞      : 原形    よりほかしかたがない                 よりほか ~ ない ♪ 会話 ♪ 良子:中野から新宿まで、人身事故で中央線が不通だって構内放送してるわよ。待つよりほかないのかな? 小平:えっ、どうしよう。困ったなあ、一時間目から試験なんだ。 良子: じゃあ、総武線に乗り換えるほかないわよ。まだ間に合うかもしれないわ。さあ、急いで。 ♯ 解説 ♭  「~ほか(は)ない/~よりほか~ない」は、「~しかない」(→文型108)のグループで、どれも「~以外にない/~以外の方法はない」という意味を表し、それが唯一の選択であることを強調する表現になります。なお、下の例のように「~(より)ほか~ない」の間に語が入ることもあります。   こうなったら、引き返す しかない。               ほかない。               よりほかない。               よりほか残された方法はない。 § 例文 § 1.今は再起を期して、時節到来を待つほかはない。 2.どう答えていいのかわからず、笑ってごまかすよりほかしかたがなかった。 3.数千年も前の遺体が、そのままの姿で発掘されたなんて、ただただ驚くほかない。 4.もう手術をするよりほか患者を救う道はありません。 5.長年の苦労が元の木阿弥になったけど、くよくよしても始まらないし、また一から出直すよりほかないね。 ★ 例題 ★ 1) (わざわざ/せっかく)の縁談だが、本人が嫌だという(からには/からこそ)、断るより(しか/ほか)ない。 2) やれるだけのことは(やる→   )んだから、後は結果が出る( )を待つほか(ある→   )よ。 (^^)前課の解答(^^) 1) からと言って(→文型053)/放題/なる(当然の結果) 2) 暴れ/できない/か(詰問) 391 ~ぽっち/~ぽっきり これ・それ・あれ・数詞: ×  +  ぽっち                    ぽっちの  + 名詞 数詞         : ×  +  ぽっきり                    ぽっきりの + 名詞 ♪ 会話 ♪ 小平:栗の皮って、むくのって難しいね。一時間たってもたったこれっぽっちだ。食べればあっという間なのに。 良子:栗の皮くらいで悲鳴を上げないでよ。家事はささいなことの積み重ねよ。これからは男の子も家事ができないと、お嫁さんの来手がないわよ。 李 : ただいま、いい匂いだね。今日は栗ご飯かい? ♯ 解説 ♭  これらの接尾語は「~だけしか数量がない」という意味を表します。「~ぽっち」は数詞や「これ・それ・あれ」と結びつき、とても少なく不足しているといった嘆息の感情が強く現れます。  「~ぽっきり」は「~だけで終わり」という「だけ」と同じ限定表現なので、同じ文脈で使っても語感の差が生じます。また、「~ぽっきり」は「これ・それ・あれ」にはつきませんし、「ぽっきり」は「木の枝がぽっきり折れた」というような副詞の用法もあります。→例題1) § 例文 § 1.それっぽっちのはした金じゃ、焼け石に水だよ。 2.大きな口を叩いたくせに、これっぽっちのこともできないのか。 3.三人ぽっち(⇔ぽっきり)じゃ、とても人手が足りない。 4.お父さんったら、けちもいいとこ、2000円ぽっち(⇔ぽっきり)しかお年玉をくれなかった。 5.三百グラムぽっち(⇔ぽっきり)の肉なんて、この子ひとりでペロリと平らげちゃうよ。 ★ 例題 ★ 1) たったこれっ(ぽっち/ぽっきり)(だけ/しか)ないの? 2) 上を向いて歩こう。涙が(こぼれる→     )ように、(泣く→   )ながら歩く、ひとり( )( )( )の夜。 (歌:坂本九、作詞:永六輔) (^^)前課の解答(^^) 1) せっかく/からには(→文型056/~からこそ→文型050)/ほか 2) やった/の(名詞句を作る「の」→文型354)/ない 392 *~ほど/*~て~ほどだ/*~ほど~ない 名詞・数詞      :    ×     +  ほど 動詞・形容詞     :普通形<ナ形ーな>    ほどの+名詞 これ・それ・あれ・どれ:             ほどだ                          ほどだった                          ほど~ない ♪ 会話 ♪ 李 :寒くなってきたね。昨日は駅の階段で酔っ払いが、氷に滑って転んでいたほどだよ。 良子:ただでさえ千鳥足なのに、下が凍ってたら危ないわ。でも、酔ってると、思ったほどけがをしないようね。 李 :痛いけど格好が悪いから、じっとやせ我慢してるだけだよ。騒いで通行人に笑われるほど馬鹿じゃないさ。 ♯ 解説 ♭  「ほど(程)」は程度を表す語で、例文1、2のように「~ほど~ない」の形で比較の基準をあらわしたり、例文3のように数量についてだいたいの数量(概数)を表したり、例文4、5のように程度を例示したりします。  この程度を例示・形容する「~ほど」の用例の多くは「~ぐらい」(→文型072)を使っても表せます。   目が回るほど(⇔ぐらい)忙しい。   くやしくて泣きたいほど(⇔ぐらい)だった。  しかし、比較の基準をあらわす「~ほど~ない」文は「~ぐらい」が使えません。逆に、軽視の感情で最低の程度を例示するときは「~ほど」が使えません。→例題1)   今年は去年ほど(×ぐらい)寒くない。  <比較>   朝起きたら顔ぐらい(×ほど)洗いなさい。<最低程度> § 例文 § 1.いつも偉そうなことをいってるくせに、口ほど(×ぐらい)にもない奴だなあ。 2.看板に偽りありとまでは言わないが、宣伝されてるほど(×ぐらい)うまい店 じゃなかった。<比較> 3.そこには駅から歩いて30分ほど(⇔ぐらい)で着く。 4.それは僕も喉から手が出るほど(⇔ぐらい)ほしい。 5.恋は盲目とは言うものの、彼ときたら、あばたもえくぼと言っていいほど(⇔ ぐらい)だよ。 ★ 例題 ★ 1) 朝(起きれば/起きたら)、顔(ほど/ぐらい)(洗えば/洗ったら)どうなの? 2) (恥ずかしい→       )、穴が(ある→    )ら(入る→ )たいほどだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) ぽっち/しか 2) こぼれない(~ないように→文型153)/泣き/ぽっち 393 *~ほど/*~ば~ほど/~ば~だけ 名詞     :なら/であれば + 名詞     :×/である + ほど ナ形容詞   :なら/であれば   ナ形容詞   :な/である   だけ 動詞・イ形容詞:仮定形<~ば>   動詞・イ形容詞: 原形 ♪ 会話 ♪ 李 :読めば読むほどこの随筆はおもしろい。この著者の考え方は知れば知るだけ、大したものだと思うよ。 良子:人は歳を取るほど感動しなくなるわ。それだけ感動できるなんて、あなたはまだ若いのね。 李 :これはどうも。そういう君だって、ホームドラマを見ては泣いてるぐらいだから、捨てたもんじゃないさ。 ♯ 解説 ♭  「~ば~ほど~」は「~に比例して、更に~」という比例変化を表す文型ですが、「~ば」が省略されることも、例文1のように「名詞+ほど」の形もあります。ナ形容詞の時は「~であればあるほど」の形が多く使われるでしょう。   若ければ若いほど上達が早い  →若いほど上達が早い。  →若い人ほど上達が早い。  なお、「~ば~ほど」と同じ比例変化の文型に「~ば(たら)~だけ」がありますが、この表現は論理的な必然性や因果関係がないと使えません。→例題1)   練習すればするほど(・だけ)上手になる。<因果関係がある>   見れば見るほど(×だけ)いい女だなあ。 <因果関係がない> § 例文 § 1.弱い犬ほどよく吠える。<ことわざ> 2.誤りを正すのは、早ければ早いほど(⇔だけ)いい。 3.長引けば長引くほど(⇔だけ)、我々に不利になる。もう短期決戦しかない。 4.青年よ、大志を抱け!夢は大きいほど(△だけ)いい。 5.考えれば考えるほど(×だけ)、わけがわからなくなる。 ★ 例題 ★ 1) 間違ってはいけないと思う(ほど/だけ)、(かえって/すなわち)ミスが多くなる。むしろ肩の力を抜いて、リラックスすればする(ほど/だけ)力が出るものだ。 2) 「女房と畳は(新しい→     )ば新しい( )( )いい」という俗語があるが、最近では「亭主と台所は新しい( )( )いい」という言葉が流行している。 (^^)前課の解答(^^) 1) 起きたら(文末に意志表現の時は「たら」)/ぐらい/洗ったら 2) 恥ずかしくて(理由)/あった/入り(V〔ます〕形+たい) 394 ~ほど(のこと)ではない/~にもほどがある 名詞・それ :  ×       +  ほどのことではない ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>    ほどのものではない                     ほどではない 名詞    :  ×       +  にもほどがある   ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>    にしてもほどがある ♪ 会話 ♪ 百恵:あの新入り、本当に鼻につくわ。入社早々、期待したほどの会社じゃないですって!皆でいびっちゃわない?顔を見るだけでもむかつくわ。 真理:自分だけが特別な人間だとでも思ってるのかしら。 李 :「いびる」とか「むかつく」とか、穏やかじゃないね。冗談にしてもほどがあるよ。 ♯ 解説 ♭  「~ほど(のこと/のもの)ではない」は、例文1~3のように、「それほど大した~ではない/それほど重要な~ではない」という意味を表します。この場合、「のこと/のもの」を省略しても意味は変わりませんし、「この・もの」の代わりに名詞を使うこともあります。   今の職業は一生を賭ける     ほどのものではない。     ほど価値のある仕事ではない。  なお、例文4、5のように「~にもほどがある」という形がありますが、この「ほど」は「適度」を表していて、相手の行為がやりすぎだと感じたとき、「冗談にもほどがある。(=冗談が過ぎている)」のように戒めるために使います。 § 例文 § 1.私の経験などありふれたもので、とりたててお話しするほどのものでもございません。 2.用事というほどのことではないんですが、ちょっと・・・。 3.わざわざお越しになるほどのことでもございませんでしたのに。 4.いい加減にしろよ。欲張るにもほどがある。 5.この世の中、いつも正直者が馬鹿を見る。不公平にもほどがある。 ★ 例題 ★ 1) 擦り傷をした(ほど/ぐらい)で、いちいち医者に行く(ほど/ぐらい)の(こと/もの)はなかろう。 2) 御覧( )通りの貧乏所帯で、生活は楽(だ→   )が、食べられないというほど(だ→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ほど/かえって/ほど(因果あり:「だけ」も可) 2) 新しけれ/ほど/ほど 395 *~ほど~はない 名詞/こ・そ・あ :    ×     +  ほど ~ はない 動詞/形容詞 :普通形<ナ形ーな> ♪ 会話 ♪ 良子:何よ、その反抗的な態度は。お母さんがこんなに口うるさく言うのも、小平のことを思えばこそなのよ。 李 :パパだって、小平のことほど気になることはないんだよ。この世に親ほどありがたいものはないよ。 小平:お母さんは、くどいんだよ。同じことを何度も言われたら、僕だって耳にたこができるよ。 ♯ 解説 ♭  「~ほど~はない」は「~こそ最高に~だ」という最高程度を表す文型です。これは「~ぐらい~はない」(→文型073)を使って表すこともできます。   家族ほど(・ぐらい)大切なものはない。  「~ほど~はない」を使うと客観的で一般的な説明になり、「~ぐらい~はない」を使うと、「大切なものは色々あるが、何と言っても家族が一番大切だ」という話者の感情が込められた表現になります。  なお、プラスの事態には「~ほど~ない」の方が多く使われていて、マイナス事態には「~ぐらい~はない」が使われることが多いようです。それは「~ほど」が最高基準を、「~ぐらい」が最低基準を表す働きがあるからかもしれません。 § 例文 § 1.僕はその時ほど父が大きく見えたことはなかった。 2.弱い者いじめほど、卑劣な行為はない。 3.嫉妬や妬みほど、人の心を卑しくするものはない。 4.人間は失うものが多くなるほど臆病になる。失うものがないほど強いものはない。 5.「馬鹿につける薬はない」とはお前のことだ。お前ほど物わかりが悪い奴は見たことがない。 ★ 例題 ★ 1) 窓際族(に/を)追いやられ、「早く会社を辞めろ」と(言うばかり/言わんばかり)の仕打ちを受けたが、あの時ほど自分が惨めに思えたこと(は/が)なかった。 2) もしもし亀よ、亀さんよ、世界のうち( )お前( )( )、歩みののろいものは(ある→    )。(童謡) (^^)前課の解答(^^) 1) ぐらい(低い程度)/ほど/こと 2) の(→文型225)/ではない/ではない(「でもない」も可) 396 ほんの~/ものの~ ほんの + 名詞や、少量を表す数詞・副詞 ものの + 数詞 ♪ 会話 ♪ 山田:油断大敵だ。ものの五分、目を離したすきに自転車が影も形もなくなったよ。買ったばかりだったのに。 李 :それはとんだ災難だったね。警察には届けた?もののひと月もしないうちに出てくるかもしれないよ。 山田:歩くのが面倒で、ほんの軽い気持ちで他人の自転車に乗って行っちゃう人が多いらしいね。\ ♯ 解説 ♭  連体詞「ほんの」は「ほんの(微量・少量・数分)」などのように名詞や、「ほんの(1~2分・一口・2~3メートル…)/ほんの(少し・しばらく・ちょっと・僅か・少々)」などのように少数・少量を表す数詞・副詞について、問題とならないほどの少ない数量であることを表します。  また、多くは慣用的に決まった言い方ですが、「ほんの(子ども・お礼のしるし・お口汚し・名ばかりの<名詞>・形ばかりの<名詞>)」などのように取るに足りない小さな存在・物であることも表します。→例題1)  一方、連体詞「ものの」は時間や距離・人数などを表す数詞などについて、「多くても/せいぜい」の意味を表したり、「実に・ほんとうに」を意味する「ものの見事に」など「好きこそものの上手なれ」などの慣用表現を作ります。 § 例文 § 1.つまらない物ですが、これはほんのお礼のしるしです。 2.申し訳ございませんが、ほんの少々お待ちください。 3.ほんのお口汚しですが、いかがですか。お口に合えばよろしいんですが。 4.会社といっても、社員3名のほんの名ばかりの、吹けば飛ぶような小さな会社なんです。 5.隣の駅は目と鼻の先で、電車に乗って、ものの(⇔ほんの)2、3分で着きます。 ★ 例題 ★ 1) 結婚式と言っても(ほんの/ものの)形(だけ/ばかり)の披露宴を開いた(だけ/ばかり)でした。 2) 彼は100キロ( )( )あるバーベルを、( )( )の見事に持ち上げて(みた→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(受身文)/と言わんばかり(→文型222)/は 2) で(範囲限定)/ほど/ない 397 ~間 名詞:     の      +  ま(間) 動詞:原形/ない形/ている形    ま(間)に                   ま(間)の + 名詞 ♪ 会話 ♪ 良子:田舎の母が驚いていたわ。ちょっと見ない間に、小平がずいぶん大人びてきたって。 李 :それにしても君の御両親、この一、二年の間にめっきり老け込んだなあ。 良子:私たちも、あっという間にお爺さん、お婆さんよ。 李 :いつの間にか子供は育ち、いつの間にか親は歳とる。 ♯ 解説 ♭  「間」は「あいだ」と読むときと、「ま」と読むときがあります。「あいだ」は比較的長いと感じる時間・期間に使います。「ま」は隙間(空間)や合間(時間)を意味しますから、心理的にはあわただしく短いと感じる時間や瞬間、或いは暇や都合が<いい/悪い>と思う合間を表します。例えば「しばらく見ない間(あいだ/ま)に大きくなったね」のようにどちらも使える例がありますが、話者が会わなかった時間をどう感じているかの違いがあります。  なお、常に「ま」と読まれる「(まだ)~間がある/~する間も惜しむ/間を見て~する/見る間に~する/~して間もない/間もなく~する/~する間もない/いつの間にか/瞬く間に/あっと言う間に」や、慣用表現の「間がいい/間が持たない/間が抜ける/間が悪い/間に合う/間に合わない/間を持たす/間をおく」などは、そのまま語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.私が席を外しているまに、誰か来客があったらしい 2.最近は忙しくて、新聞を読むまもない。 3.うるさい妻は出かけているし、のんびり酒でも飲みながら、鬼の居ぬまの洗濯といこう。 4.彼は寝るまも惜しんで勉強し、ついに念願の大学に合格した。 5.その最新ソフトは店頭に並べるや否や、瞬くまに売り切れた。 ★ 例題 ★ 1) この夏休みの(あいだ/ま)に、(あいだ/ま)を見て、里帰り(する/しよう)かと思っています。 2) 子ども( )(寝る→     )間に、ちょっと買い物( )行ってくるわ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ほんの/ばかり/だけ 2) から(→文型048)/もの(慣用)/見せた(→文型197) 398 *~まい/*~まいと思う/~まいとする 動詞:五段動詞ー 原形  +  まい     ・    一段動詞ー [る]    まいと思う  ・                 まいとする  ・ (注:「する」は「するまい/すまい」の両形) ♪ 会話 ♪ 部長:豊かな時代に育った君たちには想像がつくまいが、僕たちの世代には、口に入る物なら何でも食べた時代があったのだよ。芋粥に野の草を入れて食べたりね。 李 :中国で日本のテレビドラマ「おしん」が放映されたときは、大変な反響でした。 部長:それだって、ほんの七、八十年前のことだよ。 ♯ 解説 ♭  「~まい」は動詞の未然形「~(よ)う」の否定形です。意味は意志と推量に分かれますが、物が主語の自動詞や状態動詞(ある・いる・できる・わかる・要る)や可能形に「~まい」がつくときは、常に否定推量です。   絶対タバコは吸うまい。 ≒ 絶対タバコは吸わないつもりだ。<意志>   たぶんタバコは吸うまい。≒ たぶんタバコは吸わないだろう。<推量>  なお、「~まいと思う」と「~まいとする」には「思う」と「する」の違いがあります。単なる心理や気持ちを述べるのなら「~まいと思う」で、「~しないように意識的に努力している」のなら「~まいとする」です。例えば「笑うまいとする」は笑いたい気持ちをじっと我慢しているのですが、「笑うまいと思う」は単なる今の気持ちです。これは「~(よ)うと思う」と「~(よ)うとする」の関係でも言えることです。 § 例文 § 1.彼が会社の金を使い込んでいたなんて、まさかそんなことはありますまい。 2.嘆いても詮ないことだ。今更くよくよ考えまい。 3.もう君には何も言うまい。好きなようにするがいい。 4.親に心配をかけまいと思い、何も話さないでおいた。 5.知られまいとして隠そうとすると、かえって知られてしまうものだ。 ★ 例題 ★ 1) 決して(怒ろう/怒るまい)と思ったが、息子の顔を見ると我慢(できぬ/できず)、(つい/うっかり)大声で怒鳴りつけてしまった。 2) 大の男を絞め殺すなん( )ことは、女・子供に(する→    )ようなことでは(ある→   )まい。 (^^)前課の解答(^^) 1) あいだ/ま/しよう(「~(よ)う+と思う」→文型441) 2) が/寝ている/に(V〔ます〕形+に行く) 399 ~まくる 動詞:[ます]形 + まくる ♪ 会話 ♪ 山田:若い頃はジャンルかまわず聴きまくったけど、結局、今は演歌に落ちついたよ。さあ、もう一曲、歌おうか。 李 :君みたいにひっきりなしに歌いまくってると、のどを傷めるよ。少しは喉を休ませなきゃ。 山田:演歌を歌ってると、懐かしさがこみ上げてくるんだなあ。なぜか匂いや色がついてることもある。 ♯ 解説 ♭  補助動詞「~まくる」は多くの意志動詞と結びついて、「(同じ動作を)繰り返し繰り返し、しかも激しくする」という意味を表します。この表現を更に強調したのだ「書いて書いて書きまくる」のように「~て~て~まくる」という形です。   飲む→飲みまくる→飲んで飲んで飲みまくる   遊ぶ→遊びまくる→遊んで遊んで遊びまくる  ただし、この「~まくる」は人の意志動作にしかつきませんから、自然現象や生理現象には使えません。   降る→×降りまくる <自然現象>   笑う→×笑いまくる <生理現象> § 例文 § 1.あいつは会議の間中、一人でしゃべりまくっていたよ。 2.吹きまくる強風で屋根がわらは飛び、電柱もなぎ倒された。 3.その指名手配された犯人は全国を逃げまくったが、ついに御用となった。 4.私は長年の間、心に暖めてきたことを、無我夢中で書いて書いて書きまくった。 5.彼は阪神大震災の実状を伝えたいと、寝食を忘れて現場写真を撮りまくった。 ★ 例題 ★ 1) 彼は会議の(ま/あいだ)、ひとりで(しゃべる/しゃべり)(抜いて/まくって/切って)いた。 2) 会社のため( )思い、がむしゃらに(働く→    )まくってきたが、ふと寒い風が心( )吹き抜けた。 (^^)前課の解答(^^) 1) 怒るまい/できず(→文型121)/つい(「うっかり」は不注意) 2) て(「~なんて」と「~なんか」→文型274)/できる/ある 400 ~まじ/~にあるまじき/~としてあるまじき 動詞:原形  +  まじ             ・           まじき + 名詞 名詞: ×  +  にあるまじき + 名詞    ・           としてあるまじき + 名詞 ♪ 会話 ♪ 課長:部下としてあるまじき失礼な発言だ。即刻取り消したまえ。 李 :管理職にあるまじき無責任な態度だと思いましたので、包み隠さずに自分の意見を述べたまでです。 百恵:これで彼はしばらく冷や飯ね、ああ、すまじきものは宮仕え。 ♯ 解説 ♭  「~まじ」は「~まい」(→文型398)などの意味を表した古語ですが、現代においては「~てはならない」という意味の禁止表現が書面語として残っているだけです。この「~まじ」は「~べきではない/~べからず」(→文型384)と同義語になります。   政治の不正を 許すまじ。    <書面語・古語>          許すべからず。  <書面語・古語>          許すべきではない。          許してはならない。  なお、「~として許されない」の意味で使われる「~にあるまじき+名詞/~としてあるまじき+名詞」が口語として残っていますが、改まった場面でしか使われないでしょう。 § 例文 § 1.ああ、許すまじ原爆を。 <広島反戦歌の一部> 2.公務員にあるまじき収賄事件が、又しても発覚した。 3.患者を人体実験に使うなど、医者としてあるまじき行為だ。 4.暴力で国家を転覆しようとするのは、法治国家にあるまじき犯罪だ。 5.相手の弱みを利用して恐喝まがいのことをするなんて、警察官としてあるまじき行為だ。 ★ 例題 ★ 1) 教育者としてある(まじ/まじき)体罰を、見て(見ず/見ぬ)(ふう/ふり)をしてきた学校側の責任を見過ごすことはできない。 2) 人間( )してある(まじ→    )、また(許す→   )難い犯罪は、何と言っても子供の誘拐だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) あいだ(「ま」と「あいだ」→文型397)/しゃべり/まくって
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2006-5-2 20:54:13 | 显示全部楼层
401 ~まして/~ませんで/~ませ 動詞:[ます]形  +  まして   ・              ませんで              ませ    ・ ♪ 会話 ♪ 良子:今日は大したおもてなしもできませんで。 佐藤:いえいえ、こちらこそ、お休みのところを二人して押しかけ、そのうえ二人のことで相談にも乗っていただきまして、ありがとうございました。じゃ、これで。\ 李 :心配することはないよ。僕たちも後で振り返れば、取り越し苦労に過ぎなかったことばかりだよ. ♯ 解説 ♭  動詞の「て形」には「~まして」の形もあり、敬語と結びついた丁重な会話表現に使われます。また、「~ますので/~ましたら」のように、「丁寧体(「ます」形)+から/が/けれど/し/たら/ので/のに」などの形も使われます。  「いらっしゃる→いらっしゃいます/くださる→くださいます/おっしゃる→おっしゃいます」のように「~ります→~います」へと変化することや、「いらっしゃいませ」のような「~ませ」は初級で学んでいますが、「~につきまして/~に対しまして/~にとりまして/~に関しまして/~をめぐりまして」など「ます」形の格助詞も多く使われることをつけ加えなくてはならないでしょう。丁重な敬語体会話ではどれも大切な表現となります。  注意してもらいたいのは、「~てください→×~ましてください/~たほうがいい→×~ましたほうがいい」などの形はなく、助動詞関係では丁寧体は使われないことです。 § 例文 § 1.明けましておめでとうございます。 2.いらっしゃいませ。御注文は何になさいますか。 3.是非、私どもの宅にもお立ち寄りくださいませ。 4.せっかくお越しいただきましたのに、主人はあいにく留守にしておりまして。 5.どうしても抜けられない会議がございまして、せっかくの御招待ではございますが、またの機会にと。 ★ 例題 ★ 1) 毎度お引き立て(もらい/いただき)まして、ありがとうございます。またのおいでを(待って/お待ちして)(います/おります)。 2) 社長はまもなく戻って(参る→    )ので、どうぞお(かける→   )になってお(待つ→   )ください。 (^^)前課の解答(^^) 1) まじき/見ぬ/ふり(→文型378/慣用語「見て見ぬふりをする」) 2) と/まじき/許し(~難い→文型034) 402 *~まで ・/*~までに/*~までで 時・場所・数量を表す語: ×    +  まで   ・ 動詞         : 原形      までに  ・                      までで  ・ ♪ 会話 ♪ 李 :ここまで来たら、頂上まで後わずかだ。この分だと、日暮れまでには山小屋に着くだろう。 小平:お父さん、見て!夕焼けが始まったよ。それにしても、お母さん、遅いねえ。まだ、あんな下にいる。 李 :お母さんが追い着くまで、ここで待っててやろうよ。 良子:はあはあ、なんて薄情な人たちなんでしょ。 ♯ 解説 ♭  「~まで」の格助詞の用法で、数量・時間・場所を表す語と結びついて、終点や限界点を表します。「~遅くまで/~近くまで」のような慣用的言い方がありますが、そのまま覚えてください。→例題2)  問題は時を表す語と結びついたときの「~まで」と「~までに」の違いですが、下の図のように、「~まで」はその時刻までずっと継続した動作を表し、「~までに」はその時刻の前に完了した動作を表します。     図あり   なお、「~までで」は期限を表し、後ろには「やめる・終わる・締め切る・打ち切る」などの動作の終了を表す動詞が来ます。→例題1) § 例文 § 1.ここまで来たら、もうひと安心だ。 2.シャボン玉飛んだ。屋根まで飛んだ。屋根まで飛んで、壊れて消えた。(童謡) 3.授業は七月の二十日までで、二十一日から夏休みが始まる。 4.「十時までに来られる?」「その頃まで会議が長引いているとすると無理だけど、でなければたぶん大丈夫」 5.私が戻って来るまで、ここで待っていてください。 ★ 例題 ★ 1) この店は十一時(まで/までに/までで)閉店と(します/なります)ので、オーダーがございましたら、十時半(まで/までに/までで)お願いします。 2) 隣の部屋が夜(遅い→    )まで(うるさい→     )、明け方(近い→   )まで眠れなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) いただき(謙譲語)/お待ちして(→文型019)/おります(謙譲語) 2) 参ります(謙譲語)/かけ(尊敬形→文型019)/待ち(→文型019) 403 *~まで/*~までに/*~までになる 名詞    : ×         +  まで 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     までに までになる ♪ 会話 ♪ 良子:「くそばばあ」なんて言ったのよ。どこまで親を馬鹿にするつもり。今日という今日は堪忍袋の緒が切れたわ。今度そんな口を利いたら、出て行ってもらうわよ。 李 :そこまで言わなくてもいいんじゃないか。小平、言っていいことと悪いことがあるぞ。そのことがわかるまで、しばらくそこで正座して反省していなさい。 ♯ 解説 ♭  「~まで」の副助詞の用法で、事態がどの程度まで達しているかを表しています。「~ほど」(→文型392)も程度を表しますが、「~まで」は程度の最終段階を表すのに対し、「~ほど」は程度の例示や形容です。   足が痛くなるまで(・ほど)歩いた。   納得がいくまで(×ほど)調べる。  上の例はどちらも使える例ですが、「~まで」は足が痛くなった段階で歩くのをやめていますが、「~ほど」は歩いているときの程度を形容しています。下の例は「~ほど」が不自然です。逆に、「~まで」が使えないのが次の例です。→例題1)   死ぬほど(×まで)驚いた。   目の玉が飛び出すほど(×まで)高かった。 § 例文 § 1.喉元まで出かかった言葉だったが、思いとどまった。 2.結果がどうなるかはともかく、自分が納得がいくまでやってみたいんだ。 3.その検事は恐ろしいまでに頭が切れる男だった。 4.彼と碁の対戦をしたが、全く歯が立たず、完膚なきまでに打ちのめされた。 5.日本では1910年代の終わりには、99%の児童が学校教育を受けるまでになっていた。 ★ 例題 ★ 1) 一人前に寿司が握れる(ようにする/ようになる)(まで/ほど)には、短くても数年の修行(を/が)要する。 2) 彼はわずか一年( )、新聞ばかりか明治文学まで(読む→   )こなせる( )( )に日本語が上達した。 (^^)前課の解答(^^) 1) までで/なります(「~する」は意志行為)/までに 2) 遅く/うるさくて(理由の「~て」)/近く 404 ~まで/~までして/~てまで 名詞・名詞+格助詞: ×  +  まで 動詞       :原形  +  までして 動詞       :て形  +  まで ♪ 会話 ♪ 良子:家に帰ってまで、会社の仕事はしないでほしいわ。 李 :やりかけの仕事があると、喉に物がつかえてるみたいで、気持ちが悪いんだよ。 良子:そんなにまでしなくちゃいけないの。あなたもどこかの猛烈社員に似てきたわねえ。 李 :君にまでそんなことを言われては、立つ瀬がないよ。 ♯ 解説 ♭  「~まで/~までして/~てまで」は、程度を表す「~まで」(→文型403)と一連のものですが、程度が極端に達していると感じたとき使われます。  例文2、3のように「~さえ/~すら」(→文型100)と置き換えられる場合も多いでしょう。しかし、「~さえ/~すら」は「~もそうだから、その他はもちろん~」という意味ですが、「~まで」は「だんだん程度はひどくなり、最後には~も~」と最終段階を表しますから、例文4、5のように「~さえ/~すら」を使うと不自然になる例が生じます。逆に「~さえ/~すら」が使えて「~まで」が使えない場合も生じます。それが次の例です。   忙しくて新聞を読む時間さえ(×まで)ない。   歩いてさえ(×まで)5分で着くところ § 例文 § 1.毒を食らわば皿まで。(ことわざ) 2.まさか君が、あんな奴とまでぐるになっていたとは思いもしなかったよ。 3.夢にまで見るほど彼女のことが脳裏に焼きついて離れない。 4.いくら生活に困ったとは言え、盗みまでしでかすとは、  呆れ果ててものも言えない。 5.そんな汚い金を使ってまで、代議士になりたがる奴の気が知れない。 ★ 例題 ★ 1) 家庭生活を犠牲(になって/にして)(さえ/まで)出世したいとは(思う/思わない)。 2) 親の反対を(押し切る→     )まで結婚(する→   )二人が、半年( )離婚とは予想もしなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) ようになる(状態変化→文型446)/まで/を(「要する」は他V) 2) で/読み(~こなす→文型167)/ほど(「まで」は重複する) 405 ~までだ/~までのことだ これ・それ・あれ: ×   + までだ 動詞      :普通形    までのことだ ♪ 会話 ♪ 李 :準備しないうちに昇級試験の前日になってしまったが、いつものように一夜漬けをするまでさ。 山田:じたばたしたって始まらないし、カラオケにでも行かないか。駄目なら駄目で、また受け直すまでのことだ。 李 :それは悪魔の甘いささやきだよ。行くべきか行かざるべきか、それが問題だ。 ♯ 解説 ♭  「~までだ/~までのことだ」は例文1~3のように、「それだけで、それ以外のことは考える必要はない/何の問題もない」という意味を表します。「~までだ」の強調表現が「~までのことだ」です。  これは「~だけ」(→文型131)とも共通する限定の用法で、動詞の原形と結びつくときは最終選択・結論や決意を、完了形(「た」形)と結びつくときは事情や理由を強調することが多いでしょう。   タクシーがなければ、歩いて帰るまでだ(≒だけだ)。  また、例文4の「これまでだ」や、例文5の「~たら、それまでだ」(→文型369)のように「これ・それ・あれ」と結びつくときは、「それでおしまいだ」という意味を表します。これは「(これ・それ・それ)で万事休す」という慣用語を使っても表せます。 § 例文 § 1.あなたがやれと言ったから、やったまでのことです。 2.仮に今回失敗しても、また一からやり直すまでだ。 3.駄目でもともと、やってみるよ。うまく行かなかったら、その時また考えるまでのことさ。 4.銀行から借り入れができないとなると、万事休すだね。会社もこれまでだ。 5.短気は損気。いくら上司に頭にきても、会社を辞めてしまったらそれまでだよ。 ★ 例題 ★ 1) 「珍しいね、何(か/が)用事?」「いや、近くに(来たついでに/来がてら)(寄る/寄った)までです」 2) 私は当然のことを(する→   )までの( )( )で、お礼なんて(言う→    )と、かえって恐縮します。 (^^)前課の解答(^^) 1) にして(「~を~にする」)/まで/思わない 2) 押し切って/結婚した/で(期限の「で」) 406 *~まま/*~ままの/*~ままに~する 名詞: の  +  まま ~ する 動詞:普通形    ままで           ままだ           ままの + 名詞           ままに ~ する ♪ 会話 ♪ 李 :君が使っていた部屋は、今でもそのままになっているね。君の御両親の気持ちがわかる気がするよ。 良子:何もかも子供の時のままで、妙な気分になるわ。 李 :わらぶき屋根に広い庭。そして君が小平と並んで昼寝してる姿は、なかなか絵になっていたよ。帰る故郷があるだけでも、小平は幸せだと思うな。 ♯ 解説 ♭  「まま」は「元と同じ状態」というのが原義ですが、例文1~3のように、名詞や動詞の完了形(「た」形)や否定形(「ない」形)と結びつくときは「~の状態を変えないで」という意味を表します。   座ったまま話す。   そこは昔のままの風景が残っていた。  また、用例としては多くありませんが、例文4、5のように動詞の原形と結びつくと、自然のなりゆきや感情に身を任せて従うという意味を表します。   風の吹くままに旗が揺れている。   命令されるままに動く。 § 例文 § 1.日本の家は、靴を履いたまま上がってはいけないよ。 2.報告書には私見を加えず、見たまま聞いたままを、ありのままに書いてくれ。 3.鍵をかけないまま、一体どこに行ったんだろう。不用心ったらありゃしない。 4.足の向くまま、気の向くままに、地球を歩いてみたい。 5.友人に勧められるままに生命保険に入ったが、なんとその保険会社が倒産してしまった。 ★ 例題 ★ 1) 日本料理は、素材の味をその(まま/ように)(生きる/生かす)ところに(だけ/こそ)、その特徴があります。 2) いくつ( )気づいた点を、(思いつく→     )まま(話す→    )みます。 (^^)前課の解答(^^) 1) か/来たついでに(→文型163/~がてら→文型038)/寄った 2) した/こと/言われる(受身文:~が~に言われる) 407 見るからに~そうだ 見るからに~ 動詞 : [ます]形    + そうだ        形容詞:<イ形ー[い]>    そうな + 名詞            <ナ形ー[な]>    そうな + 動詞 (注:様態の「~そうだ」には名詞接続の形はない) ♪ 会話 ♪ 百恵:あの係長ときたら、部下には上司の悪口を言ってるくせに、上司にはおべんちゃらばっかり! 真理:見るからにやりそうな顔つきね。でも、中間管理職の苦しい胸の内もわかってあげたら? 百恵:こちらだっておごってもらいながら、裏で舌を出してるんだから、どっちもどっち、似たようなものかも。 ♯ 解説 ♭  「見るからに~そうだ」は「一見して、すぐ~と感じる」という意味を表します。この様態の「~そうだ」は視覚による判断を表しますが、同じ意味を「一目で~とわかる」を使っても表すことができるでしょう。  見るからに おいしそうだ。     <終止形>        おいしそうなリンゴだ。 <連体形>        おいしそうに食べている。<連用形> § 例文 § 1.見るからにおいしそうな料理だなあ。よだれがでちゃうよ。 2.見るからに一雨ありそうな雲行きになってきた。 3.まるまる太っていて、見るからに健康そうな男の赤ちゃんだ。 4.孫たちに囲まれて、おじいさんは見るからにうれしそうだった。 5.よほど時間を持て余しているのか、彼は見るからに退屈そうにあくびをしていた。 ★ 例題 ★ 1) その子は見る(からに/からして)(人なつっこい/人なつっこ)そうなそうな顔(が/を)して僕を見ていた。 2) 見るから( )お金が(ある→    )そうな豪邸だが、一体どんな人が(住む→      )んだろう? (^^)前課の解答(^^) 1) まま/生かす(他V)/こそ(「こそ」は前の語を強調→文型077) 2) か/思いつく/話して(→文型197) 408 *~みたいだ/*~みたいな/*~みたいに 名詞    :    ×     +  みたいだ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>    みたいな + 名詞                     みたいに ♪ 会話 ♪ 真理:「これだから妊婦は使い物にならない」なんて陰口を叩かれても、働き続けるしかないみたいだわ。 百恵:決して無理しちゃ駄目よ。体調を崩すより、馬鹿なおじさんたちに悪口を言われてる方がましよ。 真理:仕事と子育てを両立させるというのは、生半可なことではできないわね。 ♯ 解説 ♭  「~みたいだ」は「~ようだ」と同じ意味を表す口語表現で、子どもや女性が多く使います。例文1、2のように比況、例文3のような例示、例文4、5のように推量判断を表す「~ようだ」は、どれも「~みたいだ」に置き換えることができます。しかし、名詞とナ形容詞の時の接続の仕方が違いますから注意しましょう。   雨 みたいだ  元気 なようだ     のようだ     みたいだ  ただし、下例のように「~ように」が状態変化、目的、既に述べた内容、依頼、願望を表すときは、「~みたいに」が使えません。   やっと歩けるようになった。     <状態変化>   わかるように話してください。    <目的>   今まで述べてきましたように・・・。 <内容指示>   遅刻しないようにしてください。   <依頼>   一日も早くご回復なさいますように。 <希望・願望> § 例文 § 1.そうやっていると、ふたりはまるで夫婦みたいだね。 2.彼女はまるで蚊の泣くみたいな小さな声で、「はい」と答えた。 3.あんたみたいな恥知らずには、今まで会ったことがないわ。 4.いくら電話してもつながらないから、どこかに出かけているみたいだよ。 5.その陶器は古いもので、かなり値段も張るみたいだった。 ★ 例題 ★ 1) 東京タワーの上から見ると、民家がマッチ箱(の/×)みたい(に/な)小さく(見る/見える)。 2) ガス( )つかないと思ったら、私って(馬鹿だ→    )みたい、元栓( )閉めたままにしてたわ。 (^^)前課の解答(^^) 1) からに/人なつっこ(様態の「そうだ」)/を(→文型466) 2) に/あり/住んでいる(一般Vの原形は未来形) 409 *~向きだ/*~向けの/*~向きがある 名詞: ×  +  向きだ            ・           向きの + 名詞           向きに + 動詞・形容詞 動詞: 原形 +  向きがある          ・ ♪ 会話 ♪ 李 :そのセーターは色合いといい柄といい、若い女性向きだね。どう見ても君向きじゃないよ。 良子:ねえ、それどういう意味?もう私はおばんだとでも言いたいの? 李 :おいおい、そう向きになるなよ。僕はただ・・・。 良子:ただ何なのよ。はっきり言ってみなさいよ。 ♯ 解説 ♭  「~向き」は「~に適合している/~に適当だ」という意味を表します。ほとんど名詞に直接接続しますが、「若向き」のように形容詞につく例も少しあります。   このワインは甘口で女性に向く ・ このワインは甘口で女性向きだ  その他、「向き」には「動詞の原形+向きがある」の形で、「~嫌いがある」(→文型063)と同じように「~する傾向がある」を表したり、方面・方面の人を表す「御用の向きはなんですか/反対する向きが多い」などの用法もありますので、用例を例文に取り入れておきました。 § 例文 § 1.このスキーコースは勾配が急だから、初心者向きではない。 2.君はすぐかっとなる向きがあるから、教育者向きじゃない。 3.人には向き不向きがあるのだから、自分向きの仕事を見つけることが大切だ。 4.どうも日本人向きに作られた中華料理は、味が淡泊で本来の濃厚な風味を失う嫌いがある。 5.表向きは大衆向きのスナックのように見えますが、裏では盗品売買をしているという噂です。 ★ 例題 ★ 1) 「御用の(向き/向け)は何でしょうか」「(軽い→   )海外旅行(向き/向け)の鞄を探しているんです」 2) 外国人向き( )(やさしい→     )(書いた→     )日本語文法辞典はありませんか。 (^^)前課の解答(^^) 1) ×/に(連用形)/見える(自V) 2) が(自V)/馬鹿(ナ形)/が(自V) 410 *~向けだ/*~向けの/*~向けに 名詞: ×  +  向け(だ)           向けの + 名詞           向けに ♪ 会話 ♪ 李 :この住宅は二世代向けに作られたものだそうだが、きめ細かな配慮が行き届いているね。 良子:床に段差がなかったり、手すりが多かったり、通路が車椅子でも困らないだけ広いのは老人向きね。 李 :これで家庭菜園ができる庭があれば言うことなしだが、そこまでぜいたくは言えないか? ♯ 解説 ♭  「~向け」は「~を特定の対象・目的とする」という意味の表します。この「~向け」は「~向き」(→文型409)と混同しやすいので注意しましょう。例えば、例文1~3は意味上どちらにも解釈できるので「~向け」も「~向き」も使えますが、例文4、5は「~向け」しか使えません。例えば、「成人向け<対象>エログロ・ビデオ」というべきところを「成人向き<適当>の エログロ・ビデオ」と使うと、エログロ・ビデオは成人にふさわしいという意味になってしまいます。→例題1) § 例文 § 1.この自動車はアジア市場向けの低燃費の小型車です。 2.このアニメ映画は子供向けと言うよりも、大人たちに向けて警告を発する作品だ。 3.若いお母さん向けの育児書が、飛ぶように売れている。 4.各政党の選挙向けの歯の浮くような宣伝は、聞いているだけでうんざりする。 5.メーカーは外国向けか国内向けかによって、製品のデザインも価格も変えるそうだ。 ★ 例題 ★ 1) 最近の子供(向け/向き)の漫画には、とても子供(向け/向き)とは(思わない/思えない)猥褻なものがある。 2) 若者向け( )(作る→     )音楽CDの中には、はっとする( )( )鋭い社会批判を含んだものがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) 向き/軽くて/向き(「~向け」は対象→文型410) 2) に/やさしく/書かれた(非情の受身文) 411 ~目/~目にあう 動詞        :[ます]形     +  目(だ)   ・ 量や程度を表す形容詞:<イ形ー[い]>    目に            <ナ形ー[な]>    目の+名詞 数詞        :  × 感情を表す形容詞  :原形<ナ形ーな> +  目にあう  ・ ♪ 会話 ♪ 李 :今まで専務にちやほやしてた連中が、いざ更迭されると聞くや、手のひらを返したように見向きもしなくなった。人間も落ち目になると、嫌な目にあうね。 良子:「金の切れ目が縁の切れ目」ってわけね。 李 :専務にしてみれば、「泣きっ面に蜂」だね。 良子:「弱り目に祟り目」とも言うわ。よくある話よ。 ♯ 解説 ♭  「目(め)」は実に多くの用法を持っています。まず「~目に遭う」という形で、嫌な体験をするという意味を表します。また、「~め」には接尾語の用法があって、形容詞(ナ形容詞にはほとんどつかない)や一部の動詞について、「長め・短め・辛め・少なめ・多め・高め・安め・濃いめ・薄め・小さめ・大きめ・細め・太め・硬め・柔らかめ/派手め…」「上がり目・下がり目・落ち目・控えめ…」のように使われ、「少し/やや~程度・状態」を表します。更に数詞につくと、「一つ目・二番目・三度目・四軒目・五杯目・六本目・七枚目・いくつめ・何個目…」のように順番・度数を表します。その他にも、動詞の連用形(「ます」形)について「割れ目・境目・結び目・切れ目・変わり目・折り目・分かれ目・縫い目・つなぎ目…」のように境界を表します。 § 例文 § 1.一世を風靡したあの歌手も、今じゃ人気も下がり目だ。 3.人参は小さめ、じゃがいもはやや大きめに切ってね。 2.発言は控えめにした方がよろしいですよ。そうしないと何かの時にひどい目にあいますからね。 4.三度目の正直、今度こそうまくやってみせます。 5.気候の変わり目には体調を崩しやすいですから、くれぐれもお体にお気をつけください。 ★ 例題 ★ 1) 歳を(とって/とると)、ご飯は(柔らかい/柔らか)め、味は(薄い/薄)めがよくなるんですよ。 2) お金は少し(多い→   )めに持っていった方がいいわ。もし(足りない→     )なったりしたら、(惨めだ→     )目にあうから。 (^^)前課の解答(^^) 1) 向け(~を対象にした)/向き(~にふさわしい)/思えない 2) に/作られた(非情の受身文)/ほど(→文型392) 412 ~めく 名詞     :    ×       +  めく 形容詞の語幹 :<イ形ー[い]>/<ナ形ー [な]> 擬音語・擬態語:語基(きらきら→きら) ♪ 会話 ♪ 良子:梅のつぼみがほころんで、急に春めいてきたわね。寒い冬がようやく終わりを告げようとしているわ。 李 :散歩のとき見かけた田んぼで、おたまじゃくしが、うじゃうじゃと、うごめいていたよ。 良子:やはり田舎はいいわねえ。都会では味わえない季節感があるわ。あっ、一句ひらめいた。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~めく」は名詞・形容詞の語幹、擬音語や擬態語の語基について、前にくる語の要素がはっきりと表面に現れた様子を表す自動詞を作ります。「春めく・色めく・冗談めく・皮肉めく・他人めく・老人めく/古めく・あだめく/きらめく・ざわめく・うごめく・なまめく・はためく・ひらめく…」などですが、ある程度つく語は限られています。また、「~めく」は擬音語・擬態語について、「ひらひら→ひらめく/ざわざわ→ざわめく…」などのように多くの自動詞を作りますが、これは「ひらひらする/ざわざわする」と同じ意味を表します。これらはつく語も限られているので、語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.きらめく太陽に青い海、考えだけでも胸がときめくわ。 2.彼の言葉は、僕にはどこか皮肉めいて聞こえた。 3.俺たちは十年来の友人じゃないか、そんな他人めいた言い方はするなよ。 4.みんなが真剣に討論しているときに、冷やかしめいたことは言うもんじゃない。 5.その男は謎めいた薄笑いを浮かべて、部屋を出ていった。 ★ 例題 ★ 1) いい年(を/に)して、いつまでたっ(たら/ても)、子供(らしい/めいた)考え方が抜けない奴だ。 2) (古い→   )めいた寺の一角に、いわく(ある→    )げな文字が(刻んた→     )石碑がぽつんと建っていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) とると(~と→文型203)/柔らか/薄 2) 多/足りなく(「Vない→~Vなくなる」)/惨めな(ナ形) 413 ~める/~まる イ形容詞の語幹:ー[い]  +    める                  まる (注:例外として「温かい→温める・温まる/暖かい→暖める・暖まる」の例もあ る) ♪ 会話 ♪ 李 :体も温まったから、そろそろ出ようか。しかし、温泉に入るのは何年ぶりのことだろう。 良子:小平は温水プールと勘違いしているみたいね。浮き輪を持ってくるんだったわ。 李 :今日は冷たいビールでもキューっと飲んで、山菜の味でもゆっくり楽しもうよ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~める/~まる」は「強い・弱い・高い・低い・広い・早い・ゆるい・まるい・薄い・温かい…」などの形状形容詞について、形容詞を動詞に変える働きをします。その際、「~める」は形容詞を他動詞に、「~まる」は形容詞を自動詞に変えます。これらの中で、「温(暖)かい」だけは例外として「温(暖)める/温(暖)まる」の形になりますから注意してください。→例題1)2)  予定を一日早くする →早める  予定が一日早くなる →早まる  なお、「~める」について言えば、上記の形容詞の他にも「苦しい→苦しめる/卑しい→卑しめる/痛い→痛める」などの他動詞を作りますが、これに対応する「~まる」の形はありません。 § 例文 § 1.日本で仏教が広く民衆の間に広まったのは、鎌倉時代のことだ。 2.庶民の間に仏教を広めた功労者は、何と言っても親鸞(浄土真宗)や日蓮(日蓮宗)であった。 3.風も弱まってきたし、そろそろ出航しようか。 4.もっと火を弱めてちょうだい。時間をかけてじっくり煮込むのが、おいしいカレーを作る秘訣よ。 5.無理を言って、そんなに僕を苦しめないでくれ。 ★ 例題 ★ 1) わが国はアジア諸国との連携を(強め/強まり)、経済共同体構想の実現を(早める/早まる)(べき/はず)である。 2) 日中は二千年来の旧交( )(温かい→   )め、更に一層の親交( )(深い→  )めるために、乾杯! (^^)前課の解答(^^) 1) を/ても(条件の逆説)/めいた 2) 古/あり(~げ→文型076)/刻まれた(~を刻む→受身文) 414 ~もあろうに/~でもあるまいに 名詞 :  ×  +  もあろうに     ・             でもなかろうに   ・             でもあるまいに             でもないだろうに ♪ 会話 ♪ 山田:お客さんを怒らせたんだって?みんなで検討すれば、もっと賢いやり方がなかったわけでもあるまいに。 李 :自分で何とかしようとして、かえって話しをこじらせてしまった。迷惑をかけて申し訳ない。 佐藤:一声かけるだけ時間がなかったわけでもあるまいに、水臭いぞ。三人寄れば文殊の知恵って言うだろ。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げたのは逆説の接続助詞「に」の用法です。この「~に」は「~のに」に相当し、非難・不満・後悔・残念といった感情を強く打ち出します。  「名詞+もあろうに」は、前にくる語が慣用的に決まっていて、「人・時・場所・ところ・折り・こと」などです。  否定の時は「名詞+でもなかろうに/でもあるまいに」となりますが、これはいろんな名詞と結びつきます。なお、現代口語では「~ではないだろうに」の形の方が多く使われるでしょう。  「~(よ)う/~まい」と接続助詞「に」の結びついた文型は、文型444の項目で別に取り上げています。 § 例文 § 1.折りもあろうに、葬式の真っ最中に故人の悪口を言うとは。 2.場所もあろうに、こんな人通りの多いところで、会社のシークレットに触れるような話をするなよ。 3.こともあろうに、出国間際になって、パスポートが盗まれていることに気がついた。 4.「人もあろうに、彼女、どうしてあんなきざったらしい男に惚れたんだろうね」「蓼食う虫も好き好きさ」 5.自分のことでもなかろうに、いちいち口を出すな。 ★ 例題 ★ 1) こと(もあろうに/でもあるまいに)、週末に残業を(しては/させられては)(しかたがない/かなわない)よ。 2) 女・子供でも(ない→     )に、人前( )大声を(出す→    )泣いたりするなよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 強め/早める/べき(~べきだ→文型382/~はずだ→文型367) 2) を/温(暖かい→暖める)/を/深 415 ~もさることながら 名詞 : ×  +  もさることながら ♪ 会話 ♪ 課長:長い人生では仕事もさることながら、適当な気分転換も必要だよ。人生は長距離レースそのものだからね。 山田:息抜きをするにせよ、一事が万事金の世の中、先立つものがなければ・・・。 李 :費用もさることながら、休みが取れないのが悩みの種です。この年末、課長、よろしくお願いいたします。 ♯ 解説 ♭  連体詞「さる(然る)」には「ある/某」の意味(例:さる人/さる場所/さる事情)のほかに、「そのような/それにふさわしい」という意味があります。この「AもさることながらB」は「Aはもちろんそうですが、でも、Bの方がもっと大切ではないでしょうか」という婉曲な表現になります。相手が目上の人だったりして、相手の考え(A)を直接否定するのがはばかられるとき、使われることが多いでしょう。これは「Aよりも、(むしろ)Bの方がいい」(→文型074)を使って表すこともできますが、語感はずいぶん違います。   お金よりも命の方が大切です。<直接的&断定>   お金もさることながら、命はもっと大切ではないでしょうか。<間接的&婉曲> § 例文 § 1.進学問題は親の希望もさることながら、本人の気持ちが先ず大切ではないでしょうか。 2.日本料理は盛りつけの美しさもさることながら、素材を生かした淡白な味に特色がある。 3.商いの成否は料金もさることながら、サービス如何で決まる。 4.勉強もさることながら、体をこわしては元も子もない。 5.女優というのは演技力もさることながら、何か人を引きつける華がなければ大成しない。 ★ 例題 ★ 1) 才能も(さておいて/さることながら)、チャンス(が/に)(恵まれれば/恵まれなければ)、成功は望めない。 2) 彼の日本語力もさること( )( )( )、まだAさん( )は遠く及ばないと(言う→   )ざるを得ない。 (^^)前課の解答(^^) 1) もあろうに/させられては(使役の受身文)/かなわない 2) あるまい(「なかろう」も可)/で/出して 416 ~もそこそこに/~そこそこ 名詞 : ×  +  もそこそこに    ・            もそこそこにする  ・ 数詞 : ×  +  そこそこ      ・ ♪ 会話 ♪ 佐藤:無理が祟ったらしく、父が入院したんだ。 山田:それは心配だねえ。仕事は適当に切り上げて、今日は早く帰ったらどう。 佐藤:うん、悪いけど、そうさせてもらうよ。 李 :山田、佐藤はどうしたの?あいつ、挨拶もそこそこに部屋を出ていったけど。 ♯ 解説 ♭  「そこそこ」には副詞の用法と接尾語の用法があります。副詞「そこそこ」は「慌てて~/いい加減に~」という意味を表す語で、「名詞+もそこそこに」は、例文1、2のように、「(何かを急いでいて)~も十分しないで~する」ことを表す文型になります。また、例文3のように「~もそこそこにする/~もそこそこにしなさい」などの形で、「~適度を守れ」と言う意味を表したりします。この場合、「~もほどほどにする/~もほどほどにしなさい」を使っても同じ意味が表せます。  数詞につくときは、例文4、5のように、「多くても~かそこら」の数量だという語感を持つ接尾語になります。「二十歳かそこら」と「二十歳そこそこ」はどちらも「二十歳前後」という意味ですが、「~そこそこ」には「せいぜい(多く見ても)」という意味があるので、「~かそこら」(→文型032)よりも軽視の感情が強く現れます。 § 例文 § 1.住民への説明もそこそこに、ゴミ処理場の建設が始められた。 2.朝御飯もそこそこに会社へと向かうサラリーマンの姿は、どこか働き蜂に似ている。 3.そこの若いの、さっきから見ていたが、悪ふざけもそこそこにしないか。でないと、俺が黙っていないぞ。 4.二十歳そこそこの若造に、なめられてたまるか! 5.議員が三十人そこそこの少数政党に何ができようか。 ★ 例題 ★ 1) 二十万円(そこそこ/ぐらい)の給料じゃ食う(の/こと)が精一杯で、マイホーム(ところ/どころ)じゃないよ。 2) 彼は終業のベルが(鳴る→   )が早いか、後かたづけ( )そこそこに会社( )飛び出した。 (^^)前課の解答(^^) 1) さることながら/に(基運「に」:→ P)/恵まれなければ 2) ながら/に(→文型338)/言わ(~ざるを得ない→文型106) 417 *~ものか/*~ものですか 動詞・形容詞:原形/ない形  +  ものか                   もんか<口>                   ものですか                   もんですか<口> ♪ 会話 ♪ 良子:小平ときたら学校じゃ落ちこぼれだし、教室じゃお客さんもいいとこよ。それで塾に行くように言ったら、「学校の勉強なんかしたって役にたつもんか」だって。 李 :何かやりたいことがほかにあるなら、話は別だが。 良子:あるもんですか!屁理屈をこねるぐらいしか能がない子よ。わが子ながら、情けないったらありゃしない。 ♯ 解説 ♭  「~ものか」は形式名詞「もの」が作る慣用文型で、動詞・形容詞の「原形/ない形」について、相手の考えや意見を否定し、強く「絶対~ない」と反発する反語表現になります。話し言葉として「~もんか」、丁寧体として「~ものですか/~もんですか」があります。  同じような反語表現に「~だろうか」(→文型161)がありますが、それと比較したとき、この「~ものか」はかなり強い反発・拒否・拒絶の感情や意志が表れる表現で、「決して~ない/絶対~ない」という断定より、はるかに激しい口調になります。   彼なんかにわかるものか。 ≒ 絶対わからない。   彼なんかにわかるだろうか。≒ たぶんわからないだろう。 § 例文 § 1.持って生まれた性格が、そう簡単に変わるものか。 2.あてになるものですか、あんな男の言うことが。 3.この悔しさを忘れるものか。今度の試合では必ず勝ってみせる。 4.あなたなんかに、私の気持ちがわかってたまるもんですか。 5.やさしくて親切?あの男が?どこがやさしいもんか、外面がいいだけだよ。 ★ 例題 ★ 1) (知る/知らない)ものか。知っている(わりに/くせに)、(わざと/わざわざ)とぼけているんだよ。 2) 恩を仇で返す(ようだ→    )真似を(する→    )て、黙って(いる→      )ものか。 (^^)前課の解答(^^) 1) そこそこ/の(名詞句・行為→文型354)/どころ(→文型230) 2) 鳴る(→文型046)/も/を(<移動地>を== 418 ~ものか/~たらいいものか/~ばいいものか 動詞:た形      +  ものか               らいいものか 動詞:仮定形/て形  +  いいものか (注:口語として「~ものか→もんか」、女性口語として「~ものかしら」、男性 口語として「~ものかなあ」なども使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :小平のことだが、どうしたらいいものか。 良子:塾に行かせたものか、家庭教師をつけたものか、どちらにしても今のままじゃ、どうしようもないわ。 李 :かといって、首に縄をつけても塾に行かせるってわけにもいかないだろ? 良子:あ~あ、どうすればいいものかしら。頭が痛いわ。 ♯ 解説 ♭  この「~ものか」は例文1~4のように「~したものか」や「~たらいいものか/~ばいいものか」の形で、主に方法がわからず「どうしたらいいだろうか」と自問する表現を作ります。例文5のように疑問の「~のだろうか」と同じ意味を表すこともありますが、どちらの意味かは文脈から理解するしかないでしょう。この「~ものか」の話し言葉として、男は「~もんか」、女は「~ものかしら」などが使われます。   彼はどうしたものか、最近学校に来ないねえ。<自問>   卒業後どうしたものか、悩んでいるんです。 <疑問> § 例文 § 1.妻の誕生日に何を贈ったものか、う~ん、困ったなあ。 2.癌だということをはっきり父に話していいものか、決め兼ねています。 3.「卒論のテーマ、決まったの?」「いま何にしたもんかって迷っているんだ」 4.定年退職後はどうしたらいいものかと、色々悩んでいる。 5.彼はもう卒業したものか、最近、学内で姿を見ないね。 ★ 例題 ★ 1) この仕事、みんな(嫌で/嫌がって)(やりたくない/やりたがらない)し、かといって自分も(したくない/したがらない)し、どうしたものか。 2) 国に(帰る→    )か帰るまいか、どう(する→   )ものか、結論を(出す→   )兼ねている。 (^^)前課の解答(^^) 1) 知らない/くせに(→文型070/~わりに→文型315)/わざと 2) ような/され(受身文:~が~に~をされる)/いられる 419 *~ものがある 動詞・形容詞:原形<ナ形ーな>  +  ものがある        ない形          もんがある<口> (注:連体形接続なので「~べき+」「~如き+」などの形もある) ♪ 会話 ♪ 山田:仕事が暗礁に乗り上げたとき、我々の課長への信頼感には大きいものがあります。 課長:君達の協力がなければ、僕一人じゃ何もできないよ。 山田:何をおっしゃいますか。課長こそ頼みの綱です。 百恵:よくもあんな心にもないお世辞が言えたもんだわ。 李 :彼のごますりには、才能とも呼ぶべきものがあるね。 ♯ 解説 ♭  「~ものがある」は「~には~がある」文型と「もの」が結合して作られています。   この国で採れる果物には、バナナやパイナップルなどがある。<物の種類>   彼には学識(教養・地位・誇り・経験・夢・・)がある。  <人の属性>   規則には例外がある。例外には理由がある。        <ことの属性>  この「AにはBものがある」もAの内にある中身・内容・部分などの属性Bを表す表現ですが、「AはとてもBという要素を備えている」という意味を表し、それが客観的・普遍的事実だという強調の語感や感嘆の気持ちが現れます。 § 例文 § 1.物事には順序というものがある。 2.彼には異性ばかりか、同性をも引きつけるものがある。 3.女心というものは、どうも俺たち男にはわからないものがある。 4.他社が新製品の開発を進めているなどという話を聞くと、内心穏やかならぬものがありますね。 5.彼女のアニメ作品には、いつも胸を打たれるものがある。 ★ 例題 ★ 1) 人の生涯は川面(に/で)浮かぶあぶくのように、生まれ(て/ては)消え、消え(て/ては)生まれ、何か悲しい(もの/こと/ところ)がある。 2) 天才(と言う→      )人の行動( )は、私たち凡人が(理解する→     )難いものがある。 (^^)前課の解答(^^) 1) 嫌がって(第三者の感情・希望)/やりたがらない/したくない 2) 帰ろう(→文型436)/した/出し(~兼ねる→文型044) 420 *~ものだ ・/*~ものではない 動詞・形容詞:原形・ない形  +  ものだ       ・                   もんだ<口>                   ものではない    ・                   もんじゃない<口> ♪ 会話 ♪ 李 :昨日、学校から呼び出しをくらってね。「こんな成績じゃ、お宅のお子さんが入れる高校はありませんよ」って言われちゃったよ。息子の将来が心配だ。 佐藤:取り越し苦労はするもんじゃないよ。心配し出すと、きりがないものだ。それに、いくら心配したって、所詮、なるようにしかならないものさ。 ♯ 解説 ♭  ここで取り上げた「~ものだ」は動詞・形容詞の原形や否定形(「ない」形)と結びついて、断定を表す場合と、「~べきだ」(→文型382)という義務・当然を表す場合があります。両者に共通しているのは、普遍的事柄や社会常識からの判断した一般論を述べることです。  人間は死ぬものだ。  <普遍事実>  学生は勉強するものだ。<義務・当然>  否定の形は「~ないものだ」と「~ものではない」の二種類があります。「~ないものだ」は「~ないのが当然だ」という一般論ですが、「~ものではない」は「~べきではない」(→文型384)と禁止の意味を表す場合が多いでしょう。   弱い者いじめはしないものだ。  ≒~しないのが当然/常識だ   弱い者いじめはするものではない。≒~してはいけない § 例文 § 1.人間というものは、外見だけではわからないものだ。 2.最初は誰でも難しく感じるものさ。ものは試し、先ずやってみたらどうだい? 3.「芸は身を助ける」と言うが、何かの時にその特技が役立つことがあるものだ。 4.慣れないことはするもんじゃない(⇔べきじゃない)なあ。 5.陰口は言うものではない(⇔べきではない)。もし言いたいことがあれば、直接、本人に言うものだ(⇔べきだ)。 ★ 例題 ★ 1) 自分の後始末は自分でつける(もんだ/わけだ)。人にしてもらおうなんて考える(もんじゃない/わけじゃない)。 2) 他人という( )( )は、いつも自分の思った通り( )動いてくれる(ものだ→      )んだよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) に(状態の出現地)/ては(反復→文型188)/ては/もの 2) と言われる(受身文)/に/理解し(~難い→文型034) 421 *~ものだ ・ 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  +  ものだ                      もんだ<口> ♪ 会話 ♪ 山田:いやあ、呆れたもんだねえ。あの新入社員、前の彼女と別れるが早いか、もう次の彼女を連れてたぜ。 百恵:彼女だって似たようなものよ。いそいそと誰かに電話してたわよ。あれって、デイトの約束ね。 山田:最近の新人類にゃついていけないよ。よくあんなにケロッとしていられるもんだ。 ♯ 解説 ♭  この「~ものだ」は「さすがに~だ!/予想通り~だ!」という驚きや感嘆・詠嘆を表す「~ものだ」で、それまで知らなかった真相を発見したり、誰でもそう思うのが当然の客観事実ながら、改めて再確認したりしたとき発する場合に使われます。感嘆の対象は多くの人が共有できる普遍事実や真理です。  問題なのは 感嘆表現の「~こと(か)/~ことだろう」(→文型079)との違いですが、これは個別の事態に対して、その場そのときの個人の気持ちを述べるもので、「~ものだ」とは使う場面が異なります。→例題1)<発見、客観事実の再確認>   赤ちゃんって可愛いもの(×こと)だねえ。   初めて見ましたが、雪景色の富士山って、美しいもの(×こと)ですねえ。<その場、その時の個別的気持ち>   この赤ちゃんの可愛いこと(×もの)、まるでお人形さんみたい。   どんなにあなたのことを心配したこと(×もの)だろう。 § 例文 § 1.あの部長の石頭にも困ったもんだねえ。 2.「光陰矢の如し」と言うが、月日の経つのは早いものだなあ。 3.いやあ、元気なもんだねえ、九十歳なのに歩いて富士山に登るとは。 4.人間ってわからないものだ。あんな泣き虫が、今や大臣とはねえ。 5.よくもそんな嘘が言えたもんだな。俺が知らないとでも思っていたのか。 ★ 例題 ★ 1) 噂(には/によると)(聞いた/聞いていた)が、万里の長城って実に壮大な(こと/もの)だねえ。 