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[好书连载] 哈利波特日文版 「ハリー・ポッターと賢者の石」(完结)

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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:42:50 | 显示全部楼层
 男の子が三人入ってきた。ハリーは真ん中の一人が誰であるか一目でわかった。あのマダム・マルキン洋装店にいた、青白い子だ。ダイアゴン横丁の時よりずっと強い関心を示してハリーを見ている。
「ほんとかい? このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話でもちきりなんだけど。それじゃ、君なのか?」
「そうだよ」とハリーが答えた。
 ハリーはあとの二人に目をやった。二人ともガッチリとして、この上なく意地悪そうだった。
 青白い男の子の両脇に立っていると、ボディガードのようだ。
「ああ、こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ」
 ハリーの視線に気づいた青白い子が、無造作に言った。
「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
 ロンは、クスクス笑いをごまかすかのように軽く咳払いをした。ドラコ・マルフォイが目ざとくそれを見とがめた。
「僕の名前が変だとでも言うのかい? 君が誰だか聞く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子どもがいるってね」
 それからハリーに向かって言った。
「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
 男の子はハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。
「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」ハリーは冷たく言った。
 ドラコ・マルフォイは真っ赤にはならなかったが、青白い頬にピンク色がさした。
「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね」からみつくような言い方だ。「もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。君の両親も、何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」
 ハリーもロンも立ち上がった。ロンの顔は髪の毛と同じぐらい赤くなった。
「もう一ぺん言ってみろ」ロンが叫んだ。
「へえ、僕たちとやるつもりかい?」マルフォイはせせら笑った。

「いますぐ出ていかないならね」ハリーはきっぱり言った。
 クラップもゴイルも、ハリーやロンよりずっと大きかったので、内心は言葉ほど勇敢ではなかった。
「出ていく気分じゃないな。君たちもそうだろう? 僕たち、自分の食べ物は全部食べちゃったし、ここにはまだあるようだし」
 ゴイルはロンのそばにある蛙チョコに手を伸ばした……ロンは跳びかかった、が、ゴイルにさわるかさわらないうちに、ゴイルが恐ろしい悲鳴を上げた。
 ねずみのスキャバーズが指に食らいついている。鋭い小さい歯がゴイルの指にガップリと食い込んでいる……ゴイルはスキャバーズをグルグル振り回し、喚き、クラップとマルフォイは後ずさりした。やっと振りきって、スキャバーズは窓に叩きつけられ、三人とも足早に消え去った。もしかしたら、菓子にもっとねずみが隠れていると思ったのかもしれないし、誰かの足音が聞こえたのかもしれない。
 ハーマイオニー・グレンジャーが間もなく顔を出した。
「いったい何やってたの?」
 床いっぱいに菓子は散らばっているし、ロンはスキャバーズのしっぽをつかんでぶら下げていた。
「こいつ、ノックアウトされちゃったみたい」ロンはハリーにそう言いながら、もう一度よくスキャバーズを見た。
「ちがう……驚いたなあ……また眠っちゃってるよ」
 本当に眠っていた。
「マルフォイに会ったことあるの?」
 ハリーはダイアゴン横丁での出会いを話した。
「僕、あの家族のことを聞いたことがある」
 ロンが暗い顔をした。
「『例のあの人』が消えた時、真っ先にこっち側に戻ってきた家族の一つなんだ。魔法をかけられてたって言ったんだって。パパは信じないって言ってた。マルフォイの父親なら、闇の陣営に味方するのに特別な口実はいらなかったろうって」
 ロンはハーマイオニーの方を振り向いて今さらながら尋ねた。
「何かご用?」
「二人とも急いだ方がいいわ。ローブを着て。私、前の方にいって運転手に開いてきたんだけど、もうまもなく着くって。二人とも、けんかしてたんじゃないでしょうね? まだ着いてもいないうちから問題になるわよ!」
「スキャバーズがけんかしてたんだ。僕たちじゃないよ」
 ロンはしかめっ面でハーマイオニーをにらみながら言った。
「よろしければ、着替えるから出てってくれないかな?」
「いいわよ――みんなが通路でかけっこしたりして、あんまり子供っぽい振る舞いをするもんだから、様子を見に来てみただけよ」
 ハーマイオニーはツンと小バカにしたような声を出した。
「ついでだけど、あなたの鼻、泥がついてるわよ。気がついてた?」
 ロンはハーマイオニーが出ていくのをにらみつけていた。ハリーが窓からのぞくと、外は暗くなっていた。深い紫色の空の下に山や森が見えた。汽車は確かに徐々に速度を落としているようだ。
 二人は上着を脱ぎ、黒い長いローブを着た。ロンのはちょっと短すぎて、下からスニーカーがのぞいている。
 車内に響き渡る声が聞こえた。
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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:43:11 | 显示全部楼层
「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」
 ハリーは緊張で胃がひっくり返りそうだったし、ロンはそばかすだらけの顔が青白く見えた。
 二人は残った菓子を急いでポケットに詰め込み、通路にあふれる人の群れに加わった。
 汽車はますます速度を落とし、完全に停車した。押し合いへし合いしながら列車の戸を開けて外に出ると、小さな、暗いプラットホームだった。夜の冷たい空気にハリーは身震いした。
 やがて生徒たちの頭上にユラユラとランプが近づいてきて、ハリーの耳に懐かしい声が聞こえた。
「イッチ(一)年生! イッチ年生はこっち! ハリー、元気か?」
 ハグリッドの大きなひげ面が、ずらりと揃った生徒の頭のむこうから笑いかけた。
「さあ、ついてこいよ――あとイッチ年生はいないかな? 足元に気をつけろ。いいか! イッチ年生、ついてこい!」
 滑ったり、つまずいたりしながら、険しくて狭い小道を、みんなはハグリッドに続いて降りていった。右も左も真っ暗だったので、木がうっそうと生い茂っているのだろうとハリーは思った。みんな黙々と歩いた。ヒキガエルに逃げられてばかりいた少年、ネビルが、一、二回鼻をすすった。
「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ」
 ハグリッドが振り返りながら言った。
「この角を曲がったらだ」
「うお一っ!」
 一斉に声が湧き起こった。
 狭い道が急に開け、大きな黒い湖のほとりに出た。むこう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見えた。大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。
「四人ずつボートに乗って!」
 ハグリッドは岸辺につながれた小船を指さした。ハリーとロンが乗り、ネビルとハーマイオニーが続いて乗った。
「みんな乗ったか?」
 ハグリッドが大声を出した。一人でボートに乗っている。
「よーし、では、進めえ!」
 ボート船団は一斉に動き出し、鏡のような湖面を滑るように進んだ。みんな黙って、そびえ立つ巨大な城を見上げていた。むこう岸の崖に近づくにつれて、城が頭上にのしかかってきた。
「頭、下げぇー!」
 先頭の何艘かが崖下に到着した時、ハグリッドが掛け声をかけた。一斉に頭を下げると、ボート船団は蔦のカーテンをくぐり、その陰に隠れてポッカリと空いている崖の入口へと進んだ。城の真下と思われる暗いトンネルをくぐると、地下の船着き場に到着した。全員が岩と小石の上に降り立った。
「ホイ、おまえさん! これ、おまえのヒキガエルかい?」
 みんなが下船した後、ボートを調べていたハグリッドが声を上げた。
「トレバー!」
 ネビルは大喜びで手を差し出した。生徒たちはハグリッドのランプの後に従ってゴツゴツした岩の路を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。
 みんなは石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。
「みんな、いるか? おまえさん、ちゃんとヒキガエル持っとるな?」
 ハグリッドは大きな握りこぶしを振り上げ、城の扉を三回叩いた。


