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楼主 |
发表于 2004-1-26 23:00:00
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四七 職の御曹司の西面の立蔀のもとにて、
職の御曹司の西面の立蔀のもとにて、頭の弁、ものをいと久う言ひ立ちたまへれば、さし出でて、「それは誰ぞ」と言へば、「弁さぶらふなり」と、のたまふ。「なにか、さもかたらひたまふ。大弁見えば、うち拾てたてまつりてむものを」と言へば、いみじう笑ひて、「誰が、かかる事をさへ言ひ知らせけむ。それ、『さなせそ』とかたらふなり」と、のたまふ。
いみじう見え聞えて、をかしき筋など立てたる事はなう、ただありなるやうなるを、皆人さのみ知りたるに、なほ奥深き心ざまを見知りたれば、「おしなべたらず」など、御前にも啓し、また、さしろしめしたるを、常に「『女はおのれをよろこぶ者のために顔づくりす。士はおのれを知る者のために死ぬ』となむ言ひたる」と、言ひあはせたまひつつ、よう知りたまへり。「遠江(とほたあふみ)の浜柳」と言ひかはしてあるに、若き人々は、ただ言ひに見苦しきことどもなどつくろはず言ふに、「この君こそ、うたて見えにくけれ。異人のやうに歌うたひ興じなどもせず、けすさまじ」など、そしる。
さらにこれかれにもの言ひなどもせず、「まろは、目は縦ざまに付き、眉は額ざまに生ひあがり、鼻は横ざまなりとも、ただ口つき愛敬づき、おどがひの下、頸きよげに、声にくからざらむ人のみなむ、思はしかるべき。とは言ひながら、なほ、顔いとにくげならむ人は、心うし」とのみ、のたまへば、まして、おとがひ細う、愛敬おくれたる人などは、あいなくかたきにして、御前にさへぞ、あしざまに啓する。
ものなど啓せさせむとても、そのはじめ言ひそめてし人を尋ね、下なるをも呼びのぼせ、常に来て言ひ、里なるは、文書きても、みづからもおはして、「遅くまゐらば、『さなむ申したる』と申しにまゐらせよ」と、のたまふ。「それ、人のさぶらふらむ」など言ひ譲れど、さしもうけひかずなどぞ、おはする。「あるに従ひ、定めず、なにごとももてなしたるをこそ、よきにすめれ」と、後見きこゆれど、「わがもとの心本性」とのみ、のたまひて、「改まらざるものは心なり」と、のたまへば、「さて、憚りなし、とは、なにを言ふにか」と、あやしがれば、笑ひつつ、「仲よしなども人に言はる。かくかたらふとならば、なにか恥づる。見えなどもせよかし」と、のたまふ。「いみじうにくげなれば、さあらむ人をば、え思はじ、と、のたまひしによりて、え見えたてまつらぬなり」と言へば、「げに、にくくもぞなる。さらば、な見えそ」とて、おのづから見つべきをりも、おのれ顔ふたぎなどして見たまはぬも、真心にそら言したまはざりけり、と思ふに、三月つごもり方は、冬の直衣の着にくきにやあらむ、袍がちにてぞ、殿上び宿直姿もある、つとめて、日さし出づるまで、式部のおもとと小廂に寝たるに、奥の遺戸をあけさせたまひて、上の御前、宮の御前出でさせたまへれば、起きもあへすまどふを、いみじく笑はせたまふ。唐衣をただ汗衫の上にうち着て、宿直物もなにも埋もれながらある上におはしまして、陣より出で入る者ども御覧ず。殿上人の、つゆ知らで寄り来てもの言ふなどもあるを、「けしきな見せそ」とて、笑はせたまふ。さて、立たせたまふ。「二人ながら、いざ」と、おはせらるれど、「今、顔などつくろひたててこそ」とて、まゐらず。
入らせたまひて後も、なほ、めでたきことどもなど、言ひあはせてゐたるに、南の遺戸のそばの几帳の手のさし出でたるにさはりて、簾のすこしあきたるより、撙郡毪猡韦我姢妞欷小t隆がゐたるなめりとて、見も入れで、なほ、異事どもを言ふに、いとよく笑みたる顔のさし出でたるも、なほ則隆なめりとて、見やりたれば、あらぬ顔なり。あさましと笑ひ騒ぎて、几帳引き直し隠るれば、頭の弁にぞおはしける。見えたてまつらじとしつるものをと、いとくちをし。もろともにゐたる人は、こなたに向きたれば、顔も見えず。
立ち出でて、「いみじく名残なくも見つるかな」と、のたまへば、「則隆と思ひはべりつれば、あなづりてぞかし。などかは、見じとのたまふに、さつくづくとは」と言ふに、「女は寝起き顔なむ、いとよき、と言へば、ある人の局に行きてかいばみして、またもし見えやするとて、来たりつるなり。まだ上のおはしましつるをりからあるをば、知らざりける」とて、それより後は、局の簾うちかづきなどしたまふめりき。
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