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楼主: gxzzf

东京塔 (中日版 连载)

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 楼主| 发表于 2006-6-6 15:30:32 | 显示全部楼层
透の「そうだな」は、文字どおりそうしたいという意味で言ったものだったが、耕二は不服だったようで、
「つめたいよなあ」
と大きな声で言った。
「月に一度くらいは会おうぜ」
透は苦笑する。
「だっていそがしいだろう、バイトだの何だのでさ」
高校時代から、耕二の忙しさは変わらない。
「忙しいさ」
耕二は胸をはった。
「でも時間はつくるよ。必要なものには時間はつくる」
きっぱりした言い方だった。透はなんとなく幸福になる。
「俺は暇だから」
人混みを歩きながらいった。
「いつでもいいよ、あいたでも」
人の多い街だ。勤め帰りの人々も高校生も、きりもなくあふれでてくる。透は渋谷という街が好きだ。詩史さんは青山が好きだが、透は渋谷の方がくつろげる気がする。
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 楼主| 发表于 2006-6-6 16:05:04 | 显示全部楼层
「極端だな。あしたはだめだ。時間つくれない」
「知ってるよ」
夜の風は甘い。肺にやさしくしみるのがわかる。
帰宅すると、九時半だった。母親はまだ帰っていない。透は水を一杯飲んで、シャワーを浴びた。
詩史に電話をしてみようか、と、考える。電話は、いつかけてもいいことになっている。携帯なので、他の人がでないし、都合が悪いときには、スイッチを切っているからと。
都合が悪いとき。商談中とか寝ているときとか、あるいは夫と一緒のときとか。
詩史さんとその夫は毎晩きまってお酒を飲むという。
「二人とも仕事がもっているでしょう?なかなか一緒の時間がとれなくて」
詩史はそう説明した。
「食事もほとんど別々なの、私も料理が好きじゃないし。」
何度かいったことの詩史のマンションを思い出す。リビングに小さな観音像がおいている。
「きれいでしょう」
観音像は華奢な腕を四本のばし、間接照明の方が落ち着くと言う詩史の選らんだあかりの下で、しずかな深茶色に光っていた。
あの部屋でお酒を飲むのだろうか。詩史の好きなウォッカを?一日の出来た事を話したりするのかもしれない。音楽もかけたりもするのだろうか。詩史さんはビリ・ジョエルが好きだ。
透はそのまま寝ることにした。電話はあしたかければいい。
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 楼主| 发表于 2006-6-6 16:07:37 | 显示全部楼层
以上、第二回終わりだ。
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 楼主| 发表于 2006-6-6 16:10:22 | 显示全部楼层
第三回 

 “给篮球比赛加油?”

  诗史夹一块半熟鸡蛋炒芦笋放进嘴里——这是她每到这个店里必点的小菜,兴致勃勃地问,

  “你不是不喜欢这个吗?为什么去呢?”


  隔着玻璃窗,可以看到装饰着彩灯的树丛。

  “别人邀我去的。”

  透回答说,

  “闲着也是闲着。”

  诗史微微侧过头,静静地看着透。

  原来,昨天透和大学里的朋友们一起去看篮球部的比赛了。他把这事告诉了诗史。比赛无聊透了。锦标赛一个回合两场比赛,分上、下午举行。透所在的大学上午大获全胜。比赛的时候,透一直在看窗外。尽管窗户位置太高,只能看见树枝和天空。

  “昨天是星期五,你干什么了呢?”

  透喝一口红酒,调整了一下情绪问道。

  “我在店里呀。”

  诗史回答说。她的食指上戴着一枚硕大的红色戒指。在透眼里,她那纤巧的小手戴上这么大的戒指实在有点孩子气,不过倒是挺漂亮。

  诗史基本上不吃什么。主食总是只取一碟,剩下的自然就都由透收入腹中了。

  “你再说点什么嘛。”

  诗史催道。和透在一起的时候,她总是这句话。

  “你说话的时候特别动人,说出的话还很好听。”

  “很好听?”