第7章 組分け帽子
CHAPTER SEVEN The Sorting Hat

 扉がぱッと開いて、エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。とても厳格な顔つきをしている。この人には逆らってはいけない、とハリーは直感した。
「マクゴナガル教授、イッチ(一)年生の皆さんです」ハグリッドが報告した。
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
 マクゴナガル先生は扉を大きく開けた。玄関ホールはダーズリーの家がまるまる入りそうなほど広かった。石壁が、グリンゴッツと同じような松明の炎に照らされ、天井はどこまで続くかわからないほど高い。壮大な大理石の階段が正面から上へと続いている。
 マクゴナガル先生について生徒たちは石畳のホールを横切っていった。入口の右手の方から、何百人ものざわめきが聞こえた――学校中がもうそこに集まっているにちがいない――しかし、マクゴナガル先生はホールの脇にある小さな空き部屋に一年生を案内した。生徒たちは窮屈な部屋に詰め込まれ、不安そうにキョロキョロしながら互いに寄りそって立っていた。
「ホグワーツ入学おめでとう」マクゴナガル先生が挨拶をした。
「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる問、寮生が学校でのみなさんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。
 寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは、自分の属する寮の得点になりますし、反対に規則に違反した時は寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるよう望みます」
「まもなく全校列席の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」
 マクゴナガル先生は一瞬、ネビルのマントの結び目が左耳の下の方にズレているのに目をやり、ロンの鼻の頭が汚れているのに目を止めた。ハリーはソワソワと髪をなでつけた。
「学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」
 先生が部屋を出ていった。ハリーはゴクリと生つばを飲み込んだ。
「いったいどうやって寮を決めるんだろう」
 ハリーはロンにたずねた。
「試験のようなものだと思う。すごく痛いってフレッドが言ってたけど、きっと冗談だ」
 ハリーはドキドキしてきた。試験? 全校生徒がいる前で? でも魔法なんてまだ一つも如らないし――一体全体僕は何をしなくちゃいけないんだろう。ホグワーツに着いたとたんにこんなことがあるなんて思ってもみなかった。ハリーは不安げにあたりを見わたしたが、ほかの生徒も怖がっているようだった。みんなあまり話もしなかったが、ハーマイオニー・グレンジャーだけは、どの呪文が試験に出るんだろうと、今までに覚えた全部の呪文について早口でつぶやいていた。ハリーはハーマイオニーの声を聞くまいと必死だった。これまでこんなに緊張したことはない。以前、いったいどうやったのかはわからないが、ハリーが先生のかつらの色を青くしてしまった、という学校からの手紙をダーズリー家に持って帰った時でさえ、こんなにビクビクはしなかった。ハリーはドアをジッと見続けた。今にもドアが開き、マクゴナガル先生が戻ってきてハリーの暗い運命が決まるかもしれない。
 突然不思議なことが起こった。ハリーは驚いて三十センチも宙に跳び上がってしまったし、ハリーの後ろにいた生徒たちは悲鳴を上げた。
「いったい……?」
 ハリーは息をのんだ。周りの生徒も息をのんだ。後ろの壁からゴーストが二十人ぐらい現れたのだ。真珠のように白く、少し透き通っている。みんな一年生の方にはほとんど見向きもせず、互いに話をしながらスルスルと部屋を横切っていった。なにやら議論しているようだ。
 太った小柄な修道士らしいゴーストが言う。
「もう許して忘れなされ。彼にもう一度だけチャンスを与えましょうぞ」
「修道士さん。ピーブズには、あいつにとって十分過ぎるくらいのチャンスをやったじゃないか。我々の面汚しですよ。しかも、ご存知のように、やつは本当のゴーストじやない――おや、君たち、ここで何してるんだい」
 ひだがある襟のついた服を着て、タイツをはいたゴーストが、急に一年生たちに気づいて声をかけた。誰も答えなかった。
「新入生じゃな。これから組分けされるところか?」
 太った修道士が一年生にほほえみかけた。二、三人が黙ってうなずいた。
「ハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの」と修道士がいった。
「さあ行きますよ」厳しい声がした。
「組分け儀式がまもなく始まります」
 マクゴナガル先生が戻ってきたのだ。ゴーストが一人ずつ壁を抜けてフワフワ出ていった。
「さあ、一列になって。ついてきてください」マクゴナガル先生が言った。
 足が鉛になったように妙に重かった。ハリーは黄土色の髪の少年の後ろに並び、ハリーの後にはロンが続いた。一年生は部屋を出て再び玄関ホールに戻り、そこから二重扉を通って大広間に入った。
 そこには、ハリーが夢にも見たことのない、不思議ですばらしい光景が広がっていた。何千というろうそくが空中に浮かび、四つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラ輝く金色のお皿とゴブレットが置いてあった。広間の上座にはもう一つ長テーブルがあって、先生方が座っていた。マクゴナガル先生は上座のテーブルのところまで一年生を引率し、上級生の方に顔を向け、先生方に背を向けるかっこうで一列に並ばせた。一年生を見つめる何百という顔が、ろうそくのチラチラする明かりで青白い提灯のように見えた。
 その中に点々と、ゴーストが銀色のかすみのように光っていた。みんなが見つめる視線から逃れるように、ハリーが天井を見上げると、ビロードのような黒い空に星が点々と光っていた。
「本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」ハーマイオニーがそう言うのが聞こえた。
 そこに天井があるなんてとても思えない。大広間はまさに天空に向かって開いているように感じられた。
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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:46:27 | 显示全部楼层
 マクゴナガル先生が一年生の前に黙って四本足のスツールを置いたので、ハリーは慌てて視線を戻した。椅子の上には魔法使いのかぶるとんがり帽子が置かれた。この帽子ときたら、つぎはぎの、ボロボロで、とても汚らしかった。ペチュニアおばさんならこんな帽子は家の中に置いておかないだろう。
 もしかしたら帽子からウサギを出すのかな。あてずっぽうにハリーはそんなことを考えていたが、みんなが帽子をじっと見つめているのに気づいて、ハリーも帽子を見た。一瞬、広間は水を打ったように静かになった。すると、帽子がピクピク動いた。つばのへりの破れ目が、まるで口のように開いて、帽子が歌いだした。



 私はきれいじゃないけれど
 人は見かけによらぬもの
 私をしのぐ賢い帽子
 あるなら私は身を引こう
 山高帽子は真っ黒だ
 シルクハットはすらりと高い
 私はホグワーツ組分け帽子
 私は彼らの上をいく
 君の頭に隠れたものを
 組分け帽子はお見通し
 かぶれば君に教えよう
 君が行くべき寮の名を

 グリフィンドールに行くならば
 勇気ある者が住う寮
 勇猛果敢な騎士道で
 他とは違うグリフィンドール

 ハッフルパフに行くならば
 君は正しく忠実で
 忍耐強く真実で
 苦労を苦労と思わない

 古き賢きレイブンクロー
 君に意欲があるならば
 機知と学びの友人を
 ここで必ず得るだろう

 スリザリンではもしかして
 君はまことの友を得る
 どんな手段を使っても
 目的遂げる狡猾さ

 かぶってごらん! 恐れずに!
 興奮せずに、お任せを!
 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
 だって私は考える帽子!


