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浅草公园 芥川龙之介

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发表于 2006-5-15 12:40:17 | 显示全部楼层 |阅读模式
  浅草公园
剧本
芥川龙之介
1
浅草仁王门,门中吊着从不点亮的大灯笼.视线下移,熙熙攘攘的店面出现于视野之中.画面上只有大灯笼的下半截.门前是无数的闲散鸽子.
2
通过雷门望向那条商店街.遥远的正面就是仁王门.树木尽枯,死气沉沉.
3
长街的一端,走来一对父子.父亲身着长衣,儿子才十二三岁,两个慢慢逛街.儿子时常脱开父亲的手掌,立于玩具店前入神赏玩.父亲因此不时斥责于他.可是,偶尔,他也会不顾孩子,仔细地注视着帽子店的橱窗.
4
视野中是两父子的上半身.父亲一身农民装束,一把没修过的乱糟糟的胡子.孩子却并不可爱,但有些可怜.他们的背后是人来人往的店家.而他们正向这边走来.
5
斜视那家玩具店.少年正立于店前,入神地赏玩着在绳上翻来覆去的玩具猴子.看不见玩具店中有人招呼生意.镜头中少年只能见到膝盖以上的样子.
6
特写正在翻腾的玩具猴子.猴子穿着长尾的燕尾服,丝制的帽子向后歪扣在头上.绳子和猴子的背景是一片黑暗.
7
镜头切换至玩具店的另一侧.那少年突然发现父亲已不在身边,开始睁大眼睛四下张望.突然好象看到对面有什么东西,一溜烟地跑过去.
8
镜头切换至父亲的背影.但视野中也只有膝盖以上的部分.少年慌忙追上父亲,死死地抓住父亲的衣袖.可是那受回过头来的面孔偏偏不是父亲.是一个胡子修整得很漂亮的绅士.少年的脸上显出失望与迷惑的表情.绅士没有理会少年,一个人走远.少年的背后是远处的雷门,一个人呆呆地佇立于街头.
9
再次出现父亲一样的背影.但是这次只有上半身.少年再次追向这个男人.接着就是战战兢兢的投头上望.他们两个的对面就是仁王门.
10
镜头对准这次的男人.他戴着口罩,长相与其说是人,不如说是动物.他的微笑,令人毛骨悚然.
11
在长街的一端,少年目送着这次的男人的离去.他已走投无路,呆呆佇立.四面望去,全无父亲的踪迹.少年若有所思,开始毫无目的的乱转.全然不觉有两个身着洋服的少女正回头看着他.
12
现在是眼镜店的橱窗.近视镜,远视镜,放大镜,显微镜,风镜等等琳俩满目.展示架中有一尊西洋头像,戴着眼镜面现笑容.在窗前佇立的少年只现出背影,镜头升起,少年的身影只现出上半身.那尊头像突然变成真人的头颅.不但如此,竟开始对少年说起话来.
13
"买副眼镜吧.要找到爸爸就只要买副眼镜就可以的."
"我眼睛没有问题的."
14
视线斜向投入工艺花店的橱窗.各种工艺花都盛开在竹制或是陶艺的花壶中.其中最显眼的是放置于左侧的卷丹草.橱窗的玻璃上倒映出少年的上半身.那依稀的身影仿佛只是一个鬼魂.
15
视野中是隔着玻璃注视着工艺花的少年的上半身.少年把手放在玻璃上贴近观看.呼出的哈气令他的脸渐渐模糊点染开来.
16
特写橱窗中的卷丹草之花,但那后面的背景却是一片黑暗.花朵之下垂头的花蕾却依次开始绽放.
17
"好好欣赏我的美丽吧"
"可是,你却只是假的花朵"
18
从角落里望向烟叶店的橱窗.装烟末的铁罐,雪茄的木盒.并排陈列的烟管.其中放置着的卡片上面写着[烟草的烟幕将打开天国之门].然后中,从烟管中慢慢升起烟来.
19
在已是満布烟云的橱窗的正面.少年站在画面的右侧.但亦只是膝盖以上的部分.在烟云中,三座城堡开始渐渐升起.升起的城堡模型正是烟标上所绘的样子.
20
三座城中的一座被定格.城门口有一个城卒单人持枪站定守位.铁格城闸的外面几棵棕榈树正随风摇曳.
21
那座城门上方,不知从何时起开始浮现出这样的文字起来.
"进入此城,即为英雄"
22
少年正信步向这里走来.烟草店的橱窗正位于少年的背后,少年蓦地转身回视,然后继续前行.
23
钟楼内只见吊钟.不知是谁的手正牵引着撞木的绳子.徐徐地开始敲钟.一次,两次,三次.钟楼外只见一片松林.
24
接下来映入眼帘的是气枪游戏摊.目标的事面堆着纸烟箱.前面排放着卡通人像.面前是一排气枪.人像之中的一个被放大,是个长裙持扇的洋装女人.少年怯生生的走进店里,抬起一支气枪随便地射击起来.店内无人出现,少年的样子只可见到膝盖以上的部分.
25
特写那个洋装女人的纸片人像.纸人静静的打开扇子,轻掩秀面.接着只见软木的子弹击中纸人.纸人倒天倒下.其后面只是一片黑暗.
26
