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楼主: ophelia

枕草子(清少納言)

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
三〇 檳榔毛は、



 檳榔毛(びらうげ)は、のどかにやりたる。急ぎたるは、わろく見ゆ。

 網代は、走らせたる。人の門の前などをよりわたりたるを、ふと見やるほどもなく過ぎて、供の人ばかり走るを、誰ならむと思ふこそ、をかしけれ。ゆるゆると久しく行くは、いとわろし。

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 楼主| 发表于 2004-1-21 23:00:00 | 显示全部楼层
あっ\(◎o◎)/!、一休み。
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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三一 説経の講師は、



 説経の講師は、顔よき。講師の顔を、つとまもらへたるこそ、その説くことの尊さもおぼゆれ。ほか目しつれば、ふと忘るるに、にくげなるは罪や得らむとおぼゆ。このことはとどむべし。すこし齢などのよろしきほどは、かやうの罪得がたのことは、、書き出でけめ。今は罪いと恐ろし。

 また、尊きこと、道心多かり、とて、説経すといふ所ごとに、最初に行きゐるこそ、なほ、この罪の心には、いとさしもあらで、と見ゆれ。

 蔵人など、昔は御前などいふわざもせず、その年ばかりは内裏わたりなどには、影も見えざりける。今はさしもあらざめる。蔵人の五位とて、それをしもぞ、いそがしう使えど、なほ、名残つれづれにて、心一つは暇あるここちすべかめれば、さやうの所にぞ、一度、二度も聞きそめつれば、常にまでまほしうなりて、夏などのいと暑きにも、かたびらいとあざやかにて、薄二藍、青鈍の指貫(さしぬき)など、踏み散らしてゐためり。鳥帽子に物忌付けたるは、さるべき日なれど、功徳のかたには障らずと見えむ、とにや。

 そのことする聖と物語し、車立つることなどをさへぞ見入れ、事についたるけしきなる。久しう会はざりつる人のまうであひたる、珍しがりて近う居寄り、もの言ひうなづき、をかしきことなど語りいでて、扇広うひろげて、口にあてて笑ひ、よく装束したる数珠かいまさぐり、手まさぐりにし、こなたかなたうち見やりなどして、車のあしよしほめそしり、なにがしにてその人のせし八講、経供養せしこと、とありしこと、かかりしこと、言ひくらべゐたるほどに、この説経のことは聞きも入れず。なかには、常に聞くことなれば、耳馴れて、珍しうもあらぬにこそは。

 さはあらで、講師居てしばしあるほどに、前駆すこし追はする車とどめておるる人、蝉の羽よりも軽げなる直衣、指貫、生絹のひとへなど着たるも、狩衣の姿なるもさやうにて、若う細やかなる、三、四人ばかり、侍の者またさばかりして、入れば、はじめ居たる人々も、すこしうちみじろきくつろい、高座のもと近き柱もとに据ゑつれば、かすかに数珠押しもみなどして聞きゐたるを、講師もはえばえしくおぼゆるなるべし、いかで語り伝ふばかりと説き出でたなり。聴聞すなど倒れ騒ぎ、額づくほどにもなくて、よきほどに立ち出づとて、車どもの方など見おこせて、我どち言ふことも、なにごとならむとおぼゆ。見知りたる人は、をかしと思ふ、見知らぬは、誰ならむ、それにやなど思ひやり、目をつけて見送らるるこそ、をかしけれ。

 「そこに説経しつ、八講しけり」など、人の言ひ伝ふるに、「その人はありつや」「いかがは」など、さだまりて言はれたる、あまりなり。などかは、むげにさしのぞかではならむ。あやしからむ女だに、いみじう聞くめるものを。さればとて、はじめつ方は、かちありきする人はなかりき。たまさかには、壺装束などして、なまめき化粧じてこそは、あめりしか。それも、もの詣でなどをぞせし。説経なとには、ことに多く聞こえざりき。このころ、そのをりさし出でけむ人、命長くて見ましかば、いかばかり、そしり誹謗せまし。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三二 菩提といふ寺に、



 菩提といふ寺に、結縁の八講せしに詣でたるに、人のもとより「とく帰りたまひね。いとさうざうし」と言ひたりければ、蓮の葉のうらに、



  もとめてもかかる蓮の露をおきて憂き世に、または帰るものかは



と書きてやりつ。まことに、いと尊くあはれなれば、やがてとまりぬべくおぼゆるに、さうちうが家の人のもどかしさも忘れぬべし。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三三 小白河といふ所は、