 歌が終わると広間にいた全員が拍手喝さいをした。四つのテーブルにそれぞれお辞儀して、帽子は再び静かになった。
「僕たちはただ帽子をかぶればいいんだ! フレッドのやつ、やっつけてやる。トロールと取っ組み合いさせられるなんて言って」ロンがハリーにささやいた。
 ハリーは弱々しくほほえんだ。
 ――そりゃ、呪文よりも帽子をかぶる方がずっといい。だけど、誰も見ていないところでかぶるんだったらもっといいのに。
 帽子はかなり要求が多いように思えた。今のところハリーは勇敢でもないし、機知があるわけでもないし、どの要求にも当てはまらないような気がした。帽子が、「少し気分が悪い生徒の寮」と歌ってくれていたなら、まさにそれが今のハリーだった。
 マクゴナガル先生が長い羊皮紙の巻紙を手にして前に進み出た。
「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください」
「アボット・ハンナ!」
 ピンクの頬をした、金髪のおさげの少女が、転がるように前に出てきた。帽子をかぶると目が隠れるほどだった。腰掛けた。一瞬の沈黙……
「ハッフルパフ!」と帽子が叫んだ。
 右側のテーブルから歓声と拍手が上がり、ハンナはハッフルパフのテーブルに着いた。ハリーは太った修道士のゴーストがハンナに向かってうれしそうに手を振るのを見た。
「ボーンズ・スーザン!」
 帽子がまた「ハッフルパフ!」と叫び、スーザンは小走りでハンナの隣に座った。
「ブート・テリー!」
「レイブンクロー!」
 今度は左端から二番目のテーブルに拍手がわき、テリーが行くと何人かが立って握手で迎えた。
 次の「ブロックルハースト・マンディ」もレイブンクローだったが、その次に呼ばれた「ブラウン・ラベンダー」が訂めてグリフィンドールになった。一番左端のテーブルからはじけるような歓声が上がった。ハリーはロンの双子の兄弟がヒューッと口笛を吹くのを見た。
 そして「ブルストロード・ミリセント」はスリザリンになった。スリザリンについてあれこれ聞かされたので、ハリーの思い込みなのかもしれないが、この寮の連中はどうも感じが悪いとハリーは思った。
 ハリーはいよいよ決定的に気分が悪くなってきた。学校で体育の時間にチームを組んだ時のことを思い出した。ハリーが下手だからというわけではなく、ハリーを誘うとダドリーに目をつけられるので、みんないつも最後までハリーをのけものにした。
「フィンチ-フレッチリー・ジャスティン!」
「ハッフルパフ!」
 帽子がすぐに寮名を呼び上げる時と、決定にしばらくかかる時があることにハリーは気づいた。ハリーの前に並んでいた黄土色の髪をした少年、「フィネガン・シェーマス」など、まるまる一分間椅子に座っていた。それからやっと帽子は「グリフィンドール」と宣言した。
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
 ハーマイオニーは走るようにして椅子に座り、待ちきれないようにグイッと帽子をかぶった。
「グリフィンドール!」
 帽子が叫んだ。ロンがうめいた。
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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:46:49 | 显示全部楼层
 ハリーは急に恐ろしい考えにとらわれた。ドキドキしているから、そんな考えが浮かんでくるのだ。どの寮にも選ばれなかったらどうしよう。帽子を目の上までかぶったまま永遠に座り続けている――ついにマクゴナガル先生がやってきて帽子をぐいと頭から取り上げ、何かの問違いだったから汽車に乗ってお帰りなさい、と言う――もしそうなったらどうしよう?
 ヒキガエルに逃げられてばかりいた「ロングボトム・ネビル」が呼ばれた。ネビルは椅子まで行く途中で転んでしまった。決定にしばらくかかったが、帽子はやっと「グリフィンドール!」と叫んだ。
 ネビルは帽子をかぶったままかけ出してしまい、爆笑の中をトボトボ戻って、次の「マクドゥガル・モラグ」に渡した。
 マルフォイは名前を呼ばれるとふんぞり返って前に進み出た。望みはあっという間にかなった。帽子はマルフォイの頭にふれるかふれないうちに「スリザリン!」と叫んだ。
 マルフォイは満足げに仲間のクラップやゴイルのいる席に着いた。残っている生徒は少なくなってきた。
「ムーン」……「ノット」……「パーキンソン」……、双子の「パチル」姉妹……、「パークス・サリー-アン」……、そして、ついに――
「ポッター・ハリー!」
 ハリーが前に進み出ると、突然広間中にシーッというささやきが波のように広がった。
「ポッタ一って、そう言った?」
「あのハリー・ポッターなの?」
 帽子がハリーの目の上に落ちる直前までハリーが見ていたのは、広間中の人たちが首を伸ばしてハリーをよく見ようとしている様子だった。次の瞬間、ハリーは帽子の内側の闇を見ていた。ハリーはじっと待った。
「フーム」低い声がハリーの耳の中で聞こえた。
「むずかしい。非常にむずかしい。ふむ、勇気に満ちている。頭も悪くない。才能もある。おう、なんと、なるほど……自分の力を試したいというすばらしい欲望もある。いや、おもしろい……さて、どこに入れたものかな?」
 ハリーは椅子の縁を握りしめ、「スリザリンはダメ、スリザリンはダメ」と思い続けた。
「スリザリンは嫌なのかね?」小さな声が言った。
「確かかね? 君は偉大になれる可能性があるんだよ。そのすべては君の頭の中にある。スリザリンに入れば間違いなく偉大になる道が開ける。嫌かね? よろしい、君がそう確信しているなら……むしろ、グリフィンドール!」
 ハリーは帽子が最後の言葉を広間全体に向かって叫ぶのを聞いた。帽子を脱ぎ、ハリーはフラフラとグリフィンドールのテーブルに向かった。選んでもらえた、しかもスリザリンではなかった、その安堵感でハリーは頭がいっぱいで、最高の割れるような歓声に迎えられていることにもまったく気づかなかった。監督生パーシーも立ち上がり、力強くハリーと握手した。双子のウィーズリー兄弟は、「ポッターを取った! ポッターを取った!」と歓声を上げていた。
 ハリーはさっき出会ったひだ襟服のゴーストとむかい合って座った。ゴーストはハリーの腕を軽く叩いた。とたんにハリーは冷水の入ったバケツに腕を突っ込んだようにゾーッとした。
 寮生のテーブルに着いたので、ハリーははじめて上座の来賓席を見ることができた。ハリーに近いほうの端にハグリッドが座っていて、ハリーと目が合うと親指を上げて「よかった」という合図をした。ハリーも笑顔を返した。来賓席の真ん中で、大きな金色の椅子にアルバス・ダンブルドアが座っていた。汽車の中で食べた蛙チョコレートのカードに写真があったので、すぐにその人だとわかった。広間の中では、ゴーストとダンブルドアの白髪だけが同じようにキラキラ輝いているだけだった。「漏れ鍋」にいた若い神経質なクィレル先生もいた。大きな紫のターバンをつけた姿がひときわへんてこりんだった。
 まだ組分けがすんでいないのはあと三人だけになった。「タービン・リサ」はレイブンクロ一になった。次はロンの番だ。ロンは青ざめていた。ハリーはテーブルの下で手を組んで祈った。帽子はすぐに「グリフィンドール!」と叫んだ。
 ハリーはみんなと一緒に大きな拍手をした。ロンはハリーの隣の椅子に崩れるように座った。
「ロン、よくやったぞ。えらい」
 ハリーの隣から、パーシー・ウィーズリーがもったいぶって声をかけた。「ザビニ・ブレーズ」はスリザリンに決まった。マクゴナガル先生はクルクルと巻紙をしまい、帽子を片づけた。
 ハリーは空っぽの金の皿を眺めた。急にお腹がペコペコなのに気がついた。かぼちゃパイを食べたのが大昔のような気がした。
 アルバス・ダンブルドアが立ち上がった。腕を大きく広げ、みんなに会えるのがこの上もない喜びだというようにニッコリ笑った。
「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」ダンブルドアは席につき、出席者全員が拍手し歓声をあげた。ハリーは笑っていいのか悪いのかわからなかった。
「あの人……ちょっぴりおかしくない?」ハリーはパーシーに聞いた。
「おかしいだって?」
 パーシーはウキウキしていた。
「あの人は天才だ! 世界一の魔法使いさ! でも少しおかしいかな、うん。君、ポテト食べるかい?」
 ハリーはあっけにとられた。目の前にある大皿が食べ物でいっぱいになっている。こんなにたくさん、ハリーの食べたい物ばかり並んでいるテーブルは見たことがない。ローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、ゆでたポテト、グリルポテト、フレンチフライ、ヨークシャープディング、豆、にんじん、グレービー、ケチャップ、そしてなぜか、ハッカ入りキャンディ。
 ダーズリー家では飢え死にこそしなかったが、一度もお腹いっぱい食べさせてはもらえなかった。ハリーが食べたいものは、たとえ食べ過ぎて気持が悪くなっても、みんなダドリーが取り上げてしまった。ハリーは、ハッカ入りキャンディ以外は全部少しずつお皿に取って食べはじめた。どれもこれもおいしかった。
「おいしそうですね」
 ハリーがステーキを切っていると、ひだ襟服のゴーストが悲しげに言った。
「食べられないの?」
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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:48:20 | 显示全部楼层
「かれこれ四百年、食べておりません。もちろん食べる必要はないのですが、でもなつかしくて。まだ自己紹介しておりませんでしたね。ニコラス・ド・ミムジー-ポーピントン卿といいます。お見知りおきを。グリフィンドール塔に住むゴーストです」
「僕、君のこと知ってる!」ロンが突然口をはさんだ。
「兄さんたちから君のこと聞いてるよ。『ほとんど首無しニック』だ!」
「むしろ、呼んでいただくのであれば、ニコラス・ド・ミムジー……」
 とゴーストがあらたまった調子で言いかけたが、黄土色の髪のシェーマス・フィネガンが割り込んできた。
「ほとんど首無し? どうしてほとんど首無しになれるの?」
 ニコラス卿は会話がどうも自分の思う方向には進んでいかないので、ひどく気に障ったようだった。
「ほら、このとおり」
 ニコラス卿は腹立たしげに自分の左耳をつかみ引っ張った。頭が首からグラッとはずれ、蝶番で開くように肩の上に落ちた。誰かが首を切ろうとして、やりそこねたらしい。生徒たちが驚くので「ほとんど首無しニック」はうれしそうな顔をして頭をヒョイと元に戻し、咳払いをしてからこう言った。
「さて、グリフィンドール新入生諸君、今年こそ寮対抗優勝カップを獲得できるよう頑張ってくださるでしょうな? グリフィンドールがこんなに長い間負け続けたことはない。スリザリンが六年連続で寮杯を取っているのですぞ! 『血みどろ男爵』はもう鼻持ちならない状態です……スリザリンのゴーストですがね」
 ハリーがスリザリンのテーブルを見ると、身の毛のよだつようなゴーストが座っていた。うつろな目、げっそりとした顔、衣服は銀色の血でべっとり汚れている。マルフォイのすぐ隣に座っている。マルフォイはその席がお気に召さない様子なのでハリーはなんだかうれしかった。
「どうして血みどろになったの」と興味津々のシェーマスが聞いた。
「私、聞いてみたこともありません」と「ほとんど首無しニック」が言葉をにごした。
 全員がお腹いっぱいになったところで食べ物は消え去り、お皿は前と同じようにピカピカになった。まもなくデザートが現れた。ありとあらゆる味のアイスクリーム、アップルパイ、糖蜜パイ、エクレア、ジャムドーナツ、トライフル、いちご、ゼリー、ライスプディングなどなど……。
 ハリーが糖蜜パイを食べていると、家族の話題になった。
「僕はハーフなんだ。僕のパパはマグルで、ママは結婚するまで魔女だと言わなかったんだ。パパはずいぶんドッキリしたみたいだよ」とシェーマスが言った。
 みんな笑った。
「ネビルはどうだい」ロンが聞いた。
「僕、ばあちゃんに育てられたんだけど、ばあちゃんが魔女なんだ」
 ネビルが話し出した。
「でも僕の家族はズーッと僕が純粋マグルだと思ってたみたい。アルジー大おじさんときたら、僕に不意打ちを食わせてなんとか僕から魔法の力を引き出そうとしたの――僕をブラックプールの桟橋の端から突き落としたりして、もう少しでおぼれるところだった。でも八歳になるまでなんにも起こらなかった。八歳の時、アルジー大おじさんがうちにお茶にきた時、ぼくの足首をつかんで二階の窓からぶら下げたんだ。ちょうどその時エニド大おばさんがメレンゲ菓子を持ってきて、大おじさんたらうっかり手を離してしまったんだ。だけど、僕はまりみたいにはずんだんだ――庭に落ちて道路までね。それを見てみんな大喜びだった。ばあちゃんなんか、うれし泣きだよ。この学校に入学することになった時のみんなの顔を見せたかったよ。みんな僕の魔法力じゃ無理だと思ってたらしい。アルジー大おじさんなんかとてもよろこんでヒキガエルを買ってくれたんだ」
 テーブルの反対側では、パーシーとハーマイオニーが授業について話していた。
(「ほんとに、早く始まればいいのに。勉強することがいっぱいあるんですもの。わたし、特に変身術に興味があるの。ほら、何かをほかのものに変えるっていう術。もちろんすごくむずかしいっていわれてるけど……」「はじめは小さなものから試すんだよ。マッチを針に変えるとか……」)
 ハリーは体が暖かくなり、眠くなってきた。来賓席を見上げると、ハグリッドはゴブレットでグイグイ飲んでいた。マクゴナガル先生はダンブルドア先生と話している。バカバカしい夕ーバンを巻いたクィレル先生は、ねっとりした黒髪、鈎鼻、土気色の顔をした先生と話していた。
 突然何かが起こった。鈎鼻の先生がクィレル先生のターバン越しにハリーと目を合わせたとたん、ハリーの額の傷に痛みが走った。
「イタツ!」ハリーはとっさに手でパシリと額をおおった。
「どうしたの?」パーシーが尋ねた。
「な、なんでもない」
 痛みは急に走り、同じように急に消えた。しかしあの目つきから受けた感触は簡単には振り払えなかった。あの目はハリーが大嫌いだと言っていた……。
「あそこでクィレル先生と話しているのはどなたですか」とパーシーに聞いてみた。
「おや、クィレル先生はもう知ってるんだね。あれはスネイプ先生だ。どうりでクィレル先生がオドオドしてるわけだ。スネイプ先生は魔法薬学を教えているんだが、本当はその学科は教えたくないらしい。クィレルの席をねらってるって、みんな知ってるよ。闇の魔術にすごく詳しいんだ、スネイプって」
 ハリーはスネイプをしばらく見つめていたが、スネイプは二度とハリーの方を見なかった。
 とうとうデザートも消えてしまい、ダンブルドア先生がまた立ち上がった。広間中がシーンとなった。
「エヘン――全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。一年生に注意しておくが、構内にある森に入ってはいけません。これは上級生にも、何人かの生徒たちに特に注意しておきます」
 ダンブルドアはキラキラッとした目で双子のウィーズリー兄弟を見た。
「管理人のフィルチさんから授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がありました」
「今学期は二週目にクィディッチの予選があります。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡してください」
「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません」
 ハリーは笑ってしまったが、笑った生徒はほんの少数だった。
「まじめに言ってるんじゃないよね?」
 ハリーはパーシーに向かってつぶやいた。
「いや、まじめだよ」
 パーシーがしかめ面でダンブルドアを見ながら言った。
「へんだな、どこか立入禁止の場所がある時は必ず理由を説明してくれるのに……森には危険な動物がたくさんいるし、それは誰でも知っている。せめて僕たち監督生にはわけを言ってくれてもよかったのに」
「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」
 ダンブルドアが声を張り上げた。ハリーには他の先生方の笑顔が急にこわばったように見えた。
 ダンブルドアが魔法の杖をまるで杖先に止まったはえを振り払うようにヒョイと動かすと、金色のりぽんが長々と流れ出て、テーブルの上高く昇り、ヘビのようにクネタネと曲がって文字を書いた。
「みんな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」
 学校中が大声でうなった。