2) てっきり遭難した( )と思っていたが、よくあの吹雪の雪山( )( )(生還できる→     )ものだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) もんだ/もんじゃない(「わけだ・わけではない」→文型225) 2) もの/に/ものではない 422 *~ものだ ・/~ものだった 動詞・形容詞:た形  +  ものだ               もんだ<口>               ものだった               もんだった<口> ♪ 会話 ♪ 課長:贅沢な時代だ。僕が子供の頃は、鉛筆一本粗末にしても、親に叱られたものだった。 李 :ほんの十年前の中国でも、靴下に穴があいたら、つぎ当てして履いたものですが、今では使い捨てです。 山田:いずれ石油も使い尽くし、天然資源も枯れ、この文明にも終わりが来るんでしょうね。 ♯ 解説 ♭  「~た‐ものだ」(口語形は「~た‐もんだ」)は、例文1~4のように、ほとんどの場合は過去を回想する表現となります。もし「~た‐ものだった」と使ったときは、既に過ぎ去りもう戻ってこないという詠嘆を込めた表現になります。なお、「~た‐ことがある」(→文型080)も過去の経験を述べますが、「~た‐ことがある」は一回性のことですが、「~た‐ものだ」は習慣性のことになります。   昔、この川で釣りをしたことがある。  <一回性>   昔、(よく)この川で釣りをしたものだ。<習慣性>  注意してほしいのは、例文5のように「~た‐ものだ」の形が希に由来や理由・事情を説明することがあることで、どちらの意味かは文脈から理解するしかありません。 § 例文 § 1.学生の頃、よくこの界隈を飲み歩いたもんだ。 2.昔の教師というのは、もっと威厳があったものだ。 3.俺が子供の頃は、ちょっとでも親に口答えでもしようものなら、親父にぶん殴られたものだ。 4.当時の君はいつも反戦デモの先頭に立ち、熱っぽく未来を語っていた。そんな君が僕には輝いて見えたものだった。 5.能というのは、猿楽・田楽といった民間芸能から発展を遂げたものです。 ★ 例題 ★ 1) この川も数年前(までに/まで)はまだ釣り人の姿が(見えた/見られた)ものだが、今では死の川に(した/なった)。 2) 学生時代、君( )よくこの店に(来る→   )ものだね。そして夢を(語り合う→     )ものだった。 (^^)前課の解答(^^) 1) には((噂・話)には聞いていた)/聞いていた/もの 2) か(意外な事態→文型041)/から/生還できた(既定・完了) 423 *~もので/*~ものだから/~んだもの 名詞    :  である/な   +  もので 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>    もんで<口>                     ものだから                     もんだから<口>                     んだもの<口> ♪ 会話 ♪ 李 :学生の頃によく通った飲み屋を、八方手を尽くして探したけれど、だいぶ昔のことなもので、見つからなくてね。がっくりきたよ。 良子:本当に残念ね。最近は至る所が再開発されてるものだから、取り壊されたのかもしれないわ。 李 :記念にビデオに撮っておこうと思ったのに。 ♯ 解説 ♭  「~もので/~ものだから/~んだもの」は「ので」系の原因・理由を表す表現ですが、予定しない事情や不本意な事情があって、「そうするつもりはなかったんですが~ので/そうしたくはなかったんですが~ので」という意味を表します。謝るときの言い訳によく使われる表現です。  会話での注意として、謝るときの理由には「~から」は使わないことです。「~から」は原因・理由を強調しますから、自己の責任回避の印象を与えるのです。謝罪の時は「~ので」か「~もので」を使いましょう。   電車が遅れたもので、遅刻しました。<不本意な理由>   電車が遅れたもので、遅刻しました。<客観的な理由説明>   電車が遅れたから、遅刻しました。 <私は悪くない。JRが悪い> § 例文 § 1.近くまで来たものですから、ちょっとお寄りしました。 2.まだ小さかったもので、当時のことはよく覚えていない。 3.「どうして学校に行かないの?」「だってつまらないんだもの」 4.この服、安かったもんで、つい買ってしまったんですがね、とんだ「安物買いの銭失い」でした。 5.田中さん。あっ、ごめんなさい、人違いでした。後ろ姿があまりに似ていたもので。 ★ 例題 ★ 1) 人身事故(で/なので)電車に遅れが(出た/出した)(から/もので)、遅刻してしまいました。 2) 「どうして結婚(する→    )の?」 「( )( )( )、適当な相手がいないんだ( )( )」 (^^)前課の解答(^^) 1) まで/見られた(可能形)/なった(「する」は意図的動作) 2) と(共同動作の相手)/来た/語り合った 424 *~ものなら 状態動詞:原形  +  ものなら    ~  たい             もんなら<口>    てほしい                        てみろ (注:ほとんどの場合、前の動詞は可能形となる) ♪ 会話 ♪ 李 :やはり自分が生まれ育った故郷はいいなあ。許されるものなら、スケジュールを延長したいね。小平も北京に慣れたようだし、中国語も少し覚えたみたいだ。 良子:子供は慣れるのが早いわね。私も子供に戻れるものなら戻ってみたいわ。目の位置が低いと、同じものを見ても、違って見えるのでしょうね。 ♯ 解説 ♭  「~ものなら」は状態動詞(ある・いる・できる・わかる・要る)について、後件で願望や期待を表す表現です。意味上は仮定の「~なら」(→資料・)と変わりませんが、実現がほとんど不可能だと思うことを取り上げるのが特徴です。また、後件には制約があって、「~だろう/~かもしれない…」などの推量や「~つもりだ/~なければなりません…」などの個人の意志は表せません。ほとんどは例文1~4のように「(可能形)ものなら~たい」の形で使われるので、願望の「~ものなら」と覚えておけばいいでしょう。  なお、「~ものなら」は時として例文5のように、「~てみろ/~てみせろ/~てみせなさい」と呼応して、相手を挑発したり、喧嘩の捨てぜりふに使われたりすることもあります。 § 例文 § 1.できるものなら、一ヶ月ぐらい休暇を取りたいなあ。 2.僕だって金にゆとりがあるものなら、君に貸してやりたいが、見ての通りの貧乏暮らしだ。 3.なれるものなら政治家になって、世のため人のために尽くしたいと思ったこともあった。 4.やり直せるものなら、もう一度二人で最初からやり直してみないか。 5.大きな口をたたくけど、やれるもんならやってみせろよ。 ★ 例題 ★ 1) (代わる/代われる)ものなら、代わって(やる/やりたい)が、試験ばかりはそうも(いこう/いくまい)。 2) もう一度(生まれ変わる→       )ものなら、僕は女( )(生まれ変わる→       )たいね。 (^^)前課の解答(^^) 1) で(理由の並立は「~て(/で)~ので/もので」)/出た/もので 2) しない/だって/もの 425 *~ものの 名詞    :     である      + ものの 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな/である>   もんの<口> ♪ 会話 ♪ 教師:御子息なりに努力したようですが、期末試験の成績はよくなかったですね。 良子:頭ごなしに叱らないつもりではいたものの、ついついかっとなって、きつく叱ってしまいました。 教師:平気そうな顔はしているものの、一番こたえているのは本人です。暖かく励ましてあげてください。 ♯ 解説 ♭  「AもののB」は「確かにAであることはAですが、しかし(100%そうだと言えない問題が残っている)」という意味を表す逆接表現で、消極的にAであることは認めながら、それと矛盾したことBを後件で述べます。多くは「~は~ものの」の形で使われます。不満・不足・不完全なことをつけ加える「~が/~けれども」に相当すると考えていいでしょうが、語感としては「~が/~けれども」よりも柔らかくなります。  また、「~とは言うものの」(→文型243)や、例題1)の「~からよかったものの」などの逆説文型も、この逆説の「~ものの」から派生します。 § 例文 § 1.大学は出たものの、就職難で仕事が見つからない。 2.医者ではあるものの、僕の専門は牛や馬でしてね。 3.その手紙は読んではみたもんの、回りくどくて、何が言いたいのか、さっぱり要領を得なかったよ。 4.教師たちは熱心なものの、学生たちにはやる気がほとんどないように見受けられた。 5.カンニングの現場を見られなかったからよかったものの、もし先生に見つかっていたら大変なことになっていた。 ★ 例題 ★ 1) 私がいたからよかった(ものの/ものを)、(いたら/いなかったら)大事故になる(こと/ところ)だった。 2) 彼のやり方に批判が(ある→   )とは言えないものの、彼( )代われる人がいない( )が現状だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 代われる/やりたい/いくまい(=いかないだろう→文型398) 2) 生まれ変われる/に(変化の結果)/生まれ変わり 426 *~ものを 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな/である> + ものを                        もんを<口> (注:ほとんどの用例は「~ば~ものを」「~ても~ものを」となる) ♪ 会話 ♪ 李 :また王に逃げられた。もう少しで詰むとこだったものを、くやし~っ。今度も持ち駒切れだ。 良子:岡目八目だけど、いい手があったのよ。一言言ってくれれば、こっそり教えてあげたものを。 李 :そうと知ってりゃ、頼んだもんを。 山田:はっは、後の祭りだ。へぼ将棋もいいとこだね。 ♯ 解説 ♭  「~ものを」(口語形として「~もんを」)は常に「~ば/~ても」と呼応して、「~ば~ものを」「~ても~ものを」の形で使われます。接続助詞としても終助詞としても使われますが、「~のに」と置き換えることができる逆説表現です。この文型は実際には行われなかったことを前件で取り上げて、相手に対する不満・非難・残念・恨みといった感情を強く打ち出すのが特徴です。  例えば、下の例は「~ものを」も「~のに」使えますが、「~ものを」を使うと相手に対する不満や非難の感情が強く現れ、「~のに」を使うと自分自身の残念な感情が表れるでしょう。   努力すれば合格できたものを(・のに)。   知らないことは聞けばいいものを(・のに)。 § 例文 § 1.知っているのであれば、教えてくれてもいいものを。 2.日頃から復習していれば、試験前に慌てずに済むものを。 3.嫌なら嫌だと言えばいいものを、あいまいな返事をするから、こんな始末になるんだよ。 4.隠してもいずれはばれるものを、隠そうとするから、よけいに嘘が透けて見える。 5.連絡してくれれば迎えに行ったものを、ちょっと水臭いじゃないか。 ★ 例題 ★ 1) (謝って/謝れば)済む(ものの/ものを)、下手に弁解する(から/ので)、かえって立場を苦しくするんだ。 2) 会社に(命じた→     )通りに(する→   )いいものを、反対して首に(した→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ものの(~ものを→文型426)/いなかったら/ところ(→文型231) 2) ない(婉曲・二重否定)/に(~が~にかわる)/の(→文型354) 427 *~も~ば、~も~/~も~なら、~も~ 名詞:も + 名詞・ナ形容詞の語幹:なら  + 名詞:も ~        動詞・イ形容詞   :仮定形 (注:ここから「~も~なければ、~も~ない」の形も生まれる。) ♪ 会話 ♪ 良子:今回は大連にも天津にも行けなかったわね。 李 :仕方がないよ。お金もなければ暇もないのが僕たちサラリーマンの実態さ。またいずれ来る機会もあるさ。 小平:僕、北京が大好きだよ。思い切ってこちらの学校に転校しようかなあ。お婆ちゃんちから通えばいいし。 李 :おいおい、それ、本気かい? ♯ 解説 ♭  この文型は並立・併存を表す文型で、意味上は「~も~し、~も~」(→文型107)と変わりません。ただし、「~も~ば~も~/~もなければ~も~ない」は口語としても書面語としても使われますが、「~も~し、~も~」は専ら口語に使われます。   頭もよければ、スポーツもできる。=頭もいいし、スポーツもできる。   金もなければ、暇もない。    =金もないし、暇もない。  なお、例文3のように「AもAなら、BもB」の形は同じ名詞A、Bを重ねて、「Aもよくないし、Bもよくない。どちらもどっちだ」と非難の気持ちを表す文型も作ります。→例題1) § 例文 § 1.人間は長所もあれば短所もあるものだ。 2.あれも嫌ならこれも嫌、一体何がしたいのかはっきりしろ? 3.君も君なら、彼も彼だ。こんな小さなことで、むきになって言い争うことはないじゃないか。 4.僕は金もなければ才能もない平凡な男だけど、君を愛する気持ちだけは誰にも負けない。 5.名前も言わなければ住所も告げず、私を助けてくれた彼は立ち去った。 ★ 例題 ★ 1) こんな非常識(の/×)極まりないことを、する方も(する/した)方なら、(する/させる)方もさせる方だ。 2) 彼は酒( )(飲む→     )なければ、タバコ( )(吸う→ )堅物だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 謝れば/ものを/から(強調「~から~んだ」) 2) 命じられた(受身文)/すれば(→文型154)/された(受身文) 428 ~や否や/~や 動詞: 原形  + や否や           や ♪ 会話 ♪ 李 :小平もよほど疲れていたとみえ、横になるや否や寝息を立てはじめたよ。 良子:今朝早く中国から帰って、その足ですぐ学校へ行ったんだから無理もないわ。 李 :日本に戻るや、また学校学校の毎日か。何だか、かわいそうになるよ。おっと、俺も明日から会社だ。 ♯ 解説 ♭  「~や否や/~や」は「~すると、すぐ~」を表す文型で、今日では話し言葉として使われることは少ないでしょう。この文型は既に起こったことを取り上げますから、習慣的なことを取り上げるのでなければ、文末は完了形(た形)になります。   彼は(毎日)家に帰るや否やパソコンに向かう。<習慣>   彼は家に帰るや否やパソコンに向かった。   <既定事実>  同時発生を表す文型としては、動詞の原形と結びつく「~が早いか」(→文型046)、「~そばから」(→文型127)、「~か~ないうちに」(→文型042)、「~なり」(→文型280)や、動詞の完了形(「た」形)と結びつく「~とたんに」(→文型148)などがありますから、各項を参照してください。 § 例文 § 1.彼女は私の顔を見るや否や、涙を浮かべて駆け寄った。 2.彼は母危篤の報を受けるや、一目散に家に駆け戻った。 3.彼女が壇上に立つや否や、会場も割れんばかりの拍手が沸き上がった。 4.彼は事務所に帰るや否や、堰を切ったように株価市場の異変を同僚に語りはじめた。 5.彼はその杯に口をつけるや、血を吐いて倒れ、もがき苦しみ出した。 ★ 例題 ★ 1) 首相を(乗った/乗せた)車が官邸に到着する(や否や/とたんに)、報道陣はマイク(を/に)片手に駆け寄った。 2) その飛行機は(飛び立つ→      )とたんに、激しい爆音( )ともに(炎上する→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) ×(→文型069)/する/させる 2) も/飲ま/も/吸わ 429 ~やむ/~終わる/~終える 動詞:[ます]形 +  やむ     ・             終わる   ・             終える ♪ 会話 ♪ 李 :外が完全に暗くなったらしくて、ようやく蝉が鳴きやんだね。 良子:何年も土の中で過ごして、地上に出ると数日で一生を終えるなんて、はかないわね。 李 :日本人って何でも無常観に結びつけるけど、僕はうるさくてたまらなかったよ。 ♯ 解説 ♭  「~終わる/~終える」は他動詞について「飲み終わる/飲み終える」のように動作の終了を表しますが、自動詞「~終わる」は現象面を、他動詞「~終える」は「終了させる」という人の意志動作を強調した表現になります。   宿題をし終える(×し終わる)のに、2時間もかかった。<動作面を強調>   宿題をし終えた(○し終わった)ので、遊びに出掛けた。<どちらの解釈も可>  しかし「降る・鳴る・吹く・鳴く…」などの自然現象や、「泣く・笑う・怒る・吐く…」などの感情や生理現象を表す動詞には、「~終わる/~終える」は使えません。その場合には「~やむ(止む)」が使われます。   風が吹きやんだ(×終わった)。   子供が泣き止んだ(×終わった)。 § 例文 § 1.食べ終わったら、食器洗いを頼むわよ。 2.二カ月もかかったが、やっと原稿を書き終えた。 3.二日も降り続いた雨が、やっと降りやんだ。 4.いくらあやしても、子供は泣きやまなかった。 5.除夜の鐘も鳴りやんで、いよいよ新年のスタートだ。 ★ 例題 ★ 1) 「風も吹き(終わった/やんだ)し、もう台風は通り過ぎたんじゃない(かい/だい)?」  「そのようね。でも、農作物(へ/に)の被害も相当あったみたいだし、値上がりが心配だわ」 2) この仕事を全部(やる→   )終える( )は、まだ相当時間( )要します。 (^^)前課の解答(^^) 1) 乗せた(他V)/や否や/を(~を片手に)\ 2) 飛び立った(→文型148)/と(→文型240)/炎上した 430 やむを得えず/~(の)もやむを得ぬ 名詞    :    ×      +  はやむを得ない 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>  +  のもやむを得ない                      のもやむを得ぬ (注:「やむを得ず~する」のように、本来は副詞として使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :エコノミーの予約が取れなくて、やむを得ずビジネスクラスになったよ。予算オーバーだけど、やむを得ないよね。ファーストクラスじゃ、無理だろうけどさ。大蔵大臣、御了解いただけますか。 良子:その分出費は痛いけど、席がゆったりしていて、食事も豪華なんでしょ?今回は奮発しましょ。 ♯ 解説 ♭  この文型は元々「不得己」と言う漢語から生まれており、「(何か自分自身では変えられない理由・事情があって)不本意だが~するしかない」という意味を表します。改まった場での会話で使われるほか、書面語としてもよく使われる表現です。なお、単独で副詞として使われる「やむを得ず~する」や、「やむを得ぬ+名詞」の形も覚えましょう。日常口語では「しかたがない」を使えばいいでしょう。   こうなったのもやむを得ない。→こうなったのもしかたがない。   やむを得ず同意した。→しかたなく同意した。 § 例文 § 1.万策尽き果て、やむを得ず倒産するに至った。 2.借金で首が回らなくなり、やむを得ずサラ金から金を借りた。 3.退っ引きならぬ事情で、やむを得ず本日の会議を欠席させていただきます。 4.誰も火中の栗を拾うものがなく、やむを得ず私がその任を引き受けた。 5.本人に反省の色が見られないのなら、退学処分もやむを得ない。 ★ 例題 ★ 1) 不況が深刻化(する/している)(からには/からと言って)、赤字国債の発行も(やむを得ず/やむを得ぬ)。 2) この大雨( )は、登頂を断念し、引き返す( )もやむを(得る→   )まい。 (^^)前課の解答(^^) 1) やんだ/かい(→文型129)/へ(「~にの」の形はない) 2) やり(V〔ます〕形+終える)/に(→文型336)/を(他V) 431 *~やら~やら~/*~やら~やらだ 名詞    :    ×      +  やら ~ やら 動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×>     やら ~ やらだ                      やら ~ やらで ♪ 会話 ♪ 李 :今朝はひどい目にあった。電車が遅れるやら、雨には降られるやら、おまけに車に水までかけられるやら。 良子:ついてない時って、そんなものよ。 李 :どうも最近は何をやってもうまくいかないし、もしかして男の厄年かなあ? 良子:ふっふ、じゃ、厄払いに神社にでもお参りする? ♯ 解説 ♭  「AやらBやら」はA、Bを例示して「A、B、その他いろいろある」という意味を表す並立助詞の用法です。ほぼ同義文型に「~とか~とか」(→文型226)がありますが、これは全体の中から代表例を選ぶ点に重点があります。  これらの並列表現は名詞の時は「~や~や」に、動詞・形容詞の時は「~たり~たり」(→文型158)を使っても表せるでしょう。しかし、ほかにも同類のことが色々あることを一番強く暗示するのが「~やら~やら」です。   お茶やら花やら(⇔や)   恐いやら見たいやら(⇔たり)   泣くやら騒ぐやら (⇔たり) § 例文 § 1.日本料理と言えば、寿司やら(⇔や)天ぷらやら(⇔や)、そうした海鮮料理を思い出す人が多いでしょう。 2.物価が高いやら忙しいやらで、日本での生活は大変だ。 3.悔しいやら自分が情けないやらで涙が出てきた。 4.老人の一人暮らしというのは、寂しいやら心細いやら、はたまた健康の不安やら、言うに言われぬものがある。 5.殴るやら蹴るやら、最後にはナイフまで持ち出すやら、もう誰にも二人のけんかを止めようがなかった。 ★ 例題 ★ 1) そのとき彼は怒鳴り(始める/出す)(や/やら)周囲に当たり散らす(や/やら)、大変な(怒る/怒り)ようだった。 2) あれ( )これ( )と雑用に(追う→    )、息つく暇もありません。 (^^)前課の解答(^^) 1) している/からには(→文型056)/やむを得ぬ 2) で(理由)/の(→文型354)/得(一段V+まい→文型398) 432 *~(の)やら~(の)やら 名詞    :  な       + のやら  ~ のやら 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>   ものやら ~ ものやら 疑問詞   :  ×       + やら                    のことやら (注:口語形として「~んやら/~もんやら」がある) ♪ 会話 ♪ 百恵:佐藤さん、李さんの代役で、中国からのお客さんの通訳をやるんだって?上手にできるものやら心配だわ。 山田:彼なら心配ないよ。ところで最近の課長、生彩がないねえ。いるのやらいないのやらわからないよ。 百恵:どうも奥さんとうまくいってないようよ。 山田:まさか今はやりの熟年離婚なんてことに? ♯ 解説 ♭  「~のやら~のやら/~ものやら~ものやら」は副助詞「やら」の用法で、不確かさを強調する「~か」に相当します。また、疑問詞につく場合も、より不確かさを表す「いつ か・なにか・だれか…」に相当します。→例題1)   行くのやら行かないのやら、はっきりしない。<⇔行くのか行かないのか>   何やら白いものが、川に浮かんでいる。   <⇔何か>   今度帰ってくるのは、いつのことやら。   <⇔いつのことか>  なお、上記の一番下の例文のように終助詞として使われると、「~だろうか、わからない」という詠嘆表現になります。 § 例文 § 1.雨なのやら霧なのやら、その森は深いもやに包まれていた。 2.喜んでいいのやら悲しんでいいのやら、自分でもよくわからない心境だった。 3.彼にそのことを言っていいのやら悪いのやら、今、判断がつき兼ねている。 4.無事でいるものやら死んだものやら、息子と音信不通になって、もう20年になります。 5.何のことやら、僕にはちんぷんかんぷんだよ。 ★ 例題 ★ 1) この先、何がある(とか/やら)わからない(から/のに)、いざという時、この金を使っ(てやれ/てくれ)。 2) 彼は今頃どこで( )( )している( )やら。会社を(辞める→    )きり、何の音さたもない。 (^^)前課の解答(^^) 1) 出す(→文型137)/やら/やら/怒り(~よう→文型435) 2) や/や(慣用語「あれやこれや」)/追われ(受身文) 433 やれ~だの、やれ~だのと/~や~の やれ+ 引用句:× + だの、やれ+ 引用句:× + だのと やれ+ 名詞 :× + だ、やれ + 名詞 :× + だと (注:「~や~の」の形は慣用的言い回しが多い) ♪ 会話 ♪ 百恵:昨日の通訳、大変だったんでしょう?お疲れ様。 佐藤:ありがとう。何とか大役を果たしたよ。 百恵:夕食は何にしたの?やれ天ぷらがいいだの、やれ寿司がいいだのと、外野席がうるさかったようだけど。 佐藤:あちら様、日本料理もよく御存知で、大変な日本通だったよ。それで結局、ふぐちりになったんだ。 ♯ 解説 ♭  「やれ~だ、やれ~だ(の)と」は広く相手の言葉を引用して、「~とか~とか言って」という意味を表します。ほとんどの用例は、例文1~3のように不満・怒り・我慢できないといった感情を表すもので、強意の「~とか~とか」と言えるでしょう。  なお、例文4、5のように「~や~の」の形式があって、「食うや食わずの/飲めや騒げの/一度や二度の/殴るや蹴るの」などの慣用語を作りますが、そのまま語彙として覚えた方がいいでしょう。 § 例文 § 1.やれ宿題をしろだの、やれ塾へ行けだのと、俺んちの親父はうるさくて困る。 2.やれああだ、やれこうだと、いちいち指図されたら、やってる方が嫌になる。 3.うちの妻は子供がちょっとでも具合が悪いと言うと、やれ薬だ、やれ医者だと大騒ぎする。 4.あの当時は、食うや食わずの生活だった。 5.君に注意したのは、一度や二度のことではない。 ★ 例題 ★ 1) やれ人権(です/だ)、やれ自由(です/だ)と言ってる(のに/くせに)、自国の人種差別問題も解決してない。 2) あの日は飲め( )歌えの忘年会になってね、大変な(盛り上がる→ )よう(だ→   )よ。 (^^)前課の解答(^^) 1) やら/から(理由・順接)/てくれ 2) どう(「なに」も可)/の/辞めた(~た・きり~ない→文型064) 434 ~故(に) 名詞    :    ×      +  故(に) 動詞・形容詞:普通形<ナ形 ーな>     が故(に) (注:「~が故に」の方がより古い言い方)   ♪ 会話 ♪ 李 :「我思う、故に我あり」なんて言うけど、日本人は自分の意見を人前であまり主張しないよねえ。 良子:中国みたいに多民族社会じゃないから、言わなくても気持ちは通じるし、むしろ言わない方がいいとされる文化風土なのよ。 李 :島国故に、それでやってこられたんじゃないのかな。 ♯ 解説 ♭  「~故に」は原因・理由を表す文語表現で、一般真理であることを強調した表現です。接続助詞としても、例文5のように接続詞としても使われます。  なお、改まった会話では「故」が「理由・特別の事情」の意味の名詞として単独で使われることがありますから、その例を挙げておきます。   故あって、この度退職することになりました。   彼が怒るのも故なきことではない。   故のない非難を受けた。 § 例文 § 1.故あって、しばらく閉店いたします。 2.子供のしたこと故、大目に見てやってください。 3.今はちょっと取り込み中故、御用件につきましては、日を改めてということにしていただけませんか。 4.もうこの歳故に、物忘れがひどくなるのもいたしかたありません。 5.これは紛れようもない事実である。故に、臭い物にふたをするのでなく、あるがままを直視すべきである。 ★ 例題 ★ 1) 人間は理性がある(が/の)故に人間なのだ。理性を(失う/失った)が最後、動物と何の変わりも(ある/ない)。 2) 当時は戦時下故、言論の自由などという( )( )は、そもそも(存在する→    )(得る→   )のです。 (^^)前課の解答(^^) 1) だ/だ/くせに(非難の時は「のに」より適切→文型070) 2) や/盛り上がり(→文型435)/だった(「あの日」は過去を指す) 435 *~よう/*~ようがない/~すべがない 動詞:[ます]形 +  よう            ・            かた 動詞:[ます]形 +  ようがない/ようのない    ・ 動詞: 原形   +  すべがない ♪ 会話 ♪ 山田:彼はもう少し他人の意見を聞くべきだ。あれでは、アドバイスのしようがないよ。 李 :自分の能力に自信を持つのはいいけど、少しうぬぼれが過ぎてるね。どうも鼻持ちならない。 佐藤:こんなことを言ったら言い過ぎかもしてないけれど、彼の心の持ちようにも問題がありそうだね。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~よう」は「苦しむ・悲しむ・嘆く・怒る・驚く・喜ぶ・変わる・~がる…」などの感情や状態を表す自動詞の[ます]形について、様子や状態を表します。また、「する・言う・例える・話す・直す…」など動作性の他動詞の[ます]形について、方法を表します。  問題になるのは同じ方法・手段を表す「~方」との違いですが、動作そのものは「~方」がよく、困難さや程度など内容に近づくほど「~よう」がよくなると言えます。どちらも使える「言いようが悪い」と「言いかたが悪い」を比べても、話の内容を問題にしたのが「言いよう」で、話す態度・言葉遣いを問題にしたのが「言い方」です。   料理の作り方(?作りよう)を教えて。   喩えよう(×喩え方)のない美しさ。  「すべ」は方法を表す名詞で、「~ようがない/~すべがない」はどちらも「~する方法がない」と言う意味を表します。→例題1) § 例文 § 1.その両親は事故で娘を失い、ひどい悲しみようでした。 2.彼がそのことを知ったときの驚きようは、尋常ではなかったですよ。 3.よくも解釈できるし、悪くも解釈できる。何事も、ものは取りようだよ。 4.知らないんですから、答えようがないじゃありませんか。 5.彼はただ今出掛けていて、連絡を取るすべがないんです。 ★ 例題 ★ 1) 弾薬も尽き食料も尽き(ては/ても)、もはや(戦う/戦おう)にも(戦う/戦い)(よう/方)がない。 2) この(痛い→   )(がる→   )ようは普通じゃない。すぐ医者( )連れて行った方がいい。 (^^)前課の解答(^^) 1) が/失った(~が最後→文型030)/ない 2) もの/存在し(~得る→文型017)/得なかった(過去文) 436 *~(よ)うか~まいか/~(よ)うか~(よ)うか 動詞:未然形<~(よ)う> + か、~ まいか 動詞:未然形<~(よ)う> + か、~ (よ)うか 動詞:未然形<~(よ)う> + か、どうしようか ♪ 会話 ♪ 山田:担当者があの会社と契約しようかすまいか迷っている時に、いきなり「やめろ」なんて、課長も乱暴だなあ。 李 :課長としては、先方の会社の経営実態を見て、リスクの方が大きいと判断したみたいだよ。 山田:担当者クラスだと、つい目先のノルマに目を奪われて、大局を誤るってこともありがちだからね。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うか~まいか」は二者択一の表現を作ります。「~するか~ないか」が行為の選択だとすれば、この文型は意志の選択だと言えるでしょう。例文3のように第三者や相手の気持ちを推量した表現もありますが、ほとんどの用例は主語が「私」の一人称文です。注意点は、「~(よ)うか~まいか」は相手に行為の選択を迫る場合は使えないことです。→例題1)2)   行くか行かないか(×行こうか行くまいか)、早く決めなさい。  「~(よ)うか~(よ)うか」や「~(よ)うか、どうしようか」に形もよく使われるので、例文を挙げておきます。   行こうか戻ろうか、困ったなあ。   行こうかどうしようか、迷っている。 § 例文 § 1.彼に相談しようかすまいか、さてどうしたものだろう。 2.その話に乗ろうか乗るまいか、何日も考えたんだが、結局やめることにした。 3.どうやらあなたは、この会に参加しようかするまいかと躊躇なさっているようですね。 4.おもしろそうな映画だが、見ようか見まいか、さあどうしようかなあ。 5.ほしいけど、買おうか買うまいか、悩むところだなあ。 ★ 例題 ★ 1) 国へ(帰る/帰ろう)か(帰らない/帰るまい)か、さあ、どうしたらいい(こと/もの)か。 2) 賛成(する→   )のか(する→   )のか、曖昧な言い方を(する→ )ず、態度をはっきりしろ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ては(条件→文型188)/戦おう(→文型447)/戦い/よう 2) 痛(感情形容詞の語幹+がる)/がり/に 437 ~(よ)うが/~(よ)うと/~かろうが/~かろうと 名詞  :だろう/であろう        +  と 動詞  :未然形<~(よ)う>           が イ形容詞:<ー[い]→かろう> ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう> (注:動詞の「ない形」はイ形容詞と同じく「~なかろう」になる) ♪ 会話 ♪ 良子:あなた、この小平の学校の成績を見てよ。小平ったら、野球ばかりにかまけて、この始末よ。 李 :多少成績が悪かろうと、元気でのびのび育ってくれた方いいじゃないか。 良子:あなたがそんなに甘いから、私がいくら口を酸っぱくして叱ろうと、小平は勉強しようとしないのよ。 ♯ 解説 ♭  動詞や形容詞の未然形と「が/と」が結びついた形で、「~ても、関係なく~」を表します。まず未然形の作り方を復習しましょう。動詞:行く→行こう/食べる→食べよう    する→しよう/来る→来ようイ形:美しい→美しかろうナ形:元気だ→元気だろう/元気であろう名詞:雨だ→雨だろう/雨であろう  この文型は前件と無関係を強調する逆説の「~ても」なので、次のような用例では使えません。その点、「~ても」はどんな場合でも使えます。  歩いて行っても(×行こうが)、十分で着く。 § 例文 § 1.何があろうと、決して驚いてはいけないよ。 2.人に何と言われようが、気にすることはない。 3.どんなに高かろうと、どうしても手に入れたいんだ。 4.私が誰と結婚しようが、あなたにとやかく言われる筋合いはないわ。 5.