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发表于 2007-10-11 12:15:39
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故郷(大好きな文章)2
びっくりして頭を上げてみると、わたしの前には、ほお骨の出た、唇の薄い、五十がらみの女が立っていた。両手を腰にあてがい、スカートをはかないズボン姿で足を開いて立ったところは、まるで製図用の脚の細いコンパスそっくりだった。 2 `4 J8 S, b1 q a' L' y
" Y# y% x, f% x+ s0 `わたしはドキンとした。
6 H! d6 P( h7 F- H4 i1 ]「忘れたかね? よくだっこしてあげたものだが。」
9 \3 `0 d. \' P% ~3 D* kますますドキンとした。幸い、母が現れて口添えしてくれた。
2 K/ Z, G/ r2 }8 T- q「長いこと家にいなかったから、見忘れてしまってね。おまえ、覚えているだろ。」とわたしに向かって、「ほら、筋向かいの楊おばさん…豆腐屋の。」
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1 ~$ v f8 A. M3 H' ?) W( }そうそう、思い出した。そういえば子供のころ、筋向かいの豆腐屋に、楊おばさんという人が一日じゅう座っていて、「豆腐屋小町」と呼ばれていたっけ。しかし、その人なら白粉を塗っていたし、ほお骨もこんなに出ていないし、唇もこんなに薄くはなかったはずだ。それに一日じゅう座っていたのだから、こんなコンパスのような姿勢は、見ようにも見られなかった。そのころうわさでは、彼女のおかげで豆腐屋は商売繁盛だとされた。たぶん年齢のせいだろうか、わたしはそういうことにさっぱり関心がなかった。そのため見忘れてしまったのである。ところがコンパスのほうでは、それがいかにも不服らしく、さげすむような表情を見せた。まるでフランス人のくせにナポレオンを知らず、アメリカ人のくせにワシントンを知らぬのをあざけるといった調子で、冷笑を浮かべながら、
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「忘れたのかい? なにしろ身分のあるおかたは目が上を向いているからね…。」 + i1 a# R/ D7 D+ q" Q+ J9 s
「そんなわけじゃないよ…ぼくは…。」わたしはどぎまぎして、立ち上がった。 ( A/ Q, R: E6 U" b8 m' P/ r& B' u
「それならね、お聞きなさいよ、迅ちゃん。あんた、金持ちになったんでしょ。持ち運びだって、重くて不便ですよ。こんなガラクタ道具、じゃまだから、あたしにくれてしまいなさいよ。あたしたち貧乏人には、けっこう役に立ちますからね。」
: A1 m& i9 T7 w" E: j「ぼくは金持ちじゃないよ。これを売って、その金で…。」
3 ~7 C2 y/ d6 T「おやおや、まあまあ、知事様になっても金持ちじゃない? 現にお妾が三人もいて、お出ましは八人かきのかごで、それでも金持ちじゃない? フン、だまそうたって、そうはいきませんよ。」
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" T( x- q, W. Z; j: V7 o& E6 K3 O返事のしようがないので、わたしは口を閉じたまま立っていた。 4 v* e' n& o7 B$ i* K
「ああ、ああ、金がたまれば財布のひもを締める。財布のひもを締めるからまたたまる…。」コンパスは、ふくれっつらで背を向けると、ぶつぶつ言いながら、ゆっくりした足どりで出ていった。行きがけの駄賃に母の手袋をズボンの下へねじ込んで。
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# ^6 b/ b% X. m6 R# u4 }# Fそのあと、近所にいる親戚が何人も訪ねてきた。その応対に追われながら、暇をみて荷ごしらえをした。そんなことで四、五日つぶれた。 ' l7 M. d# D4 @7 l/ E
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ある寒い日の午後、わたしは食後の茶でくつろいでいた。表に人の気配がしたので、振り向いてみた。思わずアッと声が出かかった。急いで立ち上がって迎えた。 & l, q9 B6 ~* f, m
! ?1 C- E' K3 }; ^6 a8 ~3 F来た客は閏土である。ひと目で閏土とわかったものの、その閏土は、わたしの記憶にある閏土とは似もつかなかった。背丈は倍ほどになり、昔のつやのいい丸顔は、今では黄ばんだ色に変わり、しかも深いしわがたたまれていた。目も、彼の父親がそうであったように、周りが赤くはれている。わたしは知っている。海辺で耕作する者は、一日じゅう潮風に吹かれるせいで、よくこうなる。頭には古ぼけた毛織りの帽子、身には薄手の綿入れ一枚、全身ぶるぶる震えている。紙包みと長いきせるを手に提げている。その手も、わたしの記憶にある血色のいい、まるまるした手ではなく、太い、節くれだった、しかもひび割れた、松の幹のような手である。 h/ P( |# D/ g
