学校に着くと、待ち構えていたように皆が僕の回りに寄ってきた。「勇ちゃん、どうだった?やっぱりなかった?」僕は急にどきどきし、顔が真っ赤になるのが分かった。一瞬、よっぽど「うん。」と言ってしまおうかと思った。でも、それでは嘘つきになってしまう。それに、せっかく苦労して手に入れた物を、ずっとだれにも見せないで、隠しておかなければならなくなる。僕は下を向いたまま、思い切って言った。「ごめん、机の上にあった。僕の勘違いだった ...」
雑誌の後ろの頁に「○○の切手あり。××の切手と交換希望」と出ていたのを見つけて相手に連絡し、その切手が届くまでの三日間の長かったこと。それを昨日、皆に自慢しようと、切手帳に入れて学校に持ってきた、と思ったのだ。昼休みに見せようとしたらなかったので、大騒ぎになってしまった。先生が「きっと家にあるから」と言い、一応家に電話して留守で、僕はもう午後の授業は手につかなかった。だれかが盗ったのだ、一体だれなんだ、とそんなことばかりを考えていた。そして家で切手を見つけてからは、あんなに絶対持ってきたと言って大騒ぎをしたあげく家にあったと言ったら、皆に何と言って責められるかとそればかりを考えていたのだ。
一瞬の沈默の後、「なんだ。やっぱりそうだったのか。勇ちゃん、無くなったんじゃなくてよかったなあ。」と、実君が言った。顔を上げると皆が笑っていた。皆僕のために喜んでくれている。意外だった。僕は泣きたいくらいうれしかった。こんなに良い友達のことを僕は...。僕は自分がたまらなく恥ずかしかった。
問1:何が「勘違いだった」のか。
1. 筆者のいったこと。
2. 切手を手に入れたこと。
3. 先生の言ったこと。
4. 家が留守だとおもったこと。
問2:何が「意外だった」のか。
1. 切手が家にあったこと。
2. 皆が「どうだった」と聞いたこと。
3. 皆が筆者を責めると思ったこと。
4. 皆が筆者のために喜んでくれたこと。
問3:どんなことが「たまらなく恥ずかしかった」のか。
1. 勘違いしたこと。
2. 大騒ぎしたこと。
3. 皆の前で謝らなければならなかったこと。
4. 皆の気持ちを誤解していたこと。 |