 小白河といふ所は、小一条の大将殿の御家ぞかし、そこにて上達部、結縁の八講したまふ。世の中の人、いみじうめでたき事にて、「遅からむ車などは立つべきやうもなし」と言へば、露とともに起きて、げにぞ、ひまなかりける轅(ながえ)の上にまたさし重ねて、三つばかりまではすこしものも聞ゆべし。

 六月十よ日にて、暑きこと世に知らぬほどなり。池の蓮を見やるのみぞ、いと涼しきここちする。左右の大臣たちをおきたてまつりては、おはせぬ上達部なし。二藍の指貫、直衣、あさぎのかたびらどもぞ透かしたまへる。少し大人びたまへるは、青鈍(おにび)の指貫、白き袴もいと涼しげなり。佐理(すけまさ)の宰相なども皆若やぎだちて、すべて尊き事の限りにもあらず、をかしき見物なり。

 廂の簾高う上げて、長押の上に、上達部は奥に向きて長々と居たまへり。その次には、殿上人、若君達、狩装束、直衣などもいとをかしうて、え居も定まらず、ここかしこに立ちさまよひたるも、いとをかし。実方(さねかた)の兵衛の佐(すけ)、長命侍従など、家の子にて、今すこし出で入りなれたり。まだ童なる君など、いとをかしくておはす。

 すこし日たくるほどに、三位の中将とは関白殿をぞ聞えし、かうの薄物の二藍の御直衣、二藍の織物の指貫、濃蘇枋の下の御袴に、張りたる白きひとへのいみじうあざやかなるを着たまひて歩み入りたまへる、さばかり軽び涼しげなる御中に、暑かはしげなるべけれど、いといみじうめでたしとぞ見えたまふ。朴、塗骨など骨はかはれど、ただ赤き紙をおしなべてうち使ひ持たまへるは、撫子のいみじう咲きたるにぞ、いとよく似たる。

 まだ講師ものぼらぬほど、懸盤して、なににかあらむ、ものまゐるなるべし。義懐(よしちか)の中納言の御様、常よりもまさりておはするぞ、限りなきや。色合ひの花々といみじうにほひあざやかなるに、いづれともなき中のかたびらを、これはまことにすべてただ直衣一つを着たるやうにて、常に車どもの方を見おこせつつ、ものなど言ひかけたまふ、をかしと見ぬ人はなかりけむ。

 後に来る車の、ひまもなかりければ池に引き寄せて立ちたるを見たまひて、実方の君に「消息をつきづきしう言ひつべからむ者、一人」と召せば、いなかる人にかあらむ、選りて率ておはしたり。「いかが言ひやるべき」と、近う居たまふ限り、のたまひあはせて、やりたまふ言葉は聞えず。いみじう用意して車のもとへ歩み寄るを、かつは笑ひたまふ。後の方に寄りて言ふめる。久しう立てれば、「歌など詠むにやあらむ。兵衛の佐、返し思ひまうけよ」など笑ひて、いつしか返事聞かむと、ある限り、大人上達部まで皆そなたざまに見やりたまへり。げにぞけせうの人まで見やりしもをかしかりし。

 返事聞きたるにや、すこし歩み来るほどに、扇をさし出でて呼びかへせば、歌などの文字言ひあやまりてばかりや、かうは呼びかへさむ、久しかりつるほど、おのづからあるべきことは、直すべくもあらじものを、とぞおぼえたる。近うまゐりつくも心もとなく、「いかにいかに」と、誰も誰も問ひたまふ。ふとも言はず、権中納言ぞのたまひつれば、そこにまゐり、けしきばみ申す。三位の中将「とく言へ。あまり有心すぎてしそこなふな」と、のたまふに、「これもただ同じことになむはべる」と言ふは聞ゆ。藤大納言、人よりけにさしのぞきて、「いかが言ひたるぞ」と、のたまふめれば、三位の中将「いと直き木をなむ押し折りためる」と聞こえたまふに、うち笑ひたまへば、皆なにとなくさと笑ふ声、聞こえやすらむ。中納言、「さて、呼びかへさざりつるさきは、いかが言ひつる。これや直したる定」と問ひたまへば、「久しう立ちてはべりつれど、ともかくもはべらざりつれば、『さは、帰りまゐりなむ』とて、帰りはべりつるに、呼びて」などぞ申す。「誰が車ならむ。見知りたまへりや」など、あやしがりたまひて、「いざ、歌詠みてこの度はやらむ」などのたまふほどに、講師のぼりぬれば、皆、居静まりて、そなたをのみ見るほどに、車は、かい消つやうに失せにけり。下簾など、ただ今日はじめたりと見えて、濃きひとへがさねに二藍の織物、蘇枋の薄物の上着など、後にも摺りたる裳、やがてひろがながらうち下げなどして、なに人ならむ、なにかは、またかたほならむことよりはげにと聞えて、なかなかいとよし、とぞおぼゆる。