 ホグワーツ ホグワーツ
 ホグホグ ワッワッ ホグワーツ
 教えて どうぞ 僕たちに
 老いても ハゲても 青二才でも
 頭にゃなんとか詰め込める
 おもしろいものを詰め込める
 今はからっぽ 空気詰め
 死んだハエやら がらくた詰め
 教えて 価値のあるものを
 教えて 忘れてしまったものを
 ベストをつくせばあとはお任せ
 学べよ脳みそ 腐るまで
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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:52:31 | 显示全部楼层
 みんなバラバラに歌い終えた。とびきり遅い葬送行進曲で歌っていた双子のウィーズリー兄弟が最後まで残った。ダンブルドアはそれに合わせて最後の何小節かを魔法の杖で指揮し、二人が歌い終わった時には、誰にも負けないぐらい大きな拍手をした。
「ああ、音楽とは何にもまさる魔法じゃ」
 感激の涙をぬぐいながらダンブルドアが言った。
「さあ、諸君、就寝時間。かけ足!」
 グリフィンドールの一年生はパーシーに続いてペチャクチャと騒がしい人ごみの中を通り、大広間を出て大理石の階段を上がった。ハリーの足はまた鉛のように重くなったが、今度は疲れと満腹のせいだった。とても眠かったので、廊下を通るとき、壁にかけてある肖像画の人物がささやいたり生徒を指さしたりしても、気にならず、パーシーが引き戸の陰とタペストリーの裏の隠しドアを二度も通り抜けたのになんとも思わなかった。あくびをし、足を引きずりながら、階段また階段をのぼり、ハリーがいったいあとどのくらいかかるんだろうと思ったとたん、突然みんなが止まった。
 前方に杖が一束、空中に浮いていた。パーシーが一歩前進すると杖がバラバラと飛びかかってきた。
「ピーブズだ」
 とパーシーが一年生にささやいた。
「ポルターガイストのピーブズだよ」
 パーシーは大声を出した。
「ピーブズ、姿を見せろ」
 風船から空気が抜けるような、大きい無作法な音がそれに応えた。
「『血みどろ男爵』を呼んできてもいいのか?」
 ボンと音がして、意地悪そうな暗い目の、大きな口をした小男が現れた。あぐらをかき、杖の束をつかんで空中に漂っている。
「おおおぉぉぉぉ! かーわいい一年生ちゃん! なんて愉快なんだ!」
 小男は意地悪なかん高い笑い声を上げ、一年生めがけて急降下した。みんなはひょいと身を屈めた。
「ピーブズ、行ってしまえ。そうしないと男爵に言いつけるぞ。本気だぞ」
 パーシーが怒鳴った。
 ピーブズは舌をベーッと出し、杖をネビルの頭の上に落とすと消えてしまった。ついでにそこにあった鎧をガラガラいわせながら遠のいていくのが聞こえた。
「ピーブズには気をつけたほうがいい」
 再び歩き出しながらパーシーが言った。
「ピーブズをコントロールできるのは『血みどろ男爵』だけなんだ。僕ら監督生の言うことでさえ聞きゃしない。さあ、着いた」
 廊下のつきあたりには、ピンクの絹のドレスを着たとても太った婦人の肖像画がかかっていた。
「合言葉は?」とその婦人が開いた。
「カプート ドラコニス」
 パーシーがそう唱えると、肖像画がパッと前に開き、その後ろの壁に丸い穴があるのが見えた。みんなやっとその高い穴にはい登った――ネビルは足を持ち上げてもらわなければならなかった――穴はグリフィンドールの談話室につながっていた。心地よい円形の部屋で、フカフカしたひじかけ椅子がたくさん置いてあった。
 パーシーの指示で、女の子は女子寮に続くドアから、男の子は男子寮に続くドアからそれぞれの部屋に入った。らせん階段のてっぺんに――そこは、いくつかある塔の一つに違いない――やっとベッドが見つかった。深紅のビロードのカーテンがかかった、四本柱の天蓋つきベッドが五つ置いてあった。トランクはもう届いていた。クタクタに疲れてしゃべる元気もなく、みんなパジャマに着替えてベッドにもぐりこんだ。
「すごいごちそうだったね」
 ロンがカーテンごしにハリーに話しかけた。
「スキャバーズ、やめろ! こいつ、僕のシーツをかんでいる」
 ハリーはロンに糖蜜パイを食べたかどうか聞こうとしたが、あっという間に眠り込んでしまった。
 ちょっと食べ過ぎたせいか、ハリーはとても奇妙な夢を見た。ハリーがクィレル先生のターバンをかぶっていて、そのターバンがハリーに絶え間なく話しかけ、
「すぐスリザリンに移らなくてはならない。それが運命なのだから」
 と言うのだ。
「スリザリンには行きたくない」
 と言うと、ターバンはだんだん重くなり、脱ごうとしても、痛いほどに締めつけてくる――そして、マルフォイがいる。ハリーがターバンと格闘しているのを笑いながら見ている――突然マルフォイの顔が鈎鼻のスネイプに変わり、その高笑いが冷たく響く――緑色の光が炸裂し、ハリーは汗びっしょりになって震えながら目を覚ました。

 ハリーは寝返りをうち、再び眠りに落ちた。翌朝目覚めた時には、その夢をまったく覚えていなかった。
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 楼主| 发表于 2006-8-9 21:54:04 | 显示全部楼层
大家觉得怎么样啊?
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发表于 2006-8-10 03:58:35 | 显示全部楼层
多谢了,那第1部全部贴出来了吧.我可要打印了.
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发表于 2006-8-10 16:49:40 | 显示全部楼层
拿了东西不来说声谢谢的话实在不厚道……
非常感谢~~~
楼主大人把后面的一块贴了吧:)
顺便小声问一句:楼主在哪里找的?
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 楼主| 发表于 2006-8-16 07:22:40 | 显示全部楼层
因为文件在单位,我只能是没事时才能继续贴,会尽快把后面的发上来的
后面还有不少呢

Clover:就是在网上搜到的啊,呵呵
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 楼主| 发表于 2006-8-22 23:18:39 | 显示全部楼层
第8章 魔法薬の先生
CHAPTER EIGHT The Potions Master