还是刚才的那家店面.少年抬着枪.专心地瞄准.三枪,四枪,五枪.但却无一中的.少年磨磨蹭蹭地付了点零钱.然后走了出去.
27
开始时只是暮色中显现模糊的四方形东西.但那四方形物体中突然有电灯亮起.于是有两排字被看见.上一排字为公园六区,下一排为夜间警署
一为黑地白字,一为黑地红字.
28
现在是剧院的上半层.有一个窗口正闪动着火光.在装设排水管的墙上,全是曾经贴过的海报的残 片缺角.
29
镜头一转,只见剧场的下半层.少年正站在视野里.他好一阵子一动不动.只是仰望着高高的天窗.但窗里却别无一物.只有一只壮壮的杂种虎头狗走过少年的脚边.它嗅着少年的味道,一边盯视着少年.
30
只见上面的窗口里出现一位少女演员.她面无表情地眺望下面.因为逆光,只有一个剪影.但不久,就显现出同少年一样哀婉的面孔.她轻轻地打开窗,掷下一小把花束给少年.
31
少年左右跑动来接取花束.花束一直下落.少年伸手去接.花束刚一结束落势时,就变成了一把荆剌.
32
现在是一块黑板.上面用粉笔写着[北风,晴].但是,马上字迹变得模糊,然后变成[南风渐强,可能有雨]
33
镜头斜向对着卖户姓牌的露天摊.在帐蓬下面的样本都是些日本毛泽东,日本孔子,日本关羽,日本唐明皇,日本诸葛亮的名字.但是也渐渐变成了大众名字张三李四山田松下.不仅如此.那些字牌的对面却漂来一片蒙胧的南瓜地.
34
水池的对面是向家电影院.池中倒映着几星电灯的光影.水池的左边就是立姿的那个少年.少年的帽子突然被风吹到水中.少年踌躇许久,方向这边走来,表情已近绝望.
35
现在是咖啡馆的橱窗.堆成塔形的方糖,插着麦杆的苏打水以及糕点的对面有数个人影在晃动.少年走过这窗前,但在橱窗的左边停下脚步.少年的身影只有膝盖以上的部分.
36
现在是咖啡馆的外面.有一对夫妻样的中年男女从玻璃门中走出来.妈妈抱着戴着帽子的小孩.这时,咖啡馆自己转动起来.把厨房的内部显现出来.厨房里面有一根大烟囱.正有两个工人正拼命的挥着铁锹加煤.有一盏煤油灯正在放着光亮.
37
在咖啡桌前的儿童椅上,前面的那个小孩只现出上半身.他一边开心的笑着,一边摇头晃脑,手脚不停.他的身后是一无所有的空白.但就在那里.有一朵玫瑰开始静静地凋落.
38
侧向是自动收银机.只见到两只手正不停地忙碌.那绝对是女人的手.然后就只见不断打开的钱柜,里面全都是钱.
39
回到咖啡馆的橱窗.少年没有动作,还是老样子.过了一刻,少年渐渐转过头来,快步走向这里.但是,当画面上全是他的面孔时,他却站住在看着什么.多多少少有些惊呀的表情.
40
人群中站着一个行脚小贩.他站在展开的布匹中.挥着一段长绢,高声在人群中叫卖着.
41
特写他手中所挥着的那一段长绢.只见布片被前后左右的挥动着.挥动的部分长度有二三尺.上面的花纹是大大的雪花.雪花随着摇摆,纷纷从布面上落下.
42
现在是针织品的露天摊位.在挂起的上衣和裤子下面有一个老太婆在对着炉桌取暖.她的面前是一堆毛织品.毛线织物乱七八糟.在暖桌的角落里有一只黑猫在不停地舔着脚掌.
43
那只黑猫与少年的下半身定格在画面上.那只黑猫开始没什么变化.但慢慢地,头上长出长长流苏的土耳其帽子来.
44
[少爷,试试这件毛线衫吧]
[我连帽子都虿黄餧
45
把针织品的露天摊位抛在身后,少年已现疲相.画面中是他的上半身.他开始流泪.但是却重新打起气来,仰望天空后,再次向这边走来.
46
暮色天空已微现星光.天空中渐渐浮显一张巨大的面孔.那是少年的父亲.带着慈爱的表情,但是却有种令人无限悲伤的味道.不久,这张脸就象雾一样渐渐消去.
47
镜头正对着长街.少年只有背影.在向前迈进.街上已少有人迹.少年的身后跟着一个男人.那男子偶尔回身时,露出戴着口罩的一张脸.那少年却不曾回头.
48
眼前是一户人家,只见得到外面的格子拉门.大门外停着三辆人力车,都背对着我们.路上还是没有多少人.蒙着头纱的新娘子和其他数人一同从拉门里走出来,.静静地上了人力车.三辆人力车都坐上客后,新娘子就会先行一步.车后就是少年的背影.而门前站立的众人却是根本不曾看过他一眼.
49
[XYZ公司特别奉献,孤儿血泪,文艺电影],长方形的提示牌上写着如上字迹.那是挂在宣传员身上的宣传牌.那个宣传员已上了年纪,看起来却好象是在长街上走过的某位绅士一般某位胡子修整得很漂亮的绅士.他背后的人群比他身前的人要多一些,纷纷进进出出各色商店.少年经过他身边时,也不由从他身上的拿走一份广告单.
50
面向长街,有一个扙着松树枝的正慢慢向这边走来.突然他变成了一只驼鸟.可在走来的过程中又变成残废士兵.十字路口处立着一个邮筒.
