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僕はブログを起こして彼との物語を記録することにした。
彼に巡り会った前、ホモとは何というものか僕は少しもわからなかった。はっと気づいたらもう、一途に陥って脱却することもできない羽目になってしまった。
一年生の下半期のことだった。彼は転校生として僕のクラスに転入した。とても静かに見えて、照れ臭げな微笑みだった。初めて彼の姿を目に映る瞬間、どことなくわくわくして、鏡に自分の姿を映し出すような気がした。目の前に立ったこの男は、それほど僕とそっくりだとは思いがけなかったんだ。ーーうわべじゃなく、心のほうだ。彼との間には物語があるに決まっている。僕はそう思い込んでいた。
本当にえにしがあるかもしれないが、僕たちはすぐ仲の良い友達になった。
幼稚園のことから大学のことにかけて、それぞれの故郷のことからこの大学の町のことにかけて、彼とは何でも話し合えんばかりだった。時にクラスの女の子の話題にもなって、相手に噂の彼女をでっち上げ合ったものだ。あのごろの彼はやや無口で、共通語もよくできなかった。例えば「处理」を「娶你」に言い間違えたりして(典型的湖南アクセント)、そばにいた僕にげらげら笑われるとか。そんな時、僕はわざと「誰をめとるつもりかい?」と、無邪気そうな顔をして首をかしげる彼に聞いてみたが、ようやくはっと気がついた彼は睨みけて僕のうしろに追いかけてぶん殴ろうとした。勿論毎回は僕の負けで終わった。彼の足に太刀打ちできないからだ。でも数月してから彼の共通語はかなり上達して、しかも口まめになった。たまたまいきなり冗談を言うことさえできるなんて、僕にも感心させずにはいられない。
このクラスに転入してからというもの、何も起こらずに毎日一緒だったりして楽しい生活を送って、彼とはずっとこんな関係を持っていた。
二年目の夏休みにストーリがかわった。
夏休み、僕たちは二人とも家に戻らなかった。学校に残ってアルバイトかなんかするつもりだったんだ。
学校側を通して彼はすぐチューターのアルバイトを見つけた。ただこのアルバイトをするには、子供の家に住まなければならない。彼が学校を出るあの日は、僕は簡単に荷物をパックしに手伝った。パックする時は実に言葉にならぬ切ないような感じをして、抜け殻同然になるほどだった。歯ブラシは持ったかどうかと聞いたら、「大丈夫かな?何度も聞いてくれたことか?」と彼はけげんそうな顔つきをしていた。「そうか。」僕はまたぽかんとした。タクシーに乗る前、彼は僕の肩をたたいて眩しそうに笑顔で「お大事に」と言ってくれた。僕は力いっぱいでうなずいて、気がついたらタクシーはもう視線から遠ざかっていった。
彼のいない一日目、頭の中は彼のことばかりで詰まっていた。彼からの電話をもらって、今日はうまくいったって。そして挨拶をいくつかしあって済んだ。きっと彼はアルバイトで草臥れた。
二日目、電話してあげた。そっちの生活に不慣れだったり、言葉交わすことが苦手で人とどう接するかわからなかったりするのが心配した。
三日目、ダイヤルを回してさりげない冗談を言ったり。
四日目、また電話した。僕は「アルバイトなかなか見つけられなくてもうやめよう、家に帰る気もなるほどだ。」と苦情を訴えた。すると、「がっかりしないでよ、家に帰るなら少なくとも俺が学校に戻るまで待ってよ。」と彼に励まされた。
五日目、彼に電話かけて「仲介を通して100元ほどしてチューターのアルバイトができた。もう家に帰らなくていい。」と教えてあげた。彼は電話でくすくすしてくれた。
......
次の何日間かには、毎日チューターする以外の時間を、僕はどう送ったか自分もわからなかった。ひたすら歌を聞いただけだった。耳がしびれるまでに張震岳の「思念是一种病」を何度も繰り返して聞いていった。時にメールでもして僕の近況を知らせてあげた。電話をするのが怖かった。彼のそばにいないと僕がこんなに彼のことを思うとは思わなかった。なんてかわった人間だと自分がふっと気がついた。これほど誰かのことに案じられたことは今まではなかった。
思い出の中、夜きゅうにおなかがぺこぺこになったら彼は慌ただしく階下に行ってギョーザを買ってきてくれる。
思い出の中、うっとうしくて心塞ぐたびに、彼はいつもあの手でこの手で僕を笑わせようとしている。
思い出の中、週末に山に登る時、息が切れてぜいぜいいう。
思い出の中、互いに野郎と耳まで赤くなるほど言い争う。
思い出の中、彼と一緒に橘子洲へみかんをとりに行く時、木の上から得意そうにみかんで僕の頭にぶつかるようにしてくれる。
......
何もかも、常に彼のことを思っていた!
ホモについてのサイトへアクセスしたりホモの文章を拾い読んだりするようになった。そして僕のような人間は沢山いることがはじめて知った。僕はだんだんとこの事実を受け止めようとしていた。これから彼とどう接するのかも考えざるをえなかった。
彼を好きになった!
半月ほどして彼は学校に戻った。彼を迎えに行ったとき僕は案外に落ち着いた。「僕のこと、思ってる?」とためしに冗談を言ってみたら、くすくす笑いながら「思ってるよ!毎日も!」と言ってくれた。僕は目を逸らして向きを変えて、知らず知らずのうちにまぶたが勝手に赤くなって、抑えきれないで泣き出すのが怖いからだ。
あれから二人の間には透明な壁に隔てられているかのようだ。意識的に彼に避けたものだ。彼も何かに気づいたようだ。ある日、「お前、まさかゲイ?距離をおいておかなきゃ。」と、僕の向こうにじっと座った彼は不意につぶやいた。そう言われる僕は何も聞こえぬ振りと見せかけたが、心は刺されたほど痛かった。
あの日は僕の20才誕生日。そのため、彼はわざわざチューターを早目に済ませて学校に戻った。彼だけを誘った二人きりのパーティだった。なぜみんなを誘わないと問い詰められたら、控え目だからさと言い逃れをした。彼はいつものように何気なく皮肉な言葉を僕に投げた。実はあの日、彼に告白するつもりだったが、いきなりそう言われるとかえってまごついてしまった。
夜、酒いっぱい飲んだが、酔っ払わなかった!
20才。強くなければならないのだ!
その後、彼を目にするたびになぜか癪に触る気がする。つねに些細なことで腹立ったりわがままに振舞ったりして、結局気まずくなって行き詰まってしまった。
最後の言い合いは前の火曜だった。ひどく騒ぎ立てていて、「いつわり!」と投げかけられた彼は背中を見せて僕一人を湘江岸から置き去りにして行ってしまった。絶望的にそこに立ったままで彼の背中が遠ざかっていくのを見送る僕は、すごく後悔した。自分をとがめてもとがめきれなかった。
もうやめよう、大したことじゃない。
でも来る日も来る日もの不眠は、あらためて心の奥に彼がいることを見せてくれた。彼を愛している。僕は自分の心を誤魔化すことができなかった。そして一時的に血気にはやって彼にメールを一通送ってしまった。すべての気持ちを伝えてあげた。
一週してから、彼は全然何の気配も見せなかった。何も起こっていないかのようだ。
僕たちはどうなるかわからないが、これは運命のいたずらじゃないと、今はこう祈るしかない。
つづく・・・・・
[ 本帖最后由 mizuho_2006 于 2009-1-10 16:17 编辑 ] |
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