  透这么一问,诗史补充说,

  “对呀。你说的都是真话,没有一点虚伪和造作。”

  两年前第一次和诗史两个人在一起的时候,她也是这么说的——“你再说点什么嘛”。那时候,他被约出来,替妈妈陪她在一家灯光微暗、别有情调的酒吧里一起喝了酒。

  “你送我回家吧,回去的时候我给你叫辆的士。”

  就这样,他陪着诗史一起走回了她的公寓。

  “拉着我的手好吗?我不喜欢走路不拉我手的男人。”

  诗史一边走着一边用手机叫了辆的士。他们走到公寓的时候,那辆的士已经等在那里了。诗史塞给透一万日元,让他坐车回去。半年以后,透才第一次走进诗史那间供有观音像的起居室,并踏入那间放有红木桌子、由深蓝色和茶色烘托出和谐气氛的卧室。

  两年前的那一天,透让诗史走进了自己的生活。尽管他本没有想要这样。

  吃完蘸了甜酱的烤鸭,透说起了耕二。他讲了和耕二在涩谷见面的事。透经常在诗史面前提起耕二,诗史也记得清楚,听透讲的时候就像在听他们共同的朋友的事情一样。

  很是兴致勃勃地,而且常常是倍感亲切地听着,

  “耕二君是不是长得像个大猩猩?”

  诗史忽然冒出这样一句话来。

  “大猩猩?没有没有,他不是长成那样的。”

  透有些困惑地回答。耕二的脸是属于很有骨感的那种。

  “怎么?不是呀!”

  诗史说着点燃了一支烟,轻轻一笑,侧过脸去吐出一口烟雾。

  “每次听你讲到他的时候,我都觉得他长得像大猩猩似的。”

  “有意思,下次我把这事儿告诉他。”

  透一下子变得兴奋起来。耕二肯定会生气的。

  一个服务生过来问要些什么甜点,被诗史轻轻摇摇头拒绝了。

  “咖啡去我家喝吧。”

  这不是提议,而分明是决定。诗史总是这样,什么事都很有主见。

  店里规定即使一个客人也没有,工作人员也不准打球。耕二认为这个规定是合乎情理的。白天的客人差不多都走光了,店里一下子变得空荡荡的。

  台球场真是一个好地方。台球打得很臭的家伙一般不会来。凡是到这里来的,无论是一伙一伙的学生,还是一对一对的情侣,球都打得相当不错。

  中午是和喜美子一起睡的。他们是在情人旅馆度过两个多小时的美好时光的。

  自从十六岁和当时的女友经历过第一次以后,耕二一共和八个女人——包括付钱的——一起睡过。其中和喜美子在一起的时候是最让人难忘的。绝对与众不同。耕二不知道是因为两个人性格相投还是因为丰富的做爱技巧,反正跟喜美子在一起的时候总是很有激情。很有激情!对,这个说法再恰当不过了。

  喜美子是个热衷于参加各种学习班的人,因此每周都要外出四次。开着她那辆红色的菲亚特。

  菲亚特。耕二颇为得意地回忆着。这辆红色的车子还是自己跟喜美子的“红娘”呢。那还是七个月前自己在某比赛会场的停车场打工时的事。耕二当时的工作是停车引导员,他手里拿着步话机,按照坐在控制塔那里的工作人员的指示把一辆辆车子引导到相应的位置。

  喜美子被安排的车位恰好在角上,她开始犯愁了。更让她头疼的是她的车前还停着一辆大家伙。喜美子打了好几次方向盘都没能进到自己的车位上,真是出尽了洋相。这一切耕二在外面都看得清清楚楚。终于,喜美子旋下了车窗,没好气地叫道:

  “能帮我倒一下车吗?”

  “我的工作不是帮人倒车的。”

  耕二拒绝了。因为事先已经有人交待过他不能代替车主开车。

  “求你了。”

  喜美子伸出一只手做作揖状央求道,

“我最怕停车了。”

  耕二在心里说,老太婆,这跟我有什么关系。

  “要是我撞上了旁边的车子,你也同样有责任的。”


  “没那回事儿!”