51
[快点,快点,也不知道还能活多久]
52
画面正中是十字路口的邮筒.不知什么时间起却变成了透明.能看到里面有无数的信封相互叠放.但,眼见着这个邮筒再次变成普通的邮筒.它的后现,是一片黑暗.
53
眼前是艺妓区.两个艺妓从点着妓家红灯的拉门口走出来,安静地走向这边.无论哪一个都是面无表情.她们走过后.就是背对我们的少年的身影.少年回头看了她们一眼.表情比刚才更加郁郁寡欢.少年渐行渐远.接着从那边走来一个小个子的相声戏子.走近来看,却发现他与少年有些相似之处.
54
在好大的一个铁丝圈上挂着几团假发.其间还吊着一个写了字的纸牌.上写着[随喜挑选,专制刘海]这几团假发忽地变成理发店的三色转棒.其后面是一片黑暗.
55
现在是在理发店的外面.整面的大玻璃镜的对面有几个男女的身形在闪动.少年走过这里,不禁向内窥视.
56
视野中是一个剃头男人的侧面.没多久这个画面变成那铁圈上吊着的假发.其间还吊着一个写了字的纸牌.不过现在却写着[真发续长]
57
现在是座十九世纪维也那格调的医院.少少年从这里拾阶而上.正当人以为他将走进去时,他却退下来.少年转到画面左面后.医院却渐渐逼近,画面上只有门口的样子充斥.从玻璃门中走出一个护士.她站在门口,在远向远方的什么东西.
58
在她的膝上交握着双手.左手上戴着婚戒.但,那枚戒指却自已快速滑落下来.
59
视野的天空中只有一面水泥墙.但是,它很快变得透明.里面的铁笼子里有几只猴子.接着整面墙变成木偶戏的舞台.舞台是按西洋房间布置的.那里有一个西洋人正不安的环视四周.他是一个蒙面的小偷刚潜入室内.室内的一角有一个保险柜.
60
接着就是撬保险柜的那个西洋人.但是他的手脚上那系着的几根细线却清晰可见.
61
眼前是一排水泥墙.墙上什么也没有.从它前面走过少年.少年身后有一个伛偻的背影跟着他.
62
从上向下俯视长街.有一枚落叶随风飘落盘旋.接着是另一片更小的叶子落下.最后是杂志广告样的纸张翻转着落下.那张纸好象被撕开.但清晰可见那上面写着[生活,一月刊]的大家印刷字.
63
高大的常绿树下的长椅.树林的对面是前面见过的池塘.少年走向长椅,精疲力尽地坐下.然后开始拭去泪水.那个伛偻的背影也走珲来坐在长椅上.他们的背后是在风中晃动的树木.少年不时地看着那个伛偻人.但是那个人却不曾回过头来.只是从怀里拿出烧地瓜,大口大口地吃起来.
64
那个吃东西的伛偻背影.
65
在前面是常绿树,树下的阴影中,伛偻人还在吃着.少年却站起来,低着头信步走开.
66
从上向下望向长椅.在条板的长椅上丢下了一个小钱包.不知是谁的手把它轻轻拾了起来.
67
这次从侧面望向树下的长椅.那个伛偻人正翻着钱包里的东西.这时突然在他身边闪出好几个人影.然后就是伛偻人自己坐在长椅上.而他们却兴高彩烈地翻检着包里的东西.相互有说有笑.
68
现在是照片店的橱窗.顶棚下挂着几张男男女女的照片.可是,那些照片却变成了老人的样子.那中间只有一张没有变化.那是个在大礼服上配带勋章,留着络腮胡子的老人的半身相.但他的脸却变成前面那个伛偻人的脸.
69
侧面的观音院.少年从寺下走过,观音院的上面,只有一挂新月.
70
正面的观音院.但是,门是关着来的.门前有几个人在礼佛.少年经过他们,只留下背影.他也稍稍仰面望向观音院.却突然转过身来,快步走向画面的侧边.
71
从上向下望去.巨大的长方形的净手池.有数只水杓漂在水面,水面闪现隐隐的火光.接着映出的就是少年憔悴的面孔.
72
在巨大的石灯柱下.少年坐在地上,双手掩面隐约哭诉.
73
在前面的石灯柱下,有一个男子正佇立倾听.
74
画面是男子的上半身.脸面向那边.但是当他回头过来时,那居然是那个带口罩的男子.过了一会,变成少年父亲的脸.
75
少年头上的石灯柱突然自动点起火来.当火势将熄时.那里却开始绽放出一朵菊花.那菊花的花轮比石灯柱的顶罩还要大.
76
灯柱下的少年还是老样子.这时走来一个帽子压得很低的巡警.把手放在少年的肩上.少年吃惊站起.同巡警说起话来.接着就被巡警拉着手,静静地向对面走去.
77
在前面的石灯柱下,现在是空无一人.
78
前面是仁王门的大灯笼.大灯笼渐渐在画面上升起.前面见过的商店街渐渐显现出来.但是那大灯笼的下半部分却没有消失.
(昭和二年三月十四日)
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 楼主| 发表于 2006-5-15 12:41:32 | 显示全部楼层
原文
浅草公園
――或シナリオ――
芥川龍之介