 朝座の講師清範、高座の上も光りみちたるここちして、いみじうぞあるや。暑さのわびしきに添へて、しさしたる事の今日過ぐすまじきをうちおきて、ただすこし聞きて帰りなむとしつるに、しきなみに集ひたる車なれば、出づべき方もなし。朝講果てなば、なほいかで出でなむと、前なる車どもに消息すれば、近く立たむがうれしさにや、「早々」と引き出であけて出だすを見たまひて、いとかしかましきまで老上達部さへ笑ひにくむをも聞き入れず、答へもせで、強いて狭がり出づれば、権中納言の、「やや。まかりぬるもよし」とて、うち笑みたまへるぞ、めでたき。それも耳にもとまらず、暑きにまどはし出でて、人して「五千人のうちには入らせたまはぬやうあらじ」と聞えかけて、帰りにき。

 そのはじめより、やがて果つる日まで立てたる車のありけるに、人寄り来とも見えず、すべてただあさましう絵などのやうにて過ぐしければ、ありがたくめでたく心にくく、いかなる人ならむ、いかで知らむと、問ひ尋ねけるを聞きたまひて、藤大納言などは、「なにか、めでたからむ。いとにくし。ゆゆしきものにこそあなれ」と、のたまひけるこそ、をかしかりしか。

 さて、その二十日あまりに、中納言、法師になりたまひにしこそ、あはれなりしか。桜など散りぬるも、なほ世の常なりや。「置くを待つ間の」とだに言ふべくもあらぬ御有様にそこ見えたまひしか。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三四 七月ばかり、いみじう暑ければ、



 七月ばかり、いみじう暑ければ、よろづの所あけながら夜もあかすに、月のころは、寝おどろきて見いだすに、いとをかし。闇もまたをかし。有明はた、言ふもおろかなり。

 いとつややかなる板の端近う、あざやかなる畳一枚うち敷きて、三尺の几帳、奥の方におしやりたるぞ、あぢきなき。端にこそ立つべけれ。奥の後めたからむよ。人は出でにけるなるべし、薄色の、裏いと濃くて、表はすこしかへりたるならずは、濃き綾のつややかなるが、いとなえぬを、頭ごめにひき着てぞ寝たる。香染めのひとへ、もしは黄生絹のひとへ、紅のひとへ袴の腰のいと長やかに衣の下より引かれたるも、まだ解けながらなめり。そばの方に髪のうちたたなはりてゆるらかなるほど、長さおしはかられたるに、またいづこよりにかあらむ、朝ぼらけのいみじう霧り立ちたるに、二藍の指貫にあるかなきかの色したる香染めの狩衣、しろき生絹に紅の透すにこそあはらめ、つややかなる、霧にいたうしめりたるを脱ぎたれて、鬢のすこしふくだみたれば、鳥帽子のおし入れたるけしきもしどけなく見ゆ。朝顔の露落ちぬきさきに文書かむと、道のほども心もとなく「麻生の下草」など、口ずさみつつ、わが方に行くに、格子のあがりたれば、御簾のそばをいささか引き上げて見るに、起きて去ぬらむ人もをかしう、露もあはれなるにや、しばし見立てれば、枕上の方に、朴に紫の紙張りたる扇、ひろごりながらあり。陸奥紙の畳紙の細やかなるが、花か紅か、すこしにほひたるも、几帳のもとに散りぼひたり。

 人けのすれば、衣の中より見るに、うち笑みて、長押におしかかりて居ぬ。恥ぢなどすべき人にはあらねど、うちとくべき心ばへにもあらぬに、ねたうも見えぬるかな、と思ふ。「こよなき名残の御朝寝かな」とて、簾の内になから入りたれば、「露よりさきなる人のもどかしさに」と言ふ。をかしき事、とり立てて書くべき事ならねど、とかく言ひかはすけしきどもは、にくからず。枕上なる扇、わが持たるしておよびてかき寄するが、あまり近う寄り来るにやと、心ときめきして、引きぞ下らるる。取りて見などして、「うとくおぼいたること」など、うちかすめうらみなどするに、明うなりて、人の声々し、日もさし出でぬべし。霧の絶え間見えぬべきほど、急ぎつる文もたゆみぬるこそ、後ろめたけれ。