「見て、見て」
「どこ?」
「赤毛ののっぽの隣」
「メガネをかけてるやつ?」
「顔見た?」
「あの傷を見た?」
 翌日ハリーが寮を出たとたん、ささやき声がつきまとってきた。教室が空くのを外で行列して待っている生徒たちが、つま先立ちでハリーを見ようとしたり、廊下ですれ違った後でわざわざ逆戻りしてきてジロジロ見たりした。ハリーにとっては迷惑だった。教室を探すだけでも精一杯だったからだ。
 ホグワーツには一四二もの階段があった。広い壮大な階段、狭いガタガタの階段、金曜日にはいつもと違うところへつながる階段、真ん中あたりで毎回一段消えてしまうので、忘れずにジャンプしなければならない階段……。扉もいろいろあった。丁寧にお願いしないと開かない扉、正確に一定の場所をくすぐらないと開かない扉、扉のように見えるけれど実は硬い壁が扉のふりをしている扉。物という物が動いてしまうので、どこに何があるのかを覚えるのもたいへんだった。肖像画の人物もしょっちゅう訪問し合っているし、鎧だってきっと歩けるに違いないとハリーは確信していた。
 ゴーストも問題だった。扉を開けようとしている時に、突然ゴーストがスルリと扉を通り抜けたりするとそのたびにヒヤッとした。「ほとんど首無しニック」はいつも喜んでグリフィンドールの新入生に道を教えてくれたが、授業に遅れそうになった時にポルターガイストのピーブズに出くわすと、二回も鍵のかかった扉にぶつかり、仕掛け階段を通るはめに陥った時と同じぐらい時間がかかったこともあった。ピーブズときたら、ゴミ箱を頭の上でぶちまけたり、足元の絨毯を引っ張ったり、チョークのかけらを次々とぶっつけたり、姿を隠したまま後ろからソーッと忍びよって、鼻をつまんで「釣れたぞ!」とキーキー声を上げたりした。
 ピーブズよりやっかいなのは……そんなのがいるとすればの話だが……管理人のアーガス・フィルチだった。一日目の朝から、ハリーとロンは根性悪のフィルチにみごとに大当たりしてしまった。無理やり開けようとした扉が、運の悪いことに四階の立ち入り禁止廊下の入口で、その現場をフィルチに見つかってしまったのだ。道に迷ったといっても信用しない。わざと押し入ろうとしたに違いない、地下牢に閉じ込めると脅された。その時はちょうど通りがかったクィレル先生のおかげで二人は救われた。
 フィルチはミセス・ノリスという猫を飼っていた。やせこけて、ほこりっぽい色をして、目はフィルチそっくりのランプみたいな出目金だった。ミセス・ノリスは一人で廊下の見廻りをしていた。彼女の目の前で規則違反をしようものなら、たとえ足の指一本が境界線を越えただけでも、あっという間にフィルチにご注進だ。二秒後にはフィルチが息を切らして飛んでくる。
 フィルチは秘密の階段を誰よりもよく知っていたので(双子のウィーズリーには負けるかもしれないが)、ゴーストと同じくらい突然ヒョイとあらわれた。生徒たちはみんなフィルチが大嫌いで、ミセス・ノリスを一度しこたま蹴飛ばしたいというのが、ひそかな熱い願いだった。
 やっとクラスへの道がわかったら、次はクラスでの授業そのものが大変だった。魔法とは、ただ杖を振っておかしなまじないを言うだけではないと、ハリーはたちまち思い知らされた。
 水曜日の真夜中には、望遠鏡で夜空を観察し、星の名前や惑星の動きを勉強しなくてはならなかった。週三回、ずんぐりした小柄なスプラウト先生と城の裏にある温室に行き、「薬草学」を学んだ。不思議な植物やきのこの育て方、どんな用途に使われるかなどを勉強した。
 なんといっても一番退屈なのは「魔法史」で、これは唯一、ゴーストが教えるクラスだった。ビンズ先生は昔数員室の暖炉の前で居眠りをしてしまい、その時にはすでに相当の歳だったのだが、翌朝起きてクラスに行くときに、生身の体を教員室に置き去りにしてきてしまったのだ。先生がものうげに一本調子で講義をする間、生徒たちは名前や年号をノートに採ったが、悪人エメリックと奇人ウリックを取り違えてしまったりするのだった。
「妖精の魔法」はフリットウィック先生の担当だった。ちっちゃな魔法使いで、本を積み上げた上に立ってやっと机越しに顔が出るほどだった。最初の授業で出席を取っていた時、ハリーの名前までくると興奮してキャッと言ったとたん、転んで姿が見えなくなってしまった。
 マクゴナガル先生はやはり他の先生とは違っていた。逆らってはいけない先生だというハリーの勘は当たっていた。厳格で聡明そのものの先生は、最初のクラスにみんなが着席するなりお説教を始めた。
「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出ていってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます」
 それから先生は机を豚に変え、また元の姿に戻してみせた。生徒たちは感激して、早く試したくてウズウズした。しかし、家具を動物に変えるようになるまでには、まだまだ時間がかかることがすぐわかった。さんざん複雑なノートを採った後、一人一人にマッチ棒が配られ、それを針に変える練習が始まった。授業が終わるまでにマッチ棒をわずかでも変身させることができたのは、ハーマイオニー・グレンジャーただ一人だった。マクゴナガル先生は、クラスの全員に、彼女のマッチ棒がどんなに銀色で、どんなに尖っているかを見せた後、ハーマイオニーの方にめったに見せないほほえみを見せた。
 みんなが一番待ち望んでいた授業は、「闇の魔術の防衛術」だったが、クィレルの授業は肩すかしだった。教室にはにんにくの強烈な匂いがプンプン漂っていた。噂では、これは先生がルーマニアで出会った吸血鬼を寄せつけないためで、いつまた襲れるかもしれないとビクビクしているらしい。クィレルの話では、ターバンはやっかいなゾンビをやっつけたときにアフリカの王子様がお礼にくれたものだということだった。生徒たちはどうも怪しいと思っていた。というのは、シェーマス・フィネガンが、はりきって、どうやってゾンビをやっつけたのかと質問すると、クィレルは赤くなって話をそらし、お天気について話しはじめたからだ。それに、ターバンがいつも変な匂いを漂わせているのにみんなは気がついた。双子のウィーズリーは、クィレルがどこにいても安全なように、ターバンにもにんにくを詰め込んでいるに違いないと言いはった。
 ハリーは、他の生徒に比べて自分が大して遅れを取っていないことがわかって、ホッとしていた。マグルの家から来た子もたくさんいて、彼らもハリーと同じように、ここに来るまでは自分が魔法使いや魔女であるとは夢にも思っていなかった。学ぶことがありすぎて、ロンのような魔法家族の子でさえ、初めから優位なスタートを切ったわけではなかった。
 ハリーとロンにとって金曜日は記念すべき日になった。大広間に朝食に下りて行くのに初めて一度も迷わずにたどりついたのだ。
「今日はなんの授業だっけ?」オートミールに砂糖をかけながら、ハリーがロンに尋ねた。
「スリザリンの連中と一緒に、魔法薬学さ。スネイプはスリザリンの寮監だ。いつもスリザリンをひいきするってみんなが言ってる――本当かどうか今日わかるだろう」
 とロンが答えた。
「マクゴナガルが僕たちをひいきしてくれたらいいのに」
 とハリーが言った。マクゴナガル先生はグリフィンドールの寮監だが、だからといって、昨日も、山ほど宿題を出すのをためらうわけではなかった。
 ちょうどその時郵便が届いた。ハリーはもう慣れっこになったが、一番最初の朝食の時、何百羽というふくろうが突然大広間になだれ込んできて、テーブルの上を旋回し、飼い主を見つけると手紙や小包をその膝に落としていくのを見て唖然としたものだった。
 ヘドウィグは今まで一度も何も物を運んできたことはなかった。でも時々、飛んできてはハリーの耳をかじったりトーストをかじったりしてから、ほかのふくろうと一緒に学校のふくろう小屋に戻って眠るのだった。ところが今朝は、マーマレードと砂糖入れの間にパタパタと降りてきて、ハリーの皿に手紙を置いていった。ハリーは急いで封を破るようにして開けた。
 下手な字で走り書きがしてあった。
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 楼主| 发表于 2006-8-22 23:19:03 | 显示全部楼层
親愛なるハリー
 金曜日の午後は授業がないはすだね。よかったら三時頃お茶に来ませんか。君の最初の一週間がどんなだったかいろいろ聞きたいです。ヘドウィヴに返事を持たせてください。
 ハグリッド