何をしようと君の自由だが、僕の邪魔だけはしないでくれ。 ★ 例題 ★ 1) どんなに時代が(変わる/変わろう)と、どんなに世界が(変わる/変わろう)と、人の心は(変えない/変わらない)。喜びに悲しみに、今日もみんな生きている。   (テレビドラマ「水戸黄門」の主題歌) 2) 僕は少しぐらい部屋( )(汚い→    )が、あまり(気になる→ )方なんだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 帰ろう/帰るまい/もの(自問≒~だろうか→文型418) 2) する/する/せ(→文型121) 438 ~(よ)うが~まいが/~(よ)うと~まいと 名詞  :だろう/であろう       +  と~まいと 動詞  :未然形<~(よ)う>          と~(よ)うと イ形容詞:<ー[い]→かろう>        が~まいが ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう>   が~(よ)うが ♪ 会話 ♪ 李 :おい、あそこで若い女性が、やくざ風の男に絡まれてるぞ。二人で行って助けてやらないか。 山田:馬鹿言うなよ。命あっての物種だよ。笑われようが軽蔑されようが、「君子危うきに近寄らず」だ。 李 :あらら、あいつ薄情な男だなあ。すたこらさっさと逃げちゃったよ。逃げ足の早いこと!待ってくれ~っ。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うが~(よ)うが/~(よ)うが~まいが」など、これらの文型はどれも「前件(A、B )とは関係なく、後件が成立する」という意味を表します。「~(よ)うが/~(よ)うと」(→文型437)から作られた文型なので、「~ても~ても、関係なく/~ても~なくても、関係なく~」と無関係を強調します。  注意するのはAの場合もBの場合も成立することを表す「AにしろBにしろ/AにせよBにせよ」(→文型319)との違いですが、意味の違いが、用法の違いを生むことがあります。   行こうが行くまいが(・行くにせよ行かないにせよ)、参加費はもらうよ。   結婚しようとすまいと(×結婚するにせよしないにせよ)、私の自由よ。 § 例文 § 1.あんな奴、死のうが生きようが、俺の知ったことか! 2.大地震があろうがなかろうが、備えあれば憂いなしだ。 3.まあ彼はいようがいまいがあまり関係ない、いわば会社でも影の薄い存在です。 4.たとえ救出が困難であろうと危険であろうと、敵軍に包囲された自軍を見殺しにはできない。 5.ごろごろ寝ていようと、ぶらぶらしていようと、休みの日ぐらい俺の自由にさせてくれ。 ★ 例題 ★ 1) 彼はビールで(ある/あろう)が、焼酎で(ある/あろう)が、酒と名のつくもの(に/で)は目がない。 2) 人に(笑われる→    )と(嘲られる→    )と気にはしない。僕は信じる道をただ進む( )( )だ。 (^^)前課の解答(^^) 1) 変わろう/変わろう/変わらない 2) が(従属節の主語)/汚かろう/気にならない(あまり~ない) 439 ~(よ)うがいとわない/~(よ)うといとわない 名詞  :だろう/であろう       +  がいとわない 動詞  :未然形<~(よ)う>         といとわない イ形容詞:<ー[い]→かろう> ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう> (注:動詞の「ない形」はイ形容詞と同じく「~なかろう」になる) ♪ 会話 ♪ 李 :今日は母の日だし、君に喜んでもらえるなら、どんなことだろうがいとわないよ。仰せがあれば何なりと。 良子:うれしいせりふだわ。じゃ、遠慮なくお願いしようかしら?先ずトイレの掃除でしょ、それから・・・。 李 :ちょい待ち。母の日って子供がするんだったよね。 良子:舌の根も乾かぬうちに、もうこれだ。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うが/~(よ)うと」(→文型437)と動詞「いとう(厭う)」が結合した文型です。「いとう(厭う)」は 例文1 のように、「嫌がる/嫌だと思って避ける」という意味の動詞ですから、この「~(よ)うが厭わない」は「~てもかまわない(むしろ、喜んで~する)」という意味を表します。この文型は多少の犠牲があっても喜んでするという積極的な行為の選択を表す表現なので、困難を伴う行為でないと不自然になります。   息子のためなら、いくら金を使ってもいい(・使おうがいとわない)。   ここに座ってもかまわない(×座ろうがいとわない)よ。 § 例文 § 1.この子のためなら、どんな苦労もいとわない。 2.君のためなら、命を投げ出そうがいといはしない。 3.彼は他人からどう悪く言われようがいとわず、同僚を蹴落しても自己の出世をはかる冷酷無比な男だ。 4.人から守銭奴と笑われようと、冷血動物とののしられようといとわない。この世は全て金次第だ。 5.あなたのためとあれば、いつであろうと、どこであろうといとわず馳せ参じましょう。 ★ 例題 ★ 1) もしゴッホの絵が手に(入る/入れる)のなら、(いかに/いかなる)(高い/高かろう)がいとわない。 2) 勝つ( )( )には手段を選ぶな。世間( )( )いかなる非難が(浴びせられる→     )がいとうな。 (^^)前課の解答(^^) 1) あろう/あろう/に(慣用語:~に目がない) 2) 笑われよう(受身文+)/嘲られよう/だけ(「のみ」も可) 440 *~(よ)うではないか 動詞:未然形<~(よ)う>  +  ではないか                  じゃないか(口)                 ではありませんか                 じゃありませんか(口) ♪ 会話 ♪ 部長:仕事始めに、全員で交通安全祈願に行こうじゃないか。もっとも、そのあとの方が楽しみだがね。 山田:では部長、有志でカラオケにでも行って、ぱっとやるというのは、どうでしょうか。 部長:年の初めから元気で大いに結構。「笑う門には福来る」、よし、この元気で年末までやり抜こうじゃないか。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うではないか」(口語体は「~(よ)うじゃないか」)は勧誘の「~ませんか」と機能上は同じですが、演説や、扇動・宣伝、不特定多数の人に提案して行動を呼びかける時などに多く用いられます。   みんな、ちょっと休みませんか。   みんな、ちょっと休もうじゃないか。  個人に対しても使えないわけではありませんが、「~(よ)うではないか」はそうするのが当然だという語感を持っていますから、「~ませんか」の方が自然です。○ 幸子さん、今夜一緒に食事でもしませんか。? 幸子さん、今夜一緒に食事でもしようじゃありませんか。 § 例文 § 1.よろしければ一緒に食事でもしようじゃありませんか。 2.両国の友好のために、乾杯しようではありませんか。 3.演奏会の開始時間も近づいていますし、そろそろ会場に入ろうじゃありませんか。 4.同志諸君、今こそ、この悪政を打ち倒すために立ち上がろうじゃないか。 5.それはいい考えだ。早速やろうじゃないか。みんな、どうだ? ★ 例題 ★ 1) せっかく奥さんが私たちのため(で/に)作って(くださった/いただいた)んだから、みんな遠慮なく(いただく/いただこう)じゃないか。 2) 人に(頼る→   )ず、自分たちの力( )(成し遂げる→      )じゃないか。 (^^)前課の解答(^^) 1) 入る(自V)/いかに(→文型007)/高かろう 2) ため(目的→文型153)/から/浴びせられよう(受身文) 441 *~(よ)うとする/*~(よ)うとしたところに 動詞:未然形<~(よ)う> + とする           ・                とはしない                ともしない                とするところ/としたところ ・                とする矢先に/とした矢先に ♪ 会話 ♪ 山田:食事に行こうとしたところに、社長のお出ましだ。 課長:社長、みんなでそば屋にでも行こうかと思っているんですが、御一緒にいかがですか? 社長:外出しようとした矢先に先方から断りの電話が入ってね。そば屋とは渡りに船だ。僕がおごろう。 山田:こりゃしめたぞ!今日はついてる。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うとする」は何かの動作をしようと試みるという意味で、否定の形は「~(よ)うとはしない/~(よ)うとはしない」です。そして、「~(よ)うとするとき/~(よ)うとするところ/~(よ)うとしたところ」のように時の表現と結びついたときは、動作が始まる直前の場面を表します。   お風呂に入ろうとするところ <服を脱いで風呂に入る直前の場面>   お風呂に入るところ     <入浴準備をしているかどうか不明>  類義表現に「~(よ)うと思う」がありますが、これは頭の中だけの想念・意向で、動作の試みはしていません。→例題1)   食べようとする <ご飯を口に入れる寸前>   食べようと思う <≒食べるつもりだ> § 例文 § 1.僕が出かけようとしたら、電話がかかってきた。 2.君は僕が何かやろうとすると、いつも水を差すね。 3.彼は私が声をかけても、振り向こうともしなかった。 4.その男が現れたのは、店じまいも終わり、私が帰り支度をしようとしていたところだった。 5.政府が新景気対策を発表しようとした矢先に、その銀行の倒産は起こった。 ★ 例題 ★ 1) いい服を見つけたので、買おう(と思って/として)財布の中を(見れば/見たら)、残念な(ことは/ことには)お金が足りなかった。 2) その男は本を万引き(する→   )としたところ( )店員に見つかり、現行犯として(捕まえた→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/くださった/いただこう 2) 頼ら(→文型121)/で(方法・手段)/成し遂げよう 442 *~ようなら/*~ようだったら 名詞    :    の      +  ようなら 動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな>     ようだったら ♪ 会話 ♪ 山田:顔色が悪いようだけど、具合が悪いようなら早引きしたらどう? 李 :みんなが忙しくしているのに、気がとがめるよ。 山田:気兼ねすることはないよ。無理をして病気の回復が長引くようだったら、かえって困るよ。 李 :ありがとう。じゃ、そうさせてもらうよ。 ♯ 解説 ♭  様態の「~ようだ」の仮定形で、主として相手の立場や気持ちを考えた婉曲な言い方として使われます。例えば下の例ですが、上は断定的で命令的に聞こえますが、下の「~ようなら」は間に合うかどうかの判断は相手に任せているので、とても丁寧になります。   間に合わないなら、明日でもいい。   間に合わないようなら、明日でもいい。  なお、様態の「~ようだ」は自己の五感や身体感覚などから感じ取った感覚推量の世界を表しますが、詳細は資料「を参照してください。 § 例文 § 1.もし先生がおいでになるようなら、私もお供します。 2.彼に足を洗って一から出直す気があるようなら、私はいつでも彼の力になってやろう。 3.「もし彼との生活がうまくいっていないようなら、いつ戻ってきてもいいのよ」「ありがとう、お母さん」 4.調整が難航するようだったら、私が相手方に直接会って話をつけてもいいよ。 5.時間があるようなら、今日の会議に顔を出さないか? ★ 例題 ★ 1) もし彼と(会いそう/会うよう)なら、ついでに伝言を(頼んで/頼まれて)(あげない/くれない)か。 2) 彼がまだこのことを(知る→     )ようなら、君の方( )( )詳細を(伝える→    )おいてくれ。 (^^)前課の解答(^^) 1) と思って/見たら(発見:~たら~した)/ことには(→文型087) 2) しよう/を/捕まえられた(受身文) 443 *~よう(に)/~ようにと 動詞:原形・ない形  +  よう(に)               ようにと               ようにとの + N ♪ 会話 ♪ 山田:李君、企画書ができ上がったら、持って来るようにと課長からの伝言だよ。 李 :わかった。まもなく打ち上がるから、持って行く。 山田:今日の課長、何だかおかんむりだから、機嫌を損ねないようにね。 李 :うちの課長もお天気屋で、困ったもんだ。 ♯ 解説 ♭  様態の「~ようだ」の連用形が「~ように」で、願望や要請を表す場合に使われます。「神様、どうぞ合格しますように」のように自分の願望を表すときにも使われますし、例文1のように手紙の文末でもよく使われる表現です。この「~ように」が相手に対して使われたときは、「~ようにしてください」の省略形と考えていいでしょう。→例題1)  この件は誰にも知られないようにしてください。→この件は誰にも知られないように。  なお、目的を表す「~ように」(→文型153 )や、内容を引用する「~ように」など、多くの用法を「~ようだ」は持っているので、資料「を参照してください。→例題2) § 例文 § 1.先生にはいつまでも御健勝であられますように。敬具 2.神様、どうか息子にいい花嫁が見つかりますように。 3.部長、ただ今社長から、至急来るようにとのお電話がございました。 4.旅先では決して生水は飲まないようにと父から言われた。 5.来日の際は是非とも私どもの宅にお立ち寄りくださいますよう、家族一同、首を長くしてお待ちしております。 ★ 例題 ★ 1) 先生、お仕事もお忙しいとは(思う/存じます)が、もうお若くは(ない/ございません)し、くれぐれも御無理を(しない/なされませぬ)ように。 2) 相手( )失礼にならない( )( )に、もらった手紙の返事はすぐ書く( )( )にしなさい。 (^^)前課の解答(^^) 1) 会うよう/頼まれて(受身文;あなたが私に頼まれる)/くれない 2) 知らない/から/伝えて(事前行為の「ておく」) 444 ~(よ)うに/~まいに/~たろうに 動詞  :未然形<~(よ)う/~まい>   +  に      た形<ー[た]→たろう> イ形容詞:<ー[い]→かろう> ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう> (注;動詞の「ない形」はイ形容詞と同じく「~なかろう」になる) ♪ 会話 ♪ 李 :「ありがた迷惑」だって?いくら夫婦の間でも、そんな言い方はなかろうに。 良子:衣類は小平用、あなた用、私用と分けて整理してるのよ。何もかも詰め込めばいいってもんじゃないわ。 李 :一人でさぞ忙しかろうと思って手伝ったけど、かえって、君の仕事を増やしたみたいだね。 ♯ 解説 ♭  動詞や形容詞の未然形に、「~のに」に相当する接続助詞「に」が結びついた形で、多くは「~たろうに/~ていように/~だったろうに/~かったろうに」などの形で実現しなかった事態を取り上げ、「もし~だったらよかったのに、現実はそれに反して~」という気持ちを表します。残念・失望・後悔・不満の感情が強く現れる表現です。現代口語では「~だろうに/~でしょうに」の方が多いでしょう。   お父さんが生きていたら、お喜びになったろうに(・なっただろうに)。   そんな話はこんな場所でしなくてもよかろうに(・いいだろうに)。   今更悔やんでも仕方あるまいに(・ないだろうに)。 § 例文 § 1.もう少し時間があれば、この試合に勝てたろうに。 2.君一人が悪かったわけでもあるまいに、そんなに思い詰めることはないよ。 3.両親を事故で失って、さぞ辛かろうに、その少女はけなげに喪主を務めていた。 4.何もそこまで言うことはなかろうに、彼、すっかりしょげ込んだじゃないか。 5.よりにもよってどうして私が?他にも適任者はいたろうに。 ★ 例題 ★ 1) 彼は今さっき(帰る/帰った)ところだよ。もう少し(早いと/早ければ)(会えよう/会えたろう)に。 2) ことも(ある→    )に、何( )こんな雨の日に避難訓練をしなくても(いい→    )に。 (^^)前課の解答(^^) 1) 存じます(謙譲)/ございません(丁重)/なされませぬ(尊敬) 2) に/よう(目的「~ように」→文型153)/よう(要請→文型445) 445 *~ようにする/*~ようにしている 動詞:原形・ない形 + ようにする      ・             ようにしている             ようにしてください  ・             ようにしなさい (注:「動詞+やすい/にくい」などにつく例もある) ♪ 会話 ♪ 良子:小平、食べ物の好き嫌いはしないようにしなさい。 小平:だって、まずいんだもの。 良子:味付けに工夫して、食べやすいようにしてあるわ。 李 :食わず嫌いはよくないよ。騙されたと思って、食べて御覧よ。なかなかいい味にできているよ。 小平:お父さんだって、納豆を食べないじゃないか。 ♯ 解説 ♭  「~ようにする」は動詞の原形または否定形(「ない」形)と結びつきますが、意志動詞(他動詞の多く)につくときは「~ように努力する」、可能形や無意志動詞(多くは自動詞)につくときは「~状態にする」という意味を表します。→例題1)  この文型は「~ようにしてください/~ようにしなさい」などの依頼や命令の表現を作り、「(いつも・ずっと)~てください/~なさい)」という意味を表します。「~てください」はその場その時の一回性の依頼ですが、この「~ようにしてください」は継続性の依頼となります。  (今日)この課を復習してください。  (毎日)復習するようにしてください。 § 例文 § 1.二度とこのような間違いを犯さないようにしなさい。 2.これ、壊れやすいから、慎重に取り扱うようにして。 3.何もかも一度にしようとせず、毎日少しずつ続けてやるようにすればいいんだよ。 4.この老人介護センターは、地域のお年寄りがいつでも使えるようにしています。 5.誰にも迷惑をかけないようにするからさ、ねえ、僕も連れてってよ。 ★ 例題 ★ 1) 赤ちゃんを起こさない(ために/ように)、もっとテレビの音を小さく(する/なる)(ようにして/ようになって)ね。 2) できるだけゴミは(出す→   )( )( )に、また不要品はリサイクルに出す( )( )にしましょう。 (^^)前課の解答(^^) 1) 帰った/早ければ(文末に推量は「たら」か「ば」)/会えたろう 2) あろう/も/よかろう 446 *~ようになる/*~ようになっている 動詞:原形・ない形  +  ようになる     ・               ようにはならない               ようになっている  ・ (注:動詞は可能形が多い。否定形には「~なくなる」もある) ♪ 会話 ♪ 李 :男も育児休暇が取れることになったんだって? 真理:何を言ってんの、制度はとっくにあったのよ。最近になって育児は女の仕事という考え方が少しずつ変わってきて、それでやっと男も取れるようになったのよ。 李 :その点では中国より後れているね。でも、いずれ日本も欧米並に女性の社会参加が進むようになると思うよ。 ♯ 解説 ♭  「~ようになる」は動詞(多くは可能形)または否定形(「ない」形)と結びついて、「~ような状態に変わる」という状態変化を表します。そして、例文4、5のように「~ようになっている」と「ている形」が使われると、事物の状態や制度、構造を表します。  動詞+ようになる:歩けるようになる・たばこを吸うようになる…  イ形+くなる  :美しくなる・寒くなる…  ナ形+になる  :元気になる・きれいになる…  名詞+になる  :医者になる・春になる…  混同しやすい文型に「~ことになる」(→文型090)がありますが、「~ことになる」は結果に重点があり、「~ようになる」は変化の過程に重点があります。→例題1) § 例文 § 1.骨折も治って、松葉杖なしでも歩けるようになった。 2.腹一杯食べられるようになっただけでも幸せだと思う。 3.三年も日本にいれば習わなくても日本語は話せるようになる。 4.当店はお買い物の際、カードも御利用いただけるようになっております。<制度> 5.このパソコンは、音声を自動的に文字に変換したり、またその逆もできるようになっている。<構造> ★ 例題 ★ 1) 日本国憲法では健康で文化的な最低限度の生活が(保障する/保障される)(ことに/ように)なっているが、実際にそれができる(ことに/ように)なる日はまだ遠い。 2) 一年( )二年では、日本語が自在に(使う→    )こなせるようには(なる→      )よ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ように(目的→文型153)/する/ようにして 2) 出さない/よう/よう 447 *~(よ)うにも~できない/*~に~できない 動詞:未然形 <~(よ)う> + にも +  動詞:ない形 動詞:  原形    + に  +  動詞:ない形 (注:これらの文型はほとんど文末で可能形の否定と呼応する) ♪ 会話 ♪ 李 :あんなに我も我もと自説を主張していては、新機軸を打ち出そうにも打ち出せないよ。「船頭多くして船山に登る」だよ。あれじゃ、単なる意地の張り合いだね。 山田:もう止めようにも止められないよ。 李 :でも、傷口が広がらないうちに止めないと、みんな引くに引けなくなり、チームが分解しちゃうよ。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うにも~(でき)ない」は「~しようと試みても~(でき)ない」、「~に~(でき)ない」は何か周りの事情があってできない、「~たくても~(でき)ない」は望んでもできないと、少しずつ意味は違いますが、類義文型になります。   買おうにも買えない。 <意志>   買うに買えない。   <事情>   買いたくても買えない。<希望>  なお、「言うに言われぬ/見るに見かねて/泣くに泣けない」などは慣用表現なのでそのまま語彙として覚えましょう。 § 例文 § 1.進むに進めず、退くに退けず、まさに進退に窮した。 2.もう逃げようにも逃げられぬ「まな板の鯉」だ。 3.こんな小さなミスで全プランが頓挫するなんて、泣くに泣けない思いです。 4.この辞典が完成するまでには、言うに言われぬ苦労がありました。 5.痛くもない腹を探られたが、弁明しようにもその機会も与えられず、断腸の思いだった。 ★ 例題 ★ 1) 最近疲れが(ひどくて/ひどいから)、今朝は(起きる/起きたい)に(起きなかった/起きられなかった)。 2) 彼の行き先が(わからない→     )、連絡を(取る→    )にも(取る→   )ようがなかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) 保障される(受身文)/ことに(→文型090)/ように 2) や(~や~で=~かそこら)/使い(→文型167)/ならない 448 ~(よ)うものなら 動詞  :未然形<~(よ)う>        +  ものなら イ形容詞:<ー[い]→かろう> ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう> (注:動詞の「ない形」と結ぶ「~なかろうものなら」の形もある) ♪ 会話 ♪ 山田:週末のレースは、何に賭けるの? 李 :競馬新聞もさることながら、僕の馬を見て決めた方がいいよ。どうだい、僕のひらめきに賭けてみないか。 山田:君のひらめきに賭けようものなら、びた一文戻って来そうもないな。 李 :僕が当てようものなら、地団駄踏んで悔しがるくせに。 ♯ 解説 ♭  「~(よ)うものなら」は動詞や形容詞の未然形を受け、「万一~ようなことがあったら、(大変な事態になる)」という意味を表す仮定文型です。後件は必ず悪い事態で、心配・恐れ・危惧・不安の感情を強調しますから、文末で「~兼ねない(→文型043)/~恐れがある(→文型020)/ぐらいでは済まない(→文型185)」などの助動詞表現と呼応することが多いでしょう。  関連表現に「(可能形・状態動詞)ものなら~たい」(文型424)という希望を強調する仮定文型がありますから、その違いをはっきり覚えておきましょう。   帰れるものなら、祖国に帰りたい。   <希望・願望>   祖国に帰ろうものなら、逮捕される。  <心配・不安・恐れ> § 例文 § 1.会社の方針に反対しようものなら、即刻首にされ兼ねない。 2.家に酒がなかろうものなら、父は母を怒鳴り散らした。 3.あんな男が首相にでもなろうものなら、国中の刑務所が政治犯でいっぱいになることだろうよ。 4.彼のところはかかあ天下で、酔っぱらってでも帰ろうものなら、家に入れてもらえないそうだ。 5.これ以上この金融危機が長引こうものなら、いくつかの銀行は倒産の憂き目にあうことになる ★ 例題 ★ 1) 少しの取り扱いミスでも(ある/あろう)(こと/もの)なら、この液体は大爆発を起こし(兼ねる/兼ねない)。 2) この会社は(厳しい→     )、一分でも(遅刻する→     )ものなら、すぐ賃金カット( )なる。 (^^)前課の解答(^^) 1) ひどく理由:文末に可能・状態表現)/起きる/起きられなかった 2) わからなくて/取ろう/取り(→文型435) 449 よくしたもの(だ/で)/よく言ったもの(だ/で) よくしたもので  ~ は ~ よく言ったもので ~ は ~ 名詞: ×   +  とはよくしたもの(だ/で) ♪ 会話 ♪ 句 : ×      とはよく言ったもの(だ/で) 百恵:李さんのところは仲がいいわねえ。おしどり夫婦とはよく言ったもので、あの二人はいつも行動が一緒ね。 真理:子供ができてから、ますます仲がよくなったみたいね。羨ましいわ。私には理想のカップルだわ。 山田:「子はかすがい」とか言うけど、結婚生活に飽きた頃に子供ができるんだから、よくしたものさ。 ♯ 解説 ♭  これらの文型は感嘆表現の一種で、「~(と)はよくしたものだ」は取り上げたことが「実に巧妙に作られている/実に運がよいことだ」といった驚嘆・感嘆・感心の表現になります。「~とはよく言ったものだ」は、主に格言や俗語を取り上げて「実に的を得た言い方だ」と感心する表現になります。 § 例文 § 1.夫婦とはよくしたもので、お互いに欠点を補いあっている組み合わせが多い。 2.よくしたもので、世が乱れたときは必ず救いの神が現れる。 3.人の一生は幸と不幸の程度差はあるが、よくしたもので、一生を通して見れば帳尻が合うようになっている。 4.「悪銭身に付かず」とはよく言ったものだ。 5.「案ずるより産むが易し」とはよく言ったもので、実際にやってみたら、すらすら行くってことが多くある。 ★ 例題 ★ 1) 「器用貧乏」とはよく(した/言った)(もの/こと)で、何(も/でも)こなせる人間は、とかく大成しない。 2) よく(する→   )ものだね。(呼ぶ→   )に(行く→    )と思っていたら、彼の方から来た。 (^^)前課の解答(^^) 1) あろう/ものなら/兼ねない(→文型043) 2) 厳しくて(理由の「~て」)/遅刻しよう/に 450 *~らしい/~(っ)たらしい/~がましい 名詞 :    ×           +  らしい   ・                       らしくない 形容詞:<イ形ー[い] ><ナ形ー[な] > +  ったらしい ・ 名詞 :    ×          +  がましい  ・ ♪ 会話 ♪ 佐藤:あの新しく入った秘書、A君といい線いってる話だ。 山田:えっ?あのきざったらしい男と?まるでトンビに油揚げさらわれた形じゃないか。あ~あ、また失恋か。 佐藤:未練がましくしないで、きっぱり諦めなよ。 李 :いや、少しでも希望が残っているなら、最後まで諦めるな。君らしくないぞ。押しの一手だ。 ♯ 解説 ♭  接尾語「~らしい」と「~(っ)たらしい」は対照的表現になります。「~らしい」は「男・女・子ども・学生…」などの名詞について「そのもの本来の要素を十分に備えている」という意味を表します。「かわいらしい・馬鹿らしい」などの形容詞につく場合もありますが、これらは語彙として覚えた方がいいでしょう。  一方、「~(っ)たらしい」は「女ったらしい・惨めったらしい・長ったらしい・自慢たらしい・貧乏たらしい・嫌みったらしい・憎たらしい・きざったらしい・不精たらしい…」など、程度が通常を越えて嫌悪感に至ったときの表現になります。  類義表現に「~がましい」がありますが、「無理矢理強制する感じ」を表します。例えば「指図がましい・未練がましい・晴れがましい・押しつけがましい・差し出がましい…」などですが、語彙として覚えればいいでしょう。 § 例文 § 1.彼は男らしくて、実に竹を割ったような性格です。 2.馬鹿らしい!そんな話を誰が信じるというのか! 3.その少年は子供らしくて、素直な十二歳の子でした。 4.もうそれ以上言い訳がましい話しはするなよ、惨めったらしくて聞いていられない。 5.もう彼の話はしないでくれ。名前を聞くだけでも憎ったらしい。 ★ 例題 ★ 1) 「男は男(っぽく/らしく)、女は女(っぽく/らしく)」とは言われるが、なぜ人間(っぽく/らしく)しろと言わないのだろう? 2) (長い→   )ったらしいスピーチほど、(嫌がる→       )ものは(あります→       )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 言った/もの/でも 451 ~わ/~わ~わ 名詞    :   だ       +  わ     ・ 動詞・形容詞: 普通形<ナ形 ーだ>     わ ~ わ  ・ ♪ 会話 ♪ 李 :いるわいるわ、まるで芋の子を洗うようだ。これじゃ海水浴どころじゃないねえ。 良子:道路は渋滞するわ、道には迷うわ、ここまで来るだけでも一苦労だったのに、もううんざりだわ。 李 :はしゃいでいるのは小平だけだね。帰りの運転を考えると、今から気が滅入ってくるよ。\ ♯ 解説 ♭  終助詞「~わ」は女性は女性用語で、語気を和らげるために使います。意味は主張・決心・驚き・詠嘆など広範囲に及びます。  ここで主に取り上げたのは、同語を反復し程度を強調する「~わ~わ」です。この文型は男女共用の口語文型で、ほとんど「~のなんのって」(→文型358)「~といったらない」(→文型219)と同じ意味を表しています。   食べるわ食べるわ、凄い食欲だ  =食べるのなんのって、凄い食欲だ  =食べると言ったらない、凄い食欲だ § 例文 § 1.飲むわ飲むわ、彼ら二人で一升瓶を二本も空にした。 2.その男を取り調べたが、出てくるわ出てくるわ、恐喝、詐欺、婦女暴行、数え切れない罪業の数々が。 3.彼ときたら、いびきはかくわ寝相は悪いわで、隣の僕は一睡もできなかった。 4.博打はするわ、けんかはするわ、手のつけられない男だ。 5.何だ、このラーメンは!スープはまずいわ麺はのびてるわ、とても食えたもんじゃない。 ★ 例題 ★ 1) (たとえ/いくら)梅雨とは言え、降る(わ/の)降る(わ/の)、この数日という(こと/もの)降り続けだ。 2) 今朝のラッシュはひどいもんで、足は(踏む→   )わ鞄をドア( )(挟む→   )わ、散々な目にあったよ。 (^^)前課の解答(^^) 1) らしく/らしく/らしく 2) 長/嫌がられる(受身文;人に嫌がられる)/ありません 452 *わけ/*わけがわからない 「わけ」の名詞用法: わけ        ・            わけがわからない  ・ ♪ 会話 ♪ 良子:Yシャツに口紅がついてるわよ。どういうわけ? 李 :あっ、本当だ。電車の中が込み合っていたから、何かの拍子でついたのかもしれないね。 良子:じゃ、今夜に限ってお土産を買って来たわけが知りたいわ。何かやましいことがあるんじゃない? 李 :げすの勘ぐりもいいとこだ。 ♯ 解説 ♭  「わけ」という名詞は現象の内側にある因果関係・事情・経過などの内部法則を表します。ここで取り上げたのはこの実質名詞としての「わけ」の用法です。  例文1~3は「~わけ/~というわけ」などの形で用いられ、「理由・事情」に置き換えられる表現です。例文4の「わけがわからない」は意味不明、例文5の「わけ」は「道理」に置き換えられる表現です。 § 例文 § 1.彼女の失踪には、何か深いわけがありそうですね。 2.どういうわけか、最近彼は全く顔を見せなくなった。 3.わけあって詳しい事情は申し上げられないのですが、実は・・・。 4.君の話は支離滅裂で、わけがわかりません。 5.君は、わけのわからないことを言う人だねえ。もう少し常識をわきまえたらどうだね。 ★ 例題 ★ 1)「どうしてあなたが会社を辞めたのか、(わけがわからなかった/わけがなかった)んですが、(なるほど/やはり)そういう(はず/わけ)だったんですか」 2) 医者( )( )肝臓を壊していると(言う→    )ましてね。そういう( )( )で酒はやめたんです。 (^^)前課の解答(^^) 1) いくら(既定→文型143)/わ/わ/もの(→文型180) 2) 踏まれる(受身文)/に/挟まれる(受身文) 453 *~わけがない 動詞・形容詞: 普通形<ナ形 ーな>  +  わけがない                       わけない <口> ♪ 会話 ♪ 李 :一億円の宝くじに当たった夢を見たよ。五枚買ってるけど、今朝の朝刊に当せん番号が出てるはずだよ。 良子:そんなこと、あるわけがないでしょ。でも、どれどれ見てみるわ。万一ってこともあるから。 李 :はっは、当たるわけがないと言いながら、これだからねえ。宝くじって、抽選結果を見るまでが花なのさ。 ♯ 解説 ♭  「~わけがない」は「そうなる<道理・理由>は100%ない」と断定的に可能性を否定する表現です。ほとんどの用例が「~はずがない」を使って表せますが、「~わけがない」は何かの理由・事情を問題にしている文脈で使われることが多く、「~はずがない」は可能性そのものを問題にした文脈で使われますから、例文3のような「道理がない、不当だ」といった道義的・社会的責任を問題にする場合は「~わけがない」の方が自然です。なお、「~ないわけがない」は二重否定で、「必ず~する/だ」という断定になります。   彼にできるわけがない。 <決してできない>   彼にできないわけがない。<必ずできる> § 例文 § 1.お前が知らないわけがない。素直に白状しろ。 2.隣国の内紛だからといって、対岸の火事と決め込んでいいわけがない。 3.人の娘を傷物にしておいて、「ごめんなさい」で済まされるわけがないだろう。 4.「それ、2万円ぐらい?」