透の「そうだな」は、文字どおりそうしたいという意味で言ったものだったが、耕二は不服だったようで、
「つめたいよなあ」
と大きな声で言った。
「月に一度くらいは会おうぜ」
透は苦笑する。
「だっていそがしいだろう、バイトだの何だのでさ」
高校時代から、耕二の忙しさは変わらない。
「忙しいさ」
耕二は胸をはった。
「でも時間はつくるよ。必要なものには時間はつくる」
きっぱりした言い方だった。透はなんとなく幸福になる。
「俺は暇だから」
人混みを歩きながらいった。
「いつでもいいよ、あいたでも」
人の多い街だ。勤め帰りの人々も高校生も、きりもなくあふれでてくる。透は渋谷という街が好きだ。詩史さんは青山が好きだが、透は渋谷の方がくつろげる気がする。 |