  耕二断然拒绝。喜美子一副可怜的样子。

  耕二无奈用步话机跟控制塔联系了一下,对方说要她替客人把车停好。真没办法,耕二心里嘟囔道。

  “帮忙费可是很高的喔!”

  耕二一边把车子停进去一边说,

  “我可是不白给人干活的!”

  引诱这些已婚的妇女再简单不过了。无论是当时还是现在,耕二始终这么认为。那些妇人们大都有着某种近乎饥渴的期待,渴望能够在机械的日常生活中有一些浪花出现。

  耕二对喜美子参加过的学习班早已谙熟于心。喜美子现在正沉醉在西班牙吉卜赛人的一种民间舞蹈——弗拉曼柯舞的学习中,据她说,她已经熟练掌握了茶道和花道技术。而现在,除了弗拉曼柯舞以外,她还在学瑜珈、烹饪和法语。今天,是她去学瑜珈的日子。

  瑜珈学习班在惠比寿,所以耕二便去了惠比寿的旅馆。

  喜美子穿着黑色的内衣。她身体瘦削,几乎一抱就能碰到肋骨。但是,也许是得益于学习弗拉曼柯舞的缘故,她的四肢线条优美、肌肉丰满有力。不过,她认为自己的手太大,说自己的自卑感就是来自于此。

  耕二却特别喜欢喜美子的手掌。喜欢它平时冰冷可一上床就变得滚烫,喜欢它抚摸自己肌肤时老到的手法,还喜欢它滑进自己的大腿深处,贪婪却轻柔地包绕按抚自己时的那种甜蜜。

  “我怎么做?”

  耕二不停地问着,

  “我怎么做才能让你更舒服?”

  每当此时,喜美子就会从耕二的大腿深处抬起头来,

  “别说话。”

  只此一句。

  而且,喜美子的身体还柔软敏感得超乎想象。耕二深深知道,她的肉体因自己的每一个动作而幸福,而且,只要他在喜美子的肌肤上轻轻吹一口气,就会使喜美子的嘴唇幸福地颤动。尽管如此,无论耕二给她多么激烈的亲吻,她都好像得不到满足似的,总是用腿紧紧地缠着耕二。而且,在热吻的同时,她会转过身子,用两手捧住耕二的脸颊,好像在说——“你再疯狂些”。自始至终,喜美子的肌肤都紧紧地贴在耕二身上。

  是喜美子让耕二知道了, 原来“扭打在一起”这个词并非只能用来形容打架。

  和喜美子做起爱来没有尽头。她像潮水一样,不停地重复着潮起潮落。

  一直到最后实在受不了了,她才会向耕二认输,

  “好了好了,求求你,饶了我吧。”

  对耕二来说,如果是和人说话,那就非由利不可。换任何其他一个女孩儿,不管有多可爱,也都不行。由利有着某种不可替代的魅力。(由利说话的时候两只眼睛扑闪扑闪的,特别可人。她说话的口气有些撒娇,但脑子却转得飞快,往往会把话题引向耕二做梦都想不到的方向上去。)不过,说到做爱,那就是另一回事了。和由利做爱的感觉跟与别的女孩儿基本上没有分别。而这正是她和喜美子的不同之处。耕二知道,自己只有和喜美子做爱时才能体会到那种疯狂的感觉。那是仅存于自己和喜美子两个人之间的感觉。

  “真用功呀!”

  听到打工伙伴的招呼声,耕二才从刚才的浮想联翩中回到现实中来。摊在膝头的那本商法书——下周要考试——竟然一页都没看。

  “客人呆会儿就来喽。”

  “是呀。”

  繁华街上的台球场非常安静,穿着黑色制服的几个打工仔围在柜台前聊着天。

  深夜,透躺在床上看书的时候,妈妈喝得烂醉如泥回来了。

  “好啦,阳子,到家了!”

  “鞋子,鞋子!阳子,把鞋子脱了!”

  外面传来几个女人的说话声。

  “真没办法!”