「そんなに安いわけないだろ」 5.「元気でやってるかい?」「元気なわけがないだろ。女房が子供を連れて、実家に帰ってしまったんだから」 ★ 例題 ★ 1) 彼はけち(だから/なのに)、こんな寄付に協力し(てもらう/てくれる)(わけではない/わけがない)よ。 2) 患者を人体実験( )使うなんて、そんなことが(許す→    )ていい( )( )がない。 (^^)前課の解答(^^) 1) わけがわからなかった/なるほど(「やはり」は期待・予想)/わけ 2) から/言われ(受身文:~から~られる)/わけ 454 *~わけだ 動詞・形容詞: 普通形<ナ形 ーな> + わけだ ♪ 会話 ♪ 百恵:どこかから、素敵な彼が現れないかなあ。 山田:君って、白馬に乗った王子様を待ち焦がれているわけ?でも青い鳥の話を読んだことある? 百恵:すぐ傍らに王子様がいるといいたいわけね。 山田:そうさ、君のすぐ近くにさ。 百恵:私の目は曇っているのかしら?何も見えないわ。 ♯ 解説 ♭  「~わけだ」は因果関係や事情や過去の実態や状況などから考えて、当然の結果だという気持ちを述べるときに使われます。「~のは当然だ」とほぼ同義と考えてもいいでしょう。  例文5のように後から理由を知って、「なるほど~は当然だ」と納得する「~わけだ」の用法は「~はずだ」も使えますが、話者の受け止め方が「~わけだ」と「~はずだ」は違いますから、「~はずだ」(→文型367)を参照してください。   「彼は英語が上手ですね」   「ええ、彼はアメリカに五年住んでいたんです」   「なるほど、上手なわけですね(・はずですね)」 § 例文 § 1.そんなことを言ったら、彼が怒るわけだよ。 2.日本人の敬語は心理的な距離感に左右されているわけで、常に敬意を表しているとは限らないわけです。 3.例年ですと、この季節はスキー客でにぎわうわけですが、今年は暖冬で雪もなく、閑古鳥が鳴く始末です。 4.よく似ているわけだよ。なんとあの二人は双子だそうだ。 5.あれ?ご飯が炊けていない。なんだ!炊けていないわけだ。スイッチを入れるのを忘れてた。<納得> ★ 例題 ★ 1) 計画というのは、常にゆとりを持って立てて(おく/おかない)と、後で必ず無理(が/を)生じる(はず/わけ)です。 2) 以上述べ(てくる→    )(ようだ→    )わけで、(残念だ→ )ながら進学を断念したわけです。 (^^)前課の解答(^^) 1) だから(理由・順接)/てくれる/わけがない(→文型455) 2) に(目的→文型336)/許され(受身文)/わけ(「はず」も可) 455 *~わけではない 動詞・形容詞: 普通形<ナ形 ーな> +  わけではない                      わけでもない                      わけじゃない<口> ♪ 会話 ♪ 山田:最近はパソコンの新機種が次々に出てきて、どれにするか目移りがするよ。 李 :普段使う分には、新機能や高性能が常に必要だというわけではないし、革命的なソフトが次々に出てるわけでもないよ。用途に応じて決めればいいんだよ。 山田:パソコン自体が何かを生み出すわけじゃないしな。 ♯ 解説 ♭  「~わけではない」は文全体の婉曲に否定するときも、文の一部を部分否定するときもあります。なお、相手の言葉や考えを引用するときは「~というわけではない」という形になります。   人間は食べるためだけに生きているわけではない。<婉曲否定>   北京は寒いが、我慢できないというわけでもない。<部分否定>   「食べたくないの?」「食べたくないというわけじゃないけど、・・・」  この「~わけではない」と完全否定の「~わけがない」(→文型453)は文脈によって使い分けが必要となりますから、注意しましょう。   こんな難しい問題が小学生にできるわけがない(×わけではない)。 § 例文 § 1.忙しいと言っても年がら年中忙しいというわけでもない。 2.金が惜しくて言うわけじゃないが、返すあてはあるのかい? 3.別に恋人というわけじゃないわ。彼とは友達としてつき合っているだけなの。 4.冷蔵庫の便利さを否定するわけではないが、物が腐らないわけではないから、過信は禁物だ。 5.君一人が悪いわけではないが、君に責任がないわけでもないだろう。 ★ 例題 ★ 1) いくら会社に尽くし(たら/ても)、死ぬ(まで/までに)面倒を見てくれる(わけだ/わけではない)よ。 2) 誰( )でも彼( )ような真似ができるって(わけだ→      )よ。彼は一種の天才なんだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) おかない/が(自V)/わけ(当然の帰結) 2) てきた(完了)/ような/残念(逆説「~ながら」→文型270) 456 *わけ(は/の)ない/*わけなく~する 慣用表現の「わけ」:わけない           わけはない           わけのない           わけなく ♪ 会話 ♪ 李 :真理さんの御両親が、快く二人の結婚にOKしてくれたらしいね。おめでとう。 佐藤:こんなにわけなく、トントン拍子で進むとは思っていなかったので、ちょっと拍子抜けだったよ。 李 :彼女を粗末にしたら罰が当たるぞ。ひそかに思いを寄せてた奴が、少なくとも二人はいるんだからな。 ♯ 解説 ♭  「わけ(は/の)ない」は慣用表現で、「とても簡単だ/とても容易だ」という意味を表します。口語では「~わけがない」(→文型453)が「~わけない」のように省略形で使われることもありますので、注意しましょう。  こんな難しい問題が、小学生に出きるわけない(=わけがない)よ。  こんな問題、小学生だってわけなく(=簡単に)できるよ。 § 例文 § 1.わけない。そんなこと一日もあればすぐできちゃうよ。 2.そんなことわけないと高をくくっていると、とんでもない失敗をするぞ。 3.彼の財力をもってすれば、この会社を乗っ取るぐらいわけのないことだろう。\ 4.この種のことは、あの弁護士に相談すればわけなく解決してくれるよ。 5.その子は大学生の高等数学問題をわけなく解いた。 ★ 例題 ★ 1) 小学生(に/で)だって(わけなく/わけではなく)できる操作なのに、君にできない(わけではない/わけがない)。 2) 君( )したら( )( )のないことでも、僕( )してみれば大変なことなんだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) ても/まで(「~まで」か「~までに」か)/わけではない 2) に/の/わけではない 457 *~わけにはいかない/~こともならず 動詞 : 原形/ない形  +  わけにはいかない                わけにはゆかない                わけにゃいかない<口>                わけにゃいかん<口> 動詞 : 原形      +  こともならず ♪ 会話 ♪ 課長:責任ある仕事が任せられるかどうかは、君の能力如何だよ。性別で差別するわけにゃいかない時代だよ。 百恵:でも女性に与えられているのは、男の補助的仕事ばかりです。現状をきちんと認識してほしいんです。 真理:同感です。簡単に引き下がるわけにはいきません。 課長:しばらく検討させてくれ。 ♯ 解説 ♭  「~わけにはいかない」は、何か周囲の事情があって「~することができない」という意味を表す文型になります。そして、動詞の否定形と結びついた「~わけにはいかない」の形は「~しなければならない/~ざるを得ない」と同じ義務・必然を表すようになります。この文語が「~することもならぬ/~することもならず」です。   行くわけにはいかない。  (≒行くことができない)   行かないわけにはいかない。(≒行かなければならない)  なお、この文型は個人的事情や能力が理由でできないことには使われません。   歯が痛くて食べられない(×食べるわけにはいかない)。 § 例文 § 1.社長命令とあっては、従わないわけにはいかない。 2.進むこともならず、退くこともならず、八方塞がりだ。 3.わけを聞いたからには、一肌脱がないわけにはいくまい。 4.行きたいわけではないが、上司からのゴルフの誘いなので無碍に断るわけにもいかず、困っている。 5.政府も荒廃した教育現場の現状を無視するわけにはいかなくなり、やっと重い腰を上げた。 ★ 例題 ★ 1) 重役会の決定(を/に)賛成している(わけではない/わけにはいかない)が、僕には協力しない(わけではない/わけにはいかない)事情があったんだ。 2) たとえ会社の決定で(ある→    )と、このような理不尽な命令( )従う( )( )にはいきません。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/わけなく/わけがない(→文型453/→文型455) 2) に(→文型313)/わけ/に(→文型313) 458 ~をおいてほかに~ない/~を除いて(ほかに)~ない 名詞: ×  + をおいてほかに~ない          を除いて(ほかに)~ない ♪ 会話 ♪ 佐藤:私をおいてほかにあなたを幸せにできる生涯の伴侶はございません。どうか末永くよろしく。 真理:おふざけでないわ。「真理さんを除いてほかに私が愛する女性はございません」とでも言い直したらどう? 李 :おいおい、お二人さん、今からもう主導権争いかい?これじゃ、先が思いやられるよ。 ♯ 解説 ♭  「~をおいてほかに~ない/~を除いて(ほかに)~ない」は「~以外に適当な(人・物・こと)はない」という意味を表す文型で、「~しか~ない(→文型108)/~よりほか~ない(→文型390)」などの文型を使って表すこともできます。それらの中で最も積極的な選択で、強い断定の語感を持っているのがこの文型です。   君しか頼れる人はいない。  →君だけしか頼れる人はいない。  →君よりほかに頼れる人はいない。  →君をおいてほかに頼れる人はいない。  →君を除いてほかに頼れる人はいない。 § 例文 § 1.同志たちよ。立ち上がるのは、今をおいてほかにない。 2.改革開放政策をおいてほかに祖国再生の道はない。 3.彼を除いてこの任務を任せられる人物はいまい。 4.これだけの大物のコンサートともなると、日本武道館を除いてほかに適当な会場はないだろう。 5.歴史を変えることができるのは、ひとり英雄の力ではなく、人民の意志をおいてほかにない。 ★ 例題 ★ 1) 彼(に/と)結婚できない(ほど/ぐらい)なら、一生独身で通した方がましよ。私には彼(において/をおいて)ほかに、結婚したい相手はいないのよ。 2) 君( )除いてほかに、こんなことが(頼む→    )人は(いた→  )んだ。 (^^)前課の解答(^^) 1) に/わけではない(→文型455)/わけにはいかない 2) あろう(未然形+と=ても→文型437)/に/わけ 459 ~を顧みず/~を顧みる~もなく 名詞: ×  +  を顧みず             ・           も顧みず           を顧みることもなく           を顧みる + 名詞 + もない  ・ ♪ 会話 ♪ 佐藤:中国語だけじゃ食えない現実も顧みずに、会社を辞めて語学留学に行っちゃうとは、何と無茶なことを。 百恵:そんなことを顧みる余裕もなかったのよ。彼女って、思い立ったら、自分が止められないたちだから。 李 :無謀と言うか、大胆と言うか、こんな思い切ったことができるのも、若さの特権かもしれないね。\ ♯ 解説 ♭  動詞「顧みる」から作られた文型で、「~を顧みず/~を顧みる~もなく/~を顧みない+名詞/~を顧みぬ+名詞」(「を→も」の変化もある)などの形で使われ、「~を考えないで/~を気にしないで」という意味を表します。そして、「~に(も)かまわず/~もかまわず」(文型 302)や「~をよそに」(文型 484)と類義文型になります。   親の心配も顧みず(・にもかまわず/・をよそに)遊んでばかりいる。  これらのなかで、「~をよそに」は常に良くない事態を表しますが、「~を顧みず」にはこうした制約はありません。→例題1) § 例文 § 1.自らを顧みて恥じることがなければ、何も恐れることはない。 2.過去を顧みて教訓を汲み取れぬ者には未来もまた開けない。 3.家庭を顧みることなく、彼は酒と博打に溺れていった。 4.人の考えも顧みず、自分の考えだけを押し通そうとすると必ず挫折する。 5.現代人の生活は、他人のことを顧みる暇もないほど、殺伐としたものになっている。 ★ 例題 ★ 1) 彼は身の危険(をよそに/も顧みず)、(取り残した/取り残された)子供を(救う/救わ)んがために、燃え盛る火の中に飛び込んで行った。 2) 自分の健康も家庭( )顧みず、ただ仕事( )没頭している会社人間を見ると、同情の念( )禁じ得ない。 (^^)前課の解答(^^) 1) と/ぐらい(~ぐらいなら、むしろ→文型074)/をおいて 2) を/頼める(可能形)/いなかった 460 ~を限りに/~を潮に 名詞・時を表す語: ×  +  を限りに  ・                 を潮に   ・ (注:前が句の時は「~のを限りに/~のを潮に」の形になる) ♪ 会話 ♪ 山田:あいつ、「今回を限りに、二度と遅刻いたしません」だってさ。その台詞、何度聞いたことか。 佐藤:あまり感情を表に出さない課長も、ついかっとなって、「今日を限りに辞めろ」と怒鳴ったらしいよ。 山田:これを潮に、心を入れ替えてくれるといいんだが。 李 :君にも他山の石じゃないの?おっと口が滑った! ♯ 解説 ♭  「~を限りに」は「~を最後に~をやめる」という意味を表し、善悪に関係なく使えます。一方、「~を潮に」は「~を機会に~をやめる」という意味ですが、常に良くない習慣や行為をやめるときに使われます。→例題1)  これらの文型の逆になるのが「~を皮切りに」(→文型462)や「~をきっかけに/~を契機に」(→文型463)で、何かを機会に始めるときに使われます。→例題1)  なお、「~を限りに」には「声の限り叫ぶ・声を限りに叫ぶ」のような「~の限度まで~する」という意味の用法もありますが、用例が限られていますから、ここでは取り上げていません。 § 例文 § 1.今年を限りに社長職を退き、後進に道を譲ろうと思う。 2.体力の衰えを考え、今場所を限りに相撲界を引退する。 3.今日を限りにあなたとはお別れよ。あなたもお幸せにね。じゃあね、バイバイ。 4.この入院を潮に、酒もタバコもやめるつもりだ。 5.刑事さん、私もこれを潮にやくざ渡世から足を洗います。 ★ 例題 ★ 1) 「子供が産まれたのを(潮/限り)に、麻雀仲間とのつきあいをやめたよ」「これを(潮/機)に麻雀(する/した)つもりで、その金を積み立て貯金にしたらどう?」 2) 今月( )限りに僕は会社( )退職し、心機一転、もう一度人生を(やる→   )直したいと思っている。 (^^)前課の解答(^^) 1) も顧みず/取り残された(受身文)/救わ(~んがため→文型485) 2) も/に/を(~を禁じ得ない→文型464) 461 ~を兼ねて 名詞: ×  +  を兼ねて           を兼ね           を兼ねる (注:前が句の時は「~のを兼ねて」の形になる) ♪ 会話 ♪ 部長:今度の人事異動で、君には営業第一課長と営業第二課長を兼ねてもらうことになるだろう。 課長:近々両課の顔合わせを兼ねて、軽く一杯いかがでしょう?何よりもコミュニケーションが大切ですから。 部長:「二兎を追う者、一兎をも得ず」だよ。今回は別々にやり、それから追々チーム作りといこうじゃないか。 ♯ 解説 ♭  「Aを兼ねてBする」文型はBが本来の目的ですが、それ以外にAという目的も併せ持つことを意味します。Bが主目的でAが従目的の関係になります。→例題1)  この文型は「AがてらBする」(→文型038)と置き換えられる場合がありますが、AとBの主従関係がちょうど逆になります。   墓参りを兼ねて帰郷した。(A<B)   墓参りがてら帰郷した。 (A>B)  なお、「趣味と実益を兼ねる/大は小を兼ねる/首相が外相を兼ねる」など元々の動詞の使い方もありますから、覚えておきましょう。 § 例文 § 1.情報収集も兼ねて、趣味でパソコン通信をしている。 2.出版記念も兼ねて、劉君の誕生パーティを開いた。 3.墓参りを兼ね、十年ぶりに故郷の友人たちに会いに帰った。 4.英作文の練習を兼ねて、アメリカのペンフレンドと文通をしています。まあ、一挙両得というわけです。 5.趣味と実益を兼ねて日本語の勉強をしたが、いつの間にか、通訳が本業になってしまった。 ★ 例題 ★ 1) 中国の(変わる/変わり)ようを、一目この目で確かめたいと思い、観光(を兼ねて/のために)中国に行く(ようにした/ことにした)。 2) 私は気分のリフレッシュ( )、体力の低下を防ぐ目的( )兼ねて、職場( )( )自転車通勤しています。 (^^)前課の解答(^^) 1) 潮(意味から考える)/機/した(~た・つもり→文型175) 2) を/を(<移動地>を=/やり(→文型268) 462 ~を皮切りに(して)/~を皮切りとして 名詞: ×  +  を皮切りに(して)           を皮切りとして           を皮切りとする + 名詞 (注:前が句の時は「~のを皮切りに」の形になる) ♪ 会話 ♪ 部長:東京を皮切りに、全国で新製品の展示販売会を開催する。担当者の割り付けは、後日発表する。以上。 李 :開催地がバラバラですね。札幌を皮切りにして、順繰りに南下した方が段取りがいいのになあ。 課長:どうせ言うなら、ニューヨークを皮切りに、東回りでくらい言いなさいな。君も若いのに夢がないね。 ♯ 解説 ♭  「~を皮切りに(して)/~を皮切りとして」は「~を出発点に~を始める」という意味を表します。この文型は一連かつ同類の行動の始まりを表す表現で、新しい行為の開始は表す場合は「~をきっかけに/~を契機に/~を機に」(→文型463)を使います。   彼を皮切りに(×をきっかけに)、続々と発言者が手を挙げた。<同類の行為>   腰痛になったのをきっかけに(×皮切りに)水泳を始めた。  <新しい行為>  なお、この文型の反義表現が「~を最後に」(→文型460)です。   今日を限りに本会は解散します。   今日を皮切りに本会の活動は始まります。 § 例文 § 1.彼を皮切りにのど自慢達が次々にマイクを握って歌い始めた。 2.東京公演を皮切りに、そのグループは全国各地でコンサートを開くらしい。 3.秘書の逮捕を皮切りにして、その元大臣の不正が続々と明るみにでた。 4.今日を皮切りに三日間にわたって八幡様のお祭りが行われる。 5.この青年文化交流会を皮切りとして、新しい両国の連帯を作り出そうじゃありませんか。 ★ 例題 ★ 1) A校の運動会(に/で)は、百メートル競走(を皮切りに/をきっかけに)、次々に競技(を/が)繰り広げられた。 2) その会社は韓国支社設立( )皮切り( )、アジア市場( )の進出に(乗る→    )出した。\ (^^)前課の解答(^^) 1) 変わり(→文型435)/を兼ねて/ことにした(→文型089) 2) と(~と~を兼ねて)/を/まで 463 *~をきっかけに/*~を契機に/~を機に 名詞: ×  +  をきっかけに(して)           ときっかけとして           を契機に(して)           を機に (注:前が句の時は「~のをきっかけに/~のを機に」等の形になる) ♪ 会話 ♪ 李 :来年の春から公共の場が禁煙になるとの新聞報道をきっかけに、賛否両論が巻き起こっているね。 山田:これを機に僕もたばこを止めるよ。今までも禁煙は何回もしているからね。 百恵:えっ?それって、要するに長続きしなかったってことね。「言うは易く、行うは難し」ね。 ♯ 解説 ♭  どれも「~を<機会・動機>に~する」という意味を表します。「~を契機に/~を契機にして」は新聞紙上などでよく使われる表現で、比較的大きな出来事を取り上げ、後件で新しい事態の変化が始まった起点を表すことが多いでしょう。「~をきっかけに(にして/として)/~を機に」はどちらかと言えば個人的なことを取り上げ、それが機会・動機となって何か新しい行為を始めるときに使われます。なお、「~がきっかけとなって/~が契機となって」と自動詞として使われることもありますので、例題1)で取り上げておきました。  これらの文型と「~を皮切りに」(→文型 462)は、起点を表す点では共通していますが、用法の違いがありますから、前項を参照してください。→例題1) § 例文 § 1.何をきっかけに、ジョギングを始められたのですか。 2.「これをきっかけに、今後ともよろしくおつきあいをお願いします」「こちらこそ」 3.新人賞獲得をきっかけにして、その若手小説家はめきめきと頭角を現してきた。 4.A銀行の倒産を契機にして、各地で取り付け騒ぎが起こった。 5.退職するのを機に、自分のこれまでの経験が生かせる国際交流の活動に参加したいと思っています。 ★ 例題 ★ 1) 親の離婚が(きっかけ/皮切り)と(して/なって)、その子は非行に走るように(した/なった)。 2) 討論会で意見を(戦った→      )( )を機に、二人の間( )は友情が芽生えていった。 (^^)前課の解答(^^) 1) で/を皮切りに(~をきっかけに→文型463)/が(受身文) 2) を/に/へ(「~にの」の形はない)/乗り(~出す→文型137) 464 ~を禁じ得ない 感情を表す名詞: ×  + を禁じ得ない ♪ 会話 ♪ 山田:営業第二課の上半期の売り上げは、目を見張るものがありますね。まさに驚きを禁じ得ません。 李 :特に後半の追い込みは凄かったですね。「精神一到、何事か成らざらん」とか言いませんでしたっけ。 部長:そんな古い言い方を聞くと、私としては懐かしくて懐古の念を禁じ得ないよ。 ♯ 解説 ♭  「~を禁じ得ない」は、自分で抑えられないわき上がる感情を表す文語表現です。前に使われる語は「涙・怒り・憎しみ・憤り・義憤・同情・驚き・微笑・失笑・悲しみ・喜び・失望・~の念…」などの感情を表す名詞です。  ここでは同類の自発・自然の文型を整理しておきましょう。接続の形にはくれぐれも注意が必要ですが、「~ずにはいられない」(→文型261)や、「~てならない」(→文型187)などの他の表現に置き換えられる場合も多いでしょう。   悲しみを禁じ得ない。  <悲しい→悲しみ>   悲しまずにはいられない。<悲しむ→悲しまない>   悲しくてならない。   <悲しい→悲しくて> § 例文 § 1.君がこんな失敗をするとは、僕は失望を禁じ得ない。 2.観光客に物乞いする子供達の姿を見て、涙を禁じ得なかった。 3.飽食の世界の裏側に、飢えと寒さで死んでいく人々がいる。私はこの不公平に怒りを禁じ得ない。 4.喜劇俳優Aさんの訃報に、私は哀惜の念を禁じ得なかった。 5.何でも力で解決しようとする大国のやり方に、憤りを禁じ得ない。 ★ 例題 ★ 1) 保証人になった(ばかりに/だけに)、負債を(背負わせて/背負わされて)、一家心中した家族のニュース(見たので/見て)、私は同情の念を禁じ得なかった。 2) 心の師( )仰いだA老人の死( )前にして、私は(悲しむ→    )を禁じ得なかった。 (^^)前課の解答(^^) 1) きっかけ/なって(「が」に注意)/なった(状態変化→文型446) 2) 戦わせた(使役文)/の(名詞句→文型354)/に 465 *~を込めて/*~を込めた 名詞: ×  + を込めて          を込め          を込めた+名詞 ♪ 会話 ♪ 部長:何だ、そのお辞儀の仕方は!もっとお客様への感謝の気持ちを込めて、ていねいにやらんか! 百恵:今日の部長、やけに厳しいわね。 李 :そんなことはないよ。早く一人前になってほしいとの願いを込めて、厳しく新入社員教育をしてるのさ。 百恵:なるほど、愛の鞭ってことか。 ♯ 解説 ♭  他動詞「込める」は「銃に弾丸を込める」のように、決まった容量のもの中に何かを入れるという意味を持っています。そこから生まれたのがこの文型で、例文1のように「~を含めて」の意味を表すときと、例文2~5のように「感謝・愛・愛情・思い・心・熱意・情熱・怒り・祈り・願い・力・~の気持ち…」などの語について、「(心や力)を集中して/を注いで」という意味を表すときがありますが、文型としては後者が重要です。  注意してほしいのは、例文1の場合は「~を含めて」が使えますが、例文2~5には「~を含めて」が使えないことです。→例題1) § 例文 § 1.管理費を込めて、家賃の総額は一ヶ月七万円です。 2.母は私達のために、いつも心を込めて弁当を作ってくれた。 3.もう少しセリフに感情を込めろ。今のはまるで棒読みじゃないか。 4.皮肉を込めた彼の言い方が、私には腹立たしくてならなかった。 5.その女は、夜毎、自分を裏切った男への恨みを込めて、夜叉のような形相で藁人形に五寸釘を打ち込んだ。 ★ 例題 ★ 1) 病気の子供(が/を)早く治る(ために/ように)と、母親は祈りを(込めて/含めて)、お百度参りをした。 2) 力( )込めてその荷物を(持ち上げる→      )としたら、ズボン( )ビリッと破けてしまった。 (^^)前課の解答(^^) 1) ばかりに(→文型364)/背負わされて(使役受身)/見て(理由) 2) と(~を~と仰ぐ)/を(→文型477)/悲しみ 466 *~をしている 色・形・専門職を表す名詞: ×  + をしている ♪ 会話 ♪ A :失礼ですが、中国の方とお見受けしましたが、お仕事は何を・・・? 李 :建築関係の仕事をしております。 A :さようでございますか。申し遅れましたが、私はこういう者です。(名刺を渡す)以後、お見知りおきを。 李 :大学の助教授をなさっていらっしゃるんですか。 ♯ 解説 ♭  「~をしている」は色や形を表す語にくと物の形状を表し、「医者・公務員・弁護士・教師…」などの職業を表す語につくと、「~に従事している/~を経営している」という意味を表します。   「その果物は、どんな形をしていますか?」    →「丸い形をしていて、赤い色をしていました」   「ご職業は何をなさっていますか 」    →「教師をしています」  職業を話すとき、詳しく話したくなければ、「(貿易・デザイン・学校・出版…)関係の仕事をしている」という便利な言い方がありますから、覚えておきましょう。 § 例文 § 1.その陶器は青味ががった色をしていました。 2.「君って、いつも何の苦労もないような幸せそうな顔をしてるね」「それって、皮肉?」 3.あの老人はみすぼらしい身なりをしているが、実は近隣きっての大富豪なんだ。 4.父は以前、アメリカ大使をしていたことがあります。 5.君は警察関係の仕事をしていたせいか、人を疑ってかかる習性がなかなか抜けないね。 ★ 例題 ★ 1) 「君のお父さん、何を(する/してる)の?」「うん、田舎(で/に)農業を(やる/やってる)よ」 2) 「その宇宙人は、どんな姿形( )(した→    )の?」「蛸みたいな大きな頭( )(した→    )よ」 (^^)前課の解答(^^) 1) が(自V)/ように(目的→文型153)/込めて 2) を/持ち上げよう(→文型441)/が(自V) 467 ~をして~しめる 名詞: ×  +  をして ~ 動詞:使役形<~しめる> (注;古い使役文で、今は文章語として使われる) ♪ 会話 ♪ 李 :家永さんは最高裁まで争って、国をして謝罪せしめたよ。まさに信念の人と言わずしてなんだろう。 良子:今朝の新聞に載っていたわね。時間がなくてその教科書裁判の記事は読みさしだけど。 李 :僕たちは長い物には巻かれろになりがちだが、このニュースは、我々凡人をして奮い立たせてくれるよ。 ♯ 解説 ♭  「~しめる」は使役の助動詞で、古語です。形は「言う→言わせる→言わしめる/する→させる→せしめる」のようになり、動作主を表すときは「に<他動詞>/を<自動詞>」のかわりに「~をして」が用いられます。動詞の「~しむ」は「~しむる」より更に古い使役の助動詞です。  これらの古い使役形は漢文調の重々しい書き言葉で、格言や慣用表現の中に残っているだけですから、文章(主に古典)で出てきたときに読んでわかれば十分です。 § 例文 § 1.自らをして悟らしめよ。 2.わが意思を、速やかに民をして知らしめよ。 3.死せる孔明、生ける仲達をして走らしむ。 4.人をしてやらしむ前に、先ず隗より始めよ。 5.私をして言わしめれば、この計画はしょせん砂上の楼閣に過ぎない。 ★ 例題 ★ 1) 彼の医者(にとって/として)の患者(に関する/に対する)献身的姿勢は、見る者(にして/をして)敬服せしめた。 2) 私( )言わせれば<←私をして言わしめれば>、この種の教育改革は教師の権威( )(失墜する→    )<←失墜せしめる>ものだ。<現代使役文> (^^)前課の解答(^^) 1) してる(「~ている」の口語省略形「~てる」)/で/やってる 2) を/していた/を/していた 468 ~を頼りに/~を盾に/~をかさに 名詞: ×  +  を頼りに(して)   ・           を盾に(して)    ・           を盾にとって           をかさに      ・           をかさに着て ♪ 会話 ♪ 良子:家庭の主婦たちが、街頭署名を頼りに進めていた商品不買運動に、会社側が屈したらしいわ。\ 李 :あの会社は法律を盾にとって、消費者の声を無視し続けてきたけど、ついに兜を脱いだわけだ。 良子:消費者あっての会社なのに、とんだ時代錯誤よ。会社の大きさをかさに着ている経営者なんて最低よ。 ♯ 解説 ♭  「頼り」は「依存する人やもの」を表し、「盾」は「自分を守る手段・利用する人やもの」を表しますから、「~を頼りに」は「~を助けに」、「~を盾に」は「~を利用して」の意味になります。  なお、「~を盾に」とほとんど同じ意味を表すのが「~をかさに/~をかさにきて」ですが、これは「(他人の力)を利用して」という意味になります。両者の違いは、「~を盾に」は自分に属する物力を利用しますが、「~をかさに/~をかさにきて」は他人(主に上位者や組織)の力を借りて悪いことをするときに使われることでしょう。どちらもいい意味で使われることはありません。 § 例文 § 1.遠い親戚を頼りに上京した。 2.辞書を頼りに何とか読むことはできますが、大変な時間がかかります。 3.慣例にないのを盾に、役所は老人たちの切実な要求を拒絶した。 4.金の力をかさに着ての悪逆非道の数々、断じて許せない。 5.親の威光をかさに、息子は勝手放題をしている。 ★ 例題 ★ 1) 他人の力を(頼り/盾/かさ)に何かを(なす/なそう)としても、うまくいく(はずがない/はずではない)。 2) 相手の失言( )盾に(とる→   )、あれこれ個人の人格攻撃をするのは卑劣( )しか(言う→  )ようがない。 (^^)前課の解答(^^) 1) として(→文型237)/に対する(→文型322)/をして 2) に/を/失墜させる(使役文:~が失墜する→) 469 *~を中心に(して)/*~を中心として 名詞: ×  +  を中心に(して)           を中心として           を中心とする + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :ピアノ・リサイタルに行かないか。人造湖を中心に開発された例の避暑地で開かれるんだよ。 良子:いいわねえ。あそこのホールはステージを中心に座席が配置されていて、響きが素晴らしいらしいわ。 李 :それはそうと、わが家もせっかく大枚を投じて電子オルガンを買ったんだから、何か一曲聞かせてくれよ。 ♯ 解説 ♭  「~を中心(に/にして/として)」は、事柄の中心だったり、集団の中心だったり、場所の中心だったり、行為の中心だったりするでしょう。  この文型と「~をはじめ(として)」(→文型474)、「~をめぐって」(→文型478)は混同しやすいものです。例えば下の例では「~をはじめとする」は「~を代表とする」、「~をめぐる」は「~の周囲にある」をそれぞれ表しますから、意味の違いが生じます。→例題1)2)   イラクを中心とするアラブ諸国   イラクをはじめとするアラブ諸国   イラクをめぐる周辺アラブ諸国 § 例文 § 1.地球は太陽を中心にして回っている惑星の一つです。 2.世界は君を中心に回っているんじゃないんだよ。 3.党員のみなさん、今こそ委員長を中心に結束し、一丸となって総選挙に勝利しよう。 4.日本には東京を中心とする東の文化圏と、京都・大阪を中心とする西の文化圏がある。 5.アメリカを中心とする市場競争経済は、今や世界をのみ込む勢いである。 ★ 例題 ★ 1) どこの国でも自分の国(を中心に/をめぐって)、世界地図(を/が)書い(ておく/てある)ね。 2) 中国の政治は北京( )中心として(動く→    )が、経済の中心は上海( )はじめとする沿岸諸都市である。 (^^)前課の解答(^^) 1) 頼り/なそう(→文型441)/はずがない(→文型366) 2) を/とって/と/言い(→文型435) 470 *~を通して/*~を通じて 名詞: ×  + を通して      ・          を通しての+名詞          を通じて      ・          を通じての+名詞 ♪ 会話 ♪ 山田:インターネットを通して知り合った人に、上海まで会いに行くんだって? 佐藤:今回は宿と足の予約を自分で入れたんだよ。年間を通じて今が最高の季節だし、上海蟹でも食ってくるよ。 山田:僕なんか旅行代理店を通して予約しないと不安だけど、君の中国語がものを言ったってわけだね。 ♯ 解説 ♭  「~を通して/~を通じて」は、例文1~4のように仲介者・手段・過程を表す場合はどちらも使えます。しかし、「~を通じて」には 例文5のように「~の期間いつも/~の場所・場合の全て」を意味する用法があって、その場合は「~を通して」が不自然になります。以下にそれを整理しておきます。   田中さんを通して(・を通じて)、今の妻と知り合った。<仲介者>   書物を通して(・を通じて)知識を得る。       <手段・方法>   そこは一年を通じて(× を通して)雨が多い。     <~の期間いつも>   全民族を通じて(×を通して)人情に差はない。    <~の場所の全て> § 例文 § 1.友人を通して(⇔を通じて)今の妻と知り合いました。 2.テレビの画面を通して(⇔を通じて)、世界各地の出来事が一瞬のうちに伝えられる時代になった。 3.こうやって客観的な統計を通して(⇔を通じて)みると、経営の問題点が一目瞭然、はっきり見えてくる。 4.インターネットを通じて(⇔を通して)のコミュニケーションには、やはり限界がある。 5.