          1

 浅草(あさくさ)の仁王門(におうもん)の中に吊(つ)った、火のともらない大提灯(おおじょうちん)。提灯は次第に上へあがり、雑沓(ざっとう)した仲店(なかみせ)を見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消え失せない。門の前に飛びかう無数の鳩(はと)。

          2

 雷門(かみなりもん)から縦に見た仲店。正面にはるかに仁王門が見える。樹木は皆枯れ木ばかり。

          3

 仲店の片側(かたがわ)。外套(がいとう)を着た男が一人(ひとり)、十二三歳の少年と一しょにぶらぶら仲店を歩いている。少年は父親の手を離れ、時々玩具屋(おもちゃや)の前に立ち止まったりする。父親は勿論こう云う少年を時々叱ったりしないことはない。が、稀(まれ)には彼自身も少年のいることを忘れたように帽子屋(ぼうしや)の飾り窓などを眺めている。

          4

 こう云う親子の上半身(じょうはんしん)。父親はいかにも田舎者(いなかもの)らしい、無精髭(ぶしょうひげ)を伸ばした男。少年は可愛(かわい)いと云うよりもむしろ可憐な顔をしている。彼等の後(うし)ろには雑沓した仲店。彼等はこちらへ歩いて来る。

          5

 斜めに見たある玩具屋(おもちゃや)の店。少年はこの店の前に佇(たたず)んだまま、綱を上(のぼ)ったり下(お)りたりする玩具の猿を眺めている。玩具屋の店の中には誰も見えない。少年の姿は膝の上まで。

          6

 綱を上ったり下りたりしている猿。猿は燕尾服(えんびふく)の尾を垂れた上、シルク・ハットを仰向(あおむ)けにかぶっている。この綱や猿の後ろは深い暗のあるばかり。

          7

 この玩具屋のある仲店の片側。猿を見ていた少年は急に父親のいないことに気がつき、きょろきょろあたりを見まわしはじめる。それから向うに何か見つけ、その方へ一散(いっさん)に走って行(ゆ)く。

          8

 父親らしい男の後ろ姿。ただしこれも膝の上まで。少年はこの男に追いすがり、しっかりと外套の袖を捉(とら)える。驚いてふり返った男の顔は生憎(あいにく)田舎者(いなかもの)らしい父親ではない。綺麗(きれい)に口髭(くちひげ)の手入れをした、都会人らしい紳士である。少年の顔に往来する失望や当惑に満ちた表情。紳士は少年を残したまま、さっさと向うへ行ってしまう。少年は遠い雷門(かみなりもん)を後ろにぼんやり一人佇んでいる。

          9

 もう一度父親らしい後ろ姿。ただし今度は上半身(じょうはんしん)。少年はこの男に追いついて恐る恐るその顔を見上げる。彼等の向うには仁王門(におうもん)。

          10[#「10」は縦中横]

 この男の前を向いた顔。彼は、マスクに口を蔽(おお)った、人間よりも、動物に近い顔をしている。何か悪意の感ぜられる微笑(びしょう)。

          11[#「11」は縦中横]

 仲店の片側。少年はこの男を見送ったまま、途方(とほう)に暮れたように佇んでいる。父親の姿はどちらを眺めても、生憎(あいにく)目にははいらないらしい。少年はちょっと考えた後(のち)、当(あて)どもなしに歩きはじめる。いずれも洋装をした少女が二人、彼をふり返ったのも知らないように。

          12[#「12」は縦中横]

 目金(めがね)屋の店の飾り窓。近眼鏡(きんがんきょう)、遠眼鏡(えんがんきょう)、双眼鏡(そうがんきょう)、廓大鏡(かくだいきょう)、顕微鏡(けんびきょう)、塵除(ちりよ)け目金(めがね)などの並んだ中に西洋人の人形(にんぎょう)の首が一つ、目金をかけて頬笑(ほほえ)んでいる。その窓の前に佇(たたず)んだ少年の後姿(うしろすがた)。ただし斜(なな)めに後ろから見た上半身。人形の首はおのずから人間の首に変ってしまう。のみならずこう少年に話しかける。――

          13[#「13」は縦中横]

「目金を買っておかけなさい。お父さんを見付(みつけ)るには目金をかけるのに限りますからね。」
「僕の目は病気ではないよ。」

          14[#「14」は縦中横]

 斜めに見た造花屋(ぞうかや)の飾り窓。造花は皆竹籠だの、瀬戸物の鉢だのの中に開いている。中でも一番大きいのは左にある鬼百合(おにゆり)の花。飾り窓の板硝子(ガラス)は少年の上半身を映しはじめる。何か幽霊のようにぼんやりと。