  透无可奈何地站起身来。接着是女人们蜂拥而入的混乱声、踏在厨房地板上的脚步声……。

  “给你们添麻烦了。”

  透走出去向女人们致谢。妈妈正在厨房里扶着洗水池站着。

  “噢,透啊,好久不见啦!”

  看到透,妈妈转过脸来醉熏熏地说道。

  “什么好久不见,今天早上才刚见过。”

  透走进厨房,从冰箱里拿出一瓶矿泉水倒进杯子。

  “我喝醉了。”

  妈妈低声说道。

  “一看就知道。”

  身后,那些女人们则在乱哄哄地吵闹着。什么“多孝顺的儿子呀”、“好漂亮的房间呀”等等,不断地传入耳中。可能是酒精的作用,女人们的脸上一个个都泛着红润的光泽,原先大概涂了厚厚一层的口红也因大吃大喝——肯定是这样——而褪了色。每个人身上不同的香水味和她们的汗水味糅杂在一起,散发着一种怪怪的味道。

  她们不知从哪儿听说透喜欢大龄女人,所以都想让他看到自己徽醉后的模样。

  “喝了几瓶?”

  透的妈妈喜欢喝红酒。她曾宣称没有红酒的日子活着没有意义。

  “实在是对不起。给你们添麻烦了。”

  透又一次向女人们致谢。他真是不知道,究竟该怎么说才能让这些女人明白她们应该走了。

“你觉不觉得大学里那帮家伙目光都太短浅了?”

  耕二在电话那边说道。今天天气晴朗,透家里的起居室在阳光照射下格外明亮。

  “怎么说好呢?简直都不可救药了。”


  透向来都对耕二这一点特别中意。他总是因别人的事情而心痛万分。

  “那也没办法呀。”

  透微笑着回答,

  “什么人都有的。”

  耕二的脑海里浮现出几个人的身影。有的家伙每天早上必定会跳绳,有的家伙吃午饭的时候则只跟女生坐在一起……。

  “那倒也是。”

  “算了,不说这个了。你最近怎么样?”

  透看了看座钟。下午三点四十分。诗史就要给自己打电话过来了。

  “忙得手忙脚乱。寒假以来我又多找了份工打……”

  “是么,在哪儿?”

  诗史前段时间曾劝自己偶尔也听听音乐。她说朋友的女儿钢琴弹得就很好。

  “百货商店的仓库。”

  “够你受了。”

  诗史喜欢巴赫的曲子,去她那儿的时候,她总是放给自己听。

  “上星期我跟由利去滑雪了。”

  “是么。”

  “不是很快就要到圣诞节了嘛。”

  是从什么时候开始的?从什么时候起自己跟耕二通电话的时候竟也开始想诗史了。

  “你呢?透?最近忙吗?”

  透说不忙,然后又看了看表。三点四十五分。

  “也没什么可忙的,都放寒假了嘛。”

  “那你每天都干什么?”

  “……读读书什么的。”

  读书,这是自己和诗史之间众多共同点中的一个。

  “对了,前段时间去看篮球比赛了。”

  “篮球比赛?为什么?”

  “朋友叫去的……”

  谁都问自己去看篮球比赛的理由。透用肩膀夹着无线话筒,把水壶放到火上。

  “以前我们学校不老是输嘛。”

  透所在的大学在体育比赛中从没有得过什么名次。

  “还有就是每周去当两次家庭教师。”

  透是从两年前开始给中学生辅导英语和数学的。

  “听起来很清闲嘛。”

  “确实挺闲的。”

  透一边回答一边把速溶咖啡倒进杯子里,然后冲上水。咖啡特有的浓郁香味立刻扑鼻而来。

  “诗史还好吗?”

  “嗯——。”

  透喝了口咖啡,第三次看了看表。他不想跟耕二谈起诗史,因为说了他也理解不了。毕竟他跟自己不同,是故意挑了比自己大的女人取乐的。

  “怎么不说话了。”

  耕二问道,

  “别像不高兴的孩子那样嘛。”

  透一下来了火。

  “我不想谈论诗史的事。”

  “为什么?”