この寺は年間を通じて(×を通して)参拝者が途切れない。 ★ 例題 ★ 1) この交流(を通じて/を経て)、庶民の暮らしを留学生(が/に)知って(あげ/もらい)たいと思う。 2) 経験( )通して得た知恵が、学識( )勝ることは決して珍しいこと(だ→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) を中心に/が/てある(~が~<他V>てある) 2= を/動いている/を(~をはじめとして→文型474) 471 ~を~として~する/~を~とする 名詞A: × +  を  名詞B: × +  として~する                        とする (注:書面語として「~をもって~とする」という表現がある) ♪ 会話 ♪ 部長:当社はこの規約を基準としていますが、今回だけは貴社の御提案を例外として、承認いたしましょう。 鈴木:ありがとうございます。 部長:こうしてお会いできたことを御縁として、これからもよろしくおつき合いのほどをお願いいたします。 鈴木:いえ、こちらこそ、色々御無理を申しまして。 ♯ 解説 ♭  「~を~として~する」は「~を~として活用する」、「~を~とする」は「~を~と考える」という意味を表します。この文型では「~にする」が使えません。  ちなみに、学生からよく「~にする」と「~とする」の違いが質問されますが、「に」は一方向ですが、「と」は双方向ですから、下記のような意味の違いが生じます。   机をテーブルにする。  <改造し作り変える>   机をテーブルとする。  <そのまま、転用する>  格助詞「~として」はこの「~とする」から生まれていますから、「AはBとして」は「A=Bの<立場・資格・名目・用途>で」という相互関係になります。 § 例文 § 1.先の誤りを後の戒めとせよ。(ことわざ) 2.君をわが国の特命大使として任命する。 3.警察はその男を殺人犯として全国に指名手配をした。 4.わが国の憲法では満20歳をもって成人とし、選挙権が与えられます。 5.あの暴言を酒の上のこととして済ませるわけにはいかないんだよ。 ★ 例題 ★ 1) 大人社会は、以前ロック音楽を退廃文化(として/にして)忌避してきたが、(今日では/今日でも)ロックは音楽の主流を占める(になった/に至った)。 2) 今競技大会は友好( )目的( )したものだから、勝敗( )拘らず、(楽しい→    )やってほしい。 (^^)前課の解答(^^) 1) を通して/に/もらい 2) を/に(基準:~に勝る・~に劣る)/ではない 472 *~を問わず/*~を問わない 名詞   : ×  +  を問わず ~かどうか: ×     を問わない 疑問詞~か: ×     を問わぬ (注:「~と~ないとを問わず」の形もある。解説部参照のこと) ♪ 会話 ♪ 李 :あのお祭りでは観光客が帰った後でも、地元の人々は老若男女を問わず、夜通し踊り狂うらしいよ。 良子:太鼓の音が山々にこだましているのを聞くと、遠い祖先の記憶がよみがえり、血が騒ぐのでしょうね。 李 :民族の如何を問わず、古くから受け継がれてきたものには、人の心に迫るものがあるね。 ♯ 解説 ♭  「~を問わず/~を問わない」は「年齢・職歴・性別・曜日・世代・経験・身分・季節・相違…」や、対の語「有無・男女・公私・昼夜・老若・大小・内外・正否・成否…」などについて、「~を問題にしないで/~を区別しないで」と言う意味を表します。また例文5のように、「~すると~しない(と)を問わず/~する~しないを問わず」のように肯定と否定を重ねる使い方もあります。  この文型は「~に関係なく」を表す「~に関(かか)わらず」(→文型293)とほぼ同義表現になり、ほとんど入れ替えも可能ですが、対の語の時は「~を問わず」の方が多く使われるでしょう。 § 例文 § 1.社員募集。年齢・経験を問わず(=年齢・経験不問)。 2.古今東西を問わず、親が子を思う情に変わりはない。 3.ことの大小を問わず、必ず私に連絡してくれ。 4.国の内外を問わず、環境問題は避けて通れない政策課題となっている。 5.君が望むと望まないとを問わず、事態は私の予想した通りに動いている。 ★ 例題 ★ 1) 有能な人材(にとって/について)は、我が社は学歴の有無に(問わず/関わらず)、また性別を(問わず/関わらず)採用する。 2) この歌舞伎町一帯は、不夜城の名( )恥じず、昼夜( )問わず人( )(にぎわう→       )。 (^^)前課の解答(^^) 1) として/今では/に至った(→文型289) 2) を/と(~を目的とする)/に/楽しく(イ形の連用形) 473 ~を~に控えて/~が~に控えて 名詞: × + を 名詞: × +  に控えて     ・           数詞: ×    に控え                    に控えた + 名詞                    に控える (注:「~が~に控える」については訳例参照 ・ ) ♪ 会話 ♪ 山田:うちの部長は年こそ五十代そこそこで若いが、社長が後ろ盾に控えているから発言力があるよね。 李 :人事異動を間近に控えているし、昇進を手ぐすねを引いて待っているようだね。何と言っても、部長は同期の出世頭だからね。 佐藤:やり手であることは事実だし、統率力も抜群だよ。 ♯ 解説 ♭  動詞「控える」は「待機する・抑制する・間近にする」などの意味がありますが、この文型は「~を間近にして」という意味を表し、時を表すときは「(こと)を(いつ)に控えて」と「こと」と「とき」を同時に表現できるところに特徴があります。  同義語に「~に当たって(→文型286)」、「~に先立って」(→文型311)などがありますが、下のように「いつ」が表せるのは「~を~に控えて」だけです。    卒業  に当たって/に先立って  学生たちは住所録を作った。        を 明日に 控えて  また、この文型は「~を後ろに控えて/~を近くに控えて」の形で、例文4のように場所が間近にあることも表したり、例文5のように「~が~に控える」の形で「~が~の背後にいる」という意味を表したりします。 § 例文 § 1.結婚式を明日に控えて、花嫁は喜びでいっぱいの様子だ。 2.入試を一週間後に控えて、学生達も緊張の色が隠せない。 3.金融自由化を目前に控えて、銀行業界は競争力を強化するために企業体質改革にやっきになっている。 4.そのホテルは前は海に面し、後ろに山を控えた風光明媚な場所に建っている。 5.警備陣が大統領の後ろに控えて、不審な者はいないかと目を光らせていた。 ★ 例題 ★ 1) 私の家は国道(に面して/に控えて)いて、一日(中/間)車の騒音に(悩まれ/悩ませ/悩まされ)ています。 2) 冬季オリンピック( )数日後( )控えて、日本選手団は最後の調整に余念が(ある→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) について(→文型325)/関わらず(前の助詞に注意)/問わず 2) に(~の名に恥じず→文型324)/を/で/にぎわっている(現在) 474 *~をはじめ(として)/*~をはじめとする 名詞: ×  +  をはじめ           をはじめとして           をはじめ ~ など           をはじめとする + 名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :結婚式まで残すところあと一週間だね。住まいをはじめ日用品の細々とした支度まで、色々大変だろ? 佐藤:茶碗から米びつに至るまで、何から何まで買いそろえたものだから、もうすかんぴんだよ。 真理:でも両親をはじめ親類・知人・友人など、たくさんの方からお祝いをいただいたので、助かったわ。 ♯ 解説 ♭  「~をはじめ(として)」は同類のものの中から、その代表になるものを取り上げて、「~を代表として、その他にも~」と例示する表現です。名詞とつながるときは「~をはじめとする+N」の形になります。       図あり   作文で誤用が多いのは、同じグループと考えられないものを取り上げる間違いです。この文型は、山なら山を、食べ物なら食べ物を取り上げなければなりません。× 富士山をはじめ東京などが、日本を代表するものです。 § 例文 § 1.中国には敦煌をはじめとする古代の遺跡がたくさんある。 2.社長をはじめ全役員出席の上、会長解任を決議した。 3.京都は金閣寺をはじめとして清水寺など、名所古跡に事欠かない。 4.紫式部の源氏物語をはじめとする平安文学は、和風文化の源となっている。 5.子供たちに人気があるスポーツは、サッカーをはじめとするグループ球技です。 ★ 例題 ★ 1) 環境問題(をはじめ/をきっかけに)南北問題など、(この/その)地球には様々な解決す(べき/べく)難題がある。 2) いじめ( )不登校( )はじめとする学校教育の深刻な事態は、決して日本一国だけの問題(だ→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) に面して/中(→文型162)/悩まされ 2) を/に/ない(慣用語:~に余念がない) 475 ~をピークに(して)/~を境に(して) 名詞: ×  +  をピークに(して)      ・           を境に(して)        ・           を境目に(して) (注:前が句の時は「~のをピークに」のようの「~のを」となる) ♪ 会話 ♪ 李 :円は1ドル79円75銭をピークにして下がる一方だ。 良子:有効な対策が立てられないものだから、内閣の支持率も○月をピークに下がりっぱなしね。それにしても中学入学を境にして、急に小平にお金がかかるようになったし、貯金も底をつきそうだわ。 李 :我々庶民としては、せいぜい自衛策を考えるしかないね。 ♯ 解説 ♭  「~をピークに」は「~を最高峰・絶頂に」という意味を表し、「~を境に」は「~を分岐点に」という意味 を表します。「ピーク」は一つですが、「境/境目」は分岐点なので、いくつも取り上げることも可能です。これらの文型は新聞紙上や学術論文などで、統計資料に立って評論を加えるときによく使われる文型です。         図あり   なお、対応する自動詞の使い方もありますが、その場合、「~がピークになって」「~が~境になって」という形になります。→例題1) § 例文 § 1.日本では1967年をピークに18歳人口の減少過程に入った。 2.文化サークル活動は昭和43年をピークに隆盛を過ぎ、今日ではカルチャーセンターが花盛りだ。 3.首都圏の地価は、バブル期をピークに値崩れを始めた。 4.オイルショックを境にして、日本は省資源・省エネルギー型経済への転換を進めた。 5.厄年というのは根拠があって、そのころを境に身体の変化が起こるので気をつけろという警告だ。 ★ 例題 ★ 1) 通勤ラッシュは朝の8時前(が/を)(ピーク/境)になっている(が/のに)、解決できない問題ではない。 2) 私は40代の前半( )境( )、急に体力の衰え( )感じる( )( )( )なった。 (^^)前課の解答(^^) 1) をはじめ/この/べき(→文型000) 2) や(並列の「と」は限定する)/を/ではない 476 ~を経て 名詞: ×  + を経て          を経る ♪ 会話 ♪ 百恵: これほどの円安危機に直面しても平然としていられるなんて、うちの社長は本当に凄いわ。 山田:僕も社長には、一目置いているよ。戦中派には僕たちにない何かがあるなあ。 李 : 幾多の困難を経て、この会社をここまでにしたんだろうが、何より頭が低い点を尊敬するよ、僕は。 ♯ 解説 ♭  「~を経て」は経過や経由の意味を表しますが、「~を通して」(→文型470)と重なる用法もありますので、それを対照させてみましょう。   10年の歳月を経て(・を通して)、ついに司法試験に合格した。<時間>   正規の手続きを経て(・を通して)、面会を申しんでください。<過程>   幾多の困難を経て(・を通して)、今の地位を築いた。    <経験>   香港を経て(×を通して)、シンガポールに行く。      <経由地>  例えば、「~を通して」は経由地を表せないので、「香港を通して、シンガポールに行く」と使うと、「(香港の人脈)を通して」という手段・方法の意味になってしまいます。「~を経て」は主に場所や時間の時に使うといいでしょう。→例題1) § 例文 § 1.この便はシンガポールを経て、カルカッタに向かう。 2.人間は逆境に鍛えられ、幾多の試練を経てこそ強くなる。 3.現在の人類は類人猿から分かれて、何百万年という年月を経て進化してきた。 4.このチームは厳しい全国予選を経て、勝ち残った精鋭たちからなります。 5.彼は戦場で生死の境をさまようような経験を経て以来、すっかり人格が変わってしまった。 ★ 例題 ★ 1) 彼に手紙を(送って/送ると)もう3カ月を(経た/通した)のに、何の返事も(来る→    )。 2) 日本では委員会の審議( )経て国会に(提出した→     )法案は、ほとんど(可決する→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) が/ピーク/が(「~のに」は因果の逆説→文型359) 2) を/に/を(他V)/ように(~ようになる→文型446) 477 ~を前に(して)/~に臨んで/~に面して 名詞: × + を前に(して)/を目前にして         に臨んで/に臨み/に臨む+名詞         に面して/に面し/に面する+名詞 ♪ 会話 ♪ 山田:連休を目前にして、大きな商談が飛び込んできたね。 李 :まさに干天の滋雨だよ。これでわが社も一息つけるよ。苦あれば楽ありとはこのことだ。 山田:これで会社がまた軌道に乗るといいなあ。\ 佐藤:大仕事を前にして、捕らぬ狸の皮算用をしてる暇なんてないよ。何はさておき、行動開始だ。 ♯ 解説 ♭  「~を前に(して)/~を目前にして」は「(場面や時)を目の前にして」という意味で、時を取り上げるときは刻々と切迫しつつある時を表し、場面を取り上げるときは眼前の現象を表します。その用例のほとんどは「~に臨む」に置き換えられますが、臨場感や時の切迫感が強く表れるのは「~を前にして」です。  なお、場所を表すときは「~に面する」も使えますが、位置を表すだけで、「海を前にした宿」のような波が眼前まで打ち寄せている光景は表せません。   海を前にした(・臨んだ宿/・面した)宿  <(前方の)場所>   試合を前にして(・に臨んで/×に面して) <こと>   別れを前にして(・に臨んで/×に面して) <とき> § 例文 § 1.父の死を前に、母は呆然とたたずむのみだった。 2.お盆を前に、日本列島は里帰りの民族大移動が始まった。 3.残念なことに、そのスキーヤーは優勝を目前にしながら、骨折で欠場を余儀なくされた。 4.彼は危機に臨んで沈着冷静、難局に臨んで動ぜず、まさに帝王の風格がある。 5.もはや賽は投げられた。この局面に臨んでは、もはや一刻の猶予も許されない。 ★ 例題 ★ 1) それほどの札束(を前にしたら/に面したら)、誰だって目の色が(変える/変わる)(もの/こと)さ。 2) 農民たちは収穫( )前に、(忙しい→     )(そうだ→     )採り入れの準備をしていた。 (^^)前課の解答(^^) 1) 送って(=~てから/「~と」は条件)/経た/来ない 2) を/提出された(受身文)/可決される(~を可決する→受身文) 478 *~をめぐって/*~をめぐる 名詞: ×  +  をめぐって           をめぐり           をめぐる+名詞           をめぐっての+名詞 ♪ 会話 ♪ 李 :開放政策をとる国が増えたので、新市場をめぐっての競争は苛烈をきわめていますね。 課長:途上国サイドも開発資金獲得、民族資本保護、国民所得向上、国内の所得格差是正と課題山積だよ。 李 :一方の先進国では、福祉制度をめぐって国論が真っ二つに割れる例が多いみたいですね。 ♯ 解説 ♭  「~をめぐって」は下の図のように、何かを中心にして、その周りで起こっている様々な事象を取り上げます。類義の「~に関して」(→文型304)は関連する内容を取り上げますが、「~をめぐって」は内容ではなく、周囲で発生している出来事を取り上げると考えればいいでしょう。→例題1)    図あり   更に類義語として「~にまつわる」(→文型304)がありますが「~に関して」の項で取り上げました。 § 例文 § 1.原発の賛否をめぐって、議論が白熱している。 2.消費税法案が可決されたが、その内容をめぐって与野党間には解釈の違いがある。 3.社長の後任をめぐり、社内は専務派と副社長派のふたつに割れて対立している。 4.工事入札をめぐる贈収賄事件が明るみに出た。 5.教育改革をめぐっての議論の中では、知識詰め込み教育がもたらす弊害が中心テーマとなった。 ★ 例題 ★ 1) 中東の石油(に関する/をめぐる)大国の利権争い(によって/によると)、幾度も戦乱が(もたらされた/もたらした)。 2) 行政改革をめぐっては、国会( )も総論賛成・各論反対( )、少しも具体策が(出てくる→      )。 (^^)前課の解答(^^) 1) を前にしたら/変わる(自V)/もの(一般・普遍→文型420) 2) を/忙し(様態「そうだ」)/そうに(そうに+V) 479 ~を目指して/~に向かって 名詞: ×  +  を目指して/を目指し    ・           を目指す           に向かって/に向かい    ・           に向かっての + 名詞           に向かう ♪ 会話 ♪ 百恵:渡り鳥が一斉に北に向かって飛び立つ光景を見ると、冬の終わりを実感するわ。 李 : 同じ鳥が自分のいるところを目指して飛んで来るのを見て、遅い春の到来を知る人もいるわけだね。 山田: それで、李君は今晩も良子さんの待つわが家を目指してまっしぐらかい?伝書鳩でもあるまいに・・・。 ♯ 解説 ♭  「~を目指す」は「~を目標や目的にして」という意味を表します。一方「~に向かって」は動作の方向を表すもので、そこから進む進路・方角を表したり、動作の対象を表したりするようになります。用例の中では、どちらも使える場合もありますが、異なる使い方もあります。これは意味の違いが生むものです。→例題1)   机に向かって(×を目指して)本を読む。   教師に向かって(×を目指して)文句を言う。   優勝を目指して(?に向かって)猛練習をする。 § 例文 § 1.船は一路、西を目指して(⇔に向かって)進んだ。 2.彼は東大を目指して(×に向かって)猛勉強を始めた。 2.諸君、自らの目標に向かって(⇔を目指して)、振り向くことなく前に進め。 3.マラソン選手たちはゴールを目指して(⇔に向かって)ひたすら走り続けた。 5.親に向かって(×を目指して)馬鹿とは何という口のきき方か! ★ 例題 ★ 1) 司法試験(に向かって/を目指して)学ぶこと十年、(きっと/やっと)念願の合格を(果たす/果たした)。 2) 師走とはよく言った( )( )で、年末( )向かうこの時期は誰もが(気ぜわしい→    )気に歩いている。 (^^)前課の解答(^^) 1) をめぐる/によって(→文型348)/もたらされた 2) で/で(だ→で)/出てこない(少しも~ない) 480 ~をもって/~をもってすれば/~でもって 名詞: ×  +  でもって       ・           をもって           をもちまして           をもってすれば    ・           をもってしても    ・ ♪ 会話 ♪ 百恵:全員の協力をもってすれば、恐いものはないなんてかっこうのいいいこと言ったのは、どこの誰だっけ? 李 :徹夜の追い込みをもってしても、間に合わなかったんだから、しかたないだろ。もう一息だったのに。 山田:こんな無理な日程、何をもってよしとしたのか、理解に苦しむよ、本当に。 ♯ 解説 ♭  「~をもって」も「~でもって」の用法のいくつかを分担している複合格助詞で、書面や改まった会話で使われる表現です。以下のように、原因・理由のときは「~をもって」が不自然になることを除けば、「~でもって」に置き換えが可能です。   拍手で(・でもって/・をもって)二人を迎えましょう。<手段・方法>   60点で(・でもって/・をもって)合格点とする。   <基準>   今日で(・でもって/・をもって)会社を辞めます。  <限定>   戦争で(・でもって/×をもって)多くの人が死んだ。 <原因・理由>  なお、「~をもって」は手段や方法を表すことが多く、「~を使えば・~を使っても」を意味する「~をもってすれば・~をもってしても」という慣用表現を持っています。 § 例文 § 1.後日、書面でもって(⇔をもって)連絡いたします。 2.目には目を、歯には歯を。武力には武力でもって(⇔をもって)対抗する。 3.身をもって体験することこそ、何より重要だ。 4.おかげをもちまして、無事卒業を迎えることができました。 5.空手で鳴らした彼をもってしても、かなわなかった相手とあっては、私たちではとても歯が立ちません。 ★ 例題 ★ 1) 現代医学をもって(すれば/しても)結核やコレラは容易に治せる(ことに/ように)なったが、癌やエイズは未だに現代医学をもって(すれば/しても)治せないでいる。 2) これ( )もちまして、私の挨拶( )(かえて→      )いただきます。 (^^)前課の解答(^^) 1) を目指して/やっと/果たした 2) もの(→文型449)/に/気ぜわし(~げ→文型076) 481 *~を基に(して)/~が基になって 名詞: × +  を基に          を基にして          が基になって          が基になり ♪ 会話 ♪ 課長:彼の意見を基にして判断すると、失敗するのはわかっているのだが、あれだけ熱心に説明されるとねえ。 李 :過去の経験を基に計画を作成するのは、もはや時代遅れです。ほとんどの条件が変わっているのですから。 課長:この件は私が来週まで預かっておこう。この問題は念には念をいれ、慎重に検討しよう。 ♯ 解説 ♭  「もと(基/元)」は「基礎・土台・根拠・見本・原形・素材」を意味する語で、「~を基にして」(「~が基になって/~が基になり」は自動詞用法)は主に製造・制作・創作などの「基礎・原型・素材」を表すときに使われます。  注意してほしいのは「~に基づいて」(→文型344)との違いです。例えば「経験に基づく判断/法に基づき裁く/市場調査に基づく製品開発」のように判断や行動の根拠を表すときは「~を基にして」が使えません。どちらも成立する場合も意味には違いがあります。→例題1)   事実に基づいて小説を書く。<根拠>   事実を基にして小説を書く。<素材> § 例文 § 1.かびをもとにして作られた薬は多くある。 2.ひらがなやカタカナは漢字を基にして作られた。 3.日本文化は自然崇拝の神道が基になり、そこに漢文化や南方文化が融合して作られている。 4.最近は歴史ブームで、史実を基にしたドラマに人気がある。 5.現代科学は古代の数学や天文学などの知識を基にして発展してきたものだ。 ★ 例題 ★ 1) 古代都市は、物々交換の市場(が基になり/に基づいて)、社会の分業の発展と(つれて/ともに)(形成して/形成されて)きた。 2) この映画は実際に(起こる→    )冤罪事件( )基にして(制作した→       )。 (^^)前課の解答(^^) 1) すれば/ように(状態変化→文型446)/しても 2) を/に/させて(「使役形+てもらう」の用法→文型102) 482 ~をものともせず(に) 名詞: ×  +  をものともせず(に) (注:前が句の時は「~のをものともせず(に)」の形になる) ♪ 会話 ♪ 山田:君も外回りが好きだねえ。雨で道が込んでるのをものともせずに、お得意さん回りかい? 百恵:あら、思いやりのないことね。どしゃ降りをものともせずになんて、社員の鏡よ、社員の鏡。 佐藤:言いたい奴には言わせておくさ。先輩の皮肉を背に受けながら出かけて行くヒラの悲哀は知る人ぞ知るさ。 ♯ 解説 ♭  「AをものともせずB」は「~を全く恐れないで/~を気にもとめないで」という意味を表します。困難や障害(A)を承知の上で敢えて(B)を選択するときの表現で、行為者の勇気や勇敢さに対する話者の賛嘆が込められています。  類語語の「~をよそに」(→文型484)が「すべきことをしないで」という非難の気持ちで使われるのと対照的です。例えば同じ文脈で使っても、以下のように全く異なる評価になります。→例題1)   吹雪をよそに、男は山に登った。   <無謀で愚かな行為>\   吹雪をものともせず、男は山に登った。<勇気ある行為> § 例文 § 1.消防隊は燃え盛る炎をものともせず必死の消火に当たった。 2.古代の日本人は荒れ狂う海をものともせず、新しい知識を求めて唐の国へと渡って行った。 3.逆境をものともせずに、彼は堂々とその試練に立ち向かっていった。 4.押し寄せる敵軍をものともせず、関羽軍は城を守り抜いた。 5.その青年は身体の障害をものともせず、車椅子で世界一周の旅に出た。 ★ 例題 ★ 1) 周りの中傷(をよそに/をものともせず)、彼は(どこまで/どこまでも)信念を貫き(抜いた/通した)。 2) かつて弾圧( )ものともせず、圧制( )(闘う→   )抜いた革命家たちがこの日本にもいた。 (^^)前課の解答(^^) 1) が基になり/ともに(→文型240)/形成されて(非情の受身文) 2) 起こった/を/制作された(非情の受身文) 483 ~を余儀なくされる/~を余儀なくさせる 名詞: ×  + を余儀なくされる ・          を余儀なくさせる ・ ♪ 会話 ♪ 山田:頼りの君が出かけていたので、会議では防戦を余儀なくされる一方だったよ。すんでのところで言い負かされるところだった。 百恵:あなたが戻るのを、今か今かと待っていたのよ。 李 :気は焦っていたんだが、ひどい夕立に遭ってしまってね、雨宿りを余儀なくされていたんだよ。 ♯ 解説 ♭  「余儀ない」は「他に方法がない・やむを得ない」を意味する語で、例文1のように単独でも使われます。そこから生まれたのがこれらの文語表現で、「~を余儀なくされる」と受身形を使ったときは、周囲の事情に強制されて「~するしかなくなる/やむを得ず~する」という不本意の選択を表します。また、「~に~を余儀なくさせる」と使役形を使ったときは、「相手に~を強制する」という意味を表します。  なお、例文では取り上げませんでしたが、「~のやむなきに至った」も「~を余儀なくされる」と同じ意味を表しています。   撤退を余儀なくされた。  →撤退のやむなきに至った。  →やむを得ず撤退した。 § 例文 § 1.余儀ない事情で退社することになりました。みなさん、  これまで本当に色々お世話になりました。 2.経営責任を追及され、社長は辞任を余儀なくされた。 3.相次ぐ事故の発生で、政府も原発政策の再検討を余儀なくされた。 4.震災で避難所暮らしを余儀なくされた人々の胸に、将来の生活不安が重くのしかかった。 5.果敢な自軍の反撃によって敵軍に撤退を余儀なくさせた。 ★ 例題 ★ 1) 大雨(による/によって)土砂崩れで、工事は(遅れる/遅れ)を余儀なく(された/させた)。 2) 私たちは相手( )こちらの弱点を(突く→    )て、妥協を余儀なく(する→    )。 (^^)前課の解答(^^) 1) をものともせず/どこまでも/通した(→文型352) 2) を/と(相互行為は「と」)/闘い(→文型352) 484 ~をよそに 名詞: ×  +  をよそに (注:前が句の時は、「~のをよそに」の形になる) ♪ 会話 ♪ 李 :お前は親の心配をよそに、毎日遊びほうけているが、   それでいいと思っているのか! 小平:今年いっぱいくらいは大目に見てよ。受験戦争をようやく突破したんだから。 良子:そういう人が家庭をよそに、自分だけ外で遊ぶような大人になるのよ。少しはパパを見習いなさい。 ♯ 解説 ♭  「よそ」は「無関心・ひとごと」という意味を表す語で、「~をよそに」は「~を無視して/~を他人事(ひとごと)のように」という意味を表す文型になります。「~を顧みず」(→文型459)や、「~に(も)かまわず」(→文型302)とも類義表現になりますが、「~をよそに」は知らん顔をして他人事のように振る舞う情景が浮かんでくる表現で、非難の感情が強く表れます。   医師の忠告をよそに、毎日大酒を飲んでいる。   医師の忠告を顧みず、毎日大酒を飲んでいる。   医師の忠告にもかまわず、毎日大酒を飲んでいる。 § 例文 § 1.彼は大学入試をよそに、毎日、麻雀に興じている。 2.核廃絶決議をよそに、一部の国は核実験を再開した。 3.掲示板に「収集日以外にゴミを出さぬこと」と書いてあるのをよそに、ゴミ袋が山のように積まれていた。 4.国民の非難をよそに、その汚職政治家はまたしても代議士に返り咲いた。 5.沖縄県民の反対の声をよそに、国会では米軍基地の存続を図る特別措置法が可決された。 ★ 例題 ★ 1) 地域住民の不安(をよそに/をものともせず)、原子力発電所の建設(が/を)(強行した/強行された)。 2) 医師から( )忠告( )よそに、彼は毎晩( )ように酒浸りの生活を続けた。 (^^)前課の解答(^^) 1) による(理由・連体用法→文型346)/遅れ/された 2) に/突かれて(受身文)/された 485 ~んがため(に) 動詞:[ない]形  +  んがため(に)              んがために(は/も)              んがための + 名詞 ♪ 会話 ♪ 課長:飛び出した子供をよけんがために、とっさにハンドルを左に切って、電柱にぶつかりましてね。 部長:君もついてないな。子供をよけ損ねた上に、電柱じゃあねえ。あそこは道が急に狭くなっているしな。 課長:一瞬先は闇とは言いますが、安穏な老後を得んがためにがんばってきたのも、一瞬にして水の泡です。 ♯ 解説 ♭  「~んがため(に)」は動詞の「ない形」に接続して、現代語の「~するために」と同じ目的を表す文型になります。話し言葉として使われることはほとんどありませんが、書面語としては今も使われています。「する」と「来る」は「する→せんがため/来る→こんがため」の形になりますから、注意しましょう。   行く→行かんがため=行くために   する→せんがため=するために   来る→来(こ)んがため=来るために § 例文 § 1.富と地位を得んがために、彼はいかなる手段をも使った。 2.自らの罪を逃れんがため、彼は虚偽の証言をしたばかりか、他人に罪をなすりつけた。 3.大の虫を生かさんがためなら、小の虫を犠牲にするのもやむを得ない。 4.強くならんがためには、自分より強い相手にぶつかれ。 5.厚生省にエイズ薬害の事実を認めさせんがため、患者や支援団体がハンガーストライキに突入した。 ★ 例題 ★ 1) 彼は(くる/きたる)大会で昨年の雪辱を(果たす/果たさ)んがため、厳しい練習を(重ねている/重なっている)。 2) 彼は一刻も早く上司( )その情報を(知らせる→   )んがため、車を(走った→     )。 (^^)前課の解答(^^) 1) をよそに/が/強行された(非情の受身文) 2) の/を/の(Nの+ようだ)) 486 ~んとする 動詞:[ない]形  +  んとする              んとしている ♪ 会話 ♪ 課長:何っ!説明資料ができていないだって?会議まであと五分足らずににならんとしてるのに、何たるざまだ! 山田:後はコピーをするだけですから、先に行っててください。何としても間に合わせますから。 李 :その作業は僕が引き受けた。プロジェクトが立ち上がらんとしている時に、担当者の君の遅刻はまずいよ。 ♯ 解説 ♭  「~んとする」は「~(よ)うとする」(→文型441)の古い形で、今日では古い文体の書面語として残っているだけですから、意味が分かれば十分でしょう。  「~んとする/~(よ)うとする」は、無意志性動詞(≒自動詞)につくときは、例文1~3のように事態発生の直前状態を表し、人を主語とし意志性の動作動詞(他動詞)につくときは、例文4、5のように「(動作を)しようと試みる」という意味を表します。   夜も明けんとする=夜も明けようとする <直前状態>   立ち上がらんとする=立ち上がろうとする<直前動作> § 例文 § 1.西の空は夕焼けで、日はまさに沈まんとしていた。 2.今年もまた、あと一日で終わらんとしている。 3.ローマ帝国は、今やまさに崩壊せんとしていた。 4.私が出かけんとすると、妻が私を呼び止めた。 5.君が言わんとすることは、わからないものでもないのだが、みんなを説得するのは容易ならざることだ。 ★ 例題 ★ 1) 私は彼を(止める/止め)んとしたが、彼は(振り向く/振り向こう)ともせず、戦場(に/へ)と向かった。 2) 時、まさに風雲急を(告げる→    )んとしているとき、希代の英雄曹操はこの世( )生をうけた。ここに三国志の時代の幕は切って(落とした→ )。 (^^)前課の解答(^^) 1) きたる/果たさん/重ねている(他V) 2) に/知らせん/走らせた(自Vの使役文) 487 ~んばかりだ/~んばかりに/~んばかりの 動詞:[ない]形  +   んばかりに              んばかりの + 名詞             んばかりだ ♪ 会話 ♪ 百恵:真理さん、今にも泣かんばかりの顔してたわよ。何かひどいこと、言ったんじゃないの? 佐藤:押さえて注意したつもりなんだがねえ。やはり女性は苦手だよ。あ~あ、結婚に自信をなくしちゃったな。 李 :「雨降って地固まる」さ。本音が出し合えなくなったら、夫婦はおしまいさ。佐藤、いいから謝って来なよ。 ♯ 解説 ♭  「~んばかりだ」は動詞の否定形(「ない」形)と接続して、「今にも~しそうだ」と同じ意味を表します。様子や程度を形容するために使われることがほとんどです。口語として使われることは少ないので知識として持っていればいいでしょう。   泣き出さんばかりの顔 =今にも泣き出しそうな顔   椅子が今にも壊れんばかりだ =椅子が今にも壊れそうだ  なお、「~と言わんばかり<=「~とばかり」>」(→文型222)という文型も、この「~んばかり」から作られたものです。→例題1)2) § 例文 § 1.「黙れ」と言わんばかりに、教師は私をにらみつけた。 2.その犬は私を見ると、噛みつかんばかりに吠え立てた。 3.10年ぶりに中国の友人宅を訪ねると、家中の人が私に抱きつかんばかりに歓迎してくれた。 4.米軍によるイラクへのミサイル攻撃をテレビで見ながら、僕は怒りで胸も張り裂けんばかりだった。 5.その知らせを聞いたときの彼は、まるで跳び上がらんばかりの驚きようだった。 ★ 例題 ★ 1) その男は今にも(殴りかかる/殴りかから)(とばかり/んばかり)の形相で、私に詰め寄っ(てきた/ていった)。 2) 彼女の家に行くと、彼女から「今すぐ帰れ」と(言う→   )んばかり( )嫌な顔を(した→   )。 (^^)前課の解答(^^) 1) 止め/振り向こう(→文型441)/へ(~へと→文型387) 2) 告げ/に/落とされた(非情の受身文) 488 終わりに当たって  終わりに当たって、社内討論例を取り上げました。表現文型の学習と併せて大切なのは「こんな時どう言えばいいのか」という場面学習かと思います。場面に応じた適切な日本語の使い方を身につけるには、日本社会の文化・習慣・風俗・民族性などに精通する必要も出てきます。特に公式な場での敬語の使い方や決まった言い回しなどは場面を通してしか学習のしようがありません。そのため、本事典の姉妹版として「日本人の心を語る 機能別日本語会話」を編集中ですが、みなさんのお役にたてば幸いです。 ♪ 会話 ♪   ー社内討論例:社内禁煙をめぐって ー 司会 :只今のAさんの意見について、皆さんの意見を。 李  :ええ、大筋賛成なんですが、二、三問題が残っているように思います。ひとつは、Aさんは喫煙室の設置を提案されていますが、仕事時間内に行ってもいいのかどうかということです。二つは、なぜ重役室だけは例外なのかということ、・・・。 司会 :申し訳ありませんが、手短にお願いします。 李  :わかりました。・・・・・・・以上です。 司会 :ほかに意見はありませんか。もしないようでしたら、ここらで二十分ほど休憩を取って、その後、中間集約をしたいと思います。その前に社長の御意見を伺いたいと思いますが。 社長 :まあ、時代の流れと言うか、この国際社会では、もう常識となっているわけで、わが社にあってもだな、え~っ、この際、社内禁煙ということにしようと、重役会で決まった次第だ。 司会 :ありがとうございました。では、ここでしばらく休憩ということに。 (^^)前課の解答(^^) 1) 殴りかから/んばかり/てきた(~てくる→文型181) 2) 言わ/の/された(~から~られる<受身文>=