          15[#「15」は縦中横]

 飾り窓の板硝子越しに造花を隔てた少年の上半身。少年は板硝子に手を当てている。そのうちに息の当るせいか、顔だけぼんやりと曇ってしまう。

          16[#「16」は縦中横]

 飾り窓の中の鬼百合の花。ただし後ろは暗である。鬼百合の花の下に垂れている莟(つぼみ)もいつか次第に開きはじめる。

          17[#「17」は縦中横]

「わたしの美しさを御覧なさい。」
「だってお前は造花じゃないか?」

          18[#「18」は縦中横]

 角(かど)から見た煙草屋の飾り窓。巻煙草の缶(かん)、葉巻の箱、パイプなどの並んだ中に斜めに札(ふだ)が一枚懸っている。この札に書いてあるのは、――「煙草の煙は天国の門です。」徐(おもむ)ろにパイプから立ち昇(のぼ)る煙。

          19[#「19」は縦中横]

 煙の満ち充ちた飾り窓の正面(しょうめん)。少年はこの右に佇(たたず)んでいる。ただしこれも膝の上まで。煙の中にはぼんやりと城が三つ浮かびはじめる。城は Three Castles の商標を立体にしたものに近い。

          20[#「20」は縦中横]

 それ等の城の一つ。この城の門には兵卒が一人銃を持って佇んでいる。そのまた鉄格子(てつごうし)の門の向うには棕櫚(しゅろ)が何本もそよいでいる。

          21[#「21」は縦中横]

 この城の門の上。そこには横にいつの間(ま)にかこう云う文句が浮かび始める。――
「この門に入るものは英雄となるべし。」

          22[#「22」は縦中横]

 こちらへ歩いて来る少年の姿。前の煙草屋の飾り窓は斜めに少年の後ろに立っている。少年はちょっとふり返って見た後(のち)、さっさとまた歩いて行ってしまう。

          23[#「23」は縦中横]

 吊(つ)り鐘(がね)だけ見える鐘楼(しゅろう)の内部。撞木(しゅもく)は誰かの手に綱を引かれ、徐(おもむ)ろに鐘を鳴らしはじめる。一度、二度、三度、――鐘楼の外は松の木ばかり。

          24[#「24」は縦中横]

 斜めに見た射撃屋(しゃげきや)の店。的(まと)は後ろに巻煙草の箱を積み、前に博多人形(はかたにんぎょう)を並べている。手前に並んだ空気銃の一列。人形の一つはドレッスをつけ、扇を持った西洋人の女である。少年は怯(お)ず怯(お)ずこの店にはいり、空気銃を一つとり上げて全然無分別(むふんべつ)に的(まと)を狙(ねら)う。射撃屋の店には誰もいない。少年の姿は膝の上まで。

          25[#「25」は縦中横]

 西洋人の女の人形。人形は静かに扇をひろげ、すっかり顔を隠してしまう。それからこの人形に中(あた)るコルクの弾丸(たま)。人形は勿論仰向(あおむ)けに倒れる。人形の後ろにも暗のあるばかり。

          26[#「26」は縦中横]

 前の射撃屋の店。少年はまた空気銃をとり上げ、今度は熱心に的(まと)を狙う。三発、四発、五発、――しかし的は一つも落ちない。少年は渋(し)ぶ渋(し)ぶ銀貨を出し、店の外へ行ってしまう。

          27[#「27」は縦中横]

 始めはただ薄暗い中に四角いものの見えるばかり。その中にこの四角いものは突然電燈をともしたと見え、横にこう云う字を浮かび上(あが)らせる。――上に「公園六区(ろっく)」下に「夜警詰所(やけいつめしょ)」。上のは黒い中に白、下のは黒い中に赤である。

          28[#「28」は縦中横]

 劇場の裏の上部。火のともった窓が一つ見える。まっ直(すぐ)に雨樋(あまどい)をおろした壁にはいろいろのポスタアの剥(は)がれた痕(あと)。

          29[#「29」は縦中横]

 この劇場の裏の下部(かぶ)。少年はそこに佇(たたず)んだまま、しばらくはどちらへも行(ゆ)こうとしない。それから高い窓を見上げる。が、窓には誰も見えない。ただ逞(たくま)しいブルテリアが一匹、少年の足もとを通って行く。少年の匂(におい)を嗅(か)いで見ながら。

          30[#「30」は縦中横]

 同じ劇場の裏の上部。火のともった窓には踊り子が一人現れ、冷淡に目の下の往来を眺める。この姿は勿論(もちろん)逆光線のために顔などははっきりとわからない。が、いつか少年に似た、可憐(かれん)な顔を現してしまう。踊り子は静かに窓をあけ、小さい花束(はなたば)を下に投げる。

          31[#「31」は縦中横]

 往来に立った少年の足もと。小さい花束が一つ落ちて来る。少年の手はこれを拾う。花束は往来を離れるが早いか、いつか茨(いばら)の束に変っている。

          32[#「32」は縦中横]