  “不为什么。”

  恋爱是理智控制不了的,是非理性的。

  这是透从诗史那里听到的。而且,一旦坠入爱河,就会难以自拔。

  耕二屈服了,

  “我再给你打电话。”

  “好吧。”

  透说完挂断了电话。

  差不多了。诗史该打电话来了。下午四点。透抱着膝头,把头埋在膝盖上,闭着眼静静地等着诗史的电话。

  挂了电话以后,耕二一下子躺在了床上。

  “东京塔?”

  “嗯。我挺喜欢的。”

  耕二努力学习考上高中,并且适应了坐电车上下学以后,便开始发现高中原来也不过如此。就在那时,他结识了透,并且放学后常常一块回家。

  他真是个怪家伙。

  东京塔。耕二一直认为那是乡下的中学生修学旅行时才去的地方。自己当时也一次没去爬过,即使是五年以后的现在,也仍然没有爬过。

  “还有呢?”

  耕二接着问道,

  “你还喜欢什么?”

  透想了一会儿回答说,

  “没有了。”

  “我没有什么特别喜欢或者讨厌的东西。”

  真是个奇怪的家伙,耕二在心里又说了一遍。

  透总是那么沉静。好像从没有过让他生气或者悔恨的事情。当然,也从没有因为意外的收获而得意忘形过。

  起床以后,耕二到洗手间洗了个脸,然后用水把头发打湿,喷上摩丝,又用梳子定了定型。

  今天晚上照样要到台球场去打工。要想生活快乐,没有钱是不行的;而倘若不能快乐地生活,活着也就失去了意义。

  耕二向镜子里看去。一副精悍的脸庞,还算可以。自己的肤色根本不用去晒日光浴,原本就是恰到好处的古铜色,更幸运的是,自己的五官还挺端正。

  真臭美呀!

  耕二好像听到喜美子正在身边取笑自己。耕二你老是自恋,真让人受不了。

  喜美子经常爱说粗话。她总是说一和自己在一起就被带坏了。耕二很爱听她这么说。

  他觉得最后肯定是自己先甩了她。

  到现在为止如此,今后还是这样。

  耕二在镜子前面上下抬了抬下巴,把头顶上的头发理顺。

  “没说的!”

  耕二认为镜中的自己无可挑剔,转身穿上了夹克。
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 楼主| 发表于 2006-6-6 16:22:31 | 显示全部楼层
第三回