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2006-5-2 20:58:27 | 显示全部楼层
<資料1>  よく使う格助詞の用法一覧  格助詞というのは「てにをは」とも言われていますが。日本語の表現文型が文の骨格にあたるとすれば、「てにをは」(格助詞)というのは関節にあたります。助詞の問題で、「あれ?」と思ったら、この一覧表を開いてみてください。  「が」の用法 1、 主語を表す「が」    1) 「(疑問詞)が~か」文と、その応答       「誰が行きますか」「私が行きます」       「いつがいいですか」「明日がいいです」       「どれがあなたの辞書ですか」「これが私の辞書です」    2) 存在文や「(~には)~がある」文で、存在する人・物・ことを表す       「教室に誰がいましたか」「李さんがいました」       「机の上に何がありますか」「本があります」       友だちと約束があります。       君には君の夢があり、僕には僕の夢がある。    3) 形容詞文や比較文の中で       日本は交通が便利です。       「東京とソウルと、どちらが寒いですか」「ソウルの方が寒いです」       「クラスで誰が一番背が高いですか」「李さんが一番背が高いです」    4) 自動詞文・現象文の主語       桜の花が咲きました。       雨が降っています。       先週、ここで交通事故がありました。    5) 従属句の中の主語       これは私が撮った写真です。 <名詞句>       私が小学二年生だったとき、父は死にました。<とき>       仕事が忙しいので、私は旅行に参加できません。<理由>       李さんが来たら、これを渡してください。<条件>    6) 状態を表す「~ている」「~てある」文の中で       ドアに鍵がかかっています。       入り口に警官が立っています。       黒板に字が書いてあります。\       部屋に花が飾ってあります。 2、 対象を表す「が」    1) 形容詞文で感情・感覚などの対象を表す       あなたは料理が上手ですね。       私はスポーツが好きです。       彼は英語が得意です。    2) 希望を表す文で対象を表す       私はパソコンが欲しいです。       私は水が飲みたいです。       今日は焼き肉が食べたいですね。    3) 可能を表す文で対象を表す       あなたは韓国語がわかりますか。       あなたは車の運転ができますか。\       私は中国語が話せます。 3、 接続助詞の「が」    1) 逆説に使う「が」       彼女は美人だが、性格がつめたい。       薬を飲みましたが、熱が下がりません。       行きたくないが、行かなければならない。    2) 前置きや文のつなぎに使う「が」       すみませんが、近くにトイレはありませんか。       この前の話ですが、どうなりましたか。       僕はコーヒーにしますが、あなたは?  「の」の用法 1、 名詞と名詞を結びつける「の」       これは李さんの本です。       こちらは担任の田中先生です。       黒い革の鞄です。\       ソウルの冬は寒いです。       明日の試験は大丈夫ですか。 2、 名詞の働きをしたり、名詞句を作る「の」       「これは誰の本ですか」「私のです」       私が買ったのはこれです。       私は本を読むのが好きです。       子供が遊んでいるのが見えます。       友だちが来るのを待っています。 3、 「~のだ」の形で説明・断定の感情を加える「の」       「どうしたんですか」「お腹が痛いんです」       休みたいんですが、いいでしょうか。       今は忙しいんだ。後にしてくれ。 4、 名詞句の中で主語を表す「の」       私の(・が)住んでいるところは、駅の近くです。       君の(・が)探している物は、これですか。       桜の(・が)咲く頃、もう一度来たいですね。  「を」の用法 1、 他動詞について動作の目的・対象を表す「を」       私は日本語を勉強しています。       もう食事をしましたか。       李君を呼んできてください。 2、移動表現の中で使われる「を」    1) 離れる場所を表す       電車を降ります。       毎日7時に家を出ます。       大学を卒業したのはいつですか。    2) 通過する場所を表す       鳥は空を飛びます。       信号のところを右へ曲がってください。       毎朝、近くの公園を散歩します。    3) 経過する時間を表す       夏休みをアメリカで過ごした。       ここは私が少年時代を送った懐かしい家です。       長い年月を経て、この作品を書き上げた。 3、 自動詞の使役文の中で使われる「を」       彼は冗談を言って、みんなを笑わせた。       早く子供を寝させた方がいいですよ。       社長は遅くまで社員を働かせた。  「に」の用法 1、 動作の起こる時を表す「に」       「学校は何時に始まりますか」「9時に始まります」       寝る前に、歯を磨きましょう。       夕方までに、この服をクリーニングしてください。 2、 存在する場所や状態発生地を表す「に」    1) 存在する場所を表す       「李君はどこにいますか」「李君は教室にいます」       「郵便局はどこにありますか」「駅の側にあります」       「机の上に何がありますか」「本があります」    2)  動作の目的地・到達地を表す       飛行機は成田空港に着いた。       船が港に近づいた。       みなさん、10時に学校に集まってください。 ◆       鞄に教科書を入れる。       黒板に字を書く。\       荷物はそこに置いておいてください。    3)  状態発生地を表す       道ばたに花が咲いている。       私は銀行に勤めています。       私はソウルに住んでいます。       右に見えるのが、国会議事堂です。 3、 「~には~がある」文で使われる「に」       規則には例外があります。       彼女には子供が三人ある。       彼には学識(教養・地位・誇り・経験・夢・・・)がある。 4、 目的を表す「に」       海へ釣りに行きます。       ジョギングは健康にいいです。       成田空港に行くには、新宿からJRが便利です。 5、 「~に~を~」他動詞文で動作の相手・対象者を表す「に」       友だちに電話をかける。       恋人に誕生日のプレゼントをあげる。       外国の学生に日本語を教えています。 ◆       父に(・から)時計を買ってもらいました。       日本の友だちに(・から)日本語を教わる。       「誰に(・から)絵を習いましたか」「父に習いました」 6、 感情発生の理由を表す「に」       大きな音に(・で)驚きました。       食糧難に(・で)多くの人が苦しんでいる。       恥ずかしさに(・で)、顔が真っ赤になった。 7、 変化の結果を表す「に」       春になる。       日本語が話せるようになりました。       信号が赤から青に変わる。       一つのケーキを三つに分ける。 8、 基準を表す「に」       この子は父親に似ています。       AはBに等しい。       彼女は才能に恵まれている。 ◆       一週間に一度、韓国語を習っています。       一度に二つのことはしない方がいい。       一日に何時間ぐらい復習をしますか。 9、 受身文の動作主       親に叱られた。       僕は先生にほめられました。       泥棒にお金を盗られた。 10、 使役文の動作主       母親が子供に薬を飲ませた。       私にやらせていただけませんか。       部長に歌を歌わせられた。  「で」の用法 1、 動作の行われる場所を表す「で」       子供たちが公園で遊んでいる。       この川で泳いではいけません。       どこで日本語を勉強しましたか。 2、 手段や方法を表す「で」       ボールペンで書いてください。       バスで駅まで行きます。       多数決で決めましょう。 3、 材料を表す「で」       僕は竹で作った箸がすきです。       紙で鶴を折ります。       毛糸でセーターを編みます。 4、 時間・期間・数量や範囲を限定する「で」       この仕事なら、一週間でできるでしょう。       「それ、いくらで買いましたか」「5000円で買いました」       あと二時間で京都に着きます。       世界で一番長い川を知っていますか。 5、 理由を表す「で」       地震でビルが倒れた。       今日は風邪で休んでいます。       事故で電車が止まった。 6、 根拠を表す「で」       声で誰かわかります。       成績でクラス分けをする。       外見で人を判断してはいけないよ。 7、 動作が行われているときの状態を表す「で」       裸足で歩く。       小さな声で笑っている。       彼女は一人で暮らしています。  「と」の用法 1、 名詞を並べる「と」       机の上にノートと鉛筆が置いてあった。       手紙と小包は、昨日送りました。       僕と君が代表に選ばれました。 2、 共同動作の相手を表す「と」       友だちと(・といっしょに)旅行に行きます。       子供と(・といっしょに)テレビを見ている。       休日はいつも家族と(・といっしょに)過ごす。 3、 動作の対象を表す「と」       孫さんと結婚します。       友だちと約束をする。       家族と相談してから、決めます。 ◆       病気と闘う。       円をドルと交換する。 4、 発言や内容を引用したり、指定する「と」       私は李と申します。       先生は何とおっしゃっていましたか。       今日中にできると思います。       君なら必ず成功すると信じている。 5、 比較の対象を表す「と」       私もあなたと同じ考えです。       僕は君とは意見が違います。       兄と比べると、弟の方が頭がいい。 6、 接続助詞の「と」       右に曲がると駅があります。       春になると暖かくなる。       父は日曜日になると釣りに行く。  「から」の用法 1、 起点を表す「から」    1) 時や場所の起点       「何時から会議は始まりますか」「10時からです」       ここから駅まで歩いて何分ぐらいかかりますか。       太陽は東から昇り、西に沈む。    2) 人を表す語について、動作の主体を表す       その話を誰から聞きましたか。       父から手紙をもらった。       あなたから説明してください。    3) 抽象的な語について、起点を表す       失敗から教訓を学ぶ。       心から皆さんを歓迎します。       やっと仕事から解放された。    4) 順序や範囲の始点を表す       さあ、何から話し始めましょうか。       この映画は子供から大人まで楽しめます。       彼は100人の選手から選ばれた代表です。 2、 原因・出所や判断の根拠を表す「から」       足跡から、犯人は男とわかった。       服装から判断すると、       ちょっとした不注意から事故が起こる。 3、 原料や構成を表す「から」       米から酒を作る。       プラスチックは石油から作られる。       日本は多くの島からなっています。 4、 接続助詞「から」       もう遅いから、帰りませんか。       星が出ているから、明日は晴れるでしょう。       寒いですから、窓を閉めてください。  「まで」の用法 1、 時や場所の到達点や範囲を表す「まで」       この店は何時までやっていますか。       明日までにこの仕事を終わらせてください。       東京までの切符をください。 2、 副助詞「まで」<程度>       夢にまで見る。       納得がいくまで調べる。       子供にまで馬鹿にされた。  「へ」の用法 1、 方向を表す「へ」       「どこへ(・に)行くんですか」「新宿へ買い物に」       その角を左へ(・に)曲がると、すぐですよ。       学校へ(・に)行く途中で、木村さんに会った。 2、 動作の対象を表す「へ」       先生へ(・に)よろしくお伝えください。       これは母への(×にの)贈り物です。       両親への(×にの)感謝の気持ちを忘れてはいけませんよ。  「より」の用法 1、 比較の基準を表す「より」       東京は大阪より人口が多い。       紅茶よりコーヒーの方が好きです。       今年は去年より寒くなりそうですね。 2、時間・空間・範囲の起点を表す「より」(改まった会話で使う)       試験は9時より(・から)始めます。       ここより(・から)先はA国領です。 <資料2> よく使う会話文型の接続別一覧  以下の文型項目は筆者が各分野のテレビ番組の収録ビデオに基づいて、日常生活会話で使用度が高いと思われる文型を選出したものです。初級文型(三級相当)でほぼ80%~85%を満たしますが、それ以外の頻出度が高い二級相当の中級文型(△印)を加えたものです。これで日常会話に必要な文型の90%~95%が満たされるはずです。そして、これらの文型が使えるようになれば、日本人との日常のコミュニケーションには問題ないでしょう。  なお、フォーマル会話やビジネス会話などで現れる中~上級文型に関しては、「会話で学ぶ 日本語表現文型辞典」、「ビジネス会話&レター」をご参照ください。 1、 [ます]形に接続する文型   ~ましょう     さあ、飲みましょう。     コーヒーを入れましょうか。   ~ませんか     少し休みませんか。     そろそろ帰りませんか。   ~に(行く/来る/帰る)     海へ釣りに行く。     一度遊びに来てください。     忘れ物を取りに帰る。   ~たい     私は家が買いたい。     私は何も食べたくない。   ~たがっている     彼は家を買いたがっている。     うちの子は学校に行きたがりません。   ~始める     彼女は事情を話し始めた。     若者は歩き始める。   ~続ける     本を読み続ける。     彼女は一晩中泣き続けた。   ~終わる     今、原稿が書き終わったところだ。     食べ終わったら、食器を片づけましょう。   ~終える     やっと仕事をやり終えた。     原稿を書き終えた。  △~出す     突然、彼は笑い出した。     始業のベルが鳴り出した。  △~やむ     子供が泣きやんだ。     雨が降りやんだ。   ~にくい     カタカナ語は覚えにくい。     苦くて、飲みにくい薬だね。   ~やすい     操作が簡単で、使いやすい。     夏は物が腐りやすい。  △~づらい     歯が痛くて食べづらい。     老眼で小さい字が読みづらい。  △~がたい     それは忘れがたい思い出です。     君の話は理解しがたい。  △~兼ねる     恩師の頼みなので、断りかねる。        今回のことは納得しかねます。   ~なさい     うるさいですよ。静かにしなさい。     そこに座りなさい。   お~ください     少々、お待ちください。     ご用があったら、お呼びください。   お~になる     先生は今お帰りになりました。     先生がお書きになった本を拝見しました。   お~する     荷物をお持ちしましょうか。     お客をお迎えする。   ~合う     もっとよく話しあった方がいいよ。     夫婦は助けあうことが大切です。  △~切る/~切れる/~切れない     ビールを一気に飲みきった。     疲れ切った顔をしていた。     こんなにたくさんは食べきれないよ。  △~通す     決めたことは最後までやり通せ。     彼は最後まで自説を押し通した。   ~ながら     歩きながら、話しましょう。     アルバイトをしながら学校に行く。   ~方     この料理の作り方を教えてください。     やり方を変えよう。 2、 [ます]形と形容詞に接続する文型   ~過ぎる     酒を飲み過ぎた。     それはちょっと言いすぎだよ。     この靴、ちょっと大き過ぎるよ。<イ形ーい>     夜道の一人歩きは危険過ぎる。<ナ形ーな>   ~そうだ<様態>     今にも雨が降りそうだ。     お腹が空いて死にそうだ。     おいしそうなケーキだなあ。<イ形ーい>     彼は元気そうでした。 <ナ形ーな> 3、 「原形(辞書形)」に接続する文型   ~ことができる     彼女は三カ国語を話すことができる。     この国では自由に意見を言うことができない。   ~ことだ  訳例:・   △・     私の趣味は寝ることだ。     大きいことはいいことだ。 ◆     合格したければ勉強することだ。     二度と嘘はつかないことだ。   ~な     危ない!そのスイッチに触るな。     このことは決して誰にも言うな。   ~べきだ     約束は守るべきだ。     自分のことは自分でするべきだ。  △~べきではない     守れない約束をするべきではない。     弱い者いじめをするべきではない。 4、 「原形(辞書形)」と名詞に接続する文型   ~前に     寝る前に歯を磨きなさい。     食事の前に手を洗う。   ~まで/~までに     帰ってくるまで待ちましょう。     五時まで仕事です。 ◆     お客が来るまでに掃除をしなさい。     夕食までに帰ってください。   ~(の)に     ワープロは文章を書くのに便利だ。     たばこは健康によくない。   ~ために<目的>     車を買うために貯金する。     受験のために上京した。   ~度に     見る度に美しくなるね。     彼は試験の度に慌てている。 5、 [ない]形に接続する文型   ~ないで/△~ずに     朝ご飯を食べないで(・ずに)、会社に行った。     宿題をしないで(・せずに)、遊びに行った。   ~なくて     朝起きられなくて、遅刻した。     旅行に行けなくて、残念だ。   ~ないでください     そんなに怒らないでください。     人には話さないでください。   ~なければならない     行かなければならない。     性能がよくなければならない。     食品は安全でなければならない。     保証人は日本人でなければならない。   ~なくてもいい/△~なくてもかまわない     言いたくなければ、言わなくてもいい。     品質がよければ、安くなくてもいい。     部屋はきれいでなくてもいいです。     保証人は日本人でなくてもいい。   ~なくなる     脂っこい物が食べられなくなった。     この店の料理は最近おいしくなくなった。     日本は以前のように安全ではなくなった。  △~ないで(は)いられない/~ずに(は)いられない     おかしくて笑わないでは(・ずには)いられなかった。     これが怒らないで(・ずに)いられましょうか。     タバコを吸わないでは(・ずには)いられなくなる。 6、 「原形(辞書形)/ない形」に接続する文型   ~と     春になると、暖かくなる。     その角を右に曲がると、駅があります。     謝らないと、許さない。     暖かくないと、おいしくない。   ~ことがある     今もその店に時々行くことがある。     朝ご飯を食べないことがある。   ~つもりだ     彼女と結婚するつもりだ     彼女とは結婚しないつもりだ   ~ように     わかるように、話してください。     忘れないように、メモを取る。   ~ようにする     できるだけ間に合うようにする。     失敗しないようにする。 ◆     復習するようにしてください。     遅刻しないようにしてください。   ~ようになる     日本語が話せるようになった。     彼は酒を飲まないようになった。   ~ことになる     転勤することになった。     会議は開かないことになった。  △~ことになっている     明日、彼に会うことになっている。     この件は話せないことになっている。   ~ことにする     タバコをやめることにした。     彼には言わないことにした。  △~ことにしている     毎朝6時に起きることにしている。     お酒は飲まないことにしている。  △~に越したことはない     お金はあるに越したことはない。     値段は安いに越したことはない。 7、 「て形」に接続する文型   ~て     歯を磨いて寝た。     再会を約束して別れた。 ◆     歩いて行こうよ。     タクシーに乗って帰った。\ ◆     彼は背が高くてハンサムだ。     夫がギターを弾いて、妻が歌った。 ◆     悔しくて、涙が出た。     難しくて、わかりません。 ◆     落ち着いて話しなさい。     泣いて謝った。   ~てから     中身を見てから買う。     買ってから、偽物とわかった。   ~ても     雨が降っても行く。     いくら高くても買う。     交通が不便でも静かな所がいい。     日曜日でも働く。   ~てください/~ていただけませんか…     静かにしてください。     静かにしてくれ。     静かにしてくれませんか。     静かにしてもらえませんか。     静かにしてくださいませんか。     静かにしていただけませんか。   ~てもいい/△~てもかまわない     明日、休んでもいいですか。     品物は古くてもいい。     料理は下手でもいい。     いつでもかまいません。   ~てはいけない/△~てはならない     ここで写真を撮ってはいけない。     ここに駐車してはいけません。     人の不幸を笑ってはならない。   ~ている     今、テレビを見ている。     今、食事をしている。 ◆     毎日パチンコばかりしている。     彼はいつも遅刻している。 ◆     椅子が壊れている。     人が死んでいる。  △~て(は)いられない     試験が近いので、遊んではいられない。     心配でじっとしていられない。   ~てくる     お酒を買って来る。     雨が降ってきました。     これまでこの子を育ててきた。     日本の生活に慣れてきた。   ~ていく     傘を持って行く。     ろうそくの火が消えていった。     これからだんだん暑くなっていきます。     これからもこの子を育てていく。   ~てしまう/~てしまった     仕事は今日中にやってしまおう。     一人で全部食べてしまった。 ◆     うっかり財布を落としてしまった。     つい大声で怒ってしまった。   ~ておく     明日の準備をしておく。     もう彼に伝えておきましたか。 ◆     そのままにしておいてください。     子供を外で遊ばせておく。   ~てある     壁にカレンダーがかけてある。     花瓶に花が飾ってある。 ◆     明日のことは連絡してある。     試験に必要なことは全部教えてある。   ~てほしい     このことを彼に伝えてほしい。     君に助けてほしいことがある。   ~てみる     おいしいかどうかは食べてみればわかる。     できるかどうか、やってみます。   ~てあげる/~てやる/~てさしあげる     友だちに英語を教えてあげる。     弟に英語を教えてやる。     先生に英語を教えてさしあげる。   ~てくれる/~てくださる     妻が写真を送ってくれた。     先生が写真を送ってくださった。   ~てもらう/~ていただく     母に辞書を買ってもらった。     先生に辞書を買っていただいた。   ~てたまらない     うれしくてたまらない。     心配でたまらない。   ~てしかたがない     さびしくてしかたがない。     不安で仕方がない。 8、 「た形」に接続する文型   ~ことがある     一度、富士山に登ったことがある。     見たことも聞いたこともありません。  △~ものだ     子供の頃、よくこの川で釣りをしたものだ。     昔の父親はもっと怖かったものだ。   ~たり~たりする/~たり~たりだ     飲んだり歌ったりした。     変な男が行ったり来たりしている。 ◆     テレビは見たり見なかったりです。     野菜の値段は高かったり、やすかったりだ。   ~たら     ボーナスが出たら、パソコンを買う。     言いたくなかったら、言わなくてもいい。     高くなかったら買うが、高かったら買わない。     雨だったら中止です。   ~たらどう/~たらいかが     疲れているときは、ゆっくり休んだらどう?        弁護士に相談したらいかがですか。   ~たらいい     嫌なら断ったらいい。     新宿駅にはどう行ったらいいですか。   ~後で     食事をした後で歯を磨く。     食事の後で歯を磨く。<Nーの>   ~通りに     私が言ったとおりにしなさい。     噂に聞いたとおり、美しい町ですね。     計画の通りになった。<Nーの>  △~きり~ない     アメリカに行ったきり、帰ってこない。     部屋に閉じこもったきり、出てこない。 9、 「た形/原形(辞書形)」に接続する文型   ~ばかりだ     空港に着いたばかりだ。     先月、日本に来たばかりです。 ◆     バスは出発するばかりなのに、彼はまだ来ない。     食事は食べるばかりになっている。   ~まま     座ったまま話す。     そのまま動かないでください     野菜を生のまま食べる。<Nーの> ◆     足の向くまま、気の向くまま旅をしたい。     命令されるままに動く。 10、 「た形/ない形」に接続する文型   ~方がいい     彼に言った方がいい。     彼には言わない方がいい。     値段は安い方がいい。     今日より明日の方がいい。 11、 「原形(辞書形)/ている形/た形」に接続する文型   ~ところだ     これから食べるところだ。     今、食べているところだ。     たった今、食べたところだ。 12、 「仮定形」に接続する文型   ~ばいい     必要な物は買えばいい。     嫌なら、しなければよい。  △~ば~ほど     考えれば考えるほどわからなくなる。     見れば見るほどいい女だ。     値段は安ければ安いほどいい。 13、 「意向形」に接続する文型   ~(よ)うと思う     僕は会社を辞めようと思う。     彼はどうしようと思っているんでしょうね。  △~(よ)うとする     乗ろうとしたが、乗れなかった。     お風呂に入ろうとしたら、電話がかかってきた。  △~(よ)うではないか     みんな、そろそろ帰ろうじゃないか。     同志諸君、今こそこの悪政を打倒しようではないか。  △~(よ)うにも~られない     硬くて、食べようにも食べられなかった。     疲れていて、朝、起きようにも起きられなかった。 14、 「使役形に接続する文型   ~(さ)せてください     この仕事は私にやらせてください。     店長、明日休ませていただけませんか。  △~(さ)せておく     やりたいようにやらせておけ。     このまま寝させておきましょう。  △~(さ)せてしまった     胃薬の代わりに、下剤を飲ませてしまった。     彼を怒らせてしまった。 15、 普通形に接続する文型 <助詞関係> ・ 時に関係する文型   ~とき      <ナ形ーな/Nーの>     京都に行ったとき、この写真を撮った。     お金がないとき、どうしますか。     暇なときはテレビを見る。     子供のとき、沖縄に住んでいた。   ~間/~間に   <ナ形ーな/Nーの/動作動詞「ている」>     夏休みの間、ずっと旅行していた。     日本にいる間、東京に住んでいた。 ◆     留守の間に、泥棒が入った。     子供が寝ている間に、買い物に行ってくるわ。     しばらく見ない間に大きくなったね。   ~うち/~うちに <ナ形ーな/Nーの/動作動詞「ている」>     中華料理は熱いうちがおいしいよ。     仕事が終わらないうちは、家に帰れない。 ◆     鉄は熱いうちに打て。     本を読んでいるうちに、眠くなった。     冷めないうちに食べてください。 ・ 原因・理由に関係する文型   ~から      <ナ形ーだ/Nーだ>&<ます形>     太るから、甘いものは食べない。     その牛乳は古いから、飲んではいけない。     日曜日だから、家にいるだろう。     親が子供を叱るのは可愛いからだ。   ~ので      <ナ形ーな/Nーな>     疲れたので、早く帰って寝ます。     物価が高いので、生活が大変だ。     この魚は新鮮なので、おいしいよ。     彼は嘘つきなので、信じられない。   ~し       <ナ形ーだ/Nーだ>     映画も見たし、食事もした。     この店は安いし、おいしい。     彼女は美人だし、頭もいい。     お金もないし、どこへも行けない。   ~ために     <ナ形ーな/Nーの/動詞≒「た形」>     事故があったため、電車が遅れた。     雨が降らないため、水不足になった。     交通が不便なため、発展が遅れている。     台風のため、電車がストップした。  △~おかげで    <ナ形ーな/Nーの/動詞≒「た形」>     誰のおかげで、生活できていると思っているんだ。     合格できたのは先生のおかげです。     毎日練習したおかげで、会話力が上手になった。     教え方が丁寧なおかげで、落ちこぼれは一人もいない。  △~せいで     <ナ形ーな/Nーの/動詞≒「た形」>     熱のせいで、頭がふらふらする。     失敗したのは、君のせいだ。     食べ過ぎたせいで、お腹が痛くなった。     味が悪いせいで、お客が来ない。  △~せいで     <ナ形ーな/Nーの/動詞≒「た形」>     熱のせいで、頭がふらふらする。     失敗したのは、君のせいだ。     食べ過ぎたせいで、お腹が痛くなった。     味が悪いせいで、お客が来ない。  △~せいで     <ナ形ーな/Nーの/動詞≒「た形」>     熱のせいで、頭がふらふらする。     失敗したのは、君のせいだ。     食べ過ぎたせいで、お腹が痛くなった。     味が悪いせいで、お客が来ない。  △~からには    <ナ形ーだ/Nーだ・である>     学生であるからには、勉強しなければならない。     こんなに安いからには、きっと偽物に違いないよ。     共同生活をするからには、最低限の規則が必要となる。     闘うからには勝ちたいと思う。 ・ 仮定に関係する文型   ~なら       <ナ形ー×/Nー×>     部屋を借りるなら、静かな部屋がいい。     嫌なら嫌だとはっきり言いなさい。     安いなら、買ってもいいよ。     明日なら、私も時間が取れます。  △~んだったら    <ナ形ーな/N+だったら>     結婚するんだったら、優しい人がいい。     知らないんだったら、知らないと言えばいい。     欲しいんだったら、あげるよ。     明日だったら、都合がいいです ・ 逆説に関係する文型   ~が/~けれども <ナ形ーだ/Nーだ>&<ます形>     旅行をしたいが、暇がない。     