 黒い一枚の掲示板(けいじばん)。掲示板は「北の風、晴」と云う字をチョオクに現している。が、それはぼんやりとなり、「南の風強かるべし。雨模様」と云う字に変ってしまう。

          33[#「33」は縦中横]

 斜(ななめ)に見た標札屋(ひょうさつや)の露店(ろてん)、天幕(てんと)の下に並んだ見本は徳川家康(とくがわいえやす)、二宮尊徳(にのみやそんとく)、渡辺崋山(わたなべかざん)、近藤勇(こんどういさみ)、近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)などの名を並べている。こう云う名前もいつの間(ま)にか有り来りの名前に変ってしまう。のみならずそれ等の標札の向うにかすかに浮んで来る南瓜畠(かぼちゃばたけ)……

          34[#「34」は縦中横]

 池の向うに並んだ何軒かの映画館。池には勿論電燈の影が幾つともなしに映っている。池の左に立った少年の上半身(じょうはんしん)。少年の帽は咄嗟(とっさ)の間(あいだ)に風のために池へ飛んでしまう。少年はいろいろあせった後(のち)、こちらを向いて歩きはじめる。ほとんど絶望に近い表情。

          35[#「35」は縦中横]

 カッフェの飾り窓。砂糖の塔、生菓子(なまがし)、麦藁(むぎわら)のパイプを入れた曹達水(ソオダすい)のコップなどの向うに人かげが幾つも動いている。少年はこの飾り窓の前へ通りかかり、飾り窓の左に足を止めてしまう。少年の姿は膝の上まで。

          36[#「36」は縦中横]

 このカッフェの外部。夫婦らしい中年の男女(なんにょ)が二人硝子(ガラス)戸の中へはいって行く。女はマントルを着た子供を抱(だ)いている。そのうちにカッフェはおのずからまわり、コック部屋の裏を現わしてしまう。コック部屋の裏には煙突(えんとつ)が一本。そこにはまた労働者が二人せっせとシャベルを動かしている。カンテラを一つともしたまま。……

          37[#「37」は縦中横]

 テエブルの前の子供椅子(いす)の上に上半身を見せた前の子供。子供はにこにこ笑いながら、首を振ったり手を挙げたりしている。子供の後ろには何も見えない。そこへいつか薔薇(ばら)の花が一つずつ静かに落ちはじめる。

          38[#「38」は縦中横]

 斜めに見える自動計算器。計算器の前には手が二つしきりなしに動いている。勿論女の手に違いない。それから絶えず開かれる抽斗(ひきだし)。抽斗の中は銭(ぜに)ばかりである。

          39[#「39」は縦中横]

 前のカッフェの飾り窓。少年の姿も変りはない。しばらくの後(のち)、少年は徐(おもむ)ろに振り返り、足早(あしばや)にこちらへ歩いて来る。が、顔ばかりになった時、ちょっと立ちどまって何かを見る。多少驚きに近い表情。

          40[#「40」は縦中横]

 人だかりのまん中に立った糶(せ)り商人(あきゅうど)。彼は呉服(ごふく)ものをひろげた中に立ち、一本の帯をふりながら、熱心に人だかりに呼びかけている。

          41[#「41」は縦中横]

 彼の手に持った一本の帯。帯は前後左右に振られながら、片はしを二三尺現している。帯の模様は廓大(かくだい)した雪片(せっぺん)。雪片は次第にまわりながら、くるくる帯の外へも落ちはじめる。

          42[#「42」は縦中横]

 メリヤス屋の露店(ろてん)。シャツやズボン下を吊(つ)った下に婆(ばあ)さんが一人行火(あんか)に当っている。婆さんの前にもメリヤス類。毛糸の編みものも交(まじ)っていないことはない。行火の裾(すそ)には黒猫が一匹時々前足を嘗(な)めている。

          43[#「43」は縦中横]

 行火の裾に坐っている黒猫。左に少年の下半身(かはんしん)も見える。黒猫も始めは変りはない。しかしいつか頭の上に流蘇(ふさ)の長いトルコ帽をかぶっている。

          44[#「44」は縦中横]

「坊ちゃん、スウェエタアを一つお買いなさい。」
「僕は帽子さえ買えないんだよ。」

          45[#「45」は縦中横]

 メリヤス屋の露店を後ろにした、疲れたらしい少年の上半身(じょうはんしん)。少年は涙を流しはじめる。が、やっと気をとり直し、高い空を見上げながら、もう一度こちらへ歩きはじめる。

          46[#「46」は縦中横]

 かすかに星のかがやいた夕空。そこへ大きい顔が一つおのずからぼんやりと浮かんで来る。顔は少年の父親らしい。愛情はこもっているものの、何か無限にもの悲しい表情。しかしこの顔もしばらくの後(のち)、霧のようにどこかへ消えてしまう。

          47[#「47」は縦中横]

 縦(たて)に見た往来。少年はこちらへ後(うし)ろを見せたまま、この往来を歩いて行(ゆ)く。往来は余り人通りはない。少年の後ろから歩いて行く男。この男はちょっと振り返り、マスクをかけた顔を見せる。少年は一度も後ろを見ない。

          48[#「48」は縦中横]