「バスケットの応援?」
半熟卵をからめた焼きアスパラガス――この店にくると詩史がきまって注文する前菜――を一切れ口に入れ、詩史はたのしそうに聞き返した。
「興味ないのに、なぜ」
ガラス越しに、豆電球のついた植込みがみえる。
「誘われたから」
透はぽつりとこたえた。
「暇だし」
詩史はわずかに首をかしげ、透をじっとみている。
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 楼主| 发表于 2006-6-8 09:58:49 | 显示全部楼层
昨日、大学の友人と一緒にバスケット部の試合を見に行った。それを詩史さんに話したのだった。試合が退屈だった。トーナメントの一回戦が二試合、午前と午後に行われ、透の大学は午前中に勝った。透は窓の外ばかりみていた。窓は高い位置にあり、木の枝と空しかみえなかったけれども。
「詩史さんは何をしてた?きのうの土曜日」
気分を変えるべくワインを啜り、透は聞いた。
「お店にいたわ」
詩史は答える。人差し指に紅い、大きな指輪をつけている。透の目でみると、小さい手の上で、それはなんだか子供じみた美しさを放っている、と、透は考える。
詩史はあまり食べない。メイン料理はいつも一皿だけ取って、それを胃に収めるのは透の仕事になっている。
「ね、何かもっと話して」
詩史は言った。透といるとき、詩史はいつもそう言うのだ。
「あなたはとても感じのいい話し方をするし、とてもいい言葉を使うから」
「いい言葉?」
聞き返すと、詩史は、
「そう。素直な言葉、本物の言葉」と、言う。
二年前に、初めて二人きりであったときにもそう言われた。
何かもっと話して、と。
母親のかわりに呼び出され、薄暗いバーでお酒を飲んだ日。
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 楼主| 发表于 2006-6-9 10:46:18 | 显示全部楼层
二年前、透が自分の生活に、詩史を加えてしまった日。加えたくなどなかったのに。
甘いソースのかかった鴨を片付けながら、透は耕二のことを話した。耕二と渋谷で会った日のことを。耕二のことをよく話す、詩史も憶えていて、共通の知りあいの話をきくようにきいてくれる、たのしそうに。それどころか、ややもすると、懐かしそうに。
「耕二くんって、ゴリラみたいな顔をしてる?」
詩史が突然そんなことを訊いた。
「ゴリラ?いや、そんな顔じゃない」
戸惑いながらこたえた。耕二はもっと、骨ばった顔をしている。
「なんだ、違うの」
詩史が言い、タバコをくわえて火をつけた。ひっそり笑いながら、横を向いて煙を吐く。
「ゴリラみたいな感じだろうと思ってたの。話を聞くと、いつも」
「いいな、それ。今度言っとくよ」
陽気な気分になってこたえた。耕二はきっとおこるだろう。
デザートの説明に来たウェイターを、詩史は小さく首をふって断った。
提案ではなく決定だった。詩史さんはいつもそうだ。なんでもちゃんと決めている。
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 楼主| 发表于 2006-6-12 15:58:55 | 显示全部楼层
客が一人もいなくても、店員は球を突いてはいけないことになっている。当然だ、と、耕二は思う。午後七時。昼間の客がすっかり帰り、店はつかの間がらんとしている。
ビリヤード場というのは面白いところだ。下手な奴はめったに来ない。学生のグループも中年のカップルも、みんなそれなりにいい音で球を突く。
昼間、喜美子と寝た。ラブホテルとかファッションホテルとか呼ばれる類の場所で二時間あまりの逢瀬だった。
十六歳の夏には、はじめてできた彼女と初心者同士でして以来、耕二は八人の女と――なりゆきも含めて――寝た。喜美子とのそれは、その中で群を抜いている。圧倒的だ。合性とよばれるものなのか、テクニックと呼ばれるものなのか。耕二は分からなかったがともかくいつも感動する。感動。それがぴったり表現だった。
喜美子は稽古事フリークなので、週に四日外に出る。愛車の赤いフィアット・パンダに乗って。\
フィアット・パンダ。耕二は微笑ましく思い出す。二人が出会ったそもそものきっかけが、その赤い車だったのだ。七か月前、イベント会場のだだっぴろい駐車場でアルバイトをしたときだ。耕二の仕事は車の誘導で、トランシーバーを持たされて、見張りの塔のようなところにすわった別の男から、「Eの8」「Cの6」だの指示を受け、そこに車をつれていく、というものだった。
彼女の駐車場所は隅だった。喜美子はてこずった。手前にでかい車が停まっていて、何度もハンドルをきり直しては、車の中で悪態をつくのがみえた。やがて、するすると窓があき、
