|
【天声人語】2006年11月01日(水曜日)付
木々が色づき、風が日一日と冷たくなってきた。晩秋の時の流れは、一年でも特に早いと感じる。秋の夜長、東京の都心で小さな発見をしたのは、先日のことだった。
树木变了颜色,风也一天冷过一天。晚秋时的变化在一年中都感觉特别的快。前几天,晚秋的长夜中,我在东京市中心有个小发现。
夜道で虫が鳴いていた。頭上から聞こえてくる。街路樹を見上げたが姿は見えない。虫の音は足元からと思っていたが、これは「アオマツムシ」だという。リーリーという甲高い音色は車の音を押しのけるほど強く、しばし足を止めて聴き入った。
那是我走在夜路上的时候,听见有虫子的叫声从头顶上传来。但是抬头看街树上却又不见虫的踪影。我便以为大概是从脚下传来的吧。据说这种虫子叫「青松虫」。叫起来时尖锐的「哩~哩~」声几乎盖过来往的车的声音。我停下脚步听了一会儿。
虫の愛好家にとっては迷惑な虫らしい。「日本鳴く虫保存会」の小野公男会長は、鳴き声鑑賞会で「一種類でも覚えて帰って下さい」と言いづらくなった。強い音が他の虫の声をかき消すからだ。明治時代に東京で鳴き声が確認され、中国から輸入された木に付いてきたと伝えられる。
这种虫对虫爱好者来说似乎是种令人困扰的虫子。「日本鸣虫保存会」的小野公男会长本想在虫鉴赏会上对大家说「请大家至少记住一种虫的叫声」。但因为青松虫的原因,这句话竟然很难出口了。因为青松虫叫声太强,盖过了其他虫的声音。这种虫被发现是在明治时代,传说是在从中国进口树木时带来的。
「相手を知らないと」。松虫やカンタンを約50年育てる小野さんは、東京都小平市の自宅でアオマツムシも飼育する。体長2センチほどの緑色で、野鳥からも見えにくそうだ。飛べるうえ、太い枝や幹に産卵するので街路樹が枝切りされても影響は小さい。温暖化で、近年は北に勢力を伸ばしている。
居住在东京都小平市的小野先生饲养松虫和邯郸虫已有50年。对青松虫,他说「必须知己知彼」,所以在家里也饲养着青松虫。这种虫身长2厘米左右,绿色。所以即使野鸟也很难发现它们。它们会飞,而且是在比较粗的树枝或树干上产卵,所以就算给街树剪枝,对它们的影响也不大。近几年因为温室效应,它们的势力大有向北方扩展的趋势。
秋の虫が好きだった小泉八雲の言を、妻節子が記している。「あの小さい虫、よき音して、鳴いてくれました。私なんぼ喜びました。しかし、だんだん寒くなって来ました。知っていますか、知っていませんか、すぐに死なねばならぬということを……可哀相な虫」(『小泉八雲作品集』恒文社)。
喜爱秋虫的小泉八云的妻子记下了他这样一段话「那小小的虫子叫声真好听。能听到它的叫声真让我高兴。但是,慢慢变冷了,它知不知道,自己就要死去了呢?可怜的虫子」(『小泉八雲作品集』恒文社)。
八雲が聞いたのは、古来の松虫だった。あの都心のアオマツムシの音も、10月末には消えていた。
八云听到的叫声是自古就有的松虫的叫声。市中心那种青松虫的叫声也在10月末消失了。 |
|