 ハリーはロンの羽ペンを借りて手紙の裏に「はい。喜んで。ではまた、後で」と書いてヘドウィグを飛ばせた。
 ハグリッドとのお茶という楽しみがあったのはラッキーだった。なにしろ魔法薬学の授業が、最悪のクラスになってしまったからだ。
 新入生の歓迎会の時から、スネイプ先生が自分のことを嫌っているとハリーは感じていた。
 魔法薬学の最初の授業で、ハリーは自分の考えが間違いだったと悟った。スネイプはハリーのことを嫌っているのではなかった――憎んでいるのだった。
 魔法薬学の授業は地下牢で行われた。ここは城の中にある教室より寒く、壁にずらりと並んだガラス瓶の中でアルコール漬けの動物がプカプカしていなかったとしても、十分気味が悪かった。
 フリットウィックと同じく、スネイプもまず出席を取った。そして、フリットウィックと同じく、ハリーの名前まできてちょっと止まった。
「あぁ、さよう」猫なで声だ。「ハリー・ポッター。われらが新しい――スターだね」
 ドラコ・マルフォイは仲間のクラップやゴイルとクスクス冷やかし笑いをした。出席をとり終わると、先生は生徒を見わたした。ハグリッドと同じ黒い日なのに、ハグリッドの目のような温かみは一かけらもない。冷たくて、うつろで、暗いトンネルを思わせた。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」
 スネイプが話しはじめた。まるでつぶやくような話し方なのに、生徒たちは一言も聞き漏らさなかった――マクゴナガル先生と同じように、スネイプも何もしなくともクラスをシーンとさせる能力を持っていた。
「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法である――ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」
 大演説の後はクラス中が一層シーンとなった。ハリーとロンは眉根をちょっと吊り上げて互いに目配せした。ハーマイオニー・グレンジャーは椅子の端に座り、身を乗り出すようにして、自分がウスノロではないと一刻も早く証明したくてウズウズしていた。
 スネイプが突然、「ポッター!」と呼んだ。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
 なんの球根の粉末を、なにを煎じたものに加えるって???
 ハリーはロンをチラッと見たが、ハリーと同じように「降参だ」という顔をしていた。ハーマイオニーが空中に高々と手を挙げた。
「わかりません」ハリーが答えた。
 スネイプは口元でせせら笑った。
「チッ、チッ、チ――有名なだけではどうにもならんらしい」
 ハーマイオニーの手は無視された。
「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいといわれたら、どこを探すかね?」
 ハーマイオニーが思いっきり高く、椅子に座ったままで挙げられる限界まで高く手を伸ばした。ハリーにはベゾアール石がいったいなんなのか見当もつかない。マルフォイ、クラップ、ゴイルが身をよじって笑っているのを、ハリーはなるべく見ないようにした。
「わかりません」
「クラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?」
 ハリーは頑張って、冷たい目をまっすぐに見つめ続けた。ダーズリーの家にいた時、教科書に目を通しはした。スネイプは、「魔法の薬草ときのこ千種」を隅から隅までハリーが覚えたと思っているのだろうか。
 スネイプはハーマイオニーの手がプルプル震えているのをまだ無視していた。
「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」
 この質問でとうとうハーマイオニーは椅子から立ち上がり、地下牢の天井に届かんばかりに手を伸ばした。
「わかりません」ハリーは落ち着いた口調で言った。
「ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」
 生徒が数人笑い声を上げた。ハリーとシェーマスの目が合い、シェーマスがウィンクした。
 しかし、スネイプは不快そうだった。
「座りなさい」スネイプがピシャリとハーマイオニーに言った。
「教えてやろう、ポッター。アスフォデルとニガヨモギを合わせると、眠り薬となる。あまりに強力なため、『生ける屍の水薬』と言われている。ベゾアール石は山羊の胃から取り出す石で、たいていの薬に対する解毒剤となる。モンクスフードとウルフスベーンは同じ植物で、別名をアコナイトとも言うが、とりかぶとのことだ。どうだ? 諸君、なぜ今のを全部ノートに書きとらんのだ?」
 いっせいに羽ペンと羊皮紙を取り出す音がした。その音にかぶせるように、スネイプが言った。
「ポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは一点減点」
 その後も魔法薬の授業中、グリフィンドールの状況はよくなるどころではなかった。スネイプは生徒を二人ずつ組にして、おできを治す簡単な薬を調合させた。長い黒マントを翻しながら、スネイプは生徒たちが干イラクサを計り、ヘビの牙を砕くのを見回った。どうもお気に人りらしいマルフォイを除いて、ほとんど全員が注意を受けた。マルフォイが角ナメクジを完璧にゆでたからみんな見るように、とスネイプがそう言った時、地下牢いっぱいに強烈な緑色の煙が上がり、シューシューという大きな音が広がった。ネビルが、どういうわけかシェーマスの大鍋を溶かして、ねじれた小さな塊にしてしまい、こぼれた薬が石の床を伝って広がり、生徒たちの靴に焼けこげ穴をあけていた。たちまちクラス中の生徒が椅子の上に避難したが、ネビルは大鍋が割れた時にグッショリ薬をかぶってしまい、腕や足のそこら中に真っ赤なおできが容赦なく噴き出し、痛くてうめき声を上げていた。
「バカ者!」
 スネイプが怒鳴り、魔法の杖を一振りして、こぼれた薬を取り除いた。
「おおかた、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?」
 ネビルはおできが鼻にまで広がってきて、シクシク泣きだした。
「医務室へ連れていきなさい」苦々しげにスネイプがシェーマスに言いつけた。それから出し抜けに、ネビルの隣で作業をしていたハリーとロンに鉾先を向けた。
「君、ポッター、針を入れてはいけないとなぜ言わなかった? 彼が間違えば、自分の方がよく見えると考えたな? グリフィンドールはもう一点減点」
 あまりに理不尽なので、ハリーは言い返そうと口を開きかけたが、ロンが大鍋の陰でスネイプに見えないようにハリーを小突いた。
「やめたほうがいい」とロンが小声で言った。
「スネイプはものすごく意地悪になるってみんなが言ってるよ」
 一時間後、地下牢の階段を上がりながらハリーは頭が混乱し、滅入っていた。最初の一週間でグリフィンドールの点数を二点も減らしてしまった――いったいどうしてスネイプは僕のことをあんなに嫌いなんだろう?
「元気出せよ」ロンが言った。
「フレッドもジョージもスネイプにはしょっちゅう減点されてるんだ。ねえ、一緒にハグリッドに会いにいってもいい?」
 三時五分前に城を出て、二人は校庭を横切った。ハグリッドは「禁じられた森」の端にある木の小屋に住んでいる。戸口に石弓と防寒用長靴が置いてあった。ノックすると、中からメチャメチャに戸を引っ掻く音と、ブーンとうなるようなほえ声が数回聞こえてきた。
「退がれ、ファング、退がれ」ハグリッドの大声が響いた。
 戸が少し開いて、すき問からハグリッドの大きなひげモジャの顔が現れた。
「待て、待て、退がれ、ファング」とハグリッドがいった。
 ハグリッドは巨大な黒いボアーハウンド犬の首輪を押さえるのに苦労しながら、ハリーたちを招き入れた。
 中は一部屋だけだった。ハムやきじ鳥が天井からぶら下がり、焚き火にかけられた銅のヤカンにはお湯が沸いている。部屋の隅にはとてつもなく大きなベッドがあり、パッチワーク・キルトのカバーがかかっていた。
「くつろいでくれや」
 ハグリッドがファングを離すと、ファングは一直線にロンに飛びかかり、ロンの耳をなめはじめた。ハグリッドと同じように、ファングも見た目と違って、まったく怖くなかった。
「ロンです」とハリーが紹介した。
 ハグリッドは大きなティーポットに熱いお湯を注ぎ、ロックケーキを血に乗せた。
「ウィーズリー家の子かい。え?」
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 楼主| 发表于 2006-8-22 23:19:24 | 显示全部楼层
 ロンのそばかすをチラッと見ながらハグリッドが言った。
「おまえさんの双子の兄貴たちを森から追っ払うのに、俺は人生の半分を費やしてるようなもんだ」
 ロックケーキは歯が折れるくらい固かったけれど、二人ともおいしそうなふりをして、初めての授業についてハグリッドに話して聞かせた。ファングは頭をハリーの膝に載せ、服をよだれでダラダラにしていた。
 ハグリッドがフィルチのことを「あの老いぼれ」と呼んだのでハリーとロンは大喜びした。
「あの猫だがな、ミセス・ノリスだ。いつかファングを引き合わせなくちゃな。俺が学校に行くとな、知っとるか? いつでもズーッと俺をつけまわす。どうしても追い払えん――フィルチのやつがそうさせとるんだ」
 ハリーはスネイプの授業のことを話した。ハグリッドはロンと同じように、気にするな、スネイプは生徒という生徒はみんな嫌いなんだから、と言った。
「でも僕のこと本当に憎んでるみたい」
「ばかな。なんで憎まなきゃならん?」
 そう言いながら、ハグリッドはまともにハリーの目を見なかった、と、ハリーにはそう思えてならなかった。
「チャーリー兄貴はどうしてる?」とハグリッドがロンに尋ねた。
「俺は奴さんが気に入っとった――動物にかけてはすごかった」
 ハグリッドがわざと話題を変えたんじゃないか、とハリーは勘ぐった。ロンがハグリッドに、チャーリーのドラゴンの仕事のことをいろいろ話している間、ハリーはテーブルの上のティーポット・カバーの下から、一枚の紙切れを見つけた。「日刊予言者新聞」の切り抜きだった。

 グリンゴッツ侵入さる
 七月三十一日に担きたグリンゴッツ侵入事件については、知られざる闇の魔法使い、または魔女の仕業とされているが、捜査は依然として続いている。
 グリンゴッツの小鬼たちは、今日になって、何も盗られたものはなかったと主張した。荒された金庫は、実は侵入されたその日に、すでに空になっていた。
「そこに何が入っていたかについては申し上げられません。詮索しない方がみなさんの身のためです」と、今日午後、グリンゴッツの報道官は述べた。

 汽車の中でロンが、グリンゴッツ強盗事件について話してくれたことをハリーは思い出した。
 ロンはいつ起きたかという日付までは言わなかった。
「ハグリッド! グリンゴッツ侵入があったのは僕の誕生日だ! 僕たちがあそこにいる間に起きたのかもしれないよ!」とハリーが言った。
 今度は間違いない。ハグリッドはハリーからはっきり目をそらした。ハグリッドはウーッと言いながらハリーにまたロックケーキをすすめた。ハリーは記事を読み返した。
「荒された金庫は、実は侵入されたその日に、すでに空になっていた」
 ハグリッドは七一三番金庫を空にした。汚い小さな包みを取り出すことが「空にする」と言えるなら。泥棒が探していたのはあの包みだったのか?
 夕食に遅れないよう、ハリーとロンは城に向かって歩きだした。ハグリッドの親切を断りきれなかったため、ロックケーキでポケットが重かった。これまでのどんな授業よりもハグリッドとのお茶の方がいろいろ考えさせられた。ハグリッドはあの包みを危機一髪で引き取ったのだろうか? 今、あれほどこにあるんだろう? スネイプについて、ハグリッドはハリーには言いたくない何ごとかを知っているのだろうか?
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 楼主| 发表于 2006-8-22 23:20:48 | 显示全部楼层
ハリー・ポッターと賢者の石(下)
第9章 真夜中の決闘
CHAPTER NINE The Midnight Duel