「やってもらえないかしら」
と不機嫌な声がした。
「それは私の仕事じゃありませんから」
耕二は断った。運転を代わったりしていけないと、あらかじめ言い渡されていたのだ。\
「お願い」
喜美子は片手でおがむ恰好をした。
「私は駐車苦手なのよ」
知ったことか、と、思った。ばばあ、と。
「私が隣の車にぶつかったりしたら、あなただって責任を問われるでしょう?」
「いいえ」
耕二はきっぱり言ってやった。喜美子は悲しそうな顔をした。
トランシーバーで見張りの男に相談すると、男は、代わってやれ、と、言った。しょうがねえな、と。
「高いですよ」
車を止めながら、耕二は言った。
「俺はただで働きませんから」
人妻を誘うのは簡単だ。あのときもいまも、耕二はそう思っている。あの人たちは楽しみに飢えているのだ。秘かなたのしみに、日常からの脱出。
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 楼主| 发表于 2006-6-13 14:19:11 | 显示全部楼层
喜美子の習い事は諳んじているのだ。華道も茶道も「いけるところまでいった」という喜美子は目下フラメンコに夢中になっている。そのほかにヨガと料理とフランス語を習っていて、今日はヨガの日だった。
ヨガの教室は恵比寿にある。よって恵比寿のホテルにいった。
喜美子は黒い下着をつけている。抱くと肋骨があたるほど痩せていて、しかしフラメンコの賜物か、手足は美しく筋肉がついて力強い。手のひらの大きいことが昔からコンプレックスなのだと言っていた。
耕二は喜美子の手のひらがすきだ。普通つめたいのに、ベットでは温度があがるところも、耕二は肌をなでるときの狡猾な動きも、股間に滑り込み、耕二をやさしくつかんだり包んだりするときの貪欲な甘さも。
「どうしたらいい」
耕二はときどき聞いてみる。
「どうしたら俺はもっと喜美子さんをよくしてあげられる?」
そのたびに喜美子は股間から顔を上げ、
「黙って」
と、言うのだった。
喜美子はまた、不思議なほどしなる身体をしていた。耕二の動きの一つ一つに彼女の肉体が幸福がるのがわかったし、耕二は肌に小さく息をこぼすだけで、喜美子は唇をふるわせた。そのくせ、どんなに激しいキスをしてやっても、たりないとばかりに足を絡める。身を反転させ、キスのさなか、まるでもっとというように、耕二の頬に手を添えさえした。喜美子の肌は、耕二の肌にぴたりと添う。
くんづぼぐれつ、という言葉がけんかのためのものではないということを、耕二は喜美子に知らされた。
喜美子とのセックスには果てがなかった。波のように、いつまでも満ち干きを繰り返せそうな気がした。
やがて、喜美子はほんとうにせつなそうに、
「お願い、もう許して」
耕二にとって、たとえば話をするときに、由利は由利でなければならなかった。ほかの可愛い女の子ではだめで、由利は由利だからいいのだ。(話をしているとき、由利の目はいきいきとひかる。どこか甘えた口調で、それでいて頭の回転がはやく、耕二には想像もつかない方向に、言葉がどんどん出かけていく)ただ、セックスとなると別だった。由利とのそれは、ほかのかわいい女とのそれでもおなじ気がする。そこが喜美子との違いだ。喜美子とのそれは、喜美子と自分とのあいだにしか成立しないものだと思う。二人だけにしかつくれないものだ。
「勉強家ですね」
バイトの仲間の声に、耕二は現実に引き戻される。ひざにひろげた商法の本――来週試験があるのだ――は、みてもいあなかった。
「そろそろお客さんきますよ」
「そうだな」
繁華街のビリヤード場は静かで、黒服のバイトが数人、カウンターにもたれてしゃべっている。
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 楼主| 发表于 2006-6-14 15:41:09 | 显示全部楼层
深夜、透が部屋で本を読んでいると、泥酔した母親が帰宅した。
「ほら、陽子さん、お家ですよ」
「靴、陽子さん靴を脱いで」
幾人かの女の声がする
「しようがないな」
透は舌打ちをして立ち上がった。女たちが部屋に上がりこむ音、台所の床を踏む足音。
「すみません」
透は廊下にでて女たちに言った。母親は台所で流し台の縁につかまって立っている。
「あら、透、ひさしぶり」
「ひさしぶりじゃないよ、今朝も会ったでしょう」
台所にいき、冷蔵庫からミネラルウォーターの壜をだしてコップについだ。
「酔っ払っちゃったわ」
母親は低い声で言う。
「みればわかるよ」