 斜めに見た格子戸(こうしど)造りの家の外部。家の前には人力車(じんりきしゃ)が三台後ろ向きに止まっている。人通りはやはり沢山ない。角隠(つのかく)しをつけた花嫁(はなよめ)が一人、何人かの人々と一しょに格子戸を出、静かに前の人力車に乗る。人力車は三台とも人を乗せると、花嫁を先に走って行く。そのあとから少年の後ろ姿。格子戸の家の前に立った人々は勿論少年に目もやらない。

          49[#「49」は縦中横]

「XYZ会社特製品、迷い子、文芸的映画」と書いた長方形の板。これもこの板を前後にしたサンドウィッチ・マンに変ってしまう。サンドウィッチ・マンは年をとっているものの、どこか仲店(なかみせ)を歩いていた、都会人らしい紳士に似ている。後ろは前よりも人通りは多い、いろいろの店の並んだ往来。少年はそこを通りかかり、サンドウィッチ・マンの配(くば)っている広告を一枚貰って行く。

          50[#「50」は縦中横]

 縦に見た前の往来。松葉杖をついた癈兵(はいへい)が一人ゆっくりと向うへ歩いて行(ゆ)く。癈兵はいつか駝鳥(だちょう)に変っている。が、しばらく歩いて行くうちにまた癈兵になってしまう。横町(よこちょう)の角(かど)にはポストが一つ。

          51[#「51」は縦中横]

「急げ。急げ。いつ何時(なんどき)死ぬかも知れない。」

          52[#「52」は縦中横]

 往来の角(かど)に立っているポスト。ポストはいつか透明になり、無数の手紙の折り重なった円筒の内部を現して見せる。が、見る見る前のようにただのポストに変ってしまう。ポストの後ろには暗のあるばかり。

          53[#「53」は縦中横]

 斜めに見た芸者屋町(げいしゃやまち)。お座敷へ出る芸者が二人(ふたり)ある御神燈(ごしんとう)のともった格子戸(こうしど)を出、静かにこちらへ歩いて来る。どちらも何(なん)の表情も見せない。二人の芸者の通りすぎた後(のち)、向うへ歩いて行(ゆ)く少年の姿。少年はちょっとふり返って見る。前よりもさらに寂しい表情。少年はだんだん小さくなって行く。そこへ向うに立っていた、背(せ)の低い声色遣(こわいろつか)いが一人(ひとり)やはりこちらへ歩いて来る。彼の目(ま)のあたりへ近づいたのを見ると、どこか少年に似ていないことはない。

          54[#「54」は縦中横]

 大きい針金(はりがね)の環(わ)のまわりにぐるりと何本もぶら下げたかもじ。かもじの中には「すき毛入り前髪(まえがみ)立て」と書いた札(ふだ)も下っている。これ等のかもじはいつの間(ま)にか理髪店の棒に変ってしまう。棒の後ろにも暗のあるばかり。

          55[#「55」は縦中横]

 理髪店の外部。大きい窓硝子(ガラス)の向うには男女(なんにょ)が何人も動いている。少年はそこへ通りかかり、ちょっと内部を覗(のぞ)いて見る。

          56[#「56」は縦中横]

 頭を刈(か)っている男の横顔。これもしばらくたった後、大きい針金の環(わ)にぶら下げた何本かのかもじに変ってしまう。かもじの中に下った札(ふだ)が一枚。札には今度は「入れ毛」と書いてある。

          57[#「57」は縦中横]

 セセッション風に出来上った病院。少年はこちらから歩み寄り、石の階段を登って行(ゆ)く、しかし戸の中へはいったと思うと、すぐにまた階段を下(くだ)って来る。少年の左へ行った後(のち)、病院は静かにこちらへ近づき、とうとう玄関だけになってしまう。その硝子戸(ガラスど)を押しあけて外へ出て来る看護婦(かんごふ)が一人。看護婦は玄関に佇(たたず)んだまま、何か遠いものを眺めている。

          58[#「58」は縦中横]
 
 膝の上に組んだ看護婦の両手。前になった左の手には婚約の指環が一つはまっている。が、指環はおのずから急に下へ落ちてしまう。

          59[#「59」は縦中横]

 わずかに空を残したコンクリイトの塀。これもおのずから透明(とうめい)になり、鉄格子(てつごうし)の中に群(むらが)った何匹かの猿を現して見せる。それからまた塀全体は操(あやつ)り人形(にんぎょう)の舞台に変ってしまう。舞台はとにかく西洋じみた室内。そこに西洋人の人形が一つ怯(お)ず怯(お)ずあたりを窺(うかが)っている。覆面(ふくめん)をかけているのを見ると、この室へ忍びこんだ盗人(ぬすびと)らしい。室の隅には金庫が一つ。

          60[#「60」は縦中横]

 金庫をこじあけている西洋人の人形。ただしこの人形の手足についた、細い糸も何本かははっきりと見える。……

          61[#「61」は縦中横]

 斜めに見た前のコンクリイトの塀。塀はもう何も現していない。そこを通りすぎる少年の影。そのあとから今度は背むしの影。

          62[#「62」は縦中横]