 ダドリーより嫌なヤツがこの世の中にいるなんて、ハリーは思ってもみなかった。でもそれはドラコ・マルフォイと出会うまでの話だ。一年生ではグリフィンドールとスリザリンが一緒のクラスになるのは魔法薬学の授業だけだったので、グリフィンドール寮生もマルフォイのことでそれほど嫌な思いをせずにすんだ。少なくとも、グリフィンドールの談話室に「お知らせ」が出るまではそうだった。掲示を読んでみんながっくりした。
 ――飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です――
「そらきた。お望みどおりだ。マルフォイの目の前で箒に乗って、物笑いの種になるのさ」
 何よりも空を飛ぶ授業を楽しみにしていたハリーは、失望した。
「そうなるとはかぎらないよ。あいつ、クィディッチがうまいっていつも自慢してるけど、口先だけだよ」
 ロンの言うことはもっともだった。
 マルフォイは確かによく飛行の話をしたし、一年生がクィディッチ・チームの寮代表選手になれないなんて残念だとみんなの前で聞こえよがしに不満を言った。マルフォイの長ったらしい自慢話は、なぜかいつも、マグルの乗ったヘリコプターを危うくかわしたところで話が終わる。自慢するのはマルフォイばかりではない。シェーマス・フィネガンは、子供の頃いつも箒に乗って、田舎の上空を飛び回っていたという。ロンでさえ、開いてくれる人がいれば、チャーリーのお古の箒に乗って、ハンググライダーにぶつかりそうになった時の話をしただろう。
 魔法使いの家の子はみんなひっきりなしにクィディッチの話をした。ロンも同室のディーン・トーマスとサッカーについて、大論争をやらかしていた。ロンにしてみれば、ボールがたった一つしかなくて、しかも選手が飛べないゲームなんてどこがおもしろいのかわからない、というわけだ。ディーンの好きなウエストハム・サッカーチームのポスターの前で、ロンが選手を指でつついて動かそうとしているのをハリーは見たことがある。
 ネビルは今まで一度も箒に乗ったことがなかった。おばあさんが決して近づかせなかったからで、ハリーも密かにおばあさんが正しいと思った。だいたいネビルは両足が地面に着いていたって、ひっきりなしに事故を起こすのだから。
 ハーマイオニー・グレンジャーも飛ぶことに関してはネビルと同じぐらいピリピリしていた。こればっかりは、本を読んで暗記すればすむものではない――だからといって彼女が飛行の本を読まなかったわけではない。木曜日の朝食の時ハーマイオニーは図書館で借りた「クィディッチ今昔」で仕入れた飛行のコツをウンザリするほど話しまくった。ネビルだけは、ハーマイオニーの話に今しがみついていれば、あとで箒にもしがみついていられると思ったのか、必死で一言も聞き漏らすまいとした。その時ふくろう便が届き、ハーマイオニーの講義がさえぎられたのでみんなホッとした。
 ハグリッドの手紙の後、ハリーにはただの一通も手紙が来ていない。もちろんマルフォイはすぐにそれに気がついた。マルフォイのワシミミズクは、いつも家から菓子の包みを運んできたし、マルフォイはスリザリンのテーブルでいつも得意げにそれを広げてみせた。
 めんふくろうがネビルにおばあさんからの小さな包みを持ってきた。ネビルはウキウキとそれを開けて、白い煙のようなものが詰まっているように見える大きなビー玉ぐらいのガラス玉をみんなに見せた。
「『思いだし玉』だ! ばあちゃんは僕が忘れっぽいこと知ってるから――何か忘れてると、この玉が教えてくれるんだ。見ててごらん。こういうふうにギュッと握るんだよ。もし赤くなったら――あれれ……」
 思いだし玉が突然真っ赤に光りだしたので、ネビルは愕然とした。
「……何かを忘れてるってことなんだけど……」
 ネビルが何を忘れたのか思い出そうとしている時、マルフォイがグリフィンドールのテープルのそばを通りかかり、玉をひったくった。
 ハリーとロンははじけるように立ち上がった。二人ともマルフォイと喧嘩する口実を心のどこかで待っていた。ところがマクゴナガル先生がサッと現れた。いざこざを目ざとく見つけるのはいつもマクゴナガル先生だった。
「どうしたんですか?」
「先生、マルフォイが僕の『思いだし玉』を取ったんです」
 マルフォイはしかめっ面で、すばやく玉をテーブルに戻した。
「見てただけですよ」
 そう言うと、マルフォイはクラップとゴイルを従えてスルリと逃げた。