そのあいだも、女たちは背後で喧しい。やさしい息子さん、とか、素敵なお家とか。アルコールのせいで一様につややかな顔をして、もとはさぞべったり塗ってあったのだろうと思われる口紅が、おびただしい――に違いない――飲食のせいではげてうすくなっている。もはやすっかり体臭と同化した。数種類の香水の匂い。
年上の女が好きだなという耕二に、このありさまをみせてやりたいと思った。
「何本飲んだの」
透の母親はワインが好きだ。ワインのない人生を生きる気がない、と宣言している。
「ほんとうにすみませんでした、ご迷惑をおかけして」
透はあらためて女たちに言った。もう帰れという意味だと、一体どう言えば通じるのだろうかと訝りながら。
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 楼主| 发表于 2006-6-20 10:47:19 | 显示全部楼层
「大学の奴らってさ、なんか刹那的じゃない?」
電話口で、耕二はそんなことを言った。晴れた真昼、透の家の居間は日がふんだんにさしてあかるい。
「なんていうか、いましかたのしめねえみたいにさ」
こういうことを言うときの耕二が、透は昔から好きだ。愛があると思う。耕二は他人のことでもちろんと胸を痛める。
「仕方ないよ、それも」
透は微笑を含んだ声で答える。
「いろんな奴がいるよ」
数人の顔を思い浮かべた。学校を来る前に、毎朝縄跳びをするのが日課の奴とか、いつも女の子たちとしか昼飯を食わない奴とか。
「そりゃそうだけどさ」
「それよりどうしてるの、最近」
置き時計をみた。午後三時四十分。もうすぐ詩史から電話がかかる。
「ばたばたしてる。冬休みに入って、バイト一個ふやしたりしたし」
「へえ、なんの?」
たまには音楽でも聴きましょう。この前詩史さんはそういった。知り合いの娘さんがピアノを弾いてるの、と。
「デパートの倉庫」
「きつそうだな」
詩史さんはバッハが好きだ。マンションに行くと、ときどきかけてくれる。
「先週は由利ちゃんとスキーにいった」
「へえ」
「来週、バイト先の連中とまたスキーだし」
「へえ」
「もうすぐクリスマスだし」
いつからだろう。いつから耕二と電話をしているときまで、詩史のことを考えるようになったのだろう。
「透は?忙しいの、最近」
いや、とこたえて、もう一度時計をみる。三時四十五分。
「別に忙しくなんかないよ、冬休みだし」
「何してんだよ、毎日」
「・・・本読んだり」
本は、詩史との、数少ない共通項の一つだ。
「ああ、このあいだはバスケットを観にいった」
「バスケ?なんで?」
「誘われたから」
みんな理由を聞くのだ。コードレスフォンを肩ではさみ、透はやかんを火につける。
「どうせ一回戦まけだろ」
透の大学は、スポーツで名を馳せたためしがない。
「あとは、週に二回家庭教師のバイトにいくくらいかな」
一年前から中学生に英語と数学を教えている。
「暇そうだな」
「暇だよ」
カップにインスタントコーヒーの顆粒をいれ、やかんからお湯をそそぐ。たちまちうすっぺらな香りが鼻にとどく。
「詩史さんが元気?」
「ああ」
透はコーヒーをすすり、三たび時計をみる。詩史の話をしたくなかった。しても分かるはずがないのだ。年上の女を故意に選んでたのしんでいるような耕二に。
「黙るなよ」
耕二が言った。
「気難しいお子様みたいにさ」
透はむっとする
「詩史さんの話をしたくないんだ」
「なんで?」
「なんでも」
恋はするものじゃなく、落ちるものだ。
透はそれを、詩史に教わった。いったん落ちたが最後、浮上は困難だということも
わかった、と、耕二はいった。わかった、お手上げだ、と。
「また電話するよ」
「了解」
透はこたえて、電話を切った。
もうすぐだ。もうすぐ詩史さんから電話がかかる。午後四時。透は膝を抱えて頭をのせ、目をとじて待った。
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发表于 2006-11-14 21:21:17 | 显示全部楼层
太厉害了~辛苦了~
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发表于 2007-11-19 23:09:33 | 显示全部楼层
ほんとうに、ありがたい
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发表于 2007-11-20 15:28:53 | 显示全部楼层
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发表于 2007-11-22 21:17:07 | 显示全部楼层
谢谢 ありがとう  
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