 前から斜めに見おろした往来。往来の上には落ち葉が一枚風に吹かれてまわっている。そこへまた舞い下(さが)って来る前よりも小さい落葉が一枚。最後に雑誌の広告らしい紙も一枚翻(ひるがえ)って来る。紙は生憎(あいにく)引き裂(さ)かれているらしい。が、はっきりと見えるのは「生活、正月号」と云う初号活字である。

          63[#「63」は縦中横]

 大きい常磐木(ときわぎ)の下にあるベンチ。木々の向うに見えているのは前の池の一部らしい。少年はそこへ歩み寄り、がっかりしたように腰をかける。それから涙を拭(ぬぐ)いはじめる。すると前の背むしが一人やはりベンチへ来て腰をかける。時々風に揺(ゆ)れる後(うし)ろの常磐木。少年はふと背むしを見つめる。が、背むしはふり返りもしない。のみならず懐(ふところ)から焼き芋を出し、がつがつしているように食いはじめる。

          64[#「64」は縦中横]

 焼き芋(いも)を食っている背むしの顔。

          65[#「65」は縦中横]

 前の常磐木(ときわぎ)のかげにあるベンチ。背むしはやはり焼き芋を食っている。少年はやっと立ち上り、頭を垂れてどこかへ歩いて行(ゆ)く。

          66[#「66」は縦中横]

 斜めに上から見おろしたベンチ。板を透かしたベンチの上には蟇口(がまぐち)が一つ残っている。すると誰かの手が一つそっとその蟇口をとり上げてしまう。

          67[#「67」は縦中横]

 前の常磐木のかげにあるベンチ。ただし今度は斜めになっている。ベンチの上には背むしが一人蟇口の中を検(しら)べている。そのうちにいつか背むしの左右に背むしが何人も現れはじめ、とうとうしまいにはベンチの上は背むしばかりになってしまう。しかも彼等は同じようにそれぞれ皆熱心に蟇口の中を検べている。互に何か話し合いながら。

          68[#「68」は縦中横]

 写真屋の飾り窓。男女(なんにょ)の写真が何枚もそれぞれ額縁(がくぶち)にはいって懸(かか)っている。が、それ等の男女の顔もいつか老人に変ってしまう。しかしその中にたった一枚、フロック・コオトに勲章をつけた、顋髭(あごひげ)のある老人の半身だけは変らない。ただその顔はいつの間(ま)にか前の背むしの顔になっている。

          69[#「69」は縦中横]

 横から見た観音堂(かんのんどう)。少年はその下を歩いて行(ゆ)く。観音堂の上には三日月(みかづき)が一つ。

          70[#「70」は縦中横]

 観音堂の正面の一部。ただし扉(とびら)はしまっている。その前に礼拝(らいはい)している何人かの人々。少年はそこへ歩みより、こちらへ後ろを見せたまま、ちょっと観音堂を仰いで見る。それから突然こちらを向き、さっさと斜めに歩いて行ってしまう。

          71[#「71」は縦中横]

 斜めに上から見おろした、大きい長方形の手水鉢(ちょうずばち)。柄杓(ひしゃく)が何本も浮かんだ水には火(ほ)かげもちらちら映っている。そこへまた映って来る、憔悴(しょうすい)し切った少年の顔。\

          72[#「72」は縦中横]

 大きい石燈籠(いしどうろう)の下部。少年はそこに腰をおろし、両手に顔を隠して泣きはじめる。

          73[#「73」は縦中横]
 
 前の石燈籠の下部の後ろ。男が一人佇(たたず)んだまま、何かに耳を傾けている。

          74[#「74」は縦中横]

 この男の上半身。もっとも顔だけはこちらを向いていない。が、静かに振り返ったのを見ると、マスクをかけた前の男である。のみならずその顔もしばらくの後(のち)、少年の父親に変ってしまう。

          75[#「75」は縦中横]

 前の石燈籠の上部。石燈籠は柱を残したまま、おのずから炎(ほのお)になって燃え上ってしまう。炎の下火(したび)になった後(のち)、そこに開き始める菊の花が一輪。菊の花は石燈籠の笠よりも大きい。\

          76[#「76」は縦中横]

 前の石燈籠の下部。少年は前と変りはない。そこへ帽を目深(まぶか)にかぶった巡査(じゅんさ)が一人歩みより、少年の肩へ手をかける。少年は驚いて立ち上り、何か巡査と話をする。それから巡査に手を引かれたまま、静かに向うへ歩いて行(ゆ)く。

          77[#「77」は縦中横]

 前の石燈籠の下部の後ろ。今度はもう誰もいない。

          78[#「78」は縦中横]

 前の仁王門(におうもん)の大提灯(おおじょうちん)。大提灯は次第に上へあがり、前のように仲店(なかみせ)を見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消え失(う)せない。

(昭和二年三月十四日)



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底本:「芥川龍之介全集6」ちくま文庫、筑摩書房    1987(昭和62)年3月24日第1刷発行
   1993(平成5)年2月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
   1971(昭和46)年3月~1971(昭和46)年11月
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发表于 2006-5-15 15:59:35 | 显示全部楼层
8错8错哈~~~贴了8少介川D东东了捏。。。鼓励下下哈~~~
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