 出でぬる人も、いつのほどにかと見えて、萩の露ながらおし折りたるに付けてあれど、えさし出でず。香の紙のいみじうしめたる匂い、いとをかし。あまりはしたなきほどになれば、立ち出でて、わが起きつる所もかくやと思ひやらるるも、をかしかりぬべし。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三五 木の花は



 木の花は 濃きも薄きも、紅梅。桜は、花びら大きに、葉の色濃きが、枝細くて咲きたる。藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし。

 四月のつごもり、五月のついたちのころほひ、橘の葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまに、をかし。花の中より黄金の玉かと見えて、いみじうあざやかに見えたるなど、朝露に濡れたる朝ぼらけの桜に劣らず。郭公(ほととぎす)のよすがとさへ思へばにや、なほ、さらに言ふべきにもあらず。

 梨の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文付けなどだにせず、愛敬おくれたる人の顔など見ては、たとひに言ふも、げに、葉の色よりはじめて、あはひなく見ゆるを、唐土には限りなきものにて、詩にも作る、なほさりとも、やうあらむと、せめて見れば、花びらの端にをかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ。楊貴妃の、帝の御使いあひて泣きける顔に似せて、「梨花一枚、春、雨を帯びたり」など言ひたるは、おぼろけならじと思ふに、なほいみじうめでたきことは、たぐひあらじとおぼえたり。

 桐の木の花、紫に咲きたるは、なほをかしきに、葉のひろごりざまぞ、うたてこちたれど、異木どもとひとしう言ふべきにもあらず。唐土にことごとしき名つきたる鳥の、選りてこれにのみ居るらむ、いみじう心異なり。まいて、琴に作りて、さまざまなる音のいでくるなどは、をかしなど、世の常に言ふべくやはある、いみじうこそめでたけれ。

 木のさまにくげなれど、楝(あふち)の花、いとをかし。かれがれに、様異に吹きて、かならず五月五日にあふも、をかし。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三六 池は



 池は 勝間田の池。磐余(いはれ)の池。贄野(にへの)の池、初瀬に詣でしに、水鳥のひまなく居て、立ち騒ぎしが、いとをかしう見えしなり。

 水なしの池こそ、あやしう、などてつけけるならむとて、問ひしかば、「五月など、すべて雨いたう降らむとする年は、この池に水といふものなむ、なくなる。また、いみじう照るべき年は、春のはじめに、水なむ多く出づる」と言ひしを「むげになく、乾きてあらばこそ、さも言はめ、出づるをりもあるを、一筋にもつけけるかな」と、言はまほしかりしか。

 猿沢の池は、采女(うねべ)の身投げたるをきこしめて、行幸などありけむこそ、いみじうめでたけれ。「寝くたれ髪を」と、人丸が詠みけむほどなど思ふに、言ふもおろかなり。

 おまへの池は、またなにの心にてつけけるならむと、ゆかし。鏡の池。狭山の池は、三稜草(みくり)といふ歌のをかしきが、おぼゆるならむ。こひぬまの池は「玉藻な刈りそ」と言ひたるも、をかしうおぼゆ。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三七 節は、



 節は、五月にしく月はなし。菖蒲、蓬(よもぎ)などのかをりあひたる、いみじうをかし。九重の御殿の上をはじめて、言ひ知らぬ民のすみかまで、いかで、わがもとにしげく葺かむと、葺きわたしたる、なほいとめづらし。いつかは、異をりに、さはしたりし。

 空のけしき、曇りわたりたるに、中宮などには、縫殿(ぬひどの)より、御薬玉とて、色々の糸を組み下げてまゐらせたれば、御帳立てたる母屋の柱に左右に付けたり。九月九日の菊を、あやしき生絹(すずし)の衣に包みてまゐらせたるを、同じ柱に結ひ付けて月ごろある、薬玉にとりかへてぞ捨つめる。また薬玉は菊のをりまであるべきにやあらむ。されどそれは、皆、糸を引き取りて、もの結ひなどして、しばしもなし。

 御節供まゐり、若き人々、菖蒲の刺櫛さし、物忌付けなどして、さまざま、唐衣、汗衫(かざみ)などに、をかしき折枝ども、長き根にむら濃の組して結び付けたるなど、珍しう言ふべきことならねど、いとをかし。さて、春ごとに咲くとて、桜をよろしう思ふ人やはある。