この店は安いけれども、味が悪い。     彼女は美人だが、心が冷たい。   ~のに      <ナ形ーな/Nーな>     こんなに働いているのに、お金が残らない。     自分が悪いのに、彼は謝らない。     日曜日なのに、出勤しなければならない。  △~くせに      <ナ形ーな/Nーな>     知っているくせに、教えてくれない。     知らないくせに、知っているふりをしている。     女のくせに、料理も作れない。 ・ 引用に関係する文型  △~って      <ナ形ーだ/Nー(だ)>     本日休業って書いてあった。     田中さんって方から、電話がありましたよ。     李君が帰国したって、ほんとうですか。     彼、国に帰るんだって。   ~か       <ナ形ー×/Nー×>     いつ始まるか、わかりませんね。     どうしたらいいか、教えてください     李さんがどんな人か知りません   ~かどうか  <ナ形ー×/Nー×>     間に合うかどうか、わからない。     おいしいかどうかは、食べたらわかる。     息子が無事かどうか、心配だ。 ・ 例示・選択に関係する文型  ~とか~とか  <ナ形ー×/Nー×>     お茶とか蜜柑とかが、この町の特産です。     いいとか悪いとか、みんな色々言っている。  △~やら~やら  <ナ形ー×/Nー×>     お茶やら蜜柑やら、いろんな物がとれます。     歌うやら踊るやら、大騒ぎだった。  △~なり~なり  <ナ形ー×/Nー×>     お茶なりコーヒーなり、お好きな物をどうぞ。     死ぬなり生きるなり、勝手にすればいい。 <助動詞関係> ・ 引用に関係する文型   ~と思う     <ナ形ーだ/Nーだ>     彼女は結婚していると思う。     彼は知らないと思う。     明日は雨だと思う。   ~と言う     <ナ形ーだ/Nーだ>     彼は駅で待っていると言った。     彼はこの店は高いと言った。     彼は日曜日は暇だと言った。   ~と言っていた     <ナ形ーだ/Nーだ>     田中さんが電話をくれと言ってよ。     田中さんが、駅で待っていると言っていたよ。   ~そうだ     <ナ形ーだ/Nーだ>     天気予報によると、台風が来るそうだ。     李さんは元気だそうだ。     彼女は独身だそうです。  △~とのことだ     <ナ形ーだ/Nーだ>     噂によると、近く人事異動があるとのことだ。<伝聞>     田中さんから、電話して欲しいとのことでした。<伝言> ・ 推量に関係する文型   ~だろう     <ナ形ー×/Nー×>     明日はたぶん晴れるだろう。     彼はきっと元気だろう。     明日の運動会は中止でしょう。\   ~かもしれない  <ナ形ー×/Nー×>     午後から雨になるかもしれません。     今度の試験は難しいかもしれない。     熱があるから、風邪かもしれない。   ~はずだ     <ナ形ーな/Nーの>     彼は知っているはずだ。     彼は知らないはずだ。     そこは交通が便利なはずです。     予定は明日のはずだ。  △~はずだった   <ナ形ーな/Nーの>     うまくいくはずだったが、失敗した。     明日のはずだったが、予定をあさってに変更する。     こんな原発事故は起こらないはずだったが、しかし・・・   ~ようだ     <ナ形ーな/Nーの>     誰か来たようだ。     少し熱があるようですね。     まるで夢のようです。   ~らしい     <ナ形ー×/Nー×>     彼はもう帰ったらしい。     彼は魚が好きじゃないらしい。     その話はほんとうらしいです。 ・ 断定や確信・納得に関係する文型   ~んだ/~のだ  <ナ形ーな/Nーな>     どうして来なかったんですか。     妻が病気なんです。   ~ものだ     <ナ形ーな>  普遍傾向・義務・感嘆     人間は死ぬものだ。     誰にとっても自分の子供は一番可愛いものだ。 ◆     年上には敬語を使うものだ(・べきだ)。     人の陰口を言うものではない(・べきではない)。 ◆     故郷とはいいものだなあ。     あの男にも困ったものだ。  △~わけだ     <ナ形ーな>     おいしいわけだよ。一流コックが作ったんだから。     そんなことを言ったら、彼が怒るわけだ。  △~わけがない   <ナ形ーな>     仮名も読めないのに、日本語が上手なわけがない。     君にできて、僕にできないわけがない。   ~はずがない   <ナ形ーな/Nーの>     彼にできるはずがない。     担当者の君が知らないはずがない。  △~に違いない   <ナ形ー×/Nー×>     何かあったに違いない。     彼女は独身に違いない。  △~に決まっている <ナ形ー×/Nー×>     無理をすれば、体を壊すに決まっている。     日曜日は市役所は休みに決まっている。 ・ 婉曲や部分否定に関係する文型  △~わけではない   <ナ形ーな>     お金持ちが誰でも幸せだというわけではない。     彼のことが嫌いなわけではないんだけど、でも・・・  △~とは限らない   <ナ形ー(だ)/Nー(だ)>     才能がある者が必ずしも成功するとは限らない。     人生、いつもうまくいくとは限らない。 16、 よく使う複合格助詞(名詞接続)   ~について/~に関して     日本について(・関して)、どう思いますか。     この件については(・関しては)何も申し上げられません。   ~にとって     私にとって家族が一番大切です。     これは君にとって二度とないチャンスだよ。   ~に対して     親に対して反抗する。     お客に対しては丁寧な言葉を使いなさい。   ~として     教師として君に忠告する。     彼は事業家としても父親としても立派だ。   ~によると     天気予報によると、明日雨が降るそうだ。     噂によると、Aさんは部長に昇進するらしい。  △~によって     人によって考え方が違う。     農作物の取れ高は天候によって左右される。 ◆     話し合いによって(・で)決めよう。     武力による(・での)国際紛争解決は肯定できない。 ◆     地震によって(・で)、多くの家が倒壊した。     交通事故によって(・で)、毎年多くの人が死んでいる。 ◆     法律によって(・で)罰する。     校則によって(・で)、長髪は禁止されている。 ◆     アメリカ大陸はコロンブスによって発見された。     宗教によって救われる人々も多い。  △~を通して     友だちを通して、今の妻と知り合った。     経験を通して得た知恵は、書物を通して得た知識に勝る。  △~をめぐって     親の遺産をめぐって、兄弟が争った。     原発の賛否をめぐって、議論が白熱した。 17、 よく使う副助詞   ~だけ     今日だけ特別に許可しましょう。     私が信じられるのはあなただけです。 ◆     できるだけがんばります。     食べたいだけ食べてください。  △~ばかり     毎日麻雀ばかりしている。     僕が持っているものは安物ばかりだ。   ~だけでなく~も/~ばかりでなく~も     子供だけでなく(・ばかりでなく)、大学生もテレビゲームに夢中だ。     僕だけでなく(・ばかりでなく)、クラスのみんなが反対している。   ~こそ     「どうもすみません」「いいえ、こちらこそ」     これこそ私が長年探していた物だ。   ~しか~ない     千円しかお金がありません。     これは私しか知らない話です。     若いときは一度しかありません。  △~しかない     <V原形>     もう諦めるしかありません。     雨なので、登山は中止するしかない。  △~さえ     そんなこと、三歳の子供(で)さえ知っている。     新聞を読む暇さえない。  △~さえ~ば     お金さえあれば、何でも買える。     努力さえすれば、必ず合格できる。  △~ほど(・ぐらい)     涙が出るほど(・ぐらい)うれしかった。     死ぬほど(・ぐらい)苦しみました。  △~ぐらい(×ほど)     食事の前には、手ぐらい(×ほど)洗いなさい。     せめて電話の一本ぐらい(×ほど)ください。   ~ほど~ない     東京は北京ほど(×ぐらい)寒くない。     この仕事は外から見るほど(×ぐらい)楽ではない。  △~ほど(・ぐらい)~はない     自分の家ほど(・ぐらい)いいところはない。     命ほど(・ぐらい)大切なものはない。 18、 その他のよく使われるもの   ~がする      <Nー五感の対象物ー>     味(音/声/音/気/寒気…)がする。     なんとなく嫌な予感がする。   ~をしている    <Nー色・形・職業ー>     医者をしている。     美しい色をしている。     楕円形をしている。   ~がる       <感情形容詞[ーい/ーな]>     合格したので、彼女はうれしがっていた。     成績が一番だったので、彼は得意がっている。 ◆     人の持っている物を何でも欲しがる性格。     老人は誰でも昔を懐かしがる。  △~らしい      <N/V[ます]>     子供らしい子供     男らしい男  △~っぽい      <N/V[ます]>     最近疲れっぽくなった。     彼は怒りっぽい性格だ。     子供っぽい考え方だ。  △~がちだ      <N/V[ます]>     疲れているときは失敗しがちだ。     これは子供にありがちの病気です。     私は子供のころ病気がちだった。  △~ふりをする    <Nの/V・形の普通形>     男のふりをする。     寝たふりをする。     忙しいふりをする。     知っているのに知らないふりをする。 <資料3> よく使う口語文型一覧 1、 って <←と/という/というのは>   僕は劉って言います。  <←と>   李君は行くって言ってた。<←と>   男って馬鹿ね。     <←というのは>   李さんって方から電話よ。<←という> 2、 じゃ <←では>   じゃ、また明日。     <←では>   これ、私の本じゃないよ。 <←ではない>   おい、雨じゃないか。   <←ではないか>   あれは李さんじゃない?  <←ではない?> 3、 んだ <←のだ>   この本は僕んだ。     <←のだ>   どうしたんですか。    <←のですか>   急いでいるんですが、~  <←のですが>   どうしたんでしょうか。  <←のでしょうか> 4、 んじゃない <←のではない>   泣くんじゃない。     <←のではない>   少し高いんじゃないか。  <←のではないか>   帰ったんじゃない?    <←のではない?>   決して人に言うんじゃない。<←のではないよ> 5、 ちゃ/じゃ <←ては/では>   食べては寝、寝ては食べ。 <←ては=反復>   遅刻しちゃいけない。   <←てはいけない>   死んじゃいけない。    <←ではいけない>   この箱を開けてはならない。<←ではならない>   急がなくちゃ遅刻するよ。 <←なくては> 6、 なきゃ/なけりゃ <←なければ>   君がやらなきゃ誰がする? <←なければ>   言わなけりゃいいさ。   <←なければ>   やらなきゃならない。   <←なければならない>   行かなけりゃなんない。  <←なければならない> 7、 たって/だって <←ても/でも>   いくら言ったって無駄だ。 <←ても>   急いだって間に合わない。 <←でも>   見たっていいよ。     <←てもいい>   明日だっていい。     <←でもいい>   怒らなくたっていい。   <←なくてもいい>   だって嫌いなんだもの。  <←でも> 8、 て形接続の助動詞 ・ てる/でる <←ている/でいる >   あそこに座ってる人、誰? <←ている>   鳥が空を飛んでる。    <←でいる>   最初から知ってたよ。   <←ていた>   子どもが公園で遊んでた。 <←でいた> ・ とく/どく <←ておく/でおく>   僕から伝えとくよ。    <→ておく>   今日、この資料を読んどく。<→でおく>   あの話、彼に伝えといた。 <→ておいた>   私に任せといてください。 <→ておいて>   部屋を掃除しとけ。    <→ておけ(男)> ・ ちゃう/じゃう <←てしまう/でしまう>   食べないと腐らせちゃうわ。<→てしまう>   これ以上殴ると死んじまう。<→でしまう>   しまった。忘れちゃった。 <→てしまった>   もう読んじゃったよ。   <→でしまった> 9、 かなぁ/かしら <≒だろうか>( 「~かなぁ」は男女兼用、「~かしら」は女言葉。)   明日晴れるかなぁ。   どうすればいいかなぁ。   彼、来るかしら。 10、 かい?/だい? <≒ですか/ますか>(男言葉で、疑問詞を含む疑問文では「~だい?」、疑問詞を含まない疑問文では「~かい?」が原則)   これは君のカメラかい?   君も食べるかい?   今、何時だい?   先生はどんな人だい?   どうしてこんな失敗をしたんだい? <資料4> よく使う接続詞の機能別一覧  日常会話でよく出てくる接続詞を機能別に取り上げました。接続助詞は「そして/それから/それで…」のように接続助詞に指示語「そ」がついた形や、「だから/だが/すると…」のように接続部をそのまま取り出して接続詞化したものが多く、その場合、意味も用法もそのまま受け継がれます。 1、順接の接続詞 (1) 原因・理由   だから     午後から雨らしい。だから、傘を持って行った方がいいよ。   それで     昨日は飲み過ぎた。それで、今日は二日酔いだ。   そのために   JRで事故があった。そのために、電車が遅れている。   その結果    毎日練習した。その結果、スキーが上手になった。   したがって   本日は講師が休みだ。したがって、休講になった。 (2) 時・条件・場面   それから      お風呂に入った。それから、寝た。   すると       カーテンを開けた。すると、外は雪が降っていた。   そこで       玄関のベルが鳴った。そこで、私はドアを開けた。   では/じゃ     では、私はこれで失礼します。   それでは/それじゃ 「暑いね」「それじゃ、クーラーをつけよう」   それなら      「道路が渋滞だそうだ」「それなら、電車で行こう」   だったら      食べないの?だったら、 僕がもらうよ。 (3) 相手の話を聞き出す   それで     「昨日が合格発表の日だったんだ」「それで、どうだった?」   それから    ね、それから、どうしたの? 2、逆説の接続詞 (1) 一般的な逆説   しかし     彼は勉強ができる。しかし、スポーツは全然駄目だ。   けれど(も)  この製品は安い。けれども、品質が悪い。   だけど     パソコンを買いたい。だけど、金がない。   だが      10時に会う約束した。だが、彼は来なかった。   でも      和食は好きです。でも、納豆はまだ食べられません。 (2) 予想外の結果   ところが    彼は強そうに見えた。ところが簡単に負けてしまった。   それが     午前中は晴れていた。それが午後から急に雨が降り出した。 (3) 原因・理由の逆説   それなのに     もう四月だ。それなのに、まるで冬のような寒さだ。   それにもかかわらず 彼は肝臓が悪い。それにもかかわらず、毎日酒を飲んでいる。   それにしては    「彼は大学生だそうだ」「それにしては漢字を知らないねえ」 (3) 条件の逆説   それでも    そこは非常に危険な場所です。それでも、行くんですか。   それにしても  「彼、遅れると言ってたけど」「それにしても、遅すぎるよ」 3、並立の接続詞   そして     とても明るく、そして、美しい女性だった。   および     この劇場内では飲食、および喫煙は禁止されている。   ならびに    ここに住所、氏名、ならびに電話番号を記入してください。   また      彼は政治家であり、また小説家でもある。   かつ      東京は政治の中心地であり、かつ経済の中心地でもある。 4、添加の接続詞   しかも     この靴は軽くて、しかも、丈夫だ。   それに     この店の料理は安いし、それに、とてもおいしい。   そのうえ    彼は成績もいい。その上、スポーツも万能だ。   それから    パソコンが欲しい。それから、車も欲しい。 5、選択の接続詞   それとも    コーヒーにしますか。それとも、紅茶にしますか。   あるいは    京都へ行くにはバス、あるいは新幹線が便利です。   または     ボールペンか、または万年筆で記入してください。   もしくは    日本語、もしくは英語でサインしてください。   ないしは    応募資格は大学卒業者、ないしはそれに準ずる者 6、説明の接続詞 (1) 補足説明に使う接続詞   ただし     いくら食べても無料です。ただし、制限時間は一時間です。   もっとも    明日の社会見学には全員参加してください。もっとも病気などの場合は別ですが。   なお      事件の概略は以上述べたとおりです。なお、詳細は資料を参照してください。   ちなみに    燃えるゴミは月曜日・木曜日に出してください。ちなみに、燃えないゴミの日は水曜日です。 (2) 理由を後で説明する接続詞   なぜなら    今は公表できない。なぜなら、まだ検討中だからだ。   というのは   今度の旅行には行けないんだ。というのはその日が息子の受験の日なんだ。   だって     「どうして食べないの」「だって、おいしくないんだもの」 7、話題転換の接続詞   ところで    もうすぐ今年も終わるね。ところで、正月は田舎へ帰るの?   さて      これで今日のニュースは終わります。さて、明日の天気ですが、・・・   そう言えば   そう言えば、李君、今どうしているんだろう?   それはそうと  今年の冬は寒いですね。それはそうと、娘さんの受験、もうすぐじゃありませんか。   それはさておき いろいろ話したいこともあるが、それはさておき、本題に入ろう。 <資料5> よく使う副詞の機能別一覧  日本人は話者の感情や態度、状態や程度などを伝えるために、かなり豊富に副詞を使っていますが、その中で日常会話でよく出てくる副詞を機能別に取り上げました。これ以外にも副詞はたくさんありますし、擬音語・擬態語を加えると更に多くなりますが、以下のものを覚えておけば日常会話や作文ではとりあえず支障は生じないでしょう。 1、断定「~だ/~する」と呼応する副詞   必ず      どんなことがあっても、必ず行きます。   絶対(に)    絶対に勝つ。   全く      全く同感だ。   もちろん    もちろんのことだ。   確かに     確かに受け取りました。 2、「~ない」や否定を意味する動詞と呼応する副詞 (1)全面否定   決して      これは決して高くない。   絶対(に)     私への反抗は絶対許さない。   全く       全く話にならなかった。   さっぱり     何のことか、さっぱりわからない。   まるで      そんな人はまるで知りません。   ちっとも/少しも ちっとも(・少しも)食べない。   一度も      彼女は一度も笑ったことがない。   全然       あんな男には全然関心がない。 (2)婉曲・部分否定   あまり     麺類はあまり好きではない。   たいして    試験はたいして難しくなかった。   それほど    それほど重要な問題ではない。   ろくに     うちの子はろくに勉強もしない。   めったに    このショーはめったに見られない。   必ずしも    金持ちが必ずしも幸せとは限らない。   あながち    彼の話はあながち嘘も言えない。   一概に     彼の意見も一概に否定できない。 (3)可能形「~(ら)れない/不可能を意味する動詞」と呼応   なかなか     人の名前がなかなか覚えられない。   とても      僕にはとても信じられない。   とうてい(到底) 今からではもう到底間に合わない。 3、推量の助動詞「だろう/かもしれない/はずだ」と呼応する副詞 (1)推量の助動詞と呼応するもの  1)「~だろう/~はずだ」「~と思う」などと呼応   たぶん     たぶん待っても来ないだろう。   おそらく    おそらく君には無理だろう。   そのうち    そのうち彼の考えも変わるだろう。   やがて     やがて収束に向かうだろう。   きっと     やればきっとできるはずだ。  2)「~かもしれない」と呼応   ひよっとすると ひよっとすると雨が降るかも知れない。   ひょっとしたら ひょっとしたら嘘がばれたかもね。   もしかしたら  もしかしたら転勤になるかもしれない。   もしかして   もしかして、  3)「~ないだろう」など否定推量と呼応   まさか     まさか君が犯人ではないだろうね。           まさか彼が知っているはずがないと思うが、・・・。 (2)「~のだろう/~ことだろう」(感嘆)などと呼応するもの   なんと     なんと今日は寒いんだろう。   なんて     なんて狡い人なんだろう。   どんなに    どんなに喜んだことでしょう。   どれほど    どれほど心配したことだろう。 4、「ようだ/そうだ/らしい」と呼応する副詞   今にも     彼女は今にも泣き出しそうな顔だった。   どうやら    どうやら風邪らしい。   どうも     その話はどうもほんとうのようだ。   いかにも    いかにも彼のやりそうなことだ。   まるで     まるで水を打ったような静けさだ。   さも      父はさも嬉しそうに笑った。   あたかも    今日はあたかも春のような暖かさだ。 ◆関連する副詞   なんだか    なんだか気味が悪い話だね。   なんとなく   なんとなく嫌な予感がするんだ。 5、完了形「~した」と呼応する副詞 (1)過去を表す副詞   (今)さっき   (今)さっき来たばかりだ。   たった今    僕も、たった今、来たところです。   この間     この間はどうも失礼しました。   もう      その件はもう連絡しました。   とっくに    子どもはとっくに寝ました。 (2)過去のことの推量   確か      確か通帳はタンスの中だったと思う。   てっきり    僕はてっきり冗談だと思っていた。 6、「~たい/~てください」(希望や依頼)と呼応する副詞   ぜひ         ぜひ遊びに来てください。   どうしても     どうしても勝ちたい。   なんとしても    何としても志望校に合格したい。   できれば/できたら できれば(・できたら)参加したい。   できるだけ     できるだけ早めに来てください。   どうか       どうかお許しください。   せめて       せめて利子だけでも払って欲しい。 7、「~てしまった」と呼応する副詞   つい      ごめん。つい朝寝坊してしまったんだ。   うっかり(して)うっかり約束を忘れてしまっていた。 8、「~ておく」と呼応する副詞   あらかじめ   あらかじめ準備しておくように。   事前に     事前に連絡した方がいいよ。   そのまま    窓はそのまま開けておいてください。 9、仮定や理由を表す助詞と呼応する副詞 (1)「~たら/~ば/~なら」と呼応するもの   もし      もし、お時間がおありでしたら。   仮に      仮に君が彼の立場だったら、どうした?   万一      万一火災が起こったら、この非常口から逃げてください。   もしも     もしも僕に羽があるなら、君のところへ飛んでいきたい。   一旦      一旦約束したら、必ず守る。   例えば     例えば君が僕の立場だったら、どうした? (2)「~ても」と呼応するもの   たとえ     たとえ嘘でも、ほめられれば嬉しい。   仮に      仮に彼の立場でも、同じことをした。   いくら/いかに いくら(・いかに)苦しくても、最後までがんばりなさい。   どんなに    どんなに努力しても、彼には勝てない。 (3)「~からには/~以上」と呼応するもの   一旦      一旦やると決めたからには、必ずやる。 10、その他の副詞の機能別整理 (1)回数を表す副詞   いつも     彼はいつも遅刻している。   いつでも    いつでも遊びに来てください。   しばしば    夜中にしばしば目が覚める。   たびたび    たびたびご迷惑をかけてすみません。   よく      最近、よく忘れ物をする。   ときどき    彼はときどきこの店に来ます。   たまに     彼にはたまに会うことがあります。   めったに~ない 彼女はめったに笑わない。 (2)数量を表す副詞   全部/全て   仕事は全部(全て)終わりました。   すっかり    山の雪もすっかり解けた。   たくさん    たくさん召し上がってください。   十分      時間はまだ十分あります。   あまり~ない  私はあまりお酒が飲めません。   少し/ちょっと ご飯が少し残っている。   ほとんど~ない 残り時間はほどんどありません。   全然~ない   お金が全然ない。   さっぱり~ない 今日は魚がさっぱり釣れない。 (3)時間の長さを表す副詞   いつまでも   いつまでも君のことを忘れない。   ずっと     君が来るのをずっと待っていたんですよ。   長らく     長らくお待たせしました。   しばらく    しばらくお待ちください。   少し/ちょっと ちょっと待ってください。   少々      少々お待ちください。  *「あまり~ない/ほとんど~ない/全然~ない」も時間を表す。 (4)順序を表す副詞   最初に     最初に自己紹介をしてください。   はじめに    はじめにお断りしておきますが、・・・   先ず      先ず、私から説明します。   先に      先に勉強を済ませなさい。   次に      次に校長からご挨拶をいただきます。   後で      後で連絡します。   終わりに    終わりに、みんなで乾杯しましょう。   最後に     最後に一言申し上げます。 (5)数量や程度を表す副詞  1) 高程度   非常に     これは非常に高価な品だ。   すごく     彼のことがすごく好きよ。   とても     とてもおいしいです。   実に      実に美しい。   大変      生活に大変困っている。   ほんとうに   ほんとうにすばらしい。   ずいぶん    ずいぶんできるようになったね。   よく      よく食べる人だね。  2) 中程度以上   なかなか    この作文はなかなかよく書けている。   かなり     かなり難しいテストです。   相当      相当がんばらないと、合格は無理だよ。  3) 低程度   まあまあ      今度の試験はまあまあだった。   どうにか/なんとか 今の給料で、どうにか(・なんとか)食べていけます。   たいして~ない   その映画はたいしておもしろくなかった。   それほど~ない   彼がいなくても、それほど困らない。   あまり~ない    あまりいい作品ではないですね。   ろくに~ない    忙しくて、ろくに新聞も読めない。   全然~ない     全然わからない。 (6)比較を表す副詞   ずっと     北京は東京より、ずっと寒い。   むしろ     あんな男と結婚するぐらいなら、むしろ死んだ方がいい。   まして     大学生に解けない。まして子供に解けるはずがない。 ◆   もっと     もっと早く走れ、もっと高く跳べ。   更に      寒さは更に厳しくなるでしょう。           風に加えて、更に(・その上)雨まで降ってきた。   一層      今後一層努力いたします。   なお/なおさら やすいなら、なお(・なおさら)いい。   よけいに    「するな」と言われたら、よけいにしたくなる。 (7)状態変化や発生を表す副詞  1) 自然・無意識の行為   ひとりでに      子どもは母語をひとりでに身につける。   自ずと        年を取れば自ずとわかる。   いつのまにか     いつのまにか、日が暮れていた。   なんとなく      なんとなく嫌な予感がする。   知らず知らずのうちに 知らず知らずのうちに。年をとる。   思わず        思わず「あっ」と叫んだ。   つい         つい大声を出してしまった。  2) 事態の接近、将来の発生   今にも     今にも雨が降り出しそうだ。   もうすぐ    もうすぐ春ですねえ。   まもなく    間もなく電車が到着しますよ。   そろそろ    そろそろバスも来るころだ。   そのうち    そのうち雨もやむだろう。 ◆   やがて     やがて君も人の親になる。   いずれ     隠しても、いずれわかることだ。   遅かれ早かれ  遅かれ早かれ、君にもわかる日がくる。  3) 徐々の変化   少しずつ    日本のことが少しずつわかってきた。   しだいに    風雨はしだいに激しさを増した。   じょじょに   勉強がじょじょに難しくなっていく。   だんだん    だんだん寒くなる。  4) 急激な状態変化   にわかに    病状がにわかに悪化した。   たちまち    その品はたちまち売り切れた。   あっという間に あっという間に殴り倒された。  5) 突発事態の発生   急に      その子は急に泣き出した。   突然      突然停電し、真っ暗になった。   不意に     不意にバスが急停車した。   いきなり    彼はいきなり私に殴りかかった。   とっさに    石が飛んで来たので、とっさに身を避けた。 (8)行為・意志表現と結びつき、「すぐ」を表す副詞   すぐ(に)    すぐに実行しなさい。   ただちに    ただちに行動に移れ。   早速      早速持ってまいります。   さっさと    さっさと歩け。   至急      至急それを取り寄せてください。   早急に     早急に連絡をとります。 (9)結論・結果を述べる時に使う副詞  結局       この世の中、結局、金だ。   いずれにせよ  いずれにせよ、これは君の責任だ。   どうせ     どうせ失敗するに決まっている。 ◆   さては     最近きれいになったけど、さては恋人でもできたかな。 (10)期待していたことの実現を表す副詞   ついに       やった、やった、ついにやった!   やっと       やっと就職先が決まった。   ようやく      ようやく締め切りに間にあった。   なんとか/どうにか なんとか(・どうにか)窮地を切り抜けた。   いよいよ      いよいよ受験のシーズンが始まる。 (11)予想・想像と一致した時に使う副詞   やはり     やはりやめたほうがいいよ。   なるほど    東京は、なるほど物価が高い。   さすが(に)  さすがに元プロ、うまいもんだ。   相変わらず   相変わらずお美しいですね。 (12)言い換えや例示の副詞   つまり     日本の首都、つまり東京   すなわち    唐の都、すなわち長安。   要するに    要するに君は反対なんだね。 ◆   例えば     マスコミ、例えばテレビや新聞などは・・・。 (13)喩えを表す副詞   まるで     まるで夢のような話だ。   さも      さも知っているかのようなふりをする。   あたかも    今の資本主義社会はあたかも戦場のようだ。   いわゆる    会社のためにせっせと働く日本人、いわゆる「働き蜂」は最近では減ってきている。   いわば     パソコンは、いわば便利な文房具のようなものだ。 (14)最初の状態を表す副詞   元々      駄目で元々、やれるだけやってみるさ。   本来      あの人は本来気の弱い人だ。   そもそも    それがそもそも失敗のもとだ。 (15)不本意を表す副詞   つい      つい嘘をついてしまった。   うっかり    うっかり秘密をしゃべってしまった。   いやいや    いやいや引き受けた。   しかたなく   しかたなく引き返した。   あいにく    あいにく主人は留守にしておりまして。 (16)真面目な態度を表す副詞   一生懸命      一生懸命やったのに・・・・   ひたむきに/一心に ひたむきに(・一心に)研究に打ち込む。   必死に       必死に働いた。   せっせと      せっせと手紙を書いている。 (17)特定の事物や行為を選択するとき使う副詞   特に      今年の夏は特に暑い。   とりわけ    今日はとりわけ寒いですね。   何より     僕は何より刺身が大好物です。   敢えて     敢えて危険を冒す。           敢えて行けとは言わない。 (18)努力や故意・強制を表す副詞   わざわざ     わざわざ来てくれて、ありがとう。   せっかく     せっかく辞典を買ってやったのに、使わない。   わざと      知っているのに、わざと知らないふりをする。   無理に/無理矢理 無理矢理やらされた。   強いて      強いて言えば、彼の方がやや勝る。
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-5-3 18:00:51 | 显示全部楼层
ほんとうにいいものですね、どうもありがとうございました。
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-5-25 22:12:09 | 显示全部楼层
LZ你太伟大了.
回复 支持 反对

使用道具 举报

您需要登录后才可以回帖 登录 | 注~册

本版积分规则

小黑屋|手机版|咖啡日语

GMT+8, 2024-4-29 15:00

Powered by Discuz! X3.4

© 2001-2017 Comsenz Inc.

快速回复 返回顶部 返回列表