8 X4 ?! c" [" o! Y) q. bわたしは感激で胸がいっぱいになり、しかしどう口をきいたものやら思案がつかぬままに、ひと言、
3 d- q! c, D! B& S/ S「ああ、閏ちゃん──よく来たね…。」続いて言いたいことが、あとからあとから、数珠つなぎになって出かかった。角鶏、跳ね魚、貝殻、チャー…だがそれらは、何かでせき止められたように、頭の中を駆けめぐるだけで、口からは出なかった。
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彼は突っ立ったままだった。喜びと寂しさの色が顔に現れた。唇が動いたが、声にはならなかった。最後に、うやうやしい態度に変わって、はっきりこう言った。 1 j. a1 G5 X: M
「だんな様! …。」 8 g) u5 l8 c( e4 m; N
わたしは身震いしたらしかった。悲しむべき厚い壁が、二人の間を隔ててしまったのを感じた。わたしは口がきけなかった。
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; ?. \% X: v. ?! u彼は後ろを向いて、「水生、だんな様におじぎしな。」と言って、彼の背に隠れていた子供を前へ出した。これぞまさしく三十年前の閏土であった。いくらかやせて、顔色が悪く、銀の首輪もしていない違いはあるけれども。「これが五番めの子でございます。世間へ出さぬものですから、おどおどしておりまして…。」 . I; N- [! J* A. [4 {
5 a. y7 l! B& N" I- U母と宏児が二階から降りてきた。話し声を聞きつけたのだろう。 2 T1 M, |: Z8 t2 J6 k
「ご隠居様、お手紙は早くにいただきました。全く、うれしくてたまりませんでした、だんな様がお帰りになると聞きまして…。」と閏土は言った。
+ r% f, r. u3 [/ V「まあ、なんだってそんな、他人行儀にするんだね。おまえたち、昔は兄弟の仲じゃないか。昔のように、迅ちゃん、でいいんだよ。」と母は、うれしそうに言った。
3 _9 ~- X$ p( O% N. z8 C「めっそうな、ご隠居様、なんとも…とんでもないことでございます。あのころは子供で、なんのわきまえもなく…。」そしてまたも水生を前に出しておじぎさせようとしたが、子供ははにかんで、父親の背にしがみついたままだった。 2 n+ E& P8 W2 T6 X& v4 e
「これが水生? 五番めだね。知らない人ばかりだから、はにかむのも無理ない。宏児や、あちらで一緒に遊んでおやり。」と母は言った。
) A) } N$ p1 c1 n言われて宏児は、水生を誘い、水生もうれしそうに、そろって出ていった。母は閏土に席を勧めた。彼はしばらくためらったあと、ようやく腰を下ろした。長ぎせるをテーブルに立てかけて、紙包みを差し出した。 7 k7 m, b- V9 e" p& D
「冬場は、ろくなものがございません。少しばかり、青豆の干したのですが、自分とこのですから、どうかだんな様に…。」 7 F: }2 g D7 W8 [
わたしは、暮らし向きについて尋ねた。彼は首を振るばかりだった。 7 m( X0 ^2 E2 c: }
「とてもとても。今では六番めの子も役に立ちますが、それでも追っつけません…世間は物騒だし…どっちを向いても金は取られほうだい、きまりもなにも…作柄もよくございません。作った物を売りに行けば、何度も税金を取られて、元は切れるし、そうかといって売らなければ、腐らせるばかりで…。」
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7 e* N. R$ p4 b5 ~" k7 q首を振りどおしである。顔にはたくさんのしわがたたまれているが、まるで石像のように、そのしわは少しも動かなかった。苦しみを感じはしても、それを言い表すすべがないように、しばらく沈黙し、それからきせるを取り上げて、黙々とたばこをふかした。
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; B, ~: ^! o5 c p母が都合をきくと、家に用が多いから、明日は帰らねばならぬという。それに昼飯もまだと言うので、自分で台所へ行って、飯をいためて食べるように勧めた。
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彼が出ていったあと、母とわたしとは彼の境遇を思ってため息をついた。子だくさん、凶作、重い税金、兵隊、匪賊、役人、地主、みんな寄ってたかって彼をいじめて、デクノボーみたいな人間にしてしまったのだ。母は、持っていかぬ品物はみんなくれてやろう、好きなように選ばせよう、とわたしに言った。 " \2 L% _ l/ v& S
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午後、彼は品物を選び出した。長テーブル二個、いす四脚、香炉と燭台一組み、大秤一本。そのほかわら灰もみんな欲しいと言った。(わたしたちのところでは、炊事の時わらを燃す。その灰は砂地の肥料になる。)わたしたちが旅立つ時来て船で運ぶ、と言った。 ; [5 ?* ~* W+ `, u9 p/ K4 T" @