 土ありく童などの、ほどほどにつけてはいみじきわざしたりと思ひて、常に袂まぼり、人のにくらべなど、えも言はずと思ひたるなどを、そばへたる小舎人童などに引きはられて泣くも、をかし。

 紫の紙に楝(あふち)の花、青き紙に菖蒲の花の葉細く巻きて結ひ、また、白き紙を根してひき結ひたるも、をかし。いと長き根を文の中に入れなどしたるを見るここちども、いと艶なり。返事書かむと言ひあはせ、かたらふどちは見せかはしなどするも、いとをかし。人の女(むすめ)、やむごとなき所々に、御文などきこえたまふ人も、今日は心異にぞなまめかしき。夕暮れのほどに、郭公の名のりしてわたるも、すべていみじき。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三八 花の木ならぬは



 花の木ならぬは かへで。桂。五葉。そばの木、しななきここちすれど、花の木ども散り果てて、おしなべて緑になりにたる中に時もわかず濃き紅葉のつやめきて、思ひもかけぬ青葉の中よりさし出でたる、めづらし。

 まゆみ、さらにも言はず。そのものとなけれど、宿り木といふ名、いとあはれなり。榊、臨時の祭の御神楽のをりなど、いとをかし。世に木どもこそあれ、神の御前のものと生ひはじめけむも、とりわきてをかし。

 楠の木は、木立多かる所にも、ことにまじらひ立てらず、おどろおどろしき思ひやりなどうとましきを、千枝に分れて、恋する人のためしに言はれらるこそ、誰かは数を知りて言ひはじめけむと思ふに、をかしけれ。

 檜の木、また、け近からぬものなれど、三葉四葉の殿づくりもをかし。五月に雨の声をまなぶらむも、あはれなり。

 かへでの木のささやかなるに、萌えいでたる葉末の赤みて、同じ方にひろごりたる葉のさま、花もいとものはかなげに、虫などの枯れたるに似て、をかし。

 あすはひの木、この世に近くも見え聞こえず、御嶽に詣でて帰りたる人などの持て来める。枝ざしなどは、いと手触れにくげにあらくましけれど、なにの心ありて、あすはひの木とつけけむ。あぢきなきかね言なりや。誰に頼めたるにかと思ふに、聞かまほしくをかし。

 ねずもちの木、人なみなみなるべきにもあらねど、葉のいみじうこまかに小さきが、をかしきなり。楝の木。山橘。山梨の木。

 椎の木、常盤木はいづれもあるを、それしも、葉がへせぬためしに言はれたるも、をかし。

 白樫といふものは、まいて深山木の中にもいとけ遠くて、三位、二位の袍(うへのきぬ)染むるをりばかりこそ、葉をだに人の見るめれば、をかしきこと、めでたきことに取り出づべくもあらねど、いつともなく雪の降り置きたるに見まがへられ、素盞鳴(すさのを)尊、出雲の国におはしける御事を思ひて、人丸が詠みたる歌などを思ふに、いみじくあはれなり。をりにつけても一節あはれともをかしとも聞きおきつるものは、草、木、鳥、虫も、おろかにこそおぼえね。

 ゆづりの葉の、いみじうふさやかにつやめき、茎はいと赤くきらきらしく見えたるこそ、あやしけれど、をかし。なべての月には、見えぬものの、師走のつごもりのみ時めきた、亡き人の食ひ物に敷く物にやと、あはれなるに、また、齢を延ぶる歯固めの具にも、もて使ひためるは、いかになる世にか、「紅葉せむ世や」と言ひたるも、頼もし。

 柏木、いとをかし。葉守の神のいますらむも、かしこし。兵衛の督(かみ)、佐(すけ)、尉(ぞう)など言ふも、をかし。

 姿なけれど、椶櫚(すろ)の木、唐きめて、わるき家のものとは見えず。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
三九 鳥は



 鳥は 異所のものなれど、鸚鵡(あうむ)、いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。郭公。水鶏(くひな)。しぎ。都鳥。ひは。ひたき。