 その日の午後三時半、ハリーもロンも、グリフィンドール寮生と一緒に、始めての飛行訓練を受けるため、正面階段から校庭へと急いだ。よく晴れた少し風のある日で、足下の草がサワサワと波立っていた。傾斜のある芝生を下り、校庭を横切って平坦な芝生まで歩いて行くと、校庭の反対側には「禁じられた森」が見え、遠くの方に暗い森の木々が揺れていた。
 スリザリン寮生はすでに到着していて、二十本の箒が地面に整然と並べられていた。ハリーは双子のフレッドとジョージが、学校の箒のことをこぼしていたのを思い出した。高い所に行くと震えだす箒とか、どうしても少し左に行ってしまうくせがあるものとか。
 マダム・フーチが来た。白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしている。
「なにをボヤボヤしてるんですか」開口一番ガミガミだ。「みんな箒のそばに立って。さあ、早く」
 ハリーは自分の箒をチラリと見下ろした。古ぼけて、小枝が何本かとんでもない方向に飛び出している。
「右手を箒の上に突き出して」マダム・フーチが掛け声をかけた。
「そして、『上がれ!』と言う」
 みんなが「上がれ!」と叫んだ。
 ハリーの箒はすぐさま飛び上がってハリーの手に収まったが、飛び上った箒は少なかった。
 ハーマイオニーの箒は地面をコロリと転がっただけで、ネビルの箒ときたらピクリともしない。
 たぶん箒も馬と同じで、乗り手が恐がっているのがわかるんだ、とハリーは思った。ネビルの震え声じゃ、地面に両足を着けていたい、と言っているのが見えみえだ。
 次にマダム・フーチは、箒の端から滑り落ちないように箒にまたがる方法をやって見せ、生徒たちの列の間を回って、箒の振り方を直した。マルフォイがずっと間違った握り方をしていたと先生に指摘されたので、ハリーとロンは大喜びだった。
「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルぐらい浮上して、それから少し前屈みになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよ――一、二の――」
 ところが、ネビルは、緊張するやら怖気づくやら、一人だけ地上に置いてきぼりを食いたくないのやらで、先生の唇が笛に触れる前に思いきり地面を蹴ってしまった。
「こら、戻ってきなさい!」先生の大声をよそに、ネビルはシャンペンのコルク栓が抜けたようにヒューッと飛んでいった――四メートル――六メートル――ハリーはネビルが真っ青な顔でグングン離れていく地面を見下ろしているのを見た。声にならない悲鳴を上げ、ネビルは箒から真っ逆さまに落ちた。そして……
 ガーン――ドサッ、ポキッといういやな昔をたてて、ネビルは草の上にうつぶせに墜落し、草地にこぶができたように突っ伏した。箒だけはさらに高く高く昇り続け、「禁じられた森」の方へユラユラ漂いはじめ、やがて見えなくなってしまった。
 マダム・フーチは、ネビルと同じくらい真っ青になって、ネビルの上に屈み込んだ。
「手首が折れてるわ」
 ハリーは先生がそうつぶやくのを開いた。
「さあさあ、ネビル、大丈夫。立って」
 先生は他の生徒のほうに向き直った。
「私がこの子を医務室に連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置いておくように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ」
「さあ、行きましょう」
 涙でグチャグチャの顔をしたネビルは、手首を押さえ、先生に抱きかかえられるようにして、ヨレヨレになって歩いていった。
 二人がもう声の届かないところまで行ったとたん、マルフォイは大声で笑い出した。
「あいつの顔を見たか? あの大まぬけの」
 他のスリザリン寮生たちもはやし立てた。
「やめてよ、マルフォイ」パーバティ・パチルがとがめた。
「ヘー、ロングボトムの肩を持つの?」
「パーバティったら、まさかあなたが、チビデブの泣き虫小僧に気があるなんて知らなかったわ」
 気の強そうなスリザリンの女の子、パンジィ・パーキンソンが冷やかした。
「ごらんよ!」
 マルフォイが飛び出して草むらの中から何かを拾い出した。
「ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」
 マルフォイが高々とさし上げると、『思い出し玉』はキラキラと陽に輝いた。
「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」
 ハリーの静かな声に、みんなはおしゃべりを止め、二人に注目した。
 マルフォイはニヤリと笑った。
「それじゃ、ロングボトムが後で取りにこられる所に置いておくよ。そうだな――木の上なんてどうだい?」
「こっちに渡せったら!」
 ハリーは強い口調で言った。マルフォイはヒラリと箒に乗り、飛び上がった。上手に飛べると言っていたのは確かにうそではなかった――マルフォイは樫の木の梢と同じ高さまで舞い上がり、そこに浮いたまま呼びかけた。
「ここまで取りにこいよ、ポッター」
 ハリーは箒をつかんだ。
「ダメ! フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷感するのよ」
 ハーマイオニーが叫んだ。
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 楼主| 发表于 2006-8-22 23:28:10 | 显示全部楼层
 ハリーは無視した。ドクン、ドクンと血が騒ぐのを感じた。箒にまたがり地面を強く蹴ると、ハリーは急上昇した。高く高く、風を切り、髪がなびく。マントがはためく。強く激しい喜びが押し寄せてくる。
 ――僕には教えてもらわなくてもできることがあったんだ――簡単だよ。飛ぶってなんて素晴らしいんだ! もっと高いところに行こう。
 ハリーは箒を上向きに引っ張った。下で女の子たちが息をのみ、キャーキャ一言う声や、ロンが感心して歓声を上げているのが聞こえた。
 ハリーはクルリと箒の向きを変え、空中でマルフォイと向き合った。マルフォイは呆然としている。
「こっちへ渡せよ。でないと箒から突き落としてやる」
「へえ、そうかい?」
 マルフォイはせせら笑おうとしたが、顔がこわばっていた。
 不思議なことに、どうすればいいかハリーにはわかっていた。前屈みになる。そして箒を両手でしっかりとつかむ。すると箒は槍のようにマルフォイめがけて飛び出した。マルフォイは危くかわした。ハリーは鋭く一回転して、箒をしっかりつかみなおした。下では何人か拍手をしている。
「クラップもゴイルもここまでは助けにこないぞ。ピンチだな、マルフォイ」
 マルフォイもちょうど同じことを考えたらしい。
「取れるものなら取るがいい、ほら!」
 と叫んで、マルフォイはガラス玉を空中高く放り投げ、稲妻のように地面に戻っていった。
 ハリーには高く上がった玉が次に落下しはじめるのが、まるでスローモーションで見ているようによく見えた。ハリーは前屈みになって箒の柄を下に向けた。次の瞬間、ハリーは一直線に急降下し、見るみるスピードを上げて玉と競走していた。下で見ている人の悲鳴と交じり合って、風が耳元でヒューヒュー鳴った――ハリーは手を伸ばす――地面スレスレのところで玉をつかんだ。間一髪でハリーは箒を引き上げ、水平に立てなおし、草の上に転がるように軟着陸した。「思いだし玉」をしっかりと手のひらに握りしめたまま。
「ハリー・ポッター…!」
 マクゴナガル先生が走ってきた。ハリーの気持は、今しがたのダイビングよりなお速いスピードでしぼんでいった。ハリーはブルブル震えながら立ち上った。
「まさか――こんなことはホグワーツで一度も……」マクゴナガル先生はショックで言葉も出なかった。メガネが激しく光っている。
「……よくもまあ、そんな大それたことを……首の骨を折ったかもしれないのに――」
「先生、ハリーが悪いんじゃないんです……」
「おだまりなさい。ミス・パチル――」
「でも、マルフォイが……」
「くどいですよ。ミスター・ウィーズリー。ポッター、さあ、一緒にいらっしゃい」
 マクゴナガル先生は大股に城に向かって歩き出し、ハリーは麻痺したようにトボトボとついていった。マルフォイ、クラップ、ゴイルの勝ち誇った顔がチラリと目に入った。僕は退学になるんだ。わかってる。弁解したかったが、どういうわけか声が出ない。マクゴナガル先生は、ハリーには目もくれず飛ぶように歩いた。ハリーはほとんどかけ足にならないとついていけなかった。
 ――とうとうやってしまった。二週間ももたなかった。きっと十分後には荷物をまとめるハメになっている。僕が玄関に姿を現したら、ダーズリー一家はなんて言うだろう?
 正面階段を上がり、大理石の階段を上がり、それでもマクゴナガル先生はハリーに一言も口をきかない。先生はドアをグイッとひねるように開け、廊下を突き進む。ハリーは惨めな姿で早足でついていく……たぶん、ダンブルドアのところに連れていくんだろうな。ハリーはハグリッドのことを考えた。彼も退学にはなったけど、森の番人としてここにいる。もしかしたらハグリッドの助手になれるかもしれない。ロンや他の子が魔法使いになっていくのをそばで見ながら、僕はハグリッドの荷物をかついで、校庭をはいずり回っているんだ……想像するだけで胃がよじれる思いだった。
 マクゴナガル先生は教室の前で立ち止まり、ドアを開けて中に首を乗っ込んだ。
「フリットウィック先生。申し訳ありませんが、ちょっとウッドをお借りできませんか」
 ウッド? ウッドつて、木のこと? 僕を叩くための棒のことかな。ハリーはわけがわからなかった。
 ウッドは人間だった。フリットウィック先生のクラスから出てきたのはたくましい五年生で、何ごとだろうという顔をしていた。
「二人とも私についていらっしゃい」
 そう言うなりマクゴナガル先生はどんどん廊下を歩き出した。ウッドは珍しいものでも見るようにハリーを見ている。
「お入りなさい」
 マクゴナガル先生は人気のない教室を指し示した。中でピーブズが黒板に下品な言葉を書きなぐつていた。
「出ていきなさい、ピーブズ!」
 先生に一喝されてピーブズの投げたチョークがゴミ箱に当たり、大きな音をたてた。ピーブズは捨てぜりふを吐きながらスイーッと出ていった。マクゴナガル先生はその後ろからドアをピシャリと閉めて、二人の方に向きなおった。
「ポッター、こちら、オリバー・ウッドです。ウッド、シーカーを見つけましたよ」
 狐につままれたようだったウッドの表情がほころんだ。
「本当ですか?」
「間違いありません」先生はきっぱりと言った。
「この子は生まれつきそうなんです。あんなものを私は初めて見ました。ポッター、初めてなんでしょう? 箒に乗ったのは」
 ハリーは黙ってうなずいた。事態がどうなっているのか、さっぱりわからなかったが、退学処分だけは免れそうだ。ようやく足にも感覚が戻ってきた。マクゴナガル先生がウッドに説明している。
「この子は、今手に持っている玉を、十六メートルもダイビングしてつかみました。かすり傷ひとつ負わずに。チャーリー・ウィーズリーだってそんなことできませんでしたよ」
 ウッドは夢が一挙に実現したという顔をした。
「ポッター、クィディッチの試合を見たことあるかい?」ウッドの声が興奮している。
「ウッドはグリフィンドール・チームのキャプテンです」先生が説明してくれた。
「体格もシーカーにぴったりだ」
 ウッドはハリーの回りを歩きながらしげしげ観察している。
「身軽だし……すばしこいし……ふさわしい箒を持たせないといけませんね、先生――ニンバス2000とか、クリーンスイープの7番なんかがいいですね」
「私からダンブルドア先生に話してみましょう。一年生の規則を曲げられるかどうか。是が非でも去年よりは強いチームにしなければ。あの最終試合でスリザリンにペシャンコにされて、私はそれから何週間もセブルス・スネイプの顔をまともに見られませんでしたよ……」
 マクゴナガル先生はメガネごしに厳格な目つきでハリーを見た。
「ポッター、あなたが厳しい練習を積んでいるという報告を聞きたいものです。さもないと処罰について考え直すかもしれませんよ」
 それから突然先生はにっこりした。
「あなたのお父さまがどんなにお喜びになったことか。お父さまも素晴らしい選手でした」

「まさか」
 夕食時だった。マクゴナガル先生に連れられてグラウンドを離れてから何があったか、ハリ-はロンに話して聞かせた。ロンはステーキ・キドニーパイを口に入れようとしたところだったが、そんなことはすっかり忘れて叫んだ。
「シーカーだって? だけど一年生は絶対ダメだと……なら、君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな……」
「……百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」
 ハリーはパイを掻き込むように食べていた。大興奮の午後だったので、ひどくお腹が空いていた。
 あまりに驚いて、感動して、ロンはただボーッとハリーを見つめるばかりだった。
「来週から練習が始まるんだ。でも誰にも言うなよ。ウッドは秘密にしておきたいんだって」
 その時、双子のウィーズリーがホールに入ってきて、ハリーを見つけると足早にやってきた。
「すごいな」ジョージが低い声で言った。「ウッドから聞いたよ。僕たちも選手だ――ビーターだ」
「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ」とフレッドが言った。「チャーリーがいなくなってから、一度も取ってないんだよ。だけど今年は抜群のチームになりそうだ。ハリー、君はよっぽどすごいんだね。ウッドときたら小躍りしてたぜ」
「じゃあな、僕たち行かなくちゃ。リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」
「それって僕たちが最初の週に見つけちまったやつだと思うけどね。きっと『おべんちゃらのグレゴリー』の銅像の裏にあるヤツさ。じゃ、またな」
 フレッドとジョージが消えるやいなや、会いたくもない顔が現れた。クラップとゴイルを従えたマルフォイだ。
「ポッター、最後の食事かい? マグルのところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
 ハリーは冷ややかに言った。クラップもゴイルもどう見たって小さくはないが、上座のテーブルには先生がズラリと座っているので、二人とも握り拳をボキボキ鳴らし、にらみつけることしかできなかった。
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ――相手には触れない。どうしたんだい? 魔法使いの決闘なんて開いたこともないんじゃないの?」マルフォイが言った。
「もちろんあるさ。僕が介添人をする。お前のは誰だい?」ロンが口をはさんだ。
 マルフォイはクラップとゴイルの大きさを比べるように二人を見た。
「クラップだ。真夜中でいいね? トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね」
 マルフォイがいなくなると、二人は顔を見合わせた。
「魔法使いの決闘って何だい? 君が僕の介添人ってどういうこと?」
「介添人っていうのは、君が死んだらかわりに僕が戦うという意味さ」
 すっかり冷めてしまった食べかけのパイをようやく口に入れながら、ロンは気軽に言った。
 ハリーの顔色が変わったのを見て、ロンはあわててつけ加えた。
「死ぬのは、本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ。君とマルフォイだったらせいぜい火花をぶつけ合う程度だよ。二人とも、まだ相手に本当のダメージを与えるような魔法なんて使えない。マルフォイはきっと君が断ると思っていたんだよ」
「もし僕が杖を振っても何も起こらなかったら?」
「杖なんか捨てちゃえ。鼻にパンチを食らわせろ」ロンの意見だ。
「ちょっと、失礼」
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