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夜はまた世間話をした。とりとめのない話ばかりだった。明くる日の朝、彼は水生を連れて帰っていった。 ( o4 I! ^8 J. @: m
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それからまた九日して、わたしたちの旅立ちの日になった。閏土は朝から来ていた。水生は連れずに、五歳になる女の子に船の番をさせていた。それぞれに一日じゅう忙しくて、もう話をする暇はなかった。客も多かった。見送りに来る者、品物を取りに来る者、見送りがてら品物を取りに来る者。夕方になって、わたしたちが船に乗り込むころには、この古い家にあった大小さまざまのガラクタ類は、すっかり片づいていた。
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9 ~3 G, B/ `( k& R4 P# j9 \) B船はひたすら前進した。両岸の緑の山々は、たそがれの中で薄墨色に変わり、次次と船尾に消えた。
, W: S& Z" \$ V7 ~7 Xわたしと一緒に窓辺にもたれて、暮れてゆく外の景色を眺めていた宏児が、ふと問いかけた。
8 J# L' t( S. J4 Z7 k |「おじさん、ぼくたち、いつ帰ってくるの?」 . K/ H+ L: Q* ^
「帰ってくる? どうしてまた、行きもしないうちに、帰るなんて考えたんだい?」
t; u4 o) G7 }0 x0 W「だって、水生がぼくに、家へ遊びに来いって。」 + {/ a: K: x) x. T3 W- q5 p
大きな黒い目をみはって、彼はじっと考えこんでいた。
! e" D, ?/ i: W Tわたしも、わたしの母も、はっと胸をつかれた。そして話がまた閏土のことに戻った。母はこう語った。例の豆腐屋小町の楊おばさんは、わたしの家で片づけが始まってから、毎日必ずやってきたが、おととい、灰の山からわんや皿を十個あまり掘り出した。あれこれ議論の末、それは閏土が埋めておいたにちがいない、灰を運ぶ時、一緒に持ち帰れるから、という結論になった。楊おばさんは、この発見を手柄顔に、「犬じらし」(これはわたしたちのところで鶏を飼うのに使う。木の板にさくを取り付けた道具で、中に食べ物を入れておくと、鶏は首を伸ばしてついばむことができるが、犬にはできないので、見てじれるだけである。)をつかんで飛ぶように走り去った。てん足用の底の高い靴で、よくもと思うほど速かったそうだ。
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古い家はますます遠くなり、故郷の山や水もますます遠くなる。だが名残惜しい気はしない。自分の周りに目に見えぬ高い壁があって、その中に自分だけ取り残されたように、気がめいるだけである。西瓜畑の銀の首輪の小英雄の面影は、もとは鮮明このうえなかったのが、今では急にぼんやりしてしまった。これもたまらなく悲しい。 5 o$ O9 L* m& S$ n4 U, ^
0 b/ |% c6 d3 L. b1 f母と宏児とは寝入った。
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% g5 |+ [$ P! o. Jわたしも横になって、船の底に水のぶつかる音を聞きながら、今、自分は、自分の道を歩いているとわかった。思えばわたしと閏土との距離は全く遠くなったが、若い世代は今でも心が通い合い、現に宏児は水生のことを慕っている。せめて彼らだけは、わたしと違って、互いに隔絶することのないように…とはいっても、彼らが一つ心でいたいがために、わたしのように、無駄の積み重ねで魂をすり減らす生活をともにすることは願わない。また閏土のように、打ちひしがれて心がまひする生活をともにすることも願わない。また他の人のように、やけを起こしてのほうずに走る生活をともにすることも願わない。希望をいえば、彼らは新しい生活をもたなくてはならない。わたしたちの経験しなかった新しい生活を。
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' N$ q: P8 K' W' }3 j7 t' S/ c希望という考えが浮かんだので、わたしはどきっとした。たしか閏土が香炉と燭台を所望した時、わたしはあい変わらずの偶像崇拝だな、いつになったら忘れるつもりかと、心ひそかに彼のことを笑ったものだが、今わたしのいう希望も、やはり手製の偶像にすぎぬのではないか。ただ彼の望むものはすぐ手に入り、わたしの望むものは手に入りにくいだけだ。 ) G, {0 U) Y% R/ m
) Y5 z, L' j8 e! e. h# S6 rまどろみかけたわたしの目に、海辺の広い緑の砂地が浮かんでくる。その上の紺碧の空には、金色の丸い月がかかっている。思うに希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。 |
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