 山鳥、友を恋ひて、鏡を見すればなぐさむらむ、心若う、いとあはれなり。谷隔てたるほどなど、心苦し。

 鶴は、いとこちたきさまなれど、鳴く声の雲居まで聞ゆる、いとめでたし。頭赤き雀。斑鳩(いかるが)の雄鳥。たくみ鳥。

 鷺は、いと見目も見苦し。眼居(まなこゐ)なども、うたてよろづになつかしからねど、ゆるぎの森にひとりは寝じとあらそふらむ、をかし。水鳥、鴛鴦(をし)いとあはれなり。かたみにゐかはりて、羽の上の霜払ふらむほどなど。千鳥、いとをかし。

 鶯は、詩などにもめでたきものに作り、声よりはじめて、様、かたちも、さばかりあてにうつくしきほどよりは、九重の内に鳴かぬぞ、いとわろき。人の「さなむある」と言ひしを、さしもあらじと思ひしに、十年ばかりさぶらひて聞きしに、まことにさらに音せざりき。さるは、竹近き紅梅も、いとよく通ひぬべきたよりなりかし。まかでて聞けば、あやしき家の見所もなき梅の木などには、かしがましきまでぞ鳴く。夜鳴かぬも、寝ぎたなきここちすれども、今はいかがせむ。夏、秋の末まで、老い声に鳴きて、虫食ひなど、ようもあらぬ者は名をつけかへて言ふず、くちをしくくすしきここちする。それも、ただ雀などのやうに常にある鳥ならば、さもおぼゆまじ。春鳴くゆゑこそはあらめ。「年たちかへる」など、をかしきことに歌にも詩にも作るなるは。なほ春のうち鳴かましかば、いかにをかしからまし。人をも、人げなう、世のおぼえあなづらはしうなりそめにたるを、そしりやはする。鳶(とび)、烏などの上は、見入れ聞き入れなどする人、世になしかし。されば、いみじかるべきものとなりたれば、と思ふに、心ゆかぬここちするなり。祭の帰さ見るとて、雲林院(うりゐん)、知足院などの前に車を立てたれば、郭公も忍ばぬにやあらむ、鳴くに、いとようまねび似せて、木高き木どもの中に、諸声に鳴きたるこそ、さすがにをかしけれ。

 郭公は、なほ、さらに言ふべきかたなし。いつしか、したり顔にも聞こえたるに、卯の花、花橘などに宿りをして、はた隠れたるも、ねたげなる心ばへなり。五月雨の短き夜に寝覚をして、いかで人よりさきに聞かむと待たれて、夜深くうちいでたる声のらうらうじう愛敬づきたる、いみじう心あくがれ、せむかたなし。六月になりぬれば、音もせずなりぬる、すべて言ふもおどかなり。夜鳴くもの、なにもなにもめでたし。ちごどものみぞ、さしもなき。

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 楼主| 发表于 2004-1-23 23:00:00 | 显示全部楼层
四〇 あてなるもの



 あてなるもの

 薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて 新しき金まりに入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に夢の降りかかりたる。いみじううつくしきちごの、いちごなど食ひたる。

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 楼主| 发表于 2004-1-26 23:00:00 | 显示全部楼层
四一 虫は



 虫は 鈴虫。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひをむし。螢。

 蓑虫、いとあはれなり。鬼のうみたりければ、親に似てこれも恐ろしき心あらむとて、親のあやしき衣ひき着せて、「今、秋風吹かむをりぞ、来むとする。待てよ」と言ひ置きて逃げて去にけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。

 額づき虫、またあはれなり。さるここちに道心おこして、つきありくらむよ。思ひかけず、鳴き所などにほとめきありきたるこそ、をかしけれ。

 蠅こそ、にくきもののうちに入れつべく、愛敬なきものはあれ。人々しう、かたきなどにすべき大きさにはあらねど、秋など、ただよろづの物に居、顔などに濡れ足して居るなどよ。人の名につきたる、いとうとまし。

 夏虫、いとをかしう、らうたげなり。火近う取り寄せて物語など見るに、草子の上などに飛びありく、いとをかし。

 蟻は、いとにくけれど、軽びいみじうて、水の上などをただ歩みに歩みありくこそ、をかしけれ。

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 楼主| 发表于 2004-1-26 23:00:00 | 显示全部楼层
四二 七月ばかりに、風いたう吹きて、



 七月ばかりに、風いたう吹きて、雨など騒がしき日、おほかたいと涼しければ、扇もうち忘れたるに、汗の香すこしかかへたる綿衣の薄きをいとよくひき着て、昼寝したるこそ、をかしけれ。

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 楼主| 发表于 2004-1-26 23:00:00 | 显示全部楼层
四三 にげなきもの



 にげなきもの

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